コメディ・ライト小説(新)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

噛ませ犬が愛しすぎてツラい
日時: 2021/12/31 02:54
名前: mono (ID: RO./bkAh)

醜いですが、どうぞ読んでみてください。

なんか見知らぬ間に賞をいただいていました…!
ありがとうございます。作者の多忙な時期が過ぎましたら、また再開するのでどうぞよろしくお願いします。

Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.52 )
日時: 2019/02/08 08:40
名前: mono (ID: RO./bkAh)

日南が慌てて戻ると、試合はまだ始まったばかりだった。

「瑛人くんに会えてよかったね」

私の方が優先順位上じゃない?瑛人くんよりも。礼はそんなこと口に出すわけなかった。

「試合どんな感じ?」
「んー、サッカー見ててもよくわかんないんだよね」

礼には稜しか見えていない、ピッチで稜の声ならすぐわかる。

「でもずっと稜たち攻めてばっかじゃね?」
「わかる。ずっと相手チームのゴール前で競ってるよね」

稜のポジションはDFである。

「知ってるやついた?」
「15番と19番は前一緒にやってた牧田と早川。あいつらずっと組んでんのかな」
「皆プロ行くんだろうなー、すげー」

8強の試合でこんなものを見せられてはやる気を無くしてしまう。自分との差が歴然なのは当たり前だが、とても悔しい。

Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.53 )
日時: 2019/02/10 09:58
名前: mono (ID: RO./bkAh)

「うわー、7対0でえぐすぎ」
「相手にも1点あげればいいのに。稜ひどいよ~」

稜は鉄壁なので悲しくもセカンドボールは絶対に繋がらない。そのまま試合が終了した。稜は大きく手を叩いたあと、チームメイトと抱き合って喜んでいた。

「ねぇ、瑛人の試合見てっていい?」
「試合終わったら私と遊ぶって言ってたじゃん」
「言った?」
「言ってなくても、駅着いたら2人で遊ぶじゃんいつも」

礼がなんだか、いつもよりわがままである。でも日南は約束したので、礼とは約束していない。

「ごめん、やっぱいいよ。試合見よ?」
「お、おう」

どいつもこいつもなんで私の言うこと聞いてくれないの?

「あ、いた」

もう既にアップをしていて、長袖のユニフォームに身を包んでいる。瑛人は久しぶりのこの全ての感触を懐かしむところから始まったのだが、試合はもうすぐ始まる。日南が座っているのが見えた。ホイッスルがなり、一同並んだ。

「これより…3回戦…」

アナウンスが流れた。日南と礼の周りは何故か女子で埋めつくされている。瑛人くん、瑛人くん、とざわざわしていて相手チームと握手を交わしたあと瑛人たちは円陣を組んでいた。

「平賀も来てくれたわけだし、ここまで勝ち上がれたのも何かの運だ!最後頑張ってこう!」

蛭野がチームメイトに声をかけたあと、瑛人は笑顔で頷いた。部活動はオマケの進学校とこれまたスポーツ強豪私立高校である。瑛人はトップ下の左サイド。試合のホイッスルが響くと、まずは相手校に攻め込んだ。

「なぁ本当に瑛人ってなんなの」
「お前の親友」
「だけどさぁ…運動できるって俺知らないよ」

隆也もクラスメイトと観戦しに来ている。いつの間にかに日南と礼の周りは瑛人の応援で埋め尽くされている。しかし、早速ピンチを迎えているため応援席は悲鳴に包まれていた。

「あ、瑛人くん蹴ったぁ」
「身長でかいのによく動けるな」

どうしよう、やっぱり楽しい。瑛人は蛭野より大きな声で指示を出している。だが、パスをしてもすぐ相手に取られてしまうので、何とも言えない。いいや、勝手に切り込んでいこう。今日は思い出作りと過去の払拭と題して、貪欲になろう。

「瑛人めちゃくちゃ笑顔、キモ」
「可愛いんだけどー」

日南はスマホを構えている。ちょうど瑛人が後ろを振り返ったところで後ろ姿を撮って、走りながら指さしているところも撮った。絵になる。

「あの地味に上手い8番だれ?」
「さぁな、もったいないなぁ」
「うちに欲しかったですね」

稜たちが試合終わりで席を探しているのが見えた。礼は稜たちに声をかけたかったが、人がたくさんいて、席が空いていなかった。

Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.54 )
日時: 2019/02/11 10:57
名前: mono (ID: RO./bkAh)

「9番の平賀、高校進学後にも期待」

地元のスポーツ誌ではそんなことを言われていた。テレビの取材にも落ち着いて応える15歳。

「高校でも続けたいとは思っていますが、両親が言う通りに勉強に励みたいです」

両親が言う通りとは、瑛人の最大限の皮肉。会社継がせるのかしら、まぁ平賀さんだったらどこにでも進学させるでしょう、と様々な憶測が飛び交う中、瑛人は一家で地方に引っ越す。その時、まだ祖父が現役で父親は部下の立場だったので、辞令により転勤が決まった。

「瑛人。ママはね、瑛人の好きなことを頑張ってほしいの」
「僕、勉強が好きだよ」

生物学的にも父親がいなくても生きていける心理が、元々人間には携わっているらしい。しかし適当な話に過ぎない。瑛人が父親によって転勤を知らされたのは最後の試合の朝である。

「上がってこいよ!」

瑛人は遮るように声を張り上げた。後半に入ってもう3点も取られている。ダメかもしれない、ダメなんだ。ダメなんだけど、勝つとか負けるんじゃなくて。瑛人はセンター寄りにパスを受けると、サイドから相手を交わしている。

「瑛人いけっ!」

日南が叫んだと同時に、瑛人の左足は鋭く膨れ上がった曲線を描いて、ゴールに入った。その反動で瑛人は左側に体重がかかってしまい、転んだが綺麗に後転をして立ち上がった。

「平賀ぁ!」

蛭野や他の部員が抱きついてきた。アナウンスで瑛人が1点を決めたことを知らされると日南と礼の周りの観客は湧き上がる。

「やった!」
「やんじゃん!」

日南と礼も手を叩いて喜んでいる。後半に入って初めてのゴールであった。そのまま試合は終了し、3対1でベスト8で敗退となった。瑛人があんなに活発に動いているのを初めて見た。どちらかというと、日南の中では読書に勤しむガリ勉クソ野郎のイメージだったのだが。

Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.55 )
日時: 2019/02/11 11:30
名前: mono (ID: RO./bkAh)

試合が終わって、日南は瑛人を探していた。礼も稜を探していたが部員たちと一緒にいるのを見て声をかけるのを諦めてしまった。瑛人は会場の駐車場で、隆也や蛭野と話をしていた。瑛人が日南を見つけると、「ごめん。抜ける」と言ってそそくさと日南に近づいた。

「おつかれ」
「ありがとう」

風で顔に被さった髪の毛を日南は耳にかけた。

「え?平賀の彼女?」

蛭野と隆也が近づいてきた。実は隆也は日南を見るのは2回目である。

「どーも」

日南が軽く礼をしたが、どうやら隆也と蛭野は睨まれていると勘違いして固まっている。瑛人はそれをおかしく思った。

「どっちがキャプテンかわかんないよな、本当に」

2人はわかりやすく馬鹿にすると、退散すると言って帰ろうとした。すると、稜たちが通りかかった。瑛人もその集団の中から元チームメイトを見つけた。

「お前、瑛人!うっわー!」
「また男前になっとる!お久やん!」

博多弁にまくし立てられても、瑛人は標準語で爽やかに返している。稜はぶすっとしているが、ちゃっかり礼が隣にいた。

「稜ちゃん、うちの元キャプテン」

久々の再会で肩を組まれている。勝っても嬉しくないなと稜は心底砕かれているが、清々しく挨拶をした。瑛人はちゃんと稜を覚えている。日南に片思いをしている男だと。

「今度、飯行こ」
「えーよ」

さりげなく方言を発した瑛人に、日南若干の萌え要素を抱いている。

「こいつらと知り合い?」

日南が疑問を感じて瑛人に聞いた。

「俺がサッカーやってたときの仲間」
「え?なに、こいつ(日南)の彼氏なの?瑛人」
「うん」

フォー!と謎の雄叫びを上げて、瑛人にじゃれている。同じチームいても、これだけ育ちの差が出るとは驚きである。そのノリに対応しきる瑛人もただのパリピと化している。でも日南を見ると落ち着いたように笑った。

「ヤッたん?」
「お前まじきめぇ」
「まだ」

日南がキレ気味になっている。稜は絶妙な居づらさを感じている。

「このあと予定ある?」

日南は後ろから礼の視線を感じた。

「あ、ごめん」
「行ってきなよー!」

礼は日南の背中を押して瑛人によりかかるようにした。稜は何か言葉が口から出てきそうだったが、飲み込んでいる。

「うちら別に気にしなくていいよ」

だよなーとかなんとか瑛人と日南を茶化しているが、大真面目な稜はいまいち乗れずにいる。

「あ、待って。LINE教えて」

瑛人はチームメイトとLINEを交換して、日南とその場を後にした。

Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.56 )
日時: 2019/02/14 22:53
名前: mono (ID: RO./bkAh)

「日南、俺頑張ったんだけど」
「うるせぇ」

瑛人が車道側を歩いているが、2人は手を繋いでいない。

「うわ、さむっ」

冷たい風がショートパンツの日南に響く。ジャンパーに手を突っ込んで歩く日南は可愛げがない。

「何?」
「寒いんでしょ」

瑛人は日南に手を差し出している。日南は瑛人の手をじっと見つめたあと、緊張した面持ちで瑛人の指先を握った。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。