コメディ・ライト小説(新)
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- 噛ませ犬が愛しすぎてツラい
- 日時: 2021/12/31 02:54
- 名前: mono (ID: RO./bkAh)
醜いですが、どうぞ読んでみてください。
なんか見知らぬ間に賞をいただいていました…!
ありがとうございます。作者の多忙な時期が過ぎましたら、また再開するのでどうぞよろしくお願いします。
- Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.62 )
- 日時: 2019/05/28 02:02
- 名前: mono (ID: RO./bkAh)
日南はカラオケに来ていた。みんなで歌ったり踊ったり、礼がいないのは物足りないが今日は電話にでてくれるはずだ。
「日南上手いね」
「そー?」
「うん!」
日南が一番点数が高く、見た目とのギャップが激しいためよく話が弾んでいた。
「今何時ぃ?」
「8時半!」
「そろそろ出てもいーかもね」
日南にはちょいと早い気がしたが、カラオケを出た。これこそらぶみが深い千夏は写真を撮ったりしていた。
塾もうすぐで終わりそう
授業受けろよ
今どこ?
カラオケー
塾まで行けるけど
来て
夜ご飯食べようよ
スタンプを押して、とりあえず9時過ぎから瑛人と会う約束をした。
「じゃあねーっ」
手を振るよりスマホを翳して解散し、瑛人の予備校まで歩いて行った。街中にある大きいビルのような建物。日南はそこで待っていた、春ということだがまだ夜はブレザーを着ていた。予備校から出てくる学生にチラチラ見られながら、瑛人が出てこないか待っていた。
「あ、来た」
日南が予備校の自動ドアへ走っていき、瑛人の元へ駆け寄る。瑛人は日南の知らない女の子と2人で歩いてきた。日南とは正反対(黒髪の清楚系、おっとり、常に笑顔、制服をちゃんと着ている)で、女は日南でも見たことあるような進学校の女子高の制服を着ていた。うざ。
「おつかれ」
「おつー」
日南には、細すぎて伝わらないが瑛人は若干顔が綻んだ。女は日南に目を丸くした。
「妹さん?」
「は?」
「え、あのっ、ごめんなさいっ」
何こいつ、馬鹿にしてくんだけど。日南を見て怯んだように肩を震わせて、瑛人を上目遣いで見つめた。すぐ分かった、こいつ瑛人に惚れてるし。同じ女の子だからわかる。
「彼女だよ」
瑛人は日南の不貞腐れた表情が面白かったので、
「自己紹介しなよ」
と催促してみた。日南は一向に口を開こうとしないどころか、そっぽを向いてしまった。
「八城川まり子です。瑛人とは同じSクラスの予備校生です、よろしくね」
「日南」
瑛人が日南の頬を手で挟んだ。ちゃんと挨拶しなさいだが日南は瑛人ととも目を合わせない。
「はぁっ、面白い顔っ」
「瑛人、触んな」
苦し紛れに言うと瑛人はぱっと手を離した。面白い顔と言われた。普通に腹が立った。
「行こうか」
瑛人が日南に声をかけ、2人はまり子より先に予備校を出て歩き出した。
「煽り耐性なさすぎ」
まり子から日南への言葉は幸せそうな背中に弾かれたようだった。
- Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.63 )
- 日時: 2019/05/28 02:15
- 名前: mono (ID: RO./bkAh)
「あの女むかつく」
ラーメン屋に入るなり、席について日南は言い捨てた。
「わかり易すぎるんだよ、日南は」
「あのやしの木何とかが馬鹿にしてくるから」
「日南が黙って抱きついてでもすればよかったのに。そしたら八城川は完敗だよ」
もう、うるせー。日南は塩ラーメン、瑛人は味噌である。
「瑛人、髪染めないの?」
「その発想はなかった」
「金髪しろよ。黒髪だったら前髪分けろし重いから」
日南が瑛人の前髪を七三わけにしてピンで止めた。
「かわいい?」
「きもい」
日南は写真を撮った。
「髪切ろうかな。日南の言う通りに」
「あたしも切らなきゃー、前髪伸びてきた」
「日南は顔小さいから前髪ない方が似合う」
オマエモナ。瑛人にも言えることである。日南は前髪を伸ばすことに決めた。
「おまちぃ!!」
やたらめったら元気なおじちゃんからラーメンが運ばれ、2人は黙々と食べた。
- Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.64 )
- 日時: 2019/05/29 21:40
- 名前: mono (ID: RO./bkAh)
「おかえりなさい、遅くまでどうしたの?」
家の玄関を開けると、母親が立っていた。
「あぁ…お腹すいてさ、コンビニで寄り道してきた」
「言ってくれればお金あげたのに」
「別にいいよ」
瑛人はすぐさま自室へ上がった。制服を脱いで、部屋着に着替えると机に勉強道具を並べて椅子に座った。参考書とプリントを開いて、自習を始めた。瑛人の志望校は父親によって決められている。そこに合格しなければならない、兄が良い例で、難関私大でも父親は兄を「出来損ない」と言った。兄とは長らく連絡を絶っていて、何をしているかもわからない。
「つまらないな…」
瑛人の手はすぐ止まった。最近、学校にいても楽しくないしもっと憂鬱に感じる。どちらかと言えば日南の学校の元チームメイトや日南といた方がおもしろいし、素でいることが多いとわかる。
「瑛人、入るぞ」
父親が珍しく部屋に入ってきた。瑛人の手は不思議と止まり、机に向かったままだ。
「どうしたの?勝手に人の部屋に入って来て」
「最近な、お前の素行が良くないと聞いてな」
父親は会社を継ぐ傍ら、塾や教育関係の事業にも手を出していたことから複数名の教師とも進行があるらしい。瑛人は自分の素行の悪さと聞いて、日南からもらったイヤーカフスを付けて怒られたことや日南の学校の元チームメイトと回転寿司に行き「あそこの学校の生徒とは関わるな」と何故か担任から怒られたことを思い出した。近いうちに髪色を変えてみる予定だったが、今になって自身がどんどん変わりつつあることが何となくわかり始めた。「気をつけるよ」と一言優しく吐き捨てると父親は部屋を後にした。
- Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.65 )
- 日時: 2019/05/31 18:50
- 名前: mono (ID: RO./bkAh)
翌朝、日南が遅刻ギリギリに学校に着き、階段を上がっていると担任とすれ違った。
「ちょっといいか」
日南は空いている教室に連れていかれた。最近はもうここへ来ていない。学校に遅刻したり髪を染めたり、校則違反を繰り返しすぎてもはや注意もされなくなった。もちろん日南だけではないが。だから日南には心当たりがなかった。強いて言えば、ここ数日は礼とコンタクトが取れないことだ。
「茅野は何か問題を抱えていたか?」
「…それ、言ってどーすんだよ」
礼の家のことは誰にも話したことがない。それを学校から言えと言われても、当然言うはずがない。2人と稜の秘密である。
「何かやましいことでもあるのか?」
「礼から聞けよ。約束破るとかまじありえねーからな」
「そうか…」
担任は一瞬顔色を曇らせ、日南に退室しても良いと言い先に教室を出て行ってしまった。なんだよ、だりぃ。日南が自分の教室に向かおうとすると、稜とすれ違った。何人かの教師に連れていかれるようだ、どこかに。
「礼に何があったんだよ」
日南は教師のうちの1人の前に立ちはだかり、口を開いた。
「何も知らない?」
「おん」
「先生、日南には言わないでください」
稜は俯いて言い放った。ますます日南は気になり、勝手に付いていこうとした。
「お前は教室に行け」
「は?」
「それとも、自殺の手助けでもしたのか」
何か皮肉を言われたのはわかったが、イマイチ何のことかピンと来なかった。その瞬間、稜は教師の頬に鋭い拳をぶつけた。すぐさま取り押さえられたが、
「俺は…礼を助けたかったんだよ…!」
と声を絞り出していた。
- Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.66 )
- 日時: 2019/06/03 22:35
- 名前: mono (ID: RO./bkAh)
「うちの学校で誰か手首切ったらしいよ!」
千夏が騒いでいる。SNSのニュースのトレンドは、高校3年生女子が自宅で自殺か、という事件。病院に搬送され意識不明の重体だという。帰宅した父親が発見し救急車を呼んだ。その際に母親の言動が不自然だったため警察が来たと書いてある。日南は冷や汗とクラっとくるような嫌な予感に襲われた。礼かもしれない。
「どこの病院に運ばれたん?」
「これさー、あそこじゃね?」
「わかった!」
礼の家の近くの大学病院だった。日南はスクバを手に取り教室を出た。
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