複雑・ファジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

大江戸那刃手明拳流血風録
日時: 2023/11/04 18:13
名前: 梶原明生 (ID: gV64xmvp)

・・・幕末期。豊後日鷹藩出身の忍侍の家柄に生まれた小助は、16歳の時、師匠の言いつけで薩摩島津藩を訪れるために名刀「国光」と共に商船に乗った。が、しかし、その船が難破して沈み、別の僚船に助けられた小助は記憶喪失のまま、南のとある島国にたどり着いた。その国の名は「琉球王国」。国光だけが所持品となった小助を不憫に思った客の一人、「宮城一鉄」に絆されて、宮城家の居候となるが、直にそこが「那刃手明拳流」と言う「無手」による一撃必殺の空手拳法流派宗家と知る。宮城一鉄の父、「宮城正順」総師範もまた、小助のただならぬ身体能力と人柄に気付き、一鉄と共に「那刃手明拳流」の修行をさせることとなる。三年後、誰よりも早く宗家の奥義を体得し、一鉄をも凌ぐ腕前となるが、「ナイチャーのもん」と言う回りの意識と、彼の気持ちを尊重し、身を引いて再び海を渡る旅に出る。宮城家の印可を貰い、「宮城小助」と名乗って幕末期の大江戸へと向かうのであった。・・・梶原明生初の時代活劇談。剣ではなく拳で、チャンバラでなく無手の「空手」で大江戸を暴れ尽くす血風録。ご期待ください。

Re: 大江戸那刃手明拳流血風録 ( No.82 )
日時: 2024/07/03 00:58
名前: 梶原明生 (ID: .tpzY.mD)

・・・大久保利通内務卿はと言うと、約一年後の1878年明治11年5月14日。にて数人の士族崩れの浪人に斬り殺されて暗殺された。いわゆる「紀尾井坂の変」である。しかしこれにはいくつか不審点がある。ひとつは、何故護衛も付けず、馬車で運転手とだけ紀尾井坂を通ったのか。内務卿を務める要人にありながら、不自然と言われていた。もしや光照会の差金か。謎は闇の中である。そして極め付けは1891年4月に起こった「大津事件」である。それ以前に北辰新聞の一面で、「西郷隆盛ロシアへ逃亡生存説」なるものが流行り、生存か死亡か、投票企画までされて多数決で決めるといったイベントが催されたくらいだ。そして先の日付にニコライ2世と共にロシアから西郷が帰って来るとされていた。が、しかし、帰ってくるはずもなく。業を煮やした津田三蔵と言う警察官があろうことかニコライに斬りつけたのだ。幸い軽傷で済み、津田は他の警察官から取り押さえられた。動機については諸説あり、西郷を連れてこられては、西南戦争における明治政府から拝領した勲章が取り上げられるからとか、ニコライが琵琶湖を見て「この湖もロシアのものになる。」と発言したことに腹を立てたとかで定まらない。ちなみに津田は北海道の刑務所で一年後亡くなった。死因は寒さによる肺炎らしい。また、男谷家に至っては、外務省トップを務め上げ、天寿を全うした。直心影流は未だに継承され続けている。そして・・・藤崎小助、仲沢琴葉が仲沢琴や西郷家と関わったと言う記録はどこにもない。・・・「大江戸那覇手明拳流血風録」終わり。次回「エピローグ」に続く。

Re: 大江戸那刃手明拳流血風録 ( No.83 )
日時: 2024/07/08 14:38
名前: 梶原明生 (ID: UbaBM28B)

「エピローグ」・・・・・・・・光が去るとそこはステンレスを基調とした最新テクノロジーの部屋だった。何がなんだかと思ううちに、検査を合格して会議室のような部屋に通された。「おお、小助さー、琴葉さー久しいのう。おっと鹿児島弁は控えんとのう。ワシはもう西里だ。」それはスーツにネクタイの見まごうことない西郷隆盛である。「こ、これは何と、西郷様。」「良い良い。そんなに畏まるな。今は生まれ変わって政治家の西里だ。いやー、見なさい窓から見える160年後の日本の景色。悪くなかろう。」それは大都会と言える街並みではないが、小助達を圧倒するには十分だった。「こ、これが未来とやらの日本。」「何と。」小助、琴葉は口々に感嘆した。「ハハハッこの程度の街中で驚くようでは帝都、いや東京か。その街中を見たら腰をぬかすぞ。」にこやかになる西郷。一方、明治31年12月18日の頃。その西郷隆盛の銅像の除幕式が行われていた。長らく官僚には逆賊扱いされていた西郷隆盛だったが、国民人気は止められず、英雄扱いに世の中は変わっていた。かなりお年を召された糸子はこの時を今か今かと待ち侘びていた。20年越しの約定、今果たす時が来たからだ。除幕された銅像を見て開口一番にこう言い放った。「アラヨウ、宿んしはこげんな人じゃないこてぇ。」西郷従道が嗜める。「ないごてそげんこつ・・・」ニンマリとしながら青空を見つめる糸子。「約定は果たしたよ。」そう、未来へ旅立った宿んしのためについた嘘。もう会えなくともこの時空のどこかで人は繋がっている。そう信じて立ち去る糸子であった。時変わって現在。「はい、これがお二人の新しい身分証です。通称マイナンバーカード。」「マイナンバーカード。・・・」硬いプラスチックカードをもらって不思議がる小助と琴葉。都内某マンションの部屋に特殊作戦群の隊員らしきスーツ姿の男性二人と年配女性が同行していた。マイナンバーを渡したのは年配の女性からだった。「後は先のレクチャー通り行動すれば、まず普通の生活上怪しまれる心配はありません。それと、お二人の肩書きですが、侍と言う肩書き上、商人や政府役人と言うのも無理がありましょう。私の知り合いに剣術と剛従流空手道を教える道場経営者がいます。お二人方はそこの師範代として勤めてもらいます。宜しいですね。」「忝い・・いや、ありがたい。住む場所や身分に金数。それに仕事まで。」「いえ。西郷様に尽くされて現代に連れてきてくださったのです。これぐらいは当然です。それでは何かありましたらそのスマホでご連絡ください。それでは。」立ち去る年配女性達。琴葉が不思議がる。「しかし未だ慣れぬ。このような板が文字や絵が出るとは。目が痛くなるようじゃ。」「あ、これこれ琴葉。左様な侍言葉は控えぬか。」「そう言う貴方こそ。」「あ、これはいかんいかん。うっかりな。・・・ハハハハハッ」互いに笑い合う二人。小隆も笑顔になる。「しかし、那刃手明拳流が今や剛従流と名を変えていたとはな。」感心する小助。・・・続く。

Re: 大江戸那刃手明拳流血風録 ( No.84 )
日時: 2024/07/12 12:44
名前: 梶原明生 (ID: I4LRt51s)

・・・一か月後。だいぶ現代がどう言うものか大体把握していた小助と琴葉。直心影流男谷派を教えている公民館に訪問していた。「お妙殿、松野殿っ・・・」思わず叫んでいた小助と琴葉。キョトンとする師範二人。「あの、どなたでしょうか。」「あ、いや、これは、何でもありません。」「見学を希望された方ですか。」「は、はい。お電話した藤崎です。」「ではあちらでどうぞ見学してください。」「はぁ、ありがとうございます。それでお二人は。」「申し遅れました。私は男谷派の師範代、松野貞雄です。これは私の妹、妙子です。」何と二人は松野定長とお妙に瓜二つ。しかも兄弟とは。「失礼ながら、もしかしてご先祖は松野定長さんでは。」「え、何故、私の曾祖父をご存知で。・・・」「あ、いや、多少歴史を勉強してるもので。そうでしたか。松野師範の御子孫でしたか。」「ええ。」顔を見合わせて微笑む小助と琴葉。「待ってください。お二人共、どこかで,お会いしませんでしたか。」妙子が、二人を引き止める。「ああ・・・どこかの前世でお会いしていたのかも。」爽やかに躱す小助。そこへまた見学者が現れた。できれば来てほしくない見学者が。「ここか。直心影流とか言う古武術の会は。」「失礼ですが、どなたですか。」「私、知らない。ほら、深夜テレビを賑わしてるケンカ下剋上番組、無頼キングダウンの女子部に出てた初代チャンピオン、チャーオタだよ。」「ああ、知ってますよ。本名仲沢蓮さん。地元でケンカ無敗を誇った元空手チャンプ。」「仲沢っ・・・」琴葉が聞いてその風貌に驚愕した。それは格好こそ現代人だが、その横顔はまさにあの仲沢琴である。「母上。」「ああ、母上だ。何だお前。」「いや、その、何と言うか。・・・」「どっかで見た顔だなぁ。待てよ、なんか・・・妹見たいな。」そう記憶を詮索し始めた仲沢蓮。小助が波を変える。「宜しかったら仲沢さん、私と勝負しませんか。」「誰だあんた。」「剛従流武蔵野道場の師範代をしております藤崎小助と申します。」「ほう、あの剛従流か。面白い、相手してやる。」空いたスペースに移動する二人。「言っとくが、あたしはね。自分より強い相手なら犯されてもいいと思ってんだ。勝ったら好きにしていいぜ。」呆れた顔になる琴葉。「母上相変わらずそのような・・・」言ってる間にもう仕掛ける蓮。「ケンカにハジメの号令なんかねーんだよ坊っちゃん。」拳は確かに小助を捉えた。はずだった。「な、何だ。確かに殴って・・・」斜め後ろから底突きに顔面を捉える小助。「仲沢琴の名が泣きますよ。気に現代人は殺気を抑えることもできんのか。」「な、何、クソが。」蹴りを入れたら逆に蹴りで返される。「グッ、て、テメー何者だよ。この戦い方・・・そうだ、私の細胞の記憶が覚えてる。爺ちゃんから聞かされたの思い出した。かつて、先祖の一人に仲沢琴って女剣士がいた。無敗無敵と謳われたその仲沢琴が、、唯一敗北を喫した相手がいたと。名は忘れたがまさかオメー、そいつの子孫か。」「違いますよ。」・・・続く

Re: 大江戸那刃手明拳流血風録 ( No.85 )
日時: 2024/07/15 12:36
名前: 梶原明生 (ID: 9pFPYMWe)

・・・「んなわけあるか。あたしはね、勘は鋭い方なんだよ。仲沢貞祇の血が流れてんだよ。」言いつつ殴りかかるが、ことごとく躱される。疲れが見え始めたその時、足払いをかけられて倒された先に彼の正拳突きが極まる。「ヤーッ。」鼻先寸前で止まる。「くそ、またもや負けた。好きにしろ。」「生憎、既婚者なものでね。」「素晴らしい。さすが那刃手。」そう声を掛けてきたのは柳生厳週そっくりな御人。その隣の御人もどこかで見たような。「もうし遅れた。私は柳生新陰流宗家師範。柳生厳伸と申す。」「や、柳生。・・・」「そしてこちらは剛従流明豊館館長の八木明仁氏。」「八木。なら明特の子孫。・・・」小助が驚愕する。幼い八木明特の顔に似ていたからだ。「はい小助さん。あなたのお話は厳伸さんから聞きました。あなたの指導のおかげで明豊館はあるのだと。」「いや、それほどで・・・ん、と言うことは。」厳伸氏が語る。「無論、特殊作戦群のプロジェクトは知っている。あなたがあの時代の藤崎小助であり、我が柳生が唯一相討ちとなった武人であることも。」「いや、相打ちなどと烏滸がましい。厳週様のほうが上手でした。」立ち上がりながら悪態つく蓮。「何だかごちゃごちゃわけわからねーが。とにかくあんたは凄い男と分かった。既婚だろうが、勝ったからには抱いてもらうぜ。じゃあな。」上着を肩に掛けて立ち去る。琴葉にも声をかけていく。「わしの孫か。・・・あれ、あたし何でこんな言葉・・とにかくあんたの旦那は頂くぜ。」「臨むところです。母上。」「何か違和感ないな。ハハハハッ」笑いながら立ち去る蓮。「さて、藤崎さん。あなたにサプライズだ。」「えっ・・・」そこにいたのは年配の女性。「余計なこととは思ったが、連れて参った。あなたの実の母上。佐々木敦子さんだ。」「ごめんね。あの頃の私はどうかしてた。あなたを産み育てる自信がなくて赤ちゃんポストに。ごめんなさいごめんなさい。」「母上、お手を挙げてください。小助は恨んでなどおりません。」まさか母との再会まで用意されていたとは小助と言えど知るよしもなかったであろう。数日後、小助達の姿は武蔵野剛従館道場にあった。琴葉も道着姿で小隆と共にいる。「よし、では次、三戦の呼吸。」道場生が一斉に拳背を前に構えて呼吸する。「ハーッ」そして小助は一気に正拳突きを繰り出した。「ヤーっ」彼の拳道はまだまだ続くのであった。・・・了 次回「あとがき」に続く。

Re: 大江戸那刃手明拳流血風録 ( No.86 )
日時: 2024/07/20 16:52
名前: 梶原明生 (ID: Ve/IoWsn)

「あとがき」・・・・・・・・「そう言えば一度も時代劇書いてないなぁ」とふと思ったのがきっかけでした。うちは祖母の代から「時代劇しか見ない」人で、「若いもんは地獄と苦労を知らん」が口癖でした。まさに「昭和パワハラモラハラ」全開の世代。母も同じでことあるごとに「時代劇はねーか×2」の繰り返し。「なら一つ記念に時代劇書いてみよう。」になったわけです。なのでまた片っ端から時代劇を見ました。水戸黄門から(里見浩太郎さんシリーズ)はじまり、役所さんの十三人の刺客、松山ケンイチさんのカムイ外伝、仲代さんの切腹、里見さんの大江戸捜査網、岡田准一さんの燃えよ剣、柳生一族の陰謀、ラストサムライ、そして極め付けは鈴木さんの「西郷どん」これは泣きましたね。ただ、・・・難点を言うと、いくらドラマとは言え、黒木華さん演じる「糸子」が戦場に西郷さんに会いに行ったと言うありもしない少女マンガみたいな展開は、フィクションとしても描くべきじゃなかった。仲沢琴と千葉佐那が出会ってたくらいならまだいいですが、あまりにも「甘ったるい」展開に、空いた口が閉まらなかったくらいです。うちの祖母が生きてたら怒り心頭もいいところ。少々脱線しましたが、まぁとにかくそんなわけで、描くなら幕末、明治初期あたりにしようと思いました。何故かと言うと、まず大好きな西郷さんの時代だと言うこと。それと、私が幼い頃から30年以上してきた「空手」の歴史が現れ始めた時代だと言うこと。刀でなく、拳で戦う時代劇を描いてみたかったと言うこと。この三つが重なって生まれたのがこの小説です。それと、「そろそろ自分もいい年か?」と思えてきました。時代劇を欲するようになるとは。親子血は争えないものです。そして、極め付けの理由は、かつて、したらばヤタガラスのHTSS同好会に記載したように、某格闘漫画小説類には「人としての情」「人としての心」がないことがきっかけです。「それならば。」と思い、一念発揮。「情」と「心」ある格闘時代小説をと思いました。「暴力は何の解決にならない。」「暴力で人の心は変えられない。」ことを念頭にしつつ、しかしこの言葉で締めたいと思います。「己の中に暴力があるならいっそ使った方がいい。非暴力、平和と言うマントで己の無能さを隠すよりましだ!」ガンジーより引用。 終わり。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。