ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- SURVIVAL GAME 黄泉帰り編終盤突入!!
- 日時: 2011/08/17 21:21
- 名前: いち ◆mBjthR0pMA (ID: XL8ucf75)
こんにちはww
いちです。
なんやかんやでここまで続いてきましたww
これも日ごろこの小説読んでくださる皆さんのおかげですww
オリキャラ一覧
水宮 依舞(ミミヤ エマ)60チーム←羽音s作 >>4
玖堂 雄人(クドウ ユウジン)44チーム←牙暁s作 >>7
御神 裄 (ミカミ ユキ)44チーム←みちる君s作 >>8
張 麗鈴 (チョウ レイリン)14チーム←金平糖s作 >>12
風上 影李 (カザカミ カゲリ)3チーム←パーセンターs作 >>14
石切 舞 (イシキリ マイ)28チーム←teechさん作 苗字はいちが決めました。 >>15
白輝 雷茄 (シラキ ライナ)3チーム←パーセンターs作 >>19
奇誤 黛聖 (ギゴ タイセイ)3チーム←パーセンターs作 >>21
蚯蚓 和歌穂 (ミミズ ワカホ)14チーム←金平糖s作 >>22
如月 桜香 (キサラギ オウカ)28チーム←牙暁s作 >>23
黒瀬 隼 (クロセ ハヤブサ)28チーム← 齣犬s作 >>24
音無 烈火 (オトナシ レッカ?)60チーム←アドレスs作 >>27
燕川 匡 (ツバメカワ キョウ)60チーム← 齣犬s作 >>28
籐梅 君津 (トウバイ キミツ)14チーム←金平糖s作 >>30
天宮 稚奈 (アマミヤ チナ)44チーム←りんs作 >>31
梅乃 鶯 (ウメノ ウグイス)99チーム←齣犬s作 >>99
永世 銀河 (ナガセ ギンガ)5チーム←パーセンターs作 >>41
ミーナ・アラストル 1チーム←teechさん作 >>42
天上天下唯我独尊(テンジョウテンゲユイガドクソン)1チーム←teechさん作 >>42
鬼 (オニ)1チーム←teechさん作 >>44
相嶋 愛歌 (ソウジマ アイカ)5チーム←金平糖s作 >>43
天道 祐斗(テンドウ ユウト)5チーム←天空s作 >>34
月影 京 (ツキカゲ キョウ)81チーム←みちる君s作 >>47
仁杜 英智 (ニト エイチ)81チーム←パーセンターs作 >>49
碑之 マヤ (ヒノ マヤ)48チーム←teechさん作 >>51
雨津 鷺丸 (アマツ サギマル)81チーム←齣犬s作 >>52
鼓動 葵 (コドウ アオイ)48チーム← 禰音 鏡幻 s作 >>54
威牙 無限 (イガ ムゲン)48チーム←パーセンターs作 >>55
豊苗 恋路 (ユタナエ コイジ)99チーム←金平糖s作 >>56
烈火・クローン (レッカ・クローン)99チーム←アドレスs作 >>57
オリキャラ全30名ですww ご協力ありがとうございました
PROLOGUE >>2 STAGE Ⅰ >>3
STAGE Ⅱ >>10 STAGE Ⅲ >>11
STAGE Ⅳ >>26 STAGE Ⅴ >>37
STAGE Ⅵ >>63 STAGE Ⅶ >>66
STAGE Ⅷ >>84 STAGE Ⅸ >>90
STAGE Ⅹ >>97 STAGE ⅩⅠ >>103
STAGE ⅩⅡ >>105 STAGE ⅩⅢ >>111
STAGE ⅩⅣ >>117 STAGE ⅩⅤ >>121
STAGE ⅩⅥ >>137 STAGE ⅩⅦ >>141
STAGE ⅩⅧ >>143 STAGE ⅩⅨ >>146
STAGE ⅩⅩ >>148 STAGE ⅩⅩⅠ >>153
LAST STAGE >>155
第2ステージ
PROLOGUE >>174 SATGE Ⅰ >>175
STAGE Ⅱ >>183 STAGE Ⅲ >>189
STAGE Ⅳ >>192 STAGEⅤ >>197
STAGE Ⅵ >>205 STAGE Ⅶ >>209
STAGE Ⅷ >>212 STAGE Ⅸ >>216
STAGE Ⅹ >>253 STAGE ⅩⅠ >>263
STAGE ⅩⅡ >>266 FINAL STAGE >>269
第3ステージ
PROLOGUE—Ⅰ >>274 PROLOGUE—Ⅱ >>275
STAGE Ⅰ >>284 STAGE Ⅱ >>287
STAGE Ⅲ>>296 STAGE Ⅳ>>302
STAGE Ⅴ>>303 STAGE Ⅵ>>304
STAGE Ⅶ>>306 STAGE Ⅷ>>308
STAGE Ⅸ>>310 STAGE Ⅹ>>333
STAGE ⅩⅠ>>336 STAGE ⅩⅡ>>341
STAGE ⅩⅢ>>343 STAGE ⅩⅣ>>345←NEW!!
SIDE STORY①《夕日の約束》
「強くなりたい」 >>221 「私に出来ること」 >>225
「世界で4番目に大切なもの」 >>227
SIDE STORY②《辻の知られざる英雄譚》
「島に住む人」 >>239 「烈火・クローン」>>244
「開戦」 >>246 「チェックメイト」 >>247
「希望」 >>250
SIDE STORY③《秋夜のクリスマス》
「裏に生きる少年」>>321 「動き出す心」>>322
「ナニカの前日」>>324 「伝える想い」>>326
「手紙」>>330
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- Re: SURVIVAL GAME 第1回人気投票大会開催! ( No.320 )
- 日時: 2010/11/27 09:01
- 名前: いち ◆ovUOluMwX2 (ID: PmZsycN0)
- 参照: http://noberu.dee.cc/bbs/dark/read.cgi?no
>>319
すいません、人違いですねwww
- Re: SURVIVAL GAME 第1回人気投票大会開催! ( No.321 )
- 日時: 2010/11/27 18:09
- 名前: いち ◆ovUOluMwX2 (ID: PmZsycN0)
- 参照: http://noberu.dee.cc/bbs/dark/read.cgi?no
SIDE STORY③ 「裏に生きる少年」
これは、俺がまだあの悪夢のゲームに巻き込まれる前の話—
12月18日。
確か、今日が冬休み前最後の出席日だったはずだ。
俺は予定表でそれを確認して、制服の袖に腕を通した。
遠野秋夜、と書かれた名札を机の上に置き忘れたことに気付き、慌てて取りに戻った。
「さてと…行くか」
あまり荷物の入っていないカバンを持ち、誰もいないアパートの一室を出る。
俺の母親は病弱で、今は病院に入院しきりだ。
もともとからだが強いほうではなかったけど、俺の父親が借金作ったまま家を出て行って以来、病気になりやすくなった。
まあ、どこにでもありそうな不幸な話ではあるけど。
そういわけで、俺は今図らずも1人暮らし状態にある。
もっとも、「とある事情」があって、今は家にすらロクに帰ってない。
今更ながら自分の不幸な身の上を再確認し、1人憂鬱になったところで、ポケットの中の携帯が鳴った。
「もしもし」
相手は確認しなかった。今俺の携帯にかけてくる人間は1人しかいない。
『俺だ、秋夜。今日は早く終わるんだろ? 悪いが、直接帰りにアジトに寄ってくれるか?』
「今日は休みじゃなかったのか?」
『そのつもりだったが、例の中国人マフィアどもが、ブツをスリやがったんだ。やつらのアジトを特定できるのはお前しかいないんでな』
俺は心の中でため息をつくと「分かった」と言い、電話を切った。
そう、これが「とある事情」ってやつだ。
俺は今、とある裏組織に主にハッカーとして協力している。
なぜかというと、母親の医療費が足りないからだ。
本来医療費を払うべき父親が雲隠れし、高校1年生である俺は毎月毎月病院に払うだけの財力などあるはずもない。
それをどこからかかぎつけた組織が接触してきた。
「俺達に協力しないか?」と。
組織は俺がコンピューターに関しては下手なプログラマーよりよっぽど技術があることも知っていたようだ。
無論、俺に選択肢はなかった。
その場で了承し、晴れて俺も犯罪者の片棒を担ぐことになったわけだ。
主な仕事は、同業者のアジトの特定。具体的には、出会い系サイトなどに仕掛けられている網をたどることで尻尾をつかむ。
まだ、一般人を襲えといわれるよりはマシだったけど、それでも仕事は胸糞悪いことだらけだった。
何度も生命の危機に晒されたし、この手で命を奪ったこともある。
しかし、それでもたった1人しかいない俺の母親のため、俺は、裏に加担し続ける。
時計を見ると、まだ8時前だ。
少し早く着すぎたようだ。
一応、それなりに名がある進学校だから、すでに教室内でも勉強しているやつはいたけど。
俺は誰に挨拶する事もなく席に着き、読みかけの本を開いた。
別に、友達がいないわけではない。昼になれば一緒にメシも食うし、休日—「仕事」がない日に限るが、町へ遊びにだって行く。
ただ、俺から話かけることがないだけだ。
それは多分、心のどこかで俺は友達を大事にしていないから。
幸いにも、その事実に誰も気付いていない。
「おっす、秋夜」
だから、こうして、普通に話しかけてくれる。
「おはよう、遠野」
話しかけてきた女、遠野茉莉(とおの まつり)は、相変わらず女子とは思えないほど下品な笑みを浮かべている。
そもそも言葉遣いからして、世間一般で言う「女子」からはかけ離れている。
ちなみに苗字が一緒なのはたまたまだ。
「んだよ、秋夜。お前も遠野だろ〜? それよりも、例のアレ、持ってきたか〜?」
「………これか?」
俺はカバンの中から「数学I」と書かれたノートを取り出した。
「おお、それそれ〜!」
遠野はまるで宝石でも貰ったかのように、ノートを受け取った。
「早く写して返せよ。ポストの中でいいから」
「りょ〜か〜い!!」
遠野茉莉は、有り体に言えば、バカだ。
授業は寝てばっかりだし、1ヶ月前の定期考査も、散々な結果に終わったと聞く。
それで、遠野は俺によくノートを要求してくる。
特に断る理由もないから、毎回貸してはいるが、さすがに回数が多すぎる気もする。
「またまた〜、秋夜君、茉莉に甘くしちゃダメだよ〜?」
「そーそー、茉莉は自力で何かをやることを覚えなくちゃイカン!!」
「なんだよ〜、お前らもよくノート借りてるじゃないか〜!!」
はあ…………少々騒がしくなってきたようだ。
無事に先生の話が終わり、ホームルームは終了した。
慌しく教室から出て行くやつもいれば、名残惜しそうに友達と話しているやつもいる。
俺は慌しく出て行く側だ。
何人かに声をかけられたが、ごめん急ぐからと、全て振り切った。
考えうる限り最速で昇降口に着く道をダッシュで進む。
誰もいないのをいいことに、階段の手すりに乗って滑った。
そして、最後の曲がり角を曲がり……
「あいたぁ!!」
「うわっ!!」
見事に誰かと衝突した。
頭をさすりながら目を開けると、遠野がいた。
「秋夜か〜…いてて、大丈夫か?」
「ああ、何とか…ごめん」
「ああ…大丈夫…あれ? 秋夜何か落としたぞ?」
遠野は俺のポケットから落ちたものを拾った。
「……あれ? 秋夜、携帯持ってないって言ってなかったっけ?」
しまった。
俺は組織に友達関係がバレるのを恐れて、携帯を持っているのを伏せておいていた。
「あ、ああ……最近買ってな……」
「なんだよ〜早く言えって!! じゃあさ、メアド交換しよ!!」
登録してから、消せばいいか。
俺は素直に交換する事にした。
「じゃあさ、奈央と美樹にも教えとくね」
「あ、いや……それはやめてくれ」
「え? 何で?」
数学の公式ならすぐに出てくるのに……俺は答えにつまった。
「あの、ほら…自分で聞きたい、と思ったから」
われながら無茶ないいわけだと思ったが、遠野は幸いにも納得したようだ。
「そっかそっか。じゃあ、後でメールするから。じゃあな!!」
遠野はそれだけ言うと、嵐のように去っていった。
生まれて初めて、組織の人間以外の、友達のアドレスが入った……
消さなきゃいけない、しかし消したくないと言う俺が、確かにそこにいた。
- Re: SURVIVAL GAME 第1回人気投票大会開催! ( No.322 )
- 日時: 2010/12/06 15:31
- 名前: いち ◆ovUOluMwX2 (ID: PmZsycN0)
- 参照: http://noberu.dee.cc/bbs/dark/read.cgi?no
SIDE STORY③ 「動き出す心」
「そこの角を右に曲がれ、そこが奴らのアジトだ」
パソコンのモニターを見ながら、電話越しの仲間に指示を出す。
『人数は?』
「表に2人。屋上に1人。中は最低でも5人はいる」
『了解。いい知らせを待ってな』
電話が切られる。
俺はヘッドフォンを外して、大きく伸びをした。
俺が情報を送り、組織の腕利きが現場に踏み込む。
この方法でもう半年は「荒稼ぎ」をしている。
標的は同業者のみとはいえ、これだけの犯罪行為をするのには、慣れたとはいえ、抵抗はある。
「よう、お疲れ」
物思いにふけっていると、後ろから声をかけられた。
「あんたか、ジョーカー」
組織のトップ、通称「ジョーカー」
この組織では誰1人本名を使わない。いわゆるコードネームというやつで、お互いを呼び合っている。
そうするのは、名前を知らないほうが万が一捕まったときに備えてのことだ。
唯一リーダーであるジョーカーだけが全員の本名を知っているらしいが、そんなものデータとして保管するはずがないし、する必要もない。
「お前が来てから、俺達は大もうけだ、感謝するよ、エース」
俺の方にポンと手を置き、ジョーカーはぞっとする笑みを浮かべた。
「エースか……ずいぶんと大それたコードネームだな」
俺がこの組織に入り、つけられたコードネームが「エース」
一応扱いは幹部らしいが、俺は裏組織の地位なんて興味は無い。
ジョーカーはよっぽどトランプが好きらしく、残る幹部のコードネームも「キング」「クイーン」「ジャック」と、全てトランプの絵札になぞらえている。
「そういうな。お前はまだまだ新顔だが、その働きは立派なもんだ。みんなも納得しているよ」
「言っておくが、俺はあんたらの組織での地位なんてどうでもいい。協力はするが、母さんが治ったら抜けさせてもらう」
「分かってるさ。そういう約束をしたからな」
ジョーカーは本気とも冗談ともつかぬ調子で言った。
ジョーカーは謎が多い男だ。
歳はまだ20代に見えるし、話し方も、ふざけた態度も、とても犯罪組織のリーダーとは思えない。
だが、時折見せる冷たい表情、目的の為なら仲間の死すらいとわない冷酷な一面。
果たして、この男の本性は、どちらにあるのだろうか。
ジョーカーの顔を見ていると、突然ジョーカーがこっちを向いた。
「どうした、エース? 俺の顔になんかついてるか?」
まあいいか、どうせ母さんの病気が治るまでの中だ。
「ああ……アンコがべったりと」
口元のアンコを慌ててぬぐっているジョーカーを見ながら、俺は静かにため息をついた。
作戦は成功し、敵組織は壊滅した。ブツとやらも取り返せたようだし、俺の仕事はここまでだ。
ジョーカーからいつもの口座に金を振り込んでおくように言い、俺はアジトを後にした。
外に出ると、もう真っ暗だった。
暖房が効いた部屋にいたせいか、寒さは感じない。
俺はピケットに両手を突っ込み、歩き出す。
町はすっかりクリスマスムードだ。あちこちでカップルがクリスマスの予定について話し合っているのが聞える。
恋愛などとは無縁な俺だが、そういう光景を見ると、クリスマスが来たという実感が沸く。
今年のクリスマスは、生まれて始めてたった1人で過ごすことになるだろう。
別に寂しいとも思わないし、嬉しいとも思わない。
ただ、俺にとってのクリスマスは、ただの12月25日として流れていくんだろうな。
心の中で苦笑いをして、歩くスピードを上げる。
人通りが多い道を抜け、ひっそりとした路地に出たときだった。
突然、ポケットの中で携帯が震えた。
ジョーカーが何か言い残したことでもあったのか?
ポケットから携帯を取り出し、画面を見てみると、そこには『遠野茉莉』と書かれていた。
「…………??」
あっけにとられながら、通話ボタンを押す。
「もしもし」
『もしもし、秋夜!? 茉莉だぞ〜』
「……ああ、どうした」
予想もしなかった相手からの電話に、上手く対応できない。
『あのさー、秋夜。1週間後って、ヒマだったりする?』
「一週間後?」
今日が12月18日だから……クリスマスか。
『そーそー、どうせ秋夜ヒマでしょ? だから一緒にクリスマスどーかなー……?』
最後の方がよく聞えなかったが、大体話は分かった。
「ああ、分かった」
『ホント!? ありがと!! じゃあ詳しくはまた電話するね! んじゃ!!』
遠野はそう言うと返事するまもなく切れてしまった。
おれはゆっくりと携帯をポケットの中に戻した。
「クリスマス………か」
思えば、このときすでに、悲劇は始まっていた。
- Re: SURVIVAL GAME ただいま番外編 ( No.323 )
- 日時: 2010/12/29 18:22
- 名前: いち ◆ovUOluMwX2 (ID: PmZsycN0)
最近全然更新してなくてすみませんwww
後で探すのたるいんで、上げておきます。
約束は出来ませんが、今日中に更新するんで、待っててくれた人は楽しみに待っててください!!
それまで、今までのお話でも読み返してくれれば幸いですww
- Re: SURVIVAL GAME ただいま番外編 ( No.324 )
- 日時: 2010/12/29 21:24
- 名前: いち ◆ovUOluMwX2 (ID: PmZsycN0)
SIDE STORY③ 「ナニカの前日」
12月24日。
今日はクリスマスイブだ。
だが、俺はアパートで朝からこもりきりで、テレビを見たりゲームをしたりしている。
外に出ようとは思わない。それは一緒に遊ぶような約束がないからでもあるし、ただ単に寒いからでもある。
世間にとってはクリスマスイブ、俺にとっては12月24日。
強いて言えば、約束の日の前日。
それ以外の何者でもない。
そんな考えしかできない俺は、つまらない人間なんだろうか。
くだらない人間なんだろうか。
そして俺は、そんな人間でいいんだろうか。
自問だけが頭を駆け巡り、脳が見つかるはずもない自答を探す。
俺は、何をしたい?
テレビを見たいのか?
ゲームをしたいのか?
12月24日を、クリスマスイブにしたいのか?
それとも—
そう、いつだって答えは見つかってくれない。
イッタイ、オレハドンナニンゲンニナリタインダ?
しばらくの間、無の時間にいると、不意に携帯電話が鳴っていることに気付いた。
相手はジョーカーだ。
「もしもし」
『おう、秋夜。せっかくのんびりしているところ悪いな』
「仕事か?」
それならそれでいい、自問に縛られる事はなくなるから。
『いや、ちょっと報告する事があるだけだ。実は最近、また新しい敵が現れちゃってさ〜。潰す必要は今のところないけど、のちのち災いをもたらすようなら今潰そうかな、と思って』
「そうか。で他には? 何かあるんだろ?」
『相変わらず察しがいいな。実はその相手組織のリーダー、何と女子高生なんだよな〜』
「………そうなのか」
実際のところ、裏組織に協力している未成年は決して少なくは無い。俺も組織の手伝いをするようになってから、何人か仕事で同い年の連中にあったこともある。
けど、俺みたいに組織の幹部クラスになっているやつはいなかったし、ましてやリーダーなど聞いたこともない。
『で、その女子高生リーダーなんだけど……多分、お前も知っている人間なんだよな』
「………!?」
ということは、俺の高校の人間か……?
『秋夜、大丈夫か?』
ジョーカーの声で我に返った。
「あ、ああ。それで……名前は?」
『名前は遠野茉莉だ』
「何………!?」
遠野茉莉?
あいつが? あの、バカ丸出しの遠野茉莉が?
犯罪組織のリーダー?
信じられない。
『……やっぱり知ってたか』
「ありえない。何かの間違いじゃないのか?」
『そういわれると思って、さっきお前のパソコンにメールを送った。確認しなよ』
俺は急いでパソコンのスイッチを入れる。
早く起動してくれ。
「何で、何であいつが……!?」
『仲がいいのか?』
「うるさい! あんたには関係ないだろ!?」
『事によっちゃ関係アリだ。お前の私情で組織を壊滅させるわけにはいかないからな』
ようやく起動が終わり、マウスを操作してメールボックスを開いた。
メールをクリックする。
すると、そこには武器の取引をしている遠野茉莉の写真があった。
「……そんなことにはならない。今写真を確認した」
『そうか。間違いないな?』
「間違いない。遠野茉莉だ」
俺は吐き捨てるように言った。
『そうか、ならしょうがない。手を打つしかないな』
「手を打つって?」
悪い予感がする。
『分かってるだろ。消すんだ、明日』
「そんな無茶な! いくらなんでも—」
『やりすぎ、か? だが、これぐらいはしないとこの世界じゃ生き残れない』
俺は何も答えられなかった。
確かに、この組織が壊滅したら母さんは助からない。
けど、このまま遠野を見捨ててもいいのか?
『作戦はもう立てた。あっちに潜り込ませたスパイの情報によると、遠野茉莉は明日、どうやら高校生らしくデートの予定があるらしい。そこを狙って消すんだ』
「…………!!」
明日の、デートの予定?
それって、もしかして………
『どうした?』
「いや、犯罪組織のリーダーでもデートはするんだなって思って…」
『ああ、本当だよな。でも、俺達にとってはいい機会だ。別れを惜しむなら今のうちにな。ただし、作戦のことは言わないでくれよ。もちろん、お前ならそんなマネはしないと信じているけどね』
「ああ、分かってる」
ジョーカーは満足そうに「そうか」というと、電話を切った。
携帯を机の上におき、俺はため息をついた。
俺はどうすれば………?
頭を抱えていると、再び携帯が鳴った。
液晶画面を見ると、「遠野茉莉」と表示されていた。
心拍数が上がる。
俺は震える手で通話ボタンを押した。
「もしもし」
『もしもしー? 今大丈夫か?』
「あ、ああ……大丈夫か?」
『どうしたの? 何かあったの?』
「い、いや……何でもない」
思わず声が裏返る。
『なんでもないよね、絶対………でも嬉しいな? 私のこと心配してくれてるんだもんね』
「………え?」
遠野が何を言ってるか、一瞬分からなかった。
『ジョーカーも甲斐性ないよね〜? よりにもよってクリスマスに私の暗殺計画立てるなんて、ね?』
「……遠野」
バレている。遠野に、作戦が。
『私、これでも犯罪組織のリーダーだよ? 相手のリーダーの電話を盗聴なんて、当たり前だよね〜?』
「お前、本当に…」
『そーそー、でもね、安心して。秋夜とのデートはマジだから。明日の私は君のカノジョだよ?』
電話越しの声も、間延びした話し方も。全て。
何もかもが、遠野茉莉だった。
『じゃあ明日。楽しみに待ってるからね〜? あと、秋夜。私達の仲間にならない? お母さんのこと、私でも何とかできるよ? ま、明日までに考えといてね! おやすみ!!』
遠野は一歩的に電話を切ってしまった。
事実を受け入れるには、あまりにも時間がなさすぎた。
一体、今日は何の前日なんだろうか?
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