コメディ・ライト小説(新)

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噛ませ犬が愛しすぎてツラい
日時: 2021/12/31 02:54
名前: mono (ID: RO./bkAh)

醜いですが、どうぞ読んでみてください。

なんか見知らぬ間に賞をいただいていました…!
ありがとうございます。作者の多忙な時期が過ぎましたら、また再開するのでどうぞよろしくお願いします。

Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.21 )
日時: 2018/11/20 08:02
名前: mono (ID: MHTXF2/b)

日南と礼は服を買いに来た。礼は瑛人に会うために、いつもより清楚めなスカートやブーツをチョイスしている。実を言うと服装は礼の方が派手で、日南はいつもシックな色ばかり選んでいた。明後日も適当にニットのワンピースに厚底のブーツである。

「瑛人くん、あんまりギャルギャルしたの嫌だよね」
「ねぇ。これ似合うよ」

白いベレー帽を礼に手渡した。礼の好みにピンポイントだった。髪を黒く染めたので白がよく映えた。

「可愛い!日南、さすがだね!」
「礼の好みならわかる」
「日南もおそろいにしない?」

ベレー帽、全然被らない。帽子はキャップ以外はあまり好きじゃなかった。だけど、礼とおそろいなら別に嫌ではなかった。

Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.22 )
日時: 2018/11/22 01:31
名前: mono (ID: RO./bkAh)

夜9時、ショップバッグを抱えた礼は玄関口にカードを差し込み、家へ上がった。閑静な住宅地に、塀で覆われた一際大きな西洋作りの建物がある。正真正銘、栢野家とローマ字で表札がある。

「礼」
「お、お母さん…」

礼を突き刺すように鋭く冷たい声がした。見たこともないくらい弱々しく母親を見る礼は、近づいてくる母親に後ずさりをしている。

「どこほっつき歩いてたの?」
「日南と、あ、遊んでました」

口先が震えて上手く言葉が出てこなかったのもつかの間、礼は母親の平手打ちで思い切り廊下の床に倒れ込んだ。

「いい加減にしなさいよ」

母親が自分の顔を踏みつけるかのごとく、わざと顔の横を通ってリビングに向かって行った。礼はショップバッグを抱えてしばらく廊下にうずくまって、嗚咽を漏らして泣いていた。

「ごめん、なさい。ごめんなさい」

礼の涙声だけが廊下に響いた。

「あ、あと明後日ユウちゃんと食事だから」

ユウちゃんとは、礼の新しい父親であり、礼の母親の新しい恋人であり旦那である。礼ちゃんと呼んでくる、あのタバコ臭い息と清潔感のない頭皮と肌とだらしない体型。生理的に受けつことの出来ないあの男。どうしても会いたくなかったが、礼には拒否権がないので喉から声を絞って、小さく返事をした。

Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.23 )
日時: 2018/11/24 20:39
名前: mono (ID: RO./bkAh)

昨日の夜から日南への返事がない。とにかく10時に待ち合わせね、と最後にLINEをして朝を迎えることになった。趣味でないベレー帽は後でかぶろう。ブーツを履いて玄関を出た。

「あ、」

最寄り駅から電車に乗り15分。待ち合わせ場所に平賀瑛人がいた。革ジャンに暗い赤のタートルネックを着て、黒いパンツと高そうな落ち着きのある少し底の厚いスニーカー。いかにもいいところのおぼっちゃまである。瑛人を見つけたが、日南は声をかけるのに躊躇した。モデルか芸能人より華があるし、何よりただの美青年だからだ。憎かったが認めざるを得なかった。

「もしもし」

日南がスマホの着信画面を開くと、礼の名前があった。

ごめん、今日行けなくなった…

「え?嘘でしょ?」

父親と母親と会食入って、

「…そっか。じゃあまた今度、あ、平賀瑛人とは解散しておくから」

しょうがない。礼の消え入りそうな声にまた何かあったのでは、と日南は考えた。とりあえず平賀瑛人と合流した。人混みの中から瑛人の元にたどり着いた。日南が目の前に立つと瑛人は顔を上げた。

「遅い」
「まだ2分前じゃん」

相変わらずツンケンし過ぎだ。2週間以上会っておらず、何を話したらいいか。日南は連絡事項を伝え解散を余儀なくしようとする。

「今日、礼が急用で来れないから。お前帰っていいよ」

それだけ伝えて瑛人に背を向けて歩き出すと、名前を呼ばれて足が止まった。

「俺に会いたかったから、その礼とかいう女使ったんじゃないの?」

その瞬間、日南のブーツのヒールが激しい音を立てて瑛人に近づいていった。日南はご想像の通り、頭にきて着れてしまった。瑛人は真顔というか、冗談なのか何なのか読めない。

「人からかうのいい加減しろよ」
「そんな怒ることじゃない」
「は?礼のこと利用するわけないだろ、大体私はてめーと礼をくっつけ、」
「日南、会いたかったよ」

瑛人は明らかに遮った、日南はその言葉を聞いて固まった。というより、顔がみるみる赤くなって瑛人から顔を離してそっぽを向いてしまった。

「うるさい!」
「え?図星?」

瑛人も若干驚いている。違う、今の言葉が予想を遥かに上回って日南にヒットしたのだ。恥ずかしいというか、胸が鳴るような感覚。瑛人は日南の挙動不審さに何だか自分の方が申し訳なくなった。正確にはおかしく思えたのだが。

「…悪かったよ。お詫びに、デートするから」
「なんなの?私がお前とデートしたがってるみてーじゃん!帰るわ!」

あー、もう本当に腹立つ。久々に会ってこうやってまた自分のリズム崩してくるの、ムシャクシャする。誰に腹を立てているのか分からない日南に瑛人は、

「いや、俺がしたい」

また平然とした声で言うので、日南は参ってしまった(本人にその自覚はない)。

「言い方上から目線かな?」
「そもそも、私は礼と平賀瑛人のために付き添いで来ただけなんだよ」
「…わかったよ」

あっさりと瑛人は諦めてしまった。礼>瑛人という構図が日南の脳内で出来上がっていることをひしひしと感じてした。

「とでも言うと思った?」
「へ?」

日南は思わず間抜けな声と顔が出た。瑛人の顔は明らかに日南の間抜けな顔とは対象的なニヒルな顔つきだった。

Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.24 )
日時: 2018/11/24 20:54
名前: mono (ID: RO./bkAh)

「あのさ、ボーリング場ってわかる?」

何気ない質問に日南は鼻で笑って返した。ふとした品のなさに関しては自覚症状がないのがJKとして惜しい。意外で突然な瑛人の質問が、日南には少し面白おかしかった。

「行ったことねーの?」
「ないな」
「やばいやつそれ」
「わかってるよ」

17年生きてきてやっと自分の価値観のズレがわかってきた。正直に認めては滑稽すぎるので、何となくただのボンボンを装っている。まぁ実際ボンボンだし、良家で両親が厳しいのも、周りは分かってくれているはずだ。

「じゃあ行く?」
「え?」

今回は日南が行きたいところがよかった。と言いかけたところで、日南が続けた。

「平賀瑛人って、友だちいなさそうじゃん?いいよ、行ってやっても」
「…ありがとう。あと、フルネームやめて?」
「自分の名前に難癖つけんな」
「自分の名字、嫌いなんだよね」

妙に影のある物言いだったが、日南にはあまり響かなかった。瑛人が歩いていくと、突然後ろから腕を掴まれた。

「おい。こっちだし」

ムードもへったくれもないな。瑛人は感じた。どうやらバスに乗るらしく、バスプールに俺を引っ張った。

Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.25 )
日時: 2018/11/26 20:32
名前: mono (ID: RO./bkAh)

バスに乗り10分。また街中で駐車場もなく一際派手な建物が見えた。ちょうどその大型ゲームセンターの目の前で停車し、日南と瑛人が降りると、日南は一目散に中に入って行った。そんなに楽しいのか…?と瑛人は日南のはしゃぎっぷりを横目に受け付けへ。

「どれになさいますか?」
「ボーリングと!カラオケ!」

店員が瑛人の顔を見て赤くなり俯いている。おそらく瑛人の端正な顔立ちが目に入ったのか、案内の声もごにょごにょと気弱になった。

「あ、あの、現在会員の方に恋人割りと言うのがございまして…通常より、5%お安くなります…」
「いくら?」
「1人972円か」

こういう時にサラッと計算するのが妙に鼻につく。店員も瑛人のチラチラ見て、見る度に赤面している。あぁもー、ムカつく。

「そんなに俺と一緒が嫌か」
「頭いい自慢が腹立つ」
「頭のよさが滲み出るって言ってよ」

なにくそ!と日南が後ろに立っている瑛人を睨みつける間に、瑛人は日南の分まで払ってしまった。瑛人の財布には3万が入っている。今日はそれほど出費が多いわけではなさそうだったから。

「あ、ありがとうございました…」

日南が騒ぎ立て、瑛人が平然とした顔で交わしながらボーリングのレーンに向かう。靴を履き替えて、球をそれぞれ持ってきた。名前をそれぞれ入力して、まずは日南から。

「よしっ」

右手に物凄い質量を感じて、若干右肩が下がった。ボールはボトっと落ちたのに等しくて、ゴロゴロと止まりそうで止まらないスピードであった。いける、いける!と遠くなりピンに近づく球に声をかけ続ける日南を、後ろのシートに座って何気なく見ていた。あー!と日南が声をあげるとピンは端をかすって2本しか倒れなかった。

「それ、上手いの?」
「うるせー。別に上手いとか下手とか関係ねーよ」

振り返った日南がこちらにやって来て、球をまた抱えてレーンの前に立った。ゴンっと球だけが落ちる音と共に、ちょっとしてピンが倒れたようだ。次は反対の端のピンを2本倒した。

「下手だな」
「…お前だって初心者じゃん」

人生初ボーリングの瑛人は、レーンに立って遠くにある10本のピンを眺めた。何だかボールを投げる先の床はツルツルして光っている。なるほどこれで速さが出るのか。真ん中を射抜くように倒したい。多分そうなれば全て倒すには容易い。瑛人は左利きで、よく見るフォームを見様見真似でやりながら軽く球をスイングしてほおった。

「やったことないって嘘だろ!」
「嘘じゃない」

あ、多分真ん中より斜めからの軌道の方がいいかもしれない。この床だとそんな感じがした。瑛人は早速分かってしまった。ボーリングという点数を稼ぐゲームにおいての、最善の方法が。

「なぁ、もっと楽しいことしない?」

え?

「ボーリングって簡単だから、俺ずっとストライクかちょっとしたミスでもスペアだよ」
「は?」


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