ダーク・ファンタジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

ぼくらときみのさいしゅうせんそう(更新停滞中)
日時: 2025/09/23 17:05
名前: 利府(リフ) (ID: VaZ1hO3J)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2a/index.cgi?mode=view&no=3688

2016年冬大会のシリアス・ダーク部門にて金賞を受賞させていただきました。
本当にありがとうございます。


こちらのページを見てくださりありがとうございます。当方、更新停滞させながらTwitterで普通に生きています。 @flove_last_war までどうぞ。やっぱ書けねー!うわ無理ー!うちの子かわいいー!とかたまに悲鳴が上がる様子が見れます。

※過去話書き直し実施中
内容が修正されておりますので前に見た方も読み返していただければ幸いです!
修正しました >>5 >>6 >>7 >>8

※作品の感想をいただけたら執筆の励みになります!コメントお待ちしています!




題名通り戦争の話です。
処女作と言い張りたいんですが、この作品の前に2本ほど許し難いクオリティのものができてしまったので、こちらは掲載させていただいた作品としては3作目となります。
毎度のことなんですが息をするように人が死ぬ作品なのでご注意ください。

物語は現代。なんか異能バトルっぽいものです。

そしてこの小説にコメントが来なさすぎて「この小説価値がないんじゃないのか...?」と思い始めてるので、暇で死にそうだったら「あ」だけでもいいのでコメントしてやってください。作者が深読みして喜びます。


キャラに救いは持たせたい、その一心で一応書いてます。
暇つぶしに一部だけでも観戦してください。



−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
※グロ表現・軽い(?)暴力表現があります。
 苦手な方はお気を付け下さい。

※更新があまりにも不定期です。熱意をなくした人間が書いているので失踪したらそのたび合掌してやってください。



prologue…開戦 >>01-19
(黒い雨の日だった)


chapter1…兵器 >>23-36
(その死を見た日だった)


—————————————————————————————————————

(FREE…病室 >>38))
(安堵を得た日だった)

——————————————————————————————————————


chapter2…盟友 >>41-57
(彼の人が来た日だった)


chapter3…死神 >>58-84
(歯車が一つ噛み合った日だった)


chapter4…兄弟
>>85-97 >>99-105 >>108-114
>>119 >>121-123 >>124 >>125
>>126
(探し人を求める二人だった)


以降連載中です。




追記:この小説に関連する短編を集めた「ぼくらときみは休戦中[短編・作者の呟き]」の
   リンクを上に貼りました。

   また、そのページのNo.42にてこの小説の一部キャラクターの容姿や性格を載せております。
   この小説に登場するキャラの短編もありますので、興味があればどうぞ。

   一部は本編とリンクする話となっております。その話については本編読読了後推奨です。


*****


コメントありがとうございます!またのお越しをお待ちしています!
>>98 >>106 >>115(芹さん本当にいつもありがとう)

Re: ぼくらときみのさいしゅうせんそう ( No.97 )
日時: 2015/10/31 16:01
名前: 利府(リフ) (ID: xY9uLQrm)

わし「あぁ^〜祭りだ祭りだヘイカモンって何度叫んでもいいわぁ〜どーれ謎の人の
 トゥイッター見に行ってにやけにいくk

 

 え?新曲上がってる…?」


親「どうした3DSを顔面から30cmのとこに構えて」

わし「らったとぅりぱりらちゅりぱれるりぱっぱっぱ」

親「は」

わし「るりぱっぱぁ↑」

親「なんぞ」


————————————————————————————————————



ロビンさんが分かりました、とだけ言って小さく息を吸い、ぽつりぽつりと話しだした。


***



覚えている限りの事ですが、きっとそれで十分でしょう。

僕は研究者の息子として生まれた、という事を物心つく前に体に刷り込まれました。

天性の才能、と周囲がもてはやす科学についての僕の知識は、
僕の中ではまるで最初から頭にあったような物なのです。
外で遊ぶ子が転んで血を流していて、そして僕の傍に包帯があったとしても、
僕は塩酸の研究だとかそういう書類を母に出しに行かなければなりません。
少しでも遅れれば、権力が欲しい母は僕を下卑た目で見てくるのです。
飼い殺されていたんです、僕は。


僕が能力を持っている、ということはとても浮ついた様子の母から聞かされました。
僕はまだ5歳だったのですが、その3日後に食卓に出された妙に高級なワインを
いつもの癖で分析しようとすると、母からその手を止められました。
まるで慈しむような眼でこちらを見た母は、少し間を置いてから僕にこう言ったのです。

「いいですか、ロビン様?明日からあなたは父君の研究所に出向き、あなたの父君が
 成し遂げようとなさっている研究の手助けをする役割を担うのです。
 このワインは父君から、研究員の仲間の証でございます。どうぞお飲み下さいませ」


正直、寒気がしました。
だってそうでしょう?自分にどんな感情も向けていなかった人が突然僕を崇拝してきたら。
生粋の動物が神になるなんて前例がどこにもありません。神話にもおとぎ話にも思考実験にも。
かのイエス・キリストならどうしたでしょう、全知全能の神ならどうしたでしょう?

僕は研究所へ出向かされました。
母は僕が顔も見たこともないその“父”というモノの元へ、真っ先に歩いて行きました。
僕を研究室らしい場所に置いていった彼女が帰ってくる気配もありませんでしたので、
進む時計を見て嫌気がさした幼い僕は、慣れないスーツの裾を握って研究室のフラスコを手に取りました。

中には何とも言えない雰囲気をもつ何かがあって、それを僕が取り出そうとすると
ばしっ、と軽い音を立てて僕の手がはたかれました。


「おい、これに触るんじゃない。まさか新入りか、栗毛の坊や?」

彼は白衣を着た、若い大人でした。
僕はその顔を見ていると何故か優しさを感じて、僕は柄にもなく威勢よく答えました。


「Yes.…But,It is no matter if we have not the thing.Don't tell me.」
(はい。しかし、これが価値あるなにかというわけではないんでしょう。わかりますよ)

僕の言葉を聞いてそれはピクリと肩を揺らして、感心したようにほう、と息をもらしました。


「よく見抜いたな坊や。頭が相当いいって魂胆か、あの外道ならガキでも拾って
 実験にでも使いそうだったがなぁ…推理も外れたの久々だ、よし!」

「?」

「坊や。少しの間だけお前の親友になってやろう。日本語分かるならめんどくさい事もないしな」
「親友にしては、ぼくは背伸びをしないと椅子に座るあなたにもつりあいません」

「ははは!気にすんな、それなりに善人だぞ、じゃあまず何か質問してみろよ、答えてやるよ」

「それは、なんなのですか?」
「中身は箱だ。液体に浸されてて分かりにくいだろ?」
「研究しているのですか」
「ここの研究の第一人者、まぁ一言でいえば外道に頼まれてな。断ったら大目玉、どころか
 目玉を研究用に抜かれて心臓潰されて脳解剖されてそいつの餌だ。仕方なくやってる」

「それに価値はあるのですか?」
「乳児みてェに日本語をしゃべれる。で、たまにフラスコの中で姿変えたりする」
「…素晴らしいものではないですか」

「ふーむ。こいつは二人で研究してんだが、もう可愛らしくてなぁ。
 たまに上目遣いでこっち見て、甘いものくれとねだってさぁ、もうほんとなぁ」

「そのもう“一人”は相当かわいらしいお嬢さんなのでしょうね」
「は!?いつから惚気話に会話の内容を変えられたんだ!?その通りだぞ坊や!」
「ぼくじゃなくてあなたが変えたんですが」


その人は本物の親友のようでした。
たくさんの事を知っていてもどこか抜けていて、それを僕が指摘すると頭を抱えて。
どんな話をしても、ただただ科学で証明できない面白さがあったのです。

ところで、…箱。

知っている物でしょう。
僕が知っているのだから、これは神が今のあなた方にこの事実を知れと言っているようなものです。




さぁ話を続けましょう、僕の知ることはあなたは知っているでしょうが。


僕の、目的も。

Re: ぼくらときみのさいしゅうせんそう ( No.98 )
日時: 2015/11/08 17:15
名前: 芹 (ID: /uGlMfie)

面白かったよ!更新楽しみにしてるね。

Re: ぼくらときみのさいしゅうせんそう ( No.99 )
日時: 2015/11/21 17:12
名前: 利府(リフ) (ID: xY9uLQrm)

芹ありがとなぁ

——————————————————————————————————————————


僕たちは他人同士という関係も時間も忘れて、ずっと話していました。

「これを研究してる相方は取るなよ。いくらお前みたいな将来有望な坊やにも渡す気はないからな」
「そんなに好きなんですか」
「………まぁ、な。今は純粋に好きだ」
「今は?」
「いや、昔はぎすぎすしてたんじゃねェよ。そっから先は話すと長くなるが—————」


そこで突然、彼の話を遮るように、大人数の足音が聞こえました。
僕はその足音の主たちも分からず、彼もまた同じだったのですが。
閉じられていた扉が大きな音を立てて開かれた瞬間、僕は目を見開きました。

「ロビン様、お迎えにまいりました」

気持ちの悪い、敬うような口調で列の先頭に立つ母が話しました。
彼のほうは何も状況を理解できない様子でしたが、僕はその研究員たちが笑みをたたえているのに
本能で恐怖を感じて、自分の服の裾を握って震えていました。

「…血縁者ですか?ここは機密情報が多い部屋ですので、お引き取り願えませんかね」
「その機密情報をこの子が扱えるようになるように、所長がこの子を呼んでいるのです」

彼がぽん、と僕の頭を撫でてから、すっと椅子から降りてしゃがみました。
僕が強い力で握りしめていた服の裾に触れて、ぼそっと「手、緩めろよ」と言うと、
世間でよく見る作り笑顔を見せて母達の元へ向かって行きました。

「御覧の通り、未熟です。もう少し教育されてから、本人の意向を聞くべきでは?」
「その必要はありません。この子は父親からの招集を受けたのです、それでいいでしょう」

「私達が研究しているものがそもそも、幼い子に扱える玩具ではないのです。
 貴方も子を大事にするのなら、所長には話しておきますのでお引き取り下さい」

「なっ…」

母は言葉を詰まらせました。

「子の成長を願ってやるのが親でしょう」
「………」

暫く母は俯いて、歯ぎしりをしました。
僕は彼女がここから立ち去るだけでいい、と考えていたので、やっと呼吸も落ち着いてきていたのです。
彼も余裕の笑みを見せていました。

が、彼女はバッと顔を上げて、歪んだ表情を見せたのです。


「子の成長を願う!?馬鹿らしい、何を自分の中で1年育っただけで見守らなきゃならないのよ!?
 やっと手に入れた…素質ある能力を持つ子供なのよ、これで憎たらしいあの男から
 名誉も何もかも、こいつに奪わせることができるの!あなたもあいつが憎いでしょう!?」

彼は唖然とした顔をしました。
衝撃に耐えられなかったのか彼は全く動かず、僕は涙をぼろぼろとこぼしました。
実の母が、僕を愛をそそぐ価値もない道具として、利用していたのですから。
皆さんでも、泣くでしょう?

母は後ろの集団に何かを命令して、後ろへと下がっていきました。
僕の視界は涙で滲んでいたのですが、辛うじて、彼に向けられた物体が何かは見えて、

ぞっとしました。
叫んだときには、その一丁の銃が彼の頭に向けられていました。


鼓膜を貫くような音と、どさりと倒れる音が僕の耳に届きました。



「……研究員さん!!」
彼が床に倒れているのを見て駆け寄りましたが、その周辺にも銃弾が撃ち込まれて
僕は怖くて彼の容体を確認できませんでした。
大丈夫なのか。このままでは。
母がにたり、と笑っているのに、僕は恐怖を覚えるばかりでした。

しかし、銃声がピタリとやんだ瞬間、彼の息がかすかに聞こえました。

「……坊や…」
「研究員さん、…脈は」

「あるさ。頬に掠り傷。それだけだ、昔から銃に対しての訓練はやり続けてるんだよ、坊や」

すぐさま起き上がった彼の頬には確かに掠り傷がありました。手当てが必要ないくらいの、です。
僕も彼の手首にそっと手を当てましたが、脈は正常、他の傷もありませんでした。
母が恨めしそうな表情をして、彼と僕を睨みつけました。
正直、もう怖くありませんでした。
彼が隣で、両足で立っているというのは、僕にとって唯一無二の安心だったのです。

「増援部隊を用意しろ!この男を殺せ、何としてもだ」

母が後方の列に再び伝達を出し、彼が僕を背に隠して身構えた、その時でした。




「何事だ」



彼と瓜二つの、…否、少し女性用にアレンジされた白衣を着た女性が現れたのは。

Re: ぼくらときみのさいしゅうせんそう ( No.100 )
日時: 2015/12/17 23:51
名前: 利府(リフ) (ID: W3Oyo6TQ)

彼女の足音は、冷静になりつつあった僕の耳にも届いていませんでした。
そして恐らく彼女を確認するまで2秒ほどかかった母と、1秒後に大声を上げた彼にも。

「おい!?状況分かってたんじゃないのか、こっちは何とかするからお前は帰れ」
「状況?理解していないのなら出向くものか。私は貴職が大層騒いでいたから止めに来ただけだ」

「貴職とかまた難しい言葉使いやがって…この坊やでも危険だって事は理解できるんだからよ、
 来んなって言ったからには来んな。女が見る仕事でもやる仕事でもねェ」


とっとと失せて会議に戻れ。と彼が吐き捨てるように言うと、女性は不満そうな顔をして
ぴっ、と真っ白な指を向けました。
それも、僕に。

「なら貴職はどうしてこの小僧を逃がそうとしない。いらん英才教育を仕込むな。
 …今からやることもやられることも、こんなあどけの足らない子供に見せるものではない。」
「で、坊やをどうしろと」

「逃がせ。子供が機密情報を漏らさないよう契約書をそこの母親に後々結ばせる」


その言葉に一番動揺したのは、もちろん母親です。
でも怒りに肩を震わせて、大声で文句を喚き散らしているその様を、僕は母とは認めませんでした。
だから、僕は彼の背中から少しだけ顔を出して、きっぱりと言い放ってやったのです。

「ぼくはあなたが大嫌いです。血縁関係もDNAも、あなたと繋がっている事が信じられない」

母が口を閉じてこちらを恨めしそうに見たので、また僕は彼女の不利になる事を笑って言いました。


「研究員さん、逃がして下さい。僕の家族はここにはいません」


彼が僕の顔を見て「おぉ怖い面」とぼそりと呟いたので、僕は相当えげつない顔をしてたのでしょうが。
瞳孔を見開いて腕を震わせる彼女は、背後に立つ集団にまた何かを伝えると、
心ここに非ずと言った形相で出口へと向かって行きました。
そのまま戻ってくる様子も見えず、僕が小声で「やりましたね」と囁いた一瞬のうちに。

銃弾が、また3発ほど撃ち込まれたのです。
命中したのは床と、彼の白衣の布と、

女性の肩でした。


血が弾けて飛んで、そこからぼたぼたと止まることなく落下して。
女性は崩れ落ちると肩を押さえ、悲痛な声を上げてうずくまりました。
黒髪を振り乱して痛い痛いと叫ぶ彼女に、真っ先に駆け寄ったのは彼です。
その次に僕がいつものように、しかし必死に持っていたハンカチで止血処置を取りました。
もう銃弾は撃ち込まれませんでしたが、出ていったはずの母親がくすくすと微笑んでいました。

「逆らうからこうなるのよ。研究員だからといって何でもできると考えないことね。
 私が今殺せないのはロビン様だけ、あとはどんな死に様晒しても私が知った事じゃないの」

何をいまさら。
先程、僕の事を「こいつ」と呼んだ女が、今度は態度をコロコロと変えていく。

腹立たしかったです。それは、もう言葉にできないぐらいに。


「……痛い…!!」

呻き声を上げる女性は彼に肩を抱かれ、彼女の意識が飛ばないように声を掛けていました。
僕はなんとしてでも二人を守りたくて、二人の前に両手を広げて必死に立ちふさがったのです。
それが良かったのでしょうか、研究員たちは銃を下してうろたえていました。

「何をしてるの!?お前たちの技能なら後ろの同僚共も撃てるでしょ!?」
「し、しかし…これ以上撃てば…彼らが…」
「お前らの都合なんて知らないわよ。さっさと始末して!!」

僕は決死の覚悟で、前方へ走りました。
このままじゃいけないという一心で。
銃が向けられるのがスローモーションで見えて、もう悔いはないと僕は目をつぶったのです。


そこで、ゆらりと、背後の“箱”が蠢きました。

その気配に気付いた彼がなにかを叫んで、箱の入ったフラスコの穴を塞ごうとしました。
しかしその前に箱は飛びだし、異形へと姿を変えて、奇声を部屋中に響かせました。

僕はその奇声で体が崩れ落ち、そのままばったりと倒れました。





次に目を開けたとき、それほど時間はたっていなかったと思いますが。


——母と研究員が、ばらばらにされて床に転がっていたのです。
えぇ。


それはもう、箱の成した技です。


“箱”は、僕たちの前で人を殺しました。

Re: ぼくらときみのさいしゅうせんそう ( No.101 )
日時: 2015/12/19 00:26
名前: 利府(リフ) (ID: W3Oyo6TQ)

まさかの№100に投稿するまで気付かなかった利府さん
BGMはノラガミOPです!賽銭は五円!

————————————————————————————————————————



「箱は、僕たちの前で人を殺しました」

ロビンさんの失笑が含まれた言葉は、教室内に大きく衝撃を与えていた。
タケル君が冷や汗を流していて、トヤマさんも自分の事となると
大きく関心を持つのかぎりぎりと歯軋りをしている。
周りのような衝撃より白けた、という感情が大きいようだが。

「ムッカつく物言いするねぇ。私と弟の立場悪くする為に来たの?
 話聞かせてって言って悪いけど、もうそこでやめにして。君らが何をしに来たかだけでいい」

珍しく、うろたえていた。
あたしの目で見ても分かるほど。最近まではトヤマさんの威圧感に押されて
彼女を分析だとかそんな大それたことできない、って思っていたのに。
でも何故自分が分かる?トヤマさんの声がいつもと違っても、表情は変わってはいない。

(…トヤマさんの事は今まで深くは考えられなかった。まるで、シャッターを下ろされたように)

そこまで考えてハッとした。
こんな事今考えたって何にもならない。
実際皆はロビンさんの次に紡ぐ言葉を聞き逃さないため、彼とその弟をじっと見ているのだ。
あたしはただでさえ理解力が遅い。ならば一層別のことなんか考えてられない。

「兄ちゃん、言うべきだと思う。ウソを言ってもマコトを言っても、ダメなときはあるんだ。
 オレ、よく…わかってるよ。でも、今はセイロンをのべたほうがいいさ」

イワン君は悲しそうな表情で兄に語りかけたが、ロビンさんは口を真一文字に結んだままだった。

「兄ちゃん!!」

叫んだ彼の瞳が揺れていて、涙が滲んでいるようにも感じる。
…ロビンさんは弟の顔を見てから少し間をおいて、「そうだね」と軽く微笑んで言った。


「僕と弟には探している人がいます。そう思ったきっかけは別々でしたが、その人はあの所長…
 つまり僕と弟の父親の、隠し子の一人です。まぁ、あの男に正妻はいなかったでしょうが」
「へぇ。分かる限りそいつのプロフィールを吐いて。それだけやって君らは私の味方になる」

そこまでせびるのですか、とロビン君が首を軽く横に振って、あたしたちを見上げて口を開く。



「女性です。日本に生まれて、最近までは平穏に暮らしていたとミス・チエリから聞きました。
 名前は分かりませんでした。ただ、性別以外で言えば、この学校に在籍しているという事と…

 強大な能力を持っていて、今は姿をくらましたという情報しか僕と弟は得られていません」


まず第一に、強い能力を持ったこの学校の女生徒。
次点に、平穏に過ごしていたが、現在は姿を消したという情報。

その条件に当てはまるのは…


「…あの虐殺で、死んだ子の中に含まれているの?」

そうとしか考えられない。
イサキさんもシンザワさんもあたしの言葉に頷いた。
タケル君は唖然として、トヤマさんは何も反応を示さずにただ兄弟の表情だけを見ている。


「そういう事ですよ。彼女がサエズリケンジに殺されたという可能性は限りなく高い。
 しかし、強い能力を持った生徒はこの高等学校でも一握りでしょう。
 だから僕と違って、奇跡を信じているイワンはこう考えたんです。


 『あの虐殺に巻き込まれたとしても、その強大な能力で助かっているかもしれない』と、ね」


そんなことあり得るのか。
あたしはまだまだ幼いだろう脳が必死で考えた、ひとつの可能性に愕然とした。

「……確かに奇跡だな。胸が痛くなるような話だ、そう願いたくなるのも分かるよ。
 しかし、シンザワサソリもトヤマミコトも、私もそのような奇跡に似た話も聞いてはいないんだ」

「ざんねーん兄弟君。この通り有能な仲間も知らない。ならチエリもそんな発想信じないでしょ」


トヤマさんがげらげらと笑っている。それには正直いらついた。
もしも彼女が普通の人間なら食ってかかりたいほど、彼女の言い草は人の命を
自分の髪一本とでも考えているようなものだったのだ。


「ねぇ、タケルも同意見でしょ。私とお前が嫌いなあのババァに教え込まれてたじゃない」
「……」

「どっちを肯定するかも決められない?まだ確証もない話を信じて馬鹿になるの、
 それとも私の腕にしがみつきでもしてずぅっと嘘つきのままでいる?」

「…姉貴、俺は」

「優柔不断は連れていく気はない。お前がそのまま黙るなら、私は私のやりたいことをやるから」


「俺は!!」


タケル君らしくない叫びだ、と真っ先に思った。
今まで彼が声を荒げることはいくつもあったが、それは優柔不断の様ななにか、
迷いが混ざっているどこか弱々しい、強がりの叫びだったのに。

トヤマさんがその叫びに目を見開いたのだから、きっと彼と一番長く過ごしてきた
彼女にとっても驚くべき変化だったのだろう。


彼はほんの少し言葉を切って、もう一度教室内に響く声で叫んだ。

「俺は信じる。……探して見つけ出す。書類の中であっても、生きた姿であっても!
 見つけ出して、二人に会わせてやる。誰も協力なんてしなくていい!!」


怒りがこみ上げてくるのが止められない、と顔に書いてあるようだ。
彼はイワン君を一瞥した後、少し微笑んでから出口へ駆けて豪快にドアを閉めた。


イワン君が「待て!タケ!!」と叫び、その姿を追ってドアを開けても、彼はいなかった。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。