コメディ・ライト小説(新)
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- 噛ませ犬が愛しすぎてツラい
- 日時: 2021/12/31 02:54
- 名前: mono (ID: RO./bkAh)
醜いですが、どうぞ読んでみてください。
なんか見知らぬ間に賞をいただいていました…!
ありがとうございます。作者の多忙な時期が過ぎましたら、また再開するのでどうぞよろしくお願いします。
- Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.77 )
- 日時: 2019/07/07 08:05
- 名前: mono (ID: RO./bkAh)
「おはよーーー」
千夏が後ろから飛びかかってきた。日南は校門の前で転びそうになる。
「昨日どうだった?」
「…すぐ寝た」
「はぁ?お前、ババアかよ」
瑛人の体温が赤ちゃんみたいに高くて、オマケにいい匂いがするので、いつの間にかかなり質の高い睡眠が取れていた。ただそれだけ。
「瑛人くん男子高校生なのにジジイなん?」
「萎えてるって考え方やめてくれね?」
「ってか、聞いた?礼、学校辞めるってよ」
「え?」
昨日、LINEをしたときは礼は元気そうだった。大事を取って、1日休めば完全に元気になれると送ってきた。そして、稜と付き合っているということも言われた。
「聞いてないんだけど、それ」
「私も違う子から聞いたからわかんないけど」
「マジかよ…」
「まぁでもさ、礼にやられた奴にとってはいいんじゃね?」
千夏は平然と日南の横を歩いている。悲しそうでも気にしている素振りもない千夏に対し、日南はまた礼のいる病院にかけだしたくなった。もしかして、私、礼に嫌われてる?でも、礼が小学校のときに万引きとかお酒飲んだりしても私だけは隣でずっと黙ってた。礼に彼氏取られた子は礼より可愛くなかったから、仕方のない事だと思ってた。円光だって礼がお小遣い貰えないから、止めても結局はだめだったから、口を閉ざしてきた。ねぇ、礼わかんないよ
「日南。あんたにいちいち言わないようにしてたけど、礼って相当やばいからね」
「それは…わかってるわ」
「なら良しー!」
千夏がいつも通り明るく戻ったので、日南も適当にそのテンションで合わせた。
- Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.78 )
- 日時: 2019/07/14 19:23
- 名前: mono (ID: RO./bkAh)
学校には早く着いた。瑛人は日南が貸してくれた整髪料の使用感が気に入っていて、何度か毛先に触れてしまう。
「平賀、お前の髪型は校則違反じゃないか」
「…何でです?」
生徒指導の体育教師が廊下で声を掛けてきた。
「両耳のあたり、刈り上げすぎだ。生やせよ」
「すみません」
瑛人は一言謝ったが、眼光を教師の背中にぶつけていた。
「瑛人。お前、昨日家帰ってないだろ」
「え?」
「家にまで電話かかってきた」
「それは悪かった」
隆也は瑛人の悪気がない様子にため息を吐いた。確かに瑛人の家が厳しすぎるのは分かる。よく18年間瑛人は普通に過ごせているとも思う。瑛人のSNSには大概日南か、日南の学校のヤツらが多い。瑛人のSNSまで親は監視しているだろう。
「日南とお泊まり?」
隆也は好奇心が湧きまくって、瑛人にずいずいっと顔を寄せて聞いた。
「なんもしてないけど」
「なんだよー、男だろ?まさか、やる前に日南ちゃんに搾られた?え?」
「日南は、処女だよ。俺も童貞だし」
「お前が童貞とか興味が沸かない」
「…」
隆也のメガネが急に光らなくなった。それに瑛人は怪訝そうな顔をした。
「瑛人くんとお泊まりって羨ましいなぁ」
「死ぬよね~」
隆也と瑛人の会話を聞いて女子はコソコソ話をしていた。
「俺ん家は無理だな」
「まぁ、わかるわ。日南ちゃんのこと、親に紹介するの?」
「もちろん」
- Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.79 )
- 日時: 2019/07/20 23:43
- 名前: mono (ID: RO./bkAh)
課外講習を終え放課になり、隆也と瑛人は校門から出て一緒に駅へ向かって歩いていた。歩道の横の対向車線から、シルバーの外車がやってくる。車が好きな隆也は目を光らせていたが、瑛人の顔は曇った。2人の横に車が停まった。ウィンドウが降り、瑛人の父親の横顔が見えた。いつも眉間にシワが寄っているが、怒っていたり不機嫌であったりするとさらにひどくなる。
「乗りなさい」
「駅から帰るから大丈夫だよ、父さん」
「ふざけるな」
昔の俺なら怒鳴られてすぐ泣いていた。あとから母親が慰めに来てくれたけれど。だけど今は違う。瑛人は憎悪に変わった視線を、不意に見せかけて父親に送った。
「あ、あの、俺はいいからさ…じゃあね…失礼しますっ」
隆也が気を使って駅の方向へそそくさと歩いて行ってしまった。
「父さん、昔から上手いよね。俺の大事なもの奪ってくの」
父親は一向に顔色を変えない。瑛人はわざとか何かへらへらと笑っている。車に乗り込むと父親の手のひらが瑛人の頬を素早く叩いた。運転席にいるドライバーは、びっくりしたが、後部座席を振り向かないようにしていた。
「何してたんだ昨日」
「…彼女の家に泊まってた」
なんだと、と言い瑛人の反対側の頬に拳をぶつけた。瑛人は顔を殴られた方向に伏せたまま何も反応がない。
「クソくだらないことに時間を無駄にしあがって、勉強しろ。そして父さんと同じ大学に入ればお前を息子と認めてやる。お前は…」
瑛人は父親のスーツの襟を掴んで、窓ガラスに頭を叩きつけた。
「お前さぁ、兄貴で失敗してんだろ?懲りろよなぁ?そもそも俺はお前のこと父親だと思ったことねぇし、お前のせいで家めちゃくちゃじゃねぇか。お前がやってきたこと全部返ってくるから覚悟してろよ、この父親失格が。母親も兄貴も俺もお前に潰されて、誰もお前なんか慕ってねぇし、目標でもなんでもねぇ。死ね、ゴミ」
瑛人は最大限襟を引っ張りあげて、父親の顔が苦しそうに赤くなってきているのを、瞳孔が見開いたまま眺めていた。
「お、お、瑛人さまっ、」
運転手が焦って後ろを振り返ると、瑛人はぱっと手を離した。
「嘘だよ、ちゃんと反省してます。ごめんなさい」
「…」
父親は肩で息をしながら、驚いたように瑛人を見ていた。瑛人は何事もなかったように、肘をかけて窓から見える景色を眺めていた。
- Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.80 )
- 日時: 2019/07/28 09:44
- 名前: mono (ID: RO./bkAh)
まり子は予備校に着いた。入口を抜け、中でエレベーターを待っていると視界には、入口には女性が座っていた。辺りをキョロキョロと見ていて、受付に行こうとしたらしいがとりあえずテーブルと椅子に腰を掛けた。
「あの、どうかされましたか?」
受付が誰もいなかったので、まり子は女性に声をかけた。色白で見た目は30代の品がある女性である。
「今日面談があるって言われたんだけど…予備校生の方?」
「ええ、先生呼んできますね」
にこやかに微笑まれて、まり子も大きなお世話だと思われたらいやだと思っていたが、なんだか久々にいいことをしたと自負できそうだった。まり子は授業をしていた1回の教室を訪ね、講師を呼び出した。
「八城川さん、ありがとう」
「いえ」
講師は慌てて女性の元に駆け寄り、何やら話し始めた。まり子はその様子をまた遠くから少し長めた後、エレベーターに乗った。あの笑顔、誰か見覚えがある。鼻がスっと通っていて、綺麗な目元…まさか、瑛人くんのお母さん?まり子は1人でガッツポーズをした。これで、ちょっとは近づけたかな?どうしよう。嬉しい。
「さっき先生を呼びに行って下さった方にお礼をしてないわ」
「彼女は成績も優秀で、うちの模範的な生徒さんなんですよ」
「まぁ、すてき」
談笑していると、瑛人がやってきた。
「遅れてごめん。父さんが送ってくれた」
「そう、よかったわ」
なんで素敵な親子なんだろう…講師は2人にうっとりしている。別の部屋へ通され、瑛人と母親の元に担当の講師がやってきた。
「相田と申します。今日は瑛人さんの学力の状況と志望校についてお話させていただきます、よろしくお願いします」
「瑛人の母の留美子です、こちらこそよろしくお願いします」
相田は30代の塾長である。瑛人の母親の綺麗さにドギマギしているのが、瑛人に伝わってきた。
「早速ですね、瑛人くんの学力ですが…」
相田が口を開いた。話を聞くと、順調に成績が下がっているらしい。今までがずば抜けていた分、受験勉強を始めて勉強が上手くいかなくなっているのでは、と言われた。瑛人は当然勉強していないから学力が落ちていると思っていたが、なるほど、その考え方もあるのか。
「そうですね。焦ってるかもしれないです」
「前のペースに加えて、一、二年時の復習をして言ってください」
瑛人は笑顔で頷いた。
「進路のお話しですが、瑛人くんは教育学部を志望されてるみたいですね」
母親の顔が固まった。
「瑛人…あなた経済学部じゃないの?」
「そんなこと言ったっけ?」
「だ、ダメよ。お父さん可哀想じゃない」
「先生。僕、化学好きなんですけど、理学部とかそっちの方がいいんですか?」
「あー、理学部でも教師の免許は取れます。でも、学校の先生になりたい方が気持ち的に上なら、中等教育学科とかですかね」
「へぇ、おもしろいかもね、母さん」
瑛人に手渡される大学の資料はどこも一流の難関大学ばかりである。母親はただ頷いているだけだった。
「オープンキャンパスとか行かれましたか?」
「まだ決めてなくて…」
「国公立大学か私立大学か、どちらが第一志望ですか?」
「どうしようかな」
父親と母親の卒業した大学だけは避けたいので、それらの大学の資料はとりあえず手に取ることはなかった。透かさず母親が
「ここの大学院、お父さんが出てるのよ」
と笑顔を作ったが、瑛人の耳には届いていないようだった。
「ねぇ!平賀くんがいる!あれ、お母さんかな?」
「超キレー」
まり子を初めとするほかの女子が面談の様子を覗き見していた。少しして面談は終わったようで、2人は教室から出てきた。まり子たちは慌てて捌けたが、瑛人の母親と目が合ってしまった。
「先程はどうもありがとう」
「い、いえ」
「瑛人、さっきこの子が私のこと助けてくれたのよ」
「そんな大袈裟な…」
「あ、あなたお名前は?」
「八城川まり子です」
瑛人の母親は八城川という苗字に何やら覚えがあるらしい。瑛人はそれを危惧して1人だけ外へ出た。
「あの、八城川って、商社の?」
「まぁ…父ですけど」
「あら~。うちもお世話になってるかも、うちの子、彼女とかいないはずだからよかったら仲良くしてあげてね」
「瑛人くん…」
「では、またこんど」
「あ、さようなら…」
瑛人の母親は気分を良くして、出口に向かった。彼女いますよ、瑛人くん。そう言いかけたが、間に合わなかった。
「まり子ちゃんって可愛い子ね」
「そうかな?」
瑛人は適当にあしらったあと、スマホの着信音が鳴った。瑛人の少年時代のサッカーチームの友人である。日南と同じ高校に通っている。
「おーす」
「瑛人!なんしよーと?」
「予備校の面談終わったとこ」
「今日オフになったんよねー、焼肉行かん?」
「待ち、金持っとらんかも」
財布には七千円しか入っていなかった。瑛人はいつも万札を3枚持ち歩くような男子高校生なので、大規模な金欠に近い。
「まぁ行ける」
「じゃー来て」
焼肉屋を指定されたので、瑛人は向かうことにした。
「どうしたの?」
「高校の友だち、焼肉食べてくるね」
「あ、うん…」
瑛人は歩いて少し距離があるが、焼肉屋の最寄り駅に止まる電車がある駅に向かうことにした。
「ご飯は?」
「今日はいいや」
「昨日も帰って来なかったじゃないの」
「ごめん、模試終わったからみんな楽しくてさ」
「…日付変わる前に帰ってきてね」
うん、と笑顔で頷くと母親と反対方向に向かって歩き始めた。
- Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.81 )
- 日時: 2019/07/28 22:19
- 名前: mono (ID: RO./bkAh)
「日南ぁ~進路希望出した?」
「あ、」
ファミレスで日南と千夏は夜ご飯を食べることにした。席に着くなり、日南は進路希望の紙を書いていないことに気がついた。
「どーしよ」
「うちは指定校推薦狙うって決めてるから」
千夏は日南にわざとうざったいようにピースサインを作ると、日南は舌打ちをした。
「お姉ちゃん高卒で就職したから大学行きにくいんだよねー」
「別にいいんじゃね、やりたいことあれば」
「特にないんだけど」
日南は鞄からそそくさとペンポーチと進路希望調査の紙を取り出し、いそいそと書き始めた。
「え、決まってんの?」
「わかんねー」
「美容系向いてそうな気がする」
「なんで?」
「金髪似合ってたしぃ、髪まくの上手いじゃん、ネイルも日南にやってもらったし」
「…じゃあそうするわ」
日南は褒められたのがちょっと嬉しかったのか、スマホで 美容師 専門学校 と調べてみた。膨大な数の情報量に顔を顰めたが、とりあえず地元にある美容専門学校の名前を書いておいた。
「日南ん家ママ凄いよね」
「なんかばーちゃん家から援助してもらってるらしいよ、孫あたしだけだから」
「へぇ~ばーちゃんイケメン」
ママはOLである。仕事のときはいつもスーツに身を包み、カチッとした佇まいである。1度、家に忘れた書類を届けに会社に行ったことがある。
「瑛人また焼肉食ってるし」
「いいじゃん」
「デブるって言ったのによー」
ブーブー言ってはいるが、傍から見ればただの惚気である。この間も日南のことを学校に迎えに来ていた。
「うわっ」
瑛人にLINEを送ろうとしていたら、瑛人から電話がきた。
「でろ!」
千夏が思い切り、受信の表示をタップした。
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