コメディ・ライト小説(新)

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噛ませ犬が愛しすぎてツラい
日時: 2021/12/31 02:54
名前: mono (ID: RO./bkAh)

醜いですが、どうぞ読んでみてください。

なんか見知らぬ間に賞をいただいていました…!
ありがとうございます。作者の多忙な時期が過ぎましたら、また再開するのでどうぞよろしくお願いします。

Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.41 )
日時: 2019/01/14 10:02
名前: mono (ID: RO./bkAh)

アーケード街をぶらついていると、ゲームセンターが目に入った。日南は「やば」と声を上げて立ち止まった。

「どうした」
「プリ…ここにあった」

今月新しく出たプリ機である。ゲームセンターのポスターには、4階にそのプリ機があるとあった。

「撮ってもいいけど」
「まじ?」

珍しく目を輝かせた。激しいポップな機械音が混じり合う中に入り、階段を上がる。先を急ぐ日南の太ももが目に付いたが、瑛人は何を思ったか立ち止まって頭を軽く振りまた階段を上り始めた。

「並んでるし…」
「あんま並んでないよ」

15人ほど女子高生、又はカップルの列ができていた。瑛人は当然プリクラを撮るのは人生初である。日南の後ろに並ぶ。

「そういえば言いたいことあるんだけど」
「何?」

初めの頃よりは素直にはなしを聞いてくれるようになった。携帯から目を離して瑛人を見上げた日南がいる。

「日南のこと好きだから、俺と付き合ってくれないかな」

途端に日南は固まった。あまりにもムードが無さすぎる告白である。行列の中、プリ機と若者が集まる騒々しいこの場で、日南は何も反応せずフリーズしている。

「…嫌ならいいけど」

相変わらず瑛人の表情は変わらない。日南はそれにも驚いて、瑛人を見つめ返した。嘘だ、聞き間違え。つかこんなやつに遊ばれるとか、まじ腹立つんだけど。日南の表情はコロコロ変わっている。赤くなったり、瑛人を睨んだり…よく分からない。

「疑心暗鬼にならないで。俺は、本当に日南のこと好きだから」

その言葉を淡々と言う瑛人に、日南は言い返せなくなった。本気なのか、そうでないのか。

「まじで言ってんの?」
「うん、まじ」
「なんかお前がまじって使うと、キモイ」

ただ日南は口から出任せであった。

「日南の気持は?」

Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.42 )
日時: 2019/02/05 10:32
名前: mono (ID: RO./bkAh)

日南は瑛人とどのように接していいか分からなくなった。日南は今までお付き合いしたことのある男子が3人いる。いずれも中学生のとき、1年ずつ。高校入学後は、そもそも男子とまともに話していない。だから、日南はあまり男慣れしていないのだ。プリ機に入ってしまったし、2人だけの空間なので、さすがに日南も自ら何か進展を起こさないと行けない。

「なんで、私なの」
「私別に瑛人のこと嫌いじゃないけど」

断りたいわけではないのだが、これから瑛人を恋人としてみることができるか不安であることを伝えたい。でもしどろもどろになってしまう。

「好きに理由…いる?」
「この野郎…」
「顔赤いよ」

身長差約20cm。瑛人に顔を覗き込まれて日南は泣く泣く瑛人と目線を合わせる形になってしまった。

「ばか」

日南は瑛人の頬を軽く叩いたが、逆に瑛人に抱きしめられてしまった。

「可愛いすぎ」

2人がラブラブしている間にどんどん時間が経って、勝手に機械がフラッシュをたいている。

「瑛人」
「ん?」
「私も、…き」
「聞こえない」
「もう言わねー」

1枚くらいちゃんと撮ろうよ、と瑛人が言って日南はそれをすっかり忘れていた。日南と瑛人はぴったりくっついて、中央のカメラ部分に視線を送った。2人は落書きコーナーに入り、日南が瑛人に達筆に驚いたあと、2人はプリクラが出てくるのを待った。日南は携帯に送られてきた何枚かの写真を吟味している。

「インスタ載せていい?」
「いいよ」

どれがいい?と日南が聞くと「盛れてるやつ」と言ったので、最後の1枚である。

「なぁ、これさ、めっちゃ綺麗な流れなんだけど!やば!」

瑛人が日南に向き合ってから、次に日南と瑛人が向かい合って、見つめあって、頬を叩いて、抱きしめられて、笑顔になって、からのキメ顔の最後の1枚である。

「誰だかわからないな」
「瑛人まじきもい」

顔立ちが整いすぎると、逆にダメになるのがプリクラの極意。



Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.43 )
日時: 2019/02/05 21:17
名前: mono (ID: RO./bkAh)

「ちょ、礼見てこれ」

カラオケで熱唱する稜と早川をよそに、千夏が携帯画面に向かって目を丸くした。そこには瑛人と日南のツーショットのプリクラが載っていた。横にスライドすると2枚目には高そうなディナーの写真とさりげなく向かい合う瑛人が見切れている。

「あの2人お似合いだもんね、よかったわぁ」

千夏は日南のインスタの投稿にいいねを押して、DMにハートマークと祝福のメッセージを送った。

「へ~やっぱ付き合ったんだ~」

礼は至って普通である。礼はその投稿を何度も見返したが、いいねは押さなかった。

Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.45 )
日時: 2019/02/07 08:51
名前: mono (ID: RO./bkAh)

瑛人か、たしかに男から見ても顔が整ってる。でも、俺はあいつと違って部活頑張ってるし、キャプテンもやらせてもらってるし、云々。まだ負けたわけじゃない。部活前にマネージャーが部室を掃除していた。稜は寮生ではないので、そのまま部室に直行している。

「稜」
「ん?」

トレーナーから顔を出した先にはマネージャーの笹谷愛子がいた。

「萱野礼ってあんまいい話聞かないから、やめた方がいいよ」

笹谷愛子は学校では普通にクラスメイトである。礼や日南とは一緒にいないが、かなりしっかり者で生徒会執行部にも入っている。

「付き合ってるわけじゃない」
「あの子さ、日南に彼女できてからまた変なこと考えてそう」
「根も葉もないこと言うなよ」
「だって同じ強化部の実里不登校にしたんだよ。しかも、先生に実里のこと相談した子まで嫌がらせしてるの」
「俺、あんまり礼のこと恋愛相手として見たことない」

え、意外。そんなことを言いながら愛子はロッカーの隅から変色したソックスを見つけ出し、汚いと悲鳴をあげている。

「ねぇこのソックス誰の?これは私洗濯しないからね」

部室にぞろぞろ入ってきた寮生の部員たちをいつも通り、すごい剣幕で怒り始めた。

Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.46 )
日時: 2019/02/07 17:30
名前: mono (ID: RO./bkAh)

「ねぇ、礼。赤茶に戻したいんだけど、いい美容室教えて」

日南がいつもと変わらない調子で礼に話しかける。

「え、なんで?」
「金髪飽きたから」

男の趣味じゃん、絶対。あれだけ一匹狼面してた日南が変わる?嘘でしょ?女の嫉妬は実に見にくいものである。自分の周りにいる同性が幸せになるとどうしても受け入れられない。何故だか分からないが、グループではその幸せな人に対しての迫害が起こる。仲間だけが充実する焦燥感が、礼に襲い掛かっている。でも礼はこのなんとも言えない苛立ちに似た日南にはぶつけ難いこの思いを、嫉妬だとは気がつくはずがない。

「瑛人くんの趣味?」
「いや、あいつは髪色落とすの反対してる」
「え!そーなんだ!ていうか、日南逆に暗色似合わないもんね」

礼は日南をからかおうと思ったが、やめた。

「だから赤茶にしよーかなって」

暗色似合わないって言ったよね?少し前なら、あんたは私の言うことに従ってるはずなんだけど。




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