コメディ・ライト小説(新)
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- 噛ませ犬が愛しすぎてツラい
- 日時: 2021/12/31 02:54
- 名前: mono (ID: RO./bkAh)
醜いですが、どうぞ読んでみてください。
なんか見知らぬ間に賞をいただいていました…!
ありがとうございます。作者の多忙な時期が過ぎましたら、また再開するのでどうぞよろしくお願いします。
- Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.47 )
- 日時: 2019/02/07 20:53
- 名前: mono (ID: RO./bkAh)
礼はTwitterを開いた。最近全くログインしていなくて、もう通知も溜まりに溜まっている。画面をスクロールしていると、礼とは別のグループの女子のアカウントに飛んだ。
影でコソコソ言うやつ、まじなんなん笑
うちの高校の恥はサッカー部のキャプテン狙いでーす笑
稜かわいそ、笑
あー。学校だとなんもできん。まじ元彼さんと仲良くやりぃーや。
稜って、こいつの元彼って私に告って来たやつ、何?私のこと書いてるの?礼は咄嗟にいいねを連打して、タブを閉じた。わかった。そこまで言うなら。
「礼?聞いてんのかよ?」
日南が軽くテーブルを叩く音で我に返る。
「あ、ごめん。なに?」
「サッカー部の大会、応援行く?」
「どうしよっかなぁ」
「稜見に行かないの?」
「あぁ行くよ?一緒に行こ」
「おう」
日南たちの高校のサッカー部は県内ではかなりの強豪校。八割、地方からの生徒で教室に方言が飛び交うのも稀ではない。あのユニフォームにキャプテンマークをつけた稜を見るのは初めてである。
「日南はさ、稜と私が付き合ったら応援してくれる?」
「あれ、付き合ったんじゃなかったの?」
「付き合ってないよ。私が稜のことが好きなだけ」
稜は日南のこと好きなんだよって言ってあげたかったけど、それは稜が可哀想なのでやめてあげた。礼と日南はファストフード店でかなりの時間、屯している。
「普通にいいんじゃね?付き合っても」
「ありがと」
久しぶりに礼は笑顔を見せた。
- Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.48 )
- 日時: 2019/02/07 21:14
- 名前: mono (ID: RO./bkAh)
「平賀!」
課外終わり、6時を過ぎたところ。廊下で瑛人を呼ぶ声がする。瑛人が振り向くと、サッカー部の部長・蛭野がいた。蛭野はうちの高校には珍しい体育会系である。
「あのさぁ頼みあんだけど」
「断っていい?」
「まだなんも言ってねーよ…お前、確かサッカーやってたよな?」
「うん、少しだけ」
「部員足りないから助っ人として大会出てほしいんだ!頼む!」
部員足りないのによく上がれたな。瑛人はまずそう思った。軽く腰が低くなりつつある蛭野を見て
「わかった。助っ人やるよ」
「まじ?ありがとう!」
思い切り背中を叩かれて、ユニフォームを押し付けられた。なんだこいつ、頼みとか謙虚なこと言っておいて入れる気満々じゃないか。仕方なく瑛人は蛭野のあとを着いて行った。
「平賀ってどこ中?」
「地元ここじゃないんだ」
「どこ?」
「福岡」
「うわ、めちゃくちゃ遠いな!そこの中学でやってたんだ」
「違うよ」
瑛人がサラッと述べた事実はあまりにも意外なものだった。地元のプロサッカーチームのジュニアチームにいたということ。普通に上手い。よく全国大会のパンフレットにも、選手たちの出身チームとして名を連ねている。嘘だ、平賀無敵すぎないか。
「お前本当になんでもできるんだなぁ」
「できないこともある」
カラオケ。鼻歌も歌いたくないくらいだ。日南との初デート(?)でトラウマである。 グラウンドにつくと、蛭野がサッカー部の顧問とマネージャーを紹介される。女子生徒は瑛人がいきなり部にやってきたので、パニックで蛭野の背後に隠れている。
「な、なんでえ?ひ、平賀瑛人がいるの?」
「助っ人。浅井怪我したじゃん」
とりあえず、うちの練習に軽く参加してもらえれば。とサッカー部の顧問である化学の教師に促され、ボールを渡された。
「監督」
「おお、いきなり監督呼ばわりとは嬉し…」
「まず走った方がいいと思います。技術はそれから磨きましょう」
瑛人の目はいつになく、燃えている。まるで少年の頃のように。
- Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.49 )
- 日時: 2019/02/07 21:32
- 名前: mono (ID: RO./bkAh)
瑛人にLINEしようと通知を確認しても、本人はスマホを没収されていることに気がついた。あぁもう最悪。そしてもう10月。瑛人は携帯がなくても不便ではなかった。たしかに愛する彼女が自分と連絡が取れなくて、キレ症を重病化させているかもしれないがそれは後々。
「あら、瑛人遅かったわね」
瑛人の母が玄関に迎えに出てきた。ショートヘアの貴婦人である。とりわけ若いとか年寄りではなく、50手前の優しそうな奥様。
「やだ。靴汚れてるわ」
「あぁ、ずっと履いてるから」
「そうよね」
「母さん、俺のサッカーのウェアとか捨てた?」
「…ごめんなさい。お父さんが処分しちゃったかも」
いいよ、いいよ。と瑛人は階段を上がり自分の部屋へ移動した。明日にでも買いに行くか。あ、日南に選んでもらうのは面白そうだ。と瑛人は自分が携帯を没収されていることを思い出した。明日、教師にでも掛け合ってみよう。もうすぐ1週間終わるけどな。それから瑛人は参考書とノートを取り出し机に向かった。
- Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.50 )
- 日時: 2019/02/07 23:18
- 名前: mono (ID: RO./bkAh)
瑛人、余計なことをするなよ。昨晩、食卓で父親に釘を刺された。何かは知らないが多分母親に一瞬だけサッカーの話をしたからだろうか。何もしてないよと瑛人は笑ってやり過ごしたが、今日も姉は部屋から出てこない。
「今日から迎えいらないから、よろしく」
自家用車の運転手に一言伝えて、瑛人は車を降りた。目の前を日南が通う高校の男子生徒達がランニングしている。ブランドのロゴからして、サッカーだろうか。まぁうちはそんなことやる暇があれば勉強しろと言われるから、関係ないか。途中、隆也と遭遇し、携帯を返してもらう言い訳を考えていた。でも無駄な抵抗はやめようという結論に至った。
「千夏、瑛人がさぁ携帯没収されてて連絡取れないんだけど」
「どんまい。つか、学校まで押しかけたら?」
「めんどくね?」
「不安なの?平賀くんと電話できなくて」
「自然消滅疑っちゃうよね、日南ぁ?」
「あ、確かに」
礼の一言で不意に不安が押し寄せてきた。
「もー、礼。日南と平賀くんまだ付き合って1週間も経ってないんだよ?」
千夏が礼をつついていると、日南の携帯の通知が鳴った。瑛人である。復活した。それだけ。
「ねぇ、瑛人復活した」
「え、すご。奇跡!」
奇跡。本当は瑛人が父の名前を言っただけなのだが。
「すみません、先生。父には携帯を無くしたことにしていて、自分の不手際でも学校で没収されたというと父が学校側にも御迷惑をかけ…」
「わかった、今回は特別だぞ。平賀さんには何も言わないでくれ、頼む」
「もちろんです」
- Re: 噛ませ犬が愛しすぎてツラい ( No.51 )
- 日時: 2019/02/08 08:24
- 名前: mono (ID: RO./bkAh)
とうとう週末である。礼と日南はグラウンドを目指して電車を降りた。朝10時半から稜たちは試合である。それに間に合わせるため、試合場まで遠いので朝8時には家を出た。ベスト8からの試合である。日南たちは最前列に座った。向こう側のスタンドに部旗や部員がいるのでここなら良さそうだ。礼は最前列から稜たちがいるベンチを望める位置に座り、日南も礼の隣に座った。
「平賀、今日勝ったらどうする?」
「勝てるわけないだろ」
平賀?日南は声がする方に振り返ると、瑛人が男子と歩いている。赤のウインドブレーカーに身を包み、リュックを背負っていた。日南とは正反対の観客席の方向に進んで行ってしまう。
「ちょっとわりぃ」
日南は席を立ってそこそこ混みつつある観客席から瑛人を追って行った。
「瑛人っ」
運動部の彼はそこにいた。
「日南」
約2週間ぶりのこの顔、金髪じゃなくて茶髪になっている。
「何してんの?」
黙ってれば可愛い顔はすぐ睨みつけるいつもの顔に変わってしまった。瑛人は日南に歩み寄り
「悪かった」
とだけ言った。平賀って可愛い彼女までいるのかよ…!ちょっとケバい感じがするけど、多分一般の女子高生はみんなこんな感じなんだろうなぁ。
「蛭野、ちょっと抜けるわ」
「待って。礼にLINEする」
瑛人に会ったからちょっと戻るの遅れる
とだけ礼にLINEをして、瑛人と日南はサッカー場内にあるベンチに座った。
「寂しかった?」
「は?普通にイラついてたんだけど」
「元気そうでなにより」
やっぱ、ムカつく。でも瑛人は笑っている。
「サッカー部の助っ人頼まれて、試合出ることになったんだ」
「うちと当たったら負けるんじゃないの?」
「負ける以前に試合にならないな」
サッカーしている瑛人もちょっと見たいと思った。
「瑛人、上手いの?」
「どうだろう。もう2年もやってないから」
あぁ思い出したくもない。自分がこれまでの人生を致命傷になるとしたら、あの試合くらいだ。元チームメイトには会いたくない。向こうが良くても俺がダメなんだ。
「どうした?」
「なんともない。試合見てくれる?12時半からなんだけど」
「見る」
「なんか、いっぱい言いたいことあったんだけど出てこないや」
「お前今日めちゃくちゃ喋るじゃん」
日南から珍しくマジレスを受けた瑛人は、自分がよっぽど滑稽なのがわかった。
「これぐらいにしとく。戻ろ」
「…まだ試合始まったばっかじゃん」
「どっちだよ」
行くなという意味の日南の言葉にその場に留まることにした。日南と瑛人の間には微妙に僅かな隙間がある。瑛人は何気なく日南に寄ったのだが、日南は何かを考えたかのように固まってしまった。瑛人はなんだかいつもの調子に戻った気がした。
「も、戻るわ」
日南が先にベンチを立って瑛人も後に続いた。待って、瑛人の奴手慣れてない?すぐさま近づいてくる感じとか本当に、なんなの。とにかく日南は
「試合がんばれよ」
とだけ今は伝えることが出来ればよかったのだ。色々言いたいことがあったが、瑛人の顔を見てすぐに全部吹っ飛んでしまったらしい。
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