ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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未来が俺たちにくれた物
日時: 2011/12/14 22:58
名前: ケンチン (ID: r1bsVuJn)

どうも、ケンチンです。
前作で知っている人もいるかと思います。
今回は「未来が俺たちにくれた物」という題名で作っていきたいと思います。題名に特に意味はないんですがね。

よかったら1作目のDifferent Worldsも見てくれるとうれしいです。
といっても、まだ完結してないんですがね。執筆中ですが、ほぼ終わりに近づいています。no=16760だったかな。

さて、本作では3つの架空の国が登場します。

アリビオ
マタン
クルトゥス

スペイン語、フランス語、ラテン語からとりました。

メインはアリビオという国で、この中で主人公や他の登場人物があれこれやります。
位置は南ヨーロッパ、ギリシャあたりだと思ってください。

それではよろしくお願いします。

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第42話:トラップ ( No.67 )
日時: 2012/08/25 00:10
名前: ケンチン (ID: KOGXbU2g)

「ランス、そっちはどうだ」

「準備完了。いつでもどうぞ」

エリックは無線でランスと通信している。

「うまくいくんですか?」

不安ながらも聞いてみる。

「問題ないさ。殺しそこねたらランスがやる」

午後5時、俺たち4人は2車線道路沿いの建物3階に来ていた。
ランスだけ別の場所でMG4を構えて待機している。
エリックがカップ麺を食い終わったあと、話があるといって全員集まった。
ある作戦を実行するとか。それは、この通りに敵をおびき出し
そいつらからマーカーを奪うというもの。
既に手はうってあるらしく、もうすぐここに到着するらしい。
無線の裏には周波数表が貼ってあった。そこから適当な敵分隊に連絡を入れ、
エリックが敵になりすまし
『目標(俺たち)を発見したが交戦状態となり、負傷者が多数いる。
 目標はロスト。本部への連絡はあとだ。とにかくはやくここに来てくれ』
と無線で知らせる。
大勢こられても困るので、1分隊だけ来るようにあえてせかす。
そしてここに来たところを襲撃するというもの。
いくら待ち伏せでも10名以上はいる。さすがにやばいんじゃない?
とおもったが、エリック曰くすぐにかたがつくとか。
しばらくすると、軽装甲車の音が近づいてくる。
負傷者搬送用に持ってきたのだろう。
3台のティーグルが角をまがり、俺たちが待ち伏せている
2車線道路へとはいる。

「さあこい。もうちょっとだ」

ティーグルから降りた13名は周り全方位を警戒しながら
ゆっくりとこちらに向かってくる。

「オヤスミの時間だ。Good night」

角を曲がって最初の十字交差点手前に差し掛かったとき、
突然、敵を挟むようにして道の両サイドから連続して小規模
な爆発が起きた。すでにトラップを仕掛けてあったのだ。
あたりは一瞬にして煙に包まれる。
しかし、あれぐらいの爆発では足りないのでは?
だが、煙が晴れるとそこには13名の死体が転がっていた。

「俺が撃つ必要ないみたいだな」

ランスから無線がはいる。

「対人用としてはこれで十分だ」

俺たちは爆発のあったところまで行ってみる。

「釘?」

死体には何本もの釘が刺さっている。

「余ったC4爆薬がすくなかったからな。
 鉄パイプで密閉して、さらに釘を大量に入れて
 対人用に威力を上げたんだ」

うわ、これはひどいな・・・
大量の釘が刺さった死体は見るに耐えなかった。
ディアナとララは後ろを向いている。

「あったぞ。これか?」

合流したランスが躊躇せずにバックを漁る。
例のマーカーを手にしていた。

「それだ。ほかにも無傷のやつがないかどうか探せ」

3人で漁った結果、使えそうなマーカーを5つ拾った。
ちょうど人数分だ。

「よかった。これでもうUCSを怖がる必要がない」

ほっとした。クルトゥス軍以外に命を狙われなくて済む。

「よし、もう用済みだ。さっさと戻るぞ」

俺はディアナとララに近づき

「もう終わったよ。戻ろう」

そういってディアナの手を握る。
マーカーを手に入れたんだ。俺たちはきっと助かる。
すごく心の中で強い希望が見えた。
だが、その場から立ち去ろうとした時、
遠くから銃声が響いた。これは・・・

「スナイパーだ!!はやくこい!!」

狙撃独特の銃声にエリックがいちはやく気づき、
叫ぶ。しかし

「きゃああああああ!!」

すぐ後ろでララの悲鳴が聞こえた。

「ララ!!」

振り向いて彼女に駆け寄る。
ララは被弾しており、地面に倒れていた。

「うそだろ・・!?そんな!!」

こんなことって・・!!!
さらに最悪な事態が起きていた。
狙撃に使った銃はこの現状からしておそらく対物ライフル。
直径12.7mmの大口径のものだ。

ララの右足、付け根から下が無かった。

第43話:別れ ( No.68 )
日時: 2012/08/29 22:47
名前: ケンチン (ID: KOGXbU2g)

「ここにのせろ」

狙撃されたあと、ララを抱えて
近くのガソリンスタンドの販売所の中に入った。
エリックがテーブルの上にある
レジや小物を払いどけ、場所を作り、
その上に負傷したララをのせる。

「ララちゃん、しっかりして!!」

ディアナはララの手を強く握る。
呼吸が荒い。とても苦しそうだ。
彼女の体温もどんどん下がっていく。
右足は付け根から下が切断されており、
そこから大量に出血している。
すこしでも出血を抑えようと、
足を上に向けたが無駄だった。

「くそ、どうすれば!」

どうすればいいんだ。気持ちだけが焦っていく。
考えてもいい手段が見つからない。止血も無理だ。
これはもう、助からない。

ララは死ぬ。

「おにい・・ちゃん」

彼女がうっすらと目を開ける。

「しゃべるなララ!出血が増す!」

「お兄ちゃん、あたし・・・死ぬんだね」

ララは必死に言葉を口にしていた。
とても穏やかだ。恐怖感が感じられない。
死ぬことを受け入れているような、そんな感じだった。

「ごめんね・・・あたし・・・約束、守れそうに・・・ないや」

「なんだよそれ!言い出した本人が破るのはダメだろ!!」

「そう、だよね・・・だけどこれは、罰・・・なんだよ、きっと」

「罰?」

「友達を・・・見捨てたの・・・学校にいたとき・・・みんなあたしに
 ・・・助けてって・・・だけどあたし・・・何もできなくて」

ララが学校で襲撃された時に話か。奇跡的に生き残った彼女に
重傷を負った生徒が助けを求めたとか。
だけど何かできるわけでもなく、結局自分以外みんな死んだ。
以前ダニエルから聞いた話だ。

「だから・・・これは・・・罰、なんだよ」

「なんだよそれ、そんなの納得できるかよ!」

「あたしは・・・もう、十分・・・生きたと思うの・・・
 だからお兄ちゃん・・・逃げて・・・あたしにかまわず・・・逃げて」

「そんなことっ・・!!」

ララは眠たそうに目を細める。
そして最後の力をふりしぼり、声を出す。

「お姉ちゃん、お兄ちゃん・・・今まで・・・
 ありがとう・・・。大好き・・・だよ!」

その言葉を最後に、ララはそのまま糸が切れるように
力尽きた。

「ララちゃん!いやああっ!」

俺はララに心臓マッサージと人工呼吸を繰り返す。

「もどってこいよ!ララ!」

だが、そんな俺にエリックが

「おいシュタール」

そう言って肩に手をのせてくる。
俺はそれを鬱陶しいという感じに
払いのけるが

「もうやめろシュタール!!」

エリックに無理やりやめさせられ、
壁に押し付けられる。

「お前だってわかってるだろ!もうやめろ」

「くっ・・!」

わかってるさ!彼女は生き返らない。
もう死んだ。わかってる。
だがな、何もせずにはいられなかったんだ。

第44話:盲点 ( No.69 )
日時: 2012/09/02 23:51
名前: ケンチン (ID: KOGXbU2g)

俺たちは潜伏先の喫茶店へと帰った。
あのあと、ランスの提案で、ウィットが死んだ時と
同じようにララを埋葬することになった。
その後、すぐにここに戻ってきたわけだ。
スナイパーに事の一部始終を見られたからな。
ガソリンスタンドと襲撃地点が近かったため、
敵の増援が来る前に退散ということだ。

みんな静かだった。静寂があたりを包む。
ララが死んでから誰も話そうとしない。
俺にいたってはずっと後悔していた。
ララは死ななくて済んだはずだと。
元々、敵に襲撃されたという偽情報を流したんだ。
警戒のためスナイパーを配置していてもおかしくはない。
なぜそこまで予想できなかったのか。
それに、マーカー回収なら俺たち3人だけで
できたはずだ。彼女たちは連れてくる必要
はなかった。あの時、俺は浮かれていたんだろう。
思っていたよりも容易くマーカー手に入れることが
できたからな。だから、彼女の死には俺にも原因があると、
ずっと頭の中でそう思っていた。

「はぁ・・・」

ため息ばかりがでる。

「これは・・・」

エリックが奪ったマーカーをいじりながら
困ったような声を出す。

「そいつの調子はどうなんだ?」

ランスがエリックに近づく。
俺もマーカーの様子が気になってエリック
のところへと向かう。

「まさか・・・これ」

「どうした?」

「これ、使えないぞ・・・」

使え・・ない??

「どういうことなんですか!?使えないって!」

「ロックがかかっている。暗証番号を打ち込まないと
 起動しない」

「そんなっ!」

俺はエリックからマーカーを受け取り、見てみる。
一見、番号を打つような場所なんか無いように見えるが

「裏のカバーを外してみろ」

エリックに言われ、マーカーの裏にあるカバーを取ってみると、
そこには電卓のように1〜9のキーが並んでいた。
ほかのマーカーもそうだった。
当然俺たちが番号を知ってるわけがない。
以前、捕虜にしたジェフからマーカーを取り上げたが、
その時は誰も番号の存在に気づかなかった。
それに、使い方も聞いていない。
俺はてっきり、持っていればそれだけでいいと、
そう思い込んでいたんだ。

なんてこった・・

これじゃあ、あっても使えない。
ただのゴミだ。

「なんでだよ・・・なんで使えねえんだ!!
 じゃあララの死はなんだったんだよ!!
 こんな使えないゴミのために彼女は死んだっていうのか!?」

そんなの、ただの無駄死にじゃないか!!
こんなもののために・・・!!
マーカーをエリックに返し、2階の自室として
使っている部屋へと向かう。俺はもう精神的に限界だった。

第45話:可能性 ( No.70 )
日時: 2012/09/07 23:42
名前: ケンチン (ID: KOGXbU2g)

翌朝、全然眠れなかった俺は1階へと降りる。
そこには今だにマーカーをいじっている
エリックの姿があった。

「寝てないんですか?」

「すこしだけ寝た」

番号を打ち込んでいる。
まさか、ずっと使えないか試していたのか?

「解除できないか試しに色々と入力していたんだが」

そういってため息をつく。

「だめだったんですか」

「ああ」

やっぱり簡単にはいかないみたいだ。
俺たちは黙ったまま、テーブルを眺めていた。

「なんか、すみませんでした」

「どうした。いきなり謝ったりして」

「元々、マーカーを取りにいこうって言いだしたのは
 俺じゃないですか。使えるかどうかもわからず、
 ただ俺は奪いに行こうと」

一方的にエリックやほかのみんなを巻き込んで、
さらにララまで死なせてしまい、そして収穫は0だ。

「気にするな。もう終わったことだ。それに
 ロックが掛けられているのは、お前のせいじゃない」

飲むか?とエリックが水を差し出してくれる。

「ありがとうございます」

しばらく二人で話していると、外から何やら声が聞こえてきた。
すごく、言い争っている感じだ。
エリックがそれに気づき、窓の外を覗く。

「誰かしゃべってる」

「見えます?」

「いや、ここからは見えないな」

そういってエリックはドアを少し開けて周りを見渡す。
誰もいないのを確認すると、

「ちょっと!危ないですよ」

「もしかしたら生存者かもしれん。確認だけしたい」

そのまま外へと出て行った。仕方なく、俺も彼の後ろに付いていく。
声のする方へと進んでいくと、人影を二人見つけた。

「敵、ですよね?」

「そうだな」

そこにいたのはクルトゥス軍の2名だった。
何やら声を荒げて言い争っている感じだ。
俺は耳を澄まして会話を聞いてみる。

「だから僕は反対したのに!元々こんな作戦
 無理があるに決まってる」

「なあ、もうよそうぜそういうのは」

「お前はおかしいと思わないのか?彼らが怒っても
 当然だろ」

「まあそうだけど、お偉方には逆えないだろ。
 確かに反対している奴らは結構いるけど、
 もうそいつらも割り切ってるし、今でもグチ言ってるの
 お前ぐらいしかいないぞ」

一人は怒っている感じで、もう一人は冷静だ。

「まあ、お前のことは聞いた。気の毒にな。
 怒るのもわかるが、どうしようもない」

「それだけじゃない!今の生存者の扱いはどうだ。
 話と違うじゃないか!」

「あぁ、確かにな。あれはいくらなんでも・・・」

「騙して、殺して。これ以上はもう限界だ!」

「そういうなよ。お前だけじゃないんだからさ」

そういって一人が離れていく。

「まあ、そこでよく考えて落ち着け。先に戻ってるから。
 あと、そういうグチを他で言うなよ。面倒くさくなるからな」

残された一人はそこで立ち尽くしていた。
彼はどうやらこの一方的な侵略に対して反対していたみたいで、
それについて怒っていたみたいだ。
彼自身はこの現状は好ましく思っていない。
個人的に反対してるんだ。

ということは、もしかしたら・・・

去っていったもう一人が視界から完全に消えたのを確認して
俺は飛び出した。
残っている敵兵士に向かって。

「おい、少年!まて!」

エリックの声が後ろから聞こえるが、
止まることなく、彼のすぐそばまで近寄る。

「誰だ!」

当然、気づかれて銃を向けられる。

「お前、確か例の・・・。そこを動くなよ!」

クルトゥス軍に俺らの顔は完全にバレているみたいだな。
だが、俺は膝をついて

「お願いです、助けてください!!」

敵に向かって土下座をしていた。

第46話:説得 ( No.71 )
日時: 2012/09/14 21:01
名前: ケンチン (ID: KOGXbU2g)

クルトゥス軍の一方的な攻撃で街はめちゃくちゃ。
友達は殺され、家族の安否も不明。
楽しかった日常を全て奪っていった。
そんな相手に対して俺は土下座をしていた。
屈辱だった。悔しかった。
だが、今はそんなこと言ってられない。
俺はこの際、プライドやらなんやらを全て捨てて
どんな手段でもいいから自分に課せられた使命を遂行したかった。
もし、俺たちが死んで何もすることができなかったら、
死んでいった仲間たちに申し訳ない。
UCSを引き止めたトッド上等兵、デュラントやその他の仲間たち、
ウィットやララ。彼らがいたから今の俺たちがいるんだ。
絶対に死ねない。俺はなんとしてでも国外に脱出する。
そう決めたんだ。

「な、何だお前いきなり・・・」

敵は俺の奇行に動揺していた。
いきなり出てきて土下座なんてされたらそら困るわな。

「知っての通り、俺たちはこのメモリーカードを持って
 ここから離れるつもりです。だからその———」

「その手助けをしろってことか?」

「・・・はい」

「お前、まさかさっきの会話聞いていたのか?」

「俺からも頼む。協力してくれないか」

いつのまにか俺の隣にエリックが立っていた。

「別に捕虜にしようとか思っているわけじゃない。
 この戦争に反対してるんだろ?俺たちなら
 この現状に終止符を打てるかもしれないんだ」

「だが、俺はただの一兵士だ。作戦を中断させる
 力なんて持っていない。それにもしバレたら殺される・・・」

「俺たちについて来いとは言わない。
 ただ少し協力してくれるだけでいいんだ。
 その後はもう何も頼まない」

その後、俺たちは何度も頼んだ。
敵兵はしばらく悩んだあと、俺を見て

「何をすればいい?」



敵兵を連れていつもの場所へと戻る。
中に入るように促すが、

「仲間がいるんじゃないだろうな」

どうも疑っているらしく、入ろうとしない。

「誓って何もしないですから」

そう言って俺は後ろから背中を押して
彼を店内へと入れる。

「手助けってのはこいつだ」

エリックが持ち出したのは、使えないストロボマーカーだった。

「それは!」

なんで持っているんだ、という感じで驚いている。

「そうか、やっぱりロメオ分隊を襲撃したのはお前らだったのか・・・」

「ああ」

彼の表情が険しくなっていく。
仲間を殺されたんだ。怒っているのだろうか。

「ちょっと見せてくれないか」

そう言って近づき、左手でマーカーを受け取り

「ぐっ!」

「ロメオ分隊にはな、親友がいたんだよ!!」

右手でエリックの胸ぐらを掴んだ。
だがエリックは抵抗しようとせず、なされるがままだ。

「ほう、そうだったのか。だからなんだ?」

「なん、だって!?」

俺が止めに入ろうとしたが、エリックがそれを制止する

「だからなんだっていったんだ。謝って欲しいのか?」

掴まれたまま冷静に返答する。予想外の答えだったのか、
相手は言葉に詰まっている

「言っておくがな、俺は一切謝る気はない。
 俺たちだって仲間を殺された。16歳だった彼女の右足を
 対物ライフルでバラバラにされたんだ。お前らにな」


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