『四』って、なんで嫌われるか、知ってる?

作者/香月

第十三話


 この時ほど、四つ子に生まれたことを恨めしく思ったことはない。
 『四』と言われたら、私たちが思うことはひとつ。

 「……私たちが、四つ子だから」

 凛が、ポツリとつぶやいた。

 「その通りよ」

 首を縦に振るシアン。
 そして続けた。
 相変わらず、薄ら笑いを浮かべつつ。

 「でも、安心して。四人全員を殺す気なんて、さらさらないから。わたしは一人だけでも殺せれば、それで満足よ」
 「……何言ってんの!?そんな理不尽なこと……!私たちが何をしたって言うの?何もしてないでしょっ!?」

 凛が叫ぶ。
 凛も、分かっているはずだ。
 シアンに何を言っても、意味がないことぐらい。
 それでも、藁にもすがる思いで叫んでしまうのは、みんな同じだ。

 「…何もしてないことはないわよ、凛ちゃん」

 シアンの声と共に、凛の肩がピクッと小さく震えた。
 私はシアンを見る。

 「と言うより、あなたが全ての元凶よ」

 シアンの目が、光を宿したようにきらめいた。
 ……ように見えたのは、私だけだろうか。

 「……何、言っているんだ?」

 塁が、一言一言を噛み締めるように訊く。
 …なんだか、嫌な空気。さっきより暗くなった気がする。

 「だってそうでしょう?」

 語尾を持ち上げて、首をかしげるシアン。

 「私をこの家に連れてきたのは、他でもない、凛ちゃんなのよ?」

 シアンは無邪気な表情を浮かべている。
 でも、その仮面の下がどんな顔なのかは、分からない。

 「分かるでしょ?凛ちゃん。
 あのウサギが死んだのも、
 獣医さんが消えたのも、
 玲くんが大怪我をしたのも、あなたのせいなの。

 全部、ぜーんぶ、あなたのせいなのよ」


 分かりたくもない、私は小さくつぶやいた。






 「……邪魔者は、取り除かなくちゃいけないわ」