複雑・ファジー小説
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- 復讐 5年の歳月を経て……
- 日時: 2011/07/28 17:45
- 名前: コーダ (ID: n/BgqmGu)
え〜…皆様初めまして!!コーダと申します!!
このたびはこちらの小説カキコで私のオリジナル小説を投稿していきたいと思っております。しかし、過度な期待はしないでください。あっ、こんな小説かぁ…程度の期待で良いです。
小説の内容は刀と魔法のファンタジーだと思います。(私でもジャンルが少々わかっていない。)時にはこれファンタジー?という物もありますがそこは温かい目でスルーしてください。
小説に登場する人は人間や獣人、巫女などさまざまです。
それでは、これで長ったらしい挨拶を終了します。小説のほうは編集が終わり次第投稿いたします。
それではまた〜!!
なんと参照が400を超えました!なんという出来事……これは、夢?幻?読者様!ありがとうございます!
謎の企画へ→>>91
※お知らせ
これから、大規模な文章訂正を行います。なので、いつもの書き方から、一気に変わります。
しかし、更新も同時並行に、行っていきますので、ご安心ください。
※お知らせ2
そろそろ、溜まっていた小説のコピーが終わりそうになってきました。
なので、これからは地道に作成作業もしていくので、更新速度は遅くなりますことを、お知らせします。
※お知らせ3
突然ですが、私小説を掛け持ちしました。なので、こちらの小説はとんでもなく更新が遅くなると思います。
※追記1
私の小説は戦闘描写が多いので”血”や”死”などの表現が多少ありますのでご報告いたします。
※追記2
秋原かざや様に私の小説を宣伝していただきました。本当にありがとうございます!!
宣伝文章を下記に記します。
————————————————————————
もう、今となっては過去になるが、俺は昔、復讐しか頭になかった男だった。
これから話すことはウソ、偽りは全くない……復讐のきっかけ、復讐符の終止符、これからについて……隠さずにここに記すとする。
「東牙(とうが)殿!! 今日はお祭りですぞ!!」
「騒がしい爺さんだな……どうせ規模の小さい夏祭りだろ?」
屋根が全て瓦で覆い尽くされ、玄関の正面には立派な門構え。
外から見ると、縁側にたくさんの襖が見えた。
始まりは、その小さな夏祭りでの出会い。
「だーかーらー!! なんでこの商品は、何度撃っても倒れないのよ!? おかしいでしょ!?」
「おかしいたってお嬢ちゃん? 倒れないもんは倒れないんだよ」
「いーや!! 絶対なにか細工しているに違いないよ!!」
「おい……俺は女だからって手加減はしないぞ……」
「そっちこそ覚悟は出来てるの!? 私に逆らったことを深く後悔させてあげるんだから!!」
そういって、少女は。
「グリモワールオブエレメント・サラマンド、第1章「バーンストーム」!!」
東牙の足下に現れたのは、六角形の魔法陣。そこから激しい炎が噴き上げた!!
————ひとつ、話をしよう。
ある家に決まりがあった。
それは、破ってはならぬ厳しい掟。
『他人に振り回されず、自立して生きる』
その家の者を勝手に振り回すことは、斬られても文句は言えない。
また、自分から振り回されてしまえば、自分が死刑となる。
そんな厳しい掟があった。
そう、俺がいた鞘嘉多家は、そんな厳しい掟があったのだ。
「一体どうしたんですか?」
「それがですね……今日の朝、蓮花お嬢様が誘拐されてしまったんです! 犯人は、確か……“鞘嘉多”と言ってましたね」
幼い俺が彼女、蓮花(れんか)に振り回されてしまったことがきっかけで……。
「ちょっとそこの爺さん!! 私をどうするつもりなのよ!?」
「おやおや……お嬢ちゃんは、自分がどんな状況か分かっていないようですな。……我々鞘嘉多家後継者、鞘嘉多 東牙殿を引き連れたという罪で、公開処刑ならぬ公開死刑になろうと」
「!!」
「聞け貴様ら!! 俺は鞘嘉多の決まりを反対する!! そして俺は自分の名字を捨てて完全に鞘嘉多の縁を切る事にする!!」
家との縁を切る事を決意した。
「ああもう!! じれったいわね!! この際、敵か味方かとっとと決めちゃいなさいよ!! せっかく東牙は覚悟決めて、ここに殴り込んでいるのよ!? あんたも覚悟くらい持ったら!?」
「……ふふ……わたくしとしたことが子供に説得されるとは思いもしませんでしたわ」
————そして、5年の歳月が経った。
俺の視力は落ち、眼鏡をかけることとなったが、ここから、俺の復讐が始まる。
「(一体どうなっているんだ……北の都会街と言っていたが……ちっ、早いとこ解決しないとな……)」
「佐々凪(ささなぎ)殿!! 反対関係者が守りの姿勢に入りました!!」
「科門奥義第伍目『円斬刀(えんざんとう)』……!!」
「こんなんじゃぁ、東牙に顔見せられねぇよ……」
「世の中何が起こるか分からない……だから勝つまで絶対油断はするな。良いか?」
「佳恵……さん? もしかして佳恵さんですか!?」
「その声、私が忘れるはずありません……東牙……東牙—!!」
「……ふんっ、さすがだな、鞘嘉多四天王の1人……」
「もう少し違う形で出会っていれば仲良くできたのにな……」
「四天王だから? 四天王だからという理由で、東牙は人を平気で殺すのですか!?」
「おい、指示が出てないのに、長距離狙撃銃を撃つ馬鹿がどこ居る?」
「み、見たのか……私の体を……」
「おっ……これはなかなかの味……」
「だろ? この味を分かってくれる人が居て俺は嬉しい」
「……すまなかった……まさか東牙がその……そういう人だと知らず……そして私を敵としていたなんて……」
「(ちっ……動け……動けよな……)」
「そこにいるのは誰だ……」
—————————————————————チリリン。
オリエンタルな東方風世界を舞台に、刀と魔法が彼らの運命を斬り開く!!
剣戟あふれる復讐劇の先に、辿りつく未来とは……。
【復讐 5年の歳月を経て……】
現在、複雑・ファジースレッドにて、好評連載中!
「あ〜あ……自分も警視みたいに綺麗で家庭的な人欲しいですよ〜〜」
「そんなもん俺に相談すんな……自分の花嫁くらい自分で探せ……」
————————————————————————
宣伝文章終了。
・読者様
ステッドラーさん(【★】アーマード・フェアリーズ【★】を執筆している方です。)
琴月さん(*鏡花水月に蝶は舞う*を執筆している方です。)
龍宮ココロさん(白ずきんちゃんと。〜ワンダーランドの住人童話〜を執筆している方です。)
(同時に、ゴッド・コードウルフ。という小説も執筆している方です。)
水瀬 うららさん(Quiet Down!!を執筆している方です。)
長月さん(神王サマは15歳!を執筆している方です。)
・絵を書いてくれた方々
しかやんさん(美しい、柊 樅霞さんを描いてくれました!ありがとうございます!)
・評価をしてくれた方々
緑月華さん(評価ありがとうございます!そして、蓮花を好きと言ってくれて、嬉しいです。)
水瀬 うららさん(とても詳しい評価、感想をありがとうございます!私からは感謝の2文字しか出てきません!)
・鑑定をしてくれた方々
秋原かざやさん(非常に丁寧な鑑定、ありがとうございます!私の弱点を教えてくれて、本当に嬉しいです。)
・宣伝をしてくれた方々
秋原かざやさん(とてもドキドキするような宣伝、ありがとうございます!そして、楓のことを好きと言ってくれて、嬉しいです!)
壱目 出会いと別れ
>>1 >>2 >>3 >>4 >>5 >>6 >>7
>>8 >>9 >>10 >>11
弐目 再開、そして別れ
>>12 >>13 >>14 >>15 >>16 >>17
>>18 >>19 >>20
参目 新たな仲間と敵
>>21 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26
>>27 >>28
四目 裏切り裏切られ
>>29 >>30 >>31 >>32 >>33 >>34
>>35 >>36
伍目 城内戦争
>>37 >>38 >>39 >>40 >>41 >>42
六目 巫女と鈴と刀と……
>>43 >>44 >>45
七目 衝撃の事実
>>46 >>47 >>48 >>49 >>55
八目 過去よりも今
>>58 >>59 >>60
九目 雪月花解禁
>>64 >>66 >>71 >>72 >>73 >>79
>>80 >>81 >>83 >>84 >>85 >>86
>>87
拾目 活動、反省、計画
>>90 >>94 >>95 >>96 >>97 >>98
>>99 >>106
拾壱目 柊樅霞の呟き
>>107 >>108 >>109 >>112 >>113 >>114
>>115
拾弐目 それぞれの思惑
>>116 >>121 >>124 >>125 >>126
拾参目 城外大戦争
>>128 >>131 >>133 >>137
- Re: 復讐 5年の歳月を経て… ( No.33 )
- 日時: 2011/07/03 15:02
- 名前: コーダ (ID: W4Fe.vPq)
「いやぁ〜……昨日は鉈崎の手柄だったなぁ!俺が出るまでもねぇなぁ!」
「何、俺を今まで通りのやり方で、やっただけだ……褒められる筋合いはない。」
「何にしても、これで東牙はしばらく、ここには来れないという事ですね。」
城の最上階で、諺瑚、橋鍍、夜尭が昨日のことを話題に、朝の食事をとっていた。
食パン、フランスパン、揚げパンなど、たくさんのパンを主食にして、副食には、なんと肉がズラリと並び、朝からある意味酷いメニューに、さすがはお金持ちと、諺瑚と橋鍍が思ったのは言うまでもない。
「しかし、俺の勘だと東牙は懲りずにくるぞ……そうだな、せいぜい早くて明日か?」
諺瑚は、イチゴジャムをたくさん塗った食パンを1口食べ、牛乳を一気飲みして、こんなセリフを吐いた。
橋鍍は「そんなのありえねぇってのっ!見ただろぉ、あの傷ぅ!?あれじゃあ、まともに刀は振れねぇよ。」と、揚げパンを食べながら言った。
しかし夜尭は「(それはそれでありえそうですね……。)」と、心の中でわずかな可能性があるかもしれないと悟り、黙って紅茶を飲んだ。
「ふんっ……そうやって言っていられるのも、今のうちだ……。」
「ちっ……俺は信じねぇからなぁ!」
刑事と四天王が、うるさく朝食をしていることに、夜尭はあまり気にせず、ただ黙ってこれからについて考えていた。
すると諺瑚からは「どうして、東牙をそこまでこだわる?夜尭。」と、ふと疑問に思ったことを言った。
「そういえばお話していませんでしたね……良いでしょう。刑事さんには特別に理由を説明しましょう。」
「けっ……。」
どうやら夜尭は、諺瑚が気に入ったみたいで、きっぱりと話すと言った。
その反応に、少し不満げな顔をして、揚げパンを食べていた橋鍍が居た。
「2人とも知っていると思いますけど、東牙は元鞘嘉多の人間ですよね?鞘嘉多家は、代々続いている家系で、とても財産も持っている……と言われます。しかし、実は昔、鞘嘉多家はこれでもかというくらい貧乏な時代がありました……当時、鞘嘉多家は鞘嘉多 雅樹(まさき)という男が、中心となっていましたが、あまりの財政難で困っているとこを聴きつけた、昔からの友人である高仲 賢輔(けんすけ)が、彼に援助したのです……そこから鞘嘉多家は、大きくなり、代々続いて行きました。この関係は今でも続いていたのですが、あの鞘嘉多 東牙により、それが絶望的になったのです……。」
長々と、東牙を追う理由を言った夜尭。
まさか、この2つの家系にそんな関係があったとは知らず、諺瑚は思わず手に持っていた食パンを、落としてしまった。
しかし、ここでまた新たな疑問が生まれたという。
「そうか……しかし、鞘嘉多と言えば誰にも干渉されずという、代々の教えなのに、なぜ今でも援助しているんだ?」
「馬鹿野郎ぉ!何聞いてんだよぉお前ぇ!」
どうやら聴いてはまずい質問をしたらしい。
橋鍍は慌てて諺瑚を怒鳴った。
すると夜尭は「……それは表向きの話ですよ……そうでないと、家系が成り立たないじゃないですか……。」と、あっさり開き直ったという。
「……(はぁ?なんだそれは……むちゃくちゃじゃねぇか、この坊ちゃん……ちっ、これならまだ裏切った奴が、正しい気がするぜ……。)」
鉈崎は、すっとその場から立ち「少し、パトロールしてくる。」と、言って部屋から出て行った。
橋鍍は「あの刑事ぃ……何か考えていたぜぇ……んじゃぁ、俺も席をはずすぜぇ……。」と、続いて部屋から出て行ったという。
「……東牙、私は君を許さないからね……。」
○
「おう、交代の時間だぜ。」
「やっと交代か〜。」
その頃、城の地下では牢屋を見張っていた警備員の話があった。
「そういえば知ってるか?昨日、1人の男と1人の女がここに侵入してきたの。」
「ああ……朝の連絡であったやつか?」
「実は俺、たまたま現場を見たんだよね……あれはすごい。男は黒いマントで、腰には刀を持っていて、メガネをかけて、かなり頭脳派。女はかなり長い刀を振りまわし、なんと獣人だったんだぜ!」
「!?……(東牙!?)」
「……(東牙……?)」
牢屋の前で会話をしていたのを、盗み聞きしていた所、突然、蓮花と佳恵はその姿に思い当たる人物が、昨日をここへ侵入していたとは思わず、びっくりしていた。
「へぇ〜……それは恐い……うわ〜、殺されたくね〜。」
「まぁ、今は見張りを頑張ろうぜ……じゃあ、また12時間後に。」
そして、男たちの会話は途絶え、静かな牢獄に戻った。
蓮花は、佳恵に近づき「もしかして……私たちが、ここに捕まっているということを知っていて、ここに?」と、コソコソと会話を始めた。
「あの東牙ならありえますわね……所で、女とはどういうことでしょうか……。」
佳恵も東牙のことを気にするが、それ以前に、女と言う人物が、1番気になったという。
蓮花は「どうせまた、東牙が変な優しさをして、ついてきた感じでしょ?」と、すんなり東牙がしそうな事を言った。
それを聴いた佳恵は「……そうですわよね。」と、どこか悲しく呟いた。
「……どうしたの?」
「いえ……やっぱり東牙のことを、しっかり見ている……と思いまして……。」
どうやら佳恵は、自分より東牙のことを知っている蓮花に、少し嫉妬したみたいだ。
すると「別に5年間の付き合いだったし、それくらいちょっと考えればわかるわ。」と、佳恵の導火線に、もっと火をつける一言を言ったのだ。
「……そ、それはどういう意味でしょうか?」
「ん?そうね〜……友達以上恋人未満っていう意味よ。」
「と、友達以上恋人未満ですって……わ、わたくしでも、そこまでいかないのに……く、悔しいですわ……。」
佳恵はもっと蓮花を嫉妬する。
すると蓮花は「ひょっとして、東牙のこと……。」と、言って「あ—!違いますわ〜!」と、何も言ってないのに全否定したのだ。
そして「あら〜?私は何も言ってないのに、何が違うのかしらね〜。」と、イタズラに笑って言う。
この女、魔女みたいな性格している。
「うっ……ぼ、墓穴を掘りましたわ……。」
「ふふ、まぁでも、その気持ちはなんとなく分かるわ……なんだかんだ言ってあいつ、優しいし……ちゃんと人の事、見てくれるし……。」
蓮花は、とても意味深な言葉をぶつぶつ呟いて、そのまま佳恵から離れた。
一体この言葉の意味はと、思う佳恵だったが、ここは乙女のマナー的に、口に出してはいけないとすぐに判断して、聴かなかったふりをしたという。
- Re: 復讐 5年の歳月を経て… ( No.34 )
- 日時: 2011/07/03 15:08
- 名前: コーダ (ID: W4Fe.vPq)
「………………。」
「おいぃ、鉈崎ぃ……今日は朝から、やけに不機嫌だなぁ……どうしたぁ?」
城の長い廊下を、橋鍍と諺瑚が歩きながら、会話をしていた。
どうやら諺瑚の機嫌が、よろしくないみたいだ。
「ったくよぉ……刑事が不満になったら、できるもんもできねぇぜ?ひょっとして、今日の朝飯、気に入らなかったのかぁ?」
橋鍍は冗談交じりで、諺瑚を心配する。
すると「俺はこのまま、この仕事を続けて良いと思うか?」と、意外な一言が出てきた。
橋鍍は「何を思ったか知らねぇがよぉ……辛いんなら、とっとと退散すれぇ……そういうやつが居ると、迷惑なんだよぉ……。」と、少々きつい言葉で刑事に言った。
「……すまない。いきなりこんな馬鹿らしいこと言って……ただ、あの話が気になっただけだ。」
「あの話ぃ?……あ〜……あれかぁ……。」
橋鍍は、朝の出来事を思い出し、やっと諺瑚がこんな事を言い出した原因を理解する。
なので「それに関しては、刑事の勝手だぁ……鉈崎はあくまで、仕事でここにきてるんだろぉ?勝手に退散しても、責任はそんなに問われねぇ……東牙を敵にするのも良いし、味方にするのも良いぜぇ……だけど、わかってんだろうなぁ?ある選択を選んだら、俺が敵になると……。」と、諺瑚の肩を叩きながら、自分の意見を言った橋鍍だった。
「ふっ……楽しみにしてろ……。」
諺瑚は、笑いながら通信機を取り出し「各員。パトロールの準備をしろ!」と、言って乱暴に切る。
どうやら、先まで纏わりついていた何かが、振り切れたみたいだ。
「行くのかぁ?」
「ああ、仕事に手は抜けんからな……後、俺はパン派だ……。」
諺瑚は橋鍍に、敬礼をしてそのまま廊下を走り、隊員が居る外まで向かった。
その様子を見て橋鍍は「ああいう兄ちゃんなら……最高だぜぇ……。」と、少々意味不明なことを言って、自分の仕事に向かったという。
○
「クゥ〜ン……。」
一方、城下町のある宿屋では、なぜか犬の鳴き声が聞こえてきたという。
そう、楓は今日の朝からずっと、部屋で東牙の帰りを待っていたのだ。
さすがに寂しくなってしまったのか、思わず犬みたいに鳴いたという。
「なんで私は、ずっとここで待っているんだ?東牙は明日の朝になったら帰ってくるのに……。」
ベッドの上で丸くなり、どうして自分は、ずっと待っているんだろう。という素朴な疑問を持っていたが、一向に解決しなかったという。
傍から見ると、飼い主の帰りをずっと待つ犬にしか見えなかった。
「そういえば東牙……私のこと決して、狼とは言わないで、1人の女性として見てくれている気が……って、何を考えているんだろう……。」
楓はふとそんな事を呟き、しばらくすると自分は何を考えているんだ。と、馬鹿馬鹿しくなったという。
もしかするとこの女性には、ある感情が生まれてきているかもしれない。
「だけど……分かっている。そんなこと叶わないことだって……持つだけ無駄だって……。」
彼女は一気に表情を変えて、思いっきり歯を食いしばり、ある感情を抑えた。
セリフだけ聞くと、過去にも何度かそのような事があって、何度も諦めたということがうかがえる。
はたして彼女は、過去にどんなことがあったのだろうか。
- Re: 復讐 5年の歳月を経て… ( No.35 )
- 日時: 2011/07/03 15:21
- 名前: コーダ (ID: W4Fe.vPq)
「あの城には、蓮花と佳恵さんが居る……だけど、昨日の出来事で分かった……俺はまだまだ、弱いということに……。」
城下町から5kmくらい離れた林の中で、東牙はただ歩きながら、こんなことを呟いたという。
まさか侵入して早々、あの刑事にやられるだなんて、想像もできなかったからだ。
「どうすればいいんだこういうときは……どうすれば……。」
東牙はその場で膝まつき、珍しく悩んでいたという。
自分の弱さを知り、これから城にいけるのだろうか?自分の弱さにより、大切な人を守れなかったら?などの思いが、たんたんと心の中で流れていた。
————————————————チリン。
ふと林から、鈴が鳴るような音が聞こえた。
東牙はすっと立ち上がり、周りをキョロキョロ見る。
—————————————————チリン。
鈴の音はどんどん大きくなり、こちらに向かってきているような感じがした。
「そこにいるのは誰だ……。」
東牙は声を太くして、誰も居ない林に問いかける。
すると「恐れるな……私は君に危害は加えない……。」と、女性の声が、林の中に響きわたった。
———————————————チリリン。
東牙は少し警戒して、鈴の音が聞こえる方向に進んでいった。
そして、草木が萌える道を進んだ先には、驚くべきものがあった。
古そうな建物だが、どこか神聖な場所で、どことなく雰囲気が特徴的だった。
そう、東牙が見たものは神社だったのだ。
すると「ようやく来たか……。」と、突然、声が聞こえた。
ゆっくり、声が聞こえた方向へ振り向くと、長くて黒い髪。上は白く下が赤い巫女服を着て、首には小さな鈴がかけてあり、目はつりっとしていて、メガネをかけている女性が、箒をもって東牙を見ていた。
その姿はまさしく、立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花という言葉が、出てきた。
「そんな陰気な顔で、私の敷地内を歩かないでくれるか?ただでさえ、陰気な場所なのに……。」
巫女は東牙の顔を見ては、突然きつい一言をお見舞いする。
すると「好きで陰気な顔はしていない……。」と、メガネをくいっと上げて返した。
だが「ほう……なにやら事情があるようで……。」と、腕を組みながら、にやっと東牙に言った。
「あなたには関係ないことだ……。」
「ふふふ……関係ないだと?そのセリフを言うのは、少し遅すぎたのではないか?」
巫女は、メガネをカチャっと上げて言ったが「ふっ……帰らせてもらう……。」と、言って、来た道を戻る東牙。
しかしある場所まで行くと、バチッと、なにか見えない壁に弾かれてしまったのだ。
「な、なんだこれは……。」と、少々慌てて状況を確認する東牙。
すると「無駄だ……もう君は、私のテリトリーに入っている……帰りたければ、黙って私の言う事を聞け……。」と、巫女らしくない発言が聞こえた。
渋々東牙は、言う事に従い、また来た道を戻ったという。
○
「さて……君は一体、何に悩んでいる?」
神社のある一室で、東牙と巫女はお茶と煎餅を、机に置きながら話をしていた。
この言葉に東牙は「知らないな……。」と、お茶を飲みながら、巫女に喧嘩を売るかのような反応をした。
すると巫女は、すっと立ち上がり「嘘を言うな……君には、とても深刻な悩みがある……顔に書いてあるぞ?」と、お祓い棒を東牙の顔に突きつける。
「だから、俺は何も悩みはないと言っているじゃないか……脅した所で、何も生まれないが?」
この余裕綽綽な顔を見て「ふむ……仕方ない。少々手荒だが……。」と、言って、お祓い棒を思いっきり東牙の心臓部分へ突いた。
突然の行動に「おい、いきなりなんだ?」と、東牙は声を太くして言ったが、巫女はなぜか目を閉じて瞑想をしていた。
そして5分くらい経った頃に、巫女はゆっくり目を開けて「事情は概ね理解した……。」と、呟き、すっとその場に座り、両手で湯のみを持ちお茶を1口飲んだ。
「あ、あなたは一体何者だ?」
「私はただの巫女だ。科門……いや……鞘嘉多 東牙。」
「!?……どうして俺の名前を……。」
東牙は突然、巫女が自分の名前を言ってとてもびっくりした。
そして「ふふ……巫女として当然のことをしただけだ……。」と、怪しく頬笑み、東牙を威圧した。
すると「……参ったよ。もうあなたの好きにしてくれ……。」と、白旗をあげたという。
「ふむ、最初からそう言ってくれれば、こんな事をしなくて済んだのに……私の名前は、柊 樅霞(ひいらぎ もみか)……よろしく。」
チリン、首の鈴を鳴らし、自己紹介をした樅霞。
東牙は心の中で「やっぱり巫女には向かない人だな……。」と、呟いたという。
- Re: 復讐 5年の歳月を経て… ( No.36 )
- 日時: 2011/07/03 15:52
- 名前: コーダ (ID: W4Fe.vPq)
「先程、東牙の胸をついたのは、君の心を読み取るため……色々な悩みが私の頭の中に入ってきた……。」
「そんなことができるのか……それは簡単にいえば、読唇術か?」
東牙は樅霞の能力に、冷静に答える。
すると「読唇術と言えば、読唇術だが少々かけはなれているので、正解にはいえない。」と、メガネをカチャっと上げて、質問に答えた。
「コホン……話は戻る……どうやら東牙は、昨日あの城に侵入したようだな……そしてあっさり負けて、自分の弱さを知り、ここをうろついていた……そういう解釈で良いか?」
樅霞の直入すぎる解釈に「そ、そうだ……。」と、心にぐさりと、何かが刺さったような感じで認めた。
「なるほど……自分が弱すぎるからか……確かに君は、まだ弱い。体力的にも精神的にも……だけど、東牙にはある人を、絶対に守りたいという気持ちが、ひしひしと心の中にある……和服を着た胸がかなり大きい女性、着物を着た獣人、そして、明るくて紅い魔女……この3人は、自分の命よりも大事だということが、私の頭の中に流れてきた……特に、紅い少女を守りたいという気持ちが大きかったな……。」
樅霞は、たんたんと東牙の心の中を言う。
すると、あまりにも当たりすぎていて、東牙は絶句して聴いていたという。
しかし「俺はそんなに、紅い魔女を守りたいという気持ちは強くないぞ?」と、一部を否定した。
だが樅霞は「そんなことはない。君は5年間ずっと、傍に居てくれた紅い少女を1番守りたいと、常に思っている……体、心が思っていなくても、脳が絶対にそうさせているに違いない……。」と、なぜか5年間、木葉家に住んでいた事まで言われてしまった。
これには堪らず「5年間は余計だ……。」と、少々顔をさげて、樅霞に言った東牙だった。
「だが、その思いは絶対に忘れるな……時としてそれが、強い力になるのだから……。」
最後の一言に、東牙は「まぁ、努力してみるよ。」と、メガネをくいっと上げ、さっと立ち上がった。
樅霞は「行くのか?なら、この鈴を持っていけ。」と、首につけていた鈴を外し、東牙の首につけた。
突然の行動に唖然としていたが、また巫女が「この鈴は、お前が無事に生きて帰ってこられたら、もう1度ここに来て、私にそれを返しに来てくれないか?では、頑張ってくれ。」と、メガネをカチャっと上げて呟いた。
そして東牙は、軽く会釈をして神社を後にした。
———————————————チリン。
歩くたびに鳴る綺麗な音色。
だけど聴いていると、どこか落ち着く音。
東牙は「あの巫女に会っていなかったら、吹っ切れなかっただろうな……。」と、感謝の言葉を呟いて林を抜けた。
○
「鉈崎警視!」
「おう、どうした?」
城の外では、鉈崎とその隊員6人が、夜のパトロールをしていた。
すると1人の隊員が、思い出したかのように、諺瑚へ1枚の手紙を渡した。
「なんだこれ……っと、紗枝(さえ)からじゃねぇか!」
諺瑚は手紙の封を切り、突然、紗枝という名前の人物が、彼の言葉から出てきた。
すると隊員から「よっ!あいかわらずおしどり夫婦ですね〜。」と、ちゃちゃを入れられた。
「けっ……褒めてもなにもでねぇっての……。」
実はこの刑事、すでに紗枝という女性と5年前に結婚していたという。
しかし、夫の諺瑚が常にこんな感じで出張に行ってしまうため、こうやって手紙でやり取りしているのだ。
隊員曰く、かなりの美人で家庭的な奥さんらしい。
「……そうか、娘も元気そうだな……悪いな。いつも遊んであげられない父親で……。」
この時だけ、諺瑚は刑事の顔ではなく、完全に父親の顔をしていた。
そして手紙を、2つ折りにして、懐のポケットに閉まって「早く仕事を終わらせて帰ってくるからな。」と、空を見上げながら決心をしたという。
「あ〜あ……自分も警視みたいに、綺麗で家庭的な人欲しいですよ〜。」
「そんなもん俺に相談すんな……自分の花嫁くらい、自分で探せ……。」
しばらく、このやりとりが続いたのは言うまでもない。
- Re: 復讐 5年の歳月を経て… ( No.37 )
- 日時: 2011/07/24 22:32
- 名前: コーダ (ID: AfTzDSaa)
〜伍目 城内戦争〜
外の雀たちが珍しく、一斉に鳴いた朝。
天気が良い城下町では、やはり主婦たちが市場で買い物をする光景を良く見る。
——————————————————————チリン。
人が会話する音の中に、なぜか今日だけ鈴が鳴る音が、響いたという。
一方、宿屋に居た楓は窓を開け、尻尾を大きくふりながら、東牙の帰りを待っていたという。
そして、ガチャリと扉を施錠する音が聴こえ、楓はすぐさま後ろを振り向き「おかえり。東牙。」と清々しく言った。
—————————————————————————チリン。
樅霞から一時的に預けられた鈴を鳴らし「ただいま……そして、すまない……。」と、一言東牙は楓に一言呟いた。
すると「いや良いよ……あの手紙で私も1日考えたかったから……。」と、楓は小さく呟く。
そして東牙は、椅子に座り、楓を見つめ「今日早速、昼から行くぞ……!」と、また城に侵入すると決心した。
もちろんそれには「了解。」と、返事をしてくれた。
「そういえばお金余ったんだが……。」
「ん?それなら全部やるよと手紙に書いたじゃないか。」
○
「よぉ鉈崎ぃ……昼飯食いすぎたぁ……。」
「緊張感のない奴だな……侵入者はいつ来てもおかしくない。腹八分目っていう言葉を知らないのか?」
城内部の廊下では、いつも通り2人が会話していた。
どうやら橋鍍は、昼ご飯の食べすぎで少々苦しかったという。
「でもよぉ……ここの飯は美味いしぃ……捨てるのは勿体ねぇだろぉ!?なら俺が食うしかねぇだろ!」
「た、確かにそうだが……ううむ、これは返す言葉が難しい……。」
偶には正論を言う橋鍍に、諺瑚は返す言葉が思い付かず困っていたという。
すると、諺瑚の通信機が鳴り、すぐさま「こちら鉈崎、どうした?」と、連絡した。
そして「何—!?東牙が来ただと—!?」と、大声で叫んで、通信機を無理矢理切っては急いで外に向かった。
「おいおいぃ……俺は腹が苦しいんだぜぇ……しばらく任せたぞぉ……。」
なぜか今日頭を2回もぶつけた私ですwいや〜…参りましたねぇw
日常にはさまざまなトラップが存在するようです。
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