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モノクロⅡ  完結
日時: 2010/08/28 09:04
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)

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未熟者です(-_-)



お客様
      白兎様  ミコト様  神無月様
      くろうさぎ様  風水様 スペシャル様
      出雲様

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Re: モノクロⅡ ( No.146 )
日時: 2010/08/27 18:06
名前: 水妖 (ID: 8hgpVngW)

終わらすんですか!!
楽しみです!

Re: モノクロⅡ ( No.147 )
日時: 2010/08/28 08:18
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)
参照: http://yaplog.jp/akirahayate/

終わらせませんでした………チーン。
うあああ、まあ今日こそ必ず!!

Re: モノクロⅡ ( No.148 )
日時: 2010/08/28 08:31
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)
参照: http://yaplog.jp/akirahayate/

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「あなたは知ってたんでしょう」

城の外。 ミリアムの石碑の裏側で、リリーはアンソニーに訪ねた。
それに答えず、アンソニーは罪悪感に苛まれた表情で、リリーを見つめた。

「どうして教えてくれなかったの? 私だけ蚊帳の外? 家族だったのに、私だけ……っ」

ヒース一人が憎しみを抱え込まなくとも。
両親だけが負い目を感じなくとも。
よかったのに。

「最初から教えてくれた方が、よっぽどよかった!」

わかってる。
アンソニーに八つ当たりしても、何も変わらないことくらい。 
わかってた。
自分が泣いたって、なにもできないことくらい。

「………あなたを、彼に近づけたくなかった」

静かに、アンソニーが口を開く。

「あなたは私にとって、私の存在理由でしたから」
「どういうことよ」
「私はただ、あなたに自分の存在を刻みつけたかっただけ」

リリーを護る。 それが、身寄りのないアンソニーにとっての使命だった。
リリーがいなくては、自分はいらなくなってしまう。
それだけが、彼の生きている理由だったから。

「あなたを失っては、私にはもう何も残らない。 だから、あなたから危険を遠ざけた」

ヒースという人物の情報を一切遮断し、ここまできた。
だけど。
二人は出会ってしまった。

「あなたは私にとって、この世界で一番大切な人だ」
「アンソニー……」
「失いたくないから」

リリーの涙をそっと拭き。 
必死で抱きしめた。

「私の主はあなただけ……。 リリーさま」
「………っ」

漆黒の闇の中、二人は抱きしめあった。
もう、誰も失いたくない。 死なせないと。

「アンソニー。 私、決めたわ」

そして、
一人の少女の中に、決意が生まれた。



「ヒースを、殺す」

Re: モノクロⅡ ( No.149 )
日時: 2010/08/28 08:57
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)
参照: http://yaplog.jp/akirahayate/

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         †第6章†
         愛してるから



「殺せばいいわ」

偉大なる闇の王を前に、シロはそう言った。
恐れなど一つもない瞳。
モーゼスは一瞬、殺すのを躊躇った。 

「なにをしているの? 私は殺せと命じたのよ。 レディーは丁重に扱ってくれてよ? 血で汚れるのなんて、嫌だわ」
「怖くないんですカ?」

モーゼスの問いに、シロは不敵に微笑んだ。

「ねえ、魔物のぼうや。 あなたの傍で倒れている人は、私の大切な人なのだけれど。 どうしてくれるの? 私には、彼しかいないというのに」

モーゼスの後ろに倒れている、黒の魔術師を見て、シロは自嘲気味に言い、吐き捨てるように言った。

「そのまま私を殺してくれた方が、懸命だわ」
「……娘さんも、死にますヨ」
「……そうかもね」

ヒースはモーゼスにここを任せ、一人リリー達を追って行った。

「もしかすると、リアナイトとトルバートの両家が絶えるかも」
「そうでしょうネ」
「でも、でもね。 魔物のぼうや。 あなた、物語を読んだ事はなくて?」

白い部屋で与えられた書物を思い出し、シロは微笑んだ。
何故こんな時に笑えるのかと、モーゼスも不思議に思う。

「あのお伽噺は、王子さまがお姫様のピンチに颯爽と現れて、助けてくれるお話よ」
「……それが、ナニカ?」

と、次の瞬間。
モーゼスの腹部に激痛が走った。 体が痺れ、痙攣する。
驚いて振り向くと、


「王子はお姫様を助ける……だろ?」


クーが、精一杯の魔力を剣のようにして。
モーゼスの腹部を貫いていた。

「貴様……っ」

いつか、随分昔のお話。
クーは覚えていてくれた。


「ええ、そうよ。 王子様はお姫様を助けて、キスをするんだわ」


モーゼスの体が戦慄き、灰のように崩れ始める。
やがて、形などなくなって。
そこにはシロとクーだけが残った。





           †



「アンソニー、命令よ」

迫りくる魔力の圧力に耐えながら、リリーは最後の命令を下す。

「一切手出しは許さない。 たとえ私が殺されそうになっても、よ」
「かしこまりました」

そう、これは最後の戦いなのだ。
リリーにとっても。 そして。

「怖い顔だね」

ヒースにとっても。
闇の中、二人はお互いを見つめ合った。
リリーだって、いっぱしの魔術は使えるのだ。 

血の繋がった敵を前に、リリーは決意した。


「ハーデル王国第一王女、リリー・トルバートとしてここにいる! これより、闇の王ヒース・リアナイトを、刑に処すっ!」


もう、同情なんてしない。
愛情など、わかない。

「あなたがした事は、あまりにも罪が大きすぎる」
「俺を殺すんだ。 ……兄妹なのに」
「黙れ。 私はハーデル王国の王女。 口を慎め」

微かに足が震えるのが分かった。
もう、一発勝負なのだ。

「いいよ。 ……あなたもトルバートの人間だ。 俺の復讐相手となる」

納得したのか、ヒースも頷いた。
さあ、これで。 もう終わりにしよう。

「だああああああああああああああああああああっ」

大きく声を荒げ、リリーは両手いっぱいに己の魔力を集めた。
これ以上、ないほど。
闇だというのに、光が辺りを包み込む。

そして──、

「…………え?」

あっさりと、抵抗もせず、王の腹部に魔力の剣が刺さった。

「………?」

顔を上げ、ヒースの顔を見る。
苦痛に顔をしかめていたけれど、リリーと目があうと優しく笑った。

「え……なん、で………」
「キミに殺されたかったからだよ」

意味が、わからない。

「リアナイトとトルバートに恨みはあるけれど、キミはたった一人の俺の妹だから……。 俺に恐れる事もなく、対等に話してくれた人だから」


──リリー、キミは俺が怖くないの?

──怖くなんてないわ。

嗚呼、そうか。
そういうことか。

──そういえば名前を聞いてなかったわ。 名前を教えて。

あの時点で、もう。 ヒースは自分の妹だと気づいていたのか。

──ヒース。

「………私に殺される事を、望んでいたの? 私だけを、愛してくれていたの?」

涙があふれる。
冷たい骸を抱きしめ、リリーは空を見上げた。
涙が頬を伝って、落ちる。

「あなたは……死にたかったのね」

王の力を器に納められ、地下に監禁され、隔離され。
望まないのに闇の王だと恐れられ。
両親からの愛情も受けず。

そんな彼は、見つけたのだ。

自分をまっすぐ見据えてくれる、一人の少女を。

「……どうしてよ。 言ってくれればよかったのに」

自分を愛してくれと。 自分を見てくれと。
わざわざ無駄な犠牲を出さなくとも。 そう言ってくれれば。

「バカ……本当に、バカ……っ」

後悔だけが胸を覆って。
安らかな彼の額に、そっとキスをした。

Re: モノクロⅡ ( No.150 )
日時: 2010/08/28 09:04
名前: アキラ (ID: STEmBwbT)
参照: http://yaplog.jp/akirahayate/

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           ⅴ
 


廃墟となったリアナイトの屋敷を、リリーは訪れていた。

アンソニーはおらず、一人で。
彼に初めて会った場所を訪れていた。

「…………」

薄暗い地下室。 もう、何年前の事だろう。
きっと忘れる事のない出会いだろうなと思う。

「母さん? ここにいたの」

不意に話しかけられ、振り向いた。
すぐに微笑んで、

「馬車の中で待っててと言ったでしょう?」
「ごめん。 父さんが見てこいって」
「……アンソニーめ」

言って。
笑いながら、そっと息子の頭を撫でる。

「なんだよ。 てかやめてよ。 俺もう15なのに」
「まだ子供よ」
「シロさんも俺をこうやってガキ扱いするんだ」
「だから、まだ子供だって」

綺麗な、銀色の髪を撫でて。
リリーはそっと、そっと、彼を抱きしめた。

「ヒース」

もう、決して離しはしないと。
そう誓ったのだから。



      
 
                 完


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