コメディ・ライト小説(新)
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- 噛ませ犬が愛しすぎてツラい
- 日時: 2021/12/31 02:54
- 名前: mono (ID: RO./bkAh)
醜いですが、どうぞ読んでみてください。
なんか見知らぬ間に賞をいただいていました…!
ありがとうございます。作者の多忙な時期が過ぎましたら、また再開するのでどうぞよろしくお願いします。
- Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.82 )
- 日時: 2019/08/02 11:01
- 名前: mono (ID: RO./bkAh)
こいつらが勝手に日南に電話をかけたので、日南はぶちギレている。仕舞いにはら電話越しに日南の友人が「日南頷きました」とか「今顔顰めてます」とか言い出すし。
「あー、日南怒っとね」
「お前らしゃーしぃから。ちゃんと謝っとけよ」
おーす。とかやる気のない返事をされつつ、肉を食べ続ける。家族て焼肉とかほとんど食べたことがない。だから美味い。
「瑛人食いすぎじゃね?」
「お前ら運動部の癖になんで食べないの?」
「いやいや!食ってるから!」
とりあえず、九時前にここを出て日南に会いに行こう。まだ7時半だから大丈夫だ。瑛人はこのメンバーでいると、すぐ時間を忘れるし、腹がかち割るし、とりあえず笑い泣きしそうになる。こいつらと同じ学校だったら毎日楽しいだろう、サッカーもできたら。
「バカやめろって」
「まじ頭おかしいんだけど!」
このテンションが1番楽だ。瑛人は無意識にそう感じて、一際高い声で笑っていた。
- Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.83 )
- 日時: 2019/08/29 00:58
- 名前: mono (ID: RO./bkAh)
日付が変わる前に瑛斗は家に帰った。どんな言い訳をすればいいのか、しかし、玄関に父親の靴は無かった。
「ただいま」
「あぁ、おかえりなさい」
ダイニングで灯りも付けずに、虚ろに目線をどこかに投げていた母親に声をかけた。母親は生気をどこからか一瞬で取り戻したように、キッチンに向かい皿を洗い始めた。生気を養うのは多分、俺からだ。俺さえ笑って普通にしていれば。
「母さん、俺がまだあいつらと一緒にいたら、いい気しない?」
「…分からない、お父さんに聞いてみないと」
弱々しい声が食器が割れる音にかき消された。母親はいいから、いいからと言い瑛斗が割れたガラスに触らせないように、1人で破片を集め始めた。
「あ、そう言えば、八城川さんってどんな人?」
「え?」
「あの子、すごくいい子じゃない?多分、お父さんも喜ぶんじゃないかしら」
「ごめん。母さん」
「なぁに?」
息子との久々にこんな可愛らしい会話が出来て楽しそうにする母親とは裏腹に、瑛斗の声はどこか響いたようだった。
「彼女いるからさ、あんまりそういうこと言わないでほしい。風呂入って寝るから」
瑛斗はリビングを出て自分の部屋に行った。そのあと母親の顔色を知る由もない。
- Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.84 )
- 日時: 2019/08/29 08:36
- 名前: mono (ID: RO./bkAh)
「瑛人のママなんて言ってた?」
「わかんないけど…無言だったよ」
瑛人は机に携帯を立てかけながら日南とビデオ通話をしている。日南は自分の部屋で寝っ転がっている。瑛人は問題集と睨み合いながら、時折ペンを回したりなんかしていて、日南はもう布団に入っているのでつまらなさそうにしていた。
「大学どこいくの?」
「うーん、」
瑛人が悩ましげに口を開いた。その大学は日南でも知っている。
「すげー」
瑛人は腐っても地頭がいいのだ。両親ともに高学歴、高収入であると、必然的に良い教育環境が得られるというのは本当、で小さい頃から惜しみなく瑛人には図鑑、顕微鏡、水槽などが与えられた。
「そこの理学部でさ化学か化学工学やりたいんだよね」
「パパの会社継ぐより楽しいんじゃね」
「…そうだね」
日南は分かってくれている。何だか肩の重荷が外れた気がして、急に眠くなってしまった。
「日南は?」
「うーん、決まってねー」
「好きなこととかないの?」
「服とか」
「モデルやったら?」
「出来るわけねーじゃん」
「そうかな」
瑛人が意外と本気のような顔をしているので、日南はちょっと面白かった。
- Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.85 )
- 日時: 2019/11/02 08:55
- 名前: mono (ID: RO./bkAh)
瑛人が手にしていたのは、某大学の入試説明のパンフレットだった。一応、アルファベットの枠組みで語られるくらいの名門大学だが、恐らく瑛人の父親は許さないだろう。人格と引き換えに経済力と学力を手にしている男である。どう丸め込もうか、瑛人は教室に向かいながら考えていた。勉強を真面目にしていた瑛人なら国家公務員をバンバン輩出する某国立大学を目指せた。しかし、瑛人は日南に出会ってから、日南にはぞっこんでユース時代の面々がオフなら遊びにいっている。
「え、お前、そこ行くの?」
「評定5だと厳しいかな?」
「いや、オール5なら大丈夫だと思うけど…」
あとは適当にボランティア活動か奉仕活動に参加して、テストもいつも通りすれば良い。隆也は瑛人の胸元から少し光るものが見えた。
「ネックレス?」
「おう」
「先生に見つかるなよー」
前の真面目で静かな瑛人はいなくなってしまった。だけど、どこか人間味に溢れよく笑うようになった瑛人を見て隆也も釣られて笑った。
「でもさ、指定校でも瑛人ならもっと別のとこ狙えるし、今から勉強すればよくないか?」
「もう4月やけど」
「いやいや、大丈夫だって。瑛人のパパとママ学歴もあるんだから、瑛人も受け継いでるはずだって」
「それが嫌なんよね、俺」
瑛人は席を立って、教室から出ていってしまった。なにかまずいことを瑛人に言った気がする。
- Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.86 )
- 日時: 2019/12/28 05:20
- 名前: mono (ID: RO./bkAh)
それでも瑛人はなんだかんだ真面目に勉強してしまう。この間の土日は、誰とも合わず予備校に篭っていた。まだGW前だというのに、自分の真面目さにはつくづく呆れてしまう。瑛人は物理が好きだ。分からないところがあったので、バイトでもベテランでも講師を捕まえて、質疑に迫っていた。
「瑛人くん、随分気持ち悪い問題解いてますね」
「そうですか?楽しいんですよ、数学より」
アルバイトの大学生講師、三隅は瑛人の英語担当である。三隅は瑛人が志望する大学の学部学科にいる理系男子で、瑛人と同じくなんだかチャラい。
「瑛人くんなら俺の大学来れるんじゃないかな?女と遊んでないで一緒に研究しよ、研究」
「 そう言ってもらえると、励みになります」
瑛人は気分よく自習室に戻った。まい子は
瑛人を見かけて、後を追った。
「瑛人くん。勉強してるんだ」
「そうだよ」
なんで瑛人くんて白いTシャツがこんなに似合うんだろう。そう思って中々言い出せずにいると、瑛人はもう帰る準備を始めていた。
「え?もう帰るの?」
「うん、じゃあね」
瑛人は自習室を出て、塾を後にした。
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