複雑・ファジー小説

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Love Call
日時: 2012/01/24 17:36
名前: 葬儀屋 (ID: cX9VSRxU)
参照: http://ameblo.jp/686-7777/image-11014716005-11476432890.html

↑王翔さんに翡翠ちゃん描いてもらいました! 参照よりどうぞ。

葬儀屋です、初めまして。

 私は初心者&センス全くないです。あくまでも趣味でやっているので、ド素人の文章が苦手な方は今すぐ戻ってください。

 更新も一週間に一回程度です。

 「こんな小説、意味分からねぇしw」「荒らしちゃお〜っとw」「センスないしw」と思われる方は、見ないようにしてください。

 前置きはこれほどで。どうぞ、お願いします。


 コメントなどを挟まずに読み物だけを読まれたい方は、下の方から読んでいただけるとスムーズだと思います。

◆読み物◆
〜短編〜
「Love call」
 ××× >>1
 木曜日 >>2
 日曜日 >>3
 火曜日 >>4
 金曜日 >>5
 木曜日 >>6
 水曜日 >>7
 月曜日 >>8
 木曜日 >>9
 火曜日 >>10
 ××× >>11
 ××× >>12

「ゆるい手錠と誘拐犯の花束と」
>>120
>>121
>>124
>>127
>>128
>>131
>>132

「クリスマス」
>>135
>>136
>>139

〜長編〜
「残り香」
>>13 >>29
>>14 >>30
>>15 >>31
>>16 >>34
>>17 >>35
>>18 >>36
>>19 >>39
>>20 >>44
>>21 >>45
>>24
>>25
>>28

「ネクロフィリアの足跡」
>>48 >>80
>>51 >>85
>>56 >>86
>>58 >>89
>>61 >>92
>>62 >>95
>>68 >>96
>>69 >>97
>>72 >>100
>>77 >>105
>>110

〜短い物語(詩)〜
「コーチョーセンセー」
>>57



☆お客様☆

・春野花様
・ヴィオラ様
・赤時計様
・まろん様
・はとまめ様

Re: Love Call ( No.14 )
日時: 2011/08/02 11:50
名前: 葬儀屋 (ID: 2cEGTv00)

 沈黙する部屋。

 静かにその人影は、組み立て式のベッドへと近づいた。

 そこには、少年がいた。

 少年は、ぼろぼろになった布切れのようなものを強く抱きしめ、顔をうずめ、泣きながら眠っていた。

 人影はそっと、少年の肩を揺らし、少年の名前を呼ぶ。

——あ……ギり……ん 朝霧……さん——


 そこで僕は、眼を開けた。


「……先生?」

 空っぽの部屋に呼びかける。そこには誰もいない。それでも、誰かがいた、痕跡があった。

 布を握りしめ、僕……朝霧はベッドから足を下ろした。久しぶりに自立し、眼がくらむ。

「先生……帰って来たの……?」

 静かに、ゆっくり、恐々と、朝霧は進んでいく。リビング、キッチン、書斎、資料室……。その部屋のどこにも誰もいないが、確かに、さっきまで、誰かがいた気配があった。

 最後に、玄関の靴を見る。

「……」

 一足だけ、運動靴が、無くなっていた。

 そして、とても強い、懐かしい、


 残り香があった。


 朝霧は電話に飛びつき、ボタンを押す。

「先生が帰って来たよ! 朝霧さんって……呼んでくれた! もう、部屋にはいないけど、外に行っちゃったみたい。ねぇ、早く来てよ! 先生、またどこかに行っちゃうよ!」


〈笑えないな〉

〈もう、六年だぞ? いい加減にしろ。いくら事故の後遺症だって、そこまで強いとは医者も言ってなかった。後は、お前の心理状態だって。

 お前も見ただろう? アイツは死んだんだ。


 六年前、交通事故で死んだんだ。


 分かったか〉


 そこで、通話は切れた。

 受話器を置き、朝霧は布に顔をうずめる。

 先生の白衣。先生の匂い。先生の温かい体温。

 絶対に信じない。先生は生きている。どこかで必ずいて。


 あの時の約束を守ってくれる。

 
「先生は……必ず、帰るって……言ってくれたもん」


 玄関を見る。

 確かになくなった先生の靴。

 先生は絶対に外の世界にいる。

 朝霧は、昼間の世界へ、走り出していた。

 

 

Re: Love Call ( No.15 )
日時: 2011/08/03 13:40
名前: 葬儀屋 (ID: 2cEGTv00)

 身体が燃えるように熱い。滴る汗が邪魔で仕方がない。

 朝霧は足を止め、公園の木の根元で蹲った。

 気持ち悪い。気持ち悪い。気持ち悪い……。どこにもいない。先生が、どこにもいない。

 なんで、なんでなんでなんでなんで?
 
 此処までずっと、家からずっと、あのベッドからずっと、先生の匂いを追って来たのに。


 ここから先に、僕の足は進まない。


「あ……」

 朝霧は身体を折り、口元を手で覆う。

 胃液が食道まで上がってくる。それを懸命に、飲み込んで。

 吐いた。

「あぁ……あああぁぁぁぁあああああああ!!!!!」

 黄色い液体が顎と腕に伝う。喉を握りしめる腕は震えて、意識が遠のく。目線が、上がっていく……。

 そして朝霧は、ゆっくりと地面に倒れた。


 眼を開けると、病院だった。

「この馬鹿」

 そして、軽い平手打ち。

「……痛い」

「分かってる。だけど、これで何回目だ」

 確か、十回以上だ……そう答えようとして、見上げた青年の眼に、涙が浮かんでいることに気づく。

「ごめんなさい……姉原さん」

「喜べ、唯の熱中症だ。水分取ったら、帰れるらしいから。それまでおとなしく寝ておけ」

 涙を拭き、姉原は軽く朝霧の額をはじき、病室を後にした。


 これで何回目だ。朝霧が勝手に外に飛び出し、いもしない残像を追いかけ、熱中症で倒れ、病院に送られるのは。

 先生。何故、朝霧は残像を追いかけるのだろうか。泣きながら叫び、先生……と呼び続けるのだろうか。

「花狩……お前はどうんなんだよ」

 六年前、制御をなくしたトラックが歩道に突っ込んだ。死者、一名。重症、一名の事故。朝霧は、花狩に守られ、かろうじて助かったものの、花狩の方は頭を強く強打。搬送中に脳内出血で死んだ。

 その時、花狩はこういったらしい。

「必ず、帰ります」

と。

「お前が変な約束したせいで、朝霧はバグってんだよ」

 朝霧も少なからず、頭を強打していて、脳に障害が出ていた。頭脳、精神が成長するのを妨げる障害。そのため、朝霧は12になった今でも、小学二年の勉強にいそしんでいる。

 まぁ、全く学校には現れないらしいが。

 それにこのような幻覚まで見えるありさまだ。そろそろ、本格的な入院も考えようと思っている。

「残り香……ねぇ」

 姉原は、朝霧が常に持ち歩く、布切れを見つめた。

 一応、元医師だった花狩の白衣だ。しかし、朝霧がそれを手放さないため、姉原がその一部を切り取り、持たせたものだった。

 それに、顔をうずめて見る。

 ほとんど、朝霧の汗と、唾液の匂いしかしない。

 それでも、微かに、花狩の匂いが残っていた。

 花狩が好きだった香水の匂い。強い、安っぽい薔薇の匂い。

 必ず、戻る。

「下手な嘘をつくんだな……その後、すぐに死んだくせに」

 静かに愚痴をこぼし、姉原は、壁に身体を預け、


 花狩の残り香に顔をうずめ、眼を閉じた。


「ほんと、まだ生きてるみたいだな……こうしてると」

 嘘だ。そんなもの。自分はこの二つの眼で見た。花狩の顔に白い布がかけられ、その身体が焼却炉に入れられ、骨になって、それを呆然としながら見詰める朝霧を。

 そうだ、全てが幻想だ。

 幽霊なんか、この世に存在するはずがないから……。

Re: Love Call ( No.16 )
日時: 2011/08/03 13:49
名前: 葬儀屋 (ID: 2cEGTv00)

 姉原は言う。この世に幽霊なんか存在しない。

 人間、死んだらそれで終わり。あの世もこの世もない。ただ、終わり。そこで終わって、忘れられるだけ。

 よく、死んだ人間は、その人間を覚えている他人の中で生き続けると言われるが、それも嘘。どうせ、みんな忘れていくに決まっている。

 だから、姉原は朝霧に忘れろという。先生と過ごした四年間を全て忘れろという。忘れたら、幻覚も見ないという。


 そんなこと、出来るわけがない。

 だって、先生は生きているんだから。

 先生はいつか、自分のもとに帰ってきてくれるのだから。


 いつも持っている先生の白衣は取り上げられた。それでもいい。先生の残り香は自分をいつでも包んでくれる。

 先生の声。いつまでも忘れられない。あの時先生が笑って、自分の手を握って、言ってくれた約束。

 救急車の音。大人の人たちの声。その音に掻き消えながらも、先生は何度も何度も言ってくれた。約束は守るって、そう言ってくれた。

 だから信じるよ、先生のこと、ずっと待ってるよ。


 先生のこと、忘れないよ……。

Re: Love Call ( No.17 )
日時: 2011/08/10 12:16
名前: 葬儀屋 (ID: 2cEGTv00)

「お前も見ただろう! お前の先生は焼かれて、骨になったんだ! いい加減諦めろ!」

 姉原は泣きじゃくる朝霧に容赦なく現実を突きつける。

 朝霧の手には、またあの布切れが握られていた。姉原がいつまでも泣く朝霧に仕方なく返したものだったが。

「一日中それを相手に遊ばれてちゃ、こっちもどうにもならないんだよ! 勉強はどうした! 学校はどうしたんだ!」

 今日は月曜日だった。休み明けで、学校にも行きやすいだろう……そう思う姉原の気持ちだが、朝霧は泣きやまない。

 仕方なく、姉原はいったん黙り込み、放り投げられたランドセルをつかんだ。

「今日行かなかったら、一生いけないぞ。ほら……」

 まだ新品のランドセル。それもそうだろう。数回しか使用していないのだから。こうなればどこかのリサイクルショップに売りつけた方がこのランドセルも本望なのではないかと、姉原は最近、思うようになっていた。

 無言の朝霧。布を握りしめる指の関節は白くなり、震えている。

 今日も駄目だった……。

 姉原は朝霧の髪を撫で、立ち去った。

「あー……はい、日向教室の朝霧の保護者です……はい、ちょっと気分が悪いようで……すみません」

 担任は、諦めたように苦笑していた。

「じゃあな……昼には戻るから」

 まだ無言の朝霧を残し、姉原は玄関に向かった。


——先生の靴が無くなった……——


 朝霧がそう、泣きながら訴えていたのを思い出した。

 確かに、玄関には、姉原の靴しかない。生前、花狩が使っていた靴は、必ず朝霧が並べているはずなのに。

「……そんなはずない」

 どうせ、朝霧が隠しているのだろうと思い、玄関の近くの扉を端から開けていく。

 どこにもなかった。

 ……どう言うことなのだろうか。朝霧が靴を部屋の中に持ち込むなど、花狩にしつけられていたのだがら、まずないだろう。


 悪寒が身体を襲った。


「いるのか……本当に」

 玄関で立ちすくむ姉原。遠くではまだ、朝霧のすすり泣きの声が聞こえてくる。

 今は信じられない。本当にいるのかすら分からない。

 ただ、縋ってもいいような気がした。

「花狩……」

 名前を呼んでも、来ないのは分かっている。しかし、姉原もまた。


 花狩と話してみたいと思っていた。


「いるのなら……早く来てやれよ……朝霧が寂しそうじゃないか……」

 ドアを開け、まだ低い太陽の位置を見る。

 今日も、熱くなりそうだった。ふと、朝霧のことが心配になったが、一日つきっきりでもいけいない。

 姉原は不思議な余韻に駆られながら、その場を後にした。

Re: Love Call ( No.18 )
日時: 2011/08/10 21:42
名前: 葬儀屋 (ID: 2cEGTv00)

 そして、とある”異変”が起こり始める。


「もしもーし! 誰もいないんですかー?」

 朝霧は誰かの甲高い叫び声と、チャイムの連打音で眼が覚めた。

 眠い眼をこすり、伸びをしながら恐る恐る部屋を出て、玄関に立つ。

「帰りますよー! って言うか、此処って保護者いないわけ!? 意味がわからない。第一何よ! なんでこの私がこんなボロっちい家に来なきゃいけないの!? ったく、やってられんわ」

 嫌がらせなのだろうか。ドアの向こうで甲高い声は悪口にも捕えられる言葉の連鎖を吐き続けている。

 ご近所迷惑だと、出ていって、注意した方がよいのだろうか。それとも相手にしない方がいいのだろうか。自分にとってはそっちの方が楽なのだが……。

「……」

 押し黙る甲高声。ほっとした朝霧がまた部屋に戻ろうとした時だった。

「大体……この『花狩』って人。


 六年前、死んでるじゃない。


 ここらじゃ有名よねぇ、この名前。こんな田舎ででっかいトラックにはねられて死んだなんて、珍しいもんね。カワイソー。あーやめだやめだ。こんな死んだ人の家に誰も住んでないに決まってるじゃない。ったく、人違いも甚だしいわね」

 遠ざかっていく愚痴と足音。


 死んだ。
 六年前。
 ここらじゃ有名?
 トラックにひかれて。
 珍しい。
 かわいそう。

 かわいそう? 先生はかわいそうなの? 不幸だったの? 先生は不幸だったから死んじゃったの?


「先生は死んでなんかないもん!
 
 生きてるもん!

 絶対に……絶対に帰ってきてくれるって、言ってくれたもん!」


 気づいた時には、裸足で外に飛び出して、少女の服の袖をつかんで、そう叫んでいた。

「だ……だから……そんなこと言わないでよ……言わないでよっ!」

 袖をひっぱり、講義をする。先生は生きているんだと、死んでいないのだと。


「そうだよね」


「……へ?」

 いきなりの肯定に、朝霧は思わず反論をやめ、顔を上げた。

 少女は、ネコ目を細め、にかっと笑い、朝霧の髪を撫でまわした。

「そーだよ、そう。その言葉を待っていたのだよ、君。確かに……


 君の先生の意志は生きている。


 おっと、そのことについて色々話したいところだけど、ほら、夕方だし、君の保護者の方も来るでしょ? その人と一緒に話した方がいいから……ほーら、走るぞ!」

 朝霧の手をひき、無理やり走り出す少女。朝霧はただ、その力にあらがう方法を思い付かず、小走りに手をひかれていった。


 その、少女からは不思議と、先生の匂いがしたような気がした。  


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