複雑・ファジー小説

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エターナルウィルダネス
日時: 2020/02/13 17:55
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

 乾いた土、枯れた草木、その上に零れ落ちた血の跡・・・・・・復讐の荒野は果てしなく、そして永遠に続いていく・・・・・・

 ディセンバー歴1863年のオリウェール大陸。
西部諸州グリストルと東部諸州ハイペシアとの内戦が勃発。
かつて全盛期だった大陸は平穏の面影を失い、暗黒時代への一途を辿っていた。

 王政派の勢力に従軍し、少尉として小隊を率いていたクリス・ヴァレンタイン。
戦争終結の後、退役軍人となり、両親が残した農場で妹であるリーナと平穏に暮らしていた。
しかし、突如として現れた無法者の集団による略奪に遭い、家は焼かれ、リーナを失ってしまう。
運よく生き残ったクリスは妹を殺した復讐を決意し、再び銃を手にするのだった。

 彼女は頼れる仲間達と共に"ルフェーブル・ファミリー"の最高指導者"カトリーヌ"を追う。


・・・・・・・・・・・・


 初めまして!ある理由でカキコへとやって来ました。"死告少女"と申します(^_^)
本作品は"異世界"を舞台としたギャングの復讐劇及び、その生き様が物語の内容となっております。
私自身、ノベルに関しては素人ですので、温かな目でご覧になって頂けたら幸いです。


・・・・・・・・・・・・

イラストは道化ウサギ様から描いて頂きました!心から感謝いたします!

・・・・・・・・・・・・


・・・・・・お客様・・・・・・

桜木霊歌様

アスカ様

ピノ様

黒猫イズモ様

コッコ様

Re: エターナルウィルダネス ( No.12 )
日時: 2020/02/02 21:04
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)
参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=1368.jpg

「流石だな。"クリス"。初めて会った時と比べて、かなり腕を上げたもんだ」

 背後にこちらに謝意を示す誰かが立っていた。
この場の環境に適した格好に身を包む老けた男が傍へと歩み寄る。
その手には弓のグリップを握り、弦に矢をつがえていた。
それに続き、広がる冬景色の陰から彼らの仲間が次々と姿を現す。

「弓の扱いなんてあまり得意じゃないんだけど・・・・・・でもまあ、私の作戦が上手くいったのだから、よくできましたと褒められたいわね」

 男と同じ弓を手にしたハット帽子を被る女が自慢気に口角を上げた。
その横をフードを被った青年が過ぎ、楽しそうに死体の服を漁る。
しかし、得られたのは質の悪い略奪品ばかりで、不機嫌そうに眉をひそめた。

「何だこいつ。持ってやがったのは、たった3ウォールかよ。ファミリーの一員にしちゃ、貧乏過ぎんだろ・・・・・・」

 期待を裏切られ愚痴を零す青年の後頭部に、髪の長い女が弱い勢いではたく。

「みっともないからやめなさい。いくら敵でも死者には敬意を払うべきよ。そんな下衆な振る舞いをして恥ずかしくないの?」

 と冷静な口調で生真面目な説教を垂れるが

「うるせえ。死体が金を持ってたってしょうがねえだろ。それによ、この件が片付いたら結局は根こそぎ奪う予定なんだろ?だったらいいじゃねえか」

 と反抗的な態度で女を見上げ、互いに睨み合う。

「今更、死んだ人を敬ったって大勢を殺してきた私達に待ってるのは地獄しかないわ。悪魔に口説かれる日が来るまで、今の人生を楽しみましょう」

 ハット帽の女も軽々しい人格を演じ、青年の肩を持つ。

「世間話は後にして今やるべき事に集中しろ。状況が有利な時ほど命を落としやすいものはない。自惚れや慢心に殺されるんだ。死にたくなかったら常に緊張感を絶やすな。クリス、次はどうするかお前が決めろ」

 老けた男が皆をまとめさせ、指示を求める。
クリスと呼ばれた子供は振り返り、精悍な顔を曝け出す。

「僕が殺したファミリーの一員から別荘の情報を聞き出した。外に数人、建物に10人以上の敵がいるらしい。作戦はこうだ。次は別荘に忍び込む。外の監視を全て始末したら、建物を襲撃して中にいる"カトリーヌ"を殺す・・・・・・いい?」

 と作戦の内容を説明し、異論はないかを確認する。

「別に文句はねーけどよ。隠密行動は俺の得意分野じゃねーんだよな・・・・・・外側は制圧したんだし、派手にやってもいいんじゃねえか?」

「"アシュレイ"、カトリーヌは君が思ってるほど簡単に命を差し出すような奴じゃない。剃刀のように頭が切れる冷酷な女だ。あいつを仕留めたいなら、最初から最後まで慎重にやる必要がある」

「私もクリスの意見になんて従いたくないけど、今回だけはこの子に賛成よ。死体を漁るどこかの罰当たりさんがしくじって、あの女に逃げられでもしたらわざわざこんな雪山の奥地に足を運んだ意味もなくなるもの」

 蔑んだ嫌みにアシュレイは"うるせえ"と裏に返した手を飛ばすが、長髪の女はそれを容易にかわす。

「ここにいても寒いだけよ。作戦があるなら、早く実行に移しましょう。それじゃクリス、私達はどうすればいいか教えてくれない?」

 ハット帽の女が聞いて

「まず、門を開けたら二手に別れて周囲を制圧しよう。好都合にも、バルコニーに狙撃手はいない。でも、決して油断しちゃだめだ」

「鍵の開錠はこの私、デスモンドに任せてくれないかな?私立探偵の器用な指先をこんな場所で使う事になるなんて、誰が予測できたか」

 自ら名の名乗った背の高い男が、自惚れた口調で言った。

(仕事を終われた落ちこぼれがよく言うぜ・・・・・・)

 アシュレイが周りに聞こえないのようにボソッと呟く。

「左側は僕と"サクラ"、"メルト"と"ステラ"が行く。反対側は"リチャード"、"リリア"、"ローズ"、"ユーリ"、それからデズモンドに任せた。隠密が苦手なアシュレイは門の前で待機してて?」

「いい子にしてるのよ?後でお菓子でも買ってあげるから」

「クソ女、てめえ後で覚えてろよ?」

 クリス達は作戦通り2つのチームに別れ門を挟んで、壁に背を預ける。
デズモンドは見張りの目を盗みながら、鍵穴に形が異なる2種類のロックピックを差し込んだ。
片方を固定し、慎重にもう片方を時計回りに動かしていく。
数秒後、カチッとと音がして門の解錠を完了する。

「ようこそ、僕だけの真冬の別荘へ」

 デズモンドがユーモアと共に門を開き、クリス達は建物の敷地内へと一斉に流れ込んだ。
正面玄関付近を警戒し、見張りの不在を確認する。

「そっちは任せた。信用してるが、一応しくじるなと言っておく。裏側で会おう」

 リチャードは一旦の別れを告げると、仲間を連れて右側の区域へと進んで行った。
クリス達も姿勢を低く、反対側へ回る。
姿を誤魔化せる場所へ身を寄せ顔を覗かせると、聞き出した情報は正しく、数人の見張りが警備にあたっていた。
敵に侵入を許した事に気づいておらず、ほとんどが呑気に怠けている。

Re: エターナルウィルダネス ( No.13 )
日時: 2019/12/03 19:55
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

「近くの正面に1人、20メートル先のベンチに2人・・・・・・それから・・・・・・」

「11時の方向、奥にあるガーデンにの建物にも1人いますよ」

 ステラが正確に敵の位置を伝える。

「素早い観察力だね?」

 クリスが感心しながら言った。

「こう見えても、傭兵をやって長いですから」

 ステラは親指を突き立て、ちょっぴり自慢を入れた返事を返す。
その目は橙色に染まっていた。

「敵の数なんてどうでもいいからさ。さっさとやっつけちゃおうよ〜」

 メルトは早く敵を倒したい一心で事を急かす。

「焦らなくても、君の分はちゃんと残しといてあげるから、ちょっと待ってて?まずは僕にやらせてほしい」

 クリスは落ち着いた口調で頼んで冬着を捲り、ベルトに仕込ませたナイフを握った。
傍で待機していた他の3人に、"まだ、じっとしていて"と手の仕草で指示を出し、自身はその身を陰から曝け出す。
そして、短く口笛を吹いた。

 気配も察していない見張りは異音に釣られ、背中を反対に翻す。
クリスの存在を認識した直後にナイフが当たり、意識を喪失した。
見張りは真顔のまま大の字に倒れ、額の刺し傷から流れ出た血が顔を伝り、積もった雪に染み込む。

「お見事」

 ステラが拍手のない歓声を送る。

「ベンチにいる2人はステラとメルトに任せた。僕はサクラと移動する。」

「はいは〜い、お安い御用〜」

 メルトが喜んで、我先にと指定された標的の方へ近づき、ステラも後に続いた。
足音を立てず、見張りの背後へと忍び寄る。

「でよ、この前行った街の酒場でルシェフェルの女をナンパしたんだよ」

「ホントか?モテないお前がよく女を誘えたな?」

 だらしない姿勢で腰かける2人の見張りは背後を取られた事に気づかないまま、下品な会話に夢中になる。

「へへっ、あの種族は金に飢えてるからな。ウォールを数枚差し出したら簡単に気を許してやんの。しばらく酒を飲んで酔っぱらった所を個室に連れ込んだってわけよ」

「マジか!?やるじゃねえか!」

 右側にいる見張りが興奮し、次に何をしたのか聞いた。

「紳士のふりをして油断させ ベッドから後ろから襲ってベッドに押し倒したんだ。普通は助けを呼ぶだろ?その女、何をしたと思う?あろうことか、スカートを脱いでパンツを下ろしたんだぜ!傑作だろ!?」

 隣の見張りは手を叩き、愉快に大笑いする。

「最高じゃねえか!お前、天才だな!で、次は!?早く教えろよ!」

 すっかり淫らな内容に釘付けになり、続きを促した瞬間、ぐちゃっ!とトマトが潰れたような音がし、目に広がる世界の全てが真っ赤に塗りつぶされた。

「・・・・・・え?」

 突如起こった奇怪に無意識に漏れた間の抜けた声。
晴れた視界に映ったのは頭上に広刃が刺さり、顔が半分に裂けた仲間の変わり果てた姿だった。
興奮が冷め、悲鳴を上げようとするも、後ろから口を塞がれ強引に空を見上げさせられる。
覆った何かを退かそうとするが、先に喉を掻き切られ、大量の血を噴水みたくぶちまけた。
足掻く力も徐々に弱まり、やがて命が散る。

「いっちょうあがり。地獄に落ちろ変態」

 メルトは深々と脳を割った斧を抜き、罵った死体を押し倒した。
ステラも短剣を腕の関節に挟み、付着した血を拭う。

「ターゲットダウン。偉いぞカラドちゃん」

「よし、メルトとステラが2人を仕留めた。サクラ、次は君が遠くにいる最後の1人をやってくれないか?できる?」

 クリスが可能かを問いかけると、サクラは腰の低い態度で肯定した。

「大丈夫です。ユーリさんには遠く及びませんが、遠距離戦は私の得意分野です」

 そう言ってオブジェクトから身を乗り出し、両手持ちの杖を固定して構えた。
集中力を高めながら全身の気を送り、先端に魔力を蓄積させる。

「距離は40メートル・・・・・・威力は300程度・・・・・・」

 観測を済ませ、サクラは杖から魔弾を放ち高威力の反動が伝わり、少し後ろへのけ反った。
それは狙った位置からずれた標的を追尾し、的確に命中する。
頭半分を見事に吹き飛ばされ、思考を失った見張りはふらふらと無意味に彷徨い歩き、倒れた。

「仕留めました」

「よし、このエリアの敵は全て無力化した。裏で皆と合流しよう」

 クリスは近くにいたサクラに微笑み、遠くの2人には手で合図を伝えた。

「僕達も行きましょう」

「もう終わりなの?つまんないな」

 物足りなさそうに文句を言って移動しようとした時、横に扉が開き、メルトはビクッ!と硬直した。
出て来たのは、彼女との身長が30センチほどの差があるガタイのいい大男でショットガンを片手に煙草を指に摘まむ。
そいつは鉢合わせした侵入者を凝視し、目の色を変えた。

「あ、ああ・・・・・・」

 想定外のハプニングにメルトは混乱に陥る。
斧は届かず、相手の銃口がこちらに向けられるのを為す術もなく許してしまう。

「貴様、どこか・・・・・・がっ!?」

 殺意の鋭声は途中で絶たれ、銃口の狙いは逸れる。
痛感に身をすくませ、彼の心臓をカラドボルグが捉えていた。
ステラはシルヴィアを抜くとメルトを庇い、男の不意を突く。
頭部を裂こうと横に斬撃を喰らわすも、大男はとっさに投げたショットガンを銀剣にぶつけ、刀身を弾いた。
武装が解かれた隙を逃さず、首を絞め上げる。

「ぐっ・・・・・・がぁ・・・・・・(剣先が心臓まで達しなかったか・・・・・・!?)」

 ステラは首を圧迫され、顔を歪ませる。
手を払い除けようと暴れるが、大男の腕力は万力のようにきつい。
このままでは器官は潰され、骨を砕かれるだろう。

「このぉっ・・・・・・!」

 彼を助けようとメルトが斧を振り上げ助太刀に走るが、硬い拳が目前に迫り返り討ちに遭う。
少女は軽々と吹き飛ばされ、小柄な体は地面を転がった。
ステラは霞んでいく意識の中、今度は自分へと降り掲げられたナイフを見た。
それが頭上に落ちる直前、反射的に男の手首を掴む。

Re: エターナルウィルダネス ( No.14 )
日時: 2019/12/03 20:07
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

 サクラは杖を向けるも、ステラと男の取っ組み合いは激しく、満足に標準を合わせられなかった。
こうしている間にも仲間は不利から不利へと追い詰められていく。
クリスも正しい判断力を失い、リボルバーに手を伸ばした。
ハンマーを倒し銃を抜こうと抜いた矢先

「ううっ・・・・・・!」

 急に唸った大男がビクンと体を痙攣させて硬直した。
力づくの手が緩み、マネキンのように横たわる。
圧迫から解放されたステラは、地面に座り込んで何度も咳込んだ。
不思議に思い死体となった男を見ると、1本の矢が背中に深く突き刺さっている事を知る。
ぼやけた視界に弓を構え、矢を放った直後のリチャードが映った。

「危なかったな。生きてるか?」

 彼は歩みを寄せながら、ステラの手を引き体を起こす。
絞められた圧迫痕を診て、大事に至っていないことを確認した。

「がっ、ごふぇ!足を引っ張ってしまいましたね・・・・・・げぅっ!迂闊でした・・・・・・」

「戦場に不意打ちは付き物だ。敵は正面から現れるとは限らん。戦域に踏み込んだら、常に八方を警戒しろ。分かったら、さっさとメルトを起こせ。それとクリス・・・・・・」

 リチャードは説教の矛先をクリスに向け

「銃を撃っていれたら、建物の連中に気づかれていたぞ。基本として教えたはずだ。いかなる状況でも、肝心な判断だけは間違えるな・・・・・・とな」

「そうだったね・・・・・・ごめん、もう同じ過ちは繰り返さないよ」

 クリスは反抗したい面持ちを浮かべるも、素直に自身の失態に謝罪を述べた。
そこへリチャードを追って、リリアやデズモンドたちが合流する。

「ひとまず、外の脅威は排除したわね。後は建物の連中を一掃するだけだわ・・・・・・で、最後の仕上げはどのような作戦で行くの?あんたの事だから次こそは成功するんでしょうけど?」

 リリアが2丁の銃を抜き、意地悪な笑みを零す。
嫌みとしか言いようがない明らかな台詞をクリスは無視して、皆の注目を集めさせた。

「作戦はこうだ。今度は4つの部隊に別れて、建物の全ての方向から攻撃を仕掛ける。逃げ場を遮られた敵は士気を失い、満足に抗えないはずだ。全員が突入の準備が整ったら、正面玄関をアシュレイの爆薬で吹き飛ばす。敵の不意を突き、一気に攻め落としてカトリーヌを殺す」

「また?分散してリンチするのが好きなのね?まあ、いいわ。後ろは任せて?私の愛銃でファミリーの連中に風穴を開けてやるから」

 ローズはこれからの襲撃に喜ばしく、ショットガンに詰めた散弾を薬室に装填する。

「なるほど、僕も君と全く同じ作戦を頭の中で描いていた。砦のない城を落とすには、包囲戦ほど有効な手段はないからね。だったら僕は横から攻めるよ」

 デズモンドが反論せずに言って

「私も私立探偵さんと一緒に行かせてもらうわ。私の経験上、横を攻めた方が敵に痛手を負わせやすい。背後は意外と危ないのよ?」

 とリリアも相変わらず生意気な口調で二度目の作戦に賛同する。

「異論はないな? 俺もローズと共に行き、上手く背後から不意を突くとしよう。メルトとユーリは左、リリアとデズモンドは右につけ。クリス、ステラ、サクラ、お前らはアシュレイの傍にいてやれ。あのバカは誰かが付き添わないと心配だ。爆薬を仕掛けたら、一気に蹂躙するぞ?真っ正面から派手な花火を打ち上げてやれ」

「リチャード達は先に配置についていて。僕はアシュレイに出番を与えてくる」


「へへっ、グチャグチャに壊してやるぜ」

 アシュレイは舌を出し、悪魔の笑みで自身が作成した爆薬の設置に取り掛かった。
爆薬は数本のダイナマイトがまとめて括り付けられ、起爆装置と繋がっている。
基盤に表示されたタイマーが切れると、銅線を通じて電流が伝わり、本体に点火する仕組みだ。
粘着剤でドアに仕掛け、装置を作動させると急いでクリス達の元へ加わる。

「10秒後に爆発する。鼓膜がイカれたくなきゃ、耳を塞いでおけよ?俺の爆薬は派手な轟音を鳴らすからな」

「念のために伺いますが・・・・・・威力が強過ぎて、こっちまで巻き沿いになるなんてないですよね・・・・・・?」

 ステラがニヤニヤと苦笑し、クリスも表情を合わせた。

「僕達まで粉々にならない事を祈ろう」

 間もなくダイナマイトが破裂し、一気に広がった爆風が火と黒煙を生んで大部分を破壊した。
2階の部屋も瞬く間に崩壊し、バルコニーの半分が崩れ落ちる。
熱風が混ざった衝撃波がこちらまで押し寄せ、細かい残骸が降り注ぐ。

 クリスが顔を出すと、別荘は無残な廃屋と化していた。
剥き出しになった木材が燃え盛り、曲がりくねった骨組みや煉瓦の破片が散らばる。
内側からは、慌てふためく叫びや悲鳴が賑やかに響く。

「ひゃっほー!派手に吹っ飛んだな!流石、俺だぜ!」

「よし、全力で行くぞ!」

「ううっ・・・・・・」

 血に塗れた頭を抱え、外へ這い出た無防備な敵をクリスが射殺する。

「おらおらぁっ!!」

 アシュレイがヴォルカニックピストルと乱射し、ピストルとリピーターで武装した2人の男に銃弾を撃ち込む。
容赦なく放たれた弾丸はどれも急所を撃ち抜き、銃創を負わせた。

「敵襲だぁ!! 正面にて・・・・・・ぐぶゅっ!!?」

 敵の位置を知らせようとした体格のいい男が思わぬ方向から凶弾を受け、呆気ない最期を遂げた。
裏側の扉を蹴破り、リチャードとローズも急襲を開始する。
その場に居合わせた短髪の女が応戦しようとするも、ショットガンが火を噴き、散弾を浴びた胴体に無数の風穴があく。

「命乞いは無視しろ!1人残らず、根絶やしにするんだ!」

 リチャードが怒鳴り、個室に逃げ隠れようとした青年を素早く撃ち抜く。
空いた穴からは血が噴き出し、開いた扉が死体を晒した。

 クリスは次から次へと狙いの矛先を確実に定め、引き金を引く。
響いた銃声の数だけ抗う者は倒れ、命を散らしていった。
ふと、上階からこちらにライフルを向けるルシェフェルの男が視界に入ったので下がろうとしたが、狙撃手は魔弾を喰らい階段から転げ落ちる。

「すまない!サクラ、助かった!」

「援護は任せて下さい!皆さんは前線を・・・・・・きゃっ!」

 アシュレイはサクラを向かいの壁に押しやると新手の銃弾を回避させ、何発か撃ち返した。

「おっと、前に出過ぎるんじゃねえ!敵も必死だ!」

 忠告を付け足し、バレルを開いて弾を込める。

Re: エターナルウィルダネス ( No.15 )
日時: 2019/12/19 20:34
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

「く、くそ!囲まれてる!・・・・・・ど、どうしたら!?・・・・・・ああっ!!」

 戦意を喪失し、慌てふためく若い男にメルトと彼女が振り下ろした斧が迫った。
太い刀身の一線が縦に頭から通過する。
亀裂の入った胴体は真っ二つに裂かれ、剥いたバナナの皮のように上半身の半分半分が横に広がった。

「下手な弾なんて、当たらないよ〜だ」

 楽しそうに挑発して、的を掠りもしない弾幕をやり過ごす。
連射音が止んだ時、1発の銃弾がメルトの横を過り、小銃を持った男を貫通した。
音速の弾は血しぶきと共に背中を突き破り、真後ろに飾られた人物画の心臓をも見事に撃ち抜く。銃声は、その後に聞こえた。

 メルトの傍にはもう1人の女がいたのだ。
優しい面影はなく、獲物を狩ろうとする殺意の形相でこちらを睨んでいた。
ライフルの照準が重なった頃

「ひっ・・・・・・!」

 丸腰の手を上げ投降しようとするも、容赦ない2発目の銃弾に顔面を撃ち抜かれてしまう。
弾頭は眼球を潰し、更に奥を突き進んで頭蓋骨を貫いて後頭部から排出された。
穴から漏れた脳みその液体が床に零れ落ちる。

「ユーリお姉ちゃん凄い!」

 ユーリがメルトの喝采に微笑んだのも束の間、足元の雪が連射音に合わせ跳ね上がった。
彼女は再び顔を強張らせ、銃弾の通らない壁に背を預けると別荘の内側に転がり込む。
跪いた姿勢とライフルの構えを同時に取り、上に向けて1発撃った。

「ぐわぁっ・・・・・・!」

 敵は銃口が逸れ、いい加減な方向に弾を発砲する。
致命傷を負った体は手すりを乗り出し、下階へと落下した。
頭がめり込んだテーブルが真っ二つに割れ、置かれていた食物や食器が豪快に散乱する。

 ステラも飛び交う銃撃を掻い潜り、接近戦に持ち込む。
剣が届く範囲まで距離を狭めると振りかざしたシルヴィアの刀身を下ろし、老けた男の肩を心臓ごと両断した。
横から殴りかかって来た銃床打撃をかわし、低い回し蹴りをお見舞いする。
受けた足払いにバランスを崩し、横転した青年の胸にカラドボルグを突き刺し、体重をかけて刃を深く押し込む。

「ステラ!右だ!」

 クリスが叫んでステラは、はっ!と言われた道筋を向くとナイフを突きつけ、勢いよく迫って来るルシェフェルの女を捉えた。
しかし、その刃が敵の体を抉る事は叶わず、散弾の餌食となった。
口と体中に開いた無数の穴から吐血して倒れる女の後ろでローズが口の端を吊り上げ、空薬莢を弾き出す。

「今のは1つ借りにしておくわ」

 別の廊下から何発もの銃弾を浴びせられ、後退りした死体が倒れた。
リリアとデズモンドが左右対称に顔を出す。

「こっちは片付いたわ。いつまで撃ち合ってるつもりなの?」

「そう急がせるな。お前ら、やけに来るのが早かったな。そっちには誰もいなかったのか?」

 リチャードが死にかけの男に止めの1発を放って、聞いた。

「まあね。こっちは運よく敵の数が多くなかった。怪我もしないで済んだけど、リリアにとっては不満だったようだね」

「長年積んだ経験の読みが外れるなんて、私にも焼きが回ったのかしら?クリスの事、言えなくなるわね」

 銃声のオンパレードは終結を迎え、別荘は冬の風だけが寒さを誘う静寂の場となった。
両勢力の描いた銃痕のアートが壮絶な戦いを裏付ける。
会談、床、部屋にはファミリーに属した者の無残な死体が溢れ、流れ出た血の生臭い臭いが心地悪さを生む。

「ファミリーのクソ共は殲滅したな。これだけ、くたばったんだ。上階にも生き残った連中はいねえだろ?さっさとカトリーヌの皮をはいでやろうぜ?」

 アシュレイが唾を吐き、ピストルを手の内で回す。

「なら、早くしよう。あの女だけは絶対に逃がすわけにはいかない」

 クリスが言葉に怒りを募らせ、呼吸をやや荒くする
その感情からは憎悪だけではなく、焦りとプレッシャーも感じられた。

「メルト、ちょっといいかな?」

「な〜に〜?」

 ステラの生真面目な問いにメルトがマイペースな返事を返す。

「姉の過ちを正したいと言っても、カトリーヌは君のたった1人の家族だ。その手を姉妹の血で汚す覚悟はできて・・・・・・」

 すると、メルトは穏やかな目つきを一変させ、気迫のある面持ちを作った。
今まで知り得なかった一面に圧倒され、ステラは言葉を失う。

「いらない愚問、あなた達の仲間に加わった時から覚悟はとっくに決めてる。カトリーヌは私が知ってるお姉ちゃんじゃない。最早、あの人はもう悪魔そのものの殺人狂。振り落とす斧の力を緩めたりはしない」

「なら、二言はないね。信頼しているよ?頼もしい妹さん」

 デズモンドが軽いノリでメルトの肩を優しく叩く。


「2階を除けば、あとはこの広間だけか?」

 リチャード達が壁に背を預け、残った部屋への突入準備を整える。

「もう一度、奇襲を仕掛けてカトリーヌをビビらせてやろうぜ?俺とローズのババアが爆薬を投げ込んだら、部屋にいる連中を一掃しろ。奴を撃つ権限はてめえらにくれてやる」

「ふ〜ん・・・・・・私を年増呼ばわりするなんて、いい度胸ねアシュレイ?ダイナマイトをケツに詰めて放り込むわよ?」

 口の悪さにローズは本気にしか聞こえない脅迫をする。
晴れやかな笑顔を繕っていたが、微小に頬が怒りで震えていた。
2人は爆薬の導火線に火を点け、息が合ったタイミングでホールに投げ込む。
火薬の量が多いだけに爆発が広範囲に広がり、強い震動を引き起こす。

 クリスとサクラは押し寄せる煙に紛れ、ホールの入り口に駆けると銃弾と魔弾を連続で放つ。
大口径の銃弾にふらつく男の胸を抉られ、もう1人のルシェフェルも宙を舞い、三度回転した。
魔弾に吹き飛ばされた小柄な女は、壁を突き破って外へ放り出される。

「・・・・・・っ!」

 クリスは逃走を図ろうと死角から飛び出した初老の男を捉え、銃口を下に向けると1発撃って足の動きを封じる。

「がひゅっ・・・・・・!」

 脚をやられた男は奇声を漏らし、目蓋と口を限界まで開けながら地べたに這いつくばった。
どくどくと血が溢れる傷を押さえ、耐え難い痛みに女々しく唸る。
間もなく、クリス達が部屋に流れ込んだ。

Re: エターナルウィルダネス ( No.16 )
日時: 2020/01/13 18:11
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

「き、貴様らぁ・・・・・・!」

 男はクリス達に憎悪をたぎらせ起き上がろうとするが、足に力が入るはずもなくリチャードに問答無用で殴り倒された。

「見事な腕だ。だが何故、殺さずに生かした?」

「こいつはカトリーヌじゃないけど、格好も他の連中とは違う。つまり、ルフェーブル・ファミリーの幹部だ」

「なるほど。逃げる術を奪ったついでに、尋問しようと言うわけだね?」

 デズモンドが感心しながら目的を推理し、

「あんな短時間でファミリーの幹部である事を即座に判断し、生け捕りにするなんてね・・・・・・頭は悪いけど、その反射神経に関しては素直に敬服するわ」

 リリアが褒めているのか、呆れているのか断定に迷う発言をする。

「うう、ぐぅ・・・・・・!」

 クリスは自身が傷を負わせた男に良心の呵責もなく、弾が切れたリボルバーから空薬莢をばら撒く。
スピードローダーを用い、6つの穴全てに弾の装填を済ませると、回転させたシリンダーを戻しハンマーを倒した。
銃口の狙いをしわが寄った額に重ねる。

「貴様ら・・・・・・ルフェーブル・ファミリーに楯突いたら、どうなるか分かっているんだろうな・・・・・・!?」

 敗北を喫した立場である事にも関わらず、幹部は命乞いするどころか強きに出た。
クリスも積極的な態度で言い返す。

「ああ、ファミリー恐ろしさを知ってる上でお前達を襲った。僕達の目的はカトリーヌ・ルフェーブルを抹殺する事だ」

「何だと・・・・・・はっ!自ら、死に急ぐ行為に走るとは、愚かな連中よ・・・・・・!」

「くだらない御託はいい。カトリーヌはどこだ?この別荘にいるんだろ?」

 クリスが声を尖らせ、銃口をより間近に迫らせる。

「ふざけているのか・・・・・・?素直に情報を明け渡すと思っ・・・・・・ぎぃああっ!!」

 きしんだような悲鳴、幹部の笑みが歪む。
赤い目をしたステラが銃創を負った足を乱暴に踏みつけた。
強引に上半身を立たせると、カラドボルグをギラつかせ

「僕はクリスと違って、優しいお願いはしないぞ?傭兵は残虐な殺し方をいくつも知ってる。正直者になった方が身のためだ」

「くっ・・・・・・!カ、カトリーヌ様は、ここにはいない・・・・・・」

 反抗的だった幹部も脅しに屈し、観念してクリスの質問に答えた。

「嘘をつくと、激しい後悔が待ってるわよ?」

 リリアは証言を疑い、弱みが漏れた亀裂に更に圧力をかける。

「ほ、本当だ!カトリーヌ様はこ、ここにはいない・・・・・・!だが、あの方は1週間後にここを訪れる・・・・・・!」

「マジかよ!?くそっ、あの女がいないんじゃ襲った意味が丸っきりねえじゃねえか!何のために俺達は命を懸けたんだよ!?」

 落ち着きを失い興奮するアシュレイとは裏腹に、冷静なローズは最初から確証があったように、"そんな事だろうと思った"とため息をつく。

「とんだ外れくじを引いてしまったわね・・・・・・」

「ふ、ははは・・・・・・カトリーヌ様を敵に回すなど、死神を敵に回すようなもの。あの方は100人の騎兵隊を連れてやって来るだろう。そうなれば、お前らなど一捻り・・・・・・!」

 広い空間に反響した轟音が言葉を遮る。
目と鼻の先にあった銃口が火を噴き、幹部は頭の半分を吹き飛ばされた。
全員がその情景を脳裏に焼き付ける。

「いたのはカトリーヌではなく、たかが口先だけの男だったか・・・・・・」

 リチャードが横たわる幹部の死体を見下ろし、皮肉を吐き捨てた。
愛用のリボルバーをしまうと煙草をくわえ、火をつける。

「すっきりしない幕引きね。わざわざ冬支度までして、雪山に馬を走らせた自分が愚かしいわ」

 どうしようもない展開にリリアもため息をつかずにはいられなかった。

「今度こそ、お姉ちゃんを追い詰めたと思ったのになぁ・・・・・・あ〜あ、しらけちゃったよ」

 メルトも深い失望を隠せない様子だ。

「始めから変だと思ってたんだ。組織の最高指導者が宿泊する別荘にしては、あまりにも警備が手薄過ぎるし、見張りの兵装も親衛隊とは思えないほど粗末なものだった。さて、僕達は見事に目的を果たせなかったね。皆はこれからどうしたいんだい?」

 デズモンドが誰を指名するわけでもなく、後先の提案を求める。
誰も何も答えられない中、リチャードがどこか深刻な表情で仲間に次の行動を促した。

「死体や別荘を漁れ。金目の物を持てるだけ奪ったら、すぐにここを出るぞ。急いだ方がいい」

「ちょっと待って!カトリーヌは1週間後には別荘に来ると言っていたんだ!だったら、ここで待ち構えれば・・・・・・!このチャンスの逃す手はない!」

 ただ1人、クリスだけは納得がいかず別荘に留まるよう訴えるが、リチャードは肯定する兆しさえもなく

「お前が頭をぶち抜いた幹部は他に何て言っていたか、覚えているか?カトリーヌは100の騎兵隊を引き連れてくると証言していた。俺には、あれが単なる脅しには聞こえなかった。もし、本当にそれだけの数が押し寄せて来たら俺達に勝ち目など微塵もない。1週間後とも言ったが、奴らの到着は思うより早いかも知れん。すぐにここを離れるべきだ」

「クリスの気持ちは理解できないわけじゃないけど、今の僕はリチャードに賛成したい。多分、その騎兵隊はカトリーヌ直属の精鋭部隊だろうね。そんな奴らをこれだけの人数で迎え撃つなんて、あまりにも無謀だ。命あっての物種だよ」

「素直にリチャードに従うべきね。犬死なんて最悪な死に様だし、あなたとの心中は私にとって最高の屈辱よ」

 デズモンドがいつもらしくない真剣さを露にして、リリアも否定を覆さない。

「・・・・・・分かった。皆がそこまで言うなら、これ以上のわがままは言わない」

「どうか、気を落とさないで下さい。カトリーヌは仕留め損ねましたが、彼女の拠点の1つを陥落させたんです。十分な戦果を上げられたと思いますよ。それに別荘の貴重品を奪えば、多大な収入を得られるはずです。この襲撃もあながち無駄じゃなかっ・・・・・・っ!?」

 慰めの途中で突然、ガタッ!と何かがぶつかる物音が鳴り、クリス達は緩んでいた気を引き締め武器を構えると、閉ざさられた扉を凝視する。

「・・・・・・誰かいるみたいですね・・・・・・?」

 ライフルの狙いを定めながら、近づこうとするユーリをリチャードが止める。

「様子がおかしい・・・・・・ステラ、メルト、扉を開けろ。援護する」

 ステラが黙って頷き、メルトが息を呑んだ。
2人は静かに扉を左右に挟んで、配置につく。
リチャードの合図でメルトが振り上げた斧を斜めに叩きつけ、取っ手と鍵穴を破壊。
ステラが扉を退かし、中に踏み込もうとしたが

「ああああああ!!」

 鼓膜に響く突然の叫び。
勢いよく飛び込んで来た体当たりにぶつかり、ステラは弾き飛ばされてしまう。
その人物は闇雲にナイフを振るい、クリスに襲いかかる。


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