複雑・ファジー小説
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- ある暗殺者と錬金術師の物語(更新一時停止・感想募集中)
- 日時: 2015/02/18 00:42
- 名前: 鮭 (ID: Y9aigq0B)
魔法、科学等様々な分野で発展する世界。広い世界には様々な国がありそれがいくつあるか、どんな国があるのか、どれだけの分野の学問があるのかそれらを知る者は誰もいなかった。
一般的な人間は他の国に興味を持たず、その日その日を普通に生活するものだった。例外はもちろんいた。一般的に知られているのは旅人。世界を回り生活をする人間。そういった人間はその国にはない文化を伝える場合もあり、国の発展に貢献することがある。
しかし一般には知られない人間もいる。それが隠密行動を行う者。情報収集などを中心としたスパイ、人の命を密かに奪う暗殺者等が当たる。
そのいくつもある国の中の一つから物語は始まる
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初めまして。今回ここで小説を書かせてもらおうと思います鮭といいます。
更新は不定期ですが遅くても一週間に1話と考えています。人物紹介等は登場する度に行っていきます。実際の執筆自体は初めてということがあり至らない点はあると思いますがよろしくお願いします。
・更新履歴
11/3 3部21話追加
11/7 3部22話追加
11/14 3部23話追加
11/22 3部24話追加
12/3 3部25話追加
12/10 3部26話追加
12/17 3部27話追加
12/20 3部28話追加
12/26 3部29話追加
12/30 3部30話追加
12/31 人物詳細2追加
1/4 3部31話追加
1/7 3部32話追加
1/10 3部33話追加
1/14 3部34話追加
1/18 3部35話追加
1/23 3部36話追加
1/25 人物詳細3追加
1/31 3部37話追加
2/4 3部38話追加
2/10 番外編追加
2/18 番外編追加 更新一時停止
・本編
第1部
人物紹介
キル リーネ サクヤ カグヤ ジン>>5
第1話>>1 第2話>>2 第3話>>3 第4話>>4 第5話>>6
第6話>>7 第7話>>8 第8話>>9 第9話>>10 第10話>>11
第11話>>12 第12話>>13 第13話>>14
第2部
人物紹介
リーネ フラン シン バード リンク フィオナ カグヤ>>16
第1話>>15 第2話>>17 第3話>>18 第4話>>19 第5話>>20
第6話>>21 第7話>>22 第8話>>23 第9話>>24 第10話>>26
第11話>>27 第12話>>28 第13話>>29 第14話>>30 第15話>>31
第16話>>32 第17話>>33 第18話>>34
第3部(後々鬱、キャラ死亡等含むため閲覧注意)
人物データ1>>36
人物データ2>>46
第0話>>37
第1話>>38 第2話>>39 第3話>>40 第4話>>41 第5話>>42
第6話>>43 第7話>>44 第8話>>45 第9話>>47 第10話>>48
第11話>>49 第12話>>50 第13話>>51 第14話>>52 第15話>>53
第16話>>54 第17話>>55 第18話>>56 第19話>>57 第20話>>58
第21話>>59 第22話>>60 第23話>>61 第24話>>62 第25話>>63
第26話>>64 第27話>>65 第28話>>66 第29話>>67 第30話>>68
第31話>>70 第32話>>71 第33話>>72 第34話>>73 第35話>>74
第36話>>75 第37話>>77 第38話>>78
人物・用語詳細1(ネタバレ含)>>25
人物詳細2(ネタバレ含)フィオナ リオン レミ>>69
人物詳細3(ネタバレ含)ジン N マナ(I) シン バード>>76
・筆休め・気分転換
番外編
白騎士編
>>79 >>80
2部終了に伴うあとがきの様なもの>>35
軌跡
7/18 参照400突破
10/14 参照600突破
12/7 参照700突破
1/28 参照800突破
- ある暗殺者と錬金術師の物語 ( No.21 )
- 日時: 2014/06/26 11:33
- 名前: 鮭 (ID: bcCpS5uI)
第6話
「何で…始末書…」
「仕方ないだろ…危険区域に無断で入ったんだから。というか気づかなかったのかシン…」
「二人とも知っていたのかと思いました。それなのに堂々と報告しましたからね…」
3人は作業部屋の机で始末書の作成をしていた。
役所で指定された危険区域に許可なしで入ったのが原因だった。
「でもおかげで杖も完成したね!」
「それで俺達も犠牲になったのかよ…」
ため息をしたまま机にペンを置き欠伸をするバードに対して、シンはペンを走らせ傍から見ても完成間近に見えた。
「僕はもうできますよ」
「えっ!もう?私はまだ半分だよ…」
3人がそれぞれ書類の作成を続ける中、扉のノックと共に扉が開き姿を見せたのはフィオナだった。
「みんな元気に始末書作っている?」
「僕は間もなく」
「後…半分くらいかな?」
「俺は全然」
バードの手元を見るとほぼ数行しか書いておらず、その数行も「俺が悪かった。すみませんでした」としか書いておらず、すぐにフィオナの握る本の角がバードの頭に直撃した。
「とりあえず始末書は中断です。いよいよ今回からお仕事よ!」
「私達の初めてのお仕事!?」
初めての依頼にリーネは嬉しそうに席から立ち上がりシンも手を止めた。
「それで?俺達の最初の依頼は何だ?」
「内容は未解析エリアの調査よ」
「調査?」
「そう。この世界はまだまだ未解析エリアがあるけど、この町のエリアで新しい未解析エリアが見つかったの。そこで、その場所へ行って魔物、採掘品の調査に行って欲しいの。もしランクB以上の魔物が出てきた場合は無理せずに引き返すこと」
「えっと…ランクBって…何ですか?」
説明を理解している様子のバードとシンに対して、リーネの質問にフィオナはガクリと肩を落としながらも手に持った本をパラパラとめくり始めた。
「リーネちゃんは魔物討伐をしないから知らないか…。シンちゃん。白板を出して」
いつものようにシンは部屋から白板を出し、すでに諦めたバードは椅子に座っていた。
「ランクは魔物の強さや危険性からランク付けしたものよ。基本的にはA〜Dまでの4段階で私達は魔物をランク付けしているわ。例えば一般の人でも害がない魔物、キルみたいに人に慣れたものはDにランクされるわ」
「キルはDだって」
ランクが最下位というのが面白くないのかリーネの横にいたキルはそのまま居眠りを始めてしまった。
「Cは一番多いランクです。一般な人では倒せないような魔物、例えばグリズリー、ウルフ、下位のゴーレムがこれに当たるわね」
「このランクなら僕達でも問題なく倒せます。一般人には無理でも訓練した者達なら問題なく撃退できます」
フィオナの説明にシンが付け加えるように話していきフィオナも満足そうに頷いてから話を続けた。
「それで問題がBね。これは貴方達がこの間行った区域の魔物です。ある程度の実力者でないと戦えないような強さの魔物全般がこれ」
「確かにあそこの魔物は手ごわかったな。それで立ち入り禁止だったのか…」
「だからこのランクが出てきたら立ち入り禁止にする必要があるの」
フィオナの説明を聞いてリーネもようやく任務の意味を理解できた。
今回は未開のエリアの危険性を調査し、問題がないようならそのエリアにあるものを確認というものである。
「あれ?そういえばAは?」
「AはBより強いもの。例えばドラゴン、神獣、精霊とかね。そういうのはもう人の手に負えません」
フィオナの話を聞きリーネは一度だけ見たドラゴンを思い出していた。
あの時、ドラゴンを倒すどころか生かしたまま戦闘不能にしたキルはどれだけ強かったのだろうか。
頭に浮かべたままリーネは依頼内容を確認していった。
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「それで…何で僕だ…」
私達3人が交番に押し掛けてお師匠様は大きくため息を漏らして机に座っていた。
「だってリンクさんもフィオナさんも忙しいし、そうなると監督が出来るのはお師匠様だけだもん…」
「弟子がこんなに頼ってくれるんだから手を貸せよ」
「貴方は年下に監督をされてなんとも思わないんですか…」
「バードさんにプライドは既にありませんよ…」
頭を抱える様子のお師匠様に私は首を傾げ、観念した様子のお師匠様は一度時間を確認した。
「なら今日はあまり時間がないから明日の朝に出発でいいな?」
「うん!じゃあ今日はカグヤちゃんの家で準備だね。」
ようやく監督係の人材の確保が出来た私達はいつものようにカグヤちゃんの家にやってきた。
サクヤお姉ちゃんは買い物に出かけていたみたいで、カグヤちゃんは裏庭でクロと一緒にいてお仕事をしていた。
「あら?始末書軍団じゃない?」
私達に気づいての第一声は前日に私が話したことのからかいで悪戯な笑みを浮かべながらゆっくり立ち上がり、クロも退屈していたせいかキルのもとに駆け寄り互いにじゃれ合い始めた。
「もう…仕事だから準備に来たのに…」
「これをお願いします」
カグヤちゃんの言葉にシンちゃんは特に気にする様子もなく銃を引き抜き手渡した。
カグヤちゃんは銃を受け取りながら確認するように見回し始めた。
「伊達にやらかしてないわね?いつもよりかなり傷んでいるわ」
「そんなに傷んでいるの?」
銃を分解させながら話していくカグヤちゃんの説明を聞いて、前回の戦いで如何にシンちゃんが酷使した状態であるか分かった。
その時、作業椅子に座っていたカグヤちゃんはシンちゃんの腕を掴んで指を確認し、その指は赤く腫れていた。
「あんた…マグナムの連続撃ちを多用したでしょ?しばらくこの銃は禁止よ」
「でも…」
「私は医者じゃないから止めはしないけどこれはやめておきなさい」
カグヤちゃんはシンちゃんが無理をしないようにすぐにマグナムを分解し始めた。
同時に戦力ダウンを気にしたのか私達に視線を向けた。
「行くのは明日?私も行くわよ?」
「いいのか?というかお前が来たらフランの奴がまともに戦力にならないな」
「なら私が二人分働くわよ」
話していきながらカグヤちゃんはシンちゃんの銃を分解した状態で別の銃の部品を取り出した。
「ほらシン…ライフルのパーツ頂戴。多少は戦力にしないとね」
「これですか?」
「ああ…あの特殊弾のための補助パーツか」
カグヤちゃんはシンちゃんからパーツを受け取ると別の銃のパーツを手に取りカチカチと組み合わせていき瞬く間に狙撃ライフルに組み上げた。
「これなら前みたいな連射は無理でも、威力は変わらないと思うわ。少しは指への負担も減るでしょ」
「器用ですね」
「それが私の売りだからね」
銃を受け取るシンちゃんは背中に下げて持ち運びの具合を確認した。
「悪くないですね。今回は完全に後方支援になりそうですけど」
「その分フランとカグヤがいるから俺は問題ないけどな」
「私もシンちゃんが後方に来てくれると心強いよ」
用意してもらったライフルをシンちゃんは気に入ったようで、すぐに設置された的に試し撃ちを始めた。
「とりあえず明日よね。集合場所は?交番でいいの?」
「うん!じゃあ明日はよろしくね!」
私はカグヤちゃんと時間の確認をして、残った私はいつもと同じような準備をしていき、バードさんは銃だけをカグヤちゃんに調整してもらって準備を完了させた。
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「というわけで!おはようございます!お師匠様!」
「何が…というわけで!だ…。こ…これなら…ぼ…僕が行かなくても…」
交番に時間通り到着した私達が経緯を説明して行き、お師匠様は予想通りの反応を見せた。
シンちゃんはすでに暇潰しにキルを撫でて面倒を見ており、バードさんは朝が早かったこともあって欠伸をしていた。
「うるさいわね。私がいても問題ないでしょ!さっさと行くわよ!」
半ば強引に近い感じで話を進めるカグヤちゃんにお師匠様は大きくため息をして立ち上がり、ようやく出発することになったことでシンちゃんは背伸びをし、バードさんは壁に寄り掛って眠っていたことからそのまま足蹴りをして転ばせて起こしていた。
問題のエリアは歩いていけば街から半日くらいで到着できる位置にあり、到着した私達は装備を確認していってから地下に続く階段を下りて行った。
中はしっかりとした石造りの城壁に囲まれていて、古代の街並みを残し地下水が川のように流れていた。
「妙だな…」
「妙?なんか変なところがあったのか?」
お師匠様の言葉にバードさんは首を傾げた。
ちなみにカグヤちゃんはお師匠様に一応気を使って距離を取っていた。
「街そのものが埋まったのは分かるがここの入口は階段だった…未開エリアのはずなのに入口がしっかりとしすぎている。」
「確かに壁の作りから元々地下にあったとも考えにくいですね」
「じゃあ…誰かがすでに侵入しているってこと?」
「そうみたいね…なかなかおもしろそうじゃない」
カグヤちゃんの言葉に私は思ったよりも危険な空気を感じる任務に気を引き締め直した。
- ある暗殺者と錬金術師の物語 ( No.22 )
- 日時: 2014/06/26 11:52
- 名前: 鮭 (ID: bcCpS5uI)
第7話
「あれ?もしかして侵入者?」
遺跡の中のとある建物の中で昼寝をしていた少女は以前と同様に、白銀の軽装な鎧に身を包んでいた。
「なんか前より多くない?おまけにそこそこ強い人が一人いるし…」
白騎士は一人で誰かと話すように呟き腰に二本の剣を納めた。
瞳を閉じ何かを確認するようにしてから腕組みをして考え込んだ。
「これ…二人はこの間の二人だよね?ということはリーネちゃんもいるんじゃない?」
瞳を開き、先の面倒そうにしていた表情から一転して表情には笑みが浮かんでいた。
「ふふ…分かっている。誰が相手でも今回は手加減しないよ」
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「それにしても…特に危険な魔物はいないみたいね」
「まあな…でかいコウモリに下級のゴーレムくらいだし俺とカグヤで大体倒せるな」
遺跡の街を道なりに進んでいく中、何度か魔物に見つかったけど殆どカグヤちゃんとバードさんが倒してしまった。
私やシンちゃんに至っては全く戦うこともなく、お師匠様とキルも二人が倒しそびれた魔物に追撃するだけで殆ど苦もないまま進んで来られた。
「でもまだ奥はあるみたいだね。ある程度材料採取にも向いているから定期的に来ようかな〜」
「一応言っておきますがその時は僕やバードさんも呼んでくださいね」
「確かにリーネだけだと迷子もあり得るから二人に必ず付いてきてもらうんだぞ?」
「ちょっとお師匠様!それはいくらなんでもないよ〜」
私の言葉に皆笑いながら歩を進め続けた。
本当に迷子になると思っているみたいで少しムカムカしてしまった。
多分それが顔に出ていたみたいで、カグヤちゃんは私に視線を向けて背中を軽く叩いた。
「何むくれているのよ。要は皆あんたを心配しているのよ。本当に恵まれているじゃない!」
「うん…ありがとう」
みんなが私を支えてくれる。
だから私も皆を支えたい。皆の力になって答えたい。それが今の私の願いであり最大の目標だった。
しばらく遺跡の中を進んでいき川に下りられる土手のような場所を見つけ、私達はそこを休憩地点に選んだ。
流れる地下水に手を触れてその冷たさと濁りがまったくない綺麗な透明色に驚いた。
「地下水ってこんなに冷たいんだ…それに綺麗だよ」
「この水がここまで綺麗なのは地下水だからというわけだけじゃないな…」
「へえ〜じゃあこの遺跡の技術って訳なんだ?」
私の横で水を調べていたお師匠様は、背後からカグヤちゃんの声が聞こえるとすぐに距離を取ってしまった。余程カグヤちゃんが苦手みたい。
「あのさ…リーネやシンが平気なのに何で私には慣れないわけ?流石にそろそろ傷つくわよ」
「す…すまん…別に…子供は問題ないが…カグヤは…何故か…慣れなくてな…」
「ねえシンちゃん…私達…ここは怒るべき?」
「僕は特に気にしませんからいいです…」
シンちゃんは全く興味がないような様子で肩に下げていたライフルに新しく銃弾を装填しておりバードさんとキルにおいては緊張感もなく眠っていた。
そんなに疲れているのかな?
「えっと…それで…お師匠様?水がきれいな理由だけど…他にもあるの?」
「あ…ああ…詳しくは分からないがこの水を水源にしているなら何かしらの技術は残っていると思う」
「ではそろそろ行きましょうか?二人が熟睡してしまいます」
シンちゃんの言葉にそれぞれが出発お準備をしてバードさんはカグヤちゃんとシンちゃんの蹴りで無理やり起こされていた。
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「うわ…なんか広い場所に出たわね…」
「ここは…昔のコロシアムか?」
驚いた様子のカグヤちゃんやバードさんを見ながらも私もここまで大きい場所は初めてだった。
私達は遺跡の奥にまで進んでいき、広いドーム状の建物に行きついた。周りには観客席があり、如何にも何かしらの見世物をするための会場に見えた。
「こんな場所があるなんて…僕もここまでのものは初めて見た…」
「お師匠様も初めて?大発見とか?」
私がお師匠様に話しかけていると突然皆の足元にそれぞれ魔法陣が現れた。
その中で私とキルだけには何も異変は起きてなかった。
「何だこれ?」
「まずい…罠だ!」
一瞬バードさんとお師匠様の声が聞こえたけど次の瞬間には私とキル以外の皆はその場から消えてしまっていた。
「な…なんで…?」
「安心していいよ。皆生きているよ」
不意に背後から聞こえて来た声は聞き覚えがあった。すぐに振り向くと、今私達が通ってきた入口の前に見覚えのある人物が立っていた。
「し…白騎士さん…?」
「覚えていて嬉しいよ」
「み…皆をどこに…どこにやったの!?」
足が震える感覚を感じた。
以前も感じた恐怖、この人はとにかく危険だということを私の全神経が教えてくれている。
「ふふ…震えちゃって…可愛い」
「答えて!」
「私の仕掛けた罠にかかっただけ。多分この遺跡のどこかに飛ばされていると思うわよ?それより私は貴方が気になっているの」
白騎士さんは笑顔で私に説明していき、悪戯な笑みを崩さずに首を傾げた。
咄嗟に私は杖を手に取り、キルも戦闘のために身構えた。
「ど…どういう意味?」
「変な意味じゃないわよ?今の罠は人の魔力に反応して発動するの。魔物は範囲外だから分かるけど何で貴女は掛らないの?それ以前に何で物質を構成するために必ずある魔力が貴女にはないのかしら?」
白騎士から姿を見せた時の笑顔は消えていて、口は笑っているけど目はまったく笑っておらず正直怖かった。
そのせいか無意識に後ずさりしてしまった。
「怖がらなくていいよ?私が一方的に痛めつけるだけだからね?」
「でも…簡単に負けるつもりは…ないよ…」
腰から二本の剣を引き抜く白騎士さんに対して私は杖を構え、今度は一つの動きも見逃さないつもりで身構えた。
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「よりによってあんたと一緒なんて最悪…」
「その…セリフは…僕が…そのまま返そう…」
転移の罠にかかったカグヤとフランは遺跡の街に転移されていた。
見ていない風景からまだ探索していないエリアのようだった。
カグヤは一人で元のルートに戻ろうと歩いていき、その後ろから距離を取ってフランも付いて行った。
「まあ私達はいいけどあいつらは大丈夫かしらね」
「あいつらじゃなくて…リーネがだろ?」
間近ではまともに会話が出来ないがある程度距離を取れば会話が成り立つようで、特に危な気もなく遺跡の奥まで進むと先ほどのコロシアム程ではないが、広い空間と周りには3、4mはありそうなゴーレムがいくつも並んでいた。
「うわ…これって…もしかして…」
「ど…どうやら…そ…そうみたい…だな…」
部屋に入りカグヤが歩を止めたことにより、フランはカチカチに固まりながら辺りを見回して距離を取り答え、その瞬間入口の扉は閉じて、制止していたゴーレム達が二人に視線を向けた。
「お決まりじゃない…さしずめ遺跡を守るガーディアンって奴?」
「カグヤ。そっちは頼むぞ?」
「あんたこそ固まってやられても助けないわよ?」
いつの間にかしっかり距離を取り指示を出し始めたフランに対して、カグヤは眼鏡に一度手を当て、腰からサブマシンガンを取り出した。
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「皆さんは大丈夫でしょうか…」
「まあフランはここにいない時点で最悪だよな。残っているのがリーネかカグヤだぞ?」
分断されて面倒な状況なのにこの人は全く危機感がない。
ある意味調子を崩さないし混乱やパニックを起こすよりはいいけど。
転移の罠にかかりたどり着いたのは元のいたフロアよりも地下のようで、うす暗く広い空間に滝のように流れ落ちる地下水の音が響いていた。
そんな中を僕はバードさんと探索して出口を探していた。
「しかし…こんなに水が綺麗だと街の新しい水源になるかもな」
「でも気になることもあります…ここまで綺麗な理由が分からないです」
僕の疑問に対してバードさんも考え込むように腕組みをした。
本来こういった街の地下水は安全に使えるように蒸留を行うための施設があるのが普通だがそういったものは見当たらずそういったものがない場合に考えられるような理由はそんなに多くなかった。
「こういう時フィオナさんがいてくれると助かるのですが…」
「おっ!なんかあるぞ?」
バードさんの指さした方向を見るとうっすらと明りを放つものとその明りで照らされた祭壇のような場所があった。
その両端からは水が流れており、ずっと聞こえていた水の音はこれだったようだ。
祭壇の一部には文字が刻まれていた。
「フルスシュタット?何だこれ?」
「フルスシュタット…かつては水の街と呼ばれ栄えたという街です。そしてその街には歴代で最高峰と言われる3人の錬金術師のうちの一人、水の錬金術師マリン・トレーネがいたと言われています…」
「じゃあここは…」
「その3人の錬金術師がいたという幻の都市の一つ…みたいですね…」
僕は祭壇で光っていたものに視線を向けた。
そこで光っていたのは小さな一つの指輪だった。
- ある暗殺者と錬金術師の物語 ( No.23 )
- 日時: 2014/06/26 12:08
- 名前: 鮭 (ID: bcCpS5uI)
第8話
「これで5体目!」
足に魔力を集中させローラーブレードが蒼く光ると共にゴーレムの頭を横殴りに蹴り飛ばし、倒れた時には起動を意味する目から光が消えた。
「こっちも5体目が完了だ。」
少し離れた位置からフランの声が聞こえたことで私は視線を向けた。
フランはどこに隠していたのか長さはフラン自身より長そうな槍を片手に持ちゴーレム5体の内二体は真二つにされており、残りは地面から生えた巨大な槍で串刺しになっていた。
「合計10体…でもまったく減っていないじゃない!」
「どこか…これらを操る中枢を探すしかないな。」
フランの声を聞きながら私はサブマシンガンを連射して牽制を繰り返しゴーレムとの距離を取った。
ざっと目視で確認しただけでもまだ10体は残っていそうで、このままのペースだとまだ時間がかかりそう。
そんな中で壁に埋め込まれていた丸く青いコアが見え、その下に魔法陣が描かれると同時にゴーレムが召喚されていた。
「フラン!あれ!コアみたいよ!」
「ならゴーレムを足止めする!その間にコアを破壊しろ!」
私に指示を出すなりフランは何かしらの詠唱を始め、足元に見たことがない魔法陣が浮かび上がるとゆっくりと地面に手を当てた。
同時にフランから魔力が消えた。
「錬金術?なら…」
私は魔力が感じられなくなった瞬間にローラーブレードに魔力を込めて、そのままコアにだけ視線を集中させ走らせた。
同時に各ゴーレム達の足元から、巨大な槍が伸びてゴーレム達を貫いて身動きを封じた。
「よし!いけ!」
「あんたに言われなくてもできるわよ!」
フランの声に適当に答えると同時にコアに向い魔力でブーストした渾身の蹴りを入れ、それによりコアにひびが入ると周りにいるゴーレム達は光に包まれ消えてしまった。
「面倒な奴だったけど何とかなったわね…」
私は息をついてそのまま床に座り込み、フランも多少呼吸を乱しながら立ち上がった。
前に聞いたけど錬金術を発動させている間は魔力が0になり、その間は例えるなら重りを付けて水に沈むような、呼吸が出来ないままどこかに沈んでしまうような感覚らしい。
そのため一瞬ならまだしも、大量の練成には体への負担もそれなりになると言っていた。
「ずいぶん辛そうじゃない?おぶってあげた方がいい?」
「な…何を言っているんだ!」
「冗談よ。それよりこの防衛システムずいぶん性能がいいわね。未だに機能するなんて驚いたわ」
「いや…これは…」
ゆっくりとひびが入ったコアに近づいたフランは、私が隣にいるにもかかわらず真剣な表情でコアを見つめた。
余程重要な発見みたいだった。
「周りに比べて新しい…本当につい最近取り付けられたものだ。」
「じゃあやっぱり私達より早く侵入した奴がいるわけ?」
「先を急ごう…皆が心配……だ…からな…」
すぐ隣に私がいたのが分かったみたいでフランは話す途中でカチカチに固まって少しずつ距離を取って行った。
さすがにこれは傷つく場面かしら…
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「また変なコアがあるぞ…」
「近づかなければ平気です…いま破壊します…」
遺跡の地下で見つけた指輪を調査の資料のため回収し先を進んだ俺とシンだが、あまりに罠が多く順調にとは言い難いペースで先を進んだ。
現に今見えているコアも近づくと熱線で攻撃してくる。
耐久力はそんなにないからシンのライフルで見つけるたびに破壊して進んでいた。
シンはライフルをコアに向けてジッと構えた。
多少の手ぶれがあるように見えたが一瞬その動きが消えたと思うと同時に僅かな発砲音と共にコアを破壊した。
「ふう…これでもう何個目だよ…」
「少なくても7個は見ましたね」
ライフルに銃弾を込めながら答えるシンを横目に俺は他に罠のようなものがないかと辺りを見回した。
辺りはまだ薄暗かったが柱などの隠れるスペース等があるおかげで安全を確保しながら進めた。
「それにしても広すぎだろ…いつになったら出られるんだ…」
「マッピングは大分進みましたから…この先も行き止まりになると詰みですね」
「そうなるともう出られないのかよ…」
「バードさんと心中では死んでも死にきれませんね…」
「どういう意味だ!」
シンの銃の用意を済ませ再び歩き始めた俺たちは、慎重に物陰に隠れて安全を確認しながら進んでいった。そんな中4つのコアと光が差している階段を見つけた。
「あそこは…上に上がる階段じゃないか?」
「そうみたいですね…コアが4つ…二つはいけますがそうなると残りの2つが襲ってきますね…」
今回のシンが持っている銃は2発撃つごとに弾込めが必要なもので、2つ破壊できたとしてもそれに反応して残りの2つが攻撃をしてくるのが厄介だった。
「何とか俺が残りを叩くか。二つは頼むぞ…」
「多分一撃でも重傷ですから気を付けてください…一発撃ったら後はバードさんが取り漏らしたコアを狙いますね」
「分かった。いきなり外すなよ?」
「誰に言っているんですか?」
シンの発砲とともに俺は柱から飛びだした。
今回は小回りが利く帯剣を腰から抜いた。シンの銃弾は俺の位置から一番狙いにくかった位置のコアを撃ち抜いた。
同時に3つの青いコアが光り始め一つを両断してすぐに腰に納めた銃で撃ち抜いて破壊した。
「これで3つか!」
「次で終わりです…」
最後の一つのコアが遅れて攻撃をしようとした瞬間に今度はシンの2発目のライフルで撃ち抜いた。
その瞬間辺りからコアの光が消え階段から差す光のみになった。
「ようやく抜けたな…」
「急ぎましょう…他の皆さんから離れてずいぶん経ちました」
「そうだな。さっさと…!」
シンに視線を向けた瞬間その後ろで光る青いコアが目に入った。
咄嗟に俺はシンに飛び込んで、シンも俺の異常に気付いたのか視線を後ろに向けた。
しかし銃を撃ち切って対処できないでいる様子で、庇う形でシンを押し倒してギリギリでシンを射線上から離せた。
同時に背中に熱い感覚を感じた。
「バードさん!」
シンの声が聞こえたが答えることが出来なかった。
まともに攻撃を受けたようで意識が飛びそうになった。
不意に俺の腰に入れた銃が抜き取られたのが分かった。同時にシンがそれを使ってコアを破壊した。
「バードさん!無茶しすぎですよ!」
「お前にあんなのが当たったら死ぬだろ…」
「少し休憩していきましょう」
「何言っているんだよ…早く合流して…」
「バードさんを置いていけませんよ」
強情な奴だと考えながら俺は仰向けに横になってその横に座ったシンは銃に弾を込めて隣に座り込んだ。
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「思ったよりやるね。私と対峙してまともにやりあえる人は久しぶり!」
「一応お師匠様に鍛えられてきたからね…」
リーネは息を乱し、杖を構えたまま答えキルには制止の命令を与えていた。
恐らくキルが飛びかかった場合、白騎士は躊躇なく両断するだろうとリーネは分かっていた。
その状況をキルも分かっているのかおとなしく指示に従っていた。
「優秀なお師匠様みたいね。私も会ってみたいわ」
楽しそうに白騎士は剣をクルクルと回して話していくが、少しでも油断すると懐に飛び込まれるのは初対面で体験しておりリーネは神経を研ぎ澄ませていた。
そのおかげで致命傷になるダメージ自体は受けていなかったが少しずつ体も神経もボロボロになっていた。
「でも…そろそろ終わりにしようか?」
「えっ…」
リーネが気付いた時には白騎士は目の前にいた。
それを認識した時リーネは腹部に衝撃と共に痛みを感じた。
白騎士が腹部に肘打ちをしたことが分かったのはそのまま地面に倒れた時だった。
「ごめんね?少し手を抜いていたの。力の加減間違えて殺したらいけないからね」
「うう…げほ…な…何で…私を…」
腹部に手を当て倒れたままリーネは白騎士に視線を向けた。
白騎士は相変わらず楽しそうに笑いリーネを見下ろしていた。
「それは後で分かるわ。さあて…連れて行かないとね」
白騎士が話した瞬間、白騎士の後ろから飛びこんできた青い影をリーネは見た。
そのまま白騎士は振り向き様に片手の剣を振り下ろした。
次の瞬間にリーネの横に倒れたのはキルだった。
「駄目じゃない?ご主人様に動かないように言われていたでしょ?」
白騎士の声に対してキルは腹部から血を流し、体を震わせたまま体を起こした。
リーネはキルを止めようと手を伸ばし、キルと一瞬視線が重なった瞬間、キルは今まで上げたことがない大きい、広いコロシアム全体に聞こえそうな遠吠えをした。
同時に青い毛並みは光り、先に受けた傷は徐々に塞がって行った
「自然治癒?珍しい毛並みだと思ったけど…貴方…聖獣だったんだ?ご主人様のピンチで覚醒したんだ」
「聖獣…?キルが?」
「かつては神さえも恐れたとかいうけど、その名に恥じない治癒能力と防御力…フェンリルね」
キルは再び遠吠えを上げそれにより衝撃を発しその体からは光を放ち続け、主を守るために白騎士と対峙した。
- ある暗殺者と錬金術師の物語 ( No.24 )
- 日時: 2014/06/26 12:45
- 名前: 鮭 (ID: bcCpS5uI)
第9話
「キル…私も…負けられないね…」
キルが白騎士に対して身構える様子に私はお腹の痛みに耐えながら立ち上がった。
さっきはあれだけ集中していたはずなのに動きが見えなかった。そうなると私が出来ることは一つだけだった。
「あら?リーネちゃんも戦う気?発動にかかる錬金術を発動する前に貴方の命を奪えることはもう証明したと思うけど?」
「うん…でも命は奪わないよね?私が死んだら困るんだよね」
私の言葉に一瞬白騎士が表情を曇らせた。
その瞬間キルは咆哮と共に白騎士に飛び込んだ。
その咆哮は衝撃波となり、咄嗟に白騎士は手で目元を覆った。
同時にキルに対して反対の手で剣を振い斬りつけようとしたが、剣はキルの体が弾きすぐに後ろに距離を取った。
「いい考えね?おかげで面倒になったわ」
「今度は私の質問に答えてもらうよ!」
杖を地面に当てて術を発動させ、白騎士の後ろに十字架を練成し同時に両手を十字架に磔にした。
「あら?油断したわ〜。いい杖ね?まさか地面に触れているだけでもう貴女のテリトリーなんてね」
「褒めても何も出てこないよ」
完全に身動きを封じたはずなのに全く動揺している様子が見えない白騎士に私は不気味ささえ感じた。
「リーネ!」
「えっ?カグヤちゃん?」
不意に聞こえた声に振り向くとカグヤちゃんとシンちゃん、それにお師匠様はバードさんに肩を貸した状態だった。
「ちょっとあんたボロボロじゃない!大丈夫?」
「キルも…なんか光っていますよ?」
カグヤちゃんとシンちゃんは私達を見ながら近づいてきた。
バードさんは怪我をしていたようだけどお師匠様は回復術も使えるから大丈夫かな。
「それで私は無視されているのかしらね?」
白騎士の声に私は慌てて視線を戻した。
いつの間にか抜けだされているのかと考えてしまったけど、しっかりと拘束されたままの状態で安心できた。
「それで…貴女はここで何をしていたんですか?」
「ここでは探し物!なかなか見つからないんだよね〜」
シンちゃんの質問に対して白騎士は全く隠す様子もなくペラペラと話していった。
身動きを封じられっているはずなのに特に抵抗する様子もなく、剣も地面に落ちたままだから自力で逃げ出せそうにないように見えた。
「お前は何者だ?普通の一般人ではないだろ?」
「うーん…かっこいいお兄さんの質問には答えてあげたいけどそれは秘密ね」
お師匠様の質問に対して全く動じる様子もなくにこやかに答えていた。
お師匠様も距離を取っているせいかちゃんと喋れているけど、もしかしたらまた別の理由なのかもしれない。
「でも一応あんたは捕まえた訳だしこれから取り調べね」
「残念。さっきの質問に答えたのは私を捕まえられたリーネちゃんへのご褒美だよ。そろそろサービスはお終い…じゃあ後はよろしく」
カグヤちゃんの言葉に白騎士はニコニコとしたまま話していくと瞳を閉じた。
その瞬間、白騎士の体は光に包まれ光が収まると現れたのはさっきとは別の重装備な白い鎧と蒼い短髪。背中には赤いマントを装備した男の人だった。
「えっ…男の人になっちゃった…」
「体型も代わっていますね…」
瞳を開けた男の人は当たり前のように十字架をへし折って拘束から脱出した。
「まったく…あいつも油断のしすぎだ…まあそれでもお前の評価は改めないとな。聖獣フェンリルを従える錬金術師リーネか」
「私はキルを従えてなんかいないよ!キルは家族であって家来とかじゃないよ!」
声も雰囲気もさっきとは全く別の人に感じることからやっぱりさっきの白騎士とは違っていた。
陽気な感じだった雰囲気は完全に物静かなものになり、すべてを見通していそうな緑の瞳は私にさっきの白騎士とは違う恐怖を与えた。
「君は…まさかフュージ二アンか…」
「なんだ?そのフュー…なんとかって」
お師匠様の言葉にバードさんは横から問いかけ白騎士は笑みを浮かべ床に落ちた二本の剣を手に取った。
その剣を片手で持つと光に包まれながら形状を変え二本の剣が一つの大剣に変わった。
「まさか俺達の存在を知っている奴がいるとは思っていなかった」
「お師匠様?フュージ二アンって?」
「遠い昔に行われていた実験生命体だ。二人の男女の魂を一つの肉体に移すことで生み出せたという特別な人工生命。最もあまりに非人道的な行為のために生み出すことを禁じられていたはずだ」
お師匠様の言葉に皆は白騎士に視線を向け警戒した。本来ならある訳がない存在である相手に私は自然と警戒を強めた。
「ここまで知られたら探し物どころじゃないよな…」
「っ!皆!下がってください!」
シンちゃんの声に咄嗟にシンちゃんは私を連れてキルと共に後ろに跳躍し、続くようにカグヤちゃんとお師匠様達も跳躍してた。
白騎士は大剣を両手で地面に突き刺した瞬間、コロシアムの床全体が白騎士を中心に大きくひび割れした。
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「うそ!?」
たった一突きで地面を割った白騎士の力にカグヤは思わず声を出して着地し、フランとバード、続いてシンとリーネその隣にキルも着地した。
ひび割れした床からは地下を流れていたと思われる水が噴き出し始めた。
「おい…これ…」
「崩れますね…この遺跡…」
バードの言葉にシンは答えた。すぐ横にいたリーネはシンの体が小さく震えているのが分かった。
すぐに床を修復しようと床をに視線を向けたリーネだったがそのまま動きを止めた。
「さっきの床のようにしっかりとしていればいい。だが、こうバラバラになっていれば一つの欠片は練成できても床全体は練成しきれないだろ?」
「うう…お師匠様は?」
「ここに来る前にかなり無茶をした…それにこれだけ広いと無理だ」
今から出口を目指しても間に合うわけがないと判断した白騎士は剣を背中に納めると何か術を唱え始め光に包まれた。
「本当は連れて帰りたかったが仕方か…じゃあな…」
言葉を残してそのまま白騎士は光と共に姿を消した。辺りには地面から噴き出した水が徐々に溜まり始めた。
「こいつは…せめて観客席まで逃げようぜ?」
「そうね…ここにいたら死期を早くするだけだわ…」
バードの提案で各々は観客席に向かった。
リーネも震えているシンを支えながら歩いていく中で不意に何かが落ちる音を聞いた。
「指輪?…これ…確か…」
リーネが見つけたのはシンとバードが地下で見つけた指輪だった。
その指輪を拾った瞬間リーネの頭に様々な映像が頭の中に入り込んできた。
清らかな水の元で暮らしている街の人々
その水を生み出すために祈りをささげる女性
この水を守るために身をささげた一人の錬金術師の姿
その力を一つの指輪にささげて指輪の名前を囁く女性の姿
「アクアマリン…」
リーネは指輪を人差し指に着けた。
不思議とその指輪のサイズはぴったりで違和感なく付けられた。
「キル!シンちゃんを皆の所に連れて行って!」
リーネの命令に対してキルはすぐに背中に乗せられたシンを連れて観客席に戻った。
「ちょっと!あの子何しているの!」
「待てよ…なんか変だ…」
すぐに連れ戻そうとするカグヤをバードは引きとめた。
フランもリーネの様子に今までにない感覚を感じていた。
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「お願い…こんなことで力を貸してくれるなんて思わないけど…今は私と貴女で救える命があるの…」
私は杖を水が流れる床に当てた。
流れている水の勢いを止めるのは物理的にできない。
水を消すなら蒸発という手もあるけどこれだけの水を蒸発しきれるほどの熱量を生み出せないし、そもそも蒸発しきる前に私達が死んでしまう。
「ここの水は遺跡全部の水と繋がっている…だったら…」
私だけの力では無理だけど、この人の力があればできるかもしれない。
頭の中に水の変化をイメージした。
その瞬間指輪が青く光り跳躍と共に杖を地面に向かって投げた。
地面に突き刺さった杖が光るとそこを中心にして水は凍り始め辺りをあっという間に床を氷の世界に変えた。
「これでこれ以上崩壊はしないかな…」
「リーネ!大丈夫!?」
カグヤちゃんの声に視線を向けると皆が駆け寄ってくる様子が見えた。
同時に体の脱力感から私は膝を付いた。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫…ちょっと…無茶したかな」
「恐らく遺跡内の水すべてを凍らせたんだ。これだけの量の練成をすれば疲れて当たり前だろう」
お師匠様の声に苦笑いをしながら私はフラフラしたまま立ち上がった。
キルが私の隣に来て体を支えてくれた。
いつの間にか光は消えていつも通りのキルは私の前にしゃがんだ。
「乗れってことだろ?そいつなりにお前を心配しているんだろ」
「うん…ありがとうキル」
バードさんに言われて私はキルに跨りそのまま遺跡から脱出した。
遺跡を脱出する時お師匠様が凍った水を真剣に見つめていた。何か気になることでもあったのかな…。
- ある暗殺者と錬金術師の物語 ( No.25 )
- 日時: 2014/05/30 11:42
- 名前: 鮭 (ID: OqA7j1VN)
キャラ詳細
リーネ・アニミス
本シリーズの主人公の一人。錬金術師の父親と母親を持つが幼いころに謎の死を遂げて以後はティタニア家で面倒を見てもらいながら生活してきた。
その後、様々な出会いをきっかけに錬金術師としての夢を持ち始める。一年の修行により正式な錬金術師となり、役所で唯一の錬金術師として働き始めた。
キルと名付けたウルフは初めての錬金術により助けたものでその影響か多少人間らしさを持ち食べ物も通常のウルフと違い人間に近くなっている。
・錬金術
己が知っている物質の構成や自然の理を把握した上で物質の構成、形状変化、破壊、再構成が可能な術。これにより知識と材料があればあらゆるものを生み出せる。
・母の形見の杖
先端部に翼の装飾が施された金属製の杖ではめ込まれている石の力で本来は力量以上の練成を行うことが出来る。またこの杖が対象に触れていれば直接触ることなく練成が可能となる。
キル
本シリーズのもう一人の主人公。初対面に対しては口数が少ないも慣れれば多少は話すようになり組織の中でもまともに会話が出来るのは一部だけ。サクヤと出会い、劇的に変わった環境により徐々に人間らしさを得て来たものの最終的には今までの日常を選んだ。その真意については現状不明。
・組織
キルの所属する裏組織で暗殺を専門とする集まりで時に国を滅ぼすといった仕事も行う。キルも幼いころから所属しているがそこまでの詳細は不明。メンバーは基本的にはコードネームで呼ばれキルは「K」と呼ばれている。
・銃
種類はリボルバー式のハンドガンに分類される。連射性に優れておりキルの高速撃ちに対しても耐えるだけの強度を持った特注品。地、水、火、風の各属性の銃弾を発砲できる。
・身体能力
通常の人間よりも優れた身体能力を持ち武器に関係なく前衛から後衛まで対応できる。視力が特化して優れておりスコープ並みの狙撃の他に相手の動きの見極めも得意。
カグヤ・ティタニア
リーネの幼馴染。両親を幼くして亡くし親の残した花屋を引き継ぎながら姉と2人暮らし。元々は姉を守るために武具について調べていくうちに重度の銃マニアになって行った。口には直接的に出さないが姉やリーネが「大」が付くほど好き。キルと出会い、姉離れも検討し始めていた時に起こったキルの失踪により姉離れはより難しくなる。
1年後に自身の趣味と得意分野を利用し武器のメンテナンスを始めリーネ達のサポートを始める。
・魔力
すべての物質を構成する基本的な核のようなもの(原子のようなもの)。魔力を使い分けることにより肉体強化や魔術といったものが使える。
・ローラーブレード、眼鏡
自分に合う武器として自作した物。ローラーブレードは通常の移動に使う他に魔力を込めることでより早く移動が出来る。またこの状態での蹴りは下手な攻撃よりも強力。眼鏡については現状不明。
サクヤ・ティタニア
暗殺の現場を目撃したことをきっかけにキルと知り合う。隣に住んでいるリーネの面倒を見ており妹のカグヤと二人で暮らしている。花屋を経営して生計を立てており3人分の生活費を補えていることからそれなりに売り上げは出している。キルの名付け親でもあり共に同じ時間を過ごし特別な感情を抱くようになる。
キルとの別れにより一時的に落ち込んだもののリーネとカグヤの成長と励ましで1年後には元気を取り戻した。
・一般人
すべての人間には魔力が存在するが普通の人間はその使い方を知らず、一定の年齢までに力に目覚めなかった場合は力が開花することがない。そういった人はごく一般的に生活をするか武器を手にして鍛えて戦う術を身につける。
フラン・リーゼル
街の交番に努める錬金術師。リーネの錬金術の師であり腕前は優秀。主に金属の練成が得意で鉱石類を武器に変えたりするのが主。また槍の使い手でもあり魔力を込めれば鉄をも斬り裂く威力になる。優秀ながらも緊張のしやすさが大きなマイナスとなってしまっており出世にも影響している。女性も苦手で自分に年齢が近かったりすると動きがカチカチになるがある程度離れていれば問題はない。何故かカグヤが苦手。
シン・エトワル
役所に勤める役員。元々は旅人で今の街が気に入り役所で仕事をしながら一人で暮らしている。旅に出た経緯は不明。魔術の類は使えないがマグナム銃、ナイフ、体術と基本的な戦闘術は可能。自分の死を理解した時に必要以上の恐怖を感じ極端に動けなくなる弱気な部分が弱点。働き始めた際の先輩になるバードには冷たいが信頼はしている。
バード・ウィンゲル
シン同様の役員。役所に勤めてからある程度経っていることから役所内ではある程度やりたい放題なところがある。大剣、帯剣、銃を基本に戦うが殆どは剣技を使う場合が多い。銃は命中を重視しており最近カグヤに作ってもらったもの。リーネやシンをいい後輩や妹のように思っており3人で組むようになってからは前衛として活躍するようになる。
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