ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ
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- モノクロⅡ 完結
- 日時: 2010/08/28 09:04
- 名前: アキラ (ID: STEmBwbT)
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未熟者です(-_-)
お客様
白兎様 ミコト様 神無月様
くろうさぎ様 風水様 スペシャル様
出雲様
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- Re: モノクロⅡ ( No.61 )
- 日時: 2010/08/19 07:58
- 名前: アキラ (ID: STEmBwbT)
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ガラスを突き破り、モーゼスはリリーをつれてハーデル王国の上空を飛ぶ。
「お、降ろしてよ! 拉致するなんて酷い。 私をどうする気だ、この無礼者っ」
「じっとしててくださいヨ。 ヒースの命令で、あなたを攫えと言われてるんですカラ」
異国の者なのだろうか、語尾に少し訛りがあるのに気づく。
灰色の髪を風に棚引かせ、リリーは不安で胸が張り裂けそうだった。 それを相手に悟られないように、強きの口調で言う。
「その、ヒースて何? いきなりソーヤさんをこ、殺したり、継承式メチャクチャにしてっ」
「ヒース云々は知りませんけド……私がお仕えしてるのは、彼の中にある “闇の王” だけですから」
言葉がつまる。
理性も知性も人間性もない、黒い魔法の事を人はみな、“闇の王” と呼ぶ。
その器として、ただの人間のヒースが選ばれたのだと、リリーは知った。
「……ヒースは、生まれた時からあそこにいたの?」
「居場所はなかったんですヨ。 彼は王を埋め込まれ、その体に絶対的な魔力を持っています。 今回、継承式で一瞬でも結界魔法が弱められるので、そこを狙って逃亡しました」
それを聞いて、どこかで聞いた事のある話だと、リリーは思った。
ああ、そうだ。 これは、
シロの話に似ている。
生まれた時から閉じ込められて、外に出たいが為に自由を勝ち取った。
「私の母さまも、同じような事をしたわ」
「悪いですけド、同情なんてされちゃあ王もカワイソです。 貴方みたいなただの人間に」
明らかに嫌みな発言に、リリーはカッとなり、口調を荒げた。
「それがハーデル王国の王女に言う台詞!? 信じられない!! 」
「言っときますけド、私にとって貴方はただの人間なんでス。 私も、魔物ですから」
そこで初めて、リリーは冷静になって彼の背から翼が生えている事に気づき、ギョッとしたような顔になった。
「私はリアナイトの執事じゃない。 ヒースのしもべなんですヨ。 長年、王の元で仕えてきましたがヒースほど気高い王はいません」
魔物。
そうか、モーゼスは魔物なのか。
そう思うと、なんでだか。 少し怖さが減った。
正体が分かったからかもしれない。
「私を……どこに連れて行くの」
「闇の王の所に」
先ほどまで明るかった空は、どこかどんよりした灰色に変わっている。
森の方だ。 リリーは思った。
ハーデル王国の地ではない、どこの国にも属さない深い森。
あそこに、闇の王はいる。
- Re: モノクロⅡ ( No.62 )
- 日時: 2010/08/19 08:26
- 名前: アキラ (ID: STEmBwbT)
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久しぶりに魔術を使ったからか、少し手がしびれる。
淡い紋章が頬に現れており、そこが怪しく光る。
森の中の屋敷が、王の城だった。
長年リアナイトに封じられていたため、返ってくるのは200年ぶりになる。
ヒース自身は、この屋敷の場所なんて知らなかった。 しかし、体に確かに存在する王の記憶は、ヒースをここまで導いた。
「……遅いよモーゼス」
「すみませんねぇ、少し手こずりましたもので」
いつのまにか、モーゼスが苦笑しながらリリーが逃げないように両手を後ろに拘束して立っていた。
「女の子は大切に扱わないとダメだと……教えなかったかい?」
「女……。 はい、そのつもりでス。 ですから、なるべく丁重に」
「どこが丁重よっ」
うんざりした顔でリリーが怒鳴る。
威勢のいい少女だと、ヒースは思った。 同時に、この少女を喰らいたいという欲求もでたが。
それは、我慢した。
「放しておやり、モーゼス」 「はいはい」
拘束がとかれ、リリーが手をさすりながら、ヒースを見つめた。
とても、美しく気高い瞳。
「席を、はずしてくれないかな。 モーゼス」
「あらら〜さっくセクハラですカ? ダメですよ〜いたいけな女の子を、っ」
閃光が放たれ、モーゼスの頬を掠める。
「………」
黒い血が、垂れる。
モーゼスはそれを舐めとり、恭しく一礼して、出て行った。
ふたりきり。
あの、王と。
「昨日会ったね」
「やっぱりあれは夢じゃなかったんだ」
「どうして俺がキミの記憶を消そうと思うの」
さっきとは違う、柔らかい笑み。
「アンソニーの記憶を消したのはなぜ」
「彼は心配性すぎる。 キミも窮屈だろ」
「……どうして私をここに連れてきたの」
「それは、簡単だよ」
そこでわざと言葉を遮り、
「キミと、話がしたかったから」
「奇隅ね、私もよ」
リリーはあえて尊大に応えて見せた。
ヒースは押し黙り、リリーに発言を譲る。
「どうして、ソーヤさんを殺したの。 義理とはいえ、母親でしょう? あんな残虐に殺すなんて、ありえないわ」
それだけ?と瞳が問うた気がした。
それだけよ。 とリリーも答えた。
「言わなかったかな。 俺は、リアナイトに復讐するため、逃亡したんだ」
「どうして復讐するの」
「あいつら、俺をずっと閉じ込めて笑っていたんだよ。 ずっと魔法で封印されていて、息がつまった」
だとしても。
シロは復讐なんて望まなかった。 生贄として、殺されそうになっても。
「前の王の器の人は、きっと器の資格がなかったんだ。 王の魔力一つも使いこなせない。 でも俺は王の魔力を操れる。 俺は、闇の王だ」
厳しくそう言い放つが、フッとその表情が緩み、リリーを見る目が優しくなった。
「おいで、リリー」
「…………」
警戒しながらも、ゆっくりと安楽椅子に腰かける彼に近づく。 その距離が30cmほどになると、
「うわっ」 いきなり腕を掴まれ、体を引き寄せられた。
油断した、と思ったがただ抱きしめられただけだった。
愛しい人を抱くように、腕の温もりを感じて、心臓の鼓動を感じて。
「なんのつもりかしら」 「綺麗な髪の色だね」
質問をサラリと無視し、リリーの細い髪の毛をなぞる。
「シロとあの魔術師の色を、うまく引き継いでいる」
「父さまを知ってるの?」
クーの正体は表では知っている者は数少ないはずだ。
ヒースは苦笑し、
「キミの反応を見て、今確信したよ。 やっぱり、あの “黒の魔術師” がキミの父親か」
「ハメたのね」
「人聞き悪いな。 あのシロの白髪を受け継いでるとは思ったけど、彼のような闇より黒い色も珍しいから」
リリーは複雑な表情でヒースを見て、諦めたように胸に顔を埋めた。
そういえば。 ヒースの髪もとても綺麗だ。 星屑のような、リリーとは違う銀色の髪。
「もう話は終わったかしら。 私を解放して」
「そんな寂しい事、言わないでほしいな」
「……寂しい事を言わせてるのは、あなたよ」
- Re: モノクロⅡ ( No.63 )
- 日時: 2010/08/19 11:15
- 名前: ミコト (ID: 8hgpVngW)
ヒースかわいいっ!
リリーとシロとクーもいいけど!!
ていうか、私魔物だったんですよ!!
てことで、シロ奪って行きます!!(シロ持っていく)
さいなら!!(笑)
- Re: モノクロⅡ ( No.64 )
- 日時: 2010/08/19 12:37
- 名前: 風水 (ID: STEmBwbT)
いきなり義母を殺すなんて、冷徹な部分もあるけれど
リリーにだけは優しいんですね、ヒースは。
モーゼスがヒースのお仕置きに対して動じなかったのが
凄いっす……。
私は、リリーもらっていきますねっ
ばいばいっ
- Re: モノクロⅡ ( No.65 )
- 日時: 2010/08/19 12:39
- 名前: 神無月 (ID: XOYU4uQv)
闇の王・・・森・・・あれ、どっかで聞いたような・・・見たような・・・(黙
うーむ。こういう展開になってくるとますますどんな関係があるのか気になりますね!!
シロが言った「ミリアムの色だわ」ってのに軽く涙しましたとも!(泣←
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