ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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 マイナス  ちょっとした番外編
日時: 2010/06/28 15:53
名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)

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まだまだ未熟者ですが、頑張ります。

登場人物>>2


お客様リスト

     ユエ様  白兎様  神無月様  風水様
    くれは様  結羽様  月兎様

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Re:  マイナス  ( No.44 )
日時: 2010/06/07 21:24
名前: くれは ◆2nq4FqQmFc (ID: Rk/dP/2H)

虐待は嫌ですよね;
園児から中学生にかけて虐待されているのを見ると辛くなります><;

いつも考えさせられる良い内容の小説ありがとうございます!!今更ですが^^;

Re:  マイナス  ( No.45 )
日時: 2010/06/08 16:28
名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)

ですよね。 虐待とかを見ていると、
その時子供はどう思っているのか、同じ年代として
深く考えてしまいます(@_@;)
>白兎さん


いえ、こちらこそありがとうございます!! 今更ですが((笑
みなさんのコメで自分は動いてます☆ミ
>くれはさん

Re:  マイナス  ( No.46 )
日時: 2010/06/08 17:22
名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)

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外に行かないぼくらに、音音がラーメンを持ってきてくれる事になった。
隣の部屋だから、何かと遠慮がいらない。  いろはと音音を会わす事に抵抗は少しあったけど。

玄関のチャイムが鳴って、音音が土足で入ってきた。
いや、靴を脱げ、靴を。

「持ってきてやったぞ。 小僧」
「ありがとうな、音音」

音音はインスタントのラーメンを机に置く。 いろはは嫌そうに音音をじっと見ていた。
それに気付き、音音は珍しく微笑みを見せた。

「ラーメン、いるか?」

いろははラーメン、音音、ぼくの順番で目を動かし、何かを考えるようにして、無言で頷く。

割と、音音との波長は合うらしい。  

「小僧は小娘と居ろ。 自分がやる」
「んじゃよろしく。 勝手に使っていいから」

いろははじーっと音音を見ている。

「どうしたの」  「毒を入れないように見張ってるだけ。 いろははシッカリ者だから」

いろははシッカリ者らしいです。
ブリッジできないくせにー……関係ないか。

「ほら、喰え」

音音が作ったラーメンを三人で啜りながら、会話の無さに驚いた。
音音は椅子の上にあぐらをかいて、行儀悪くラーメンをすすっている。

いろはも、前に座る音音を警戒しつつ、ぼくに春菊を与えてくる。 おい。

「食べなさい」 「いろは、嫌い」 「食べろって」 「夕衣が食べればいいでしょーが。 それで全て解決なのにっ」

逆ギレされ、渋々そんなに好きでない春菊を食べる。
音音は呆れたようにぼくを見て、

「お前、甘やかすなよ」
「音音が食べさせてみろって。 アンタが作ったんだから」
「しゃーない……。 いろは」

すんなり音音が名前を呼ぶ。 いろはも驚いたようだ。
そりゃそうか。
今まで事件の事もあって嫌悪されて、ぼく以外で名前なんて呼ばれるのは久しぶりだろうから。

「いっこくらい食べてみろ。 うまいぞ」
「………そうする」

いろはは短くそう言って、春菊を箸でつまむ。
音音は満足そうに微笑んで、汁を呑んだ。

「…………………」

なんだ、これ。
なんか……やっぱ音音は大人なんだな。 体子供だけど。

「音音」 「あん?」 「お前、やっぱ大人だわ」

「当たり前よ」

音音は男らしくそう言い、空になったラーメン鉢を置いた。

Re:  マイナス  ( No.47 )
日時: 2010/06/09 16:54
名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)

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音音が帰った後、ラーメン鉢を片づけながら、

「いろは、さっきの人、好き?」
「ううん。 だけど、いろはを馬鹿にしてなかったから、嫌いじゃない」

いろはがソファに寝転んでそう言った。
音音はあまり人の事をズカズカ言わないから、波長が合ったのかも。

「隣に住んでるんだ。 困った事が合ったら、音音にも相談するといいかも」
「その前に、夕衣に相談する」
「ぼくがいなかったら、だよ」

音音は、割と話しが分かるから。

「夕衣、いなくなるわけ?」 「ならないよ」

もしなったら、の話だよ。 今のところ、ぼくはいろはと一緒に居ると決めているから。

「いろは、もしぼくが居なくなったらどうする?」

ソファから顔を出し、いろはは即答。

「死ぬ」 「………」

これは……責任重大だ。
ぼくの行動一つで、この子の運命が決まってしまう。
なんで土曜日にこんな思い話してるんだろ。

「逆にゆーちゃんは、いろはが居なくなったらどうする?」

そう来ましたか。
この質問は、模範解答だとかは無い。 きちんと、解答通りに答える。

「死ぬよ」 「だよねー」

そういう関係なんだろ、ぼくたちは。




 
          ☆




想出くんは、いつもいろちゃんをからかっている。
止めなよって。 そう言ってるのに、聞いてくれない。

泣きながら、いろちゃんは学校から帰る。

「また、いじめられたんですか?」

いろちゃんのお兄ちゃんは、何故かいつも丁寧語。 もう一人のお兄ちゃんの方が、あっしは好きなんだけど。

「うん……うん……、蛍ぅ……」
「泣かないでください」

蛍。

キレイな虫の名前。 あっしは 「ゆい」 って人の方が好きだな。
蛍さんは、いつもいつも、いろちゃんを迎えに来ている。 中学生なのに。 校門まで。

「泣いたら、また、怒られますよ」
「………いーっ」

泣いたら怒られるなんて。 変なの。





          ⅴ





いろは、ごめんなさい。







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Re:  マイナス  ( No.48 )
日時: 2010/06/09 17:27
名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)

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どうしても、つぐえない罪があるとする。

どんなに必死に足掻いても、逃れようとしても、それは大きく膨らんで、自身をぐちゃりと潰してくる。
息が苦しい。

「……………」

いろはの可愛い寝顔。 明日から学校。 
可愛い可愛い妹の寝顔。 

「…………キモ」

ぼくはいつだって、心が汚れてるんだ。 いつからだろう。 
いつから、こんなふうに。
何をしても感じ取れる事がない。
怖い。
怖い。
怖い。

いろはが、怖い。

もし、いろはが正気になって、ぼくと対面したらどういう反応をするんだろう。
殴られる……のかな。 恐怖で上ずった声で、罵倒されるのかな。

「どっちにしろ……考えたくないな……」

だから、望んでる。
いろはが、戻らないように。

「大事な妹だから……なーんて」

独り言だ、ただの。
そう、独り言。

なんでもかんでも、一人で会話して、一人で納得して、一人で……。

一人で。

「………今の、無し」

回想が生まれる。 また映画鑑賞だ。
ドキュメンタリー。 フィクションです。 嘘偽りはありません。

蛍は、ぼくと3歳離れている、とても変わり者な人で、年下にも敬語を使っていた。
いろはが恋愛的に好きで、指の皮を全部剥がしていた。

蛍が父親に花瓶で殴られて、頭部強打で死んだと理解する事は難しくなかった。
だからこそ。

それに動揺して泣き叫ぶいろはを 「犯せ」 と命令された時、ぼくはそれに従った。
怖かったからかも知れない。 ぼくも殺されると思ったからかも知れない。

恐怖でぼくは、心と体の自由がまったく効かなくなって。
ガクガクと力の入ってない、いろはの折れた手を押さえつけ、

「………………」

彼女が、本当に心を見失うまで。
「ゆーちゃん」 と彼女はそう呟き、無反応になってしまった。

ああ、そこでぼくのタガが外れたんだ。
本気で、あそこまで、人を殺し合いと思ったのは初めてだ。

「……真っ赤だったよな」

血。 鉄さびの匂い。 
人形のようないろはにとって、その時のぼくがどう見えていたのかは、知りたくない。

ぼくは、狂気の果てに笑っているあいつらを刺した。
何本も何本も何本も何本も何本も。

そしてそれは、許された。

「……一件落着」

その後、精神科で無事いろはと出会って、少しの食い違いはあったけれど、またこうして一緒に暮らせて。
ぼくは 「兄」 ではなく、 「ゆーちゃん」 としてここに居る。

「……めでたいのか、めでたくないのか」

それはよく、分からない。
いろははああして、ぼくに笑いかけてくれるから。



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