複雑・ファジー小説

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復讐 5年の歳月を経て……
日時: 2011/07/28 17:45
名前: コーダ (ID: n/BgqmGu)

 え〜…皆様初めまして!!コーダと申します!!

 このたびはこちらの小説カキコで私のオリジナル小説を投稿していきたいと思っております。しかし、過度な期待はしないでください。あっ、こんな小説かぁ…程度の期待で良いです。

 小説の内容は刀と魔法のファンタジーだと思います。(私でもジャンルが少々わかっていない。)時にはこれファンタジー?という物もありますがそこは温かい目でスルーしてください。

 小説に登場する人は人間や獣人、巫女などさまざまです。

 それでは、これで長ったらしい挨拶を終了します。小説のほうは編集が終わり次第投稿いたします。

 それではまた〜!!

 なんと参照が400を超えました!なんという出来事……これは、夢?幻?読者様!ありがとうございます!

謎の企画へ→>>91

※お知らせ

 これから、大規模な文章訂正を行います。なので、いつもの書き方から、一気に変わります。
 しかし、更新も同時並行に、行っていきますので、ご安心ください。

※お知らせ2

 そろそろ、溜まっていた小説のコピーが終わりそうになってきました。
 なので、これからは地道に作成作業もしていくので、更新速度は遅くなりますことを、お知らせします。

※お知らせ3
 突然ですが、私小説を掛け持ちしました。なので、こちらの小説はとんでもなく更新が遅くなると思います。

※追記1

 私の小説は戦闘描写が多いので”血”や”死”などの表現が多少ありますのでご報告いたします。

※追記2

 秋原かざや様に私の小説を宣伝していただきました。本当にありがとうございます!!

      宣伝文章を下記に記します。


————————————————————————

 もう、今となっては過去になるが、俺は昔、復讐しか頭になかった男だった。
 これから話すことはウソ、偽りは全くない……復讐のきっかけ、復讐符の終止符、これからについて……隠さずにここに記すとする。

「東牙(とうが)殿!! 今日はお祭りですぞ!!」
「騒がしい爺さんだな……どうせ規模の小さい夏祭りだろ?」
 屋根が全て瓦で覆い尽くされ、玄関の正面には立派な門構え。
 外から見ると、縁側にたくさんの襖が見えた。

 始まりは、その小さな夏祭りでの出会い。

「だーかーらー!! なんでこの商品は、何度撃っても倒れないのよ!? おかしいでしょ!?」
「おかしいたってお嬢ちゃん? 倒れないもんは倒れないんだよ」
「いーや!! 絶対なにか細工しているに違いないよ!!」

「おい……俺は女だからって手加減はしないぞ……」
「そっちこそ覚悟は出来てるの!? 私に逆らったことを深く後悔させてあげるんだから!!」

 そういって、少女は。

「グリモワールオブエレメント・サラマンド、第1章「バーンストーム」!!」
 東牙の足下に現れたのは、六角形の魔法陣。そこから激しい炎が噴き上げた!!


 ————ひとつ、話をしよう。
 ある家に決まりがあった。
 それは、破ってはならぬ厳しい掟。
『他人に振り回されず、自立して生きる』
 その家の者を勝手に振り回すことは、斬られても文句は言えない。
 また、自分から振り回されてしまえば、自分が死刑となる。
 そんな厳しい掟があった。
 そう、俺がいた鞘嘉多家は、そんな厳しい掟があったのだ。


「一体どうしたんですか?」
「それがですね……今日の朝、蓮花お嬢様が誘拐されてしまったんです! 犯人は、確か……“鞘嘉多”と言ってましたね」

 幼い俺が彼女、蓮花(れんか)に振り回されてしまったことがきっかけで……。


「ちょっとそこの爺さん!! 私をどうするつもりなのよ!?」
「おやおや……お嬢ちゃんは、自分がどんな状況か分かっていないようですな。……我々鞘嘉多家後継者、鞘嘉多 東牙殿を引き連れたという罪で、公開処刑ならぬ公開死刑になろうと」
「!!」

「聞け貴様ら!! 俺は鞘嘉多の決まりを反対する!! そして俺は自分の名字を捨てて完全に鞘嘉多の縁を切る事にする!!」

 家との縁を切る事を決意した。

「ああもう!! じれったいわね!! この際、敵か味方かとっとと決めちゃいなさいよ!! せっかく東牙は覚悟決めて、ここに殴り込んでいるのよ!? あんたも覚悟くらい持ったら!?」
「……ふふ……わたくしとしたことが子供に説得されるとは思いもしませんでしたわ」

 ————そして、5年の歳月が経った。
 俺の視力は落ち、眼鏡をかけることとなったが、ここから、俺の復讐が始まる。

「(一体どうなっているんだ……北の都会街と言っていたが……ちっ、早いとこ解決しないとな……)」

「佐々凪(ささなぎ)殿!! 反対関係者が守りの姿勢に入りました!!」

「科門奥義第伍目『円斬刀(えんざんとう)』……!!」

「こんなんじゃぁ、東牙に顔見せられねぇよ……」

「世の中何が起こるか分からない……だから勝つまで絶対油断はするな。良いか?」

「佳恵……さん? もしかして佳恵さんですか!?」

「その声、私が忘れるはずありません……東牙……東牙—!!」

「……ふんっ、さすがだな、鞘嘉多四天王の1人……」

「もう少し違う形で出会っていれば仲良くできたのにな……」

「四天王だから? 四天王だからという理由で、東牙は人を平気で殺すのですか!?」

「おい、指示が出てないのに、長距離狙撃銃を撃つ馬鹿がどこ居る?」

「み、見たのか……私の体を……」

「おっ……これはなかなかの味……」

「だろ? この味を分かってくれる人が居て俺は嬉しい」

「……すまなかった……まさか東牙がその……そういう人だと知らず……そして私を敵としていたなんて……」

「(ちっ……動け……動けよな……)」


「そこにいるのは誰だ……」
 —————————————————————チリリン。


 オリエンタルな東方風世界を舞台に、刀と魔法が彼らの運命を斬り開く!!
 剣戟あふれる復讐劇の先に、辿りつく未来とは……。
    【復讐 5年の歳月を経て……】
 現在、複雑・ファジースレッドにて、好評連載中!

「あ〜あ……自分も警視みたいに綺麗で家庭的な人欲しいですよ〜〜」
「そんなもん俺に相談すんな……自分の花嫁くらい自分で探せ……」

————————————————————————


         宣伝文章終了。


・読者様
 ステッドラーさん(【★】アーマード・フェアリーズ【★】を執筆している方です。)
 琴月さん(*鏡花水月に蝶は舞う*を執筆している方です。)
 龍宮ココロさん(白ずきんちゃんと。〜ワンダーランドの住人童話〜を執筆している方です。)
           (同時に、ゴッド・コードウルフ。という小説も執筆している方です。)
 水瀬 うららさん(Quiet Down!!を執筆している方です。)
 長月さん(神王サマは15歳!を執筆している方です。)

・絵を書いてくれた方々
 しかやんさん(美しい、柊 樅霞さんを描いてくれました!ありがとうございます!)

・評価をしてくれた方々
 緑月華さん(評価ありがとうございます!そして、蓮花を好きと言ってくれて、嬉しいです。)
 水瀬 うららさん(とても詳しい評価、感想をありがとうございます!私からは感謝の2文字しか出てきません!)

・鑑定をしてくれた方々 
 秋原かざやさん(非常に丁寧な鑑定、ありがとうございます!私の弱点を教えてくれて、本当に嬉しいです。)

・宣伝をしてくれた方々
 秋原かざやさん(とてもドキドキするような宣伝、ありがとうございます!そして、楓のことを好きと言ってくれて、嬉しいです!)

壱目 出会いと別れ
>>1 >>2 >>3 >>4 >>5 >>6 >>7
>>8 >>9 >>10 >>11

弐目 再開、そして別れ
>>12 >>13 >>14 >>15 >>16 >>17 
>>18 >>19 >>20

参目 新たな仲間と敵
>>21 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26
>>27 >>28

四目 裏切り裏切られ
>>29 >>30 >>31 >>32 >>33 >>34
>>35 >>36

伍目 城内戦争
>>37 >>38 >>39 >>40 >>41 >>42

六目 巫女と鈴と刀と……
>>43 >>44  >>45

七目 衝撃の事実
>>46 >>47 >>48 >>49 >>55

八目 過去よりも今
>>58 >>59 >>60

九目 雪月花解禁
>>64 >>66 >>71 >>72 >>73 >>79
>>80 >>81 >>83 >>84 >>85 >>86
>>87

拾目 活動、反省、計画
>>90 >>94 >>95 >>96 >>97 >>98
>>99 >>106

拾壱目 柊樅霞の呟き
>>107 >>108 >>109 >>112 >>113 >>114
>>115

拾弐目 それぞれの思惑
>>116 >>121 >>124 >>125 >>126

拾参目 城外大戦争
>>128 >>131 >>133 >>137

Re: 復讐 5年の歳月を経て…   タイトル変更しました。 ( No.43 )
日時: 2011/07/28 14:57
名前: コーダ (ID: n/BgqmGu)

           〜六目 巫女と鈴と刀と……〜


「失礼〜。東牙お粥持って来たわよ?」

 部屋をガチャリと開けたのは、お粥を持ってきた蓮花だった。
 東牙はベッドで本を読みながら「すまないな蓮花。」と、パタリと閉じてお粥をもらった。

「あんたって、暇なときほど本を読むわよね……本当、昔から変わらないね〜。」
「本を読むと心が落ち着くからな……お前も読んでみると良い……てか、読め……。」

 部屋で2人は楽しく会話をしていた。
 東牙の傷はとりあえず、徐々に治っていったが、楓の方は未だに治っていないという。

「あれから2日が経つ……あっちもそれなりの対策をしているだろうな。」
「ふ〜ん……でも、あんたならどんな対策をされても、すんなり行きそうよね。」

 蓮花は笑いながら東牙を見て言った。
 すると「俺はそこまで頭が回るような奴ではない……。」と、お粥を食べて否定したという。

「でも私より頭は回るでしょ?」
「そりゃそうだ……本を嫌う蓮花とは違うのでな。」

 この返答によって、蓮花はむっとした顔になり「それは認めるけど、あんただって私に勝てないことはあるのよ?」と、なぜか対抗をしてきたという。

「まぁな……俺に家事は全くできん……そこは認めるよ。」

 気が付いたらお互いを認め合っていた2人。
 5年間も、いつもこんな会話しているんだから、とても笑える。

「さて、楽しい話をそこまでにして……あんた今まで何やってきたのよ?」
「……それはいままでの経緯を話せと解釈する。」

 東牙は木葉家を抜け出して、いままでの行動をある程度偽りなく簡潔に話した。
 九寺を殺したことも、楓を助けたことも、佳恵にビンタされたことも、あの謎の巫女に会ったことも、だがさすがに、楓と一緒に寝たことは言わなかったらしい。

「……そう、けっこうやらかしてるわね……でも良かった。東牙が本当に復讐のために動いてるんじゃないって分かって。」

 蓮花からは、いままで東牙を心配していたということが、分かるセリフが出てきた。
 復讐のために戦うだけの、東牙になっていなくて良かったという安心感が、彼女の顔に現れていた。

「実は私が巨乳女と捕まっているときに、ちょっと東牙の事を聞いたのよね……まさか四天王の1人を殺したなんて、思いもしなかったから、あの時はびっくりしたわ。だけどあの楓っていう子も四天王なんでしょ?でも東牙は生かした……それって完璧に、復讐のためには動いていないことになるでしょ?だから安心したの。」

 蓮花はもしかして、ずっと東牙の事を誰よりも心配しているのだろうと思われるセリフを呟く。
 すると「だが俺にはまだ、復讐をするという心はあるもしかするとまた……。」と、意味深な言葉を呟いた。だけど蓮花は。

「はいはい。あんたは本当に世話が焼けるわね……その時になったら私が全力で止めてあげるわよ!」

 この雰囲気を無視する、まさかの言葉に東牙は、思わず拍子抜けをしてしまって「やはり蓮花らしい。」と、少々笑って言った。

「失礼しますわ東牙、怪我の方は大丈夫でしょうか?」

 コンコンとノックが聴こえて、ガチャリと佳恵は2人の部屋に入ってきた。
 すると「あの楓っている子はどうだったの?」と、蓮花がどういう状況なのかを聞いてきた。

「残念ですけどやはり一言も喋らず、ずっと頭を下げていましたわ……あれでは城には行けません。」
「そっか……少しでも多い方が良かったけど、仕方ないよね……。」

 2人は楓のことを、とても心配していたのに、東牙はただ黙って、ずっと何かを考えていたという。

「せっかく弄りがいのある人ですのに……。」
「いやいや……それはちょっとおかしいわよ!」

 そして最後は脱線する2人の会話。
 最初はきちんと心配していたのが嘘のように。
 だけど東牙「こんなんでもちゃんと、蓮花と佳恵さんは心配しているんだよな……。」と、心の中で感心をしていたという。


                ○


「さぁてぇ……これからどうするぅ?鉈崎ぃ……。」
「どうするもなにも東牙をどうにかするしかねぇって……。」

 城の廊下で、2人は例のごとく話をしていた。
 城に居る関係者曰く、このツーショットは飽きたという話が広まっているらしい。

「だけどよぉ……俺思ったんだぁ……あいつらは強えぇ……今度来たら間違いなくやられるぜぇ?」
「そんな馬鹿な話があるか、いままでの出来事を振り返ってみろ……。」

 橋鍍の言葉に、諺瑚は少し納得いかなかったのか、少々ガラの悪い声で言った。
 しかし「鉈崎は分かってねぇなぁ……何も力があれば強えぇって事じゃねぇんだよ……俺はただあいつらの“気持ち”が強えぇって、思っているんだよぉ。」、とこちらも負けないくらいガラを悪くして言った。

「けっ……お前の言う事はたまに分けわからないぜ……。」

 諺瑚は先程の言葉を聞いて、少々腑に落ちない感じで、白旗をあげそのまま黙って歩き始めた。

「どこに行くぅ鉈崎ぃ?」

 橋鍍は問いかけるが、ただ「弾の改造だ。」という、返答しか来なかったという。

「……ん?なんだぁ……。」

 橋鍍は突然、自分の通信機が鳴っていることに、気付くが、全く慌てずにでたという。

「どうしたぁ姫狗ぅ?……ん?おおぉ!そうかぁ!……よくやったぜぇ……とりあえず俺はぁ、まだ城に居るからよぉ……ゆっくりぃ向かってくれぇ……じゃあな……。」

 どうやら通信機の先は、もう1人の四天王だったらしく、その連絡に橋鍍は嬉しくなったという。
 そして通信機を切っては「さぁてぇ……東牙をどうにかしたらまたぁ仕事だぜぇ……。」と、呟きそのまま歩きだしたという。

Re: 復讐 5年の歳月を経て… ( No.44 )
日時: 2011/07/28 15:06
名前: コーダ (ID: n/BgqmGu)

「ん?……おかしいな……。」

 東牙は、首にかけてある鈴を見て、眉間にしわを寄せて考えていた。
 そう、なぜかあの時刀を手に入れてから、1回も鳴らなくなっており、いくら振っても音は出なかったのだ。

「もしかして壊したか?」

 そして東牙は、あの時の巫女を思い出し、心の中でこれはやばいと、焦りを感じ始めたという。

「確か蓮花と佳恵さんは、買い物に行ったな……。」

 東牙はこの宿に、2人が買い物で居ないことに気づき、急いでベッドから出て、少々乱暴に扉を開け、急いであるところに向かったという。
 まだ傷は完治していないため、下手したら悪化する可能性があるのに、この男は全くそんなことを考えず、城下町を出た。


                ○


「確かこのあたりのはず……。」

 東牙はうろ覚えの、頭の地図で林を歩いていた。
 そろそろ空が、茜色に染まる時間帯なので、早いとこ見つけたかったらしい。
 そしてようやく男は、この前偶々お世話になった、あの神社の目の前に来た。
 やはり神秘的で、独特な雰囲気を醸し出す場所。
 東牙は「こうやってゆっくり見ると、良い場所かもな……。」と呟き、赤い鳥居をくぐって、そのまま神社の中へ入っていった。
 しかし神社に入っても、人の気配は微塵もせず、聴こえてくるのは、少し死ぬのが遅すぎたセミの鳴き声か、少し早いコオロギの鳴き声みたいな虫の鳴き声しか耳に入らなかった。
 東牙は思い切って「樅霞?居るのか?」と、神社に声が響くように言った。
 だが、樅霞がここに来る気配は、全く感じなかった。
 ここまで来ると、不在の可能性が高いのに、東牙の心はなぜか「絶対に居る。」という、変な自信を持っていた。
 いや、心が勝手にそうさせたと、言った方が良いだろう。

「……全ての部屋を探そう。」

 東牙にしては、とても珍しい粘り強さ。
 いつもなら、すぐに帰って後日訪れるのに、今日に限っては諦めきれなかったという。
 神社の居間。
 線香の臭いがきつい部屋。
 おそらく樅霞が寝ているだろうという部屋。
 本当に全て探し、最後は仏壇の部屋に入った。

「ここは……なにやら他と、明らかに雰囲気が違う……。」

 他の部屋も、かなり線香の臭いはきつかったが、ここだけは格別にきつかったという。
 だがそれを忘れさせてくれるくらい、異様な雰囲気。
 チリン、鳴らなくなった鈴が突然鳴り響き、東牙はとても慌てて首の鈴を凝視した。
 とりあえず壊れていないと確認した東牙は、次に仏壇を凝視する。
 すると仏壇に、1枚の紙が乗っていることに気が付き、気づいた時には無意識にそれを手に取り読んでいた。
 まるで、誰かに操られているように。

           柊の神社に授かる刀
          常に神社で待っている刀
           時には旅に出る刀
          主を見つけられず帰る刀
           それを制御する鈴
           刀と鈴は親子の関係
          そして刀と鈴は巫女の子
          決して離されない関係
           この3つがある限り
           柊の神社はずっと
           建ち続けるだろう

 紙に書いている文字を全て読み、そのまま何事もなかったかのように仏壇に戻した東牙。
 すると不意に「生きて帰ってきたか東牙……だが勝手に、私の神社に入るのは少々どうかと思うが?」と、声が聴こえてきた。
 慌てて後ろを振り向いて東牙が見たものは、腕組をしながら仁王立ちしている樅霞だった。
 これには口答えしない方がよい、と判断した東牙は、すっとその場で正座をして顔を下げたという。

「ほう……悪いと思ったらその場に正座か……面白い、今回は許してあげようじゃないか……。」

 腕組を解き、メガネをカチャッと上げて、樅霞は不法侵入した東牙を許したという。
 これには思わず「良いのか……。」と、口で呟き突っ込んだという。

「前よりも迷いがなくなっているな……やはり鈴を与えておいて正解だった。」

 樅霞は東牙の顔だけを見て、前よりもマシになっていると呟いた。
 そして正座している東牙の後ろに回り、そのまま「鈴を返してもらう。」と言って、首にかかっている鈴を外してすぐに自分の首にかけた。
 チリン、樅霞が付けた途端、鈴は音を鳴らした。
 まるで御主人の元に帰れて、嬉しい気持ちを表すかのように。

「なんで俺に鈴を預けたんだ?」

 東牙はその場に立ち、すっと後ろを振り向いて、少々疑問に思ったことを樅霞に言った。
 すると「簡単だ。東牙が常に平常心を保てるように渡しただけだ。」と、目を吊り上げて理由を答えた。
 だがこの男は「はたしてそれだけか?他にも理由があるんじゃないのか?」と、さらに問い詰める。
 しかし樅霞は、表情を変えず「他に理由と?私にはそれしか理由はない。」と、本当にそれしかないように思わせた。

「……そうか、すまない深く問い詰めて。」

 東牙は素直に、疑い深い事をして悪いと思い樅霞に謝った。
 そしてこの男は少し歩き、樅霞を完全に無視した状態で「そういえばあの時見つけた刀かなり綺麗だったな……。」と、斜め45度上を見ながら呟いた。
 すると、それを聴いた樅霞は、途端に東牙の目の前へ回り込み、そのまま胸ぐらをつかみ「それはどういうことだ?」と、声を低くして詳細を聞き出そうとした。
 だが東牙はにやっとして「どうした?俺はただ“刀”と言ったけであって決して“その鈴”で見つけた刀とは言ってないが?」と、樅霞に言った。

「な……くっ、カマをかけたか東牙……。」

 樅霞は東牙の胸ぐらを離した。
 これで、鈴を持たせた本当の理由を聞けた東牙は「まぁ、座ってお茶でも飲みながら話すか?」と、先程までの雰囲気をなくして巫女に言ったという。

Re: 復讐 5年の歳月を経て… ( No.45 )
日時: 2011/07/28 15:12
名前: コーダ (ID: n/BgqmGu)

「俺に鈴を持たせた理由は、この神社にある刀を見つけ出すために……だろ?」

 パリッと煎餅を1口かじって、東牙は樅霞にこう言った。
 もちろん「そうだ。東牙の言う通りだ。」と、素直に認めたという。

「あの仏壇に書いている紙の内容から、少し考えれば導き出せる……その鈴は刀を見つけ出すためにある……だろ?」
「まさかあの紙で、そこまでの情報を得るとは……さすがだな……完敗だ東牙。やはり私の目は正しかったよ。」

 樅霞はなにやら、東牙を試したのでは?と感じとれる発言をする。
 もちろんこの言葉に東牙は「俺は実験台か……。」と、お茶をぐいっと飲み不満に思っていたという。

「すまない、なにせ大事な刀だからな……。」

 樅霞は、東牙の湯飲みにお茶を注ぎ謝罪した。
 この言葉に異様を感じ「ん?その鈴は柊の刀しか反応しないのか?」と、質問をした。
 すると「そうだ、この鈴は私の柊神社に代々ある刀しか反応せず他の刀には一切反応を示さない。」と、お茶を啜りながら言った。

「……おい、もしかしてその鈴って……。」

 東牙はとても嫌な予感がした。
 そして予想通り「恥ずかしながらこの鈴はこの神社にある刀が紛失したときに使われる物だ……。」と、樅霞はこめかみを触りながら言った。

「………………。」

 東牙はそのまま、ピタリと止まり絶句していた。
 樅霞もただ黙ってお茶を啜ることしかできなかったという。


                ○


「あ—!あいつどこ行ったのかしら!?」

 一方宿屋では、少女が部屋に1人居ないことに気が付き、叫んでいたという。

「あらあら……どうしたのでしょうかそんなに声を出し……東牙?……えっ?……どこに言ったのでしょうか!?」

 遅れて佳恵も現れたが、反応は蓮花と同じく東牙が失踪したことに驚いていた。

「あの馬鹿……傷口は完治するまで動かないでと、あれほど言ったのに……良い度胸しているじゃない……。」

 気がつくと蓮花は杖を持っており、魔力も解き放っていたという。
 佳恵も「帰ってきたらどうします?」と、イジワルな顔をして蓮花に言った。

「ふふ……もちろん罰に決まっているじゃない……決まり事を守らない人は、問答無用で裁判官から……うふふふ……。」

 いつもと雰囲気が全く違う蓮花に、佳恵は少々恐れを感じたという。
 だが考え方を変えると、蓮花は東牙のことを本当に大切にしているんだな。ということが感じ取れた。

「裁判官、わたくしに指示を下さい……。」
「とりあえず、ナスをいっぱい買ってくるのよ……ふふ。」

 そして、しばらく2人の猿芝居が続いたという。


                ○


「ということは、城で見つけた刀は柊神社のか?」
「ああ、この前ごろつき共が勝手に私の神社に入っては、1本刀を盗んでいってな……しかも、翌日になったら、そのごろつき共があの城に捕まったと聞いた……だから取りかえそうにも、取り返せなかったんだ。」

 樅霞はメガネをカチャッと上げて、どうして城に刀があったのかを言った。
 意外にもおっちょこちょいな無くし方に、東牙は「樅霞は見かけによらず抜けてるんだな……。」と、思わず声に出して言った。

「あの時は偶々滝に打たれていてな……。」
「まぁ、理由はともあれ盗まれたことは事実なんだ……そこは素直に認めておけ……。」

 言い訳する樅霞に、東牙は一言で王手をかけた。
 もちろん巫女は、参りましたと言わんばかりに、頭を下げたという。

「だけど刀は宿に置いていったからな……。」
「いや良い……落ち着いたらまたこの神社に来て、私に渡してくれれば……まだやることがあるのだろう?」

 樅霞は東牙の事を考えて、この言葉を言ったのだろう。
 すると「良いのか?俺の刀の扱いは少々荒いから、傷がついた状態で返ってくるぞ?」と、一応警告した。
 だが樅霞はメガネをカチャッと上げて「大丈夫だ、“月刀(げっとう)”はそう簡単に傷はつかない……むしろ東牙のように使う人にはピッタリな刀だ。」と、笑いながら東牙に告げた。

「月刀……あの刀の名前か……良い響きだ。」
「柊神社の次男坊を、しばらくよろしく頼む。」

 東牙はこの言葉を聞いた瞬間「ん?次男坊?」と、疑問を問いかけた。
 すると「ああ、月刀は次男坊だ……この神社には後、長男坊と三男坊が静かに眠っている。」と、まだ刀があることを教えてくれたという。

「是非ともこの目で、長男坊と三男坊を見たいのだが……さすがに無理なんだろう?」
「もちろんだ……むやみに外へ出したくはない……。」

 樅霞はもう2本の刀は、見せられないと断言する。
 当たり前と言えば当たり前だな。と、東牙は心の中で呟いた。

「さて……時間もあれだしそろそろ失礼する。」
「そうか……次に来るときは東牙1人じゃなくて、誰か彼か連れてきて欲しい……それでは頑張ってくれ。」

 東牙は軽い会釈をして、そのまま神社を後にした。
 気がつくと、空はもうすぐ夜を迎えるところだったので、急いで宿屋に向かったという。
 なお、その後東牙は、蓮花と佳恵にこっぴどく叱られたのは言うまでもない。

Re: 復讐 5年の歳月を経て… ( No.46 )
日時: 2011/06/21 23:33
名前: コーダ (ID: UXIe.98c)

           〜七目 衝撃の事実〜


「楓さん?私たちはこれからあの城に向かいます。」


 佳恵は楓が居る部屋でこれから城に行くという事を知らせた。

 だけどまだ精神的ダメージが大きいのか顔を下げて一言も喋らなかったという。


「そろそろ行きますけど……最後にこれだけは言いたい事とかありますか?」


 佳恵は最後に楓の言葉を聞きたかったという。

 すると顔を少し上げてぶつぶつと何かを呟いたという。

 もちろん佳恵は一言一句聞き逃さず一瞬のうちに頭の中に入れた。


「ではそのように伝えておきますわ……あっ、私からも一言いいでしょうか?……楓さんのその獣目。東牙は好きと言っていましたわ。」


 なぜかイジワルそうに佳恵は最後の言葉を言ってガチャリとそのまま部屋から出て行った。

 だが楓はまた無言になって色々と心の中で考えていたという。


                ○


「さて……行くとするか。」


 宿屋のエントランスで東牙は腰にかけてある月刀を見ながら蓮花と佳恵に言った。


「所であんたは楓の部屋に入って何をしてたのかしら?」

「うふふ……ちょっと乙女の秘密話ですわ。」


 佳恵の言葉に蓮花は「ふ〜ん。」とだけ呟いたが実は脳内ではとても気にしているようだ。

 すると佳恵は東牙の傍により耳元で何かぶつぶつと言った。


「そうか……楓……。」


 佳恵の言葉に東牙の目を一気にキリッとした。

 どうやら先程の言葉で何かを決心したようだ。


「ふふ…もう死ぬのは許されませんわよ?」

「分かってるよ佳恵さん……よし、行くぞ……!」


 東牙の掛け声に続き蓮花と佳恵は動いた。


                ○


「ここ何日か東牙が現れてないようですね……。」

「どうせもう諦めたんだろぉ?」

「橋鍍……お前は甘い……東牙がそう簡単に諦める男に見えるのか?」


 城の最上階で夜尭と橋鍍それに諺瑚が話をしていた。

 ここしばらく東牙が城の来なくなって少々怪しいと思った夜尭は2人を急遽ここに呼び作戦をたてようとしたらしい。

 橋鍍はたてるだけ無駄という意見に対して諺瑚は厳重にたてた方が良いという意見だった。


「1回目と2回目では被害が全く違う。次はもっとこちらに被害が来ると思いますよ橋鍍?」

「ちっ……わぁったよ……勝手にしやがれぇ……俺は好きにやらせてもらうからなぁ!!」

「ったく橋鍍は……ん?失礼……こちら鉈崎どうした?……何!?東牙達が第2門を通っただとぉ!?了解、すぐにそちらに向かう……。」


 諺瑚は突然の通信にちょっと焦りながらでた。

 そしていきなり隊員から東牙が来たという連絡を受けると乱暴に通信機を切って「だとよ橋鍍……。」と言ってそのまま走って部屋から出て行った。


「そろそろぉ……あいつらにピリオドを打たせないとなぁ……くっくっく……。」


 橋鍍は魔道書を持ちいきなり魔力を出し始めそのまま諺瑚の後を追った。

 気がつくと1人になっていた夜尭はただ黙っていたという。

Re: 復讐 5年の歳月を経て… ( No.47 )
日時: 2011/06/21 23:36
名前: コーダ (ID: UXIe.98c)



「ったく……こんな簡単に入れてしまうと逆に緊張感がなくなる……。」

「東牙?もう右腕は大丈夫なのでしょうか?」


 3人は警備員をいとも簡単に退いて城のエントランスで会話をしていたという。

 佳恵はいままでの戦闘で東牙が利き腕で刀を振っていた事に気が付き思わず心配をしたという。

 すると「そんなこと気にしていたらいつまで経っても勝負に終止符をつけれないぞ佳恵さん?」と東牙は若干忠告を無視したという。


「でもそれで何かあったら楓に顔を見せられないわよ?」

「……そうか。」


 蓮花のツッコミは意外にも東牙の心に来たのか素直に無茶をしないと思ったらしい。


「うふふ……それでこそ私の知る東牙ですわ……。」


 佳恵はニッコリ笑いながら東牙に言った。

 すると「ま、まぁな……人が悲しくなることはできるだけ避けたいし……。」と少々照れながら言ったという。


「あら〜?東牙からそんな言葉が出てくるなんてね……ちょっと見なおしたわ。」

「まるで俺がいつも人のことを考えていないような言い方だな……。」


 こんなこと言っている東牙だが内心はとても嬉しかったという。

 最初は復讐のことしか考えておらず人のことは二の次だったのにだんだん人のために行動できるようになってきた心の変化に蓮花は「ふふ……東牙も変わってきたわね……ちょっと嬉しいかも。」と心の中で呟いていた。

 しかし、まだまだ安心はできないという事も心の奥底で呟いていた。


「さて……行くぞ……!!」


 東牙が気合いを入れて2人に言った瞬間。


 ———————————————————————バンッ。

 ギャラリーから銃声が聞こえたという。

 そして左上のギャラリーから「待っていたぜ……東牙。」と銃を突きつけながら諺瑚の姿が見えた。

 東牙は「ふんっ……俺もお前を待っていた……今日こそ決着をつけさせてもらう……!」とそのまま蓮花と佳恵を置いていき階段を上って諺瑚が居るギャラリーに向かった。


「ったく……ちょっと熱くなると目の前のことしか見えないのは相変わらずね……。」

「私たちも行きましょう……。」


 蓮花はやれやれと両手をあげて言った。

 そして佳恵と共に東牙の後を追った瞬間。

 ———————「くっくっく……俺を忘れては困るぜぇ……。」

 諺瑚が居る反対側のギャラリーか黒い男が現れた。


「橋鍍……ようやく来たか……。」

「悪いねぇ……ちょっと遅れてよぉ……だけどそこの女2人は任せなぁ!」


 諺瑚はその言葉を聞くと「……すまない、そちらは任せた。」と言ってそのまま走ってどこかに言ってしまった。

 東牙は「おい……待て……。」と諺瑚の後を追った。

 蓮花と佳恵も行こうとするものの「おいぃ……言っただろぉ?お前らの相手はぁ俺だってよぉ……。」と橋鍍は呪文を唱えて2人の目の前に闇のような壁が現れたという。

 さすがに行く手を塞がれてしまっては戦うしかないと思った2人はそのまま振り向き戦闘態勢に入った。


「東牙が心配なら俺を早く倒しやがれぇ……まぁ、倒せるかどうか知らねぇけどなぁ……。」

「言われなくともそうしますわ……それに私はちょっとあなたの事が気になるのですわ……。」


 ここで前に出たのは佳恵だった。

 あの時会ってからずっと気になっていた事を知るチャンスでもあったからだ。


「なにがなんだかわからねぇが……姉ちゃん俺に惚れたかぁ?」

「……そう意味ではありませんわ。私はあなたの人間とは思えない雰囲気が気になっているだけですわ……。」


 あの佳恵が珍しく前に出ていくのはそうそうないそれほど橋鍍という男が気になっている証拠だろう。

 蓮花は「ふふふ……この場はあんたに任せようかしら?」と冗談半分に言ったが「すみません……ありがとうございます……。」となぜかお礼を言われてしまったのだ。意外な反応が返ってきて蓮花は「なるほど……これは邪魔しちゃダメね……。」と心の中で呟いたという。


「伊達に用心棒をやっていないようだなぁ……くっくっく……俺が人間にはない雰囲気ぃ?そりゃそうだぁ……だけどよぉ……そう簡単には教えてやれないぜぇ……。」


 橋鍍は不気味に笑っては魔道書をパラパラめくりあるページに書いている呪文を唱えた。

 すると橋鍍の足元からは十角形の魔法陣が現れそこから不気味な闇がエントランス全体を包んだという。

 禍々しい空気に思わず気分が悪くなってしまう感じだった。


「なるほど……あなたは闇の魔法を専門に使う魔道士……弱い光では決して消せない闇……そもそも闇魔法使いは赤紅最高裁判所が超危険魔道士としてマークしているのよね。」


 蓮花はこの禍々しい空気で橋鍍がどんな魔法を使うかを1発で判断した。

 だけど佳恵は全く怯みもせずそのまま橋鍍が居るギャラリーまで走ってそのまま懐に入り刀を振った。

 ————————————————————————シャキン。

 刀を見事に橋鍍の体を斜めに斬り致命的な一撃をお見舞したが「くっくっく……甘いねぇ……。」となぜか橋鍍は笑って佳恵を見た。

 斬られた場所からは一切血は出ず出たのはおぞましい闇だけ。

 この瞬間佳恵は少し後ずさりをして様子を見ていた。


「あなたは……一体何者でしょうか……。」


 刀を両手で持ち佳恵は橋鍍に何者かを聞いた。

 すると「くっくっく……なら答えてるよぉ……俺はなぁ……1回この世から死んだけど未練が多すぎて成仏できなかった男だぁ……。」と言った。

 これを聞いた蓮花は「ふふふ……なるほどね……言い方を変えるとあなたは人間を捨てて死魔道士(リッチ)になったってことね……これは本気で危ないわ……。」といつもより目つきを鋭くして橋鍍の正体を呟く。

 そして「油断しない方が良いわよ巨乳女……こいつ本気だしたらすぐに地獄行きパスを貰えるわよ……。」と佳恵に警告する。


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