複雑・ファジー小説
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- エターナルウィルダネス
- 日時: 2020/02/13 17:55
- 名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)
乾いた土、枯れた草木、その上に零れ落ちた血の跡・・・・・・復讐の荒野は果てしなく、そして永遠に続いていく・・・・・・
ディセンバー歴1863年のオリウェール大陸。
西部諸州グリストルと東部諸州ハイペシアとの内戦が勃発。
かつて全盛期だった大陸は平穏の面影を失い、暗黒時代への一途を辿っていた。
王政派の勢力に従軍し、少尉として小隊を率いていたクリス・ヴァレンタイン。
戦争終結の後、退役軍人となり、両親が残した農場で妹であるリーナと平穏に暮らしていた。
しかし、突如として現れた無法者の集団による略奪に遭い、家は焼かれ、リーナを失ってしまう。
運よく生き残ったクリスは妹を殺した復讐を決意し、再び銃を手にするのだった。
彼女は頼れる仲間達と共に"ルフェーブル・ファミリー"の最高指導者"カトリーヌ"を追う。
・・・・・・・・・・・・
初めまして!ある理由でカキコへとやって来ました。"死告少女"と申します(^_^)
本作品は"異世界"を舞台としたギャングの復讐劇及び、その生き様が物語の内容となっております。
私自身、ノベルに関しては素人ですので、温かな目でご覧になって頂けたら幸いです。
・・・・・・・・・・・・
イラストは道化ウサギ様から描いて頂きました!心から感謝いたします!
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・お客様・・・・・・
桜木霊歌様
アスカ様
ピノ様
黒猫イズモ様
コッコ様
- Re: エターナルウィルダネス ( No.60 )
- 日時: 2021/11/28 19:27
- 名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)
市街地の路地裏にて・・・・・・
「準備はできたか?」
「ああ、いつでも行ける」
リチャードが確認して、クリスが肯定する。
クリス、アシュレイ、サクラ、メルト、ローズ、デズモンド、そしてヴェロニカが黒猫の紋章が付いた黒いローブを身に纏っている。
ルフェーブル・ファミリーの構成員の格好だ。
「神の教えから外れた神父さんが、ファミリーの死体から連中の衣装を奪っておいて助かったぜ。お陰でより良く仕事がはかどるかも知んねぇな」
「アシュレイ・・・・・・私、ちょっと恐い・・・・・・」
冬場に裸体を晒したように、ヴェロニカは震えていた。
今にも、泣き出してしまいそうな年下の幼馴染の手をアシュレイは優しく包み込んで
「心配いらねぇよ。危なくなったら、フォローしてやる。お前はなるべく、怪しまれないように振る舞って、俺の背中だけ追ってりゃいい。だがよ。こん中の誰かが撃たれたら、傷口を縫ってやってくれよな?」
「どう?様になってるかしら?」
ローズがやや自慢げに女性らしいポーズを取り、見せびらかす。
「似合ってるとは、お世辞にも言えないわね・・・・・・物乞いにタキシードを着せた方がまだ違和感が少ないわ」
リリアの感想は、純粋な皮肉だった。
「たくさんの敵を相手にできるなんて、いいな!いいな~!私も行きたかったのに~!」
表舞台に立つ事を許されず、前線に行く部隊に嫉妬するメルト。
「君は特にだめだ。カトリーヌの実妹なんだからね。仮に君が大勢のファミリーの真ん中で堂々と姿を晒したとしよう。お姉さんが駆けつけるほどの大騒ぎになって、盗みに入るどころじゃなくなってしまう」
「んじゃ・・・・・・役者も道具も揃っだ事だしよ。とっとと、行くとすっか?」
そう言って、アシュレイは身長の半分くらいあるサックを肩に担ぐ。
「サックの中身は何ですか?」
サクラが気になって問いかけるが
「直に分かるさ」
返事はそれだけだった。
「ちょっと、待って。ヴェロニカにも武器を持たせた方がいい。いくらなんでも、丸腰は不憫だ」
「なら、私のを貸してあげるわ」
クリスの意見にローズが真っ先に案を出した。
腰に付けたポシェットを漁り、普段は扱わない拳銃を取り出す。
アルコールボトルの絵が彫られたグリップと長いバレルが取り付けられたリボルバー式拳銃だ。
装弾数が6発の45口径の弾丸を発射する。
「お嬢ちゃん。銃の扱い方は分かる?」
「はい。かつては戦地に出向いていたので、使い方は一応習いました」
「そう。少しホッとしたわ。これはダブルアクション式でハンマーを倒さなくても弾を撃てるわ。もう1つ、助言を与えてあげる。撃つ時は焦らず、よく狙いなさい。射撃の基本よ」
ヴェロニカは銃を受け取り、黙って頷く。
「じゃあ、僕達は出発する。そっちも気をつけてね?敵はあちこちにいるから」
「幸運を祈る。余計な行動さえしなければ、間抜けな失敗はしないだろう。万が一に備えて、お前らの逃走ルートを確保しておく。偉そうな言い方はしたくないが、しくじるなよ?」
「こっちの台詞でもあるわよ。年増の紳士さん」
ローズのジョークにリチャードは鼻で笑い、メルト達、別働隊と共に持ち場へ向かう。
ニューエデンズは今や、商店街や住宅地、街道など全域がルフェーブル・ファミリーの兵員で埋め尽くされていた。
まるで警察の特権を奪い、職務を横取りしたかのように我が物顔であらゆるエリアを巡回している。
クリス達は占領下の街道を歩行し、周囲の環境に溶け込む。
通路の歩く途中で遭遇した敵の団体が一瞬、怪しんだかのようにこちらを睨んだが、すぐさま違う方向を向いた。
道を辿ってしばらく経った頃、クリス達は足を止める。
彼らの先には高く聳え、横幅も広い巨大な企業施設が。
出入り口の上には設立者らしき男の銅像があり、その下に"スターリック・バンク"と書かれた表記が取り付けられていた。
「ここだ」
クリスが建物のてっぺんを見上げて言った。
「"スターリック銀行"・・・・・・ニューエデンズで右に出る者がいない大手企業だ。ハイペシアの多くの富豪や貴族、政治家などの莫大な財産や貴重品を厳重に保管してる場所だよ。ルフェーブル・ファミリーほどの犯罪組織が大事な切り札を隠すのに、うってつけの場所と言えるね」
「ここにルフェーブル・ファミリーの秘密があるって、確証はあるの?」
デズモンドの推測に、ヴェロニカは半信半疑になって問いかけると、ステラが目を橙色に変色させて生真面目に返答する。
「確証はなくとも、可能性はあります。木を隠すなら森の中。金塊を隠すなら財宝の中・・・・・・と言ったところでしょうか?」
「頭だけでいくら想像しても、埒が明かないわ。都市伝説が嘘か真実かは、探して確かめるしかないわね」
ローズの正論にクリスとステラは黙って頷く。
銀行に立ち入ると、コンサートホールほどの広さのあるロビーがクリス達を出迎える。
広間の至る所に受け付け窓口があり、街に住む人々が一直線に並び、列を成す。
内部にもルフェーブル・ファミリーの兵員が動員されており、味方以外の存在に監視の目を光らせていた。
「カトリーヌは銀行内にまで見張りを配備させているなんて。組織にとって何か、"重要な物"を守ろうとしているのでは?」
目線は敵に向けたまま、サクラは隣を歩くステラの耳元で囁く。
「妙だな。胸に泥でも溜まってる気分だ」
アシュレイの唐突な発言にクリスは質問の意欲を煽られる。
「大丈夫?具合でも悪いの?」
「いや、そうじゃねぇ。変だと思わねぇか?俺達がカトリーヌの裏を暴くつもりでニューエデンズを足を運んだら、いいタイミングでファミリーの連中が現れて街に警戒網を張りやがった。偶然にしちゃ、でき過ぎてねぇか?」
「・・・・・・どういう事?」
「ニューエデンズに限っての話じゃねぇ。ヴェロニカに会おうとアドニスに馬を飛ばした時も、奴らが待ち構えてやがった。ミシェルのガキに命拾いさせた雪山の別荘でもだ。カトリーヌが滞在してるって根拠があって襲撃したが、いたのは別人だったろ?もしもよ?俺達の行動が全部筒抜けだったとしたら・・・・・・」
「それって・・・・・・まさか!」
クリスがその意味を悟り、何食わぬ表情を豹変させた。結論へと繋がる台詞を口にしようとしたが
「貴様らっ!そこで何をしているっ!!?」
ほぼ静寂な広い空間に落雷の如く、響いて木霊する怒鳴り声。
クリス達はビクッと全身を痙攣させ、こちらに向けられた憤怒なのかと、恐怖で血の気が引く。
(しまった!変装がバレたか!?)
ステラが最悪な展開を招いてしまったかと、とっさに背後に視線をやると、きっちりと敬礼したファミリーの兵員達が幹部らしき女性に畏まっている。
その女性こそ、カトリーヌの右腕であるエリーゼ・フランゲルだった。
「貴様らっ!何だそのやる気のない姿勢はっ!?たるんでいるぞ!!しっかり、与えられた職務を全うしないか!!」
「も、申し訳ありません!こちらの配慮が足りておりませんでした・・・・・・!」
大の男が数で勝っていても、エリーゼの逆鱗は逆らえず、弱腰な態度で叱られる事しかできなかった。
「・・・・・・んだよ?あのヒステリー女は?」
その様子を眺めようと立ち止まったアシュレイの肩をグイッと引っ張るクリス。
(まずい!エリーゼも、ここに配備されていたのか!あの女とやり合ったら勝ち目がない!こっちに関心がないうちに遠ざかろう)
- Re: エターナルウィルダネス ( No.61 )
- 日時: 2021/12/08 20:00
- 名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)
クリス達が距離を伸ばそうとする間にもエリーゼの叱責は続く。
「課せられた任務を忘れるなっ!我々の仕事は、"ベル・エポック契約書"を敵に奪われるのを阻止する事だ!これはカトリーヌ様に対し、大いに貢献できる名誉ある役目なんだぞっ!!」
「ベル・エポック契約書?」
エリーゼの発言をギャング達は盗み聞いていた。
「どうやら、都市伝説は実在したようだね?その契約書がカトリーヌの切り札が記された密書で違いない。"口は災いの元"とは、よく言ったものだ。無駄に時間を掛けて探す手間が省けたよ」
偶然にも耳にした美味しい情報にデズモンドは舌舐めずりをして、ローズがウィンクを返す。
「だったら、その契約書を奪ってやろうじゃない」
クリス達は堂々と広間の正面に位置する受け付け窓口へ足を運ぶ。
銀行の職員はルフェーブル・ファミリーの格好をした彼らが迫るのを見て、堅苦しく姿勢を正した。
「スターリック銀行へようこそ。ご、ご用件は・・・・・・?」
用事の内容を問いかけられ、クリスは声を尖らせる事で威圧感を与える。
「カトリーヌ様の機密文書であるベル・エポック契約書の警護に任命され、銀行を訪れた。例の契約書はどこにある?」
しかし、職員は職務での規則を尊重する。
「も、申し訳ございません!エリーゼ・フランゲル様から契約書の保管場所には、自身の配下の方々しか近づけるなと申しつけられておりまして・・・・・・」
「フランゲル中佐の命令など関係ない。我々、派遣部隊はカトリーヌ様の直々の命令を受けている。もう一度言う。保管場所を教えろ」
クリスも後に引かず、強気に出る。
「あ、あなた方が本当に契約書の警護を任された方々であると証明できる物はありますでしょうか?例えば、命令書などをお持ちでは・・・・・・?」
クリスは威嚇を表現した顔を悪意のある笑みに変え
「いいだろう。なら、お前が我々ルフェーブル・ファミリーの指示に逆らった事をカトリーヌ様に報告するまでだ。お前は勿論、お前の家族も惨たらしく粛清されるだろうな?」
と非情な脅しをかけた。脅迫に屈した職員は涙声になって、ついに白状してしまう。
「お、お許し下さいませ!い、命だけは!暗号書の保管場所は、この先のエレベーターにお乗り頂いて最下階に向かえば辿り着きます!」
「礼を言う。正直な対応に免じて、今の非礼はなかった事にしてやろう」
クリス達はすすり泣く職員とすれ違い、奥の通路を進む。
「あんた、最低ね。私達にとっては最高だけど」
ローズが尊敬か皮肉か判断に苦しむ評価を送り、親指を突き立てた。
7人はエレベーターに乗り込み、行きたい階のボタンを押す。このまま、真っ直ぐ地下の最深部への移動を図るが
「あ~!くそったれ!」
エレベーターが完全に閉じる瞬間、細い隙間から手が割り込む。
不都合にも乗り合わせてしまった部外者はルシェフェルの少年だった。
負傷しているのか、頭部の左半分に包帯を巻いており、片手の皮膚も覆っている。
「カトリーヌの奴!任務に失敗した奴は、まともな治療も受けさせないだぁ?ったく!ふざけんじゃねぇ!こっちは痛くてしょうがねぇんだよ!」
と随分と荒れた暴言を吐き散らす。
クリスは一度見た顔は忘れない。
少年はアドニスで対峙したルフェーブル・ファミリーの幹部の1人、"ディヴィット・バルザリー"だった。
またもや、最悪な人材を鉢合わせし、エレベーターは地下へと下降していく。
他に行き場のない狭い密室で過日に殺し合った敵の幹部と一緒にいるプレッシャーに冷や汗をかかずにはいられなかった。
こちらの素性が悟られぬよう祈っていたその矢先
「・・・・・・おい」
ふいにディヴィットが振り返らず、背後にいるクリス達に話しかける。
その声は暴力的で害意を告知しているかのようだ。
「はい?何でしょうか?」
クリスは冷静さを保ち、上官に対する口調で対応した。
「おめぇら・・・・・・以前、どこかで会わなかったか?」
いきなり、ギクリとさせられる発言。
サクラとメルトは気まずい顔で沈黙し、恐くてたまらなくなったヴェロニカはアシュレイの背後に身を潜める。
(よかった。こいつは僕達の顔を覚えていない。だけど、油断はできないぞ。どうやって、この場を切り抜けるか・・・・・・?)
安堵は束の間の安らぎだった。
クリスは言葉を選び、矛盾を避ける慎重な返事を送る。
「僕達はルフェーブル・ファミリーに所属しているのですから、顔に見覚えがあるのは当然かと。
大隊と言えども、共に行動していた際に一度くらいは顔を合わせた事があったのかも知れませんね」
器用に誤魔化したつもりだったしかし、ディヴィットは簡単に納得せず、更に質問を重ねる。
「へへっ!確かにな・・・・・・けどよ?おめぇら、俺が率いる部隊の兵士じゃねえな?部下の顔くらい、全員把握してんだ。どの部隊に所属してんだよ?幹部の名を言え。10秒以内だ」
容赦ない難問に一気に追い詰められたクリスは喉を詰まらせ、激しい動悸に見舞われる。組織の一員のふりだけしている彼らに答えられるはずがないからだ。
(・・・・・・そんな事、私達が答えられるわけ・・・・・・!)
サクラも真っ青になり、背筋を凍らせる
流血沙汰を覚悟したステラはローブの内側に忍ばせたガラドボルグに触れ、密かに抜刀の姿勢を取った。
ここまでかと、誰もが諦めかけた時
「我々は"ルミエール・ド・フロイラック"少尉の隊に所属しております!」
いきなり、デズモンドが初めて耳にする何者かの名を口にしたローズは、はあ!?、と言わんばかりの物凄い顔で正気を疑ったが
「ルミエールだぁ?・・・・・・って事は、第12騎兵連隊の連中だな?あの女、性格はいけ好かねぇが、色気がある体つきは嫌いじゃないぜ。これから、地下の金庫室に行くのか?」
「如何にも!カトリーヌ様から直々の命を受け、大金庫の警備を任されたのであります!」
探偵の話術に騙され、すっかりクリス達を同胞だと信じ切ったディヴィットは機嫌の悪さで強張った表情を緩め、意地悪そうな笑みを繕う。
「暇な役割を押しつけられて、ご苦労なこったな。俺は別のエリアでアルバートの奴と面倒な会談をしなきゃなんねぇ。お互い地味な仕事だが、気楽にやろうぜ?」
「はっ!喜んで勤務を尽くします!」
エレベーターが途中で停車し、ディヴィットが去り際に
「じゃあな。ルミエールに会ったら、よろしく伝えといてくれ。真面目に勤務にあたれよ?」
と伝言を預けられ、真っ直ぐな廊下の奥へ歩いて行った。エレベーターは再び、動き出す。
「ああー!よかったー!一時はどうなるかと思ったわよ!こんな心臓に悪いスリルなんて二度とごめんだわ!」
重苦しい空気から解放され、ローズは肩の力を抜き、安堵の息を勢いよく吐き出した。
「デズモンド!てめぇは、いつの時も救世主だなおい!ここに仏がいやがるぞ!」
アシュレイも歓喜のあまり、我を忘れて探偵の手柄を褒めちぎる。
「見事に危機を脱しましたね・・・・・・にしても、ルフェーブル・ファミリーの幹部にルミエール・ド・フロイラックという人物がいるなんて、よく知ってましたね」
ステラの疑問にデズモンドは少々自慢げに
「敵組織に潜入するなら、幹部の名前や階級くらい把握しておかなくちゃね。正直、さっきの嘘が通じた事には、僕も驚いてるよ」
「あは、あははは・・・・・・!デズモンドさんには敵いませんよ。あなたが仲間で心強いばかりです」
サクラも途切れ途切れに笑いながら、尊敬の的にする。
- Re: エターナルウィルダネス ( No.62 )
- 日時: 2021/12/14 21:14
- 名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)
最下階に降りたエレベーターが開き、クリス達が金庫室へ到着する。
その場所は、さっきまでいた銀行らしい上階とは異なり、壁、床、天井など辺り一面が灰色の灰色の金属でコーティングされた鉄臭い構造だった。
まるで街が戦場になった際に、予め備えられていたような巨大なシェルターだ。
ここにもルフェーブル・ファミリーの見張りが警備にあたっていた。
彼らは金庫室に繋がるであろう分厚い鉄扉の前で、番犬のような獰猛な表情で堂々と立ちはだかる。
死守という重要な役割を任されているだけに、兵装も高性能なもので、全員が最新式の自動小銃と散弾銃を抱えていた。
(やっぱな。ファミリーの野郎。ここにも見張りを置いてやがったか・・・・・・)
通路を歩きながら、アシュレイが隣にいるクリスに視線を送らずに、向こうには聞こえない声で呟く。
(想定内だ。しかも、運がいい事に敵の数が思ったよりも少ない。これくらいなら、僕達でも無力化できそうだ。僕は左を攻める)
クリスも隣と仕草を合わせ、会話をしていないふりをしながら、向こうに到達に至るまでに敏速に策を練る。
(俺は右の4人を殺れってわけか。余裕だ。タイミングは任せる)
クリス達は無鉄砲な銃撃は控え、見張りとの距離を縮めていく。
密かに腰裏に手を回し、下がっていろと後ろにいる仲間に合図を送った。
彼らの接近にファミリーの兵員は違和感を覚え、その中の1人が前へ駆けつけて来る。
「止まれ。お前達は我々の部隊の仲間じゃないな?フランゲル中佐が増援をよこすなんて聞いてないぞ?所属はどこだ?」
クリスは相手が更に無防備に陥るよう、偽証を述べる。
「僕達は第12騎兵連隊に所属している。カトリーヌ様から保管庫の警備を強化せよとの命令で、ここに派遣されたんだ」
「カトリーヌ様直々の命令だと・・・・・・!?おい!聞いたか!?」
目の前の見張りは驚愕を分かち合おうと 同胞のいる背後を振り返った。
敵に背を向け、警戒心を欠いた途端、首と顔に強い力が絡まって強引に身動きを封じられた。
「なっ・・・・・・ぐほっ!げっ・・・・・・」
まんまと不意を突かれた見張りは、非力な声を上げたと同時に血を吐き散らす。
何が起きたのか理解が及ぶ猶予さえも与えられず、意識が途絶え絶命した。
クリスは手首に忍ばせていたブレードで標的の首を貫いていた。
殺意そのものを映す冷血な眼差し。
その公開処刑を宣戦布告として、敵勢に見せつける。
「なっ!?き、貴様らっ・・・・・・!」
「奴らは敵だ!撃ち殺せっ!」
先手を打たれたファミリーの兵員は武器を構えるのに遅れを取った。
アシュレイが素早く抜いたヴォルカニックピストルを数発連射し、撃った数だけ敵の脳天を的確に撃ち抜く。
クリスも死体を弾除けにし、大口径のリボルバーで撃った。
敵は胴体に大きな銃創を負い、背を背後の壁に打ち付け、血をぶちまける。
最後の1人も直に仕留められたが、そいつに限っては、銃弾より先にナイフが胸部に突き刺さる。
それはステラが扱う短剣、ガラドボルグだった。
10秒もかからず、死体と化した6人の体勢は、そこでようやく崩れ落ちる。
盾(敵の死体)を捨てたクリスは無表情な横顔を振り返らせる。
瞳を黄色に染めたステラが頼もしい笑顔で、投擲の姿勢を取っていた。
「2人ばかり楽しんで、ずるいじゃないですか。1人くらいは僕にもやらせて下さいよ?」
「はっ!余計な事しやがって。助力は間に合ってんだよ」
アシュレイは呆れた苦笑を浮かべ、撃った数だけの弾丸をピストルに装填する。
「派手に音を響かせてしまいましたが、大丈夫でしょうか・・・・・・!?」
サクラが抱く不安にローズが安堵を被せ、相手が撃ってない撃ち合いについて感想を述べる。
「大丈夫よ。ここは最下階だから、銃声は聞かれてないわ。呆気ない制圧だったわね」
「アシュレイ?撃たれてない?」
医療品が詰まったバッグを用意し、幼馴染を心配するヴェロニカ。
「俺が撃たれたように見えんのか?応急処置が必要なのは、あそこでくたばってる奴らだな」
アシュレイが自分で言ったジョークに薄笑いするが、他は笑っていなかった。
「とにかく、見張りは片づけたんだ。敵に気づかれないと言っても、長居しない方がいい。早く欲しい物を手に入れて、さっさと逃げよう」
デズモンドの最もな意見にギャングのメンバーの大半が頷く。
彼らはまだ体温が残った死体を粗末なやり方で退かし、その内の1人が鉄扉の取っ手に触れた。
「宝物庫の開ける権限を譲ってやる。フレンドファーストだ」
アシュレイの紳士的な人任せに、クリスが苦笑する。
両腕に力を入れ、硬い取っ手を回した。
ガシャン!と騒音が鳴り、直後に鉄扉は鼓膜に響く金属音を鳴らしながら、ゆっくりと内側への通路を開けていく。
「ようやく、金庫室へご招待ね。さてさて、この先にはどれくらいのウォール紙幣が・・・・・・」
ローズが膨らませた期待と想像を言葉にしようとした刹那、急に警報が鳴り響いた。
ジリリリリ!と緊急事態を知らせるサインが最下階全域に響き渡る。
最も望んでいなかった最悪の事態に、クリス達は無意識に焦る仕草を行った。
「ど、どうして警報が・・・・・・!?ここでの騒ぎは、上には聞かれていないはずじゃ!?」
最悪な事態にサクラが慌てふためき、ステラは瞬時に罠の仕組みを悟った。
「金庫室の扉を開けたら、警報が作動する仕組みだったのか!迂闊だった・・・・・・!」
「早く逃げよう!」
ヴェロニカがアシュレイの手を引き、エレベーターを指差す。
「バカ言うんじゃねえ!上階は今頃、戦闘配置についたファミリーのクソ共が待ち伏せてやがる!そこにエレベーターで、のこのこ向かってみろ!一斉射撃で全員が蜂の巣にされちまうぞ!」
「逃げ道がないのなら、先に進むしか選択肢はないよ!金庫室には別の抜け道があるかも知れない!」
デズモンドの予想に確証はなかったが、元来た道を引き返すよりはマシな判断ではあった。
「デズモンドが正しい。せっかく、危険な網を潜り抜けてここまで来たんだ。目の前の財宝を逃す手はない」
クリスも諦めを否定し、金庫室への侵入を促す。
何か方法はないかと頭を働かせた矢先、ふと、足元に転がる死体で策が浮かんだ。
「ピストルだけじゃ、不利だ。こいつらが持っていた武器を利用しよう」
「いい考えですね。本音を言えば、機関銃が欲しい所ですが」
ステラに異論はなく、迷わず賛同する。
「俺自慢のお手製爆薬の出番でもあるな。てめぇらは死体を漁ってろ。俺はエレベーター付近に地雷を巻いてくるからよ。足止めには最適だ」
アシュレイを除くギャング達は死体から、高性能な武器と弾倉を奪い、金庫室の内側へ立てこもる。
「ホント最悪!ここに来てから、ろくな事がないわね・・・・・・ニューエデンズが嫌いになりそう・・・・・・」
小型小銃を拾い上げたローズが疲れ気味の口調で愚痴を吐いて、仲間の後に続く。
- Re: エターナルウィルダネス ( No.63 )
- 日時: 2021/12/23 20:39
- 名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)
金庫室は瞬きさえも忘れさせる凄まじい光景が広がっていた。
部屋の横側には、様々な貴重品を厳重に管理しているだろう保管庫が数百にも及ぶ。
その片方には、また別の鉄扉があり、どこかへと繋がっていた。
「ヒュウ!流石は大都市の銀行ね。この世の天国って、多分ここの事を言うんだわ」
ローズは短く口笛を吹き、莫大な財産が眠るこの場所を楽園に例える。
「探すと言っても、これだけのたくさんの金庫のどれにカトリーヌの密書が?あまり、時間がありませんよ!?」
完全に平常心を失ったサクラが事を急かす。
「多分、これだ」
クリスが自信を持って、きっぱりと言った。
正面には、まわりと比にならないほどの巨大な金庫が。
手前には得体の知れない装置が置いてあり、機械線と繋がっていた。
手動で開けられない電子ロック式であると容易に理解できる。
「おい!金庫は開きそうか!?」
地雷の設置を終え、仲間の元へ駆け戻って来たアシュレイが問いかける。
「だめだ。金庫は特殊な施錠を施されていて、機械と連動している仕組みだ。恐らく、鍵を差し込まなければ、絶対に開かない」
アシュレイも施錠装置を確認したが、どうにもならず、悔しさを込めた拳を機械に叩きつける。
「くそっ!一筋縄ではいかねぇか・・・・・・だがよ。俺は中途半端で諦めんのは嫌いだ。"プランB"を実行するしかねぇようだな」
「他に方法が?」
ステラが真剣に詳細を聞くと
「このサックの中にブリーチ爆薬がいくつかあんだよ。こいつを取り付けて、蓋を破壊すんだ。昔から言うだろ?ノックしても開かねぇ扉は蹴破れってな!」
「その野蛮なことわざは初耳だけど、備えあれば憂いなしとはよく言ったものだね」
デスモンドは尊敬を呆れを同時に抱き、正しいことわざをついでに述べる。
『"侵入者に告ぐっ!!今すぐ武器を捨てて投稿しろっ!!大人しく指示に従えば、命だけは助けてやるっ!!"』
どこからか、気性の激しい女の耳障りな怒鳴り声が放送され、クリス達に投降を呼びかける。
「爆撃ようにヒステリックな声。間違いなく、さっきの女だ」
ステラが声の主がエリーゼだと知り、苦々しい笑みを繕う。
「誰が降伏なんかするかっての。連中が捕虜をどう扱うのかも散々見てきたしね!」
ローズも戦意を高揚させ、ショットガンのポンプをコッキングする。
遠くの通路でエレベーターが下降してくる音が聞こえた。
こちらを鎮圧するための精鋭部隊を運んでいるのだろう。
「敵が来る!」
ヴェロニカが深刻な顔で敵の接近を知らせる。
彼女自身も使い慣れてないリボルバーを手に取ると、ハンマーを倒し、壁の角から敵の出現場所を覗く。
「俺は爆薬の設置で手一杯だ!金庫の爆破に専念すっからよ!クソ共を蹴散らして、時間を稼いでくんねぇか!?」
アシュレイは集中力を安定させるため、葉巻に火をつけて、口にくわえた。
大量のニコチンを含んだ煙を吸いながら、破壊工作に入る。
「いつもながら、無理難題ばかり押しつけるね」
クリスも彼の耳に入らない小声でぼやくと、ヘビ油を一気飲みし、気分をリラックスさせる。
ステラはヴェロニカを安全なポジションに控えさせ、ほふくの姿勢を取ると、自動小銃の発射口をエレベーターの方へ構え、引き金に指をかける。
その向かいでは、デズモンドも床に伏せ、敵を撃てる機会を待ちながら
「何としてでも、アシュレイを死守するんだ!この勝負の勝ち負けは彼にかかってる!」
サクラは杖を掴んだ手を震えさせながら、クリスを見て頷く。
あちらも微笑みを返し、顎を上下に動かした。
「来るぞ!」
ステラが叫んで間もなく、エレベーターが開きファミリーの精鋭隊が流れ込む。
鎮圧用のロングシールドで身を守り、短距離戦に特化した銃器とボディーアーマーを装備した重武装の兵士だ。
侵入者を一気に制圧しようと、突撃をしかけるが
突如として、鳴り響いた轟音。地震のようにエリア一帯が地震のように揺れ動き、火と黒煙が爆風と共に充満する。
頑丈なシールドは粉々に砕け散り、手足がもげた兵士が宙を舞う。
彼らは足元の地雷を見落としていたのだ。
まんまと罠にはまった鎮圧部隊は、大半が絶命し、負傷者も見るに堪えない悲惨な姿となり、苦しい唸り声を上げる。
ステラとデズモンドは悲惨な光景に向けて容赦なく連射式の射撃を浴びせる。
何十発もの弾幕が総崩れとなった敵兵を襲う。
健全な兵士も負傷者ごと音速の鉛を浴び、全身に無数の穴だらけにされて血を吹き出しながら崩れ落ちる。
鍛錬を積んでいたであろう敵勢は1分の時間も経たずに全滅した。
「第一陣は撃破した。でも、すぐに次が来る」
クリスの読み通り、新手の部隊を乗せたエレベーターが下降して来た。
ステラは空になった弾倉を外し、新たな弾倉を装填しながら大声で問いかける。
「アシュレイさん!爆破の準備は、あとどれくらいで!?」
「まら、取りふけてる最中ら!このまま、きゅい止めふぉ!」
葉巻をくわえているせいで、一部が聞き取りづらい台詞が背後から返る。
エレベーターが開き、最初の部隊と同じ兵装をした第二部隊が流れ込む。
彼らは通路に転がる同胞の死体などに関心を示さず、侵入者の排除に専念する。
鎮圧部隊は第一部隊と同じく地雷にかかり、爆風に飲み込まれた。
しかし、晴れた黒煙が映し出したのは、何事もなかったように平然とシールドを構える兵員達。
甚大な被害を被っておらず、無傷な様を保っている。
「そんな、嘘・・・・・・地雷が効いてません!」
想定を裏切る事態にサクラが敵側の状況を告げる。
「設置する場所が悪かったんだ!だから、致命的な痛手を負わせられなかった!」
デズモンドが曖昧に原因を推測し、ステラと回避行動のタイミングを合わせた。
直後に敵の放った一斉射撃の光線が金庫室の出入り口を音速で通過する。
- Re: エターナルウィルダネス ( No.64 )
- 日時: 2021/12/30 18:27
- 名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)
「っぶねぇ!!」
アシュレイはいち早く姿勢を低くしたため、間一髪、銃弾の直撃を免れていた。
金庫の蓋は瞬く間に凹みのアートへと仕上がっていく。
「絶対に顔を出すな!アシュレイ!無事か!?」
クリスが大声で安否を確かめ、アシュレイが肯定する。
「生きてるぜ!危うくあの世にいる親父に会いに行く羽目になるとこだ」
「あのバカがブリーチを仕掛けられないんじゃ、どうしようもない!弾の数には限りがあるし、このまま撃ち合ってたら、いずれ、こっちが負けるわ!」
ローズの正論に、ステラが更に浮かんだ策を付け加えた。
「敵側の一斉射撃には隙ができるはず!銃撃が止んだら、こっちも迎え撃ちましょう!」
しばらくもしないうちに鎮圧部隊が弾切れを起こした。
後方の部隊がリロードに取り掛かり、前方の部隊がシールドの隙間からピストルを発砲する。
「今だ!撃ち返せ!」
ギャング達は死角から体半分を晒すと、クリスとサクラが弾丸と魔弾を放ち、その足元でステラとデズモンドが自動小銃で応戦した。
「うわあああ!!」
ヴェロニカも発狂し、リボルバーを乱射した。
狙う事を忘れ、全弾をあっという間に撃ち尽くす。
ローズもショットガンを発砲し、次弾を装填して2発目、3発目を連続で放つ。
鎮圧部隊3名が被弾した。
1人は銃弾で腕を失い、2人は脳天に魔弾と散弾を喰らう。
それ以外はシールドで防がれた。
「はあはあ・・・・・・弾・・・・・・弾を込めないと・・・・・・!」
ヴェロニカは装填を急ぎ、鞄を漁るが手の震えが災いし、弾薬を床にばら撒いてしまう。
互いに殺し合う慣れない環境の最中で適切な判断力を失い、身を隠す事を忘れたまま、拾い集めようとした。
「ヴェロニカ!危ない!次の一斉射撃が来る!」
「下がりなさい!」
クリスとローズが警告を促し、ステラが彼女を抱いた頃、敵側の総攻撃は始まっていた。
「がっ・・・・・・!」
ステラがヴェロニカを庇った拍子に被弾。
弾は2発、左腕と背中の脇を貫通し、破れた服の穴から血が吹き出す。
反対側にいたローズも何発もの銃弾を生身に受け止め、小さくのけ反りながら、後退りを強いられる。
抱えていたショットガンを落とし、全身が仰向けに傾いた。
「ローズさんっ!!」
サクラは深刻に彼女の名を呼び、倒れかかったローズの体を支える。
デズモンドも手を貸し、両脇に腕を絡ませながら彼女を隅へと引きずった。
ステラは何とかヴェロニカを弾が飛んでこない安全な場所へ移すと、壁に背を預け、グッタリと座り込んだ。
耐え難い苦痛に歪んだ表情で息苦しそうな鳴呼吸を繰り返す。
「あ・・・・・・ああ・・・・・・私のせいで・・・・・・!私が・・・・・・!」
ヴェロニカは自身の失態で仲間を負傷させた良心の呵責に理性を失いかける。
両手で顔を覆い、泣きじゃくろうとした時、クリスに両肩をグッと掴まれ、揺さぶられて我に返った。
「ヴェロニカ!泣いてる暇があったら、早くステラに応急処置を施すんだ!何のために君という医師がいるんだ!?後悔なんて後で存分に味わえばいい!」
「どうした!?何をやらかしやがったんだ!?」
ただならね事態に気づき、背後からアシュレイが大声で問いかける。
「ステラとローズがやられた!致命傷に繋がる部位を撃たれてる!」
「・・・・・・くそっ!マジかよ!?まだ、半分も終わってねぇんだぞ!?戦える奴はいるか!?」
その時、サクラが涙ぐんで味方全員に告げた。
「ローズさんの意識がありません!呼んでも返事がないんです!」
「まさか、死んでしまったのか!?」
心の中で予想の的外れを願い、クリスがしたくもない質問を投げかけた。
デズモンドが負傷者の容体を具体的に報告する」
「いや、かろうじて息はしているよ!だけど、体にたくさんの銃弾を受けて、瀕死の状態だ!腹部の損傷が特に致命傷になってる!このままじゃ恐らく、彼女の命は1時間もたない!」
「そんな・・・・・・!」
すると、ステラが無理に平気そうな笑みを繕いながら、ヴェロニカへ視線を送り
「ヴェロニカさん・・・・・・僕の怪我は大して酷くありませっ・・・・・・うぐっ!君はローズさんに医療処置を・・・・・・いぎっ!は、早く・・・・・・!」
「これだけの傷だ!この子1人で治療を任せるには、とてもじゃないだろうけど、荷が重過ぎる!僕も手術を手伝うよ!こう見えても、医術には多少は自信があるんだ!」
いつの時でも万能さを発揮するデズモンドの心強さにクリスは大きく頷いて
「ヴェロニカ!一斉射撃が止んだら、向こうに回ってローズを診てくれ!援護する!サクラ!君と僕とで、何としてもここを守り抜くぞ!」
「えっ!?たった2人であれだけの数をっ・・・・・・ですか!?」
「今の僕達に選択の余地はない!やり遂げるんだ!」
「は、はい!分かりました!」
「俺も早急に爆弾を取り付けるからよ!これ以上、怪我人を出すんじゃねぇぞ!?」
アシュレイもそう言って、ありったけの爆薬を腕に抱えた。
二度目の一斉射撃が弾切れを起こし、弾幕の勢いが緩やかになる。
こちら側に反撃のチャンスが再び生まれた。
クリスとサクラが死角から、半分の姿を曝し少人数の反撃を行う。
鎮圧部隊は被害を回避しようと攻撃を中断し、シールドの隙間を閉ざして防御に徹する。
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