ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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 マイナス  ちょっとした番外編
日時: 2010/06/28 15:53
名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)

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まだまだ未熟者ですが、頑張ります。

登場人物>>2


お客様リスト

     ユエ様  白兎様  神無月様  風水様
    くれは様  結羽様  月兎様

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Re:  マイナス  ( No.49 )
日時: 2010/06/09 17:48
名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)

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         第4章
       いじめっこの確率




本日も晴天なりー。 絶好の運動日和なりー。

らららん、とか鼻歌やってみようとするけど、あっしのキャラじゃないからやーめた。

今日も暑い。 夏だからか分からないけど、とにかく暑い。
学校があるとか、マジで嫌。 いーやー。

「ぼくみたいな大人になるなよ」

そう、先輩は言ってたけど、その通りだよ。
あっしは、あんなぶっ壊れた奴にだけはなりたくない。 だけど、少し憧れる。

ああいうの、犯罪犯してもオーケーだと思うから。

「語部、これ、専門委員会の」
「お?  おー、サンキュ」

想出と同じ体育委員だから、助かる。 あっし、あまりそーゆーの向いてないから。

「専門委員って面倒くせーよな」
「しょうがないよ。 あっしらの活躍が全校に伝わっていると思うと、ハリキリすぎるしな」
「………お前、熱血なのな」

想出に呆れられた!!!
世も末でござる。

「は〜ぁ。 あっしも先輩みたいなフリーな人生決めたい」
「先輩……、色影さんの事?」
「およよっ。 何で分かった?」

テレパシー? 通じ合う系? 気色悪っ。

「いや……直感」 「うん、まあ当たり。 夕衣先輩は、あっしの憧れでもあるからさ」 

小学時代は好きだった。 かもしれない。
顔がいいからなーなんて。

「ふうん……あ」

想出が気まずそうに顔を俯かせる。 理由は簡単。
前にいろはが居るから。

想出は、小学時代にいろはをからかっていた張本人で、いろはもワンワン泣いていた。
今思えば好きだったのだと、本人は後悔してたけど。

謝りたいけど、相手が覚えてないんじゃねぇ。
あっしもそうみたいだけど。

「……………………」

いろはは、あっしらに視線を向ける事なく、通り過ぎていく。
もう帰り支度を済ませて、足早に。

「ねえっ」 

呼ぶと、立ち止って振り返る。 
無表情で、どっか不気味だった。 

「もう帰るのか?」 「だったらなに」 「あっしの事、覚えてる?」 「知らない、アンタなんか」

そっけない返事で、いろはは詰まらない者を見下すように、舌うちをした。
去っていくいろはを、想出が沈痛な面持ちで見つめている。

「……ショック、だな」
「アンタが受ける事なくねー?」
「だって……一応、好きだから」

好き、ねぇ。

いろはのどこにそんな感情が沸くのか、不思議だ。
壊れてるところ? 顔が綺麗なところ?

「想出、趣味悪い」 「るせー」

あれでも、小学時代は、かなり仲良しだったんだけどねぇ。

 

Re:  マイナス  ( No.50 )
日時: 2010/06/09 20:29
名前: くれは ◆2nq4FqQmFc (ID: Rk/dP/2H)

ゆ…ゆーちゃん;;
マイナス のキャラクターはどこか儚い感じがあって良いですね。その背景を忘れてはいけないのですが…

毎度の事ですが、更新頑張ってくださいねっ><*

Re:  マイナス  ( No.51 )
日時: 2010/06/11 16:26
名前: 風水 (ID: PA3b2Hh4)

琴葉目線からの「マイナス」も良い感じです!!

想出くんは、いろはを苛めていたのを謝りたいんですね…。

謝れる日が来る事を祈ってます!

Re:  マイナス  ( No.52 )
日時: 2010/06/11 16:37
名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)

キャラクターにそんな印象を抱いてくれて
ありがとうございます(>∀<)
頑張ります!!
>くれはさん


今回、夕衣が居ない学校でのいろはを書きました。
出番少ないけど……それがいろはだから。
>風水さん

Re:  マイナス  ( No.53 )
日時: 2010/06/11 17:41
名前: アキラ (ID: PA3b2Hh4)

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やっと、体育の専門委員会が終わった。
一昨日からテスト期間で、部活が無いから、委員会以外の人は帰ってる。

「一緒に帰りますかっ」 「……ああ、いいけど」

あっしが誘うと、想出がポケーとした顔から、驚いた顔になった。 なんでじゃ。

「カレカノみたいに見えるかねー」
「ぶっ!! ……冗談止めろ」

どうも、想出 相馬は、冗談に弱いタイプみたい。
髪の毛茶色にして、かなりチャラそうなのに、ウブだな。

「想出、少しシリアスな話になるけど……いい?」
「ん? ……色影の事か」

当たり。 コレはテレパシーでも何でもないね。

「いろはさー、本当にあっしらの事覚えてないみたいだなぁ」
「そうだな」
「それ、忘れてるだけなんじゃないかな」

きっと、いろはは覚えてる。 
ただ、死んでるだけ。
記憶が、死んでるだけ。

「アンタの事も、覚えてるんだけど、いろはは忘れてる。 たぶん、思い出せると思う」
「思い出して、幸せだと思うか?」

足を止める。
振り返って、呼吸を止める。

「それで色影が……嬉しいと思うか?」
「………………」

いろはは、もうあっしらとは違う。
違う道を、脱線して、逆再生して、再構築している。

そんなあの子に、現実を見ろ、思い出せ、なんて言う方が、

「ダメだよな」

間違ってるとしたら。

「やっぱ、ダメだよな」 
「ダメ……だろ」

記憶をたどって、そこに行きつく先が絶望を越える暗闇だとしたら。
思い出さず、このまま幸せにいる方がいいのかも知れない。

「……………」

幸せに?

じゃあ、あいつは?

“先輩” は、幸せ?

一緒に絶望を生きた妹と一緒に居て、助けられなかったあの子の面倒を見て。 それで幸せ?
なわけないよ。

あの人もあの人なりに傷ついてる。 心が、壊れてる。
なのに、いろははそれに気づかない。 気付こうともしない。 先輩を兄だと認識していないあの子にとって、 “夕衣先輩” なんて、どうでもいい存在なんだよな。

だとしたら。

いろはは、凄く嫌な奴で。

「俺、こっちだから」
「うぃーっす。 じゃあな」

想出と別れて、団地に入る。
アパートの灰色っぽい壁を見ながら、足を進めていくと、

「そんなに仏頂面で来られても困る」

夕衣先輩が居た。
いつものようにベンチに座って、どこか遠いところを見ている。
相変わらず、どっこ見てんだろーね。 あの節穴の目で。

「別に、不機嫌てわけじゃないな」
「ふうん。 それなら良いけど」

相変わらずキレーな顔。 色影家は全員美形なのか分からないけど、いろはもキレーな顔をしてる。

先輩は、なんつーか、ちゅーせーてきって言うか。

小学校時代から面識あったけど、髪を伸ばしたら女子ソックリだった。

「顔、そんなに気になる?」
「んー、いや、キレーな顔だと思って」

素直に言うと、少しだけ困惑した顔で、先輩があっしから目を離す。
照れてるのか……?

「いろはの方が、キレー」
「そこ、あっしじゃねーのか」
「ほら、ぼく、いろはにベタ惚れだから」

地味に説得力のある説明だよね。

「辛くない? いろはと居て」
「居ない方が、辛い」

そう呟いて、顔を埋める。
小さい子供みたいに。

その髪に、手を入れて撫でてやろうと思ったけど、

「あ、そーだ」 「っ」 
「そろそろ、いろはが起きる時間かな」
「昼寝中?」 「うん。 帰ってきてすぐ」

行き場を失った手を降ろして、笑う。
そっか。 それがこの人の幸せ、ってわけ。

グシャグシャにされた記憶を構成して、先輩はいろはにご執心ってわけか。

「……じゃあ、早く行きな。 あっしも腹減っちゃったからさー」

そう言って。
先輩を見ずに階段を上がる。 

心残りは、少しあったけど。

どうでもいいかな。

遠くで、先輩が溜息をついたのが聞こえる。
疲れてんのかなーなんて。 嫁か、あっしは。


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