ダーク・ファンタジー小説 ※倉庫ログ

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未来が俺たちにくれた物
日時: 2011/12/14 22:58
名前: ケンチン (ID: r1bsVuJn)

どうも、ケンチンです。
前作で知っている人もいるかと思います。
今回は「未来が俺たちにくれた物」という題名で作っていきたいと思います。題名に特に意味はないんですがね。

よかったら1作目のDifferent Worldsも見てくれるとうれしいです。
といっても、まだ完結してないんですがね。執筆中ですが、ほぼ終わりに近づいています。no=16760だったかな。

さて、本作では3つの架空の国が登場します。

アリビオ
マタン
クルトゥス

スペイン語、フランス語、ラテン語からとりました。

メインはアリビオという国で、この中で主人公や他の登場人物があれこれやります。
位置は南ヨーロッパ、ギリシャあたりだと思ってください。

それではよろしくお願いします。

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第52話:ハンガー ( No.77 )
日時: 2012/10/25 22:26
名前: ケンチン (ID: vAHEHJN2)

「紹介するね、こちらがエリックさんとランスさん、あと私と同じ
 大学生のシュタールよ」

ディアナは母親に俺たちを紹介する。
彼女の母は

「娘がお世話になりました」

そういいながら頭を深く下げる。

「シュタールは異変が起きてからずっと私のことを守ってくれたのよ」

ディアナは俺の前に立ち

「ありがとうシュタール。あなたには本当に感謝しているわ」

「なんだよ、いきなりあらたまって。いいってそういうのは」

「いいえ、言わせて」

彼女は俺の手を取り

「命がけで私を守ってくれて、ありがとう」

そう言いながら微笑んだ。
こっちもすごく照れくさいな・・・

「ど、どういたしまして」




「そうか、ディアナちゃんの案内でここに」

「ああ。飛ばせる機体が残っていたら、と思ってな」

ディアナ以外の俺たち3人はリアンさんと事務室
で話し合っていた。ディアナはしばらく母親のそばに
いたいとか。

「飛ばせる機体かぁ。ほとんど破壊されてしまったからな」

「ないんですか?」

「飛行していた機体は1機も帰ってきていない。おそらく
 撃墜されたのだろう。ここに残っていた機体も全てやられた。
 外に出て確認していないからはっきりとはわからんが」

この状況で機体の確認なんかできないよな。

「滑走路は無事なのか?」

「そこは問題ないみたいなんだが・・・ちょっとまてよ」

リアンさんが何か思いだしたようだ

「そういえば、古い機体がハンガーに入ったままだったような・・・」

「古い機体?」

「ああ、老朽化にともなって最近引退した飛行機だ」

「本当か。どこにあるんだ?」

「第5ハンガーだ」

するとエリックはマーカーを持って外に行こうとするが

「ちょっとまって!」

それをリアンさんが止める

「外に行く気か?危険だぞ!」

「大丈夫、俺たちは攻撃されない」

「え、攻撃されないってどうして??」

「話せば長くなる。あんたも一緒にこい」

「だが、」

とても不安そうだ。
外には出たくないだろうな。

「奴らは俺たちを撃てない。シュタール」

「はい?」

「お前のマーカーとG3持ってリアンと一緒にこい」

「俺もですか?」

「いいからはやくしろ」

俺はマーカーと銃をもってリアンさんと外に出ようとするが、
リアンさんは躊躇する。出たくないのはわかるが、
案内してもらわないと

「なら場所を教えてくれ」

仕方ないとばかりに、エリックが場所を聞く。

「滑走路をまたいだ向こう側に駐機場があるだろ。
 その隣のハンガーだ」

俺とエリックは広い滑走路をまたいで目的の場所まで向う。
駐機場にある機体は鉄の瓦礫とかしていた。

「ここだな」

目的のハンガー前へとたどりつき、ドアを開ける。

「わお、使えそうだな」

「そうですね、これなら飛ぶんじゃないですか?」

ハンガーに格納されていた機体はDHC-6。
通称ツインオッタ—と呼ばれる双発ターボプロップ機だ。

「ツインオッターか。まさか今の時代に見れるとなー」

「知ってるのか?」

「もちろん、名機ですから」

だけど今の時代はもうほとんど飛んでいないんだよな。

「操縦しやすいんですよ。こいつは」

「飛ばしたことあるのか?」

「ないですよ」

「なんだよそれ」

ただ操縦しやすいってのは結構聞く話なんだよね
俺は操縦席に乗って、ヘッドパネルのマスターバッテリー
スイッチを入れる。するとFUELのメーターが反応する。

「燃料は入ってるみたいですね。両タンクとも」

確かに古い機体だが、全然飛びそうだ。

第53話:目処 ( No.78 )
日時: 2012/11/12 00:06
名前: ケンチン (ID: vAHEHJN2)

「飛んだって落とされるだけだぞ!」

戻った俺たちはリアンさんに、DHC-6で
逃げることを提案するが、乗り気ではない様子だ。

「大丈夫だ。こいつがあれば何もしてこない」

とエリックがマーカーを見せる。

本来、飛んで逃げるなんて自殺行為だ。
レーダーで捕捉されて撃ち落とされる。
だが、今の俺たちはUCSからみて味方とされている。
元々、ディアナの飛行機で逃げようという
提案をのんだのも、このマーカーがあるからだ。

「だが、絶対落とされないという保証はないじゃないか」

「ああそうだな。絶対とは言い切れない。
 別に来たくなければ来なくていいぞ」

「エリックさん!」

さすがに見捨てることはできない。
せっかく多くの人を乗せられるのに。

「どちらにしろ、俺たちはあいつで飛んで逃げる。
 マーカーがなければ、どうせ撃墜されるんだ。
 だったらいらないだろ?あの飛行機」

「まあそうだが・・・」

「リアンさん、さっきも話したとおり、クルトゥス
 軍は敵です。まともに助けてくれるかどうかわからないし、
 俺たちと関わった以上、何されるかわからないですよ」

そう、俺はリアンさんにこれまでのことを話したのだ。
彼は悩んだ挙句

「わかった、ついていくよ。みんなに知らせてくるから少し待ってくれ」

そういって奥の部屋に入っていった。

「これで何とか出られますね。この国を」

「ああ。目処がたってよかった」

第54話:みんなで ( No.79 )
日時: 2012/12/28 02:41
名前: ケンチン (ID: k30LHxXc)

翌朝、俺とエリックはDHC-6の中にいた

「それじゃあいきますよ」

合図を送ってエンジンセレクターを左に倒す

「おおすげえ!」

同時に左エンジンが始動し、ターボプロップの
轟音と排気の匂いにすこし興奮する。
右エンジンも始動し、両エンジンの回転数が一定
に足したのを確認したあと、機内バッテリーから
ジェネレータに切り替える。

「OK,いつでもいけますよ」

「なら迎えにいくか」

頭の上にあるスロットルレバーをすこし前に
動かし、みんながいるところまで地上走行する。

「おいおい、ふらついてないか?」

「まあ初めてですから」

フットレバーで機体を右に曲げ、そのまま真っ直ぐ
目的の場所まで行きたいのだが、なかなかうまくいかない。

「曲がるときスピードをもっと落としたほうがいいかな。
 いっぱいまで踏んでもそんなに曲がらない」

コツをつかめてきたところで、事務所がある建物の手前に到着。
そのまま機体を止め、操縦桿のしたにある
パーキングブレーキをかける。

エリックが機体中央の扉を開けて、全員に乗り込むように指示する。
地面から機体まで結構高さがあるため、俺は中から乗り込む人の
手助けをする。

「ほら、手をかして」

ディアナに順番が回ってきた

「ありがとう」

彼女の手を引っ張って、機体に乗せる。

「ディアナ、大丈夫?」

「ええ、もう平気だよ。ごめんなさい昨日は」

昨日、ディアナの様子を見に行ったとき、彼女はすごく落ち込んでいた。
母親から父の死を聞かされたらしい。俺はディアナを元気づけようと
思い何か話そうとしたが、ディアナに一人にして欲しいと言われ、
そのまま部屋をでた。あれから全く顔を見てないから心配ではあったが、
なんとか落ち着きを取り戻したようだ。

順調に搭乗し、最後の一人を載せ終えたその時

「シュタール!急いで出せ!」

外にいたエリックが操縦室右の席に飛び乗る。

「どうしたんですか!?」

「クルトゥス軍の連中がきやがった」

「え、どうして俺たちの場所が?」

「さあな。おそらく偵察用UCSで地道に探してたんだろ」

上空を飛んでいるUCSの偵察カメラを使って探していたのか。
そして運悪く見つかっちまったと。

「ランス!牽制射撃だ。撃ちまくって近づかせるな!」

「あいよ」

中央扉を全開にし、そこからMG4で乱射する。
開けた飛行場に遮蔽物はなく、敵もこちらに近づけないでいる。
そのあいだに急いでパーキングブレーキを解除し、
滑走路まで機体を移動させる。

「もう弾がない!」

「わかった、ドアを閉めろ!」

滑走路端に到着し、フラップを下げて、
一気にフルスロットルまでエンジンを回す。
しかし敵が車両を横に並べ、滑走路の途中を封鎖しはじめた。
絶対に飛ばせない気だ。

「どうしましょう!?」

「そのままいけ!」

イチかバチか。もし敵車両に衝突すれば大破は確実。
すでに200mを滑走。敵との距離は300m弱。
400〜500mで離陸しないと。

「いっけえええ!!」

400m滑走したところで機首をあげるが、なかなか
飛ばない。もうぶつかる寸前で機体がうき始め、
敵車両の数メートル上を通過した。

「だああ、飛べた!」

確実に寿命が縮んだ。冷や汗と心臓の鼓動がやばい
ことになっている。

「ハッハッハ!やったな!」

隣のエリックが肩を叩く

「死んだかと思いましたよ」

機体を北の方角へと向け、国境を目指す。
マタンとの国境までそんなに時間はかからないはずだ。
UCSで攻撃されることもなく、順調に飛行していた。

「もうすぐですね」

数十分後、国境手前の森林地帯上空にたどり着いたときだった。
突如、機体の両サイドをものすごい速度で何かが通過した

「おい、あれって!」

エリックが慌てる。よく見るとそれは

「フルクラム!」

クルトゥス空軍のMig-29フルクラム戦闘機だった。
戦闘機相手にどうすればいいんだ。
こっちはただのターボプロップ機。当然武装もついてない。

「とにかく高度を落とせ!あいつらの視界から外れるんだ」

「はい!」

機種を下げて一気に降下する。しかし、DHC-6は出せても160ノット
が限界。すぐに追いつかれてしまう。

「ケツに付かれてるぞ!」

2機のミグがぴったり後ろについていた。
さらに30mm機銃で攻撃され、右エンジンが出火。完全に停止した

「右燃えてるぞ!」

燃料ポンプをとめ、消化装置を作動させる。
火は消えたが、片方のエンジンだけで機体をコントロールできるわけもなく。

「だめだ、落ちる!」

機首を無理に上げると失速する。このまま着陸したいが、周りは森。
出来る場所すらない。どうしようか考えているうちに、さらに左エンジン
を撃ち抜かれ停止する。完全にグライダー状態だ。

「全員衝撃に備えて!」

機体はそのまま森へと突っ込んだ。

Re: 未来が俺たちにくれた物 ( No.80 )
日時: 2013/01/14 01:49
名前: ピノ (ID: NweUlujJ)

ケンチンさん、初めまして(^ ^)

先程小説読ませていただきました。
機械のことについてはよく知らないのですが、
夢中になって読んでました(笑

続きを楽しみにしています!

第55話:決断 ( No.81 )
日時: 2013/02/15 23:23
名前: ケンチン (ID: lcGOSbxj)

「・・え、・・て!」

誰かが俺の近くで叫んでいる
何を言っているのか、よく聞き取れない。
そっと目を開けると、近くにディアナの顔があった。

「よかった、気がついたのね!」

ああ、そうだ。飛行機が墜落したんだっけ・・・
森のおかげで墜落時の衝撃はそこまで大きくはなかったようだ。
機体もそこまで損壊していない。

「くっ、いてぇ・・・」

体を起こそうとしたが、頭が痛い。
どうやら強く打ったみたいだ。

「エリックさん、大丈夫ですか?」

同じ操縦席に乗っていたエリックの無事を確かめようとした

「ああ、生きてはいるが、動けそうにない」

「え、どうなってるんですか?」

「足が、挟まってる。抜け出せないんだ」

「そんなっ!」

衝撃で変形した機体に足が挟まり、全く身動きできないようだった。

「しかも折れてるなこれは。」

「待ってください、いま助けますから!」

俺は座席を移動して彼を出そうとしたが

「いや無理だ。油圧式の工具とかないかぎり、
 人の力でなんとかなるものではない」

たしかに、見た限りでは俺の力で広げることなんてできそうにない。

「だけど・・・」

「いいかシュタール、よく聞け」

彼は真剣な顔で俺を見て

「ミグが墜落現場を連絡しているはずだ。かならず
 ここに敵が来る。落とされてからすでにかなりの
 時間が経ってるんだ」

俺は長いあいだ気を失っていたらしく、その間に
エリックの指示でランスが仲間を連れてここをでたらしい。
ディアナは母親に先に行くよう伝え、俺が意識をとり戻すまで
待っていてくれたようだ。

「もう近くにいるだろう。いいか、二人で逃げるんだ。
 このまま北にいけばマタンとの国境にでる。
 そんなに時間はかからないはずだ」

「あなたはどうするのですか!?」

「置いていけ。俺のせいでお前らまで犠牲にしたくない。
 どちらにしろ出るのは不可能だ。俺は墜落で死んだと思ってくれ」

彼の目には強い覚悟が宿っていた。

「コンパスをやる。これを持って急いででろ」

遠くから犬の鳴き声と、複数人の足音が聞こえてくる。
俺はエリックに押されて操縦室を出た。


「エリックさん!」

「なんだ」

「ありがとうございました!!」

それを聞いて彼は苦笑し

「楽しかったぞ」

俺は操縦室のすぐ後ろに立てかけてあったエリックさんのライフルを手に取り、
墜落現場をあとにした。




もらったコンパスをもとに北へ走る。
地面はぬかるんでいて最悪だった。
おまけにまともな道もなく、密林をかき分けて
進んだ。

「いたっ!」

ディアナが石につまづいて、転びそうになる。

「大丈夫?」

「ええ、平気」

彼女の手をとり、先をいそぐ。
だが、敵の足音が確実に迫ってきている。
これではいずれ追いつかれてしまう。

「ディアナ、聞いてくれ」

「なに?」

俺は彼女にコンパスと、メモリーカードを渡す。

「え、どうしたの?なんで私に」

ディアナはすごく動揺していた。

「俺はここであいつらの足止めをするから、先に行って」

「何言ってるの!?一緒に逃げましょ!」

「だめだ。絶対に追いつかれるよ。誰かが時間稼ぎをしないと」

「時間稼ぎって?まさか撃ち合うつもり!?」

「ああ」

「あなた一人で戦うなんて無茶よ!死んじゃうわ!」

「いいか、ここで俺たち二人が捕まったら、それこそ終わりだ。
 なんとしてでもこのメモリーカードを国外に持ち出さないと」

「あなたが死ぬぐらいなら、そんなことどうでもいいわよ!!
 お願い、一緒にきて!」

彼女はどうしても俺を離してくれない。

「まだ死ぬなんて決まってない。俺もあとから行く。
 必ずだ」

「そんなの無理よ!」

「いいや、絶対に行くよ。ここまで俺たちやってこれたんだ。
 なんとかなるさ。いや、何とかしてみせるよ」

俺はディアナを引き離す

「あくまでも牽制だ。危なくなったらすぐに離れて、あとを追いかける」

「ほんとう?」

「本当だ。大丈夫。だから行って。あとでマタン出会おうぜ!」

「絶対だよ!」

「ああ、絶対だ。約束するよ」

ようやく彼女は俺から離れてくれた。
ディアナの姿が見えなくなったのを確認して

「さて、やるか」

心臓がバクバクいっている。敵はすぐ近くだ。

「やるしかない」

あっさり捕まってしまったらそれこそ時間稼ぎの意味がない。
弾切れになるまで撃ちまくって、そのあとすぐとんずらだ。

俺は倒れていた大木に身を隠し、じっと待った。
しばらくすると、敵が姿をみせる。

「多いな・・・」

銃を持った敵兵と軍用犬のシェパードが広範囲に散開していた。
20人以上はいる。

「大丈夫だ、市街地で戦った時もなんとかなったじゃないか。
 今回も行ける」

道路で街路樹の花壇に身を隠して戦ったときのことを思い出す。

「あの時よりも距離はあるし、視界も悪い。敵は俺に気づいてない」

同じように必死に言い聞かせた。死ぬとか、被弾したらとか、
そういうことは全く考えず、とにかく大丈夫だと言い聞かせた。
そして銃を構え

「みんな、今までありがとう」

引き金を引いた。

銃声が森中にこだました。
銃弾はあたらなかったが、敵が進むのをやめ、その場に伏せた。
続けざまに2発、3発と撃つ。
ここで撃つのをやめて敵の動向をみる。
また来るようなら、撃って進めなくする。

だが、

「うわっ!!」

そう甘くはなかった。敵の複数の軽機関銃が火を噴いたのだ。
制圧射撃。
銃声のした方向へ銃弾をばら撒いて、相手を動けなくする。
その間に別の部隊が移動するのだ。
さすがに相手が多かった。大木に身を隠す。
銃弾が何発か頭の上を飛んでいく。今顔を出すのは危険だ。
俺は銃だけを出して、撃ち返す。完全に適当だった。
とにかく相手を押さえつけないと。そう思った。
しかしそれがまずかった。発射の際、銃口からの閃光で見つかったのだ。

「方位300に敵確認!!」

敵兵の声が聞こえる。
やつらは俺が隠れている方向へと放火を集中させた。
もうこれでは完全に動けない。逃げようと思っても無理だ。

「クソ、これじゃあ動けない!」

俺が攻撃できないでいると、銃声がやんだ。
今なら逃げられるんじゃ。
そう思い、立って走り出そうとした瞬間

バスッ

鈍い音と同時に、右腕に激痛が走る。

「あああっ!!!」

銃で撃たれたのだ。
バランスを崩してその場に倒れた。

「目標を確保したぞ!」


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