ダーク・ファンタジー小説
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- ぼくらときみは休戦中[短編・作者の呟き]
- 日時: 2025/05/05 15:06
- 名前: 利府(リフ) (ID: nQJeJTyC)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2a/index.cgi?mode=view&no=3095
>>73 本編の内容変更についてのお知らせがあります。
※こちらのページは「ぼくらときみのさいしゅうせんそう」のネタバレをモロに含みます。本編を一読していただいたあとに楽しめるお話が多めです......。
ここは利府が現在執筆中の「ぼくらときみのさいしゅうせんそう」に関する
自分の呟き、または短編を放置している場所です。
・ほのぼのとしただけの話は現在地点では皆無です
・文才がない人間が書いております
・スカッとした気持ちで帰れる小説はありません。モヤモヤです
・内容はそれなりにブラックです(当社比)
・呟きには私事が絡む事があります
・絶賛中二病です
文を一度読んで不快感を感じた方はすぐにブラウザバックをお願いします。
この話すごいねー!とかこの話意味わかんねーな!豆腐の角に頭ぶつけてしんでしまえ!
みたいな意見を頂ければ幸いです。どうぞお気軽によろしくお願いします。
自分が出来る限りの改善は施していこうと思います。
以上の事が受け入れられる方のみ...どうぞ......(土下座)
※この記事は小説大会に参加しません
本編(ぼくらときみのさいしゅうせんそう)のみで参加したいと思います
目次(一部の話はできるだけ本編読了後をお勧めします、上のリンクが本編です)
軍人のこと(???の話) >>7 >>21
「夜空を取ってきてくれよ」
鳥を崇めよう(トヤマとその友の話) >>10 >>16 >>28 >>46
>>35 >>84(本編読了後お勧め)
「なぁ、ハルミ。楽しいな」
純に程遠し(愛でもなんでもない話) >>94
遺体(ヘルと???) >>8 >>11 >>12 >>13 >>14 >>15 >>30 >>32 >>52
「まだそんな顔が出来るのですか」
容姿端麗の探偵とテロ(イサキとシンザワ) >>39 >>40 >>47 >>57
「イサキは、全部綺麗だよな」
笑い話(皆の話) >>9 >>18 >>24 >>29 >>53 >>58 >>70 >>72
「道が分かれるとしても、結局は終わりは一つかなって思って。というわけでコミケ行きたい」
正体不明(未開示) >>100
設定など >>6 >>17 >>19 >>26 >>41 >>42 >>55 >>79
「ぼくらときみのさいしゅうせんそう」のヒント(本編読了後だと分かりやすいです)>>1 >>45 >>62
利府さんがぼそぼそしゃべるとこ >>2 >>3 >>4 >>5 >>36 >>43 >>44 >>48 >>49 >>51 >>54
>>59 >>60 >>63 >>66 >>68 >>76 >>77 >>83 >>85
>>90(深夜テンションです。仁丹を投げないでくださいホント。反省してるんです)
———————————————————————————————————————————
戦争に関わらない2つのお話
霧森という男(幽霊と不憫な人間の話) >>20 >>25 >>27 >>31 >>50 >>56 >>69 >>95 >>98
「俺がおまえにかけられた願の代わりになってやる」
彼と彼女(幻と花の話) >>33 >>34
「何よりも美しいものなんて、人それぞれに分け与えられているのよ」
陰陽の夢(ネガポジの話) >>101
ざれごと >>97
———————————————————————————————————————————
戦争に触れかける話
(ドラクエ9のネタを使用しています!苦手な方はご注意ください)
守り人(黒い天使の話)>>37 >>38
「この羽はあなたのためのものなの!」
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コメント有難く頂戴します!またのお越しをお待ちしております!
>>86(Tomoyamiさん)
- Re: ぼくらときみは休戦中[短編・作者の呟き] ( No.60 )
- 日時: 2015/09/29 23:41
- 名前: 利府(リフ) (ID: Bj/lm3Yj)
最近スランプ気味です。
すが付いたランプじゃなくて文が書けない方のスランプです。
某んちゃ!の人でも無いです。
次いつ更新できるかなぁ。
大丈夫です、多分この数日後に本編更新してるかもしれません。
土日とか。自分の経験上ですが。
とにかく!金曜から土日!それまで頼んでもいいかな!
もしかしたらそれまでの間にも更新して2本立て更新とかあり得るが!
(「だて」で文字変換したら「伊達」が真っ先に出て吹いた!レッツパーリィしたい!)
では某謎に満ちた歌い手様の曲を聞きながら眠る!おやすみなさいッ!さ
「さ」のヒントはその歌い手さんのトゥイッターどす
さぁ謎のメッセージを残して寝よう!
- Re: ぼくらときみは休戦中[短編・作者の呟き] ( No.61 )
- 日時: 2015/11/01 01:50
- 名前: 利府(リフ) (ID: xY9uLQrm)
謎の人の新曲聞きながら書きます
恥ずかしくなったら消す
***********
古びたアパートが、この街にあるらしい。
地図には載っていない。
ただ認知度の差が妙なのだ、理解しえないほどに。
そのアパートから800m離れた家に住む会社員はそこを知っているが、
50m離れた屋敷に住む金持ちはそれを聞いても首を傾げるだけだった。
こんなことに首を突っ込む時間はない、ミステリー小説を読み漁る暇もないのに。
だけど、そんな僕はそのアパートに興味とはかすらない、義務を持ってしまったのだ。
甘いもの好きの僕の友が、あのアパートの中にある夜に忍び込んだという。
それを僕が知ったのはその翌朝で、同時に友はそこからどこに行ったか知らないか、と聞かれた。
確かに友は仕事で疲れていたが、それで失踪するような男じゃない。
僕はそれまでアパートの存在を知らなかったが、近隣住民が「あそこはいわくつきだ」と
訴えるものだから、友の行方を休暇をもらって辿る事にしたのだ。
最初はすぐに見つかると思っていたのだ。
僕はミステリーともサスペンスとも無縁で、知ったこっちゃないというのが本音だったのに。
その数日後に、アパートの近隣住民が消えたという知らせを受けた。
消えたのは成人女性で、夫の話によれば妙に化粧にはりきって、新品の服をタンスから出して
一つ書置きを残してから家を昼方に出ていったという。
『ここには帰らないから』
これだけ聞けば見放された哀れな夫のコメディー、だろう。
皆がそう思って最初は笑い話の種にしていたが、もう一つの夫の証言によって皆が震えあがった。
「あのアパートの一室の窓に、妻の姿が見えた。ドレスを着て、
出ていく前に着ていた服を手に抱えて、紅をつけた唇で笑っていた!」
その日、アパートの存在を知らないものは大きく減った。
神への信仰が深い老人がある噂を住民に吹き込んだから、というのが一番の原因だった。
「あれは神隠しだ、心を強く保たなければ私たちは連れ去られる」
皆が不安になった。
僕もそれに悩まされて、朝方まで眠れないままだった。
老若男女問わず、目元には隈ができた。
2日後、小学生二人が家を出て10分後に消息を絶った。
最後の目撃者は、僕だった。
仲良く手をつないで、スキップしながら歩いているところを僕は見た。
僕は目を疑った。
今まで見えやしなかった古ぼけたアパートが空き地に立っていたからだ。
そこへ二人が入っていくのを止められなかった、だなんて僕は怖くて言えなかった。
次の日、アパートへの入口はドラマでよく見かける立ち入り禁止テープで閉じられた。
交番の巡査は、明日アパート内を捜査するという事を皆に伝えた。
彼の目元にも隈があって、やはり誰もが疲弊しきっているのだということを改めて僕は理解した。
翌日、パトカーがアパートの前に並んでいたが、警官の大半は何故か首を傾げていた。
早く捜査するぞ、と言う警官に若い警官はおかしそうに言った。
「警部、エイプリルフールは来年まで待った方がいいですよ?どう捜査するんです」
「…はぁ?お前何を言ってるんだ、このアパートを捜査するんだよ、分からんのか」
「アパート?」
「おい巡査長、熱あるなら帰れ。俺は疲れてるんだよ、幻聴が聞こえてくるくらいにな」
若い警官はとうとう大声で笑い、言った。
「警部、ここは空き地ですよ?こんな分かりやすい場所に死体遺棄でも?」
他の警官も首を縦に振って賛同した。
恥をかいたのか知らないが、警部らしき人は顔を真っ赤にして「明日も捜査する」と誰かに言っていた。
次の朝、巡査が心ここに非ずといった表情で腰を落としているのを住民が見つけた。
どうしたんだと聞かれると彼は突然肩を震わせて、怯えきった声で呟いた。
「目の…前で、警部が、アパートにふらついた様子で、入って、入口の少し奥で、消え、ました。
聞いたこともない歌を口ずさみながら、楽しそうに、恍惚とした表情で」
アパートの存在を知らない者は消えた。
あの日来た警官たちも頭を抱えて、住民も深夜に恐怖に耐えかねて叫ぶことも増えた。
あれからまた、何人も、何人も、消えていくばかりだった。
僕も今すぐに叫んでしまいたくて、カーテンを開いて窓を開けたのだ。
僕の掠れた叫びはフェードアウトして行った。
なにかが聞こえる。
午前3時の街に明かりはなかったが、蛍光灯は淡くあのアパートを照らした。
そして。
一つの窓から、あんまりにも綺麗な顔立ちをした男が身を乗り出しているのを見た。
明かりに照らされた彼は、色素を失ったかのような白い肌とほんの少し赤い瞳。
彼は明後日の方向を見渡していたが、僕の声に気付いたのか
ゆっくりと、緩慢な動きで、僕の目を見る。
真っ赤だった。充血している目ではない。赤なのだ。
肌も貧血を起こしたような色ではなくて、ただ元から白。
色素の薄い唇。
それがゆっくりと開いて、微かに聞こえるような言葉を紡いだ時、僕は目を見開いた。
「良い夢を」
ふわりと微笑んだ彼を見て、僕は動けなくなった。
人間の笑みではない。まるで夢の中で麻酔を打たれたかのようだ。
彼はまた口を開く。もう僕を見てはいない。
ただ、その口で、ただ暗い暗い新月の夜の中。
歌っている。
聞くだけで何もかも熱されたチョコレートのように甘いにおいを広げて溶けていく、ような声で。
僕は自分が情けなくなる気がした。
彼は僕の目元の隈を見ていたのだ、だからあんなことを言ったのだ。
それにあんなに綺麗な歌を歌っていたのに、それを僕なんかの叫びで止めさせてしまって。
僕はひどいことをした。
このお詫びをしたい。あの歌をもっと聞いていたい。そうすればきっと眠れる。
僕はスーツをハンガーから剥ぎ取って身に着け、ネクタイをしっかりと締めて家を出た。
蛍光灯がアパートを照らしてくれている。
まだ歌が聞こえる。
僕は駆けた。
どうだっていい。
僕はあそこに行って、あの歌を聞きながら眠れば。
それだけで、良い夢は溢れてくる。
アパートの前で僕は彼のいる部屋を見上げた。
僕を見ずに、ただカナリヤよりも深い、深い声で歌っている。
そして街中を見渡して、彼はぼそりと言った。
「夜が明けたら、何をしよう。トーストを焼いて、寂しい朝、私は」
僕はアパートを上る。
部屋番号は掠れていたが、一つだけ開けっ放しの鍵入れがあった。
僕はその鍵入れに描かれた番号を探す。彼の歌声の妨げにならないように、静かに。
歌が、響いている。それだけで夢心地で、頭が揺らされて意識が落ちそうになる。
それでもいい。
眠りたいんだ。安心して。
目的の部屋を見つけた。
その隣部屋からは甘い香りがして、誰かがお菓子を食べているとすぐに分かった。
そのまた隣からは、彼の声に合わせて誰かがタップダンスをしている。
僕は扉を開けた。
そこは真っ白で、ただ中心に、一つのベッド。
優しい歌が聞こえる。
子守唄のようで、僕はよろめく。
歩を進めていると、ベッドの真横で足を取られて横に転んだ。
甘い香りと、歌と、安心。
本当の安眠を手に入れた僕は、彼に夢の中でも会えれば、と思いを馳せて目蓋を下した。
******************
いつものように歌って、夜が明けたときに私はトーストを焼いた。
バターを多めに塗ったパンをくわえて、指についたまだ固まっているバターを舐めとる。
今日は喉飴でも舐めておこう。これから心おきなく歌えるのだ。
数日前まで、街中に目元に隈がある人が多かった。
みんな、歌っているだけの私とは違って、苦労していたのだろう。
だから私は子守唄を歌い続けた。
顔を洗って鏡を見る。
赤い瞳が見つめ返してきたので、タオルを取って水滴を拭いつつ目を隠した。
隈はない。
何年も前から、飲まず食わず、寝ずでもこうだ。
私が何になってしまったかは把握できないが、まぁ知るべきでもないと昔から見ないふりをしている。
私を覚えている人は何人いるだろう。もう、とうに死んでしまっただろうか。
ただ歌っていたい。
だから、ここにいる。
でもオペラ歌手の歌は最近聞かない。
そうだ、CDを買ってこようか、今日は。
久々に扉を開けて、私は隣部屋の甘い香りに気付いた。
ここで歌っている間に、誰かがここに引っ越してきたのだろうか。
いつか私の歌への感想をもらえたらいいけど。
階段を下りて入口へ向かう。
朝日を浴びながら歩いていると、10人ほどの警官とすれちがった。
私が驚いて目を見開く中、警官たちは「あの部屋へ」と呟いていた。
もしや誰かが警察沙汰でも起こしたか。
怖い話だ。
朝の8時。
街には誰もいない。
「みんな、今日はぐっすり眠っている。私も歌いたいけど、まずCDを買ってからだ」
夢を見るというのは素晴らしい、私もそう思うよ。
今を夢を持って生きるのは、私にもできる。素晴らしいことだ。
でも、ね。
「夜を永久に過ごす人とは、仲良くなれない。そんなの、狂乱者だ」
**************
このまちにゆめをうたう
(でも、わたしの自己満足なんだから、誰にも届いてないさ)
- Re: ぼくらときみは休戦中[短編・作者の呟き] ( No.62 )
- 日時: 2015/11/21 16:57
- 名前: 利府(リフ) (ID: xY9uLQrm)
利府です。
ぼくらときみのさいしゅうせんそうのストーリー練り固まって来たし、
そろそろ更新速度高めたいなって思ってます。
未回収の伏線はないようにしたいと切実に考えている。
というわけで、hintいきますかね。自分用っぽいけど。
————————————————————————————————————————————
hint 3
・無能らしくないモモ
・Wait a bit!
・日々これ戦争
・水は火を、火は水を
・エゴ
・変わり者から消えていく
・ルピナス
・人類にとっての夢
・ロビンとイワン
・地と天
・研究
・きっとそれで十分
・子の成長を見守ってやるのが親
・唯一無二
ここまで。少ないとか言うな、それだけ伏線ないから安心して読めるという事だ。
しかし利府さん小説のクオリティの保証はできません。
- Re: ぼくらときみは休戦中[短編・作者の呟き] ( No.63 )
- 日時: 2015/12/07 21:47
- 名前: 利府(リフ) (ID: 1/l/Iy6H)
最終戦争まだ続きますって。いやほんとですって。
利府さんは現在突っ込むはずのなかった伏線がある事に気付きどうすりゃいいんだよと
頭抱えながら新しい伏線を練っております。
多分これまでの話にもどっさり詰まってますから探してみて下さい。
とりあえずロビン君の過去編終わったらいろいろ大変です。
12月に入りましたので学校ない日を狙ってドドンと更新したいつもりです。
冬休みは特に進めたい。今のところ燭台切光忠のエプロン姿と某謎の歌い手さんの声で
わたしはげんきにやれています。わたしは元気です。
というわけで本当に不定期更新です。申し訳ありません。
停滞期乗り越えて頑張ろうと思います。ハイ。
近日更新。最終戦争よろしくおねがいします。
- Re: ぼくらときみは休戦中[短編・作者の呟き] ( No.64 )
- 日時: 2015/12/24 17:01
- 名前: 利府(リフ) (ID: W3Oyo6TQ)
2話も更新できたんですから短編も上げてもいいですよね!ね!
ちなみに前上げた短編と同じ人が出ます!察せる人は察して下さい!
ある曲を参考にしているのでご注意ください、銀河と名がつく曲です
—————————————————————————————————————————————
俺達は深すぎる藍の色の空の下で眠っていた、…はずなのだ。
星は水面に映り込んでいて、確か雲一つなかった気がする。
少し目蓋が軽くなって、ゆっくりと開いてみれば、俺の目の前には彼が腰掛けていた。
目の前にあったのはさっきの夜空じゃなかった。でも、代わりにそっちは真横の車窓に見える。
あのいつも待ち合わせをして、針を見て名残惜しくも二人別れた時計塔は遠かった。
彼は相変わらず白い肌を黒髪の隙間から覗かせてはいても、目蓋が開く気配はない。
どう声を掛けても覚ませない幸せな夢を見ている様に見えたが、この異様な情景を打破するためには
この人も連れて行かなければどうしようもない。
俺は何も知らないのだから、この人が知っているのかもしれない。そう希望を抱くしかなかった。
「…起きて下さい。面倒臭いんで、寝たふりしてる男を置いてくわけにはいかないんです」
「……」
返事がないという事は可能性は1つではないという事だ。まず寝たふりに限るという結論は崩れた。
さて、他にも考えるとすれば俺の脳じゃ丑三つ時までかかる。今は何時か知らないが、
まだ夜に入ったばっかりだろう。俺もそんなに寝た気はしないし、寝る前は7時くらいだった気がする。
時計塔の輪郭は見えても針は見えたもんじゃない。だからそう信じるしかなかった。
彼の目はまだ目蓋の裏の暗黒を見据えている。
「おはよう」
「うわ早かったですね。何で俺のやる気が出た途端削ぐんですか。信じらんねぇです」
と思ったら、緩慢な動きで頭を上げた。
開いた瞳は早速隣の車窓を見て、その困惑を喋り出しそうな程揺れていた。
なんで俺こんなところにいるの、と言いたげである。
これはどうしようもない。彼がここまで困惑するなら全知全能の神しか答えは知らないはずだ。
俺は溜息を吐いて今にも立ちあがって状況を確認しようとする彼の肩を両手で押さえた。
「目をこすって自分の足元見て下さい。今立ち上がったらあと一歩でそれを踏むとこだったんですけど」
そんな不服そうにこっちを睨まれたくはない。たまには弁解させろ。と考えつつ
片手を肩から離してそれを掴み取り、少し間を開けて言った。
「いかにもいわくつきの柄の切符。ご丁寧に既に拝見済みです。で、更にご丁寧に特急の二文字」
「うん」
「で、見て下さい。車窓にはまばゆいばかりの銀河。時計塔と水面はあんなに遠く。
俺の仮説はあと一個の真実で証明されます。よく聞いて下さい」
「ちょっと待ってくれ。私、あれがどうしても白い鳩に見えるんだよ」
「あんたそういうのにも天性の才能あるんですか。銀河鉄道ですよ、宮沢賢治ですよこれ」
あぁ、聞いたことあるなぁ、それ。でも童謡でもないし、歌以外私は聞かないしなぁ。深くは知らない。
と呑気にぼそぼそ呟く彼はいつも通り過ぎて、呆れを通り越して二の句が継げなかった。
銀河の中に放り出されても、彼は息を詰まらせるだけで外面は何も変わらないのかもしれない。
ほうき星がちょうど見えたが、それにも目はくれず彼はまた色素のない艶やかな唇を開けた。
「確か、誰か死ぬんだっけ。登場人物が…鎮魂歌でも歌ってやればいいのかな?」
「あんたの歌でカムパネルラは俺たちを帰してくれるんでしょうかね」
少々の皮肉を込めた言葉に彼は全く動じはしなかったが、苦笑して俺に言うでも無い何かを言った。
曰く、…さぁね、ジョバンニと。
「あのですね、…俺はあんたの歌は心から尊敬してますが、その態度は気に食わないんですよ」
「そうか。だけどね、私は誰かに好かれるために歌ってたんじゃない。歌が好きだから歌ってただけだ」
「ほらそれ。あんた、歌を聞く人間も好きになってくれませんか。いい加減に」
この人が人間だという事は、何よりも俺が理解しているつもりだ。
言葉で表せないほど彼の歌には惚れこんだ。今も表せないからまだ、この人の言動に呆れても隣にいる。
まぁ歌以外に惚れてると言ったらそれは珈琲に砂糖じゃなく塩を少しだけ混ぜたような、
つまり舌の上でやっと違和感を抱く話になるが。無論それはない。多分。
でも、口では気に食わないと言うが、心ではこう言う。
嫌いじゃない。慣れてきただけかもしれないけど。
銀河はその心情のようにさらさらと流れもするが、別の場所ではぐるりと緩やかに渦を巻いていた。
「ふと思っただけの事だけど、言っていいか」
「どうぞ。もう驚きません」
「銀河鉄道の話、たしか汽車は幾つもの場所に停まらなかったかい。
客も他の車両で夢を見ているのかは知らないが、誰一人いないし、それに車掌は何処だ」
(———…あれ、)
珍しく正論を言った。
逆にそんな流れに持ち込まれると俺も困る。だって、大まかなストーリー程度しか理解していない。
そんな話を突然してくるから俺は気に食わないとしか言えない。
思い返せばいつもいつも、こんなペースだ。
「いましたっけ、車掌なんて」
「いた。第8章か9章ぐらいにいた」
「…そっすか、あんたさっき詳しくないみたいなこと言ってませんでした?
王様から嘘つきにでも転職するんですか」
さっき言った言葉よりも皮肉も増やして、苛立ちも少々加えてやると、
彼もとうとうその整っていてもどこか謎めいた、張り付けている表情をすこし歪ませた。
「…おかしいな、昔読み漁った記憶もないのに。いまさら、変なところだけ思い出すね、私は」
「言い訳はよしてくれないと本格的に嫌いになりますよ、声以外」
「お前も大概変だな、私と同じだよ。…ほら、長々話をしていたら、特急のくせに早く着いた」
「…もう終わりってことなんでしょうかね?諦めが早いですね、このカムパネルラ」
俺がふと言った言葉に、彼はさっきの苦笑とまるっきり違う微笑みを見せた。
「…そうだね、早いね」
鉄道は止まっていた。折り返しについては何も知らないが、星には行くしかないだろう。
勝手に乗せるだけ乗せて、降りたらすぐに去るなんて事だけはないように願って、席を立った。
********************
後日更新します、平日と言う名の時間切れでござんす
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