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- 捏造満載でヴィク勇? かみさまのおはなし リクエスト募集
- 日時: 2017/04/08 14:14
- 名前: 五月雨 (ID: qbtrVkiA)
題名のまんまです
書きたくなったのでヴィク勇行こうと思います
けどヴィク勇はすでにくっついてる熟年夫婦なのでヴィク勇要素は薄めです
誤字脱字はあったら教えてください
捏造が酷いです
コメントは泣いて喜びます、誹謗中傷、荒らしはご勘弁を
オリキャラがでてきます
完結できるかもわからない不定期更新ですがお願いします!
現在リクエスト募集中!カプさえあれば大体は書ける(クオリティはさておき)ので気軽にリクしてくださいね〜。シチュエーションや属性はお好みでどうぞ♪
- Re: なんとなくだけど 1 ( No.54 )
- 日時: 2017/03/23 20:57
- 名前: 五月雨 (ID: RGrKDPzX)
「……………はぁ」
家に帰りたくない、母に、父に、酷いことをしてしまった。
冷静になって考えると、自分のしたことは欲望の塊のようだ。汚くて、ドロドロで、触れるだけでその人も汚してしまうような。優しい両親になんてことをしたんだろう、自分のために利用して、その上それを誤魔化した。なんて自分は醜いんだろう。
自己嫌悪と罪悪感と嫌悪感の渦はどんどん深く渦巻いていく、全部呑み込んでしまいそうな真っ黒の渦。最奥部の中心にいるのは僕だ。そんなつもりはないのに、周りも巻き込みながら深いところに潜っていく。そんな自分がたまらなく嫌いだ。そうやってまた嫌悪感が産まれ、更に渦を大きくする。
ギリギリのところで渦の中から掬い上げてくれたのはシエルだった。
「アーネスト?」
「…シエル」
「帰ろうぜ、リーナは練習あるからってもう帰ったぞ。」
「…………あー、…うー?うーん。」
「どうした?」
どうした?と優しくこちらに問いかける。シエルは優しい。凄く優しい。あんまり人に甘えたくない僕でも少し、ほんとに、ちょっとだけ、ほんの少しだけ、甘えてさせてくれる絶妙な声音に、ついつい気を許してしまうのだ。
「…やー、家に帰りづらいなー…って。」
「ふーん。じゃあそのままリンク行っちゃえば?」
「へ?」
…その手があったか。
「シエル」
「ん?」
「命の恩人だよ。遊びにくる?」
「やった。行く。」
ふわっ、と爽やかに笑いながら、行く。と女子なら腰砕けになりそうな甘ったるい声で僕に言う。こうしてたまにシエルを僕の練習してるリンクに誘うのだ。僕のスケートを好きだと、ファンだと言う彼に演技を見てもらうと何だか落ち着く。今日はスポンサー対応でユーラがいないから大丈夫。リンクメイトもシエルはみんな僕の友達だと分かってるのでなにも言わないし。
「さ、行こ。アーネストのショート見せてよ。」
「えー…コンパルソリーとか基礎練習やってからね?」
ともだち。陳腐な響きで、だけどちょっと落ち着く言葉。長期休み明けでも屈託なく笑いかけてくれるのがありがたい。
…母さんにはメールしとこう。
- Re: 閑話 ( No.55 )
- 日時: 2017/03/23 21:00
- 名前: 五月雨 (ID: RGrKDPzX)
あの子の事だから何も心配要らないだろうけど
でも僕はあの子の親だから
必要なくても心配してしまう
「……気にしなくていいのになぁ」
「ん?」
「何でもないよ」
たまたま家にいた旦那に反応されて少し戸惑う。
引退してから、彼といる時間は減り、アーネストと居るようになった。それでも一人の時間が増えて、独り言が多くなった気がする。
- Re: なんとなくだけど 2 ( No.56 )
- 日時: 2017/03/26 20:22
- 名前: 五月雨 (ID: NegwCtM0)
ひんやりしたリンクの空気を吸い込むといつと落ち着く。ここが僕の生きて死ぬ場所だという実感が湧くのだ。リンクメイトの氷を削る荒い音を聞きながらウォーミングアップを始めた。
「ごめん、ちょっと背中押して」
「ん、」
シエルに手伝ってもらいながら体をあっためて、手早くシューズの紐を結ぶ。それからエッジカバーを外して滑り出したとき…体が一気に軽くなった。うっとりと目を閉じてゆっくりリンクを一周する。氷を滑ると重力から解放されるのだ。そうだ、即興でステップ踏んでみよ。皆をビックリさせるには、いつでも新しい気持ちで滑らなきゃね。
大きく、優雅に腕を広げて……そう、鳥みたいに。
ゆっくり目を開けると、そこにはリンクじゃなくて空が見えた。綺麗な青空だ。雲一つない快晴の空。
まるで、父さんの瞳みたいに。
- Re: なんとなくだけど 3 ( No.57 )
- 日時: 2017/03/28 04:26
- 名前: 五月雨 (ID: NegwCtM0)
「…」
面白くない
そうヴィクトルなら言うだろう
そんなステップだったと思う
何かに囚われたようなエッジワーク。歯切れの悪い踏み込み。動きにのびやかさがなく、体が安定していない。
そんな技術面のことだけじゃなくて、もっと単純なこと。気持ちが乗らないだけのこと。
「…はぁ」
思い浮かんだのが父さんじゃなくてヴィクトルなことに嫌気がさす。自分にとっての彼は越えるべき対象なだけで、親として慕っているのではないみたいだ。そんなことない、といいきる自信がなくなってきたのは事実で、罪悪感でいっぱいになった。
「アーネスト?」
「なに?」
「……や、なんか、なんとなくだけどさ、」
リンクサイドのシエルのところに水を飲みにいく、シエルが何故か戸惑いながら僕に言葉を紡いだ。
「おまえ、さっきヴィクトルさんに似てたなぁって。」
…………………は?
- Re: なんとなくだけど 4 ( No.58 )
- 日時: 2017/03/28 04:44
- 名前: 五月雨 (ID: NegwCtM0)
僕が?父さんに?似てる?
「いや、ほんとになんとなーーくだけどさ。ほら、昔お前の家で見せてもらったやつ…えーと…water and sugar?あれっぽかった。」
「…」
母さんにまだ出会う前のころ、行き詰まっていた父さんが滑ったエキシビションだ。
なに?どういうこと?僕が行き詰まってるって言いたいの?
よっぽど僕が怪訝な顔をしていたのか、少し話しづらそうにシエルは言う。
「…すげぇ失礼かもしれないんだけどさ、これからどうしよう?って迷ってるみたいに俺はあのプロが見えたんだ。砂糖と水、なんて剽軽なタイトルの曲を面白おかしく滑ってんのも、白々しいというか…それを隠すために見えた。今のステップはそれにちょっと似てたな。一瞬何か見えたみたいな顔した後に一気に足が重くなってた。鳥に見えるのに凄く重々しくて違和感すごかった。…これは俺の話なんだけどさ。大事なこと見失ってるときってそうなるんだよな。自分が何のために跳んでるのかわからなくなる。勝つためだけど、それだけじゃない。そこ思い出すまでは記録も上手くでないし勝てない。俺なんかよりよっぽどわかってるだろうアーネストに言うのもあれなんだけどさ。」
そこで彼は一旦言葉を区切った。
蒼の瞳はもう戸惑ってなんかなくて、真っ直ぐ真摯に僕を見据えていた。
「何のためにやってるのかちゃんと覚えとけよ。」
何のために、誰のために、
僕のスケートは誰のため?
…知ってる
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