複雑・ファジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

桔梗ちゃんの不思議な日常。【参照1600突破!!】
日時: 2013/09/15 06:44
名前: 藍永智子 −アイナガサトコ− (ID: 1SopHnrT)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=12509

 初めまして。藍永と申します。
 なにぶん慣れない自身初の小説なので間違っていたり、つまらなかったり、辻褄合わなかったり…と色々あるかもしれません。これより先に進まれる場合は、それを踏まえたうえでお願い致します。
 感想、アドバイス等々、お待ちしてます! キャラ絵描いて下さる方もいらっしゃれば是非! 気になったことがあればどんどん突っ込んでください。コメント頂ければ嬉し過ぎて舞い上がりますww
 コメント頂ければ、返しにも参ります。
 
                     

【キャラクター紹介】  >>44 >>61

【キャラクター挿絵】  >>93>>112(月森和葉様より) >>151(火矢 八重様より)new!


【第一章】一人の少女は閉ざしていた心を開く気になり、
 一話、少女と化け物  >>02 >>04  
 二話、少女と偽り   >>08 >>10 >>11 >>14 >>16
 三話、少女と陰陽師  >>19 >>21 >>24 >>26 >>28
 四話、少女と少年   >>30 >>31 >>33

【第二章】一つの一族は大きな事件を予感し、
 一話、月輪と事件   >>34 >>35 
 二話、月輪と頑固娘  >>36

【第三章】二人の双子は護るべき人を見つけ、
 一話、星宮と異変   >>39 >>40 >>47
 二話、星宮と仮面少女 >>48 >>51
 三話、星宮と裏表会議 >>52 >>55 >>56
 四話、星宮と悪戯少年 >>68 >>71 >>74 >>77
 五話、星宮と根暗怪物 >>78 >>79 >>80 >>81
 六話、星宮と特別任務 >>85 >>88 >>90

【第四章】一人の少女は闘うべき理由に気付き、
 一話、彩蓮と特派員  >>91 >>92 >>100 >>101 >>105
 二話、彩蓮と警戒道中 >>115 >>116 >>119 >>120 >>125
 三話、彩蓮と式神夜伽 >>126 >>133 >>136 >>139 
 四話、彩蓮と寝坊助娘 >>143 >>148
 五話、彩蓮と静寂懐古 >>149 >>155 >>156

【ちょっとだけ雑談会】 
 「年明けまして、命も懸けて」>>82 (出演 彩蓮桔梗、星宮あやめ、+α)
 「参照1000突破記念座談会」 >>111 (出演 彩蓮桔梗、星宮あやめ、星宮しょうぶ、+α)

 ◇◆コメントをくださったお客様方◆◇
 ・火矢 八重様
 ・ゆぅ様
 ・杏里様
 ・小梅様
 ・碧眼金髪ショートケーキ様(とある少女A、奇妙不可解摩訶不思議)
 ・リア様
 ・古城アサヒ様
 ・森沢 美希様

 ◇◆オリキャラを提供してくださった方々/オリキャラ◆◇
 ・火矢 八重様/星宮菖蒲ほしみやあやめ星宮菖蒲ほしみやしょうぶ 、月草雫つきくさしずく三郎さぶろう             
 ・杏里様/りゅう
 ・リア様/安城有理あんじょうゆうり

 ◇◆絵を描いて下さった方/キャラクター◆◇
 ・月森和葉様/彩蓮桔梗、星宮あやめ、月輪燐音
 
 ◇◆注意書き◆◇
 ・途中で急にトリップが付き始めましたが、それは作者がその時点でトリップの存在を知った為です。
 ・このお話はもともとコメディ・ライト版に掲載させていただいておりました。
  (なぜ移転したのかって? …「これコメディ・ライトじゃないなww」と思ったからです)
 ・書きはじめに色々と失敗して一話目だけ目次に入れることが出来ていません。読んでいただけるのであれば、↓の部分にまず目を通して下さいませ…m(‐-)m

                 *

【少女と化け物】

 雪のように真っ白な帽子に、真っ白なマフラー。真っ白なワンピースに真っ白な靴。そして何より、透き通るようなその白い肌。
 そんな一風変わった格好の少女は周りの目を気にしていないようで、何度も通行人にぶつかりながら、必死に街を駆けていた。
 普通より一回りは細い、その棒のような腕を一生懸命に振り、他の人には見えない「何か」から必死に逃げているその光景は、何とも異様で、恐ろしいものだった。
 そうして街の繁華街を抜け出すと、目に涙を浮かべ、怯えながら必死に逃げていた先程までの様子からは想像も出来ないような、自信に満ちた表情で振り返り、その場で「何か」が来るのを待った。
 ……すると数秒後、辺りに生暖かい風が流れ始めたのを合図に、それはやってきた。
 静電気でも起きたかのように、皮膚にピリッと霊気が走る。
「……来た」
 次の瞬間、それは姿を現した。
 お世辞にも人の姿をしている、とはいえないくらい哀れな形のそれは、あまりにも長い年月を生き過ぎたために、皮膚は、黒々と不気味なひかりを放ち、一部に至っては腐り落ちて、何ともいえないにおいを撒き散らしている。
 聞き取るのも困難な呻き声を漏らしながら、一歩、また一歩と弱々しい足取りで少女の方に歩み寄ってきた。

「ふうん、こっちに来ちゃうんだ」

 いつの間にか、少女の手には立派な日本刀が握られていた。
 にやり、と不敵に微笑む。


「あなた、逝っちゃうけど……それでも良いの?」


 グオオオオと叫びながらそれが突進してきて、あっという間に少女は引き裂かれてしまった——ように見えた。


「さっさと成仏しなさい! この悪霊!」


 そう言い終えた時、少女は、悪霊の向こう側に刀を振り下ろした形でしゃがみこんでいた。

Re: 桔梗ちゃんの不思議な日常。 ( No.88 )
日時: 2013/01/18 21:15
名前: 藍永智子 (ID: qZXNCSUo)

 ——「三十分くらい前」、会議はいよいよ山場を迎えようとしていた。

                *

 皆の顔色を窺うようにしながら——事実誤認があってはならないため慎重に——宗匠は話を少しずつ進めていった。
「まず、これまでに出された意見からして……桔梗さんを襲っているのは——自分たちが使役している妖怪に襲わせているのは『ハチ』であると断定する。これについて何か反論や質問等があれば受け付けるが、どうだ?」
 全員が一斉に頷く。
 誰一人としてその動作には一切躊躇がなく、その為に、この意見の信憑性はより一層増した。
「それならば、今回決めるべきことは大きく分けて二つある。彼女の身辺警護とここら一体の防衛に関する分担だ。……とは言ったものの、星宮さん方にはほとんど勢力が残っていないようだから、ウチからの割り当てが主になるのだろうがな」
 最後の方は苦笑を交えながらだった。
 あやめはその気遣いに感謝しつつ、折角なのでその提案に甘えさせてもらうことにする。現時点での星宮の勢力が限りなく零に近い、ということは事実だったし自分でも理解しているつもりだったのだが、改めて他の人の口から聞かされると、如何に一代で星宮を衰退させてしまったのか、という責任を突き付けられたような気にさせられた。
 内心むくれていると、宗匠はそんなあやめの心を読んだかのように言う。
「あなたを責めたつもりではなかったのだが……まあ、そう受け取られても仕方がないような話し方をしてしまったな。だが、決して私はあなたを責めようと思っている訳じゃないから安心してくれ」
 分かりやすいフォローだったが、それでもあやめは素直に嬉しかった。
 たとえそれが、幼さを盾にしている論理から来ているものだったのだとしても。
「……ありがとうございます。でもすみません。ウチに力が無いのは本当のことですから。——それでも、出来る事があれば何でも言ってください。私達の人数は少ないですけれど、それぞれが大きな力を持っていますから」
 淡々とした口調で言っているがために、その言葉から奢りなどは感じられない。
 それにあるのはただ、頼もしさだけだった。
「やる気があれば十分だ。そうだな、昼間に彼女の警護をやってほしいんだが、どうだね?」
 昼間であれば同じ学校に通っているあやめは、ずっと桔梗のそばにいても怪しまれない。
 そういう意味では、これはあやめにしかできない仕事だった。
 はい、と歯切れよく返事をして俯きかけていた顔を上げる。
「是非やらせてください!」
「こちらとしても、この仕事はあなたに引き受けてもらいたい。お願いします。君には弟のしょうぶ君がいるし、できれば彼にも手伝ってもらいたいのだが……」
「任せてください。普段はサボりまくりですけど、何とかして引っ張り出して見せますので、ご心配なく」
 あやめが少し茶化して言うと、宗匠は例によって大きな笑い声を立てながら答えた。

「それは実に頼もしい」

                     *

「それでは、あと一つ。ここら一帯の防衛シフトについてなんだが——」
 宗匠が言い切る前に、律子が口を挟んだ。
 ——その声の凛としていることといったらありゃしない。
「それは星宮さん方には負担が大き過ぎます。私達だけでやりましょう。それで十分だと思いますし」
「ああ、それは私も思っていたから安心してくれ。——それで良いな、あやめさん?」
 あやめにとってその提案は、実に受け入れがたいものだった。
 聞かれるや否や噛みつく。
「どうしてですか!? 確かに私達は学校にも行っているし、夜間も出るというのは大変です。そういうことを考慮してくれた結果なのかもしれませんが、納得できません。せめて、説明をお願いします!」
「言っていることが矛盾しているぞ、あやめさん。そしてあなた自身で言っている事が、私からの説明になり得る。——これで満足できるな」
「……っ!!」
「もうあれこれ駄々を捏ねるのは止めだ。これ以上迷惑をかけるのがあなたの望んだことか?」
「で、でも式を飛ばすことならできます!!」
 未だに食い下がろうとするあやめに、宗匠の視線は——隠そうともせず——冷酷なものになった。
「——いい加減にしろ。私は気が長い方だと自負しているが、あなたがこれ以上続けたいのであれば、私も黙ってはいられない」
 これまでとは打って変わって違う口調に、あやめは水でも掛けられたかのようにピシャリと我に返った。
 多少バツが悪く感じられるのは、今までのツケが回ってきたからだろう。
「……わがままばっかり言ってすみませんでした。続きをお願いします」
 素直な謝罪は聞き入れてもらえたようで、宗匠の口調も雰囲気も元の大らかなものに戻った。
「いや、私も言い過ぎた。……式を遠くに飛ばすのにはそれに見合うくらいの体力が必要になってくるし、時間も長くなれば長くなるほど負担は増していく一方だ。そのせいで昼間の襲撃を防げなかったら、あなたは悔やんでも悔やみきれない筈だ。それに学校には人がたくさんいるから、被害の大きさは計り知れない。——その万が一の想定を起こさせないためにも、あなたにはしっかりと休養をとってほしい」
 宗匠の説明はしっかりと筋が通ったものだったし、あやめは少しだけ納得しきれていなかった部分もそれで埋められた。
 ——と、ここで燐音からの皮肉が飛ぶ。久しく思えるのは何故だか。
「そう、これ以上何か文句つけてくるのは迷惑なの。それが分かってんだったら、それ以上わがまま言ってこっちの負担を大きくするのは止めて頂戴」
「……ごめんなさい」
「それも。あたし達は自分達のために闘うの。決してあんたらにお願いされたから、とかじゃないんだから勘違いしないでよ。今回はたまたまあんたらと標的が重なった、ってだけなんだから」
 口調こそは突っかかってくるように素っ気なかったが、あやめにはそれが彼女なりの慰めだと分かっていたから、とても微笑ましく思えたし、純粋に慰めの言葉として届いた。
「……ありがとう、りんちゃん」
 思わず口をついて出てきたのは、小さい頃に使っていた燐音の愛称だ。
「なっ!! 別に親しくしろなんて言ってないでしょ!?」
 今のあやめには、その燐音の噛みつくような口調さえも懐かしく、暖かく感じることができる。
 少し離れたところで呟いていたのは、二人よりも少しだけ年を取った雫だ。
 隣にいる三郎はというと……一体、今は幾つなんだか。
「青春だね〜」
「青春だな〜」
 全く持って、息がぴったりである。
 このつぶやきが聞こえたのか、雫の方を振り向いた宗匠は何かを思い出したらしく、その何かを思いついたときの少し間抜けな表情のまま雫に声をかけた。
「ああ、忘れるところだった。実は雫さんにおねがいしたいことがあるんだ」
「えっ!? あたしにですか?」
 驚いた様子の雫は、この後宗匠が言い放つ一言でもっと驚くことになる。

「——期間限定なのだが、とある私立高校に入学してほしいんだ」

 それを聞いた瞬間に雫はピタリと固まり、数秒後、






「うそぉ——————————————————————————————!!」





 その叫び声は、噂によると団地内を駆け巡り、はたまた星宮家でも聞こえたとか。

Re: 桔梗ちゃんの不思議な日常。【本編とは関係無いけど…】 ( No.89 )
日時: 2013/01/18 21:21
名前: 藍永智子 ◆uv1Jg5Qw7Q (ID: qZXNCSUo)

今晩は、久しぶりにひょっこりと現れた藍永です。
 特に更新する訳でもないのにやってくるなど、一体何の騒ぎだって?
 いーえ、ただ報告(?)らしきものに。

 トリップつけましたが今まで通りの私ですので。




 …失礼致します。

Re: 桔梗ちゃんの不思議な日常。 ( No.90 )
日時: 2013/01/20 19:37
名前: 藍永智子 ◆uv1Jg5Qw7Q (ID: SSpjm3XS)

 昼間の賑わいもすっかり影を潜めてしまい人気の無くなった、真夜中の夜とは落ち着くものである。誰かの目を気にせずにすむことほど気が休まる時は無いからだ。——月輪家を後にしたあやめは、そんなことを考えつつ家路を急いでいた。
 真夜中のくせしてアドレナリンを分泌し続けている脳には不思議と高揚感があって、今はあれだけ望んでいた布団に潜り込んだとしても寝付ける自信が皆無だ。
 それに、どれだけ睡眠時間が削られようと明日は絶対に学校に行かなければならないのだ。
 この仕事を引き受けた時は桔梗を案ずるあまり他の心配点など頭に入ってこなかったが、それにしても眠気の心配をするようになるなんて、思ってもみなかった。
 中途半端に眠ったせいで眠気を引きずり、気が付いたら授業中に居眠りをしてしまっていた、なんていうことはあながち有り得ない話でもない。——実は学級委員長を務めている真面目ちゃんでもあるあやめは、考えるだけで恐ろしくなってきたので、それより先に進もうとした思考は無理やり停止させた。

(ま、こんなくだらないこと考えているなら全速力で走った方が良い、ってことなのかにゃ)
 
 運良くも、今は町中の誰もが夢を見ているような時間帯——つまり、「多少」恥ずかしげな行動をとっても誰かに目撃される心配はないということだ。
 よーい、と心の中で呟いてからピストルが鳴らされる瞬間をイメージする。

(どん!!)

 真夜中に開かれた参加定員一名のひっそりとした運動会。
 
 ゴールにたどり着いた——古びてがたついている星宮家の門を開いた——のは、それより僅かに後のこと。

Re: 桔梗ちゃんの不思議な日常。 ( No.91 )
日時: 2013/01/21 20:30
名前: 藍永智子 ◆uv1Jg5Qw7Q (ID: dQt5LOir)

 使ったものをそのままにしてしまうためかあちこちに物が散乱し、散らかり放題になっている自分の部屋を見るとどうしても、あの、きれいに整理整頓されたうえに家具や細かな雑貨にまで気が配られていたあやめの部屋を思い出してしまい、そのせいで桔梗の気分は沈んでいく一方だった。

(きっと私の心の中には泥沼があってさ、今はそこに溺れていく最中なんだよ……。って、いかんいかん!!)

 このままではマイナス思考に拍車がかかってしまいそうなので、慌てて違うことを考えようとする。

(今までは何だか気が動転していてあんまり気にならなかったけど、あやめって……星宮一族って陰陽師だったんだなあ)

 「陰陽師」が実在している、ということに関して一切疑いを持たなかった時点で、桔梗は相当動転していたに違いない。
 彼女が使役しているらしい妖怪——厘銘を見せられた今となっては、最早疑う余地などどこにも存在しないのだが。
 こんなことをぼんやりと考えていても、散らかり放題の部屋は嫌でも視界に入ってくる。それが見える度に桔梗は目尻に皺を寄せてはその辺りを揉み解す、という何とも地味で——しかしながら、とても面倒くさい作業を何度も繰り返して行っていた。

 

Re: 桔梗ちゃんの不思議な日常。【参照800突破、感謝です!!】 ( No.92 )
日時: 2013/01/26 15:46
名前: 藍永智子 ◆uv1Jg5Qw7Q (ID: 5oEh1Frl)

 結局「ちょっとだけのお片付け」は本格的な掃除にまで発展し——翌朝、カーテンの隙間から漏れる朝日に照らされた桔梗の目の下は、墨でも塗りたくったかのように真っ黒になってしまっていた。
(襲撃が無い夜だって分かってたのに……珍しく安心して眠れる時間があったのに……)
 次から次へと後悔は溢れてきて頭の中でぐるぐると渦を巻いているが、流れてしまった時間は今更どうにかなる訳でもない。
(今日は絶対に学校行かなきゃならないんだよなあ、さぼれないじゃん!! ……って仕方ないか)
 うっかり気を抜くと体中の力が抜けて立ち上がれなくなってしまいそうなので、一瞬たりとも気を緩めることができない。——傍目から見れば何をしているのかすら分からないような地味過ぎる格好で、桔梗はまたしても一対一の真剣勝負を繰り広げていた。
 いつもの二倍以上の時間をかけゆっくりと制服を探し出してから身だしなみを整える、という作業を終わらせ、ふと、いつもとは違った角度から光が差し込んでいる事に違和感を感じ時計の方に目をやると、




「あれ……まだ、七時?」




 それならば何時もとあまり変わらないし、さして焦る必要も無いのだが——では何故桔梗は違和感を感じたのであろうか。
 
——さっきから絶えず嫌な予感がする。

 普通ではありえないことが起きるとき。
 何か違和感があって、異常であると感じられるとき。
 そして、禍々しい気配が感じられるとき。
(ああ、分かった。つまりこれは——)
 答えは、不意に閃いた。

「妖怪さんがここにいるってことなんでしょ」

 そう言った瞬間窓の外で何か大きなものが動き、部屋の中に差し込んだ光に「それ」の影が映る。
 どうやら手も脚も体もある、人型の妖怪のようだった。腰のあたりまである髪が目に見えない何かに揺られて、ふわふわとそよいでいた。
 影だけで着ている物までは分からなかったが、長い棒のようなようなモノを手に持っているようだった。
(久しぶりだけど、感覚は鈍ってないかな)
 闘いが始まる前はいつもこうなのだが——不思議と高揚感が溢れ出して胸が高鳴り、今か今かと待ちきれなくなってくる。
 命懸けの闘いであることは十分承知しているのだが、それでもその思いは捨てきれなかった。
 まだ薄暗い部屋の中に、楽しげな桔梗の声が響く。







「ねえ、出てきてよ。私の血は見せてあげられないけれど、代わりにあんたを殺してあげるから」
 


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。