複雑・ファジー小説
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- ある暗殺者と錬金術師の物語(更新一時停止・感想募集中)
- 日時: 2015/02/18 00:42
- 名前: 鮭 (ID: Y9aigq0B)
魔法、科学等様々な分野で発展する世界。広い世界には様々な国がありそれがいくつあるか、どんな国があるのか、どれだけの分野の学問があるのかそれらを知る者は誰もいなかった。
一般的な人間は他の国に興味を持たず、その日その日を普通に生活するものだった。例外はもちろんいた。一般的に知られているのは旅人。世界を回り生活をする人間。そういった人間はその国にはない文化を伝える場合もあり、国の発展に貢献することがある。
しかし一般には知られない人間もいる。それが隠密行動を行う者。情報収集などを中心としたスパイ、人の命を密かに奪う暗殺者等が当たる。
そのいくつもある国の中の一つから物語は始まる
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初めまして。今回ここで小説を書かせてもらおうと思います鮭といいます。
更新は不定期ですが遅くても一週間に1話と考えています。人物紹介等は登場する度に行っていきます。実際の執筆自体は初めてということがあり至らない点はあると思いますがよろしくお願いします。
・更新履歴
11/3 3部21話追加
11/7 3部22話追加
11/14 3部23話追加
11/22 3部24話追加
12/3 3部25話追加
12/10 3部26話追加
12/17 3部27話追加
12/20 3部28話追加
12/26 3部29話追加
12/30 3部30話追加
12/31 人物詳細2追加
1/4 3部31話追加
1/7 3部32話追加
1/10 3部33話追加
1/14 3部34話追加
1/18 3部35話追加
1/23 3部36話追加
1/25 人物詳細3追加
1/31 3部37話追加
2/4 3部38話追加
2/10 番外編追加
2/18 番外編追加 更新一時停止
・本編
第1部
人物紹介
キル リーネ サクヤ カグヤ ジン>>5
第1話>>1 第2話>>2 第3話>>3 第4話>>4 第5話>>6
第6話>>7 第7話>>8 第8話>>9 第9話>>10 第10話>>11
第11話>>12 第12話>>13 第13話>>14
第2部
人物紹介
リーネ フラン シン バード リンク フィオナ カグヤ>>16
第1話>>15 第2話>>17 第3話>>18 第4話>>19 第5話>>20
第6話>>21 第7話>>22 第8話>>23 第9話>>24 第10話>>26
第11話>>27 第12話>>28 第13話>>29 第14話>>30 第15話>>31
第16話>>32 第17話>>33 第18話>>34
第3部(後々鬱、キャラ死亡等含むため閲覧注意)
人物データ1>>36
人物データ2>>46
第0話>>37
第1話>>38 第2話>>39 第3話>>40 第4話>>41 第5話>>42
第6話>>43 第7話>>44 第8話>>45 第9話>>47 第10話>>48
第11話>>49 第12話>>50 第13話>>51 第14話>>52 第15話>>53
第16話>>54 第17話>>55 第18話>>56 第19話>>57 第20話>>58
第21話>>59 第22話>>60 第23話>>61 第24話>>62 第25話>>63
第26話>>64 第27話>>65 第28話>>66 第29話>>67 第30話>>68
第31話>>70 第32話>>71 第33話>>72 第34話>>73 第35話>>74
第36話>>75 第37話>>77 第38話>>78
人物・用語詳細1(ネタバレ含)>>25
人物詳細2(ネタバレ含)フィオナ リオン レミ>>69
人物詳細3(ネタバレ含)ジン N マナ(I) シン バード>>76
・筆休め・気分転換
番外編
白騎士編
>>79 >>80
2部終了に伴うあとがきの様なもの>>35
軌跡
7/18 参照400突破
10/14 参照600突破
12/7 参照700突破
1/28 参照800突破
- ある暗殺者と錬金術師の物語 ( No.46 )
- 日時: 2014/08/24 22:26
- 名前: 鮭 (ID: BOBXw5Wb)
名前:R
年齢:14(見た目)
性別:女
身長:143
体重:40
容姿
長髪の銀髪を黒のリボンでツインテール、黒のローブは膝丈までの長さのスカートと一対になっている。ローブの上には肩パット付きの黒衣のマントを身につけ背中に大鎌を背負っている。
性格
物静かで感情を表に出すことが殆どない。キルに対して密かにライバル意識をしていて常に鍛錬をする密かな努力家。任務に非常に忠実ではあるが卑怯なことは嫌い何事にも正面挑むがゆえに実力はあるが階級が上がらない。
武器・能力
・大鎌
刃渡りだけで約1.5mの大鎌でブーメランのように投げて飛び道具のようにも扱える。巨大ゆえに重量は大人数名でようやく持ち運びが出来るほど
・マント
Rの意思で伸縮自在に動き打撃、魔術を防御できる防具になる。
・腕力
腕力は組織で一番高く怪力という言葉さえも物足りなく感じる程。この腕力により大鎌を片手で操ることが出来て、大概の相手に対しては素手だけで十分戦えるだけの能力がある。
名前:L(女)
年齢: 17
性別:女
身長:161
体重:59
容姿
金髪のストレートな長髪。年相応な顔立ちで瞳は青、白銀の軽装な鎧、両手には白の手袋を装備し腰には二本の剣を装備。
性格
どんなことにも明るく振る舞い楽しげに戦闘などをこなす。その言動や態度の割に任務遂行率は確実なもの。可愛いもの、特に小さい女の子が好きでよくRに抱きつこうとしていることからRには嫌われている。
武器・能力
・召喚術
召喚獣を呼び出して戦闘を任せたり、相手の様子見の他に奇襲用に扱う場合もある。呼び出せる種類はゴーレム、ドラゴンを呼び出せ、さらに召喚銃の強化もできる。
・双剣
特殊な金属でできた剣で大剣へと変化できる他にも特殊な力があるものの詳細は不明
・身体能力
組織内では上位の身体能力を持つもののどれも一番という能力はない。それでも一般人よりははるかに高く特に早さはトップ3に入る。
名前:L(男)
年齢:21
性別:男
身長:175
体重:72
容姿
白銀の騎士風の重装備な鎧、瞳はライトグリーンの蒼い短髪。背中には赤いマントを装備し両手にはガントレット、背中には一本の大剣を背負っている。
性格
物静かで一付き合いが苦手であることから他人とのやり取りの大凡はもう一人に任せている。ただししっかりと意見を持っていて決めたことは絶対に譲らない強い意志の持ち主でもある。
武器・能力
・大剣
もう一人のLが使う際は双剣に変わる特殊な剣。詳しい能力や詳細は現在不明
・身体能力
腕力と体力は組織内でトップ3に入り他にも特殊な能力があるものの現状は不明。
名前:N
年齢:25
性別:男
身長:172
体重:69
容姿
黒の長髪を一つに纏めており赤の瞳の整った顔立ち。侍の身につける古風な着物や袴に近い衣装を装備。腰には一本の刀を下げている。
性格
普段は冷静な性格だが感情的になりやすい傾向がある。R、Gの世話役に近くJからの信頼も高い。不要と判断した者には容赦ない冷酷な一面も持っている。
武器・能力
・刀
刀匠が作ったとされる名刀で硬度は一般的なものよりも高い
・刀術
四神と呼ばれるものに通じる奥義を習得している。一度L(女)に奥義の名前を笑われて以来それぞれの名前は封印されてしまった。他にも術技はあるが現状は不明。
- ある暗殺者と錬金術師の物語 ( No.47 )
- 日時: 2014/08/28 22:50
- 名前: 鮭 (ID: BOBXw5Wb)
第9話
Rは大鎌を振り上げるのを確認しフランはすぐに後ろに下がり大鎌を避けるも攻撃後にできると思われた隙も鎌を構え直す一瞬しかなかった。
「おいフラン!ここは逃げた方がいいんじゃないか?」
「分かっている…だが…」
身動きが取れないカグヤやサクヤの存在を考えれば当然の考えだった。
そんなフランの頭の中に浮かぶのは2つの不安要素。
1つはそもそもこの人外な力を持つ相手が逃がしてくれるかどうか。
もう一つはずっと動かないもう一人の存在だった。
「来ないの?じゃあこっちから行く…」
Rから一定の距離を保ち続ける三人を見てRは片手を前に出し親指をフランに向けて弾くような動作をした瞬間、フランは反射的に両手で防御態勢に入り同時に衝撃で抵抗することもできず後ろにある大木に体を叩きつけられた。
「何だ今の!?」
「魔力はなかったので魔術の類ではありませんね…」
バードの驚いている様子を見て今起こったことを確認しようとシンはRを確認するも正体は全く分からなかった。
「指弾か…初めて見たぞ…」
よろよろと立ち上がるフランは再び槍を構え直し話す。足が震えて一押しで倒れてしまうようにさえ見えるフランに続くように片手の痛みを堪えながらカグヤも立ちあがった。
「カグヤちゃん?まだ立っちゃだめだよ」
「大丈夫…離れて銃を撃つくらい…サポートくらいできるから…」
サクヤの言葉にカグヤは痛みを堪えたままサブマシンガンを引き抜き笑顔で答えた。
「それにあの二人なら…なんとかできるでしょ…」
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「バードさん…キルが来るまでに生き残るにはこちらから攻めるしかありませんよ…」
「そう言われてもな…あの鎌に誰が切り込むんだ…」
「本気で聞いているんですか?」
Rを観察したまま答えるシンの無情な一言はバードはため息を漏らして大剣を構え直した。
「無事に再会できたらおごれよ?」
「帰ってくるのが当たり前なので必要ありません…」
シンの一言と共にバードは大剣を振り上げてRに飛び込んだ。ほぼ同時にシンはRの腕にハンドガンを構えて2発の弾丸を発砲した。同時に背中のマントが動き銃弾は完全に防がれ殆ど隙を作ることなく鎌を振り上げた。
「終わり?」
「ここで終わらねえよ!」
鎌を構えるRに対して特攻するバードにRは大鎌を振り下ろそうとした時、Rの目に入ったのはその後方でマグナムを構えているシンの姿で、バードの頭部を避けるように銃弾はRへと飛んで行った。
「無駄…」
銃弾は頭部を狙っていたためにマントを操り銃弾を防いだ。マントを解けて次に視界に映ったのはすでに大剣を振り下ろし始めているバードの姿だった。
「これで決まりだ!」
バードの大剣を咄嗟にRは大鎌の柄を使い受け止めるもののその勢いで後方に吹き飛び片膝をついて着地した。
「R…ユダン…シタカ…」
ずっと黙ったまま動かなかったGは聞き取りにくい声色でRに話しかけた。
「油断していない…単純に驚いた…普通の人間でここまで強い人は初めて見た…」
「そいつは光栄だな…」
答えたバードは正直参っていた。自分の渾身の一撃とも言える一撃にまったくダメージが見えず、勝つための方法が全く見えなかった。
「シン…悪いが…こいつは…俺らの手に負えるレベルじゃないぞ…」
「ですが…このままだと…」
シンは何とか戦おうとするも体は震えており戦える状態ではなかった。Rは再び片手を前に出すと照準を二人とは別の方向に向けた。
「まずは一人目…」
バードが再び指弾が放たれたことを理解した時、衝撃音と共に現れたのはキルだった。
「ギリギリだったな」
キルが着地した位置はサクヤの前だった。急に飛び込んできたキルにサクヤとカグヤは驚き、Rはすぐに数発の指弾を放つもすぐに銃を使い一つ一つを防いだ。
「面倒な技をまた覚えたみたいだな…」
「貴方に勝つまでいくらでも強くなるから…」
先まで無表情だったRの表情は僅かに柔らかくなっていた。それに気付いたのかバードはシンとフランを連れてサクヤの周りに集まった。
「悪いが今日は引いてくれないか?俺もさっきIと戦って疲れているんだ」
「ソウイウワケ…」
Gが聞き取りにくい声で言いかけたところでRは大鎌をGの前に振り下ろした。Rはそのままじっとキルを見たままだった。
「構わない…全力でない貴方と戦ったら…意味がない」
「R…メイレイハゼッタイ…」
「早く帰る…いくらGでも…これ以上は…殺す…」
Rは大鎌を背中に掛けてからGがその場を立ち去る様子を確認してから視線をキルに向けた。
「情報…半年後…組織の人間が集まる…」
「それは豪勢だな…お前ら3人だけじゃなくてその上の奴らもか?」
「貴方を殺すためよ…でも貴方を殺すのは私だから…勝手に死んだら…許さない…」
Rは一言と共にその場から立ち去った。
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カグヤやフランの怪我が酷いことから街に引き返すことになった。
カグヤの腕は骨折しているもののガードの際に魔力を込めていたおかげで元に戻るという話だった。逆にもしまともに受けていたら骨は砕け散って二度と腕を使えなかったという話だった。
フランに関しては軽傷ではあるもののやはり入院が必要という話だった。
「しかし…二人とも思ったよりひどくなくてよかったな」
「まあ…あんたが突っ込んで怪我しなかったのは私達が囮になってシンのサポートがあったからなんだからね!」
ベッドに横になったままのカグヤはバードに悪態を言いった。
キルは病室の入り口の前で一人今後のことを考えていた。
半年後に組織の人間が集まってくるならその前にこの場からどの程度まで離れることが出来るか。他の組織の人間全員を相手にしてどこまで戦うことが出来るのか…。
「キル?」
頭の中で今後のことを考え続ける中で突然声を掛けたのはクロを抱いたサクヤだった。
「中に入らないの?」
「ああ…今入ろうとしていたんだ…」
「キル?今キルが考えていること当ててあげる」
突然のサクヤの言葉にキルはギクリとした。
そんな表情を見たのかサクヤは笑いかけてキルを見つめた。
「みんなを巻き込まないように早く街を出よう…そうなんでしょ?」
「それは…」
「もしそうしたら…私だけじゃない…他のみんなも怒るよ?」
サクヤの言葉と共に聞こえて来たのは病室内からの声だった。
「早くこの手を直して修行ね。今のままだと街を守れそうにないわ」
「僕はキルに少し稽古を付けてもらいましょう…」
「なら俺もそうするかな」
「僕は少し一人で鍛え直そう。今のままだと完全に足手まといだ」
それぞれ半年の間に少しでも鍛えて一緒に戦ってくれることを前提に話していることにキルは無意識に表情を緩めた。
「みんなの気持ち…分かった?」
「ああ…この街の奴らがバカだとよく分かった…でも…いい街だな」
キルの言葉にサクヤは満面の笑みを浮かべてからキルの手を握った。
戸惑った様子のキルに対して気にすることなく笑いかけてから病室の扉に手を掛けた。
「行こうキル!」
「ああ…」
病室に入った時にはキルの中から街を出て行こうという考えはなくなっていた。
- ある暗殺者と錬金術師の物語 ( No.48 )
- 日時: 2014/09/05 14:36
- 名前: 鮭 (ID: BOBXw5Wb)
第10話
シンはキルと対峙する形でカグヤの家の裏にある模擬戦用のグランドに立っていた。その横の作業場では腕をギブスで固定したカグヤとシンの様子を見に来たバードが立っていた。
シンは片手にナイフと銃を持っていた。ただしナイフの部分はゴム製で殺傷能力がない訓練用のナイフ、反対の手にはハンドガンを握っていた。
「まずはルールの確認。3分以内に俺に攻撃を当てるか被弾しなければクリアだ」
「分かりました。では行きます」
訓練用のナイフを逆手に持ち構えたまま答えるとシンは、飛びかかり向かってくるナイフをキルは銃芯で受け止める。それに対してシンはすぐに勢いに任せて横に蹴りに転じるもすぐにキルはしゃがみ蹴りを避けた。そのまま蹴りの直後で隙が出来たシンに向けて銃を構え銃弾を発砲する。
「うっ…」
「任務は失敗だな。ゴム弾じゃなかったら今ので死亡だぞ?」
「僕もまだまだですね…」
腹部にゴム弾を受け地面に仰向けのまま倒れるシンにキルは銃を納めながら話していき、それに合わせるように次はバードが剣を構え始めた。
「次は俺だよな」
「悪いが手加減とかしないからな…?」
「いらねえよ!」
大剣を構えたまま前に出るバードは剣を振り上げた瞬間にキルは飛び込んで銃を頭に突き付けた。反対の手ではバードの持つ大剣を抑えた。
「俺じゃなかったらもう死んでいた…振り上げ時が隙だらけだ…。シンの援護は常に完璧ではないんだからな?」
「くっ…お前の…組織の奴ら…こんな奴ばかりかよ…」
手を離したキルは起き上がったシンを見てからそのままカグヤにも視線を向けた。
「ひとまずカグヤはしばらく休養でシンとバードは組み手の相手にはなるからいつでも呼び出せよ」
「分かりました。毎日鍛錬してキルで試せばいいんですね」
「ならしっかりと鍛錬をして手こずらせるくらいはしないとな」
やる気を出し始めた二人を見てキルは表情を緩ませて行き、そんな3人を見るカグヤは現状何もできない自分にもどかしさを感じていた。
「カグヤ…お前は魔力の扱いを今のうちに学ぶといいぞ」
「魔力の?」
「フィオナの奴がその辺りは詳しいだろ?お前は魔力調整をすれば多分一番強くなれるはずだ」
「上から目線が気に入らないけど…いいわ。それであの二人より強くなってあげるんだから」
キルの言葉にカグヤは笑みを浮かべた。
自分にできることが見つかった喜び、そして自分自身もしっかりと戦力として考えてくれていることがカグヤにとって一番嬉しいことだった。
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リーネと別れてから何日か経過した。俺はいろいろと情報を集めて身寄りがない者たちが集まった村の存在を聞きその場所に向かっていた。噂の村は深い森の中にあり一日余計に掛って迷った挙句にようやく到着した。
「あの村か…しっかりとした作りみたいだな」
目に付いた村は木の柵で囲まれていて一つ一つの建物はレンガ造りでしっかりとできたものだった。見えている限りだと柄が悪い人間がいる様子もないから危険もなさそうだ。
「決まりだな…しばらくはここを拠点にするか」
俺は刀を握り直し念のためにといつでも戦闘が出来るように警戒しながら村に向かった。
村自体には特に特別な入村審査のようなものもなく問題なく入ることが出来て早速宿屋の場所を教えてもらい部屋を取ることが出来た。
「さて…まずは情報集めから始めないとな…」
俺は早速、探し人の情報集めようと外に出る。
村では何かの祭りをするためか飾り付けをする男達や祭りのための食事を用意している女性たちがいた。俺は祭りの内容が気になり手近にいた男に確認した。
「なあ…この時期は祭りでもあるのか?」
「なんだ?旅人さんは知らないのか?明日は生贄の儀式の日だよ?」
「生贄の儀式?」
「何だ知らないのか?」
男からの話を聞くとこの時期になると正体不明の魔物が現れて村を襲うという言い伝えがあり、毎年村で選ばれた赤子を決められた谷から落とすという儀式が行われているということだった。
「そんなの言い伝えじゃないのかよ?」
「しかしこの儀式は俺が子供のころから行われているものだ。だから今更やめて村が滅びたらそれこそ今まで犠牲になった赤子達に申し訳ないだろ?」
男の言葉に俺は嫌な予感が走った。もしここに妹が来たとしてすでに生贄にされていないかということを…。
「そういえば村の周辺で毎年その魔物を探している奴がいるという話を聞いたことがあるな…」
「村の周辺?だって周りは森に囲まれているぞ?」
「そいつはその森で生活している。それに森に囲まれたこの村に魔物が来ないのはそいつが退治しているかららしい」
俺は村人の話を聞きさらに詳細を聞くとその人物が現れたのは数年前でちょうど村を襲われ妹と別れた時期と一致していることを考えると非常に有力な情報だった。俺は村人に礼を言うと早速森を回ってみることにした。
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「せいや!」
身の丈は約2mあるベア系統の魔物をジンは刀で横薙ぎに切り裂いて撃退した。
おたけびと共に倒れた魔物に軽く黙祷をしてから刀を納めて息を付いた。村を出てそろそろ2時間は経過したが出会うのは魔物ばかりで人間に会うことがなかった。
「本当に人がいるのかよ…」
ジンがぼやいていると今倒したベアの雄たけびを聞いたのかさらに3体のベアが現れた。
「まだいるのかよ?来いよ…」
ジンは再び刀を引き抜いた。
ほぼ同時に地面を蹴り上げまずはと一匹の魔物を両断しその勢いを利用して体を捻りもう一体のベアの首筋に鞘を逆手に持ち殴り、怯んだところで再び魔物を横に薙ぎ払った。
残った一匹が仲間を呼ぼうとしている様子が見えたジンはすぐに攻撃に転じようとした時、一本の矢が魔物の首に突き刺さりそのまま声を上げられることなく倒れた。
「貴方…油断しすぎ…」
「誰だ?」
木の上から下りて来たのは一人の少女だった。少女は銀色の短髪、狩人用の茶色の帽子、首にゴーグルを掛けていた。上は緑とオレンジを主にした衣服と短パンに同色のブーツを装備。背中に矢を収納し片手には弓を持っていた。
「マナ…この森の狩人…」
「狩人?もしかしてお前がここの魔物を倒しているって奴か?」
「うん…」
マナはジンの問いかけに簡単に頷いて答え、魔物に刺さった矢をマナは無表情のまま引き抜いてから背中に矢を収納した。マナを見たジンは気になっていたことを確認してみた。
「マナ…ここには…いつ来たんだ?」
「今年で2年前…」
「その前は何をしていたんだ?」
「話す必要ない…」
ジンはマナの話から自分が探していた人物なのかと考えていた。ジンが確信できた理由は2つだった。
ジンの村では基本的に銀髪の人間が殆どであり、ジンの親も銀髪、そして妹も銀髪だった。
そしてもう一つの理由…
「マナ…その名前は…誰が付けたんだ?」
「…分からない…」
無表情のまま答えるマナに対してジンは刀を納めて考えていた。今目の前にいる人物が本当に探していた妹なのかどうか。
———マナは俺の母親が付けた名前。同一人物なのか…?
森の中に一人消えていくマナをジンはそのまま見つめることしかできなかった。
- ある暗殺者と錬金術師の物語 ( No.49 )
- 日時: 2014/09/08 17:32
- 名前: 鮭 (ID: BOBXw5Wb)
第11話
雲ひとつない青々とした空の元で俺は宿を出た。
昨晩から俺はマナのことが気になっていた。探していた人物が妹なのではないかと一晩中の間熟睡することが出来なかった。
村では今日の夜に儀式があるということで辺りには祭りの飾り付けが施されており、一部ではにぎわっているように見える。特に村長と呼ばれている老人は細かな部分を指摘している様子で誰よりも熱心に祭りの用意をしているように見えた。
————生贄なんて儀式をするのにそんな風には見えないな…
俺は賑わう村を他所に俺は昨日の森に向かって歩いて行った。
森の中を歩きながら俺は今回の生贄の儀式を行う崖に向かって歩いていた。マナが魔物を退治するのが目的なら会えるかもしれないと思ったからだ。
「しかし村を何年も怖がらせる生贄を探す魔物か…どんな奴だ…」
--------------------------------------------------------------
ジンは森の中を歩きながら一人で村人から聞いた崖に向かっていた。
森の中は昼まであるのにも拘らずうす暗く、時間も分からなくなりそうな場所だった。
「しかし…嫌な森だな…」
うす暗いだけでなく昼間なのにも拘らず不気味な空気のようなものが感じられた。
昨日戦った魔物は村の近くということでそれほどの強さでなくジン自身は大した苦労がなかった。
しかし村から離れて奥まで進んでくると何も出てこない分明らかに異様な雰囲気が出ていたことからジンは刀を常に握り締めて奥に進んだ。
「如何にも幽霊が出そうだよな…というかそういう魔物ってどうやって倒せばいいんだ…」
ジンはまだ会ってもいない魔物のことばかりを考えて呟いていた。
ことが起きたのはそんな時だった。
突如辺りから聞こえて来たのは細く今にも消え入りそうな獣の鳴き声だった。
「魔物か?それにしては…」
辺りから聞こえていることからその声の出所が分からずジンは刀を身構えたまま辺りを見回した。
「隠れて…」
「ん?誰だ?」
不意に聞こえて来た声はジンの頭上から聞こえた。
視線を向けた先にいたのは昨日に出会った少女マナだった。
それと共に聞こえていた魔物の声が近づいてくるのに気付きすぐにジンはその場を跳躍してマナの隣に腰を下ろした。
「お前…こんなところで何をしているんだよ?」
「静かに…来る…」
マナの言葉に視線を下げると現れたのは異形な姿の魔物達の姿だった。
あるものはウルフであるものの体が腐り骨が見えて口からはだらだらと膵液をたらし、同様な体でベア、鳥獣、そして人間だった。
「うっ…な…何だよ…あれ…」
直視するのも辛い魔物達の姿にジンは口元に手を当て、声を殺してマナに話しかけた。
ジンの言葉に対してマナは一度首を横に振り魔物の大群が消えていくのを確認してから木から下りた。
「おい!マナ!あいつらは何だよ?」
「アンデット…生ける屍…」
「アンデット?あんなの架空の魔物じゃないのかよ?」
「何かがあの魔物達を操っている…それだけは分かる…」
マナの説明を聞きジンは当然のように茫然としてしまった。アンデットいう存在、そんなものの近くにある村。そしてそんなものを見ても平然としていられるマナ。
「やっぱり…違うよな…」
「違う?」
ジンの言葉にマナは表情こそは無表情だったものの声色では疑問に感じている様子で、ジンは軽く手を振り魔物達が消えていった方向に視線を向けた。
「マナ…あいつらはどこに向かっているか分かるか?」
「崖の下…生贄の話…知っている?」
「ああ…そういえばそんな話があったな…」
マナからの問いかけにジンはすぐに理解できなかった。その様子に気付いたのかマナは小さくため息を漏らしてから視線を魔物達の向かった先に向けた。
「崖の下…あそこには…元凶がいる…」
「元凶?」
「私は…あれを倒すつもり…」
「ちょっと待てよ…その元凶って何なんだよ?」
ジンの問いかけに対してマナは答えることなく歩き始めた。当然ジンはそのあとを追いかけようとした時マナは視線を唐突にまったくの反対方向の獣道を指さした。
「あなたはすることある…」
「すること?」
「生贄を捧げたら面倒…だから…止める…」
マナの言葉にジンはそもそも今日まさに今から生贄の儀式が行われるということを思い出した。こうしている間に今年も生贄が捧げられてしまうという事実にジンはすぐに走り始めた。
「マナ!後で話がある!勝手にいなくなるなよ!」
ジンの言葉に対してマナはただ頷きそのまま魔物達が向かった方向に足を進めていった。
--------------------------------------------
マナの指さした獣道を通り過ぎると目に付いたのは聞いていた崖だった。
断崖絶壁である程度の空間には儀式で使うための飾りなどが設置されておりその周りには村人が約20人程集まっていた。
村人たちは円を描くように集結しておりその中心には村長らしい人物、そして若い男女とその前には一人の赤ん坊が横たわっていた。
「その儀式待て!」
俺の声に驚いたのか村人たちは視線を俺に向け、その間に跳躍と共に村人たちの円の中心に着地してすぐに子供の様子を確認した。この状況を分かっていない様子の赤ん坊は無邪気に笑っていて抱きかかえて恐らく夫婦と思われる母親に子供を返した。
夫婦の目元はどれ程泣いたらこうなるのだろうと考えてしまうほどに赤くなってしまっていた。
「何をする!儀式の途中じゃぞ!?」
「知るかよ…こんな儀式間違っているだろ…」
「間違っている?村を守るためじゃ!何が間違っている?」
村長の言葉は理解できないわけでなかった。この人も村を守るために必死で考えたと。
「でも今ここで泣いている奴がいるんだ。そんな方法は間違っている。それだけは俺でも分かる」
「ならどうする?村を滅ぼすつもりか?」
村長の言葉に周りからはそれに同調するように罵声が始まった。長く続いてきた儀式を数日前に来たばかりの人間が言うのだから当然だった。
「要はその魔物を退治すればいいんだろ?」
「バカな…そう言って退治に出て戻ってきたものは一人もいない!邪魔をするな!」
村長が言葉を言い終えたその瞬間だった。
一本の矢を胸に受けた村長がその場に倒れた。矢が飛んできた方向にいたのはマナだった。
マナは表情を一切変えることなく近づいてきて驚いた村人は黙って道を開けた。
「あなた…甘い…」
「甘いって…何も殺すことなかっただろ!?」
マナの言葉は意味が分からなかった。
しかしそんな疑問はすぐに解消された。
「オドロイタ…ヨク…キヅイタ…」
急に口調が変わった村長に驚き、それと共に肌はドロドロと溶けだし骨を露わにした。同時に黒いボロボロの衣を纏い片手には金色の杖を握っていた。
「うわ!何だこいつ!?」
「ランクA…アンデットの王…リッチ—…」
マナは小さく呟き周りの村人たちは村長だと思っていた人物が魔物だったということに驚き動揺してしまっていた。
「早く逃げろ!こいつは俺がやる!」
「オマエガ…?ムリダ…」
リッチ—が小さく言葉を発すると同時に杖が光った。それと共に不気味な声が上がり崖から大きな物体が飛んできた。
「ドラゴン?いや…あれは…」
「スカルドラゴン…」
崖の下から飛んできたのは巨大なドラゴンの…骨だった。
骨なのにも拘らずそれは自ら意思を持っているように見えた。
「何だあれ!骨じゃないのかよ!」
「あれもランクA…だけどAの中のさらに上級…私はAAと呼んでいる…」
「ランクAA ?」
「あの2体…追い払う…」
マナは弓を構えてリッチ—と骨のドラゴンに向かいあった。どう見ても一人で追い払おうとしているマナに俺は刀を身構え一緒に魔物達に対して身構えた。
- ある暗殺者と錬金術師の物語 ( No.50 )
- 日時: 2014/09/13 13:08
- 名前: 鮭 (ID: BOBXw5Wb)
第12話
地面に着地した骨のドラゴンは禍々しい雰囲気が出ていた。その雰囲気に村人たちはパニックになり逃げ始め、それと共にドラゴンは奇声とも言える雄たけびを上げた。同時にドラゴンの背後には黒く人のようなものが影がいくつも見えた。
「こいつ…普通の魔物じゃなよな…」
「怨念…それがドラゴンの原動力…」
「何だよ怨念って…そんなオカルトじみた話ありかよ?」
ジンは今までにないタイプの魔物に戸惑いを見せ、刀を鞘に納めたまま居合の構えをしながらも攻撃への一歩を踏み込めずにいた。そんなジンを他所にマナはすぐに弓を構え得てドラゴンに矢を放った。
しかしその矢はドラゴンに命中する前にドラゴンを覆うオーラに弾かれてしまった。
「物理攻撃…当たらない…面倒…」
「ちょっと待てよ…俺達だと不利過ぎるだろ」
ドラゴン同様に黒いオーラに包まれたもう一体の魔物リッチ—に視線を向けたジンは困惑した。
「マジュツノナイ…オマエタチ…ワレニカチメナイ…」
「うるさい…聞き取りにくい声で…しゃべるな…」
マナの一言とほぼ同時に一本の矢がリッチ—の頭に直撃し、その反動で倒れた。矢が頭に刺さった状態で立ちあがるリッチ—はすぐに杖を構えた。
「オマエ…ナニモノ…」
「名乗る必要…ない…」
マナは一言だけを発し矢を手に取ると先端が光り再び放たれた矢はリッチーの肩の関節部に命中し腕の部分が落ちた。
「マナ…お前…今の何だよ!?」
「知らないの?魔力を矢に伝わらせたの…」
マナは再び弓矢を構えると再び弓の先端が光り始めた。それに対してドラゴンは大きな雄たけびを上げ、それにより発生した衝撃でマナの構えた矢の先端の光が消えた。
「…魔力消失?」
「なら直接斬りつければいいんだろ!」
衝撃を突き抜けてジンはドラゴンに飛び込むと鞘から刀を抜き居合抜きで斬りかかるもその刀はドラゴンの体に到達する前にドラゴンを覆うオーラがそのゆく手を阻んだ。
「くそ…攻撃が…届かない…」
「下がって!」
マナの声にジンは咄嗟に一歩下がるとその直後に飛んできたリッチ—の杖が地面に突き刺さった。
「不意打ちかよ!」
「ジン!下がりなさい!」
急に口調が変わったマナにジンは戸惑いながらも後ろに下がり、マナに視線を向けるとその手には今までと違い赤く光に包まれた矢が握られていた。
「オマエ…マサカ…!」
リッチーが言葉を言い終える前に赤く光る矢が頭部を貫き、その瞬間にオーラが消え去り骨が灰となって消え去った。
「この程度なら…簡単…」
「マナ…お前…そんなに強かったのかよ…」
ジンは自分がまったく勝てる気がしなかった相手をほぼ一撃で倒したマナに驚き、その間にも彼女は腕をゆっくりと横に振ると再び赤い矢が生成されてまだの追っているドラゴンに放った。矢はドラゴンの前足に命中し雄たけびと共にその動きを鈍らせた。
「まだ生きている…もう一発…」
「ちょっと待て!様子が変だ!」
さらに弓を生成して攻撃を続けようとしたマナに対してジンは攻撃を制止させた。
ジンは再び視線をドラゴンに向けるとドラゴンを覆う黒いオーラが少しずつ形状を変えて何人もの人の形を作り、それと共に何人もの子供の泣き声が辺りに響き始めた。
「何だこれ…」
「リッチーの生贄になった子供の声…」
「子供の?じゃあお前が言っていた怨念って…」
「今まで生贄にされてきた子供のもの…」
マナの説明にジンは言葉を失ってしまった。村のためにと捧げられてきた子供によって生まれたこの魔物を本当に討伐するべきなのかという迷いが頭によぎった。
「どうするの…ほっとく?」
マナからの小さな言葉にジンは手に持った刀を握りしめた。
「マナ…俺の村は…もうないんだ…」
「そう…」
唐突なジンの言葉に対してマナは全く興味がない様子で呟いた。
そのまま弓を引き動きが鈍ったドラゴンに向けた。
「村の名前はヴィーゼ…そこで俺は家族を亡くしたんだ…」
「ヴィーゼ…?」
ジンの話した中の単語にマナは弓の動きを止めた。
————ヴィーゼ…知っている…?
「だから…俺は…あんな悲しみを…これ以上…増やしたくない。俺の目の届く範囲で…そんなことはさせない!」
ジンの言葉に答えるように刀は蒼く光を放ちドラゴンに飛び込んだ。
飛び込んできたジンにドラゴンは大きな雄たけびを上げ、ジンはそのまま刀を横に薙ぎ払いドラゴンの腕を切り裂いた。
————俺が守ってやるからな…マナ…————
「お兄ちゃん…?」
マナの小さな一言と共にドラゴンは縦に振り下ろされた刀により倒れた。
それと共にドラゴンを覆っていた黒いオーラは消え去りその屍は灰となり消え去った。
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気が付いた時俺は大木に背中を預ける形で座っていた。
辺りは暗く夜になっていたが空から見える星や月が辺りを照らしていた。昼間にあるいて来た森の中とは思えないほど綺麗で気分がいい場所だった。
「起きた?」
すぐ横から聞こえた声で俺はようやく隣にいたマナの存在に気付いた。マナは俺が起きたことに気付くと片手を前に出すと前に置かれていた薪に火を付けてたき火を起こした。
「魔術が使えたのか?」
「火だけ…後は弓矢の具現化もできる…」
「だから矢がなくならなかったのか」
マナの話を聞いて戦闘時の弓矢の光について理解できた。
確かカグヤがやっていた体術と同じ原理だったな…。
「貴方…名前は…?」
「あっ…そう言えばしっかり名乗ってなかったな…ジンだ」
「ジン…覚えた…それと刀…」
小さく呟いたマナは俺の刀を鞘に納められた刀を差し出してきた。
何故か俺に顔を向けないマナの態度の変貌がよく分からずに刀を受け取った。
「その刀…どうしたの?」
「俺の家の家宝だ。村を出た時に持って来たんだ…。よく親父に妹と一緒に刀の話を聞かされたな」
「妹…いたんだ…」
「ああ…それで俺は今…いなくなった妹を探して旅をしているんだ…」
「そう…見つかるといいね…」
マナの言葉を聞いている中で俺は体の疲れのせいかマナの言葉に答えることが出来ないまま意識を失った。
それでもマナが妹であると確信できた。理由は分からない。ただこうして一緒にいることで感じた今までにない安心感が俺に教えてくれた。
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「もう行くの…?」
次の日の朝にジンは刀を片手にして出発の準備をしているとマナは声を掛けて来た。心なしか寂しそうにも取れる声色にジンは笑みを浮かべた。
「ああ…ちょっと行きたい場所があるんだ。また会いに来ていいか?」
「うん…待っている」
「じゃあ…またな」
ずっと無表情だったマナの表情が緩んでいることに気付いたジンは上機嫌になり片手を振り森の中を歩いて行った。そんな様子にマナは遠慮がちに片手を振り見えなくなるまで見送った。
「仕事は終わったか?」
ジンを見送ったマナの背後から聞こえた声に対してゆっくりと振り向いた。その視線の先にいたのは黒のローブに身を包んだJだった。
「終わり…」
「思ったより時間が掛ったな…」
「ちょっとトラブル…」
マナは無表情のまま返事をすると昨晩寝ていた木の横に置いておいた弓と矢を手に取り、そして黒のローブを頭から被った。
「行くぞI」
「うん…」
Jは一人その場を立ち去り、マナは一度ジンが歩いて行った方向に視線を向けた。口元が僅かに動きしばらくするとその場を立ち去った。
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