頑張りやがれクズ野郎
作者/ トレモロ

第一部【題尾ですよ編】 【始まってますよ】
屑。
そう言われる人間ってのは、思いのほか沢山いるもんだ。
俺もその一人だし、俺の目に映っている馬鹿共もそうだろう。
まあ、要するに俺は屑で、屑の周りの人間も屑ってこったな。
単純明快、至極解りやすい。
まあ、だからこそ俺は自分を卑下して生きてるわけだが。
如何せん俺の周りの屑野郎どもは、時々分不相応な事をしやがる。
所詮社会のゴミで、周りに迷惑しか書けない阿呆の癖に、よくもまあそんな事が出来るな?
と、問いかけたくなるくらいの所業だ。
具体的に言うとだな。
「おい、テメェ!! その汚い手をどけやがれ!!」
なんて罵声を俺に浴びせやがる事だ。
いや、この罵声だけならなんら可笑しいとこはねえ。
だがな、こいつの笑っちまう所は、その罵声を上げる意味なんだよ。
まあ、これも具体例をあげるとだな、詰まる所俺が屑である意味に直結する。
俺は屑だ。
どうしようもない屑で糞な社会のゴミだ。
なにせ、俺が今やってる事は、
歳食ったババアを蹴った押して、財布奪って、そんな俺に必死にしがみついてくる婆さんの頭を、片手で地面とドッキングさせてる、ってえ事なんだからな。
ひでえだろ?
老人だぜ?
婆さんだぜ?
なんだって、ここまで酷い事できんのか。
そりゃ俺にもわからねえ、きっとどっか歪んでんだろうな。
まあいい。それはとりあえずいいんだ。
俺が言いたいのは、そんな俺を、俺と同じくらい屑の馬鹿が止めようとしてる事だ。
いや、違えな。
俺を止めるんじゃなくて、婆さんを助けたいんだろう。
全く持って分不相応だとは思わねえか?
くだらな過ぎる。
お前見てえな糞ゴミが、俺にそんなこと言えんのか?
って、糾弾してやりたくなる。
だが、俺はそんな事は言わない。
理由?
面倒だからだ。なんで俺がこんな奴の為に口を開かなきゃならねえんだ?
アホらし。
だから俺はそいつを無視して、ババアを解放してそこから去ることにした。
だけどアホはどこまで行ってもアホだ。
俺なんかほっぽいて、婆さんに駆けよってやりゃいいのに、その馬鹿は俺に食いついてきやがった。
「てめぇ! 待てよ!! 財布をその人に返せ!!」
下らねえ。
何様だてめぇ。
この街に居る時点で、てめえは俺と同じ屑の癖に。
なんだよその【善人みたいな行動】は。
くっだらねえ、苛々する。
だから俺は簡単な事をした。
体を回れ右して、その五月蠅い屑の目の前に歩いて行った。
「あ? なんで俺の方に来――」
そんで、何か言おうとした男の言葉を遮るように、懐から出したナイフを、
サクッと、そいつの頭に突き刺した。
俺はナイフを回収するとか面倒なことはせず、そのままそこを去ったよ。
婆さんの悲鳴とか聞こえたけど無視したな。
糞の血に濡れたナイフなんていらねえし、婆さんが叫ぼうが何しようが、気にするような善人はこの街にはいねえだろうからな。
だから、その場にはきっと頭にナイフ突き刺さってる阿呆な善人と、財布を奪われた馬鹿な善人が残ったんじゃねえかな。
その後どうなったかは知らねえが、興味もねえからどうでもいいさ。
ええと、大体あの時の感情を織り交ぜて書くと、こんな感じかね?
大体解ったか読者さん?
って、分かるわけねえか。
この日記を見てるてめえらは、きっと今のこの話の意味がさっぱりわかんねえんだと思うがよ。
ま、どうでもいいんだ。俺は文章力ねえし、こりゃ小説じゃなくて日記なんだからな。
でも、俺の今までの経験を訥々と語って、それが何かになるんだって事らしいから、まあ書くわ。
この日記が何になるのかは分からないし、日記を書けって命令してきた野郎は変わりもんだからな。
ああ、俺はその変わりもののお陰で随分変わったよ。
今書いた事を振り返ってみても、自分に少なからず不快感が発生するぜ。
でも、まだ罪の意識に苛まれるほど【善人】にはなってねえと思う。
だが、俺は変わった。
それは確かだ。
だから、まずは俺を変えた【アイツ】の事から語ろうと思う。
その前の事は、語る価値のねえ屑の人生だからな。
そうだな。
俺があいつと初めて会ったのは、
俺が殺されかけた時だったけな?

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