ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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未来が俺たちにくれた物
日時: 2011/12/14 22:58
名前: ケンチン (ID: r1bsVuJn)

どうも、ケンチンです。
前作で知っている人もいるかと思います。
今回は「未来が俺たちにくれた物」という題名で作っていきたいと思います。題名に特に意味はないんですがね。

よかったら1作目のDifferent Worldsも見てくれるとうれしいです。
といっても、まだ完結してないんですがね。執筆中ですが、ほぼ終わりに近づいています。no=16760だったかな。

さて、本作では3つの架空の国が登場します。

アリビオ
マタン
クルトゥス

スペイン語、フランス語、ラテン語からとりました。

メインはアリビオという国で、この中で主人公や他の登場人物があれこれやります。
位置は南ヨーロッパ、ギリシャあたりだと思ってください。

それではよろしくお願いします。

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Re: 未来が俺たちにくれた物 ( No.37 )
日時: 2012/05/14 21:47
名前: ケンチン (ID: 8cMze6mt)

時橋 翔也さん ありがとうございます。
現在、いろいろと忙しく更新速度が遅いですが、
これからも続けていきますのでよろしくおねがいします。

第21話:尋問 ( No.38 )
日時: 2012/05/14 23:09
名前: ケンチン (ID: 8cMze6mt)

「おいやめろ!何をする」

彼らは捕えたクルトゥス軍兵士を拘束したまま引きずっていく
そして、椅子にすわらせ動けないようにさらに拘束した。

「おまえら、なにか誤解しているかもしれないが、俺はお前たちを助けに来たんだ!
 拘束を解いてくれ。今なら見逃してもいい」

拘束された兵士が必死に訴えてはいるが

「わるいな。お前を解放する気はない。なあに、こちらの質問に答えてくれればそれでいい。それだけだ。」

「質問?それだけならここまでする必要ないだろ!答えてやるから解いてくれ」

「まあそういうなって。」

そう言ってデュラントは拘束されている兵士の前に椅子をおいて座る

「まず名前を聞こう。君の名は?」

「お、俺はジェフだ」

「ジェフか。俺はデュラントだ。よろしく」

デュラントは胸ポケットから煙草を取り出し火をつける。

「さてジェフ、単刀直入に言う。お前ら、この国に来た本当の目的はなんだ?」

「本当の目的?何を言う。さっきも言ったが君たちを助けだすのが—————」

「もうそれはいい。こっちだってわかってる。」

ここで短髪女ミーナが話に割って入る

「救出はあくまで表向きの話。その裏に別の目的がある。そうでしょ?」

「はぁ?な、何を根拠にそんなこと言ってるんだ」

ジェフは否定しているものの、様子がさっきよりあせっている。

「なあジェフ。おかしいと思わないか?俺は思ったぜ」

「何がだ?」

「明らかに来るのは早いんだよ。UCSが暴れ始めて今日で4日目だ。1日目で軍は壊滅状態に追い込まれ
 クソ機械どもはやりたい放題やってる。助けに来てくれるのは大いに結構だが、早すぎるんだよ」

そういえばそうだ。国が一つ壊滅しそうな危機に追い込まれている。
全世界が今のアリビオの現状を知っているはずだ。しかし、誰も来てはくれない。
アメリカや国連は

”UCSへの不明瞭な点が多すぎる。有効な対処法や安全な上陸地点、方法が見つかるまで軍隊は動かせない”

と言ったまま一向に進展がない。要はこの国に来たくないのだ。
当たり前ではある。相手は今まで戦ったことのない無人兵器だ。
何も知らないまま戦闘を行えば、多くの死傷者を出し、
ただ損害を増やすだけで足手まといになるだけだ。

「大規模な艦隊。多くの戦車や装甲車を積んで上陸。これだけの規模の軍を動かそうとすればかなりの時間が必要だ。
 しかも、途中でUCSに攻撃されれば大損害は確実。慎重に検討するべきだが、そうなればもっと時間がかかる」

言っていることは確かだ。俺は自分のことで精一杯だったから全然そんなこと気づかなかった。

「だから俺は疑問に思った。そこで一人、お前らの偵察をさせに行かせた」

デュラントは何やら長細いものを取り出した

「レコーダーだ。お前らの会話を集音マイクで拾って録音した。何やら興味深いことを喋ってるみたいだな」

レコーダーの再生ボタンを押すと、二人の男性の声が聞こえてくる

『しっかし、えらい大胆なことを決めたな。もっと別の方法があると思うけど』

『俺もだ。正直いつかバレると思ってる。そうなったとき俺らの国はどうなることやら』

『バレそうになったらそいつを拘束していいんだろ?場合によっては射殺してもいいとか』

『まあ軍が動かせるうちにやりたいのはわかるけど、ここまでひどい状態になるとは』

『アリビオと話し合いすらしてないもんな』

『そうそう。後先考えずに何でも決めんなってーの』

『今回の救出はただの名目だしな。気の毒なアリビオ人だ』

『まったく、ひどいもんだぜ・・・』

ここまで再生してデュラントが停止ボタンを押す。

「何がバレるとやばいんだ?なあ教えてくれよジェフ」

「し、知らねえよ!俺はこんなの」

「今回の救出は名目だってよ。じゃあ本当は何しに来たんだ?」

「俺はただここの人たちを救出しろとだけ言われている。それ以上は何も知らない!」

「そうか」

「ああ。少なくとも俺は何も知らされていない。だから聞いても無駄だぞ」

デュラントはレッグホルスターからMk23を抜き取り、立ち上がる。
そして銃口をジェフの左人差し指に向け

「10数える。それまでに答えなければ指を撃ち抜く。100秒ですべての手の指がなくなると思え」

殺すぞ!と脅すよりは致命傷にならない部位を破壊する、と脅した方が相手により大きな恐怖心を植え付けることができる。
おまけに一人狙撃して殺している。デュラントは本気だ。
このまま黙っていれば確実に指がなくなるだろう。

「10」

「だから知らないって言ってるだろ!!」

「9,8」

「本当に何も知らされていないんだ!」

「7,6,5」

「なあ頼むよ!信じてくれ」

「4,3,2,1」

「わかった!言うよ!い、言う。だから撃つな」

「いい子だジェフ」

「ああくそ!言えばいいんだろ!」

第22話:真実 ( No.39 )
日時: 2012/05/22 22:23
名前: ケンチン (ID: 8cMze6mt)

「なあシュタール」

「どうした?ウィット」

「もうだめだな俺たち」

「あきらめるなよ。俺たちはまだ生きてる」

「じゃあどうしろっていうんだ?何かプランでもあるのか?」

「いや、いまは無いが・・・」

「もう無理なんだよ!唯一の希望も偽りだろ!?」

「落ち着けウィット」

俺とウィットは応接室で二人っきりだ。
ウィットはひどく混乱していた。
まあ、クルトゥス政府の思惑を知った後だ。
仕方がないのかもしれない。
ジェフはデュラントに脅されついに口を割った。
彼が話した内容はこうだ。

昨年の2019年11月、クルトゥスにある疑惑がかけられた。
それは不正に核兵器開発を行っているのでは?というものだった。
発端はアメリカの軍事衛星がプルトニウムを備蓄するためだと
思われる施設をクルトゥス国内で発見したためである。
クルトゥスには原発がいくつかあり、それらはIAEAからの
厳しい定期視察が行われているため、ウランを所持することや
プルトニウムを生成することができた。
しかし、発電という利用目的はあくまでも表向きの話だったらしい。
11月に怪しい施設が発見され、追求を受けたクルトゥスだったが、
核開発を一切否定した。そこで、IAEAが調査のためチームを
現場に派遣したいと要請した。しかしクルトゥス側は、IAEAの視察
または他国の調査団の受け入れを拒否した。
その後、アメリカは衛星や高高度偵察機を使いクルトゥスの監視を続けてきた。
備蓄施設以外にも、ミサイル発射台やその格納施設、ついにはICBM
の姿まで確認することができた。

核開発が確実だと分かったアメリカは、国連加盟国に対してクルトゥスへの
輸出入禁止および資産凍結を行うよう命じた。経済的制裁を行うのだ。
禁止品目にはクルトゥスが80%輸入に頼ってきた石油が入っていた。
それ以外にも輸入に頼ってきたクルトゥスにとっては致命的であった。

和解するためには、核開発を認めたうえで、全ての核ミサイルの破棄
および施設の封鎖。ウランなどの核燃料の禁輸および使用停止など様々
な誓約が行われることは確実であった。しかしこれまで莫大な資金をつぎ込んだ
だけあって、核関連をすべて破棄することはできなかった。
そこで目をつけたのがアリビオだ。
アリビオはここから近く、しかも石油産出国であるため、油田も持ってる。
しかしアリビオは制裁参加国であり、話し合いでは無理だ。
そのため力ずくで奪おうと考えた。

陸海空総動員で襲撃すればアリビオは落とせただろう。
だが今はアメリカに監視されている。制裁を受けている今、
軍隊を動かせば他国に対して戦争を仕掛けるのでは?と
思われるのは当然だ。

しかしアリビオにはUCSなるものが大量に生産されている。
そこでUCSを使えないか?と考えた。
クルトゥスはUCSの開発者の中からAIを担当した
技術者数人を無理やり国内に連れてこられ、
プログラムの一部を書き換えるように強要する。
こうして、無理やり作らされたのは
単純に動く人や物を破壊するプログラムだった。
その後、UCSを管理しているホストコンピュータ
をハッキングし、プログラムを書き換えた。
そして12月10日、それらが一斉に動き出した。

クルトゥス軍が早くアリビオに上陸できたのも、
あらかじめ自分たちで計画していたためであった。
それに救出目的と偽ることで軍も動かせることが
できたのだ。

「まさか、助けに来た連中が敵だったなんて・・」

この話を聞いた後、ウィットはひどく混乱していた。
俺もそうだ。唯一の脱出のチャンスだったのだから。

第23話:仲間 ( No.40 )
日時: 2012/06/09 00:14
名前: ケンチン (ID: 8cMze6mt)

全てはクルトゥスの思惑だった。
UCSを暴走させることにより、クルトゥス側は損害を全く出さずにアリビオに上陸できたのだ。
しかし、ここで一つの疑問が思い浮かぶ。
クルトゥスはUCSに無差別攻撃を行うようプログラムを改ざんした。
この場合、上陸してきたクルトゥスにも攻撃するはずだ。
しかしやつらは攻撃されず、悠々と街中を散歩してやがる。
この疑問は他の人も思ったらしく、デュラントが問いただした。

どうやらやつらは一人一つずつ赤外線ストロボマーカーを所持しているらしい。
捕えたジェフの荷物からも出てきた。
このストロボマーカーを所持している者に対しては攻撃しないようだ。
さすがにそのあたりは考えてあったか。自分たちも攻撃されたら意味がない。

クルトゥスはアリビオの油田やその他の物資が目的でやってきた。
救世主がまさかの敵だよ。さて、これからどうするか。
このことを知らないふりして、クルトゥスに助けてもらうか。
俺たちは一般人だ。やつらにとって害はない。
だが、思惑を知っていると分かれば殺されるな。間違いなく。

「大丈夫か?ウィット」

「ああ、もう大丈夫だ・・」

「そりゃよかった」

「悪かったな、取り乱したりして」

「いいよ。気にするな」

「まあ会えてよかったよ、シュタール。もう死んでるかと思ってたから」

「お前より先にくたばるかよ」

再会できたこと自体奇跡に近い。
まああの地獄の中、互いに生きているだけましなほうだ。

「し、失礼しまーす・・」

いろいろ考え込んでいると、ディアナが部屋に入ってきた。

「ディアナか。どうした?」

「これ返してもらったから渡そうと思って」

ディアナは両手に俺の着ていたタクティカルベストとG3ライフル,あと予備弾と水、食料が入ったバックを持っていた。
そういえば拘束時に没収されたっけ。

「そうか、ありがとう」

「えーっと、そちらは確かお友達の・・」

「ああ、こいつはウィット。俺のダチで同じ学部だ」

「そうですか。よろしくおねがいします」

「で、ウィット。こいつは———」

「知ってるよ。ディアナさんだろ?」

「え?ああ、そうだ」

「私のこと知ってるの?」

「まあ同じ学部生だし」

俺はウィットに詰め寄り、小声で

「なんでしってんだよ。俺は彼女に言われるまで気づかんかったぞ」

「おいおいシュタール。入学時、かわいい女子をチェックするのは当たり前だぞ」

「はぁ?何やってんだよお前」

「ディアナさんかわいいし、文学系でおとなしいところも俺好みだ。b」

「そうかよ」

「お前こそ、なんで一緒にいるんだよ」

「お前と別れたあと、ディアナと偶然会ったんだ。彼女困ってたから助けてやったんだよ」

「なにぃ!?お助けした・・だと?」

「ああ、悪いか?」

ディアナがかわいいか。まあ確かに悪くはない。
ただ俺はあまりその辺は気にしないが。

「ねえ、何話してるの?」

「いや、なんでもない」

ディアナが割って入ってきたので話は中断
と、ここでまたドアが開き

「やっほー!」

やたら元気な声が聞こえてきた。
入ってきたのは黒髪ツインテールの女の子だ。
そういえばこの子、俺たち二人がここに連れてこられた時、
部屋の端っこのほうにいたっけ。

「ディアナさんとシュタールさんだよね。」

「ああ、そうだけど」

「私はララ。ここの人たちと同じメンバーだよ。よろしくね」

そういうと彼女は、

「うお、ちょっと!」

「うへへ〜」

いきなり腕に抱きついて来やがった

「なんなの君は!」

「やっぱウィットとは違うねー。私、あなたのとこ気に入っちゃった」

「はぁ?」

「ウィットったらここに来た時すっごいおびえてたけど、あなた、捕まっているのに毅然としてて、すごくかっこよかった!」

「そうかよ。わかったから離れてくれ」

俺はララを振りほどこうとするが、離れてくれない。
すると後ろからうなり声が聞こえてきた。

「うぅー」

ディアナだ。

「ちょ、ちょっと。シュタールが困ってるでしょ。離れなさいよ」

「えー、別にいいじゃん」

よくない

「私、シュタールさんみたいな男の人好みだもん」

「知らないわよあなたのことなんて」

「もしかして嫉妬してるの?ディアナさん」

「なっ、べ、別に嫉妬とかそんなんじゃなくて、彼が困ってるから!」

「あせってるー。やっぱりそうなんだ」

「だから、違うっていってるじゃない!」

なぜかあせった様子のディアナだが、

「ちょっとディアナ!君まで・・・」

彼女も俺の腕にひっついてきやがった。
何がしたいんだ彼女らは。

「だから離れなさいって!」

「やーだー。ふひひ」

おまえら、俺を横に伸ばそうとしているのか?

第24話:トラウマ ( No.41 )
日時: 2012/06/09 00:18
名前: ケンチン (ID: 8cMze6mt)

「ハハハ、そうか。ララに気に入られたか」

「笑いごとじゃないですよ、ダニエルさん」

翌朝、俺はダニエルと建物の屋上にいた。
二人だけだ。

「べつにいいじゃないか。嫌われるよりかはましだろ?」

「そうですけど・・・」

朝、屋上にいってみるとすでにダニエルが座っていた。
俺は昨日のやたらテンションの高いララについて話をしたのだ。

「初め彼女はあんなに明るくなかった」

「そうなんですか?」

「ああ」

ダニエルはうつむいた。すごく複雑な表情だ。

「最初、彼女をみつけたのは死体の山の中だ」

「えっ・・?」

「ララは中学校のグラウンドで発見したんだ。他の生徒や教師だと思われる死体の真ん中でね」

ダニエルはララのことについて話してくれた。
UCSに襲撃された昼過ぎ、ララのクラスは体育の授業のため全員外に出ていた。
あいにくその日に限って合同体育だったらしく、多くの生徒がグラウンドに集まっていた。
そこをUCSが襲撃したのだ。
突然の出来事にララは動くことができず、その場にしゃがみこんだ。
目の前では仲のよかった友達が次々と殺されていく。
しかも尋常な死に方ではない。20mm弾や84mm対戦車砲で攻撃されたのだ。
彼女は何もできず、ただみんなが殺されていくところを見ているしかなかった。

動かなかったのが功を奏したのか、彼女は奇跡的に生き残った。
UCSが去った後、両足のなくなった友達が死にたくないと
と彼女に懇願してきたが、何もすることができず目の前でその子は死んだ。
そしてその日の午後5時、ダニエルがララを見つけたのだ。

「その時のララは魂が抜けたかのような、とにかくひどい状態だった」

「・・・」

その後ダニエルとララはデュラントやミーナ、その他の生存者と出会い、
行動を共にしてきた。

「はじめ彼女は何も話さなかった。あんなことがあった後だ、仕方がない。
 しかし、他の仲間と触れ合ううちにララは少しずつ話すようになった。
 今では過去を忘れようと、努力している。君にハイテンションで接したのも
 そのためだよ。まあ、悪く思わないでほしい。」

「そうだったんだ。全然そんな感じしなかったですよ。すごく元気だったから。」

「精神面でとても強い子だよ」

中学生にしてあんな出来事、トラウマってレベルじゃない。
そこから立ち直るのはとても難しい。
だが彼女は以前の自分を取り戻そうと頑張っている。
だからあれだけ元気に振舞っていたんだ。
しかし俺はそれを嫌がってしまった。離れてくれと。
なんか悪いことをしてしまったな・・・



「こんにちわー!」

その日の昼過ぎ、俺は自室でG3ライフルの清掃をしていた。
この部屋は俺とウィットのために用意してくれたものだ。
そこへララが入ってきた

「ララ、どうした?」

「暇だったからきちゃった。あれ、ウィットは?」

「あいつは食料調達に連れて行かれたよ」

今は俺とララだけだ。俺は持ってきた水と食料を提供したから
買い物係を免れた。

「そうなんだ。ねぇねぇお兄ちゃん」

「お兄ちゃん・・・?もしかして俺のこと?」

「そだよ。あたしずっと一人っ子だったからお姉ちゃん、お兄ちゃんにあこがれてて。
 呼んじゃだめ・・かな?」

妹でもないのに兄呼ばわりってのもおかしなもんだが、

「別にいいよ」

「やった!」

「だけど、年上ならウィットもいるけど」

「えー、だってウィット頼りなさそうなんだもん」

「ハハッ、そうか。まあ確かにそうよだな」

まあ俺もそこまで頼りなるとは思わないけど・・

「そうだララ。俺も暇だからいいもの見せてやるよ」

「え?なになに?」

「俺の向かい側に座って」

俺とララは机を挟んで向かい合う形となる。
俺はポケットの中から硬貨を一つ取り出して左手に軽く持つ。
それをララに見せた後、右手で硬貨をつまみ、横に移動させる。

「さあ、コインはどこでしょう」

「そんなの右手にきまってるじゃん!」

そういったので右手を広げて見せてやる

「え!?ない!なんで?もしかして左手?」

左手も広げる

「えー!こっちにもないよ!どこにいったの?」

「ここだよ」

机の下から硬貨を取り出す。

「うそだー!ありえないよそんなのー。どうやってやったの?教えてお兄ちゃん!」

「いやだ。自分で考えてみな」

「わかんないよー。教えて!」

まったく考えようとしない。ギブアップはええよ
実際はとても簡単なトリックだ。右手に持つふりをして
硬貨を服の上に落しただけ。
座っているから硬貨はちょうど腹のあたりに落ちる。
机があるからララからはまったく見えないってわけだ。

「少し考えればわかるって」

「あたしもやりたい!いますぐ教えてー!」

「わかったら教えてやる」

「それ意味無いじゃん!」

「あのな、手品ってのはタネや仕掛けを考えるからおもしろいんだろ?」

「教えてくれなかったら、お兄ちゃんに寝込みを襲われたって言いふらしてやる。けだものー」

「ちょっとまて!いつ俺がそんなことした!嘘で脅すとか卑怯だろ!」

「卑怯もなにもないのだ〜」

結局俺は彼女の脅しに屈し、タネを教えてしまうのだった。


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