二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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薄桜鬼×緋色の欠片
日時: 2012/09/26 13:48
名前: さくら (ID: cPNADBfY)



はい。
初めましてな方もそいうでない方もこんにちは。
またさくらが何か始めたで。と思っている方もいると思いますが
薄桜鬼、緋色の欠片好きの方には読んで頂きたいです


二つの有名な乙女ゲームですね
遊び感覚で書いていくので「なんやねん、これ」な心構えで読んでもらえると嬉しいです←ここ重要


二つの時代がコラボする感じです
あたたかい目で見守ってやって下さい

それではのんびり屋のさくらがお送りします^^

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Re: 薄桜鬼×緋色の欠片 ( No.62 )
日時: 2013/03/22 21:14
名前: 彩音 (ID: Gd7LnyXy)

また感想書いちゃいます。
先ほど読み終えたばかりです。新しいのが出たらすぐチェックしちゃいます。
それにしても、いつもながらさくらさんの書く小説はすごいですね〜。
どうやったらあんな風に書けちゃうんですか?
私も最近書いてるんですが、うまく書けなくて悩んでます。
(ちなみにシリアスです)
暇があったらぜひ見にきて下さい。

ではまた……

Re: 薄桜鬼×緋色の欠片 ( No.63 )
日時: 2013/03/23 13:24
名前: 桜舞姫 (ID: O72/xQMk)

久しぶり、さくら。
また更新されてるね!

こっちは受験生になるからさ、物語製作にあんまり身が入らないよ。
てゆーか、「紙ほか(新)」の方の『夏目友人帳』の更新ばっかり、
ついついしちゃうんだ。

ま、お互い頑張ろうな♪

Re: 薄桜鬼×緋色の欠片 ( No.64 )
日時: 2013/03/25 21:40
名前: さくら (ID: MmCaxbRG)

彩音さん

さっそくの読んでいただきありがとうございます^^
上手に書けた、書けないは別にして私はどちらでもなくて、
書きたいものを衝動に任せて書いていますので
はたしてこれが上手なのかどうか…汗

え、彩音さんも小説を書いているんですか!?
また見に行きます!


桜舞姫ちゃん

久しぶりだね^^
そっかぁ
最近桜舞姫ちゃんの更新がないなぁ、って思ってたけどそっか。
受験生となれば大変だもんね
高校受験かな?

夏目友人帳は漫画を少ししか読んでないけど
でも面白いよね
また読みにいくよ!
受験勉強も頑張ってね!

Re: 薄桜鬼×緋色の欠片 ( No.65 )
日時: 2013/03/25 21:47
名前: さくら (ID: MmCaxbRG)

激しい雨音を黙って聞いていた拓磨はふっと息をつく。止む気配がいっこうにない雨は気持ちまで陰鬱にさせた。

「そう落ち込むなって。何も珠紀が倒れたのはお前のせいじゃねぇんだからよ」
「けどあいつが飛び出していった原因は俺にある…」

拓磨は曇った表情で何度も自分を責めていた。
同室している真弘はおおかた二人に何があったのかは聞かなくてもわかる。真弘は落ち込む拓磨に溜息をついた。
倒れた珠紀は隣の部屋で千鶴が着替えをさせている。濡れた着物で布団に寝かすわけにはいかない。
千鶴の声がかかるまで部屋で待機していた二人に、足音が二つ近づいてきた。

「真弘ー?あぁ、いたいた。お前と拓磨に客だぞ」
「失礼します」
「大蛇さん」

藤堂が先に顔を覗かせ、次に大蛇が姿を現した。藤堂は客を案内し終えると部屋を後にした。
障子を静かに閉めて入室した大蛇は険しい表情で二人に向き直る。

「心配して来たんですが…二人とも、お気づきですか?」
「あぁ、封具が破られた…まずいことになってきたぜ」

大蛇は腰を下ろすと部屋を見渡して小首を傾げた。

「珠紀さんは…?」
「ちょっと倒れちまってな。隣の部屋にいる」
「本当ですか!?」
「まぁそんなに重篤じゃねぇから大丈夫だとは思うけど…」

真弘は隣の部屋に視線を送った。大蛇も真弘と同じく視線を向けて心配そうに目を細める。

「…それで、拓磨君に元気がないのはどうしてですか?」

うな垂れる拓磨に視線を移して大蛇は優しく問うた。

「いつものいざこざだよ、大蛇さん。気にしないでやってくれ」
「…なるほど…ではその問題は珠紀さんと二人で解決なさって下さいね」

事情を把握した大蛇はにこやかに微笑むと、拓磨は顔を上げてばつが悪そうに大蛇を見た。また傷に塩を塗るような発言をする、と真弘は内心大蛇に呆れた。
時々だが大蛇は子供っぽい言動をするときがある。それは決まって怒っているときが多いいのだが、今回も拓磨に怒りを覚えたのだろう。拓磨に責任があるわけではないが、今はいつも傍に居てやれない大蛇からすれば珠紀が心配に違いない。

「あー、それでさ、大蛇さん。今日町でおかしなことがあったんだけどさ…」
「おかしなこと?」

この空気のなかに居ると肩身が狭いと感じた真弘は話題を変えた。

「柄の悪い奴等に絡まれたときに妙な奴が俺を狙って攻撃してきたんだよ」
「妙な奴、というのは?」
「んー…例えが間違ってるかもしれねぇけど、芦屋っていただろう?あいつが使っていた呪符とよく似たものでやられそうになったんだよ」
「顔は見たのですか?」
「いや、暗くてわからなかったし、すぐどっかに消えちまったから…」

腕を組んで思案し始めた大蛇を真弘は黙って見つめる。どんなに考えてもその怪しい人物が何者かわからなかった真弘は大蛇の知恵を頼るしかなかった。
何か思い浮かんだのか、大蛇は眼鏡を光らせて呟いた。

「典薬寮…?」
「え、あ?典薬寮?何でだ?」
「典薬寮も我々と同じく古い組織です。この時代にいてもおかしくありません…けれどなぜ私達の存在を知っているのでしょう…一体どうやって嗅ぎつけたんでしょうか」
「俺達の存在を知ってる奴なんて…ここの人間だって少数しか知らねぇし…」

再び腕を組んで考え込む。だがやはり考えても思い当たる節がない。

「何にせよ、接触してきたところを見ると、これからもこちらの動向を探ってくるに違いありません。気をつけなければいけませんね…」
「だよな…あー封具は破られるし、典薬寮もいるのかよー」
「困ったものですね…この時代の玉依姫は健在でしたよね」
「あぁ。確か玉依姫と守護者が一人…」
「一人では少々苦しいものがありますね…」
玉依姫が覚醒していれば力は絶大だが、その力を受けて動ける守護者が少なければ封印の守りも手薄になってしまう。五つの封具に加え、鬼斬丸も守護しなければいけない。
拓磨達のように守護五家全員が揃っていることは年代によっては稀なことだ。
昔の守護者達は少数でも封印を守ってきた。それを考えるととても難しいことだったのだろうか。
人数でカバーできることも人手がなければ封印も手薄になるに違いない。

「だから封具が破られたのでしょうね…」
「その可能性は高いと思うぜ。それに、確かこの時代の玉依姫は体が弱いらしい」
「よくご存知ですね、鴉取君」
「歴代は無駄に覚えてるんだ。けど、封具が一つしか破られていないところを見ると…」
「玉依姫が動いたのでしょう。けれど、体が悪いのでしたら少し気になります」

二人は目を合わせて一つの考えが浮かぶ。だが、それはできない。ここで祐一や慎司を捜索して典薬寮の動向にも気を配らなければ。
ここを離れて季封村に行くことはできない。けれど今にも駆けつけてどうにかしたい衝動に駆られてしまうのだ。

「あーぁ…俺達は一体どうしてここに来ちまったんだろうなぁ」
「その糸口が見えれば帰る方法もわかるように思われるのですが…」

大蛇もお手上げらしい、眉根を寄せて溜息をつく。

「屯所に来るまで随分多くの妖やカミをたくさん見ましたよ。あぁ、やはり封印が弱まっているから———」
「大蛇さん、今、なんて…」

それまで黙っていた拓磨が声を上げた。大蛇は目を瞬いて先ほど呟いた言葉を思い出しながら口を開く。

「ですから、妖やカミがたくさん外に…」
「どうしてたくさんいるんだよ。ここは季封村じゃない。なのにどうしてカミ達が騒いでるんだ」
「そりゃ、お前、封具が破られて封印が———」

そこまで口にして真弘は大きく目を見開いた。言葉をなくしたかのように口をぱくぱくとさせて、拓磨を見つめた。拓磨も真剣な顔つきで頷く。

「この京都に鬼斬丸がある———ってことは考えられないか?」
「まさか…」

大蛇は目を見張った。けれど拓磨の考えにも頷ける。封印が薄まり、溢れ出した負の瘴気が世に漂い、カミ達はそれに誘われてここに集まってきた。鬼斬丸がこの地にあれば、の話だが、可能性は高い。

「どうしてここに…ちゃんと神社に封印されていたはずでは…」
「どうしてか、鬼斬丸が盗まれた。そして鬼斬丸が封印を破らなければ使えないと気付いたから、今こうやって封印が解けた…ここに来たばかりのときも珠紀が倒れたらしい。どっかの奴が封印を解こうとしてるんだ」

拓磨がひとつの考えを口にしてその場が静まり返る。
恐ろしい何者かの手口に、三人は顔を見合わせた。

「けれど一体誰が…鬼斬丸については村人ですら知らない。外の人間が知るはずありません…」
「あ…」

真弘が小さく声を上げた。何か思い出したのか膝を叩いて、拓磨に向き直る。

「おい、拓磨。着物を買いに行ったときに会ったあの子…覚えてるか?」
「あぁ…俺達に着物を用意してくれた…」

拓磨は呉服屋で出会った少女を思い出す。彼女も鬼だといっていた。同族のために骨を折ってくれるらしく、この時代の季封村について調査も買って出てくれた。

「あの子が言ってただろ。古い鬼がいるって…あー名前はー、風間って言ったっけか。その鬼に感づかれたらまずいとか何とか言ってたじゃねぇか」
「けど、それは可能性の話だろ?何もそいつが盗んだわけじゃ…」
「何の話ですか?」

その場にいなかった大蛇は話がわからない。真弘はその呉服屋で出会った少女とその会話の内容を説明した。
話を聞き終えた大蛇は感慨深そうに頷く。

「私達以外にそんな人が…」
「あくまで可能性の話しだから…」
「けれど鬼斬丸がここにある可能性は高い」
「季封村に行くにも行けないってわけか…」

真弘は不敵な笑みを浮かべた。状況は悪い方向へと進んでいるにもかかわらず、真弘は笑わずにはいられなかった。
危機的状況になればなるほどその状況を楽しんでしまう。

「鬼斬丸に典薬寮…祐一に慎司も気になるし…楽しくなってきたな!」
「どこが楽しいんすか…」
「とにかくお二人は邑村君と犬戒君の捜索をお願いします。私もできるだけ調べてみます」

事態の重大さを確認した大蛇は立ち上がった。帰って自分なりに動くつもりらしい。
見送ろうとした二人を制して、大蛇は拓磨に向き直る。

「珠紀さんを泣かせるようでしたら、私が引き取っても構いませんよ」
「悪いことをしたと思ってる…」
「ではしっかりしてもらわなくては。ここは私達が住んでいた平和な場所ではありません。妖も人も…危険はどこにでも転がっているのですから」

釘を刺された拓磨はただ頷くことしかできなかった。

「では、私はこれで。何かあればいつでも呼んで下さい」

そう言い残して大蛇は部屋を後にした。

Re: 薄桜鬼×緋色の欠片 ( No.66 )
日時: 2013/03/26 00:00
名前: さくら (ID: MmCaxbRG)

残された真弘と拓磨はふっと溜息をつく。

「このこと、珠紀には言うなよ。心配するから」
「わかってます…」
「あー!!いつまでも暗い顔すんじゃねぇよっ。鬱陶しい!何があったかは知らねぇが、さっさと仲直りしてこい!」

思いっきり背中を叩かれた拓磨は痛みに声を上げる。真弘からすればいい迷惑だ。二人が不仲になる度に気を遣い、配慮をしてやっと二人が落ち着くのだ。
気疲れすることこの上ない。
すると障子がすっと開いた。障子の前で突っ立っていた二人は自動ドアのように開いた障子に声を上げて驚いた。

「きゃっ…ごめんなさい。珠紀ちゃんが目を覚まして…拓磨君を呼んでるの」
「俺?」
「さっさと行って来い!」

真弘が拓磨の太ももあたりを足で蹴って部屋から押し出した。つんのめる拓磨に真弘は容赦なく障子を閉める。

「あ、の…良かったんですか?」
「いいんだよ。あーぁもう面倒くさい…千鶴も今はそっとしといてやってくれよな」
「あの、珠紀ちゃんと拓磨君って…」

再び真弘は腰掛けて近くにあった座布団を引き寄せて、折りたたむとそのまま寝る体勢に入った。

「そ。見てのとおり。全く他人がどれだけ気を遣ってやってるか…」

千鶴はその言葉を聞いて隣の部屋に視線を送る。
一方追い出された拓磨は渋々隣の部屋に足を向けた。障子で部屋を仕切っているたあめ、ノックすることもできずどうしたものかと部屋の前をうろうろしていると部屋から声がした。

「拓磨…?」
「入ってもいいか…?」

短く了承の返事をもらうと拓磨は静かに部屋に入った。
着替えをしたのか単姿で珠紀は布団から状態を起こしている。拓磨は珠紀の近くにおずおずと腰を下ろす。
ほんの少しの間沈黙が流れただけなのに、拓磨は一時間ほど経ったような気がした。
正座した状態のまま、拓磨が口を開こうとするより早く珠紀はぽつりと呟く。

「私って口ばっかりだね…」
「え…?」
拓磨は顔を上げて珠紀の顔を見る。珠紀は布団を握り締める手を見つめて続けた。

「自分で外に出たい、って土方さんにお願いしたの。私も祐一先輩や慎司君を探したかったから…拓磨達だけ外に出て、私は屯所で大人しく…なんてできないから」

珠紀が顔を上げて拓磨を見つめた。後悔と嫌悪に彩られた瞳が揺らいで、拓磨はその視線に何も言えなくなった。

「でも…今日外に出て実感したの…自分は弱くて、ずるい人間なんだって…」
「珠紀…」
「一人で町にいたとき、封印が解けたときすごく怖かった…誰もいない…頼れる人も、知ってる人も…怖くて…恐くて…助けて、拓磨って思ったの…勝手だよね。外に出たいって私から言ったのに…」

拓磨から視線を外して、珠紀は再び自分の手を見つめた。
青い唇に白い肌。外の雨はとても冷たかった。自分が思っているほど世界は優しくない。身をもって実感した珠紀は後悔の念に苛まれる。

「馬鹿だよ…私…拓磨に酷いこといったのに、それでも恐いと思ったときには助けて欲しいって思うなんて…」
「珠紀…」

拓磨はそれ以上聞きたくない、というようにそっと珠紀の唇に手を当てた。
冷たい唇だった。拓磨はその手を頬に滑らせ、優しく撫でる。

「冷たい…寒かったな。身体はもう大丈夫なのか」
「うん…」
「お前は間違ってない。恐いと思うことは誰だってあるよ。けど、もう勝手に外に出るなよ。どれだけ心配したか…」
「うん…うん…ごめんね。ごめんね…」

珠紀は拓磨の手を握って目から涙を零した。ビー玉のように丸く澄んだ涙は頬を伝ってこぼれ落ちる。

「お前は強情だから…やるって決めたらやるんだろ?」

拓磨の優しい声音に珠紀は深く頷いた。恐い目にあっても意志はかわらない。

「いいよ、それで…俺はお前を守るから…どこに行っても追いかけるから…」

拓磨は珠紀の肩を抱いた。全身が冷え切っていて微かに震えている。
そっと広い背中に手を回して珠紀は泣き咽ぶ。

「けどあんまり心配させるなよ…今日みたいなことはもう無しだからな」
「うん…」

切実な声から拓磨がどれほど心配していたのか伝わってくる。珠紀は泣きながらも何度も頷いた。
珠紀の濡れた髪を手で梳きながら拓磨はその腕に収まるぬくもりを感じ取る。

「あと…勘違いしてるなら訂正する。俺は千鶴とはなんともないし、特別なことも何もない。これだけははっきり言っておく」

体を離して拓磨はしっかりと珠紀を見つめて言い切った。

「俺が本当に好きなのは…その、お前だけだから…」

顔を赤らめながら言うところをみると本当のようだ。つられて珠紀も頬を染める。

「ごめん…拓磨を信頼してなかったわけじゃなかったんだけど…」
「知ってる。俺も酷いこと言って悪かった」

二人は互いの温もりを求めて再び抱き合った。拓磨は体の隙間をなくすように腕に力を込めて珠紀を引き寄せる。
何度も困難が目の前に立ち塞がってきた。その度に迷い、惑い、苦しみ、二人で答えを出して進んできた。
これからもそれは変わらない。二人で答えを探す旅を続けていくつもりだ。
強く固く抱き合った二人は時間がどれだけ経とうが良かった。もっと温もりを感じていたい。ずっとこのままで———

「へぇ、やっぱり君達そういう関係だったんだ」

すると突然障子が開いた。そこに立っていたのは沖田と原田だった。
部屋にいる二人を見下ろして沖田はにんまりと悪戯っぽく笑う。
二人は素早く体を離して互いの距離をとった。沖田と原田は珠紀の部屋に入ると珠紀の布団の近くに腰掛ける。

「や、違っ———」
「やっぱそうだったか。そんな気はしてたけど…」

原田は納得したように何度も頷く。

「違います、あの、これはっ…」
「悪かったな。あんまりいい気分じゃなかっただろ」
「え、いや…」

訂正しようとする珠紀ではなく、拓磨を見つめて原田は謝った。
原田が言っているのはきっと今朝のことだ。何もかもお見通しで、この人には叶わないと拓磨は感嘆した。
誤られると思っていなかった拓磨は居心地が悪かった。
原田に妬いていた自分が恥ずかしくなり、拓磨も頭を下げる。

「俺も変に睨んだりして…すみませんした」

拓磨が頭を下げる理由がわからなくて、珠紀は首を傾げた。原田と拓磨にしかわからない何かがあるのだろうか。
目を瞬く珠紀を見て、沖田はうっそりと笑った。

「君、今日屯所の外に出たんだってね」
「あ…」
「あんまり単独行動は良くないなぁ。君、自分の立場わかってる?ここに居候してるだけなんだから、外に出て僕たちに迷惑かけたりしたら、どうするつもりだったの?」
「それは…」

言い募ろうとする拓磨を制して、沖田は続ける。

「自分が弱い存在だって自覚してる?すぐ近くで見つかったから良かったけど、もし不逞浪士にでも出くわしたらどうしたの?自分でどうにかできた?僕たちに迷惑がかかるってわからなかったの?」
「…すみません。身勝手で軽率だったと反省してます…」

珠紀は深く頭を下げた。それを見て沖田はつまらないというようにはぁっと溜息をついた。

「お説教はここまで。今回は土方さんには報告しないけど、次はないからね?」
「はい…」
「それより、珠紀。お前体は平気なのか?」

千鶴から聞いたのかもしれない。原田は身を乗り出して珠紀に詰め寄った。

「もう大丈夫です。一時的なものだったので…」
「なら良かった。明日の晩に俺達の隊が三条大橋の警護を任せられた…いけるか?」
「はい。行きます」

珠紀の答えを聞いた原田はひとつ頷くと立ち上がった。

「それを聞きたかっただけだ。邪魔したな」

原田が退出しようと障子に手をかける。沖田も立ち上がると同時に拓磨の腕を引っ張った。

「君は今から巡察だから。ほら、行くよ」
「え、あ、ちょ———」
「いってらっしゃい、拓磨」

沖田は立ち去り際、珠紀を振り返る。

「君は千鶴ちゃんに似てるから…僕も目を離せないのかもね」
「え?」

よく聞き取れなかった珠紀は首を傾げるが、沖田はもうそれ以上語らずに拓磨を引きずって部屋を後にした。
珠紀はしばらく呆然とした。一瞬沖田がひどく優しい目をしたからだ。
だがあの視線は自分に向けられたものではないと感じた珠紀はさらに首を傾げる。
障子が開きっぱなしで出て行った一行の後を見つめた。空からは相変わらず雨が降っていて、不穏な空気が漂っているようで落ち着かない。
陰気な空気を打ち払うように珠紀は立ち上がった。

「だめだめっ!いつまでもうじうじしてないで、ちゃんとしなくちゃ!」

空に向かって珠紀は自分を奮い立たせるために叫んだ。


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