ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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 マイナス  ちょっとした番外編
日時: 2010/06/28 15:53
名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)

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まだまだ未熟者ですが、頑張ります。

登場人物>>2


お客様リスト

     ユエ様  白兎様  神無月様  風水様
    くれは様  結羽様  月兎様

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Re:  マイナス  ちょっとした番外編 ( No.114 )
日時: 2010/06/29 16:35
名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)


コメどうもです(@_@)♪

あまり語れなかったやつを書いて、プツリと
終わる予定です(^^ゞ

もうしばらくお付き合いくださいませー

>月兎さん

Re:  マイナス  ちょっとした番外編 ( No.115 )
日時: 2010/06/29 17:22
名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)

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いろはちゃんについて、分かった事がいくつかある。
まずは性格。

性格は昔のままだった。 ただし。
蛍の前での明るくて陽気な性格。 学校や両親のいる場所でのあの暗さからは想像できない。

ぼくの前では見せてくれなかった笑顔だった。

あとは、記憶。
「夕衣」 は悪い大人を倒してくれたヒーローで、自分を助けてくれたと認識しているみたい。
現に、ぼくは覚えてなくて、夕衣だけ覚えてる。

蛍の事も、サッパリだ。

「ねえ、いろは」
「なにかなー?」
「蛍って知ってる?」
「しーらない。 いろはは夕衣だけ知ってる」

都合のいい頭だね。
目の前で蛍が殺されて、記憶がズレたのかな。

「じゃあ……夕衣はキミに何をしたか、覚えてる?」
「いろはを助けてくれたんだよっ。 ありがとうね、夕衣! あんな悪い奴らの所から助けてくれた」

間違ってる。
だけど、ぼくはそれを指摘せずに、抱きついてくるいろはちゃんを受け入れた。

ベッドの上でいちゃつくぼくらに、看護婦さんが二人近づいてきた。
いろはちゃんの動きはピタリと止まり、どこか明後日を見るような目つきになる。

そこに看護婦さんなんて、いないみたいに。

「夕衣くん、そろそろ検査があるんだけど」
「いろはちゃんもお休みなさい」

いろはちゃんを覗き込むようにして、看護婦さんが穏やかな声色で言う。

「夕衣くんも病室に戻りなさい」
「あ、はい」

ぼくがベッドから下りようとした瞬間だった。

「…………っ!」

左手に、鋭い痛みを感じた。
見ると、鉛筆が刺さってる。 ものの見事に貫通だ。

「ここにいて」

その割に、やった本人は落ち着いていた。
まっすぐに、いろはちゃんがぼくを見る。

「夕衣、ここにいて。 ここにいなきゃダメ」
「いろはちゃん、何してんの! 止血っ」

慌てふためいちゃって。
大げさな。

これくらい、何ともないのに。
だけど。

「………………ああ、」

血だ。血がぼくの手を伝って、落ちる。ああ、シーツが赤色だ。せっかく真っ白でフカフカなのに。ぼくの血が落ちてく、ああ、可哀想に。可哀想に。
ザーザーザーザーザーザーザーザーザz−アザーザー。
灰色の液体。 ぼくの目は、赤を映しません。

ああああああああああ、
ああああ    あああああああ  あっ

「ゆーちゃん?」

ああああああああああああああ、
そう、ぼく夕衣。
血の色はダメだよ。 弱点すぎるのに。
なんで、だよ。

そうか、そうなのか。

あいつらに脳みそいじくられて、改造されたのか。
あーなーるーほーどーねー。
可哀想に。 赤に拒絶する。 血を抜き取れー。

「ゆーちゃん」

うん、ゆーちゃん。
いろはをまもってください。
蛍と約束した。 まだ守れてない。

ズボッと鉛筆が抜かれて、タオルが押しあてられる。
さすがに痛い。
ココロさんだ。

「見ちゃダメでしょうがっ」

目をふさがれる。
変な汗かいてしまった。 たははは。

そのまま、だっこされるのが分かった。
足が地についていなくても、移動できるなんて。 画期的な乗り物だね。





自分の病室のベッドで、洗面器に嘔吐して。
やっと視界が広がった。

「大丈夫?」 「…………はい」

左手を見ると、包帯がされていた。
何時の間にしたんだろう。 覚えていない。

「しばらく面会禁止だよ」
「………いろはちゃんと、ですか?」
「絶対ダメ。 キミはまだ心がなってないんだから」

ツンと胸を指で触れられ、くすぐったい。

ココロさんに薬を渡されて、飲み干す。
喉を冷たい水が通って、気持ちいい。 胃液の味も忘れて、息をついた。

「キミのトラウマは血って事、理解OK?」
「してます。 けど、あれは不意打ちですよ」
「ん。 いろはちゃんも怖いね」
「…………」

今、どうしてるんだろ。

「今、あの子は眠ってるよ」

ココロさんが答えてくれた。
そして続ける。

「あの子、ずっと夕衣を探してたわけ。 夜になってもなかなか寝ないで、夕衣を必死で求めてた。 もう尋常じゃないよ。 アーシから見ても怖かった。 そこに、キミが名乗り出た。 自分が夕衣だって」

蛍の約束を守るために。
がんばりましたよ、ぼく。

「あの子は、一生キミを夕衣だと認識するよ。 しかも、あの子の言う夕衣はキミじゃない。 キミは夕衣を演じきれるの?」

その覚悟、あまりないけど、やってみます。





その日から、ぼくはいろはちゃんのお兄ちゃんとして、また毎日を送れるようになりましたとさ。

Re:  マイナス  ちょっとした番外編 ( No.116 )
日時: 2010/06/30 17:17
名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)

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          番外編

       これから、これから



眠たい目をこすって、ぼやける視界をガン見する。
うん、今日もアーシは元気みたい。
背伸びして、ポキキッと鳴る音を気持ちよがりながら、パジャマのボタンを外す。

今日はめったにないオフの日。
仕事人間のアーシは真面目にコツコツ仕事してる。
だっからオフぐらいゆっくりしていーじゃない。

一人暮らしもこれで15年目。
20歳からやってきて、超ベテランになっちまった。
ぬぱぱぱ。

顔はいい方だと周りから言われて、男友達にもよくキレイだとは言われるけど、どうもアーシは恋愛なんて好きじゃない。

「だって男と一緒に住んでメンドーじゃない」

ねーっと見えない誰かに同意してもらって満足する。
こんなだからダメなのかなー。

かなり伸びた髪をそのままに、服だけ着替えてコンビニに行く事にした。
ジャージ姿だけど、ここら田舎は人通りが少ない。

日曜の朝なのにね。
あーらふっしぎ〜♪

財布だけもって、アパートから降りる。
チャリで5分。 コンビニに到着ッ。

「…………ぬらら?」

ひどく懐かしい人間を発見した。
男と、女。
どちらもかなりの美少年と美少女ちゃん。
だけど、全然目が死んでる。 つーか、違う場所に居るみたい。


昔と全然変わってない。


別に、あれから会わなかったわけじゃない。
こんな狭い田舎町、家もそこそこ近いから、すれ違ったりもしてきた。
だけど、何も反応は見せないできた。

「何にしますか?」
「んっとねー、カップラーメン」

少女、と言ってももう数えて十代後半か。
デカくなったなーとか思いながら、その向かい側の菓子類のコーナーに立つ。

「私も、それが好きです」
「蛍と一緒にいつも食べてたしねー」

手が、止まる。
耳をうたがう。

え? 今、なんてソイツを呼んだ?

「大嫌いな大人はなーにもしてくれなかったね」
「そうですね」
「ムカつく。 でも蛍が居れば安心だぜー」

蛍? 
たしか、アレだ。 あの子らの兄で、もう死んでるはずじゃ?
写真で見たけれど、どちらかっていうと、妹の方に似ている。

なんで、あの子が蛍の真似なんてしてるのさ。

……ああ、そっか。
そういう事か。

三か月前、ひと悶着あった。
想出 相馬が色影 いろはを監禁して、色々いたぶってたっていう……。
あれも担当はアーシだった。

あの子がアイツを蛍って呼ぶって事は………。

「また、自分を犠牲にしちゃって……」

選んだわけだ。
自分ではなく、妹の方を。

………なんだかなぁ。
やっぱ変わんないわ、あの子。
昔から、自分が犯した罪を必死で認識して、守ろうとしている。
自分なりに。

アイスコーヒーとポテチ、おにぎりを持ってレジに並ぶ。
すぐに順番はきて、ぼんやりとしながら会計を済ませようとした。

した、ら、

「やっぱり、ポテチはコンソメなんですね」

後ろから。 声変わりはしてしまったけど、ひどく懐かしい静音がした。
相変わらず、どこか心地いい声。

「………キミもな。 相変わらずタチが悪い」

振り返らずに答える。

「失礼な……。 ぼくのどこがタチが悪いんですか」

あいつ本来の敬語で訪ねてくる。
チラッと見ると、妹の方はアイスコーナーで目を輝かせていた。

「そういうとこかな。 自分を偽ってるところ」
「ぼくは、決めましたから」

言って。

「ねー蛍、これも買っていいかな?」

その子がアイスカップを持ってきた。

「いいですよ。 おいしそうですね」
「一緒に食べようねー」
「はい」

そこからは。
まるでアーシなんて最初からそこに居なかったみたいに。

彼は 蛍 を 演じ続ける。

彼女のために。 ためだけに。
彼女はカラクリに気づかないまま、幸せだろうね。

ビニール袋を持って、コンビニから出る。

振り返らずに。

「……相変わらず」

本当に。 相変わらず。

Re:  マイナス  ちょっとした番外編 ( No.117 )
日時: 2010/06/30 17:48
名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)

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          番外編
        なんでもとっても




そこにいたのは、えらく不思議な兄妹だった。

「今日から一緒に住む、夕衣くんといろはちゃん。 ナギサ、仲良くしてやって」

母さんがそう言って紹介したのは、綺麗な割に人間からあまりモテなさそうな兄妹だった。
夕衣、という随分女みたいな名前の兄は、ペコリとお辞儀をする。

だけど、人形のようないろはという子は、俺なんかどこにもいませんーみたいな目でどこかを見ている。
なんというか、二人ともあまり好きになれそうにない。

母さんの兄弟の子供らしく、俺にとってのイトコというわけか……。
その事件は既に知っていて、俺もかなりビックリしたけれど。

「部屋はこっちよ」

母さんは随分嫌らしく、スタスタと先に行ってしまう。
家は広いから、迷わないといいんだけど。

「行くよ、いろは」
「………汚い家」

ボソリと、そいつは吐き捨てるように呟いて、夕衣の手をギュッと握った。
なんだ、コイツ。
性格ねじ曲がってんじゃねーか?

母さんによると、夕衣の方は両親を殺した本人らしい。 
本人もそれを認めていて、でもそれはけっきょく、正当防衛として罪にならなかった。

他にももう一人、ホタルとかいう奴が居たんだけど、殺されたみたい。
ドラマとかの話じゃねぇんだなーと思う。

「あの子の目を見た? 人間壊されたらあんな風になるのね。 怖い怖い」

階段から降りてきた母さんは、やだやだとソファに座って溜息をつく。

「あの二人は?」
「知らない。 勝手にしてるんじゃない? いろはなんて、アタシに早く出ていけなんて言ったのよ? しつけがなってないわね。 あれなら虐待したいと思っても当然」

我ながら、母さんもかなり性格が悪いと思う。
少しは同情してもいいのに。

「なんで兄さんの子をアタシが……。 ナギサ、あの子も学校に行くけど、何か言われたらすぐ言ってきてよ?」

事件があった時は、俺も大変だったねーとか言われてきた。
だけど、あまり俺は気にしないタイプだから。
別に噂されても、あまり何も思わない。

母さんのグチが長くなりそうだから、部屋に行く事にした。

「…………………」
「…………………」

夕衣が、いた。

階段を下りる途中だったらしく、上がってきた俺と完璧に目が合う。

「…………なに?」
「トイレ、どこにあるのかなと思って」

俺よりいっこ上。 15歳だっけか。
女子からモテそうな奴だな。

「ああ、こっちじゃない。 そっち」
「どうも」

開いているドアから中を覗くと、いろはがいた。
笑っていた。
鼻歌を歌いながら、まるで遠足に来たかのように、バッグから服を出している。

俺の気配が、夕衣と間違えたのか。
いろはは振り返って俺を見て、そして、

「来ないで。 大嫌い」

言い放った。

「出て行って。 早く」
「え? えっと、」
「意味分かんないから、さっさと出ていけ」

それは、ハッキリとした拒絶。
恐怖や焦りを感じさせる。

「大嫌いだから出ていけって言ってるでしょっ」
「は?」

胸元を掴まれ、壁に背中を押される。
華奢な腕からは想像できない、力。 恐怖からか、震えていて、手汗をかいている。

「そんなにいろはを苛めて……何が楽しいのっ?」
「誰も、苛めて……な、か………」
「うるさいっ!」

シャーペンを持って、芯を限界まで出す。
それを、俺の右目に、つき、ささって……、

「はいストップ」
「………………」

焦った。
いろいろと。 

夕衣が、いろはの腕を掴んでいる。

「ゆーちゃん……?」
「ダメだよ、いろは」
「ゆ、ちゃ……、ゆーちゃんゆーちゃんっ」

涙腺が崩壊し、いろはが夕衣の胸に顔をしずめる。
嗚咽を堪える事もなく泣き続ける。

驚き過ぎて、俺は部屋から出た。
自室にこもって、口を抑える。

「…………なんだ、あの女」



Re:  マイナス  ちょっとした番外編 ( No.118 )
日時: 2010/06/30 18:28
名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)

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あれから、2年たった。

2年間、あいつらは全然なんとも変わりない。
いろはは心を開けるどころか、遠ざかって行って、俺を見ようともしない。

夕衣の方とは、今じゃちょっとした友達みたいなものになった。
いろはが寝てしまった後、だけれど。

だけど、こいつらが何を見て、何を知って、何を感じたのか、大体分かる。

「いろは、バカにされるのが嫌いなんだ」
「……何それ、お嬢様?」
「そうじゃなくて、凄く怖いんだ。 両親からも、小学校の男子とかにも言われてきたから」

たまにジョークで言う 「バカ」 が、あいつにとっては恐怖なのか。

「ナギサ、いつも思うけど友達少ない?」
「……なんだよ、急に。 てか俺すげぇ寂しい奴みてーじゃん」
「だって、いつも帰り一人じゃん」

お前だって同じようなモンだろ。
いろはと一緒に帰ってるだけじゃねぇか。

「俺、あまりそういうの気にしないから」
「彼女とか、いないわけ?」
「あー……中学2年の時はいたけど」
「ふうん」

お前は? とは聞かなかった。
コイツは多分、人を好きになるとか、もうないんだなとか思いながら。

「貞操は無事デスカ?」
「……何か変なモン食ったか、夕衣」

少し込み入った話してくるな。
気恥しいけれど、一応本当の事は言っておく。

「もう捨てた」
「へぇ。 大人だな、ナギサは」
「はははー。 お前は?」

聞いてしまった。
あまりにサラリと。 自然に。

どうせ、童貞なんだろーなとか思ったら。

「ぼくも、捨てたよ」
「………………」

なんか、凄い事をきいてしまった。

「あれ……、お前いつもいろはと居るじゃん。 彼女なんて出来た日には、殺されるんじゃねぇの?」
「殺されないよ。 いろはだから」
「………は?」

明かりのない部屋。
眠っているいろはの額に触れながら、俺の隣で、そいつは無表情だった。

「今、なんつった?」
「ぼくが10歳のとき、いろはを犯したんだよ」
「誰が」
「ぼくが」

10歳。
コイツといろはが、虐待を受けていた年。

「命令、されたんだ」
「……………」
「最終的にいろはを壊したのはぼく。 命令されたとはいえ、やるんじゃなかった」
「でも、なんで今は甘えてきてるんだ? 許してもらったのか?」

そんな簡単じゃないよ、と彼は言った。

「間違えてるんだ。 いろはが壊れた後、ぼくは両親を殺したんだよ。 それが、いろはにとっては “夕衣が自分を守ってくれた” って事になってるんだ。 自分にとっての悪い事を全部、あいつは無しにしてるんだ」

それはひどく間違っていて正解で。
誰にも指摘できない、ズレ。

「今のままで、いいと思う。 俺は」
「いつまで続くか、分かんないけどね」

夕衣は、自嘲気味に笑った。
初めてみた、そいつの笑い顔。 暗くて、ハッキリ見えなかったけど。




           ♂




休日。
部活から帰ってきて、車がある事に気づく。
母さんは家にいるらしい。

受験生の夕衣は家。 もちろん、いろはも家だ。
母さんは2年間二人を拒否し続けてきたけど、あいつらと三人で大丈夫なのか?

玄関に入ってリビングを見ると、母さんがあくびをしながらテレビを見ていた。

「あら、お帰りなさい。 ナギサ」
「うん、ただいま」

軽く言って、二階に上がる。
異常な男性恐怖症のいろはも、2年間俺と住んで、なんとか慣れたらしい。

前は目が会っただけで錯乱し、何度か殺されかけたけど、今ではすれ違いまでできるようになった。

「ん、お帰り」
「ただいま」

予想通り、夕衣の近くいろはは居た。
何故か、ブリッジをしている。

「…………………?」
「いろは、ブリッジ出来ないんだって」

いろはは体勢を整えてぼくを見、興味無さげに

「仕方ないでしょーが。 出来ないモンは出来ないんだよ、夕衣。 いろはは悪くなーい」

そう言った。
普通の女の子みたいだ。 こうして見ると。

「おなかすいたー。 いろは、おなかへったー」
「もうご飯出来てるぽいよ」
「じゃあ下に行こうか、いろは」

警戒は抱いているものの、俺の前でいろはは笑顔を見せるようになった。
俺に対してじゃないけど。
ある意味、夕衣に対してでもないんだけど。

二人から少し離れて、一階に下りる。
母さんがうげっといった表情で二人を見て、冷蔵庫から何かを取り出す。

「さっさと食べちゃってよ」
「ありがとうございます」
「………………」

三人が椅子に座って、昼飯を食べる。
母さんはソファで寛ぎながら、たまに振り返って様子をうかがってくる。

「……あのさぁ、夕衣」
「はい」

珍しく、夕衣が呼ばれた。

「アンタ、15でしょ? 進路とか色々あると思うんだけど、何ももらってないわよ」
「ベタに高校進学を希望します」
「あー……、私立よね」
「父さんの資金で、お願いします」

自分らを壊した父親の資金で、私立高校に通うつもりらし。

「本当に……あなたは兄さんに似てるわ」
「そうですか? 嬉しくはないですけど」
「嫌味じゃなくて、ホントよ。 そっくり。 顔もそれなりにね」





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