複雑・ファジー小説

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エターナルウィルダネス
日時: 2020/02/13 17:55
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

 乾いた土、枯れた草木、その上に零れ落ちた血の跡・・・・・・復讐の荒野は果てしなく、そして永遠に続いていく・・・・・・

 ディセンバー歴1863年のオリウェール大陸。
西部諸州グリストルと東部諸州ハイペシアとの内戦が勃発。
かつて全盛期だった大陸は平穏の面影を失い、暗黒時代への一途を辿っていた。

 王政派の勢力に従軍し、少尉として小隊を率いていたクリス・ヴァレンタイン。
戦争終結の後、退役軍人となり、両親が残した農場で妹であるリーナと平穏に暮らしていた。
しかし、突如として現れた無法者の集団による略奪に遭い、家は焼かれ、リーナを失ってしまう。
運よく生き残ったクリスは妹を殺した復讐を決意し、再び銃を手にするのだった。

 彼女は頼れる仲間達と共に"ルフェーブル・ファミリー"の最高指導者"カトリーヌ"を追う。


・・・・・・・・・・・・


 初めまして!ある理由でカキコへとやって来ました。"死告少女"と申します(^_^)
本作品は"異世界"を舞台としたギャングの復讐劇及び、その生き様が物語の内容となっております。
私自身、ノベルに関しては素人ですので、温かな目でご覧になって頂けたら幸いです。


・・・・・・・・・・・・

イラストは道化ウサギ様から描いて頂きました!心から感謝いたします!

・・・・・・・・・・・・


・・・・・・お客様・・・・・・

桜木霊歌様

アスカ様

ピノ様

黒猫イズモ様

コッコ様

Re: エターナルウィルダネス ( No.27 )
日時: 2020/05/23 22:27
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

 ディヴイットは姿の見えないギャング達を方向を正面に意地悪く相好を崩した。

「まあ、いいや。奪えて組織の利益になるもんなら、何でもいいぜ。・・・・・・おい!聞こえるか!?てめえら、持ってるもんを全部よこしやがれ!あと、夜の玩具用の女もな!大人しく従えば命は取らねえ!全裸にするだけで勘弁してやる!」

 と挑発的にたちの悪い要求を持ち掛ける。

「絶対に顔を出すな。クリス、そっちから敵の勢力を把握できるか?」

 クリスは鉄缶の細い間から 敵側のエリアを覗き込んで

「幹部が2人、兵隊の数は40くらいだ。囲まれてはいないけど、こっちが不利だどいう状況は変わらない・・・・・・」

「どうする?大人しく降伏する・・・・・・?」

 ローズの提案にリリアは"とんでもない"を最初の台詞に首を振った。

「ファミリーは捕虜なんて取らないわ。手を上げた瞬間、蜂の巣にされるわよ」


「おいっ!!聞いてんのかクズ野郎共!!」

 返答が返らない事にディヴイットは腹を立て、不愉快な面持ちを浮かべた。
要求に従わない相手側の陣を凝視し、

「お前ら、一斉射撃だ。アルバート、お前の部隊は俺達が撃ってる間に回り込め。弾を無駄にさせるんじゃねーぞ」

「(ガキのくせに威張りやがって・・・・・・)随分と単純な作戦だな。まあ、否定はしないが。お前こそしくじるなよ?」

 アルバートは銃を抜き、作戦のために引き下がる。
自動小銃を手にしたディヴイットに合わせ、部下達も銃器を構えた。
全員が最初から勝利を確信している面持ちを浮かべていた。

「・・・・・・ヴぇ?」

 ・・・・・・が、ファミリーの殺し屋の1人の顔半分が弾け飛んだ。
砕けた脳や頭蓋骨、頭部の中身を露出し、飛び出た眼球が垂れ下がる。
舌を出し、笑顔の硬直を保ったまま、第一の犠牲者が倒れ込む。
逆上を抑えられなくなったアシュレイが銃を撃ったのだ。

「クソ共がぁ!!!全員ぶっ殺してやるぜぇっ!!」

 と罵声を浴びせ、誰これ構わずヴォルカニックピストルを乱射する。
ファミリー達は被弾を避けるため、弾が当たらない場所へに身を潜めた。

「ちっ、やってくれるじゃねえか・・・・・・ま、これで向こうを生かす理由はなくなったな」

 先制を取られ、気に入らない顔をするディヴイットだったが、殺す機会が回った事でニヤリと開戦の合図に微笑む。

「くそったれ・・・・・・あのバカッ・・・・・・!」

 リチャードは暴走した仲間から敵の集中をこちらに向けようと援護を謀った。 
しかし、引き金を引く暇もなく、何倍もの掃射の雨が跳ね返る。
かわしようがない鉛の大群はあらゆる物を粉砕し、建物に無数の穴を作った。

「きゃあああ!」

 サクラはデズモンドの体の下で敵の反撃に悲鳴を上げた。
その上に降り注いだ木の板の破片が背中に当たる。

 全弾を撃ち尽くしたアシュレイをステラが死角へと強引に引っ張り出し、2人は横たわる。
皆を危険に晒した身勝手な行為にステラは目の色を赤く染め、彼を力任せで地面に圧迫した。

「一体、何を考えているんですか!?こんな展開、誰も望んでいなかった!!」

 頭に血が上ったアシュレイは反省の兆しすらなく、ステラを見上げ

「うるせえ!!あいつらだけは俺の手で殺らなきゃ、気が済まねえんだよ!!」

「ギャングは君のための組織じゃないだ!!仲間を危険に晒す判断は下すな!!」

「・・・・・・何だとぉっ!!」

 アシュレイは拘束を振り払おうと抵抗しようとした時

「今の君の醜態を見たら、天国にいるヴェロニカさんが悲しみますよ・・・・・・彼女は仲間を大事にするあなたを愛してるはずだ・・・・・・!」

 その二言で、途端にアシュレイの暴れ狂う力が落ち着く。
何かに気づいたような呆然とした真顔を思いを込めて睨む仲間の面様に捉えられていた。 
次の瞬間、無になっていた面持ちが気味悪く緩んだ。

「はっ、勝手に殺すんじゃねえよ・・・・・・!この傭兵野郎が・・・・・・」

「どうも、それが僕のお節介という悪い性格なんです・・・・・・」

 ステラも軽く笑みを作ると、我に返った仲間に食い込ませた指の圧迫を解放する。

「くっ・・・・・・!」

 クリスは敵の一斉射撃の隙を見計らい、リボルバーを2発、連射する。
敵陣とは異なる発砲音と共に弾は撃った数だけ狙った的に命中した。
反撃を喰らったファミリーの殺し屋は銃創を押さえて蹲り、屋根から転げ落ちる。

「おい!そっちは生きてるか!?」

 当たり損ねる弾丸にガタイのいい身をすくませながら、リチャードが延々と響き渡る銃声に負けない声で後方に状況を聞き出す。

「こっちは誰も撃たれてない!だが、このままじゃ動けないし、相手の思う壺だ!」

 最初に自分達に置かれた有様を知らせたのはデズモンドだった。

「こっちも攻撃が激しくて、上手く狙えないわ!誰か援護が可能な人はいる!?」

 リリアも銃を構える余裕すらなく、誰かを頼らざるを得ない状態だった。

「こっちにあるのはピストルと散弾銃・・・・・・それとは逆に敵さんは遠距離戦に特化したリピーターライフルに自動小銃・・・・・・随分とリッチな装備ね・・・・・・もっと危ない武器を用意してくるんだったわ。もし今日、生きて帰れたら大砲でも買わなきゃ・・・・・・」

 先に立たない後悔にローズも冗談を愚痴り、撃てそうな機会を窺う。

Re: エターナルウィルダネス ( No.28 )
日時: 2020/05/30 19:26
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

「んで?奴らはどう出ると思う?傭兵野郎」

 ステラは中傷的なあだ名を聞き流し

「奴らほどの知能犯が無鉄砲に撃ちまくっているとは思えない。恐らく、正面の部隊はあくまでも囮を演じていて、その隙に別動隊が回り込む魂胆なんでしょう。基本的な戦略の一種です」

「完全に囲まれちまったら、俺達は終わりってわけか・・・・・・随分とせこい手を使ってくれるじゃねえか。クソが、なめやがって」

「相手がその気なら逆にこっちが同じ手を利用して、ファミリーを返り討ちにしてやりましょう。僕達は1番端の建物にいます。奴らが撃っている反対側から回り込めば・・・・・・」

「不意を突いてビビらせてやろうってわけか・・・・・・面白そうじゃねえか。玩具を買い損ねたガキみてぇにわめいたら、喉がカラカラになっちまった。奴らのどす黒い血で潤すか」

 2人は仲間が留まる位置の反対側に移動する。
途端にステラは壁際から飛び出そうとしたアシュレイを引き止めた。
二度目の妨害に"今度は何だよ!?"と叫ぼうとした口を塞ぎ、もう片方にある人差し指を鼻に当てる。

「・・・・・・奴らがいます。無暗に顔を出したら、やられますよ?」

 とステラは盲点を把握し、小声で告げる。

「どれくらい、いやがんだ?」

 アシュレイはトーンを合わせ、

「足音からして5人はいます。君は銃を持っているけど、僕は2本の刀剣しか持っていません。まともにやり合えば、まず勝ち目はないと言えるでしょう」

「おい。お前、俺がギャング随一のクラフトパーソン(工作員)だって事を忘れたのか?」

 自信ありげにアシュレイの手にはいつの間にか、ダイナマイトとそれを点火するライターが握られていた。

「ちっ、だから剣なんざ時代遅れだって言ってんじゃねえか。このクソ溜めから生きて帰れたら、デリンジャーでも買っとけ」

「・・・・・・ふっ、約束します」

 目を黄色に染めるステラの反応にアシュレイも笑った。
2人は互いに合図で送り、導火線に火をつける。
タイミングを見計らい、壁際から腕だけを火薬を投げ込んだ。

 驚き、慌てふためく複数の声は凄まじい爆音にかき消された。
押し寄せる爆風や残骸を隠れてやり過ごし、煙が薄くなったのを機に2人は壁を飛び出し、一掃に移る。
アシュレイはダイナマイトで痛手を負わすも生き残ったファミリーにピストルを何発か発砲した。

 撃たれたファミリーは弾に体内を抉られ、死ぬ。
手足が吹き飛び、虫に息になっていた最後の1人も脳天を撃って止めを刺した。
無様な死に様にアシュレイが嘲笑う。

「ひゃひゃひゃ!!見たかってんだ!俺の不意を突こうなんざ、1000億年早えんだよ!」

 原型を半分留めてない死体に言ってやった。
だが、その慢心は太い銃声により、終止符を打たれる。

「・・・・・・あ?」

 アシュレイは短く疑問を漏らし、痛みが走った胸に触れ、血の着いた手の平を眺めた。
向き直って視覚が捉えたのは、何かをこちらに向けて立っていたルシェフェルの青年。
晴れた煙が覆っていたのは、リボルバーだった。

「やはり、動きを読まれていたか・・・・・・部下を先に行かせて正解だった」

「・・・・・・ごふっ!」

 アシュレイは吐血し、ふらりと倒れた。
鉢合わせしたアルバートは落ち着いた態度を崩さず、部下を死なせた行為に罪悪感は微塵も感じ取れない。

「アシュレイさん!・・・・・・この野郎ぉっ!!」

 ステラは激怒し、アルバートを赤い目で睨んだ。

「そんなに殺気立つな。最初に撃ったのはお前達だ。文句は言えない・・・・・・だろ?」

 アルバートはあたかも自分の潔白を主張し、ステラをも撃とうとした。
トリガーが完全に落ちる前、何かが銃に当たり銃口は上へと逸れる。
弾丸は上空へ消え、地面にカラドボルグが突き刺さる。

「ほう、旅行者のくせにやるじゃないか」

「生憎、お前が殺そうとしているのは旅行者じゃない。熟練の傭兵だ」

 ステラは銀剣シルヴィアを手にそう言い放った。


「ローズ!3時の方向!」

 リリアが敵の存在に気づき、警告を促した。
アシュレイ達がいるエリアの反対側からも不意を突こうと、ファミリーの殺し屋が忍び寄っていたのだ。

「・・・・・・えっ?くそっ!」

 ローズは文句を垂れる暇も与えられず、戦う体制を整える。
しかし、とっさの反撃準備も間に合わず、ショットガンよりも相手の銃口が先に狙いを定めた。
後はトリガーを指で引くだけで命は消える。

 人生の終焉を間近に控え、呆然とした。
鉛の激痛を覚悟した矢先、ひゅんと不自然な風の音が吹く。
一筋の光線がファミリーの額を貫通し、血と中身が後頭部から派手に吹き出す。

「・・・・・・ちぃ!」

 別にいた奇襲兵は仲間の不審死を差し置き、凝りもせずにローズを狙った。
直後に腹部に衝撃を喰らい、いくつも空いた銃創から血を噴射させながら、宙を飛ぶ。
スライドをコッキングしてもう1発、銃声を響かせる。
不意打ちは失敗に終わり、首から上がないファミリーの殺し屋が倒れる。 
ローズは微笑し、3発目を薬室に装填すると遠くにある峠を見上げた。

「最初の1人はユーリの仕業ね。やるじゃない。今度、ウィスキーでも奢ってあげるわ」

 峠にて、ユーリはボルトを引き、弾頭のない薬莢を弾き出す。
リロードを済ませ、次の標的にスコープの照準を合わせる。
その横に耳と目をぎゅっと塞ぐミシェルがいた。

Re: エターナルウィルダネス ( No.29 )
日時: 2020/07/02 20:19
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

「・・・・・・ぎゅびゅっ!」

 また1人、ファミリーの殺し屋が狙撃の餌食となる。
続いて2人目、3人目と急所を的確に撃ち抜かれていった。

「・・・・・・あ?」

 撃ち返されてもいないのに仲間が次々と死んでいく現象にディヴイットは露骨に顔をしかめた。
彼は向きを変えて偶然、峠の上に光を反射した輝きを目撃する。
その正体を瞬時に理解した彼は撃つのをやめ、とっさに体を逸らした。

「・・・・・・っぶね!」

 ディヴイットが立っていた位置に音速の弾丸が着弾した。
地面が深く抉られ、砂や小石の塊が跳ね上がる。

「なんだぁ?スナイパーを配置させていやがったのか?こいつら、ただの旅行者じゃねえな。民間人にしちゃ、やけに戦い慣れてやがるしよ」

 ディヴイットは思い込んでいた勘違いに気づき、自身の失態に苦笑する。 
狙われているにも関らず、その表情は妙な余裕を語っていた。

「まっ、こっちにもいくつも切り札があるんだがな」

 舌舐めずりし、ディヴイットは何かしらの合図を部下に送って一部の部隊を下がらせた。
後退した部隊は数人がかりで何かを運び込んで元の配置につく。
持ち出された物は得体が知れず、覆われた布が剥がされ、太い形状をした機械が晒される。
ファミリーの1人がスライドを引き、筒先の方向を合わせるまで、それが何なのか分からなかった。

「まずいっ・・・・・・!」

 敵陣の企みを知ってしまったデズモンドの青ざめた顔がより深刻に歪む。
顔半分を引っ込めた途端、鎮まる事を知らなかった弾丸の嵐が何倍もの勢いがある掃射へと変わる。

「ひゃああああ!」

 爆発の連鎖にも似た騒音はメルトの悲鳴など無にしてまう。

「リチャード、伏せるんだ!」

「なっ・・・・・・がっ!」

 デズモンドの警告にも空しく、1発目がリチャードの頭上に当たり、ハットが飛ぶ。
2発目は不注意にもはみ出ていた脇腹を削った。
喘ぎ声と同時にビクッと痙攣を起こし、全身が横たわる。

「リチャードッ!!」

 リリアは彼を助けようと冷静な判断力を捨て、無防備の状態で影から飛び出していた。
当然、弾幕の一部は彼女にも被弾し、健全な片手と片足を破壊した。

「ああ・・・・・・ぐぅ・・・・・・!」

 血を流し、激痛に蹲るリリア。
集中砲火を浴びせられる前にローズが姿勢を低く、彼女を元の隠れ蓑へ引きずり戻す。
木箱に背をもたれさせ、怪我の安否を確認した。

「大丈夫・・・・・・弾はどれも抜けてるし、致命的な箇所は撃たれてない。らしくないわね。頭脳明晰のあんたが作戦もなしに闇雲に突っ込んでいくなんて」

「私とした事が・・・・・・ごめんなさ・・・・・・ぐっ!・・・・・・あなたに説教されるなんてね・・・・・・」

 リリアはぐったりとして皮肉を零し、笑みを浮かべるも、息を切れが激しくなっていく。

「喋っちゃだめ、体力を消耗するわ。医療は不得意分野だけど、傷口を消毒してみる。ポーチに密造酒があってラッキーだったわね」


「機関銃・・・・・・!」

 ユーリが実に厄介な展開にユーリの声音が尖る。
撃つはずだった誰でもいい標的への狙撃を中断し、緊急に狙いを機銃手に切り替えた。
スコープはいつも通り安定し、不自由もなく標的を捉えられた・・・・・・しかし

「ぎゃっ・・・・・・!?」

 突如として、口元をぎゅっと強く締めるユーリ。
痛感を自覚しすぐさま、ほふくのまま後進する。
頬に触れた左の手を確かめると血が薄く、付着していた。

「ユーリお姉ちゃん!どうし・・・・・・きゃあっ!?」

 異変に気づき、立ち上がろうとしたミシェルの足を反射的に掴み、強引なやり方で転ばせる。
彼女の顔があった位置に光線が通過し、後方の木のどこかにめり込んだ。
狙撃手は少女を抱き抱え、光線の当たらない範囲外まで遠ざかる。
ユーリには分析せずとも、自身に危害を加えた犯人の詳細を察した。

 集落のに片隅にある櫓にファミリーの殺し屋がいた。
ストックを固定し、抱えていたのはスコープが取り付けられたライフル銃だ。
奴はさっきまでのユーリの行動の大半を真似、銃口を峠に合わせている。

「まずいな・・・・・・あそこの櫓の狙撃手、ユーリを狙ってる。こっちにも狙撃手がいる事が気づかれたんだ」

「どうしましょう!?これじゃ、こちらがますます不利に追い込まれるばかりです!」

 困惑するサクラだが、デズモンドは冷静に策を練る。

「距離も遠いし、機関銃のせいでここの位置からじゃ狙えない。サクラ、君はメルトと共に回り込んで狙撃手を叩いてくれないか?」

「そ、そんなっ・・・・・・!私とメルトさんだけでは、荷が重すぎます!」

 冷静な意見にサクラは熱烈にプレッシャーを訴えるが、デズモンドは非情だった。

「協力したいけど、手が離せないんだ。僕はここに留まって、負傷したリリアの手当てに専念しなくちゃいけない。ローズだけでは、まともな処置はできない。戦闘に関してなら、君達の方が遥かに最適だろう」

「・・・・・・分かりました。誰かがやらなきゃ、いけませんものね」

 デズモンドの説得とやむを得ない状況にサクラは覚悟を決める。

「大丈夫!危なくなったら、私がサクラを守ってあげるんだから!」

 メルトも張り切って、笑顔で平気で落ち着き払っているように振る舞う。

「ありがとう。君達の戦力があれば百人力だ。でも、1つだけ約束してくれないか?決して、無理はしない事・・・・・・いいね?」

Re: エターナルウィルダネス ( No.30 )
日時: 2020/06/28 18:43
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

 アルバートは巧みな動作でリボルバーを連射する。
ステラは人並外れた俊敏な動きで全弾をかわし、その全てを意味のない場所へ命中させた。

「ほう、大した身のこなしだな」

 見事な回避の術に感心したステラは最後の1発が込められたシリンダーを雷管を叩く位置に合わせる。 
次は外さんとばかりによく狙いをつけ、急所を撃とうとした。
しかし、銃口が狙った先が相手の刀身と重なる。それに気づいた時に引き金が落ちた。

 太い銃声と音速の銃弾。
鉛の弾頭はシルヴィアの刃に当たり、受けた衝撃で斜めに傾く。
弾は跳弾し、アルバートから見て左斜めに逸れた。

 弾切れを好機にステラはシルヴィアを突きつけ、接近戦に持ち込んだ。
アルバートも武器を軍用のナイフに変え、同様の戦法で攻めかかる。

 突撃してくるステラの意表を突こうと、途端に低い姿勢を取った。
両手で全身を支え、躍るように下半身を回転させて足払いを仕掛ける
ステラは跳ね飛び、宙返りの着地と同時にアルバートの頭部を踏みつけようとした。
しかし、反射神経が長けているのは彼も同じ。顔を微かにずらし、紙一重に直撃を免れる。

「惜しかったなぁ。傭兵」

 アルバートは背後に回って、起き上がるとニタニタと楽しそうに相手を挑発した。
ステラは黙し、純粋な殺戮を望んだ鋭い形相で容赦なく斬りかかる。

 シルヴィアの斬撃の連続をかわし、刀身を振り回す際に生まれる一瞬の隙を逃さず、アルバートは突き出された銀剣を握る手首を掴んで強引に押さえ込む。
封じ手で攻撃手段を奪い、ナイフを真横から無防備な首筋に捻じり込もうとした。
しかし、ステラもその手は喰わないと、アルバートのナイフを間一髪食い止める。
互いに防御に徹する状態では埒が明かないため、2人は刀身が届かない範囲まで引き下がった。

 刃は甲高い音と火花を散らしながら幾度も混じり合い、互いに決着を譲らなかった。
激しい動きを繰り返しても両者とも、息は上がっていない。
戦意は衰えるどころか、その勢いを増していく。


 デズモンドとローズにリリアの応急処置を役割を任せ、メルトとサクラは集落の横側に回り込んだ。
壁に沿って慎重に動き、なるべく物陰から出ないよう注意を払う。
積み上げられた樽の隙間から覗き、櫓の狙撃手を凝視した。
ライフルを持った殺し屋はユーリの妨害に こちらの存在には気づいていない。

「私が先に行く・・・・・・サクラは援護に回ってくれない?」

 メルト鼻先に人差し指を当てながら、曖昧な作戦を立てる。 
櫓の方を向くと、しゃがんで狙撃手に接近した。 

 建物の曲がり角に差しかかった時、望まぬ事態に遭遇する。
ファミリーの殺し屋と蜂合わせてしまったのだ。
互いの脅威が認識された時、本能が蹂躙を望む。

「き、貴様っ・・・・・・がっ!」

 メルトは一足早く先手を取り、中柄の男に掴みかかった。
男は振り払おうと、肘を落とすが少女が着た頑丈な鎧にはびくともしない。
足が浮いた事を意識した頃、重い体重を背負われ、投げを打たれる。

 背中を強打し、悶えるファミリーの殺し屋。
容赦ない斧が落とされ、かち割られた頭蓋骨の半分が血を撒いてが転がる。
命乞いという虫のいい判断が脳裏を過った閃いた直後だった。


「伏せて下さい!!」


 サクラが放った魔弾は屈もうとしたメルトの背中の上を擦れ擦れに通過し、正面にいたもう1人の敵の心臓を貫いた。
殺し屋はまともに受けた衝撃で飛ばされ、同時に引き金を引く。
狙いがずれた1発の銃弾はいい加減な方向へ飛んで、どこかに命中する。

「ありがとっ♪」

 メルトは可愛く礼を言って、窮地を救ったサクラは頷く。
しかし、達成感の笑みは長くは続かなかった。  

 狙撃手は仲間が死に際に放った銃声により2人の存在に気づいてしまったのだ。
焦りを募らせ、標的を峠から下周辺に変え、狙いを定める。
スコープの十字線が捉えたのはメルトだ。

「危ないっ!」

 とっさに叫んで、駆けつけるサクラ。
メルトを抱き抱え庇おうとしたタイミングで銃声が轟く。
2人は偶然にも弾が当たらない場所に転げ回り、その拍子にぶつかった木板が倒れ、下敷きになる。

「い・・・・・・いてて・・・・・・」

「う・・・・・・うう・・・・・・」

 メルトは自身の体を包む腕の中で、サクラの唸りに不自然な印象を受けた。 
重圧に起き上がれず、手と足を乱暴に使って木板を強引に退かす。

「サクラ・・・・・・だいじょう・・・・・・え・・・・・・?」

 メルトは木の板の一部にべっとりと付着した大量の血痕を目撃した。嫌な予感は直後に的中する。
サクラの右脚にクルミくらいの大きな穴が開いており、そこから吹き出すように黒い体液が溢れ出ていたのだ。
原因は嫌でも、理解を強制させた。

「サクラッ!!」

 メルトは顔面蒼白になり叫んだ。
邪魔な木板を完全に取り除き、怪我の容態を確かめる。

「平気です・・・・・・これくらいの傷・・・・・・あぐっ!」

「平気なわけないよ!どうしよう・・・・・・わたしのせいだ・・・・・・!」

 メルトは油断で引き起こした過ちに責任を感じ、自我を失いかけるが

「メルトさん・・・・・・あっ、くっ・・・・・・今は絶望を控えて下・・・・・・さい・・・・・・早く狙撃手を何とかしないと・・・・・・皆が・・・・・・」

「何言ってるの!?狙撃手のいる位置は遠いし、奴は私達を殺す気満々で待ち伏せてるんだよ!?どうやって、この状況を突破する気!?」

「私にいい策があります・・・・・・落ち着いて、今度は私の・・・・・・指示に従って・・・・・・」

Re: エターナルウィルダネス ( No.31 )
日時: 2020/07/13 21:05
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

「早く姿を出せってんだ。あの世行きのチケットをくれてやるからよ」

 2人が隠れている物陰に狙いを固定し、狙撃手は事を急かす。
撃てる瞬間を今か今かと待ちわびていた。

 すると、物陰から何かがひょっこりとはみ出した。
先端が細く尖った汚れのない純白の生地。
サクラが常に被っている魔導士の帽子だ。

 待ちに待った獲物のお出ましに狙撃手の口はニヤリと引きつり、舌なめずりをする。
狩猟衝動の興奮を押さえ、スコープの安定に集中するために肺に空気を溜め、息を止める。
瞬時に発砲できるよう予め、引き金を半分、指で圧迫しておく。

 サクラの無防備の頭部は枠の中から外に出る。 
時間も経たないうちに完全に撃ってくれと言わんばかりの的になった。

「死ね」

 命の終わりを促す一言。
永眠の賜りを目的とした銃声が響く。
ライフル弾は的を外す事なく、頭部を見事に撃ち抜いた。
銃創で抉られた帽子は生地の繊維の欠片を飛び散らせ、胴体が横たわる。  

 狙撃手は慢心しサクラの死を確信した・・・・・・が、直後にそれは誤認へと変わる。
何故なら、ライフルが仕留めた標的は生物ではないと悟ったからだ。
弾を受けた者の正体は帽子を被せられただけの木板だった。

「なっ・・・・・・!?」

 狙撃手が驚いたのも束の間、メルトがダッと土を蹴り、勢いよく飛び出した。
敏速な獣にも引けを取らない俊敏な動きでこちらへと間合いを詰めて来る。
まんまと嵌められた狙撃手は呆然という隙を突かれ、コッキングが大幅に遅れてしまう。
急いで次弾を装填し、スコープに片目を覗かせて発砲するも、沈着に欠ける弾丸は掠りもしなかった。  

「ドーーーン!!」

 メルトは叫びと同時に振りかぶった斧を叩きつけた。  
幅広い刀身は太い柱を裂き、粉々に粉砕する。
台を支える脚を破壊された死神の塔は斜め傾き、形を失いながら崩れ落ちた。
狙撃手は投げ出され、地面に全身を強く打ちつける。

 振り落とされた痛みに悶えながら細めを開いた途端、その表情は真っ青に凍りつく。
止めを刺そうと、既に斧を掲げたメルトが逆さに映っていたからだ。

「ま、待ってくっ・・・・・・!」

 狙撃手の遺言は実に情けないものだった。斧は問答無用で額をかち割った。
視界一面が血液の深紅で染まり、やがて、意識を損失する。
メルトは勝ち誇った顔で死体から、斧を抜く。 
すぐに表情を深刻な形に一変させ、急いでサクラの元へ戻った。


「塔が崩れた・・・・・・?」

 櫓の崩壊した轟音は街から距離が離れた峠にまで響き渡っていた。
好機を確信したユーリは頬の痛みを堪え、狙撃銃に弾を込めボルトで薬室を閉鎖する。
アドニスを見渡せる位置へと移動し、援護続行のため再び配置に着く。

 ユーリは狙撃準備を整えるもすぐには撃たず、まずは味方の陣の状態を窺う。
クリス達は弾幕の雨に身動きが取れず、満足に抗えないまま身を隠している。
ローズとデズモンドも負傷したリリアの医療処置に当たっていた。
あと1つの被害が加われば、壊滅してもおかしくはない重苦しい有様だ。

「私がもっと、しっかりしていれば・・・・・・」

 ユーリは自身の失態に責任を感じるも、沈着までは欠かさなかった。
戦況を有利に導こうと機関銃を撃とうとするが

「ユーリお姉ちゃん!」

 トリガーに指をかけようとした矢先、不意に横にいたミシェルが叫ぶ。
幼子の妨げに苛立ったユーリは舌打ちの衝動を抑え、スコープを覗いていた鋭い視線だけをチラリと隣にやった。
その意外な姿を黙視した時、ぽかんとして怪訝そうな顔をする。

 ミシェルはユーリに並んで、ほふく姿勢を取り、双眼鏡を覗いていた。
観測手のつもりなのだろうか?その余計な行為が穏やかな人格を乱し、焦りを生んだ。

「ミシェル!危険だから、後ろに控えていて下さい!」

 生真面目な注意を無視し、ミシェルは言った。

「機関銃の左奥に山積みになった樽があるよ!あれを撃てば、爆発で敵をまとめてやっつけられるんじゃない!?」

「・・・・・・えっ?」

 スコープの照準を機関銃から左にずらす。
確かに、指摘された場所に何層にも山積みになった酒樽が盛り上がっている。
恐らく、ファミリーが略奪したアドニス産のテキーラだろう。

 ユーリは一筋の希望を見い出した。しかし、その裏腹、内心は不安も湧き上がる。
あれが爆薬というのはあくまでも頼りない推測・・・・・・期待通りになる保証はない。
だが、ユーリは確証がなくとも、賭ける事にした。
銃口を機関銃を操る殺し屋ではなく、どれでもいい積まれた樽の1つへ狙いを変える。

「神よ・・・・・・どうか、救済の温もりを・・・・・・」

 祈りを込め、狙いに当てる事だけに集中する。
意識を傾け心が無に帰した機に乗じ、1発の弾丸を放った。

 火薬を破裂させた反動で細身の体は全身が一瞬の痙攣のように震える。
銃口から飛び出した光線は1秒もしなうちに街へと到達した。
そのまま樽に捻じり込み、空けられた穴の内側から詰められていた中身が漏れ出す。
零れた茶色の液体はドクドクと地面を濡らし、水溜りの表面が燃え上がった。

「・・・・・・ああ?」

 その近くに偶然いたディヴイットが唯一、アルコールの臭いを察した。
足元に広がる炎を認識した刹那、眩い光に飲み込まれる。


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