コメディ・ライト小説(新)

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噛ませ犬が愛しすぎてツラい
日時: 2021/12/31 02:54
名前: mono (ID: RO./bkAh)

醜いですが、どうぞ読んでみてください。

なんか見知らぬ間に賞をいただいていました…!
ありがとうございます。作者の多忙な時期が過ぎましたら、また再開するのでどうぞよろしくお願いします。

Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.16 )
日時: 2018/11/17 06:32
名前: mono (ID: RO./bkAh)

平賀瑛人と会ってからもう2週間も経つ。LINEだけ交換して、身内の話を少ししたくらい。通販オタクの日南はいつも携帯を見ているので、瑛人に1度返信をすると通販サイトを漁っているので返ってくるまで長く感じた。

「瑛人くんと何話すの?」

礼が聞いてきた。

「大した内容じゃないよ」
「私のことなんか言ってた?」

日南は礼から礼のことを話すようにと念を押されていた。もちろん日南は何気なく承諾し、礼の話をしたりプリクラを送ったりしたのだ。しかし、瑛人からはイマイチ良いリアクションでなかった。

「礼のこと可愛いって言ってたよ」
「だよね」

礼はいつもと変わらない笑顔でさらりと肯定し、話を進めた。礼曰く、瑛人がタイプらしい。瑛人と付き合ってゆくゆくは玉の輿に乗る。日南はそれを本気で応援しているし、礼自身も可能性に満ち溢れていると思っている。

「礼、早く平賀瑛人と会ったらいいのに」
「でも恥ずくない?」

確かに礼と平賀瑛人が並んだら、文句無しに美男美女だろう。礼なら横で心の底から笑う瑛人の姿が想像できた。そんなことより、日南は瑛人と礼を合わせるためのLINEを、瑛人に送り付けた。

『礼がお前に会いたがってる』

Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.17 )
日時: 2018/11/19 08:34
名前: mono (ID: RO./bkAh)

瑛人は日南からのLINEを開いた。別に日南と話すのは苦痛じゃない。むしろ、今まで自分の周りにいないような様々な面で突出し過ぎた人間なので、話す度に頭を使うし関心がある。しかし、最近はその日南の友人の礼と言う女の回し者かステマになりつつある。

「こっちのが可愛いじゃん」

孝也は瑛人の携帯を見て、礼を指さす。

「いや、日南の方がいい」
「まさか…瑛人…」
「違う」

瑛人は呆れたようにため息を吐いた。そういうことじゃない。俺は姉から聞いたことがある「女子は自分がカメラを構える方が可愛く写るから、自撮りは頼りにならない」と。

「この…何ちゃんだっけ!」
「礼」
「あやって読むんだ。名前も可愛い」
「じゃあ狙えば?」

孝也はいつも飄々としていて、利発そうなメガネだがお調子者である。

「こんな子たちじゃ、俺みたいな童貞は相手にしてもらえないって」

…孝也が言うことには一理あった。日南からまたLINEが来たところで、授業開始のチャイムが鳴った。

Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.18 )
日時: 2018/11/19 08:52
名前: mono (ID: RO./bkAh)

午後の授業は文化祭の準備になった。日南と礼、千夏たちは店のプランを珍しく真面目に提案しようとしている。

「ねぇ、人探しやりたい」
「礼に賛成」

日南が礼の一言に頷くと、千夏は黒板の方に向き直って手を挙げた。

「うちら、人探しやりたい」

黒板に人探しの案が書かれた。

「アリスとかさ、ミニオンの格好してお客さんに見つけてもらうの。いいでしょ?」
「うんうん」
「ねぇ、私たちオソロにしない?」

千夏の顔が一瞬曇った。隣のクラスの子と髪型を揃える約束をしていたのだ。しかし、礼の誘いを断ると前グループにいた子みたいになるのが嫌だ。前グループにいた子は不登校という名の自主退学であった。それがよぎってしまい、つい礼の前で若干嫌そうな表情をしてしまった。礼は千夏を真顔で見つめたあと、口角だけを上げて口を開いた。

「無理、しなくていいよ」

その場の空気が固まった。

「う、ううん!ほら、私茶髪だから似合うかなーって思ってさ!…ね?」
「そっかぁ。じゃあツインテは、どう?」
「礼なら似合うよ」
「違う。そうじゃなくてぇ、日南もするの」

話は、何事も無かったようにサクサク進んで、千夏も溶け込むように笑っていた。



Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.19 )
日時: 2018/11/20 00:02
名前: mono (ID: RO./bkAh)

日南は今日、日直だったので皆が放課後に文化祭の準備を進めている間、1人で日誌を書いていた。廊下で胡座をかいていると、ダンボールを抱えた生徒や机を運ぶ生徒がたくさんいる。

「凌!お前ミスターコン出んだろ!」
「優勝ー?」

男子数名が日南の前を通り過ぎた。その中には凌がいて、取っ組み合いに巻き込まれてふざけあっている。

「あ、日南」
「なんだよ」
「日南のクラス、ミスコンだれ?」

凌が何気なく日南に聞くと、日南は凌たちに険しい顔をした。凌以外は睨まれたと勘違いして、一目散に廊下を走って逃げていった。日南は俯いて、書き終えた日誌を閉じて床に叩きつけた。

「まさか…お前出んの?」
「別に、私から出たいって言ったわけじゃねーし」
「本当かよ」
「馬鹿にすんなよ!」

日誌を掴んで手裏剣のように投げつけた。いてっという凌の声と共に日南は立ちあがって教室に足を踏み入れた。

「日南」

凌は明らかに聞こえる距離だが、思い切り息を吸って日南を呼び止めた。日南はめんどくさそうに、頭をかいた。

「…日南は、か、可愛いから、普通に皆に、推薦されるんじゃねーかって、まぁ。思って…た」
「キモイ」

凌はさっきの恥じらいから一点、また前のように日南と口論体勢の表情に変わった。

「そんな言い方ねーだろ」
「キモイのに、キモイって言って何がわりぃんだよ!」
「お前は、ほんっとに可愛げねーな」
「は?さっきと言ってることちげぇじゃねえかよ!」
「お前は確かにめちゃくちゃ可愛いけど、」

凌が教室の入口で大きな声で日南に言い返している途中で、作業中の日南のクラスメイトの手が止まって2人を見ているのがわかった。

「可愛いけどなんなんだよ!」

日南は静かになった雰囲気に気が付かず、凌に食いかかった。しかし、凌の顔が赤くなって教室中をただ見ているのがわかった。

「…何見てんだよ」

日南が舌打ちをすると、作業はまた何事もなく始まっている。

「お前のせいで恥かいたんだけど」
「それは俺のセリフだ」
「死ねば?」

凌の胸ぐらを掴んだところで礼が制止に来た。

「ダメだよ、日南」
「…こいつが、」
「凌。日南はね、今好きな人がいるからあんまりからかったら日南が可哀想だよ」
「え、お前」
「いないってば」

礼が瑛人であろう人物について語り始めると、日南は慌てて止めた。平賀瑛人とはそんな関係になりたいとは思ってないし、第一、礼が平賀瑛人本人を「会いたい」とか「タイプ」とか言っている。何も知らないように礼は凌に向かって笑いかけた。凌は顔を強ばらせた。

「すっごい完璧人間だよ」
「変なこと言うなよ」
「ちゃんと凌には言っておかないと。え?日南なんでそんなに焦り気味なの?」

礼、どうしてそんなこと言うの。

「凌のこと、好きなの?」

違う、違ぇよ。礼は勘違いしてる。私は誰のことも好きじゃない。平賀瑛人のことも凌のことも好きじゃないから。

「安心して?礼」

途端に、笑っていたが何処か醜い顔色から、柔らかい表情が戻ってきた。礼は日南の手を取り、ぎゅっと握ると日南も握り返した。

Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.20 )
日時: 2018/11/20 07:56
名前: mono (ID: MHTXF2/b)

あまりにも日南が「礼に会ってくれ」としつこいので、渋々承諾した。三日後に駅前で待ち合わせをする。

日南も来る?

待ち合わせ場所には行く

それを聞いて、瑛人は久しく自分の部屋のクローゼットを開けた。黒や紺、時たま深緑や暗い紫色の派手ではないが高そうな服が並んでいる。きっと三日後も寒いんだろう。多分、日南には俺が地味に見えるかもしれない。でもどう頑張っても俺には蛍光色のスニーカーやスウェットを着て歩くことが、あまり好きになれない。強いていうなら、革ジャン。父親のお古で5万7000円したらしい。瑛人はそれを身につけてみて、フックに掛けてあるベルトを巻いてみた。瑛人に似合わない、深夜のファッションショーであった。


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