二次創作小説(新・総合)

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逃走中#CR05 はじまりの炎と紋章物語【完結】
日時: 2020/09/25 22:01
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: b92MFW9H)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7a/index.cgi?mode=view&no=1440

どうもです、灯焔です。
遂にキリのいい数字を迎えた逃走中#CR05。前回エクラが捕まったり道化師側で大きな動きがありそうだったりと波乱の展開を迎えたコネクトワールド。世界の行方はどうなる…?
今回の舞台は、2回目の舞台『渋谷』があった時代から約5000年後の世界『エデン』が舞台と言われている『セブンスドラゴン』『セブンスドラゴンⅢ』より『学都プレロマ』。数々の木々に生い茂られた廃墟と化した学術都市を舞台に、逃走者達とハンターによる5回目の逃走劇が今、幕を開ける―――!


遂に本格的に動き出したメフィスト率いる道化師達。本部を襲うだけでは飽き足らなかったのか、他の支部で暴動を起こし始めました。そして、本部の面子もメフィストを叩こうと本格的に動き始めます。
そんな中、道化師一味にも何か動きが。前々回から様子がおかしかった『あの人物』の記憶が…?さて、運命はどう転がるのでしょうか。

<ルール>
逃走エリア:『学徒プレロマ』
かつて隆盛を誇った古代文明の研究者である学士たちが集っていた学術都市。
技術力の高さは『エデン』の中でも群を抜いていたが、現在は魔物の巣窟になっており、廃墟と化している。かつてこの地で、13班の意志を継いだ者が『真竜』を退治した伝承が伝えられている。ゲームではドラゴンによって木々が生い茂っていたが、今回は木々が生い茂っている様子は無く、廃墟であること以外は広い逃走エリアだと思っていいだろう。
エリア紹介 >>1




逃走時間:90分

賞金:54万(1秒100円)

ハンター:初期4体(OPゲームで1体起動。ゲーム開始後に3体追加で起動)

自首方法:後程通知にて発表


<参加者>

【逃走中#CR01 成績優秀者】 (3人) 詳細>>2
エーデルガルト=フォン=フレスベルグ
芽兎めう
ミミ

【逃走中#CR02 成績優秀者】 (3人) 詳細>>3
七海千秋
キュベリア
タイマー

【逃走中#CR03 成績優秀者】 (3人) 詳細>>4
アルル・ナジャ
クレア・スチーブンソン
ジャック

【逃走中#CR04 成績優秀者】 (3人) 詳細>>5
天海蘭太郎
クリス
むらびと

【作者枠】 (4人) 詳細>>6
YUMA
ゆめひめ
おろさん
葉月

【作者推薦枠】 (4人) 詳細>>7
サタヌ
左右田和一
霜月凛
イヤミ


計20名


○逃走中#CR06 シード枠争奪アンケート実施中
※締め切りました

○逃走中#CR06 次回参加者募集中!
※締め切りました
次回参加者 >>105
作者枠発表 >>120

※『お手伝い』として参加してくださる方向けの案内※
 版権キャラ応募用紙 >>121 ※9/24(木) 20:00まで



◎AfterBreakTime

 ①『更に集う仲間たち』 >>8
 ②『赤色が抜けた景色』 >>33
 ③『折りに折られぬ心意気』 >>39
 ④『光と開く世界』 >>49
 ⑤『スーパースターは彗星の如く』 >>68
 ⑥『音無町の真実』 >>95-96
 ⑦『打ち上げ』 >>125-126 >>129-131



以上、逃走中#CR 運営本部がお送り致します。

打ち上げ ③ ( No.129 )
日時: 2020/09/24 22:28
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: .niDELNN)

 ―――時は少し戻り、打ち上げパーティの会場では。



~運営本部 打ち上げパーティ会場~



石丸「罪木くん!いつも以上によく食べているではないか!はっはっは、良いことだぞ!」

罪木「なんだか安心したらお腹空いちゃってぇ~…。打ち上げパーティのお料理、いつもとっても美味しいのでつい食べてしまいますぅ」

MZD「まーねー。今回ばかりは人の生死が関わってたみたいだし?蜜柑とコハクは本当にお疲れ様って感じだ。オレも糖分補給…」

ヴィル「先程から口にしているものが甘いものばかりではないか。少しは野菜も食え」

MZD「えーっ?!いいじゃん今日くらいー!」



 無事莉愛が命を吹き返したことで安心したのか、罪木さんがいつも以上に美味しそうにパーティの料理を食べていました。今回はカオス軍団も世界旅行中とのことなので、襲撃もなさそうですし安心して食事が楽しめますものね。
 精神回復に甘いものばかりを食べていたのを見られていたのか、MZDの取ろうとしていた甘味をヴィルヘルムが取り上げてしまいます。それを見たMZDはふくれっ面。どこの兄弟ですか。



MZD「本当だよ!ゼウスの爺さんにあんなこと言われてから妙にお兄ちゃんぶっちゃってさー。ま、いいんだけど。―――人間だった頃も一人っ子だったからね。兄弟みたいに支えてくれる人、憧れてたんだ」

ヴィル「お前の口からもしっかりと聞いたぞ、私は。……お前には『約束以上のもの』を貰ったからな。一生かけても返せないものを。―――今の私があるのはお前と、ミミとニャミに出会ったからだ。これはいくら世界が変わろうと、変わりようのない事実だからな」

石丸「仲良きことは美しきかな、だな!」

罪木「ですねぇ。あ、石丸さん。食べないとご飯無くなっちゃいますよ?」

石丸「僕は十分に食べさせてもらったので大丈夫だぞ!美味だった!」



 特にトラブルもなく終わりそうだ…と、誰しもが思っていました。しかし―――そんな平和な空気を、唐突に『それ』は壊すのです。










 ブォン。そんな音が聞こえてきそうな重い『圧』。突如会場中の空気を変えた『それ』は、一瞬で参加者に違和感を抱かせるのには十分でした。
 魔力の抵抗に慣れていない一部の参加者が頭痛を訴えたり、気分が悪くなっていたりしたのを遠目で確認したボス2人。本部のどこかで何かが起こったのだと確信し、罪木さんにその場を任せ会場を去ろうとしました。



石丸「僕も行きます!」

ヴィル「いや…このような『濃い』魔力の圧が纏ったのは久々だ…。いくら魔力に抵抗が強い君でも近付くのは無理だ。ここで大人しく待っていなさい」

石丸「ですが…行かなければならないような気がするんです。今回に限っては」

MZD「んー?固っ苦しい論理的な考え方する清多夏にしては随分と珍しい発言だね。…勘?」

石丸「勘―――なのかは分からないが。誰かに呼ばれている気がするんです。『あいつと合わせてほしい』って」

MZD「ふーん…なるほどね。分かった。一緒に来てくれる?でも、無茶はすんじゃねーぞ?」

ヴィル「MZD!いいのか?この魔力の圧に彼が耐えられるかどうか…」

MZD「顔色悪くなってないし大丈夫だろ。それに…清多夏が持ってる刀、元はサクヤのものなんだよ?その『刀の魔力に守られてる』可能性も無きにしも非ずだし。今回ばかりはついてきてもらったほうがメリット多いかも」

石丸「ありがとうございます!ご迷惑はかけないようにしますので!」

田中「罪木。奥のテーブルに具合の悪い参加者を集めておいてある。診てくれるか。あそこは多少違和感の影響から距離があるからな」

罪木「はい、分かりましたぁ!……石丸さん、くれぐれも気を付けてくださいねぇ」

石丸「あぁ、分かっている。罪木くんは罪木くんに出来ることをしたまえ!それではな!」



 石丸くんも連れて行ってほしいと懇願。いつもの彼ではないと思いましたが、その顔は真面目そのもの。MZDはサクヤに貰った武器のこともある、と彼を連れていく判断をしました。勿論彼に危害が加わることになれば2人が守るんでしょうね。
 部屋を出て、『圧』が濃くなっていく場所まで近づきます。すると―――そこには、逃走中を見に来ていた観客達と、それ以上先に向かうのを阻止するアクラルの姿がありました。



アクラル「だから!この先は危険なんだって!打ち上げ会場に戻るか本部から出るかどっちかにしやがれ!」

観客A「何を言っているんだ!会場にいても頭痛が収まらないじゃないか!責任者を出せ責任者を!!」

観客B「そうよそうよ!『逃走中』だか何だか知りませんけどねぇ、子供が『面白いから見に行った方がいい』と言うから見に来たのに!この仕打ちは何なんですか!」

MZD「観客とアクラルがもみ合ってんな。向こうで何か起きたのは確実らしい」

ヴィル「客を避けて向こうに行けるか…?アクラルには事情を話せば通してもらえそうだが」

石丸「中はどうなっているんだ?」



 こんなはずではなかった、と神であるはずのアクラルに向かって誹謗中傷や罵声の嵐を浴びせる観客たち。あーあ。人間って都合の悪い事が起こるとすぐ人のせいにしますからねー。
 それはともかく。アクラルの様子から、向こうで何かが起きたのは確実。事態の解決に乗り出す為、3人は人混みを避けアクラルに近付きます。
 …先を進む2人に精一杯ついていく石丸くん。そんな彼に―――『変化』は起きたのです。











『今近付けば霊力に耐え切れず、殺される輩が出るやもしれん。死人を出したくなかったら『かんきゃく』とやらの説得に応じた方が身の為だぞ』

石丸「……?! 神様が喋っているのか?!」

『うーん。まぁ、俺も付喪神の一種だから『神』なのだろうなぁ。それはいいのだ。俺は会場を一瞬纏った霊力の元凶の『友』、とでも言っておこうか。事情が落ち着けば話をする。―――今は俺の言葉に従って、あの3人と共に観客を何とかする方向に持って行ってくれ』

石丸「何がなんだか分からんが…。分かった。君に従えば事態は解決するのだな?」

『恐らくは。―――全く、あいつめ。恐怖に怯えているな…。あんなことがあったのだから仕方ないのだろうが…』



 急に脳内に響いてきた声。MZDかヴィルヘルムが言ったのか、と目の前を見てみるも、2人は人混みを避けて前に進むことだけを考えているようで。どうも彼らの声ではない。―――妙に澄んだ声だった為、自分だけに聞こえているのでは?とも一瞬思いましたが…。
 その声は自分に向かって真剣に問いかけているようで。従わなければまずい、と判断した彼は急いで2人の元へ向かって歩いていきました。



MZD「アクラル!向こうはどうなってんの?」

アクラル「サクヤが事態解決に乗り出してるよ。今はあいつに任せろ」

ヴィル「だが、いくら彼女とはいえ1人では無茶では…。元凶が魔力関連のものであれば、我らにも出来ることはあるはずだ。通してほしい」

アクラル「だ・か・ら!サクヤに人避け頼まれてんだよ!!お前らも勿論含まれてんの!ほら帰った帰った!」

石丸「…あの。向こうにはいかないので、僕達にも人混みの解消を手伝わせてもらえませんか?」

MZD「ん?」

石丸「本部全体を覆っているのなら、本部の外に連れていくとか出来ることはあるはずです。アクラルさん1人では無理なのだったら、僕達がやるしかないでしょう」

ヴィル「確かにそうだが…。圧の元凶が分かっているのに近付けないのはもどかしいな。―――仕方ない。アクラル、私達もこの場を何とかすることに協力しよう。…とりあえずここにたむろっている野次馬を何とかせねばな」

アクラル「助かるぜー…。俺1人じゃどうしようもなくて。3人はこいつら外につまみだしてくんね?流石に誹謗中傷の言葉もあったから次回から取り締まり強化しねーとな」



 アクラルが止めている向こうの道を進もうとする2人をアクラルを通じて説得し、なんとかこの場に留まらせることに成功した石丸くん。どうやらアクラル1人でもこの人数を捌くことは不可能だったようで。強力な手立てが来てくれたと心から感謝をしているのが表情からよく分かります。
 この場を治めなければ次のステップへは進めない。そう判断し、3人はたむろっている野次馬を少しずつ外へ出していったのでした。



















~運営本部 住居区 サクヤの自室~



『く、るなっ…!』

サクヤ「…………」



 一方。自室で怯えている男性を何とかしようとサクヤは少しずつ彼に近付いていました。自分の力が他人に影響していることを悟っているのでしょう。彼女が近づくごとに『死ぬからやめろ』『近付くな』と口にしています。その瞳からはぽろぽろと涙が。本当に混乱し、恐怖しているようですね。



サクヤ「…………」

『聞こえていないのか…!俺に近付いたら死ぬぞ…!』

サクヤ「死にませんよ。貴方の様な優しい刀の『霊力』。誰が死ぬものですか」

『…………?』



 対するサクヤの表情は穏やかなもの。元々傷つける為にアクラルを追い出したわけじゃありませんものね。『彼』のことを知っているらしく、制止の言葉を無視し彼を宥める様な言葉を口にしながら少しずつ近付きます。
 確かに彼を纏う力は徐々に強まっているのを彼女は感じていました。しかし…その力が『周りにどんな影響を及ぼすのか』を彼は知っている。遂に、彼がもたれかかっている壁へとたどり着いたサクヤ。未だに怯える表情を見せる彼に、サクヤはゆっくりとしゃがみ、その大きな身体を抱き留めたのでした。



『…………』

サクヤ「急に人間になって驚いてしまったんでしょう?そんな目に遭わせてしまって…本当に申し訳ありません。貴方に何が起こったのかは分かりませんが…大丈夫。怯える必要はありません。私は味方です」

『……あんた、は―――』



 赤子をあやすように、優しく背中をさするサクヤ。それに応えるように、震えながらも背中に腕を回す彼。―――まるで温もりを求めるかのようなそれに、徐々にですが彼の表情が落ち着いていくのが見て取れました。
 そして、彼は気付きます。彼女に纏う『力』に覚えがあることを。気付いた瞬間、彼を纏っていた力が薄まり、混乱していた頭も徐々に落ち着いていきました。いつの間にか服も元通りになっています。
 それを確認した彼女は、静かに彼から少しだけ離れました。



『あんた、本当に―――。あの時の……』

サクヤ「この姿でお会いするのは初めてですよね?それに―――貴方が人の姿でお会いするのも随分とお久しぶりですね。…また話せて嬉しく思います。『大典太光世』さん」

大典太「あぁ…。……俺も、会えて…嬉しいよ。まさか『また』、本当に話が出来るなんてな…」




 サクヤは彼を『大典太光世』と呼びました。ん?大典太……光世?天下五剣の一振ですよね?サクヤが常に持ち歩いてる二振のうちの片方ですよね?
 それが、人間の姿?まさか、まさか―――。ゼウスが顕現に成功しちゃったってことですかーーー?!

打ち上げ ④ ( No.130 )
日時: 2020/09/24 22:37
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: .niDELNN)

~運営本部 住居区~



石丸「観客の移動が全て終わったぞ!」

アクラル「いやー、助かった。サクヤの方も何とかなったみたいだし、お前らもう打ち上げ会場に戻っていいぜ」

MZD「『戻っていいぜ』と言われてすんなり戻るヤツがいるか!元凶の解明をして、次に繋げない様に対策を練らなきゃダメなんだからな!」

ヴィル「あぁ。今回の様な魔力の『圧』…。毎回起こされては困るからな。サクヤと会わせてくれ」

アクラル「それについても俺が全部話するから!ボス2人は戻る!石丸は……一応俺と一緒に来てくれ」

石丸「? 分かったが…。神様達は帰してしまって本当にいいのか?」

アクラル「こっちにも事情ってもんがあんの。お前なら大丈夫だと思うから一緒に来てくれるか?」



 3人の素早い行動のお陰で、何とかアクラルの前にたむろしていた観客を外に出すことが出来ました。相当数が多かったようで、どこか疲れた顔を見せています。
 アクラルはサクヤから事情を聞く為、ボス2人に先に打ち上げ会場に戻るよう進言。2人は納得がいかないらしくついていこうとしますが、どうやら事情があるようで…。何とかその場を宥め2人を先に返し、石丸くんと共にサクヤの部屋まで向かうのでした。


















~運営本部 住居区 サクヤの部屋~



アクラル「サクヤー!!そっち終わったんだよな!さ、話聞かせて貰おうか!!」

サクヤ「戸が壊れます。もう少し静かに開けていただけませんか」

石丸「こんなところにサクヤさんの部屋があったのか…。唯の壁だと思っていたぞ!」

サクヤ「およ。石丸くんも一緒なのですか。…まぁ、事情が事情ですし。彼ならばいいでしょう。どうぞ入ってください」

石丸「ありがとうございます!お邪魔します」

『はっはっは。聞き分けの良い上司で良かったなぁ。…成程。1つの力を『2つ』に分けたということか』

石丸「???」

『何。こっちの話だ。俺も丁度あいつと話がしたかったところでな。入ったら適当なところに置いてくれるか、主』

石丸「あ、あぁ。分かった」

大典太「……三日月か?」

サクヤ「え」

アクラル「あ?」

石丸「―――えっ?!」

『おや。既に気付かれていたかー。はっはっは。流石は天下五剣だな』

大典太「それはあんたもだろ…」

サクヤ「と、とにかく!入ってください。まだこのことを他の方に話すわけにはいかないのです。まずはお2人に事情を聞かなくては」



 戸をいささか乱暴に開け目の前にいたサクヤにジト目で見られる双子の兄。その向こうの男性は既に傷も治っており、彼女が介抱してくれたのだろうと瞬時に判断しました。
 まだ他に話すわけにはいかない、と2人を素早く部屋に招き入れる2人。刀が喋ったことに驚くも、それどころではないとサクヤは2人に座るように言いました。床には足の短いテーブルを囲むように座布団が4つ敷かれています。
 アクラルと石丸くんが座ったのと反対側にサクヤと大典太が座り、石丸くんは刀を自分のすぐ横に置いたのでした。



サクヤ「…さて。どこから話したものでしょうか」

アクラル「まずはこいつと声の正体を明らかにすることからだろ!!こいつ誰なんだよ!!」

『俺達のことを忘れているとは随分と記憶力が欠落しているのだなぁ』

大典太「どうせ…俺は置物だからな…。忘れられてても仕方のないことさ…」

石丸「?????」

サクヤ「落ち着いてください。兄貴に貴方達に関しての記憶がないのは仕方のないことなのです。記憶は全て『私』が受け継ぎましたから。
    …それで、こちらの男性なのですけれど。彼は私が預かっていた刀『大典太光世』が顕現した姿です」

大典太「……天下五剣が一振り、『大典太光世』だ。どうせ俺のことなんか武器として扱っちゃくれないだろうけどな…」

アクラル「……は?じゃあ、あの角の生えた男と一緒ってことかよ?!」

石丸「ということは、今聞こえている声の持ち主は―――」

三日月『そういうことだ。俺は『三日月宗近』。天下五剣の一つにして、一番美しいともいうな。お前達の話の『角の生えた男』…。恐らく鬼丸のことだとは思うが、奴も顕現していたということでいいんだな?』

大典太「あぁ。……廃墟と化した学都の中で、あいつと刀を交えた。―――相当な邪気に侵されていたよ」



 改めて2人…ではなく。二振りは自己紹介。完全に人の姿をとった大典太と、中途半端に意識だけ目覚めた三日月。サクヤから説明を受けたアクラルは、混乱しながらも納得して座布団に座り直したのでした。
 続けて、サクヤが二振りに質問を投げかけます。



サクヤ「それで…何故現代に人の姿を取ることが出来たのか。意識が目覚めたのか。教えていただいてもよろしいでしょうか?」

三日月『それが俺にも分からなくてな。気が付いたら、あの賑やかな宴会場で目を覚ました。いくら声をかけようとも主以外に聞こえる気配がない。しかも、視界が刀のそれのままだったのだ。…つまり、『俺は自分の意志で目を覚ましたわけではない』ということだけは結論付けられるな』

大典太「……俺に関しても同じだ。何かに呼ばれる気がしたが、それだけだ。気が付いたらこの部屋にいて。縄が解けていたこともあってか、霊力を放ってしまった…。やはり俺は封印されるべき刀なんだ…」

アクラル「ことあるごとにネガるんじゃねぇ」

三日月『大典太はそれが『つうじょううんてん』とやらだからなぁ。はっはっは、癖の様なものだから軽く流しておけばいい』

石丸「癖…。とにかく、三日月くんも大典太さんも『自分の意志で目覚めたわけではない』ことは確定みたいだな。―――では一体誰が?」

アクラル「こんな常識外れなこと平気でしそうなのはあの爺くらいだろうけどなー。妙にはぐらかして説明してたのってこのことだったのか?」

サクヤ「改めてゼウス様に話を聞かなければならないようですが…。顕現してしまったものは仕方がありません。こちらで面倒を見ることとします」

大典太「……やはり、神は身勝手だ。俺達が言えることではないが」

サクヤ「そのことについてなのですが。今後、道化師を連れ去った神々がいつ地上に何を仕掛けてきてもおかしくはありません。お話もこうしてできるようになっていることですし、お2人には私達に協力していただきたいのです。…鬼丸さん。その先にいるであろう童子切さんも、いずれ救わなければなりませんし」



 ゼウス、どうやら刀を顕現させたことについては黙っているようですね。説明なしにこんなことになってしまったからこそ一度混乱してしまったみたいですが…。これは双子に一度焼き焦がされるかもしれません。
 本人達が分からないといったならばそれまで。それ以上の追及は止め、これからのことを二振に話しました。『これから何を仕掛けられるか分からない。だからこそ、手を貸してほしい』と。鬼丸と童子切奪還についても真面目に考えていることも伝えました。
 しかし―――彼らの表情は晴れないまま。『神は身勝手』とも言っていましたし、過去に何かあったのでしょうか。



三日月『協力してやりたいのは山々なんだが…。見ての通り、俺は人の姿ではない。主の助力を得らねば知恵を授けることしかできん。それに…恐らく、今俺の声が聞こえているのも一部だろう』

大典太「龍神…あんたが信頼できる奴なのは分かっている。蔵から持ち出された後…大切にしてくれたのは身に染みて分かっているからな。それに、三日月の反応を見ていると、そこのあんたも誠実で真面目な奴なんだろう。
    ……だが、俺はまだ人間が怖い。政府に、神に。俺達がどんな仕打ちを受けたのかを消すことは出来ない」

アクラル「政府?神?お前ら、過去になんかあったのか?」

サクヤ「……私も詳しくは分かりません。『時の蔵』から天界に戻って、再度蔵でご老人に貴方達を託されるまでの間に『何が起こったのか』を。
    差支えなければ、教えていただけないでしょうか?」

三日月『ふーむ。結局はそうなってしまうか。仕方あるまい。他言しないのというのであれば教えてやろう。俺達に何があったのか。そして…霊刀であるはずの鬼丸、童子切に邪気を注ぎ込んでいる『俺なりの見解』を』

大典太「……いいのか?俺達が『普通の刀』ではないことを話してしまって」

三日月『いいも何も、いずれは話せばならないことだ。無数の異界とやらにある俺達の同位体とは違う、完全に異質な刀なのだからな。俺達は…』



 協力したいが刀の姿では何もできないと話す三日月と、人間や神に昔何か酷いことをされたらしく、今でも恐怖が先に出てしまうと話す大典太。…二振り。恐らく天下五剣全振りでしょうが。過去に何かあったのは間違いなさそうです。
 そこに切り込んだサクヤに対し、三日月は話すべきか迷っていました。が、目の前の彼女の誠実さは昔から知っている。悪用はしないだろうと判断し、自らの過去に何が起きたのかを話し始めたのでした。



三日月『まず、話しておかねばならないことがある。俺達は元々『政府』というところに保管されていた刀なのだ。管理されていたのは俺を含む『天下五剣』と呼ばれる刀。そして―――『大包平』『小烏丸』『山鳥毛』を加えた八振。だが…俺達五振とその他の三振の扱いがまるで違っていた』

石丸「『政府』?―――普通に現実世界に関係する政府と考えていいのか?」

大典太「あぁ。それで間違いない。……年代は随分未来のようだった気がするが。その政府の中に、『過去の時間を管理する官僚』があった。そこで『分霊の1つ』として鍛刀されたのが、俺達『天下五剣』だった」

アクラル「政府で生まれりゃ政府で管理されるのは納得できるけどよ。『扱いがまるで違う』ってどういうことだ?」

三日月『政府の奴ら、俺達を鍛刀する際に色々と不手際を起こしたらしくてな。『霊力が異常に高い状態』で鍛刀してしまったのだ。そのせいで政府全体が危機に陥る危険性が生まれたとの理由で、俺達五振は厳重に『幽閉』された。霊力を奪われ、身動きも取れず。『自由』と『意志』を完全に剥奪された状態だったのだ。所謂『失敗作』というものだな』

サクヤ「それは…酷い仕打ちですね…。恐らく、他の三振は『五振以降に調整し鍛刀した結果』、通常通りに成功したと考えていいでしょうね」

大典太「……蔵と一緒だったよ。力を封じられ、外も見ることが出来ず、ただ霊力を政府の研究に吸われ続ける毎日…。蔵に封印されていた頃の方が幾分かマシ、だったのかもしれない。
    そんな日々を過ごしていたある日…。唐突に俺達は『時の狭間』に捨てられた。理由は簡単だ。『俺達の霊力が実際に政府に悪影響を及ぼした』と判断されたから。自分達の都合で鍛刀した癖に、必要なくなるとすぐに手放す…。政府の人間は身勝手だと、改めて思ったよ」

サクヤ「『時の狭間』…。どの世界からも『時間』が遮断された場所。通称『ゴミ捨て場』と呼ばれる場所ですね」

三日月『各々負の感情を持ったまま『時の狭間』とやらに捨てられた俺達は、偶然にも先に狭間で揺蕩っていたとある老人に拾われたのだ。…あのご老人がいなければ、今頃俺達はどうなっていたか分からんな』

アクラル「角の男…鬼丸、だっけ。そいつが言っていた『老人』ってのがそいつなのか?」

大典太「そうだ。……偶然にも拾われた俺達は、そこで老人に顕現され『時の蔵』の管理をしてほしいと頼まれた。老人は元々審神者をやっていたそうでな。その関係で、俺達を顕現出来たらしい。
    しばらくはその老人の蔵の管理をしながら、世話になることになった。人間への不信感も少しずつ消えて行ったよ…。その過程で出会ったのが『龍神』と呼ばれる金色の龍だった」

石丸「それが…サクヤさんとアクラルさん、ってことなのですか?」

アクラル「身に覚えはねーけどな!サクヤが正しいって言うならそうなんだろうよ」

サクヤ「……黙っておきたかったんですがね。龍神としての記憶は全て私が引き継いでいるので、兄貴が二振のことを覚えていないのは当然です」

三日月『成程、そういうことだったのか。はっはっは、それならばいいのだ。龍神も俺達と同じような理由で『時の狭間』に閉じ込められたと聞いて、俺達で何とか元の場所へ帰してやろうと躍起になったのだったな。
    あの時の大典太はいつもの根暗はどこへ行ったのやら、という感じだったぞ』

大典太「別にそれはいいだろ…。あんたから感じる霊力がとても心地よかった、それだけなんだ」

三日月『別に悪いとは思っていないのだからいいだろう?…それで、紆余曲折あって龍神を元の世界へ戻すことは出来たんだが。あれからしばらくして―――『アンラ・マンユ』という神の軍勢が時の狭間に襲撃してきた。
    目的は1つ。時間の影響を受けないその空間を支配する為。邪魔者を今のうちに蹴散らそうとしていたらしいな。勿論『時の蔵』も襲撃を受けた。その際に―――俺達は一瞬で刀に戻されてしまってな。老人は殺害され、鬼丸と童子切が強奪されてしまった』

アクラル「な、なんだそりゃ?!『アンラ・マンユ』って…。ゾロアスター教に伝わる悪の神じゃねーか!そりゃジジイに匹敵してもおかしくねーわ…」

サクヤ「その後に狭間へと向かった際にご老人から託されたのが、数珠丸さんを含めた天下五剣の三振だったのです。もう少し来るのが早ければ、五振とも救出できたのでしょうが…」

大典太「あんたが気にする必要はない。俺達が力不足だっただけだ…」

三日月『俺達から話せることは以上だ。それと―――さっき俺が言った『負の感情』なんだが…。数珠丸殿以外は今でもそれを持っている。そして…恐らく、その『負の感情』で邪気を増幅させられていると推論を立てているんだが。
    俺は『哀愁』。大典太は『恐怖』。鬼丸は『憤怒』。童子切は…『拒絶』。その感情を何とかせねば、邪気は祓えぬと思った方がいい』

アクラル「そんなことがありゃ人間不信に神不信になるわな…。それで、一応協力はしてもらえるってことでいいんだよな?」

大典太「ここを去ったとして行く宛もないしな…。まだあいつらを信用できるかは分からないが…。どうせ俺に出来ることなど限られているとは思うが…」

三日月『そもそも俺は動けないからな!はっはっは。じじいの知恵であればいくらでも貸してやるぞ』

石丸「それは笑って言う台詞なのかい…?手放すつもりもないが」

サクヤ「お二人とも。感謝いたします。本部に怯える程恐ろしい人なんていませんので。徐々に慣れて行ってくださればいいですよ」



 三日月と大典太は、過去に自分達に何が起こったのかを話しました。自分達が政府に鍛刀された『霊力が強すぎる失敗作』であること。それが原因で、政府に悪影響を及ぼし『時の狭間』に捨てられたこと。
 その後、『時の狭間』で老人に助けられたこと。様々な異界の審神者が捨てた刀を管理する『時の蔵』の管理を一緒にすることになったこと。
 サクヤとアクラルに分かれる前の『龍神』と絆を育んだこと。そして―――『アンラ・マンユ』に老人を殺害され、鬼丸と童子切を強奪されたこと。

 本部の人間も信用できるか分からないが、行く宛も無いので『協力はする』と取り付けてくれました。本部の人々は良い人ばかりなので、どうにか負の感情を払拭してくれるといいですね。



アクラル「…うーん。そろそろ打ち上げ会場に戻った方がいい時間帯だな。ライブ云々とかもお開きの時間っぽいし。片付けに入った方がいいだろ」

サクヤ「そうですねぇ。兄貴、石丸くんと三日月さんと共に先に戻っていただけますか?私も後から追いかけますので」

石丸「まだ何かやることが残っているのですか?」

サクヤ「野暮用というものです。乙女には隠しておきたい秘密というものがあるのです」

アクラル「サクヤが自ら『乙女』という言葉を使うなんて…。くぅ~、お兄ちゃん嬉しすぎて涙がちょちょぎれるぜ~!!」

サクヤ「号泣した途端に部屋から追い出しますからね」

アクラル「いいだろ別に!そんじゃ先に戻ってるけど、あんま長時間話し込んでんじゃねーぞ?じゃ、後でな!」

三日月『では、失礼するぞ。……大典太、お前『だけ』が顕現に成功したのには何か理由があるはずだ。―――俺が顕現出来るまで、色々と迷惑をかけると思うが。何とか頑張ってくれ』

大典太「……あぁ」

石丸「長時間失礼しました!…三日月くん、改めてこれからよろしく頼むぞ」

三日月『主は生真面目だが、そこが魅力だな。こちらこそよろしく頼むぞ』




 アクラルが時間を確認し、そろそろ会場に戻らないとまずいと判断。サクヤはそれを配慮し、先に石丸くんと三日月を連れて戻るよう指示しました。彼女にはまだやりたいことが残っていそうですね。
 気持ちを汲み取った彼は、石丸くんに三日月を持っていくよう言いサクヤの部屋を後にしたのでした。…その場に、小柄な青龍と大柄な刀を残して。

打ち上げ ⑤ ( No.131 )
日時: 2020/09/25 22:00
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: b92MFW9H)

 2人と1振が出て行って数刻した後、大典太も部屋を後にしようとします。しかし、後ろから彼を呼び止める声が聞こえた為、彼は足を止めたのでした。



サクヤ「すみません。貴方にはもう1つ頼みたいことがあるのですが」

大典太「……俺に出来ることなんて限られているぞ。武器として振るわれていた訳ではないんだからな」

サクヤ「そういう物騒な話ではありません。…まぁ、これから物騒にはなっていくんでしょうけれど。ここでお話もなんですので、とりあえず私についてきてくれませんか?」

大典太「……?」



 状況が呑み込めない大典太を尻目に、サクヤは自分についてくるように、とだけ伝え部屋の隅にある掛け軸を外しました。すると―――掛け軸の真後ろに、真っ黒い人が通れそうな穴が開いているではありませんか。



大典太「……穴、か」

サクヤ「見えていたようで良かったです。この先はある種の『神域』になっているので、純粋な神でなければ見えないのですよ」

大典太「俺が、付喪神だからか。これを通ればいいのか?」

サクヤ「はい。通りにくかったら穴を広げますので、難なく仰ってください」



 サクヤ曰く、どうやら常人には見えない穴のようで。彼女はそこを通ることを彼に告げます。『神域』に通されるという情報だけを握らされた大典太の表情は不安そうですが、危険はないので大丈夫だと彼女が念押しした為、渋々先に穴を通ることにしました。
 彼の姿が自室から消えたのを確認し、サクヤも穴に掛け軸を戻し、その穴を潜っていったのでした。



















~隠し部屋~



大典太「ここは…」



 穴から光が見え、そこに手を伸ばすと―――彼は、再び畳の上に足をのせていました。その先に見えていたのは…まるで、豪勢な和室のような風景。
 開きっぱなしの障子の向こうには、夏の終わりを表しているかのようにそよそよと木々が揺れています。『心地いい』。霊力が澄んでいると一瞬で判断したのもあり、大典太はどこかそんな気持ちを抱いていました。
 立ち尽くしていると、後ろからサクヤも現れます。…少し穏やかな表情になった彼を見て、彼女の口元も緩んだのでした。



サクヤ「気に入りましたか?」

大典太「ここは霊力が満ちているな。……気分がいい」

サクヤ「そうでしょう。先程も言いましたが、ここは『神域』と同等の力が満ちている場所。故に、純粋な神以外は立ち入ることを許されていないのです。
    私は普段ここで睡眠をとったり、気分を落ち着かせる為に休息をしているのです。大典太さんも、今日からこちらで過ごしてもらうことになりますので。案内しておきたくて」

大典太「どういうことだ?……こんな大層な場所、俺には必要ない」

サクヤ「まぁまぁ、そう仰らずに。私の話をもう少し聞いてもらえませんか」



 コホン、と軽く咳ばらいをした後。サクヤは彼に頼みたい『もう1つの事柄』を話し始めました。



サクヤ「大典太さん。貴方にお願いがあります。貴方の本当の主が見つかるまででいい。『私の近侍』を務めてほしいのです」

大典太「……近侍?」

サクヤ「はい。貴方も知っておいでの通り、鬼丸さんと童子切さんが敵側の手に渡っています。三日月さんは石丸くんを『主』として見定めたようですが…。今後、敵側が刀を使役してくる可能性も充分あります。
    ……ですので、貴方には私の近くで知恵を貸していただきたいのです」

大典太「俺には何も出来ることはない。三日月のように知恵を授けることも、数珠丸のように法力を得ている訳でもない。……寧ろ、俺は『鳥落としの刀』と呼ばれるように、霊力で命を奪う刀なんだぞ。そんな俺が近侍など…。出来るはずがない」

サクヤ「ですが、私は斬りましたよ。貴方で。世界を闇に染めやるあの『邪神の棘』を」

大典太「あれは『怪異』の一種だったからだ。病も怪異をも俺を恐れる…。だから、出来た芸当だ。どうせ俺が近侍になったって…。あんたや周りに悪い影響を与えるに決まっている」



 なんと、サクヤは大典太に『自分の近侍になってほしい』と頼んだのでした。確かに彼は相当な霊力を持っている『霊刀』です。神々がサクヤを直接狙う可能性も無きにしも非ずの可能性がある以上、彼が近くにいてくれればこんな頼もしいことはないのでしょうが…。
 まぁね。彼、逸話のせいで自分の強すぎる力が周りに影響を及ぼさないかを恐れ圧倒的なネガティブになっちゃってますからね。近侍なんて出来ない、と首を横に振ります。



大典太「……あの蔵から外の世界に出た後、あんたが俺達に『外の世界』を見せてくれたことには本当に感謝している。めくるめく景色や音、匂い…。刀の中からでも充分感じることが出来たよ。
    あんたが俺に近侍になってほしいのは、三日月や数珠丸が顕現できていないからなんだろう?―――どうせあいつらが顕現したら、俺は用済みになるんだろうからな…」

サクヤ「先の先まで卑屈な想像をしないでください。それに三日月さんは既に『主』を見つけています。彼を近侍にはしませんよ」

大典太「ならば数珠丸が適任だろう。……そもそも俺よりあいつの方が顕現しやすかった筈なんだが」

サクヤ「貴方『だけ』が顕現に成功したのには…何か、理由があるはずです。それを見つけるチャンスだと思いましょうよ。
    それに…神々が鬼丸さんと童子切さんの実権を握っており、かつ道化師達を率いていた長を懐柔した今。恐らく『神の世界で何かが変化しようとしている』。…私を含む地上にいる神々がいつ狙われてもおかしくないのです」

大典太「…………」



 大典太の必要性を訴えても、彼は自らの力を恐れ俯くばかり。目の前にいるのが自分の知っている『龍』であることは明白にしても、その手を握ることすら今の彼には恐怖が勝っていました。無意識に掌が震えているのを、その赤い目は見逃していませんでした。
 そんな彼の手を―――サクヤは、包み込むように優しく両手で握りました。唐突な行動に彼は驚き目を見開きます。



大典太「聞いていなかったのか?!俺に触れると『私、貴方を落ち着かせる為に抱きしめましたけど。何も起こっていませんよ?』…………」

サクヤ「それにね。大典太さん。貴方のこの掌の震えは、貴方の『優しさ』から来るものです。強すぎる力から皆を守ろうと、自らを遠ざけているのでしょう?
    だからこそ、私は貴方を近侍にしたいと思い至ったのです。貴方だけが顕現に成功したからではありません。仮に三日月さんや数珠丸さんが顕現に成功したとしても……私は、貴方を。大典太さんを選んだと思います。優しい刀である貴方だから。
    私は『本当の主』にはなれませんが……貴方が『本当の主』を見つけるまででいい。力を貸してはくれませんか」



 大典太の手はまだ震えていたままではありましたが、彼女の優しい眼差しに―――少しだけ、心境に変化が訪れていました。自分に外の世界を見せてくれた彼女なら。自分の必要性を訴えてくれる彼女なら。『力を貸してもいいのではないか』と…。
 彼は優しく包んでいた彼女の手を退けると、自分の刀をサクヤの前に置き、しゃがみこんで正座をしたのでした。



大典太「……天下五剣が一振り、大典太光世。これより近侍として主命を果たす依頼、承った。本当にあんたは物好きだ…。だが、あんたのことは信じても、いい。どうか―――俺を使ってほしい」

サクヤ「大典太さん…。ありがとうございます。『仮の』主と近侍という主従関係になったとはいえ。立場上は同僚と変わりありませんので…。どうか変に改まらないでくださいませね」

大典太「近侍にした奴がそれを言うか…。だが、そういうところ…。やはりあんたは今でも変わらないな。優しく、力強い霊力だ」

サクヤ「それは大典太さんの方ではないですか?少なくとも…私にはそう思えますけれど」

大典太「……俺が?冗談も程々にしてくれ。どうせ俺は蔵がお似合いのかび臭い陰気な刀だよ…」

サクヤ「全く。―――これからよろしくお願いしますね、大典太さん」

大典太「あぁ。俺の様なかび臭い剣で良ければ―――。……こちらこそ、これからよろしく頼む。『主』」




 穏やかに軽口を投げ合う2人の間には、穏やかな霊力が流れていたんだとか。その後、みんなを待たせてはまずいと急いで打ち上げ会場に戻り、サクヤは待っていたアクラルに過剰に心配され。大典太はその外見を一部の参加者や本部の面子に早速怖がられていたんだとか。


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 感情の起伏がほぼない青龍と、超根暗な天下五剣。……なんだかいいバディになりそうな予感がします。天の声も近侍がほしい!
 刀がほぼ敵側に渡っていること、恐らくタイミングを見計らって天界で戦争が起きそうなこと。中々ギリギリの情勢ですが、何とか踏ん張って未来へと歩いていってほしいものです。とりあえず、お話的にいえば『1章の前半終了』ということになるんですかね。
 さてさて。人間ではないですが、刀剣が協力してくれることになった運営本部。次回はどんな出来事が彼らを待ち受けているのでしょうね?
 それでは皆様、次回の逃走中でお会いいたしましょう!Adieu!


逃走中#CR05 ~はじまりの炎と紋章物語~ THE END.

NEXT⇒ 逃走中#CR06 ~Welcome to Lapistoria~

Re: 逃走中#CR05 はじまりの炎と紋章物語【完結】 ( No.132 )
日時: 2020/09/26 15:29
名前: Ga.c=evo. ◆/3YY/mapGo (ID: g8fOXsqd)

キュベリア、働いた!10万円、出た!美味しい料理、出た!

じーくん、働け……はい……


どうも〜Ga.です。

ついに叩くべき敵も明らかに、ゾロアスター教の悪神、アンラ・マンユ。一瞬パッと来なかったけどアーリマンの別名なんですね〜


そういえば、ここでじーくんのゾロアスター教の蘊蓄トリビアなんですけど、実は【不明なエラーによりデータ破損】、意外と身近なんですよね、まあ灯焔さんは知ってそうですけど……


……あれっ?あっ!


天下五振の過去が……「政府」の刀鍛冶が大量の霊力与えたのにその霊力で監禁されるって……あまりにも身勝手すぎる……でーもな……これにもなんか深いバックボーンがありそうで気になります……なかったらごめんなさい……


それで結局その世界からも隔離、精神と時の……全然違ったわ、時の狭間に。そこで愛情深く管理してたおじいちゃんはアンラ・マンユに殺害……一緒だった5人は敵と味方に……🥺
そりゃ曲がってしまいそうになりますよね……刀だけに(?)


とりあえずはコネクトワールド側に引き込めれてよかった……これで霊力が強いとはいえ今は60パーセントはコネクトワールド側のモンだからなぁ


数珠丸が何故顕現しなかったのか、何故黒い光を吸い込んだのか……ここが個人的に1番気になってるところです……アンラ・マンユに妨害された?


大典太に自分を重ね合わせてしまいますね(カキコだと普通だけど、SNSや現実社会だと失敗したり他人に粗相するのが怖かったりしています)仮契約のシーンはすごくなんというか、あったかい気持ちになりました……!



5作完結おめでとうございます!早すぎる執筆スピード、自分じゃないと見切れなかったです()あとクオリティもめっちゃくちゃ高くてすごいなーと思いました(小学生並の感想)
って、ここまでで第1章の半分!?どんな壮大な小説になるのやら……期待していいですかね!?


それでは〜!Ga.でした!




Re: 逃走中#CR05 はじまりの炎と紋章物語【完結】 ( No.133 )
日時: 2020/09/26 22:26
名前: 灯焔 ◆rgdGrJbf0g (ID: Fm9yu0yh)

どうもです。灯焔です。
いやー。サイファ生放送ファイナル凄かった。涙出た。サイファ好きでよかったなぁ。これからも好きでいますけれど。今年全然出来なかった分沢山の人とサイファしたいなぁ。とりあえず発売後、22弾むきむきします。



>>Ga.c=evo. 様

どうもです。コメントありがとうございます。
キュベリア働いた。次も働いてくれるといいんですがね。期待ですね。Ga.様もご当選おめでとうございます、とのことで。逃走成功目指して頑張ってくださいね!

道化師の背後にいた神々の正体が明らかになりました。彼?彼女?か分かりませんが、刀剣達も恐らくアンラが所持しているのだと思われます。
人間なんてそんなもんです。しかも相手は人じゃない、『物』ですからね。人の都合でどうとでもなってしまうんですね…。

数珠丸が顕現できなかったことといい、サクヤが何故『本当の主』にならなかったのか等今後分かっていくこともあるかと思います。今後もどうか暖かくお見守りください。




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それでは皆様、次回の逃走中でお会いしましょう。ご愛読、誠にありがとうございました。


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