複雑・ファジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- ある暗殺者と錬金術師の物語(更新一時停止・感想募集中)
- 日時: 2015/02/18 00:42
- 名前: 鮭 (ID: Y9aigq0B)
魔法、科学等様々な分野で発展する世界。広い世界には様々な国がありそれがいくつあるか、どんな国があるのか、どれだけの分野の学問があるのかそれらを知る者は誰もいなかった。
一般的な人間は他の国に興味を持たず、その日その日を普通に生活するものだった。例外はもちろんいた。一般的に知られているのは旅人。世界を回り生活をする人間。そういった人間はその国にはない文化を伝える場合もあり、国の発展に貢献することがある。
しかし一般には知られない人間もいる。それが隠密行動を行う者。情報収集などを中心としたスパイ、人の命を密かに奪う暗殺者等が当たる。
そのいくつもある国の中の一つから物語は始まる
-----------------------------------------------
初めまして。今回ここで小説を書かせてもらおうと思います鮭といいます。
更新は不定期ですが遅くても一週間に1話と考えています。人物紹介等は登場する度に行っていきます。実際の執筆自体は初めてということがあり至らない点はあると思いますがよろしくお願いします。
・更新履歴
11/3 3部21話追加
11/7 3部22話追加
11/14 3部23話追加
11/22 3部24話追加
12/3 3部25話追加
12/10 3部26話追加
12/17 3部27話追加
12/20 3部28話追加
12/26 3部29話追加
12/30 3部30話追加
12/31 人物詳細2追加
1/4 3部31話追加
1/7 3部32話追加
1/10 3部33話追加
1/14 3部34話追加
1/18 3部35話追加
1/23 3部36話追加
1/25 人物詳細3追加
1/31 3部37話追加
2/4 3部38話追加
2/10 番外編追加
2/18 番外編追加 更新一時停止
・本編
第1部
人物紹介
キル リーネ サクヤ カグヤ ジン>>5
第1話>>1 第2話>>2 第3話>>3 第4話>>4 第5話>>6
第6話>>7 第7話>>8 第8話>>9 第9話>>10 第10話>>11
第11話>>12 第12話>>13 第13話>>14
第2部
人物紹介
リーネ フラン シン バード リンク フィオナ カグヤ>>16
第1話>>15 第2話>>17 第3話>>18 第4話>>19 第5話>>20
第6話>>21 第7話>>22 第8話>>23 第9話>>24 第10話>>26
第11話>>27 第12話>>28 第13話>>29 第14話>>30 第15話>>31
第16話>>32 第17話>>33 第18話>>34
第3部(後々鬱、キャラ死亡等含むため閲覧注意)
人物データ1>>36
人物データ2>>46
第0話>>37
第1話>>38 第2話>>39 第3話>>40 第4話>>41 第5話>>42
第6話>>43 第7話>>44 第8話>>45 第9話>>47 第10話>>48
第11話>>49 第12話>>50 第13話>>51 第14話>>52 第15話>>53
第16話>>54 第17話>>55 第18話>>56 第19話>>57 第20話>>58
第21話>>59 第22話>>60 第23話>>61 第24話>>62 第25話>>63
第26話>>64 第27話>>65 第28話>>66 第29話>>67 第30話>>68
第31話>>70 第32話>>71 第33話>>72 第34話>>73 第35話>>74
第36話>>75 第37話>>77 第38話>>78
人物・用語詳細1(ネタバレ含)>>25
人物詳細2(ネタバレ含)フィオナ リオン レミ>>69
人物詳細3(ネタバレ含)ジン N マナ(I) シン バード>>76
・筆休め・気分転換
番外編
白騎士編
>>79 >>80
2部終了に伴うあとがきの様なもの>>35
軌跡
7/18 参照400突破
10/14 参照600突破
12/7 参照700突破
1/28 参照800突破
- ある暗殺者と錬金術師の物語 ( No.41 )
- 日時: 2014/08/03 02:23
- 名前: 鮭 (ID: bcCpS5uI)
第4話
ジンは刀を鞘に納めると再び居合抜きの構えを、Nは刀を抜いたままジンに向かって斬撃を放った。
刀同士でぶつかりそのまま向かいあったが、すぐにジンは片手に持った鞘でNの脇を狙うも左腕でブロックされた。
「くっ…これもだめかよ…」
「なかなかの一撃だね…少し驚いたよ」
ようやくNの動きに慣れて来たジンはすぐに一歩後ろに下がり、刀を鞘に納めた。キルもジンの横に移動してNと距離を取った。
「思ったより強いね。僕も本気にならないとね」
「ならその本気を見せてくれよ!」
同時にジンは緩急を付けた左右の動きを始めた。しかし実際はジンのその早やさからそう見えているだけで当然Nもそのことは分かっていた。Nが刀を構え直した瞬間ジンの動きが止まった。正確にはそう見えただけだった。
「こっちだね?」
Nが右に刀を振り下ろすとそこから姿を見せたジンは居合抜きで振り下ろされた刀を受け止めた。
すぐに鞘で連続攻撃と考えた時、一瞬Nの背後に見えた白い虎に気付き殆ど無意識に後ろに下がり、それに合わせてキルが体当たりをし、それにより先にジンがいた場所に大きな3本の爪跡が残った。
ジンはすぐに態勢を立て直しキルもすぐにNから距離を取った。
「運が良かったね。そこのウルフがいなかったら当たっていたのにね」
「その技が出る瞬間に白い虎が見えたぞ…」
「よく見えたね…風の奥義白虎…高速の3連斬撃だよ」
「ずいぶんサービスがいいな?奥義なんだろ?」
ジンはNの説明に対してジンは再び刀を鞘に納めてから居合抜きの構えでNの動きを観察した。
---------------------------------------------------------------------------
こいつは正直今まで見てきた奴らの中では比べ物にならなかった。
こんな状況なのに俺は何故か胸が高鳴った。
「今度は見切ってやるからな?」
「おもしろいね…なら行くよ?」
男は刀を構えたまま飛び込んでくる様子を見るとその縦斬りを横にかわしそのまま居合の体制になった時だった。風が自分の周りを纏う感覚、そして身動きができなくなった時、さっきの白い虎が前足で抑えつける姿、反対の手から振り下ろされていく様子が見えた。
咄嗟に刀でその腕の攻撃を抑えようとした。その衝撃で体が跳ね飛ばされているのが分かった。
「ぐあ!く…」
「またこのウルフに助けられたね?」
さっきキルと呼ばれていたウルフは俺のすぐ横で倒れていた。それでも体を震わせて立ち上がった。
「俺も負けてられないよな…」
ウルフが立ちあがっているのに自分が寝たままでいるわけにはいかないという対抗心で、鞘に納めた刀を杖の代わりにして立ちあがったが先の攻撃の威力の高さか足は震えていた。
「その様子だと次は無理みたいだね」
「だが…今の奥義はもう分かったぞ…いくつかの風で対象の動きを封じての3連撃と衝撃を与えるものだろ…」
「まあ大まかに当たりだね」
男は刀を構え直すと刀を縦に振りかざすと再び背後から白い虎が出てくるのが見えた。
恐らくこれは避けられないな…
そんなことを考えながら自分の元に向かって来た白い虎を見つめていた。
その間に入ったのはさっきのキルとかいうウルフの飼い主だった女だった。
---------------------------------------------------
リーネはジンに向かっていく白い虎の様子に気づき、すぐにその間に割って入った。
「バカ!早く逃げろ!」
自分が受けてボロボロになった技の間に入り込んだリーネにジンは当然のように叫ぶ。
その瞬間リーネの薬指に嵌められた指輪にが淡く光るとそれと共に白い虎の姿は消えて柔らかいそよ風だけが通り抜けた。
「バカな…な…何を…」
Nは目の前で起きたことが理解できず初めて動揺を見せた。
リーネは冷静にNの様子を観察した。次の動作、奥義を出す前触れ何一つ見逃さないつもりで見つめた。
「どうやって防いだのか聞かせてもらおうか…流石に驚いた…」
「あの技は風の魔術との組み合わせだよね?だからその風を別のタイプ風に作り替えたの。素材はたくさんあるからね」
リーネの話を聞いてからすぐにNは刀を構え直した。同時にNの背後に見えた炎を体に纏う鳥が見えた。
「あの技は…また別の奥義か?」
ジンはNの後ろにいる鳥の姿を確認した時に見えたのは2つの光景だった。
1つは当然自分達に向かってくる鳥の姿。
そしてもう一つ見えたのはリーネのもう一つの指輪が光った様子だった。
それと共に現れた水の壁がカーテンのようにその鳥を飲み込み消し去った。
「それはさっき見た…だから対策できるよ…」
リーネの言葉に対してNはさらに別の構えへと変えた。まだ見せていない技を使おうとしているのが分かり、リーネ、キル、ジンは身構えた。
「はい!そこまで!」
Nが刀を振り上げようとした時に聞こえた少女の声。
それと共にリーネとジンの視線に入ったのは、いつの間にかNの隣で刀を指先で捉えたかつて白騎士と名乗った少女、Lの姿だった。
----------------------------------------------------
「白騎士さん…?」
「覚えていてくれたんだ!うちの部下二人がごめんね?」
久しぶりに見た白騎士は最後に遺跡で見た時と全く変わっていなくてこんな状況なのににこやかな応答だった。
Nは刀を動かそうとしているけどまったく動く様子はなく、睨むような様子でNは白騎士を見た。
「どういうつもりだい?君がここに来るなんて聞いてないよ」
「だって今貴方はリーネちゃんを本気で殺そうとしたでしょ?だから止めに来たの」
白騎士の言葉にNは急に刀から手を離した。正直何が起こったのかは私には分からなかったけど戦闘意識がなくなったのは分かった。それと共に分かったのは白騎士がNと言う人よりも遥かに強いということだった。
「まあいいわ。多分まともに戦ったら今のリーネちゃんには勝てないだろうし」
「お前らは何者だよ。どうしてこの村を…」
ジンの姿を見た白騎士は一瞬驚いた表情を見せた。ただ見たのはジンというよりジンが持っている刀の方だったようにも見えた。
「あら?貴方…N?失態があるじゃない?」
「N?お前ら!この刀のこと知っているのか!?」
ジンの様子が急に変わった様子に私は驚いた。多分私が見て来たジンの表情の中で一番真剣な表情だった。
「知っているよ?私達が消した村の宝だった刀でしょ?」
白騎士は楽しそうな口調で話している様子で、ジンは今にも飛び出そうとしている様子が見えるけどまだダメージが残っているみたいで体が震えていた。
「白騎士さん…貴女は…何者なの?」
「まあ…もういいかな。私の本当の名前はL。そしてこいつはNよ。リーネちゃんの仲間にいるKの元仲間よ」
「K?もしかして…キルのこと?」
白騎士さんの言う言葉からどんな立場の人か予測できた。一つだけ違うとしたら…その瞳が人を何人も殺しているはずなのにNと言う人は全く後悔をしている様子もないし…白騎士…Lはそんな話さえも楽しそうに話していた。
「キル?へえ…今はそんな風に名乗っているの?本当に腑抜けになったんだ」
「腑抜け?そんなことないよ!キルは…少なくても…あなた達みたいに平気で人を殺したりしないよ!」
「ふーん…リーネちゃんもまだあいつのことちゃんと知らないんだ?」
Lは何故かクスクスと笑い始めた。なんか面白いことを見つけたように。
ジンも未だに刀を構える様子を見せているけど相手との力の差が分かるのか手を出せずにいる様子だった。
「じゃあそろそろ帰るわね。次に会った時はちゃんと捕まえてあげるからね?」
Lはまるで友達と別れるような調子で手を振って、その瞬間LとNの足元に魔法陣が浮き上がり、そのまま光と共に姿を消してしまった。
-----------------------------------------------------
「よかった…」
リーネは二人の姿が見えなくなると緊張感が解けてその場に座り込んだ。
「助かった…助けるつもりが逆に助けてもらう感じになってしまったな」
ジンも座り込んで、勇ましく飛び出して完全に負けてしまった自分の情けなさに笑ってしまっていた。
「いいよ…ジンがいなかったら私はこの指輪を取りに行く暇がなかったし…キルもやられていたからね」
リーネは消耗して地面に座り込んだ様子のキルの頭を撫でてから笑いかけ、ジンは未だに不思議そうな表情を浮かべていた。
「何で俺の名前を知っているんだ?」
「やっぱり覚えていない…」
リーネはジンの反応にため息をしてまずはこの状況をどこから説明していくべきか考え始めた。
- ある暗殺者と錬金術師の物語 ( No.42 )
- 日時: 2014/08/08 14:22
- 名前: 鮭 (ID: bcCpS5uI)
第5話
「ああ…そういえばいたな…あの時の変な奴」
「変な奴は余計だよ…」
私は村を出る準備のために簡単な荷造りのために夜の宿屋の部屋にいた。
ジンはキルの横に座って私の話を聞いていた。話すことで分かったのは忘れていたのが私だけだということだった。
確かにあの時はあまり目立っていなかったかもしれないけど…
「それでジンはどうするの?この村…今は復興で忙しいから旅人さんを受け入れる余裕ないみたいだよ?」
「まあ何とかなるだろ。ちょっとだけ食料を買ったら次の旅に行くつもりだ」
ジンは私の部屋にいるというのに特に気にする様子もなくキルを枕代わりにして床に横になり、私はベッドの上で地図を広げて次の行き先について考えていた。
「私はどうしようかな…」
「というかそれ…村のものだろ?返さなくていいのか?」
「あっ…この指輪?これ…村長さんがくれるって」
私がこの村を出ること、そして指輪を返却しようとした時村長さんは指輪を持っていくように言ってくれた。
話によると指輪自体を手にできる人がいなかったということだった。だから村を守ってくれたお礼も含めて持っていってほしいということだった。
「だから私…もっと強くなるためにまた旅に出るよ!」
「俺はもう少し旅を続けるか…あのLって奴もそうだが…Nって奴からも話を聞きたいからな」
ジンは笑いながらキルを枕にしたまま寝ようとしていた。だからこそ今の私にとって一番重要な問題があった。
「ちょっとジン…私そろそろ着替えて寝たいんだけど…?」
「いいぞ〜。別にお前の着替えなんか見ても何とも思わないからな」
「私は思うのよ!!」
未だかつてない威力の蹴りがジンの体吹き飛ばし部屋から追い出した。
---------------------------------------------------------------
朝になりしっかりと睡眠を取ったリーネは荷物をキルに背負わせて宿屋を出た。宿屋の出口では昨晩追い出されたジンの姿があった。
「あれ?ジンも今から出発?」
「まあな。ここだと休憩はできても修行も人探しもできないからな」
ジンの一言でリーネは以前会った時に聞いた話を思い出した。
リーネはジンが街を出ていく時にカグヤと一緒にジンの旅の目的を聞いていた。
ジンは修行の旅をしながら自分の村の敵撃ち、そしてもう一つ目的があった。それは行方不明の妹の捜索だった。
ジンの話によると村人の遺体の中に妹の姿だけはなく、もしかしたら逃げたのかもしれないと生死も分からない妹を当てもなく探しているということだった。
「まだ妹さんは見つからないの?」
「なかなか有力な情報がないんだ。ただ今行こうと思っている国は移民を受け入れるのが多いらしいから行こうと思うんだ」
ジンの話を聞いて安心したリーネは村の出口に一緒に向かい出口の警備員に挨拶をしてから村を出た。
村の人間達は二人と一匹に対してお礼を言って送り出してくれリーネに至っては大きく手を振り村を出て行った。
「ねえジン。いろいろ世界を回っているなら聞きたいことがあるんだけどいい?」
「聞きたいこと?俺は錬金術のことは分からないから行き先のアドバイスなんかできないぞ」
「そこは期待していないから大丈夫!」
リーネの断定的な言葉にジンは苦笑いを浮かべていた。この言葉に悪気がない辺りが尚ジンに取ってさらなるダメージになった。
「それで何を聞きたいんだよ…」
「えっと…金属の扱いに優れている街を探しているの」
「金属?何でまたそんな街を探しているんだ?」
「どうしても作らないといけないものがあるの。だから…そこを次の目的地にしたいの」
リーネからの言葉にジンはこれまで回ってきた街を思い出していった。そしてその中で一つ思い当たる街があった。
「そうだ…リーネ。お前の地図を借りていいか?」
「うん…これで分かるかな?」
リーネは前持って用意していた地図をジンに見せた。ジンはその地図を見ながら現在位置と自分が知る街を確認してある一点の場所を差した。
「ここだ…山に囲まれた街だがこの国は金属加工が俺の知る限りで一番だ」
「遠い…」
「まあ平気だろ。ここからなら1週間は掛らないし…それに別に急ぎじゃないんだろ?」
「確かにそうだけど…それしかないね」
ジンの話を聞いて地図を確認した後にため息を漏らすと2つの分かれ道が二人の前に現れた。それぞれ分かれて旅をさせるように与えられたと思われる道の前でリーネは足を止めた。
「一緒に旅もいいと思ったけど…ここまでみたいだね」
「少しはタダで過ごせると思ったけど…仕方ないよね」
ジンの言葉にリーネの無言の拳が放たれるも今度はすぐに避けてそのまま走って片方の道に向かった。
「おい!リーネ!」
「なーに?」
少し離れた位置からのジンの声にリーネは声を大きく出した。そんなリーネの視界に映ったのは満面の笑顔を浮かべたジンだった。
「俺は次に会った時は今より強くなっているからな!」
「私も!今より立派な錬金術師になっているからね!」
ジンもリーネの言葉を聞くとそのまま走り出した。リーネにはもう視線を迎えることもなく見えなくなるまでリーネは見送った。傍らにいるキルはリーネを見上げていて笑いかけながら人とは反対方向の道を確認した。
「よし!行こうキル!私達の旅はまだまだ終わらないんだからね!」
リーネは一度キルの頭を撫でるとギュッと拳を握りしめてから走ってその長い道を走って行った。
-------------------------------------------------------------------
「対象確認…そっちは…」
少女の声が無線機を通して耳に届いた。その声に続くように先まで走っていた様子の男の荒い呼吸音もピタリと止まった。
「こっちも問題ない…いつでも飛びだせるぞ」
男の声を聞き無線機に向かって小さく息を吐くと自分の武器である銃を片手に取った。
彼から大凡数メートルの位置には巨大なドラゴンが森の中を歩いていた。
最近は街の周りにいたウルフやベアは数が減っていき代わりに大型で一般には退治しにくいものばかりが増えて来た。そのために最近の魔物退治は人手不足で、彼らは朝から晩まで魔物退治をしている状況だった。
「よし!行くぞシン!バード!」
彼の一言が無線機に向けて指示を出した時、ドラゴンの後ろから飛び出してきたバードは背中の大剣でドラゴンの横から斬り掛った。固いドラゴンの皮膚に大きな切り傷を与え、それに続くようにドラゴンの頭に大きな衝撃が与えられて体を大きく横に踏み出して怯んだ。
「今だ!やれキル!」
「任せろ」
バードの声に反応して無線機から指示を出していたキルは銃を構えて3発の銃弾を撃ち込みドラゴンの首元に命中しその瞬間、ドラゴンは光りに包まれたまま四散して消えた。
「またこのパターンですか…ここ最近の魔物はやっぱりおかしいですね」
木の上から狙撃をしていたシンはライフルを片手に持って二人の元に下りて来た。バードも今使ったばかりの大剣に視線を向けてその異変を確認した。
「確かに…今だってしっかり斬りつけたのに全く血も付いてないし…魔物の亡骸だって残らない…どうなっているんだ?」
「何か対策がいるな…。こう定期的にAクラスの魔物が現れるのは明らかに変だ…」
キルは銃を納めてから地面に落ちた光るものに気付き拾った。キルの手にした石は数センチ程の大きさで赤い石だった。
「何だそれ?宝石か?」
「魔石だな…しかし見たことないタイプだな…」
「そういったものは僕たちよりも帰ってフィオナさんに確認したらどうですか?」
ライフルを分解するシンに対してキルはため息を漏らして懐に石を胸ポケットに入れた。
「それにしても…なんかこうも簡単に片付くと逆に不気味だよな」
「珍しいですね…バードさんはいつもこういうときは一番楽観的じゃないですか…」
ライフルを片付けたシンは別で銃に弾込め作業をして呟き、当然それが聞こえていたバードと言い争いを始めた。
流石に見慣れた光景になったキルは銃のシリンダーに弾を装填してから二人の間に割って入った。
「ほら…報告書があるから痴話喧嘩は終わりにしろよ」
「何でこんな奴とそんな喧嘩しないとだめなんだよ!」
「確かに…無駄な時間でしたね…帰りましょう」
表情を変えることなく街に向かい歩き始めるシンにバードは声をあげて追いかけていき、キルはそんな二人を見て密かに笑みを浮かべてから後に続いて歩いて行った。
- ある暗殺者と錬金術師の物語 ( No.43 )
- 日時: 2014/08/13 23:25
- 名前: 鮭 (ID: bcCpS5uI)
第6話
「うーん…初めて見る魔石だわ…」
役所に戻った俺はバードとシンに報告書を任せてから秘書のフィオナに赤い魔石の確認を頼んでいた。
「でも凄いわよ?この石…僅かずつだけど私の魔力を吸収しているわ」
「魔力を?」
「ええ…多分人工的に作られたものね…ここまで高度な者だと…凄く上級な魔術師ね…」
魔術の話が分からない俺は正直さっぱりな話だった。
「おーいキル。終わったか?」
「こっちは一応報告書を提出してきましたよ」
秘書室に入ってきたのはシンとバードだった。そんな二人にフィオナは目もくれず手に持った赤い魔石と魔術書を何度も見ていた。
「結局魔石については分からなかったのか?」
「フィオナも見たことがないらしい」
「そうなると完全に未知の物体というわけですね」
フィオナは魔石を机の上に置くと自分の椅子の上にポンと座り込んだ。本を閉じたところを見ると解析を中断したようだった。
「一つだけ分かったことはあるわよ?この魔石を作った奴が凄く最悪な奴だってこと…」
「最悪?どういうことだよ」
「みんなはそもそも魔術師が作る魔石については知っている?」
フィオナの問いかけにシンは分からないのか首を横に振り、バードについてはため息を漏らして知らないと手を振った。正直俺も魔術の類はよく分からないことから興味自体はあった。ただこいつの話は長い…果たして何人がこの話をしっかりと聞くのだろう…。
「魔石は元々鉱石に魔術師が魔力を注ぎこんだ物なの。稀に自然に魔力を蓄積させて行く鉱石もあるけどね」
「そうなると…前にリーネが見つけた魔石は貴重なものだったんですね…」
「そうよ?口にこそ出さなかったけどあれにはびっくりしたわよ」
フィオナの話を聞いてそういったことが出来そうな魔術師には一人だけ覚えがあった。ただそいつのことは俺自身もそこまで言うほど知らないし戦っているところも見たことがないから確信はできなかった。
「話を戻すわ。人工魔石だけどこの効果は作った魔術師の力に影響されやすいの。例えば私が作ったら多分属性強化系かしら?」
「多分?何だよ…作ったことないのかよ?」
「作るのが大変なのよ。それにできても私にはこの本があるし、それに他に魔法使う人いないし」
バードの言葉に特に気にすることもなくフィオナは簡単に説明しながら手に持っていた魔石に何かしらの術を掛けた。
「ただこの魔石はこうして何もしないでいると辺りの魔力を所構わず吸収して自分の力にしている…」
「つまりこの魔石を作ったのは魔力を吸収するような魔術師ということですか?」
「そういうこと…それでこの話を聞くと思いだすことない?」
フィオナの話を聞いて思い出したのはリーネの父親の話だった。同じことを考えたのかバードやシンも顔色が悪かった。
「おい…まさか…」
「多分そうね…この魔石を作ったのはリーネちゃんの父親の敵と見ていいわ」
バードが確認した言葉はすぐにフィオナが肯定した。フィオナは術を掛け終えた魔石を手に取った。その石は先とは違い黒ずんだ物になった。
「今この石には封印術を掛けてみたわ。正確には辺りに干渉しないようにしたんだけどそうしたら魔力を吸収できなくなって、ただの石に戻ったわ」
「しかし…気になるのはなぜこんなものが落ちているんでしょう…」
「召喚術だな?」
シンの疑問に俺が思いつくのはそれだった。フィオナも黙って頷いた。
「キル君の言うとおり。正確にはこの石に召喚術の魔力を吸収させておいて後から発動させているんでしょうね。だから最近のAランクの魔物はまるで存在していないものみたいに消えるのね」
「なんか随分変な奴らに目を付けられてないか?」
バードの言葉を聞いて真っ先に思いつくのが俺を狙った組織の存在だった。
あまり考えたくはないが俺の出方や街の戦力を図るための様子見と考えるのが自然だ。
「はい!とりあえず今日はここまで!またお仕事が出てくるまではしっかり休憩しておくこと!」
フィオナの話で俺は思考を中断させた。
シンとバードは一先ずの仕事を終えて各々気を抜いた。俺はさっきの魔石のことが気になりやや落ち着かなかったがそれさえも見破られているのかフィオナはにこやかに笑い先の魔石に何かしらの術を掛けることでそれは砕け散った。
「これで心配の種はなくなったでしょ? キルも早くサクヤさんに会いに行ってあげて!」
「ばか…余計な御世話だよ」
フィオナは全く動じる様子もなく笑みを浮かべていて小馬鹿にされている気分になった俺はため息をしながら他の二人と一緒に部屋を出て行った。
----------------------------------------------------
「ふーん…じゃあライフルの反動は大丈夫だったみたいね」
「ええ…威力も反動の具合も問題ありませんでした」
カグヤはシンのライフルを組み上げたまま銃のメンテナンスをしていた。
キルもカグヤから工具を借りて簡単な掃除をしていてその間退屈なバードはクロの面倒を見るのが仕事だった。
「それにしても…ここって繁盛しているのか?」
「あんたらだけでも十分な稼ぎになっているわよ。それに最近はあんた達が活躍してくれるから役所からたくさん礼金も入ってくるもの」
「だからいつ来てもタダ同然な訳か…」
カグヤの話にバードが感心している間にキルは銃の調整を完了させていた。
キルの持つ特殊な銃は作りも特殊なせいで本人にしか直せず、銃好きのカグヤに取っては一度分解して中身を調べたいということだったがいつ帰ってくるか分からないからと断られていた。
「それで?あんた達、今日はもう仕事終わったの?」
「今日は朝早かったからフィオナさんが気を利かせて休ませてもらいました」
シンの返答にふーん…と簡単な返事をしてライフルをシンに手渡し、分かり切っていながら一人ずつに指さして人数を確認した。
「5人ね。じゃあキルはお姉ちゃんに連絡してよ。私は他の銃も見ないといけないし」
「人数を伝えればいいんだな…分かった」
キルは銃を納めて家の中に入っていきその様子を見てからシンは腰に納めた銃をカグヤに手渡した。
「いいんですか?」
「いいのよ。これくらいしないとあの二人は進まないでしょ?」
「僕は貴女のことを言ったんですけど…」
シンの言葉にカグヤは顔を逸らしてシンの銃の分解を始めた。その様子にバードは空気を読まずにズカズカと歩み寄ってきた。
「何だよシン?カグヤの弱みでも握ったか?」
「バードさんには関係ない話です…」
そっけない返事にバードは自分が悪かったのかと首を傾げるばかりだった。
-------------------------------------------
「サクヤ?いるか?」
「あら?いらっしゃいキル」
キルが部屋に入るとサクヤは夕食の用意をしていたのかエプロン姿でキルを出迎えた。
「カグヤが今日は5人分の夕食を頼むってよ」
「ということは…今日はみんな勢ぞろいなのね?他の皆は?」
「外で武器のメンテ中だ。終わったら来るだろ」
キルの言葉にサクヤは張り切り始め鼻歌を歌いながら鍋の中を混ぜている様子が見えた。
鼻に届く香りから今日の夕食はカレ—だと分かるとキルはすぐに食べられるようにと椅子に座った。
「あっ!キルはカレ—の味何がいい?辛い方が好きかしら?」
「ん?あまり食べたことがないからな…。いつも作っている味付けでいいぞ?」
「じゃあ辛口にするね?」
意外な味付けの選択にキルは一瞬驚きながらもこういった味付けが好きなカグヤの存在を浮かべてすぐに納得できた。
「そういえばキルは明日休み?」
「明日は…」
キルが考えたのは今朝確認した一週間の休日の内容だった。
「大丈夫だな…。明日は次の調査だからみんな休憩らしいからな」
「よかった!じゃあ明日一緒にお出かけしない?」
サクヤからの誘いに予想していなかったことから明日の予定を変えることに弊害があるかどうか考えた。
最もキルの休みは銃の手入れか寝ているかであって予定のようなものはいつもない。
「出かけるのはいいがどこか行きたい場所でもあるのか?」
「みんなでピクニック何てどうかと思ったの!」
「ピクニック?」
キルにとっては聞いたことがない内容の行事だった。
「みんなでお出かけしてお弁当を食べるのよ?楽しそうでしょ?行きましょう?」
「どうせ暇だからな…じゃあ行ってみるかな」
「うん!明日が楽しみね!」
キルの言葉にサクヤは満面の笑みを浮かべて答え、予想以上に喜ぶサクヤにキルは戸惑いながらも心の奥では明日の外出を楽しみにしていた。
- ある暗殺者と錬金術師の物語 ( No.44 )
- 日時: 2014/08/18 10:52
- 名前: 鮭 (ID: bcCpS5uI)
第7話
「ふう…ここは涼しいわね…」
「本当だね。ここなら危険もなさそうだしね」
ここは街から少し離れた位置にある森の中。魔物の出現報告もなく避暑地としても町ではそれなりに有名な場所だった。リラックスした様子で森の中を歩くカグヤとサクヤの後ろを4人はついて行くように歩いていた。
「しかし…何で僕まで呼ばれた…」
キル、バード、シンの3人に続いて歩いていたのはフランだった。
「いいだろ?どうせ暇だろ?」
「貴方は保安官を何だと思っているんですか…」
バードからの言葉にフランは呆れ果てた様子で答えた。実際は3人が出かけるなら休みを取らないフランも連れて行くように所長やフィオナに頼まれたから連れて来たのだった。
「それにしてもここは涼しくて過ごしやすいですね」
「いつも涼しい顔しているからそういうのを感じているとは思わなかったぞ」
「今までは僕が慎重になる必要がありましたから…その癖が直らないんです…」
「ああ…そういうことか」
キルが働き始める前はリーネとバードが仕事のメンバーであったことを考え、シンの負担の具合からキルは密かに同情した。あの二人がいる状態でチームを成り立たせたシンの力量を考えると参謀の才能があるのではと思われた。
「ちょっと!何ちんたら歩いているのよ?」
「安全地帯とはいえ警戒くらいしろよ」
誰よりも先を先行するカグヤに続くようにバードが追いかけていきその後ろを追いかけるようにサクヤ、少し離れてフラン、その後ろからキルとシンが歩いて行った。
最後尾の二人は楽しむというよりも最近の魔物を考えて何か起こらないかを警戒し続けていた。
------------------------------------------------------------------------
「ほら!ここなんてどうかしら?」
カグヤが示したのは綺麗な湖の近くにある場所だった。
「悪くないですね…水も綺麗ですからここを拠点にしましょうか」
「ならここで一度休憩しようぜ?もうはらぺこだ…」
シンの確認が済んだことでバードは真っ先に座り込み、フランは湖の水質を確認していた。
「ずいぶん綺麗な水ね…この水は大丈夫そう?」
「うわ!い…一応…問題ないぞ…」
「驚き過ぎよ…いい加減にしなさいよね…」
相変わらずカグヤが苦手なフランはすぐに距離を取って水に問題がないことを伝えるもフランの様子に不機嫌になりながら水筒に水を汲み始めた。
「まあまあ。誰にだって苦手なことはあるわよ」
「だって…もう年単位の付き合いなのよ」
サクヤに愚痴る様子のカグヤから少し離れた位置では昼寝をするバードとクロ、その横では普段と変わらず銃の手入れをするシンの姿がフランの目に入った。
「君らは相変わらずなんだな」
「一応一人は警戒しておいた方がいいですから…それにキルが何かを見つけたみたいですから」
シンの言葉でフランはようやくキルの姿が見えないことに気付いた。そのことにまったく気にしている様子がないシンはライフルを組み上げて辺りを見回した。同時にバードも目を覚まして起き上がりカグヤもサクヤの手を引いて一か所に集まった。
「ねえ…何かいない?」
「そうだな…安全地帯のはずなんだけどな」
カグヤの問いかけにバードが答えフランとシンは辺りを警戒し、サクヤを守るようにして隊列を整えた。
-------------------------------------------------------
————見られている?
それが最初に俺が感じた違和感だった。
木の枝に飛び移りながらその違和感を発しているものに向かって移動を続けた。ふと俺の目に黒い影が見えた。すぐに俺は銃を抜きその陰に向かい2発の銃弾を発砲した。
その次の瞬間に見えたのは銃弾が何かで弾き落された。そのまま地面に着地して動きを止め地面に着地した。
追いついて地面に着地して目に入ったのは頭の上から黒いローブで覆った人物で小柄であること以外は性別さえもわからなかった。
「初めまして…K」
「女?そう呼ぶところを見ると組織の人間か?」
「Iで分かるはず…」
「Iだと?お前があのIだと言うのかよ?」
目の前の人物は黙って首を縦に動かした。
Iは俺自身の初めて見た。
K、Lそれと首領であるZのいわば右腕であるJの他にもう一人、Jと首領だけが正体を知っているIがいる。そしてK、L、J、Iの4人が組織の中で最大の実力者だと言われていた。
ただしIの存在はあくまで噂の領域で、実際の実力はおろか直接話をしたのは初めてだった。
「まさかIの存在が本当だったなんてな…。それで何の用だよ?」
「まだ今なら戻れる…戻ったら?」
「悪いが戻る気はない…」
銃に新しく弾を入れ直し、まったく動きが分からない俺は身構えた。同時に片手を出したIの細い腕に細い紐状の炎が現れその鞭が迫ってくるのが見えた。すぐに横にかわし鞭が当たった地面が焼き焦げていることを確認した。
「ちゃんと実際の炎みたいだな…魔術師か?」
先の銃弾を防いだのは恐らくこの炎の鞭だと考えられる。Iは俺の質問に全く答える様子を見せずさらに鞭を使って追撃を繰り返し続けた。
一つ一つの攻撃を避けながら考えていたのはこのIの戦闘力だった。組織の殆どの人間が何かしら身体能力が特化しているが例外もある。例えば組織に入りたての人間に関しては当然そういったものがない。そしてもう一つは特異体質や他にない特殊能力を持っているもの。正直俺もそこまで他の奴のことは把握していない。ましてこのIについては全く情報がなかった。
「おい…結局何の用だ…。質問に答えずに攻撃はないだろ?」
「貴方の連れ戻し…無理なら…処刑…それが…任務…」
すぐに放たれた炎の鞭を後ろに下がってかわし、鞭で打ち落とせないタイミングで銃を3発撃ちこんだ。照準は鞭を操っている腕と両足。
銃弾が当たろうとした時、Iの足元に大きな衝撃が放たれてそれと共に姿を消した。正確には俺が見失いそうになる程の早さで後ろに回り込まれた。
「後ろか!」
「遅い…」
振り向くとほぼ同時にIが鞭を振り下ろしている姿が目に映り回避行動を取ろうとした時には鞭が体に当たり、衝撃と熱い痛みを感じた。
-----------------------------------------------------------------
「何でこんなに魔物がたくさんいるのよ!」
カグヤは鳥型の魔物を蹴り落としたカグヤはぼやきながら魔物を確認するとそのまま倒した魔物は光りと共に四散した。
「見たことがない魔物ばかりだ…召喚獣の類だな…」
フランは目の前のベア系の魔物を槍で追い払い、シンとバードはサクヤとクロを庇いながら戦闘を続けていた。
「キルの奴!こんな時にどこに行ったんだよ?」
「恐らくこの魔物たちを出している首謀者を探しているのでしょう…」
シンは空中の魔物をライフルを使い落としていき、バードは地上の魔物たちを大剣を使って追い払いいつまでも現れ続ける魔物に疲労の表情を浮かべ始めた。
「いや…首謀者は…あそこだ」
ずっと魔物と戦闘し続けながら一点と常に気にしていたフランは手に持った槍をしっかりと握るとその一点に向かって投げた。その一点に槍が投げ込まれると周りにいた魔物は一斉に四散して消えてしまった。
「こっちは弱い人しかいないって聞いた…。情報にエラー…」
茂みの中からフランの投げた槍を片手に現れたのは背中に大鎌を下げた少女と黒いローブを身に付けた巨体の人物だった。
「あんた達があの魔物たちの親黙って訳?」
「間違っていないと思う…。私はR、そして彼はGよ」
Rはフランの槍を無造作に投げて、それをフランが掴むとすぐに身構えた。同時に他のメンバーも身構えている中でサクヤだけがRに視線を向けた。
「貴女は…もしかして…」
「お姉ちゃんあいつを知っているの?」
「えっと…私が捕まった時に…気絶していて…キルが戦ったって言っていたの…」
サクヤの言葉から2人の正体が分かり、身構えた様子を見たRは大鎌を片手に持って地面に振りかざし地面に突き刺した。
「Gは動かなくていい…私がやる…」
「お譲ちゃん一人で俺らと戦う気かよ」
Rの言葉にバードは大剣を構えたまま言い放つとRは大鎌を地面に刺したまま一人で前に出て来た。
「残念だけど…あなた達なら素手で十分…」
「あんた4人に対して一人で素手なんてふざけているの!?」
無防備のまま前に出てくるRにカグヤは声をあげるもRは無表情のまま立ちはだかった。
- ある暗殺者と錬金術師の物語 ( No.45 )
- 日時: 2014/08/23 15:10
- 名前: 鮭 (ID: bcCpS5uI)
第8話
「誰でも立ちはだかるなら…」
一人で前に出て来たRに対してシンは迷うことなくマグナムを引き抜き、銃弾を発砲するも当たり前のように体を逸らして銃弾を避けた。
「終わり?まさか手加減?」
Rの言葉に反応するよりも早くフランは横に回り込み、槍で薙ぎ払おうとするもその一撃はRの指先で止められた。
「まじかよ!フランの一撃が指だけで!?」
「驚いている暇なんてないわよ!」
すぐにカグヤはRに向かって飛び込み、それに合わせるようにRは槍ごとフランを投げてカグヤに激突させ
二人はそのまま大木に叩きつけられた。
「二人係でこれ?」
「この…今度は俺が!」
「待ってください…」
つまらないオモチャを見るようにRはがっかりとした様子を見せ、続くように飛び込もうとするバードの足をシンは払い転ばせた。
「いきなり何をするんだよ!?」
「バードさんを止めるのはこれが一番簡単ですから…」
「作戦?いいよ…待ってあげる…」
Rの言葉に対してシンはマグナムとハンドガンを用意し、バードは大剣をもう一度構え直した。
「彼女にはこのままぶつかっていったらやられます…」
「まあ…あいつらがそれは証明してくれたな」
「だから敢えて同じ手を使いましょう…」
バードに対して簡単に説明をいていき、一発だけ撃ってしまったマグナムに銃弾を込めた。
「ん?ちょっと待て!じゃあさっきの俺への足掛けは何だよ?同じ手で行くならいらなかっただろ!」
「銃弾に弾を入れたかったので一度流れを斬りました…」
淡々とした口調のまま説明をしていくシンに拳を握りしめそうになるもすぐに目の前の敵に向き直った。
「準備できたんだ…じゃあ作戦の結果…見てあげる…」
「あまり俺達を甘く見ない方がいいぞ!」
無防備のままに構えるRに対してバードは飛び込んで、同時にシンはハンドガンを発砲した。当然のようにそれを横に避けるRに対してバードは横薙ぎに大剣を振るった。当然のように刀身を片手で受け止め、それに合わせてシンはマグナムを構えた。
「それなら無理…」
Rはすぐに大剣ごと盾にしようと強引にバードの体ごと自分の前に移動させた。予想以上の怪力のせいかあまりに簡単に自分の体を持ち上げられたバードは驚きながら「うお!?」と声をあげていた。
「その手は読めています」
シンはマグナムを構えたままさらにもう片方の手に握るハンドガンを構え直しバードの体の隙間からRに銃弾を撃った。Rはその銃弾を空いている片手で撃ち落とした。
「それじゃあ当たらない…」
「これはどう!?」
Rの両手がふさがっている間に先に飛ばされたカグヤはRの後ろに回り込み魔力を込めた拳で振るった。
「おしかった…」
カグヤの拳に立ちはだかったのはRの身に付けたマントだった。まるで意思を持つようにマントはカグヤの拳を防ぎそのままバードはシンの元に投げ飛ばされ、そのままの勢いでカグヤに裏拳放った。
避けられないと判断したカグヤは魔力を込めた腕で受け止めようとするも直撃の瞬間にボキボキと鈍い音を感じそのまま吹き飛ばされた。
「カグヤ!」
吹き飛ばされたカグヤを受け止めたのはフランだった。カグヤの右腕は不自然な方向に曲がり明らかに折れていることが分かる状態だった。
「大丈夫か?今回復してやる…」
「あ…あんた…大丈夫な訳…?」
「今はそれどころじゃないだろ!」
本来カグヤが苦手なフランはそのことさえも気にする余裕がなく一度サクヤの元に戻った。
「カグヤちゃん!」
「大丈夫…腕以外は問題ないです」
駆け寄ってきたサクヤにカグヤを預けた時、Rが自分の大鎌に向かい歩き始める様子が目に入り、3人は身構えた。
「思ったより強い…見誤ったこと…謝る…」
Rは地面に突き刺したまま置いていた大鎌に手を掛けて引き抜いた。
「お詫び…今度はちゃんと相手をしてあげる…」
「あれを受けたら…一発でアウトだな…」
バードは大剣を構える中、横で微かに震えているシンの姿が目に入った。バード自身も正直この状況は震えるほど怖かった。ただシンのいる手前そんな様子を見せるわけにはいかなかった。
「シン…バードさん…今回は長期戦だ…あの鎌はもちろん…捕まったら…アウトだ…」
フランは槍を身構えたまま二人に話し目の前で大鎌を片手に持つRと向き合った。
-------------------------------------------------------------
「やられたな…」
炎の鞭を受けた左手から焦げた臭いが発ち、片膝を付いたままキルは腕に炎を纏ったIを見た。
「新調した服だから弁償してほしいな…」
「無理…」
Iの言葉に反応するように炎の鞭は再びキルにまるで生きているが如く軌道が読みにくいように縦横に動き回り、頭の中では避けていても徐々に手足に鞭を受けていく形になり距離を取った。
「面倒な武器だな…おまけにお前の力はその脚力か」
キルが話し終える直前で先と同様に衝撃と共に背後に回り込んだIは再度炎の鞭を振り下ろそうとする。
それとほぼ同時にキルは前に反転しながら飛び込み銃弾を3発撃ち込んだ。その銃弾を受けてIの動きが止まった。
「被弾…久しぶり…」
「その割にまったく動じる様子がないな」
銃弾が命中したと思われたIは特に動じる様子もなくもう片方の手を前に出すと同様に炎の鞭が現れた。
「少し…本気出す…」
「なら…俺も…本気で行くぞ?」
キルの瞳は赤から青に変わり前に飛び出すとその目に映ったのは、自分に向かって飛んでくる炎の鞭、そして体が陽炎のように揺れるIの姿だった。
「そういうことか…」
キルの呟きと共に鞭を掻い潜り、そのまま銃そのもので打撃を放つと何の手応えがないままにすり抜けてそのまま距離を開けた。
「面倒なタイプみたいだな…」
「みんな…貴方を手放さない理由…その眼ね…」
「多分な。そのおかげでお前の術の正体も分かった」
銃弾に弾を込めながらキルはIに対して視線を切らなかった。
「正体…」
「魔道士の中の最上位賢者だな…」
「その中のフレイムマスター…体を炎に変えられる…」
「だから銃弾が効かないし…こいつで触れていなかったらやばかったな…」
特殊金属でできて本来熱を持つことがない銃が熱を発していることから余程の熱をI自身から発せられていることが分かった。
「このローブは魔力の制御用…そうじゃないとこんな森…灰になる…」
「そうだろうな…だから面倒なんだよ」
「でも…今日はいい…貴方の力が分かったから…」
Iは両手の鞭を解除し踵を返した。
「K…次に貴方の前に現れた時は…殺す…」
一言だけを残してから衝撃と共にIの姿は消えてしまった。
「面倒な奴に…眼を付けられたな…」
銃を納めたキルは先に行かせたメンバーの元に向かった。
------------------------------------------------------------------------------------
森の中にある泉の前でIは足を止めた。そのまま一本の木を無言で見つめてから片手を差し出すとガサガサという音を立てた。
「どうだった…Kの方は…」
「J…来ていたの…」
黒のローブに身を包んだJを確認するとIは手を下げた。
I自身はJあまりいい印象を持っていなかったものの他の人間と関わることがなかったことからそれが普通であると認識していた。
「Kは…想像よりやる…。でも今の戦力で問題なくあの町くらいは消せる…」
「ならお前に次の指示だ。確認してきてほしいことがある」
「前に言っていた監視ね…分かった…」
Jから次の話を聞くとIはすぐにその場を飛び立ち、Jもすぐにその場から光と共に姿を消した。
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16