ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- マイナス ちょっとした番外編
- 日時: 2010/06/28 15:53
- 名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)
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まだまだ未熟者ですが、頑張ります。
登場人物>>2
お客様リスト
ユエ様 白兎様 神無月様 風水様
くれは様 結羽様 月兎様
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- Re: マイナス ( No.64 )
- 日時: 2010/06/13 10:27
- 名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)
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朝、起きると。
「…………………」
いろはが居なかった。
「…………………」
そこは問題じゃない。 ぼくより早くいろはが起きるのはよくある事だし、たまに朝風呂をしている時もある。
問題はそこじゃなくて。
この家に、いろはが居なかった。
「………………」
外出、なんてありえない。
できるわけがない。
あれだけ外に出る事を嫌い、学校に行く時もきちんと見送りされないとグズるいろはが。
ぼくに黙って、早朝から居ないという事は、つまり。
“普通じゃない何かが起こった” という事だ。
さすがに焦る。
「いろは?」 返事はない。
もしかして、音音の所か? 隣だし、妙に懐いている風だったから、それかもしれない。
朝の7時。
隣に行って、インターホンを押してみる。
しばらくして。
「小僧、喧嘩打ってんのか。 ボケ」
「ごめん。 ちょっとした緊急事態」
ボサボサの頭でパジャマ姿の、音音が出てきた。
「何だ? ……自分に用か?」
「いろは、来てないか?」
「小娘? ……来てない」
いろはは来てないのか。 だとしたら?
「なに? 行方不明か」 「大げさに言えばそうかも。 あれだけ外出嫌がってたのに」 「家出か? シスコンな兄ちゃんに愛想をつかして」
そういう理由でなら、ホッとするんだけど。
第一、あいつはぼくを 「兄」 としてとらえてないし。
「気分が良くて外出したんじゃない?」
「………あいつだぞ」
音音、お前は知ってるだろう?
あいつにとって、世間の目が。 人間が。
どれほど醜悪に映っているのか。
音音はバツの悪そうな顔をして、悪いと言った。
そして、かなり身長差のあるぼくの頭を撫でる。
「小僧、昨日は小娘は居たんだろ」
「ああ。 寝る時は……朝起きたら居なかった」
「靴は?」
「あった」
そう、だからおかしい。
靴はあるのに家の中に居ない。 いろはは幼い性格だけど、かくれんぼなんてするような子じゃない。
裸足で外に出るなんて。 考えられるのか?
「家ん中、もういっかい探して 「探した。 便器の中まで」
いろはは阿保だけど、バカじゃないんだ。
──みんな、いろはをバカにするんだよ。
「………帰ってくるかな」
「さあ。 今日は平日……学校に行ってるんじゃないか?」
裸足で?
だけど、学校かも知れない。
外出は学校くらいしか行く場所知らないだろうし。
「行ってみる」 「自分も、少し探してみる」
- Re: マイナス ( No.65 )
- 日時: 2010/06/13 10:36
- 名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)
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アパートから学校まで、チャリで10分かかった。
その道でも、いろはどころか、少し朝が早いせいで誰も居ない。
「やっぱ、いないか……」
「あれ。 夕衣先輩じゃないか」
振り返る。
体操着を着た、語部がいた。
語部 琴葉。 陸上部のキャプテン。
いろはと小学時代、一番仲が良かった女子で、ぼくも少しだけ面識がある。
同じアパートで、今でも話す間柄。
「……お前、何してんの」
「朝練だ」
- Re: マイナス ( No.66 )
- 日時: 2010/06/13 14:15
- 名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)
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胸を張りながら、体操着でエナメルを背負っている語部が、ニカッと笑う。
「キレーだな」 「は?」
「ああいや、歯がキレーだと思って」
ああ、と語部は頷く。
「毎日4回は歯磨きしてるからな」
「煙草吸うくせに」
「らっしゃーい!! 」
誤魔化された。
「もう。 学校の校門前でなにプライベート公開してくれてんだ」
「公開って……お前は後悔しろ」
未成年者が何喫煙してんだか。
体ボロボロになるぞ。
「で。 なんで先輩がここに居るのさ」
「………神隠しのゲームをちょいと」
「ふうん。 変だな」
語部がジロジロとぼくを見てくる。
「いろはは?」 「うーん。 神隠しの主役をしてる真っ最中」
ピースつきで返事をすると、凄く蔑んだ目で見られた。 うえーん。
「……要するに、居ないってわけ?」
「察しがいいね」
「探せよ」 「探してる。 だから、ここに居る」
もう戻ってるかな。 監禁とかされてるんじゃないだろうな。
「まあ、頑張って。 あっしは朝練があっから」
「ラジャー。 任された」
ゲーム、ってわけか。
なるほど。
おもしろい。
「いろは探しも、面白そうだな」
どうして居なくなったのか。
何で、ぼくの元から去ったのか。
今、どこに居るのか。
.
- Re: マイナス ( No.67 )
- 日時: 2010/06/13 14:45
- 名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)
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♪
初めて会った時、そいつはあまりにも、大人嫌いを誇張させる表情だった。
中学生の時、原因不明のなんたらで、これ以上体が成長しないと知らされた。
おかげで、ナイスバディになるはずの二十代も、中学生ほどの体型。
別に、いいけれど。
親とは仲が悪くて、この際もういいやって、お金だけ持って田舎町に移り住んだ。
内職しながら、フツーに寝て。 フツーに起きて。
高校も2年で辞めた、あの日。
自分の住む田舎町にちょっとした事件が起こった。
虐待事件。 3人が死んで、2人の兄妹が生き残った、少し不可解な事件。
名前が珍しいのと、平凡な田舎町でおこった事件だから、しばらくは印象に残っていたけれど。
それも、忘れていた。
7年後、あいつらが自分の隣に引っ越してくるまでは。
「隣に引っ越してきた、色影 夕衣です」
「…………」
和菓子屋で買った包みと、無表情な顔。
キレーな奴とは思った。 どこか影のある、浮世離れした美形な奴。
その名前と、表情の空っぽさから、気付いた。
あの小僧だと。
「7年前の、事件の子?」
「そうみたいですね」
他人事のように素っ気ない顔で、そいつは言った。
「ふうん。 ここに越してきたのか」
「はい。 ……よろしくお願いします。 あの、これ、おうちの人に」
おい。
おいおいちょっと待て。
「自分、一人暮らしだ」 「………え?」
「こう見えても、自分は小僧より年上だ。 敬え、糞ガキ」
いつも、こうして子供みたいな目で見られる。 ムカつく。
もう二十代後半なのに。
「あーすみません。 どうも、中学生にしか見えなくて」
「だーらっしゃい」
ペシリと、飛び跳ねて頭を叩いてやった。
「お前、確かもう一人生きてた奴居なかったか?」
「………よく覚えてますね」
そう言って。
そいつは、一人の、これまたかなりの美人ちゃんを連れてきた。
「………」
この世界を、憎んでいるような視線。
目がデカイから、かなりキツい女の子に見える。 それでも、しっかりと小僧の腕を掴んで。
「色影、いろは。 こっちもよろしくお願いします」
「ん。 リョーカイ」
びしっと敬礼。
「それで……、お名前は」
ああ、忘れてた。
「佐々波。 佐々波 音音だ」
「……おとおと?」
「音音だっ」
後から、小僧に事の顛末を聞かされた。
小僧が、小娘を犯したのだと。 聞いた後、どうしてそれを自分に聞かせたのか、問い詰めた。
小僧は、少し困った顔で。
「他の大人とは……違うから」
少しはにかんだように、笑った。
なんだ。 笑えるじゃないか。
笑えるじゃないか。
「自分は、大人だからな」
「わかってる」
すぐに、元の何を考えてるか分からないツラになったけど。
小僧は、かなり単純的に物事を考えてる。
うぬ。 ごーかくだ。
- Re: マイナス ( No.68 )
- 日時: 2010/06/13 15:32
- 名前: 風水 (ID: PA3b2Hh4)
いろはが……居なくなった……だと!!?
いろはが……ッΣ(@△@)ガビチョンッ
音音と初めて会った時は、まだ敬語だったんですね。
夕衣くん可愛い
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