複雑・ファジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

エターナルウィルダネス
日時: 2020/02/13 17:55
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

 乾いた土、枯れた草木、その上に零れ落ちた血の跡・・・・・・復讐の荒野は果てしなく、そして永遠に続いていく・・・・・・

 ディセンバー歴1863年のオリウェール大陸。
西部諸州グリストルと東部諸州ハイペシアとの内戦が勃発。
かつて全盛期だった大陸は平穏の面影を失い、暗黒時代への一途を辿っていた。

 王政派の勢力に従軍し、少尉として小隊を率いていたクリス・ヴァレンタイン。
戦争終結の後、退役軍人となり、両親が残した農場で妹であるリーナと平穏に暮らしていた。
しかし、突如として現れた無法者の集団による略奪に遭い、家は焼かれ、リーナを失ってしまう。
運よく生き残ったクリスは妹を殺した復讐を決意し、再び銃を手にするのだった。

 彼女は頼れる仲間達と共に"ルフェーブル・ファミリー"の最高指導者"カトリーヌ"を追う。


・・・・・・・・・・・・


 初めまして!ある理由でカキコへとやって来ました。"死告少女"と申します(^_^)
本作品は"異世界"を舞台としたギャングの復讐劇及び、その生き様が物語の内容となっております。
私自身、ノベルに関しては素人ですので、温かな目でご覧になって頂けたら幸いです。


・・・・・・・・・・・・

イラストは道化ウサギ様から描いて頂きました!心から感謝いたします!

・・・・・・・・・・・・


・・・・・・お客様・・・・・・

桜木霊歌様

アスカ様

ピノ様

黒猫イズモ様

コッコ様

Re: エターナルウィルダネス ( No.37 )
日時: 2020/10/18 20:25
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

「・・・・・・ところでよ?ヴェロニカ。さっき、お前が言ってた事なんだが?」

「え?さっきの事って?」

 以前の事をすっかり忘れて首を傾げるヴェロニカに呆れたアシュレイは"あん時の事だよ"を語頭に

「言ってたじゃねえか。アドニスの襲撃は、ただの略奪事件じゃねぇってよ。お前が言い出したんだろ」

「僕もそれを聞いてた。アドニスで何があったんだい?詳しく、教えてくれないか?」

 話に耳を傾けていたクリスも2人の傍の丸太に移り、内容を聞き出す。

「あの襲撃事件は・・・・・・」

 急にヴェロニカは明るい性格を失い、暗い視線を足元に落とした。
紅茶を汲んだマグカップを小刻みに揺らし、燃え盛る焚き火の炎を見つめる。
唇を重く、実に言い辛そうに故郷に降りかかった出来事を話す。

「襲撃が起きる前、街にはたくさんのキャラバンがいた。中には重武装で戦い慣れた兵士達もいたの。そんな時、ルフェーブル・ファミリーの奴らが街にやって来た。奴らは住人を何人か殺すと価値のある物を全部渡すように脅してきた。キャラバンの皆が前に出て兵士達は戦えない人達を庇い、後ろへ控えさせた。数ではこっちが勝っていて、まともに戦えば、奴らに痛手を負わせられるほどの戦力だった。1発の銃声が鳴り響くまでは・・・・・・」

「銃声だと?誰が撃ちやがったんだ?」

 アシュレイは気になる点について問いかけると、ヴェロニカはより顔を憎悪でより強張らせ

「"ノーラ・マクレディ"・・・・・・アドニスの市長が裏切ったんだ」

「ノーラ・・・・・・おい、嘘だろ?あの女が街の連中を売ったのか!?」

 意外な告白にアシュレイは胸に衝撃を受ける。
その驚愕の声はミシェルを称える歓声に揉み消され、3人以外には聞こえていない。

「なるほど。その市長が1番の戦力となる兵士達を撃ち殺し、アドニス側の兵力を劣勢に覆したんだ」

 クリスの推測はヴェロニカが頭を縦に振った事で図星となった。

「そう。まんまと騙され、不意を突かれたんだよ。キャラバンも兵士も民間人だって、街の長が裏切るなんて想像もしていなかっただろうから。あんなに優しくて、暴力を嫌っていた彼女の裏にあれほどの邪悪な本性が隠れていたなんて・・・・・・」

「あの野郎がぁ・・・・・・!」

 威嚇を通り越し、敵に飛びかからんとする狼のように殺意を剥き出しにするアシュレイ。
怒りを募らせているのはクリスも同じだったが、理性を保ち、更に問いかけた。

「そのノーラという市長は裏切った後、どうしたんだい?」

「彼女はキャラバンが虐殺された後、ウォールを譲り受けて住人達を好きにするように告げてからアドニスを去った。その後は・・・・・・言いたくもないし、思い出したくもない・・・・・・」

 惨劇が目に焼き付いたヴェロニカは語尾を涙声にし、額を抱える。
アシュレイは悲しみに暮れる彼女から目を背けたまま、

「これ以上は何も言うんじゃねえ。後は俺達に任せておけ」

「アシュレイ?ひょっとして、君は・・・・・・」

 アシュレイの語尾に嫌な予感を募らせたクリスは念のため確認しようとすると

「決まってんだろ。ノーラとかいう偽善者面した虐殺クズ女をぶち殺しに行くんだよ。ご想像の通りだ」

「僕も妹を殺された身だ。君の仇討ち願望には共感できる・・・・・・だけど、僕が賛成したとしても、他の皆はどう説得するつもりなの?」

 クリスは境遇が一致している目的に対しても情に流されず、考えを聞く。

「他の奴らが反対意見を投じるのは目に見えてんだ。あくまでも俺達ギャングの目的はカトリーヌ・ルフェーブルの抹殺だからな。リチャードのおっさんは義理堅い野郎だが、わざわざ個人的な仇討ちに付き合ってくれるほど、お人好しじゃねえ。リリアだったら、俺の顔面に唾を吐き捨てるところだ。ローズも信用できねえし、デズモンドも大した戦力にはならねえ」

「じゃあ、今までの話はなしだ。2人だけで奴らに挑むのは自殺行為なだけだよ」

 クリスがあっさりと断念し、"はあ?"と怪訝な顔をして呆れるアシュレイ。

「誰も俺と心中してくれなんて、頼んでねえよ。俺だって、劣勢を承知で自分の命の値段賭けんのはごめんだ。こん中にいんじゃねえか。他人の面倒にも好き好んで首に突っ込む連中がよ」

「もしかして、ステラとサクラ、メルトの事を言ってる?」

 推薦しているメンバーを当てられ、アシュレイは"はっ"とわざとらしい笑いを吐き出し

「あいつらが加われば、死ねる気がしねえ。クリス、お前が一緒に来るように説得してくれねえか?狩りっていうもんは大勢でやった方が楽しいだろ?」

「アシュレイが行くなら私も行くよ。私も罪のない皆を殺したファミリーが憎い。一緒に仇を討たせて?」

 ヴェロニカも戦場に同行させるよう自ら志願するが

「お前はもう、修羅場を味わわなくていい。故郷の1件だけで十分だ。ノーラの抹殺には戦える奴だけ連れて行く。お前は医者らしく、野営に残って怪我人の面倒を見ててくんねえか?裏切り者の首を手土産にして帰って来てやるからよ」

「・・・・・・分かった。あなたがそう言うなら・・・・・・」

 想いを否定され、しょんぼりと黙り込むヴェロニカであったが幼馴染みの望みに従い、ここに留まる事にした。

Re: エターナルウィルダネス ( No.38 )
日時: 2020/10/06 20:16
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

 鳥のさえずりも聞こえない翌朝。
クリスとアシュレイはルフェーブル・ファミリーに寝返ったノーラ・マクレディの抹殺を図るための行動に移す。
選んだメンバーを苦労の末に説得すると、唯一事実を知るヴェロニカに他の者には嘘の伝言で誤魔化すように頼むと早朝に野営を発った。 
標的の居場所を探るため、探偵であるデズモンドにも協力を要請したのだ。
彼はクリス達よりも先に出発し、入手した情報を提供する場所として、金鉱で繁栄した山岳付近の集落である"ゴールデンバレル"を指定した。

 数時間も馬上で揺れて、ようやく辿り着いたゴールデンバレルの街は夜が明けて間もない時刻でも、その活気さを衰えさせなかった。
街は都会のように賑わい 様々な理由で訪れた人々で溢れている。
クリス達は群衆の一部として集落に紛れ、いずれ幕を開ける復讐劇に備えていた。

「仔羊のソテーとビールを頼んだ奴は誰だ!?後がつかえてんだ!さあ、早く持ってけ!」

 酒場の店主が忙しさに半分怒りを募らせた口調でカウンターに料理を並べる。
アシュレイはそれを受け取り、メニューの金額を支払う。
彼は客席に戻り、クリスの向かいに座った。

「やっぱ、街つったらこうじゃねえとな。バカ騒ぎやケンカが日常茶飯事だった故郷が恋しいぜ」

 アシュレイは人ごみで狭苦しく、騒々しい憩いの場に一際浮かれていた。

「うるさ過ぎる場所は性に合わない。飲んでもいないのに酔いそうだ・・・・・・」

 反対にクリスは合わない環境に体調を崩し、料理にもほとんど手がつけられていない。

「1週間、滞在してみろ。嫌でもなれるさ。でも、まあよ・・・・・・ありがとな。俺のワガママに付き合ってくれてよ。お前らも恩に着るぜ」

 アシュレイは一旦は穏和な人格を演じ、感謝をクリスに送るとその背後にいる別席の3人にも礼を言った。
ステラ、サクラ、メルトは嫌気が差した表情で美味しくなさそうに食事を満喫している。

「アドニスで助けられた借りがありますからね・・・・・・ですが、忘れられは困りますよ?例え、恩は恩でも傭兵は金で動くから傭兵なんです。命を危険に晒した分の報酬は払ってもらいますからね?」

 如何なる状況に置いても、ステラは見返りを要求し

「勘違いしないでよね?私はヴェロニカのためにやるんだもん。あんたみたいなゲス野郎。死んだって、誰も悲しまないよ」

 メルトは反抗的に中傷を好きなだけ投げかけた。
サクラもスープのすすり方で、機嫌の悪さが窺える。
しかし、日頃以上に嫌悪を抱かれていようが、今回ばかりのアシュレイは反省のない文句を吐き捨てようとはしなかった。 

「でよ、デズモンドにノーラの居場所を調べさせてるんだろ?随分と待ってんだが・・・・・・いつ来んだ?」

「心配ないよ。ギャングの頭脳とも称されてる彼の事だ。きっと、有益な情報を持ってきてくれるさ」

 ふいに、サルーンドアが開き、1人の人物が酒場に足を踏み入れる。
その格好は羽目を外す人々が集う場所にはお世辞を付け足しても、そぐわないものだった。
その人物は落ち着きのない動きで一帯を見回し、やがて探していた誰かを見つけると真っ先に間合いを詰める。

「皆さん、ここにいましたか・・・・・・!」

「・・・・・・え?牧師様!?」

 サクラの反射的な叫びは、まわりの注目を浴びなかった。
予想外の来客にギャングのメンバー達は彼の存在に釘付けとなる。

「ルイスさん。何故、あなたがここに?」

 クリスは胸のざわめきを心の回転で鎮め、冷静に聞いた。
想定外な展開にやる気を喪失し、アシュレイは"邪魔しやがって・・・・・・"を舌打ち1つで表現する。

「・・・・・・有り得ねえと思うけどよ?ヴェロニカがあんたにチクったのか?」

「とんでもない。実を言うと・・・・・・今朝、顔を洗おうとしていた時、偶然にも野営を後にするあなた方の見て・・・・・・詮索の誘惑に抗えず、後をつけてしまったのです」

 ルイスは自身の行為に良心の呵責を感じながら、尾行した経緯を述べる。
そして、今度は逆に問いかける立場へと回った。

「皆さんは、アドニスを滅ぼした罪深き悪魔達への復讐を謀るために、遥々、この街へと渡ったのですよね?」

「え!?どうして牧師さんが、そんなこと知ってるの!?私達以外、秘密にしていたはずじゃ!?」

 知らないはずの真実を知る第三者にメルトが唖然とした口を塞ぐ。
訝し気になったアシュレイが口調を尖らせ、取調室での尋問のように聞いた。

「探偵の掟を尊重するデズモンドが機密を漏らすわけねえ。おい、牧師さんよ。てめえ、随分と物知りじゃねえか?理由次第では血が流れんぞ?」

「それは・・・・・・実は昨日の晩、あなたとクリスさん・・・・・・そして、ヴェロニカさんの秘密の会談を耳にしてしまったのです。この日のための計画はその時に・・・・・・」

「牧師さんは随分と盗み聞きがお上手なんですね?聖職者を志さなかった方がよかったのでは?」

 その好奇心の鬱陶しさにステラは瞳を赤く変色させ、皮肉を口走った。

「もし、その問いを肯定したとして、あなたはどうするつもりですか?僕達の勝手な計画を野営地にいるリチャードや皆に報告しますか?」

「滅相もない。私はあなた方に命を救われた。一生の恩人を売るつもりなど、毛頭ありません・・・・・・ただ、ご迷惑でなければ、私もあなた方の戦力に加えさせて頂けないでしょうか?私も無念に殺されたアドニスの民への供養を努めたいのです。勿論、足手まといにならないよう、万全な注意を払いますので」

 ルイスの意思は紛れもなく、本意だろう。
しかし、ギャングの古参達は歓迎的な顔はしなかった。
その場にいる誰もが、共通の不安を抱えていたためだ。

「牧師様。あなたは戦えるのですか?失礼を言うのは申し訳ないですけど、あまり争い事は得意ではないとお見受けしますが・・・・・・?」

 サクラが心配になって、身を案じた問いを投げかける。

「戦場では決まって、弱い者が先に撃たれる。たかが強がりやかっこつけで前線に立てば、最初の犠牲者となりますよ?」

 ステラも脅しをかけ、身を引くように促すが、ルイスの決心は揺るがなかった。

「神が試練のためにお与えになったこの地に真の平穏など存在しません。この世の全ての者は生を受けた時点で煩悩に塗れた宿命を背負わされるのです。故に私は死など恐れません。命を危機に晒す決断は自らが望み、築いた運命ですので」

 クリスはルイスの勇敢な執念に対しては、素直な関心を抱いた。
しかし、それでも尚、許可を認めず

Re: エターナルウィルダネス ( No.39 )
日時: 2020/10/20 21:10
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

「覚悟だけは心強いです。ですが、やっぱり僕達に肯定の余地はありません。戦場に連れて行ったとして、ルイスさんはどう戦うつもりなんですか?一見すると、戦おうとする格好が見当たらない。僕は丸腰の仲間を死に追いやる気はないです」

「ああ、同感だぜ。素手で機銃に突っ込んでいくバカをお世話する余裕なんざ、こっちはねえよ」

 アシュレイもクリスの意見に偏った同意を示す。

「・・・・・・なら、これなら如何でしょう?」

 説得での証明が意味を成さないと確信したルイスはローブをずらし、その誠意をまざまざと見せつける。
彼の腰のベルトには細長い弾倉が何列にも渡って収まっていた。
そして、隠し持っていた武器を背中ら外し、腕に抱える。
弾倉が横に装着されている連射式の自動小銃だ。
武装した証拠を突き出された事に流石のクリス達も目を丸くし、呆然と口を開く。

「聖職者には似合わない切り札ですね」

 勇ましい掘り出し物に圧倒され、ステラは強張った態度を緩める。

「そのような、武器は私達の組織では取り扱っていません!一体、どこでそんな物を!?」

 サクラが自動小銃を調達した経緯について尋ねると、

「アドニスであなた方に罰せられた悪魔の死体から奪い取りました。これなら、無様な犬死だけは避けられるかと」

「お前、やっぱ牧師には向いてねえな」

 アシュレイは敬った要素のない皮肉を浴びせ、席を立つ。

「面倒事にまともに取り合ってたら、喉渇いちまったぜ。もういっちょ酒引っ掻けてくるから、そこで待ってろ」

 会談を離脱した彼は人ごみをの隙間を通りながら、再びカウンターの方へ足を運ぶ。

「おい、おっさん。ビールをもう1杯くれ。あの程度じゃ、ほろ酔い気分にもなれやしねえ」

「おう!キンキンに冷えたのを飲ませてやるから、先にカウンターにウォールを置いとけ!」

 店主は注文された酒はまだあるか?と怒鳴って、厨房の奥に姿を消した。

「"なあ?知ってるか?最近のルフェーブル・ファミリーの事なんだが"」

「"ん?あのルシェフェルの集まりで構成されたギャングがどうかしたのか?"」

 隣で酒を飲む見知らぬ2人組の男。
偶然、居合わせた会話のやり取りがアシュレイの興味を引く。

「・・・・・・ああ?」

 嫌でも気に留めてしまうだろう会話をアシュレイは聞き流さなかった。
ファミリーの名を敏感に捉え、その内容に耳を傾ける。

「"聞いたか?ルフェーブル・ファミリーの指導者であるカトリーヌがハイペシアの"政治に参入"しようとしているらしい"」

「"冗談だろ?ルフェーブル・ファミリーと言えば、ハイペシア一の殺戮集団だぞ?その頭領が国の機関に加入するのか?そんなの、政府が承諾しないだろう?"」

「"だが、その噂は事実みたいなんだ。今朝の新聞に載ってたんだが、数人の有力議員があの女の参入を認めているらしい。オリウェール全土のルシェフェルからも多くの支持を集めてるようだぞ"」

「"虐殺者までもが選挙に立候補できるとは、ハイペシアも堕ちるところまで堕ちたな・・・・・・"」

「"全くだ。例え戦争が終わっても、この国の平穏は夢のまた夢だろう"」

 2人組の男は不満を抱いた愚痴を最後に会話を打ち切り、静かにウィスキーの味に酔いしれる。
いても立ってもいられなくなったアシュレイはビールの欲求を忘れ、前払いの代金を置き去りにクリス達の方へ慌てて引き返した。

「おい!今、やべー話を聞いちまったんだ!知ったら、腰を抜かすぞ!」

「え?な~に~?どうせまた、隠された金塊の噂でしょ?」

 メルトは丸っきり相手にしようとせず、白い目で沈着に蔑んだ。

「そんなしょーもねえ噂、俺だって信じねーよ!もっと、やべえ話だ!ルフェーブル・ファミリーの奴ら・・・・・・!」


「クリス!アシュレイ!」


 アシュレイが要点を伝えようとした矢先、突如として割り込んだ声にあっさりと沈黙を余儀なくされた。
クリス達の形相が一変し、全員の注目が一ヶ所に集う。

「随分と待たせてしまったね。おや?どうしてここに神父さんが?」

 ようやく、デズモンドが報告を目的に合流した。
彼はルイスという予想だにしていなかったレギュラーに対しては特に気にしたりはせず、本題を重視する。

「あなたが血相を変えて来たって事は・・・・・・」

 ステラが探偵の動作を曖昧に推理し、期待を寄せると

「各集落を回って聞き込みを行って、大勢のタレコミ屋に協力してもらった。ご希望通り、ノーラの居場所を掴めたよ」

「本当ですか!?」

 サクラは容易に成し遂げられた標的の特定に"信じられない"と肝を潰す。

「相変わらず、頼りになる野郎だぜ!お前、人生で一度も人を失望させた事ねえだろ?んで?早く、居場所を教えろ!奴はどこにいやがるんだ!?」

 アシュレイが知りたがりの衝動を露にし、肝心な詳細を促すと

「"ランガシリス"。今、ノーラはそこに滞在しているみたいだ。これは悪い知らせだけど、数時間後には蒸気船に乗って街を離れる気らしい。 そして、おまけの情報だけど、アドニス市長の座を捨てた彼女は今や、ルフェーブル・ファミリーの幹部の一員となっているみたいだ」

「恐らく、行き先はファミリーの本拠地でしょうね。そこで奴はカトリーヌから報酬と正式に地位を授かるつもりだ」

 ステラが標的の次の企みと事の成り行きを想定する。

「急がなくちゃ、間に合わないよ!船が出る前に早く、ノーラに追いつかなきゃ!絶対にお姉ちゃんの元には行かせない!」

「ランガシリス・・・・・・川沿いにある石油工業が盛んな集落か・・・・・・すぐにここを発とう!」

 早急に酒場を去ろうとするクリス達に対し、デズモンドは愛想に霞をかけ

「君達個人の復讐劇の事はリチャード達には黙ってはおくけれど、唐突で無理なお願いは今回で最後にしてくれないかい?いくら、名探偵でも急な依頼は骨が折れちゃうからね」

 その苦情にまともに取り合わず、ギャング達は聞き流しと言ってもいい簡単な謝罪だけを述べて、そそくさと酒場を飛び出していく。
たった1人、クリスを除いては。

「無理をお願いを頼んだのは素直に謝るよ。ありがとう。デズモンドの協力なしじゃ、不可能だった」

 クリスはポケットからジャラジャラと音が擦れ合う何かを取り出し、デズモンドの手に握らせる。
探偵は拳を広げ確かめると、数枚の金貨が掌の上で輝きを放っていた。

「報酬、それで足りるかな?じゃあ、僕も皆と行かなくちゃ」

 唯一、誠意を怠らなかったクリスの背中を見送りながら、デズモンドはそのままの姿勢で囁いた。

「どうか、絶対に無事に帰って来てくれ」

Re: エターナルウィルダネス ( No.40 )
日時: 2021/01/02 15:29
名前: 死告少女 (ID: 7I10YEue)

 クリス達は自然溢れる林道を抜け、逃げ惑う野生動物をお構いなしに真っすぐ進んでいく。
行き着いた川に沿って、更に進んでいくと石油の臭いが嗅覚に伝わってきた。
しばらくしないうちに目的地を示す建物の上部が地平線から姿を現す。
クリス達は馬の速度を上げ、我先にとその場所へ駆け込んだ。

 工業が盛んな集落、ランガシリス。
しかし、活気ある人々で溢れ返っていたゴールデンバレルとは違い、ここの住人の暮らしは静かで質素なものだった。 
街の中心部には石油の給油場がシンボルとして聳えており、その下に線路が敷かれ、資源を運ぶ2台の輸送列車が止まっている。
その脇は石油が掘り出されているであろう鉱山と、近くには粗末な構造の民家がずらりと並んでいた。

 酒場や武器屋なども存在しているものの、寄り付く人は少なく、作業服を油で汚し、新鮮とは裏腹の空気を吸い込んでせき込む労働者が大半。
唯一、珍しい部分を挙げられるとすれば 街を占領しているようにルフェーブル・ファミリーの殺し屋が至る所を巡回している事くらいだ。

 クリス達は怪しまれるような振る舞いは避け、旅人のふりをして内部へと侵入した。
民家の手前で馬を降り、手綱を柵に結び付ける。

「資源が豊富な街の割にはゴールデンバレルと違って、随分と寂しい雰囲気の場所なんだね」

 メルトが見えるだけの殺風景を見渡して、率直な感想を述べる。

「こう言っちゃなんだが、石油なんてもんはどこでも取れる。重要資源である事に変わりはねえんだが、所詮は金の価値には勝てねぇんだよ。ここに住む連中の暮らしは貧しい。粗末なパンとスープを極上のディナーにしてる奴か、煙を吸い込んで肺を病に侵される奴のどちらかしかいねえ」

 アシュレイ虚しい言い方でランガシリスの現状を淡々と説明する。

「ファミリーの殺し屋が大勢いますね」

 サクラは数で劣る不利な状況に身を引き締める。

「ええ、敵だらけです。囲まれたら終わりだ」

 ステラも警戒し、ファミリーの敵意がこちらに向いてないか目を見張る。

「これだけの兵を動員しているという事はノーラという悪女はまだ、この街を去っていないはず」

 探しても標的の姿を確認できないが、ルイスにとってその推測は自信に満ちていた。

「奴らは僕達が脅威になる事を予想してない。上手く行けば、不意を突けるかも知れない」

 クリスの後半の台詞にアシュレイは口をニヤリと引きつり 

「汚ぇ奴には汚ぇ手段で挑むってか?面白そうじゃねえか。真面目なやり方で殺してもつまらねえからな」

 暴虐極まりない態度にメルトは軽蔑、ルイスは哀れみの視線を送った。
ステラも黙していたが、心底、呆れているのが窺える。

「それで、これからどうします?街を探索して、ノーラを探しますか?」

 クリスは既に作戦を決めていたのか、サクラの提案の必要性を否定する。

「いや、もっと手っ取り早い方法がある。ノーラが自然と現れるのを待つんだ」

「え?それはどういう・・・・・・?」

「・・・・・・なるほど、悪くないアイディアです」

 メンバーで唯一、ステラだけがクリスの企みを理解した。

「ちょっとぉ、2人だけで。わけ分かんないから、私達にも説明してよ」

 メルトが勿体ぶるのを嫌い、詳細を促す。

「デズモンドの得た情報ではノーラは船に乗って、ランガシリスを発つと・・・・・・つまり、奴は波止場を必ず訪れる。そこに罠を張るんだ」

 作戦の意味を把握して、メルトとサクラは納得した。
自動小銃を修道服に忍ばせた信心深い男を除いては。

「そう単純に事が上手く運ぶでしょうか?もし、待ち伏せに適した場所がなかった場合は?」

 ルイスが最悪な事態を想定し、予備の策を伺うと

「なかったら、別の方法を考えよう」

 クリスは余計な事は考えない気楽な言い方で速やかに行動に移す。
5人は後を追って、ランガシリスの民家の沿って、歩みを進めた。
移動する際、ルフェーブル・ファミリーの殺し屋とは何度か視線が合ったものの、向こうは揉め事を起こす事なく、素通りしていく。

「ところで、僕は報酬が貰える約束があるからいいとして、ノーラの抹殺はギャングにとって何の有益があるのでしょうか?」

 ステラが雇われた時から胸にしまい込んでいた疑問を投げかけると

「私も今回ばかりは気が乗りません。あるのは危険だけでこちらに得なんてないかと・・・・・・」

 サクラも正直に、"やりたくない"を訴える本音を明かす。

「今の俺は損得で銃を手にしてるわけじゃねえよ」

 前を行くアシュレイの背中は堂々としていて、いつもはだらしないはずの姿は探しても見当たらなかった。

「この復讐はな、俺にとっちゃ"誓い"を貫き通す自分との戦いでもあるんだ。その誓いさえも裏切っちまえば、俺は一生後悔したまま人生を終えるだろうな」

「誓い?アシュレイさん。器用には理解できませんが・・・・・・何故、あなたはそこまで、今回の復讐にこだわるのですか?」

 ルイスは具体的な答えを求め、アシュレイは一文字の台詞を語頭にして

「牧師さんよ。俺は元は酒場を経営するだけの、ただの悪ガキだった。だが、ファミリーの連中がやった略奪のせいで店ごと焼かれちまった。ヴェロニカだってそうだ。家を失っただけじゃなく、親しかったアドニスの連中も残らず殺されちまった・・・・・・だから、あいつに約束して誓ったんだ。自分や大切な仲間が傷つけられたら・・・・・・必ず、やり返して地獄で後悔させてやるってな」

「・・・・・・珍しいね?アシュレイがそんな動機で命を懸けようとするなんて」

 無関心を保つことが多いクリスでさえも、見返りを第一にこだわるはずのアシュレイの異変的な態度に少しばかり、複雑な気分になる。

「ムカつくんだよ。泣く事しかできねえ弱え奴が虐げられて、奪う事しか考えねぇだけの強え奴がのうのうとのさばる世の中がよ」

「ふ~ん。強欲と下品の塊でできたあんたにも、ちゃんと良識があったんだね?」

 メルトも彼の意外な一面を知り、多少は失望を取り消す。

「カトリーヌの実妹であるお前に言われると腹が立つが、俺だって人の心はちゃんと持ち合わせてるんだぜ。俺は"善良なクズ"なんだ。奴らと違って、"クズのクズ"ではない事をここで宣言しておくか」

Re: エターナルウィルダネス ( No.41 )
日時: 2020/11/17 20:22
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)
参照: https://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=2173.jpg

 波止場は街の片隅の浅い岸辺に存在した。
板と丸太を組み合わせて作った桟橋が複雑に張り巡らされている。
標的を乗せる船はまだ到着しておらず、川は緩やかに水だけが流れ、遠い向こうに陸地を水面に逆さに映していた。

「川には何も浮かんでねえな。船の到着はもうすぐのはずだが?」

 アシュレイは暇を潰そうと煙草を取り出すが、これからの展開に備える事を考え、開封済みのパックにしまう。

「幹部が渡航する場所にしては見張りがいませんね?まあ、街に見張りが多いから、ここに兵を配備する必要がないと判断したのでしょう。今日の僕達は運がいい」

 ステラが周辺の環境を怪しむが、特に傭兵の勘を働かせている様子もなく、平然としている。

「あそこに隠れよう」

 クリスが指を指した先には1軒の小屋が建てられていた。
恐らく、船に乗せる貨物を収納する倉庫だろう。
木で作られた箱や樽などがたくさん置かれているため、すぐに分かった。

 ギャングのメンバー達は念のため、背後からの監視や尾行に注意を払い、小屋に身を潜める。
クリスとアシュレイは銃の状態の確認を済ませ、木箱から顔上半分を覗かせる。
後方ではサクラとメルトが緊張感を膨らませながら、杖と斧を手に標的の到着を待つ。

「・・・・・・で?隠れられたのは計画通りだったけど、次は?どうやってノーラを襲う気なんだい?」

「単純だ。ノーラの女狐が波止場にのこのこ現れやがったら、船に乗り込む前に狙撃する。後はうざってぇ取り巻き共を蹴散らして、包囲網から抜け出し、めでたしめでたしだ」

「あれだけの殺し屋を相手にするなんて、僕達は無事に生還できるのだろうか?ゴールデンバレルでの朝食が最後の晩餐にならなきゃいいけど」

 すると、噂をすれば波止場に数人の集団が入って来た。
会話を弾ませ、楽しそうにガヤガヤとうるさく盛り上がっている。
正体はルフェーブル・ファミリーの一味で大半は男性ばかりだが、1人は異なり、若いルシェフェルの女が先頭を歩いていた。

 女は絶世の美女で白い髪を肩につくまで垂らし、右目を覆い隠している。
その表情は恐ろしいくらいに温和で凶悪に繋がりそうな人相は見当たらない。
まるで、これから聖地の巡礼に向かう聖女のようだった。
しかし、着ている衣装は間違いなく、組織の幹部の証だ。

「来たな」

 事の訪れにクリスが銃を握る力をぎゅっと強める。

「あの女がノーラだ・・・・・・間違いねえ・・・・・・!」

 アシュレイは口調を怒りに震わせる。
血を味わいたい程の殺意に八重歯を剥き出しにし、顎を強く圧迫する。

「奴は無防備で先頭を歩いている。撃つにはいい機会です」

 ステラは僅かな時間しかないチャンスを告げ、狙撃を促す。

「どうしたの・・・・・・!?早く撃ってよ・・・・・・!」

 メルトは聞こえない銃声に焦りを抱き、平常心が喪失する。

「・・・・・・アシュレイ?」

 クリスの声掛けをアシュレイは無視した。
あろう事か、彼はピストルをホルスターにしまったのだ。
コソコソと隠れるのをやめ、波止場へ堂々と敵にその姿をさらけ出す。

「ア、アシュレイさん・・・・・・!?」

「バ、バカじゃないの・・・・・・!?とうとう頭がおかしくなっちゃったの・・・・・・!?」

 背後から耳に届く正気を疑う発言を気にせず、アシュレイは桟橋の真ん中に立ち塞がる。
ノーラ達はアシュレイの姿を視野に入れた途端、足を止めた。
護衛の殺し屋は不審者に警戒し、手際よく武器を構える。

「悪いな御一行。てめえらは船には乗れないぜ」

 アシュレイは声を尖らせ、目の前の集団を脅した。

「あなたは・・・・・・」

 ノーラは敵意のない優しい声で中途半端に話しかける。

「ノーラ・マクレディだな?てめえの命を奪いに来た」

 殺害宣告を耳にし、ファミリーの護衛達はより一層、敵を排除しようとその目を鋭くする。

「何故、私の名を?あなたとは、どこかでお会いしましたか?生憎、礼儀の基本すらも知らない底辺なお方は、記憶には留めておかない性格でして」

 ノーラの皮肉を少しの間、笑いで聞き流した後、グッと人相を鋭く強張らせ

「てめえは街を守る責任を背負った市長でありながら、ルフェーブル・ファミリーに寝返ってアドニスそのものを滅ぼしやがった。住人を1人残らず消したつもりだったんだろう。だがな、生き残りがいたんだよ。そいつ、俺の幼馴染でな。すぐに真実を話してくれたぜ。黒幕がてめえだって事もな」

「・・・・・・っ!」

 言葉を詰まらせ、ノーラは自供に等しい反応を示した。
殺し屋も引き金を引こうとしたが、相手の先が読めない行動に撃つ手が止まる。

「まあ、待て。いきなり撃ち合うのもなんだ。冥土の土産にいい話をしてやるよ」

 武器に手を触れようとする仕草を出さず、アシュレイは唐突に語り出す。

「てめえら、ファミリーの略奪で俺は生きる糧である酒場を失った。死んだ親父が残したちっぽけな財産だ。俺の親父は女房よりも酒を選ぶ、どうしようもないバカでな。俺も心底呆れてたぜ。でもよぉ、そんな親父が1つだけ正しい事を言ってたんだ。この世は因果応報だってな。他人を苦しめた分、その罪は何倍ものでけえ罰になって返って来るってよ」

「・・・・・・な、何が言いたいのですか?」

「まだ、分かんねえのか?つまりはこういう事だっ!」

 アシュレイの敏速な抜き撃ちで数発の銃声が響く。
ヴォルカニックピストルから放たれた弾丸はノーラ以外の全ての殺し屋に命中した。
致命傷を負った被弾者はまとめて横たわり、息絶える。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。