複雑・ファジー小説

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

エターナルウィルダネス
日時: 2020/02/13 17:55
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

 乾いた土、枯れた草木、その上に零れ落ちた血の跡・・・・・・復讐の荒野は果てしなく、そして永遠に続いていく・・・・・・

 ディセンバー歴1863年のオリウェール大陸。
西部諸州グリストルと東部諸州ハイペシアとの内戦が勃発。
かつて全盛期だった大陸は平穏の面影を失い、暗黒時代への一途を辿っていた。

 王政派の勢力に従軍し、少尉として小隊を率いていたクリス・ヴァレンタイン。
戦争終結の後、退役軍人となり、両親が残した農場で妹であるリーナと平穏に暮らしていた。
しかし、突如として現れた無法者の集団による略奪に遭い、家は焼かれ、リーナを失ってしまう。
運よく生き残ったクリスは妹を殺した復讐を決意し、再び銃を手にするのだった。

 彼女は頼れる仲間達と共に"ルフェーブル・ファミリー"の最高指導者"カトリーヌ"を追う。


・・・・・・・・・・・・


 初めまして!ある理由でカキコへとやって来ました。"死告少女"と申します(^_^)
本作品は"異世界"を舞台としたギャングの復讐劇及び、その生き様が物語の内容となっております。
私自身、ノベルに関しては素人ですので、温かな目でご覧になって頂けたら幸いです。


・・・・・・・・・・・・

イラストは道化ウサギ様から描いて頂きました!心から感謝いたします!

・・・・・・・・・・・・


・・・・・・お客様・・・・・・

桜木霊歌様

アスカ様

ピノ様

黒猫イズモ様

コッコ様

Re: エターナルウィルダネス ( No.22 )
日時: 2020/03/10 17:46
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

返信が遅れてしまい、申し訳ありません。
黒猫イズモ様、いつも私の作品をご覧になってくれて、ありがとうございます(≧▽≦)
喜んでもらえて、こちらも幸いな限りです。
私の方こそ、キャラクターを提供して下さった黒猫イズモ様には感謝していますよ♪
あなたの発想を描かせている事、大変光栄です(*^_^*)
これからもこの死告少女と私の作品をよろしくお願いします!

Re: エターナルウィルダネス ( No.23 )
日時: 2020/05/23 22:23
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)
参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=1626.jpg

 野営地の隅にあるポツリと建てられたテント。
近くの木々に結んだ網目状のハンモックに体を預けるクリスがいた。
顔には開いた読みかけの本を乗せ、木の葉の間から差し込む眩しい光を遮る。
風に揺れ、のんびりと静かな休息を味わう。

「おい」

 ふと、こちらを呼ぶ声と草を踏み近づいてくる音が聞こえた。
それでもクリスはゆったりとした姿勢を保ち、反応を示さない。

「おい、起きてるか?」

 クリスは片腕を重そうに動かし、本を少しだけ退かすと寝起きの悪そうな表情でアシュレイを睨んだ。

「アシュレイ、何か用?」

 すっきりしない態度で邪魔した理由を尋ねると

「そんな恐い顔すんじゃねえよ。恨むんだったら、お前を呼びに行けと頼んだリチャードのおっさんを恨め。飯だぞ。メルトが質のいい鹿を仕留めたらしい。あと、ステラが兎を取って来たみたいだぜ。今頃、ユーリが肉入りのシチューを皆に配ってる頃だ」

「もうそんなに時間が経っていたのか・・・・・・あまり、お腹は空いてないんだ。後で食べるから残しといてと伝えてくれないか?」

「そいつは勿体ねえな。これからカトリーヌをぶっ潰す次の計画を立てるとこだってのによ。お前がいないんじゃ、やる意味はねえな」

 アシュレイはわざとらしく言って、意欲を煽る。
彼のペースに乗せられたクリスはガバッと上半身を起こし、単純な正直さを晒してしまう。
そして、呆れたように笑われた。

「それによ。今回は俺にも"ある提案"があるんだ。お前も立ち会ってくれなきゃ、実に都合が悪いんだよな」

「君が提案?珍しい事もあるもんだね?明日は火の雨が降るんじゃないかな?」

「へっ、ほざけ。んで、どうすんだよ?作戦会議に加わるのか?加わらねえのか?」


 先ほど狩ったばかりの獲物の肉で作った料理を手にギャング達全員が焚き火を囲んだ。
心地いい自然を食卓にして、作り立ての食事に在りつく。
空腹を覚えていたギャングのメンバー達は平等にパンを分け合い、シチューの具を頬張った。

「食べながらで構わん。俺の話に耳を傾けてくれ」

 リチャードが皆の注目を自身に浴びせ、場を取り仕切る。

「数日前の襲撃は最大の目的を果たせず終いだっだが・・・・・・少なくとも、得がなかったわけじゃない。奪った略奪品でかなりの収入を得られた。当分は野で暮らす生活に困る事はないはずだ。十分な装備を整えられるだろう」

 リチャードはそう凄まじくない喝采にふっと笑みを零した。
その直後に一層、力の入った顔を強張らせ

「だが、優雅な休日を過ごしてる暇はない。俺達はついにハイペシアで悪名高いルフェーブル・ファミリーのケツを本気で蹴飛ばしたんだ。今回の件で奴らは血眼になって、俺達の行方を探し回るだろう。敵は国も手が出せないほどの強大な犯罪組織だ。例え、ファミリーとは無関係だとしても、この地に住む連中を無暗に信用はするな。誰が奴らと繋がってるか、分かったもんじゃない」

「今頃、街では僕達の手配書があらゆる建物に張られているかも知れないね」

 デズモンドのジョークは本人が受けているだけで他は誰一人も笑わなかった。
不安を募らせるネガティブな冗談は逆に反感を誘うような不快な雰囲気を生んだ。

「・・・・・・で、これからどうするの?」

 リリアが真剣に話の趣旨を改めると

「本当にルフェーブル・ファミリーが警戒網を張り巡らされた場合、街や集落に出向くのは、あまりにも危険過ぎます。ほとぼりが冷めるまで身を隠すというのはどうでしょう?」

 サクラは計画的で安全を考慮した提案を持ちかけるが

「甘いですね。ああいった組織は外敵の存在を決して許しません。一度、敵と見なした者は抹殺するまで追い続けるでしょう。いかなる手段を用いてでも・・・・・・リチャードさんが言った通り、これからはもっと周囲に気を配る必要性が出てくるでしょうね」

 ステラが有効に欠けた意見を認めず、リチャードの考えに肩を持つ。

「目立った行動は避け、ファミリーの戦力を少しずつ削っていくのが最善の方法では?幹部を葬って行けば、ファミリーの指揮系統にも少なからず混乱が生じるはずです」

 ユーリのもっともな意見にアシュレイは愉快になって

「はっ、お前の得意な狙撃でカトリーヌの額を撃ち抜けば、めでたしめでたし・・・・・・なんだがな。おっと、それじゃこいつが納得できねえか」

 彼はちらりと反対の隣を目視する。
やはり、クリスの形相は納得の皆無を物語っていた。

「クリス、安心しろ。カトリーヌはお前に撃たせてやる。それはそうと、俺の他にもう1人言いたい事があるらしい。アシュレイ、お前の提案とやらを教えてくれ」

 アシュレイは食いかけの昼食を粗末に置き、雑草が潰れた地面を立つ。
本人は目立っているつもりのようだが、期待の視線は大して集まらなかった。

「リチャードのおっさんも言ったが、得られたもんはかなりのもんだしよ?このまま真っ向から勝負を挑んでも無様な死に方はしないはずだぜ?だが、俺達のギャングには肝心な奴が足りない」

「肝心な奴?私達以外に必要な人材がいるって言うの?」

 湧かない興味にローズが呆れた問いかけをした。
その反面、ユーリは生真面目になって 肝心な発言を待つ。

「分かんねえか?"医者"だよ。医者」

 アシュレイは平然と言いたかった答えを明かす。

「医者?」

 意外な発言にリリアは、ぽっかりと正論を述べたつもりのアシュレイを見上げる。

「ああ、このギャングはガンマン、傭兵、調理師、探偵とかよ、色々揃っているが、医療を心得ている奴だけが欠けているんだよ」

「お医者さんって言っても、誰か心当たりなんてあるの?」

 メルトが肝心な部分を尋ねると

「もしかして、君の言う医者って言うのは・・・・・・」

 クリスが悟って、まさかと言いたそうな顔をした。
その勘が的中したのか、アシュレイはより気分を高揚させ

「そうだ。俺の幼馴染みの"ヴェロニカ"だ。故郷の隣街に住んでて、今頃は診療所を経営してる頃だろう。ここからそう遠くないはずだぜ?」

「ヴェロニカ?君が酔っぱらうと、いつも名前を出すあの子かい?」

 聞き慣れた名前にデズモンドが苦笑した。

「でも、聞いた話じゃ、あの子って医者と言うよりも薬売りじゃなかったっけ?」

 クリスが疑問を持ちかけると

「そりゃ、間違っちゃいねぇ・・・・・・が、あいつは外科医の心得もある。言ってなかったが、ヴェロニカは今起きてる戦争に軍医として従軍していた。大勢の死にかけを救ったんだよ」

「本当ならこの組織にとっても大きな戦力となるでしょうね。でも、あなたと性格が瓜二つだった場合は例外よ。あなたみたいなのが2人になったら、こっちが病気になってしまうわ」

 リリアの嫌味にアシュレイは舌を出し、親指を下に突き立てる。

「ですが、アシュレイさんの提案には一理ありますね。事実、いつ時も兵隊を影で支えているのは紛れもなく医師なんです。決して聞き流すべき悪い話ではないかと」

「私も医療に詳しい人がいる方が心強いと思います。薬の力だけじゃ、限界がありますからね」

 ステラとサクラは素直に賛同する。
頼りになる仲間が増える事に期待が芽生えた様子だ。

「クリス、お前はこの件についてはどう思う?」

 リチャードがクリスに意見を求める。

「僕も今回ばかりはアシュレイが正しい事を言っていると思う。僕達はいつ怪我を負ってもおかしくない立場にある。医療経験者がいた方がいざという時に助かるな」

「なら、二言はねぇな?たらふく飯食って、しばらく経ったら出発だ」

 やる気に満ちたアシュレイは元の席に戻り、温くなり始めた料理に手をつける。

「ちなみに、あなたのガールフレンドがいる場所は?」

 ローズが回りくどい事はなしにして聞くと

「"アドニス"だ。テキーラで有名な田舎町だぜ」

Re: エターナルウィルダネス ( No.24 )
日時: 2020/04/15 19:48
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

 ドカドカと馬の群れが辿った道に足跡を残し、湿った土が跳ね上がった。
ギャング達は一直線に馬を走らせ、鞍の上で体を揺らす。
通りかかった名の知らぬ集落を通過し、広大な草原を越え、山道の木々の真下を進んでいく。
地べたを踏みつける音が止む兆しは一向にない。

「馬を走らせてから、随分時間が経つな。到着までどれくらいだ?」

 リチャードがアシュレイの乗る馬と同列に並んで聞いた。
野営地を離れてからしばらく経つが、太陽の方向はまだ朝の時刻を示している。

「もう少しだ。この先を行けば峠に行き着き、集落全体を一望できるはずだ」

 と先にある場所について、説明した。
幼馴染みとの再会を前に歓喜してるのか、普段の生意気な薄笑いを浮かべながら

「あいつに会うのはマジで久しぶりだな。元気にやってんだろうか?」

「きっと、診療所の仕事に明け暮れてるよ。今頃、君の事を考えてるんじゃないかな?」

 近くを走るクリスは純真な言葉をかけるが、ローズは裏腹に悪ふざけのジョークを投げかける。

「多分、あんたよりずっと素敵なボーイフレンドができて、元カレの事なんか忘れてるわ。賭けてもいい」

「へっ、ほざけ」

「ねえねえ、ステラ?今から行くアドニスって、どんな所なの?」

 メルトが退屈そうに彼の背中に話し掛ける。

「えっ?アドニスについてですか?・・・・・・はて、困りましたね。傭兵業を生業にして様々な場所を巡った僕でさえも知らない街です。サクラさんはご存知ですか?」

 ぼんやりと景色に黄昏ていたサクラは急にかけられた声に、はっと我に返った。
急な質問に頭の回転が追いつかず、完全に平静さを失いながら

「え、あ!その・・・・・・い、いえ・・・・・・!実は私も名前すら聞いた事あるかないか、記憶が・・・・・・ご、ごめんなさい・・・・・・!」

「え〜な〜んだ。サクラも知らないの〜?」

 期待に背かれ、頬を膨らませるメルト。
行き場のないモヤモヤの取れない気持ちに苛まれた時

「アドニスは半世紀前に荒地を開拓して、生まれた街よ」

 隣との距離を縮め、リリアが口を挟む。

「アドニスの誕生は故郷を終われた放浪者達の集まりだと言われているわ。でも、過酷な環境は彼らに十分な実りをもたらしてはくれなかったの。苦しい生活に路頭に迷う中、開拓者の1人が荒地に生えている"特殊な竜舌蘭"を見つけ、それを材料に1つの酒を作った。ちょうどその時、1人の旅人が訪れていて、そのお酒を味見するとその上手さに感激したらしいわ」

「それでそれで!?」

無邪気に続きを促すメルト。

「旅人はお酒の事を他の街にも広めると約束し、開拓者達に酒場を作らせた。これがアドニスがテキーラで有名になるきっかけとなったの。そして、不毛の地で生活が困難だった地元民にとっても、その集落と新種のアルコールの誕生は奇跡そのものだったようね。開拓された地の噂は瞬く間に広がった後、大勢のキャラバンが訪れるようになり、入居者も増えた事でやがて街へと発展したのよ」

「まさか、目立たない街に壮大な物語が隠されていたなんて・・・・・・小説にしたら売れそうですね」

 知られざる意外な真実にステラは感想を述べ、書籍に例える。

「へぇー」

「リリアさんって、色々な事に詳しいんですね。アドニス・・・・・・そんな素敵な街に行けるなんて、到着が楽しみです」

 メルトとサクラもリリアを尊敬し、彼女が語ったロマンに魅了される。

「その地域で発見された竜舌蘭は"奇跡のアガベ"とも呼ばれていてね。後に医者が調べたところ、あらゆる不治の病に効果を発揮する成分が発見されたんだ。この植物で作られた薬は技術が乏しいハイペシアでは重宝され、半世紀がたった現在でも病気の治療に用いられているんだよ」

 会話を聞いていたデズモンドもやり取りに混ざり、豆知識を付け加える。
それに対しても3人は感心の意を誘われた。

「本にしたくなる程、感動的な物語だけど私にしたらやっぱり、ウィスキーに限るわ。テキーラは癖がないけど、味が薄いのよね」

 ローズは酒にうるさく、好きでもない酒の欠点をネタに愚痴を零す。

「ウィスキーしか飲めない人は、それ以外の酒を飲むと恥ずかしい秘密を漏らしてしまうって、私の叔父がよく言ってましたよ」

 いつもは品のない事は口にしないユーリの珍しいジョークにギャングの大半が笑った。
不意打ちにローズはむきになった顔を作ったが、何も言い返せないまま、だんまりを決め込んでしまう。
皆がユーリに盛り上がり、愉快な雰囲気が漂う。

「おい、ユーリ。お前がそんな冗談を言うなんて夢にも思わなかったぞ。実は皮肉屋だったのか?」

「い、いえ。そんな・・・・・・!」

 ユーリは恥ずかしくなって、赤らめた顔を俯かせる。

「あはは、いや〜まさか、ユーリがそんな意外な一面があったなんて。アシュレイもそう思うでしょ?」

 クリスは半笑いが入った喋り方でアシュレイにも共感を求めた。
しかし、彼はいつものようにせせら笑うどころか、深刻な面持ちで木の葉が光を遮る空を見上げていた。

「・・・・・・アシュレイ?」

 様子がおかしい事を察し、クリスは笑顔を崩して仲間の名を呼んだ。

「煙が上がってねえか・・・・・・?」

 クリスも空を見上げると木々のせいで捉え辛いが、確かに煙が空へ伸びているのが見えた。
黒煙の線は1つだけじゃなく、数ヶ所から上がっていて焼けた気体が暗雲のように立ち込め、大気の一部は淀む。 
やがて、焦げた臭いも嗅覚に伝わってきた。

「煙は街の方からだ。ったく、何だってんだ・・・・・凄ぇ嫌な予感がしてきたんだが・・・・・・・急ごうぜ」

Re: エターナルウィルダネス ( No.25 )
日時: 2020/05/27 16:08
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

 峠の上でギャング達は馬の足を止めた。
煙の正体とふもとの広地を目の当たりにし、全員が心理的な衝撃を受ける。
奇跡と平穏の象徴であったはずのアドニスは灰と化していたのだ。
点在する家々は焼け落ち、田畑は荒れ、焦げた臭いが喉を心地悪く刺激する。
形ある物全てがぐちゃぐちゃに破壊され、最早、居住地と呼べないほど原形を留めていなかった。

「どうなってんだよ・・・・・・こりゃぁ・・・・・・!?」

 見るに堪えない地獄絵図にアシュレイはまともな思考が止まり、意思と関係なく囁いていた。
ショックのあまり、自我が崩壊する。

「酷い有様・・・・・・まるで戦場の跡地ね」

 リリアは冷静に単純な発言と感想を順次に述べた。

「一体、何があったんだ?」

 クリスが声を鋭く、焦った口調で聞くと

「まさか、大規模な火災があったんじゃ・・・・・・!?お酒が盛んな街なら、至る所にアルコール貯蔵をしているはずですよね!?爆発や火災で引火して集落全体に燃え広がったんじゃないでしょうか?」

 ユーリは事故である事を説に上げ、至った経緯を推測する。

「いいや、違う。火災にしては不自然だ。畑や木は燃えていない。お前の言い分通り、本当に火事なら全てが全焼しているはずだ」

 リチャードはいち早く、双眼鏡のレンズを覗き、遠くの集落を偵察していた。
隣にいたステラも行動を真似、原因に繋がる手掛かり眺める。

「あれは事故じゃない。間違いなく街は襲撃に遭った直後だ。惨劇の幕引きから5分が経過したってところか・・・・・・道端に血を流して死んでいる奴が何人かいる。恐らく、撃たれたんだろう・・・・・・犯された後の女の全裸死体もあるな。うっ、何て事だ。子供達も木に吊るされ果実のように晒されている。何を考えたら、こんな惨いやり方で・・・・・・」  

「誰の仕業か見当は付きませんが、確実なのは犯人は複数・・・・・・端から、街そのものを滅ぼすつもりで凶行に及んだのでしょう。とにかく、やった奴らは人を名乗る資格もないクズ野郎ですね。殺しを生業としてきた僕ですら、気分が悪い」

 ステラも怒りに震えているのか、その目は深紅を通り越し、赤黒く染まっていた。

「アシュレイ。幼馴染みが住む街だから、僕達よりは街の設備について多分詳しいよね?あそこは警備や武装が充実していた場所だったのかい?」

 デズモンドが聞く。
アシュレイは認めたくなさそうに"くっ・・・・・・"と強張った顔を俯かせた。
これ以上はないほどの震える力で愛馬の手綱を圧迫する。

「あの街に居座る連中のほとんどは殺しの味を知らねえ民間人とキャラバンだ・・・・・・警備つったって、小口径のライフルと古い拳銃を持っただけの自警団が2〜3人いるくらいだ・・・・・・」

 知りたかった答えを耳にし、デズモンドは大いに納得して

「多分、その無防備な弱点を突かれたんだ。ただせさえ、治安が悪いハイペシアでは非武装地帯は格好の獲物となる」

「そうね。犯罪が絶えないこの国では武器を持たない人が決まって、先に死ぬわ」

 リリアも胸の心地悪さは一緒だった。
無抵抗な者達が虐殺された事実を不快に感じているのだろう。 

「戦える人間がいない上に奇跡が生んだ極上の酒がある・・・・・・襲われない方があり得ない話だ」

 リチャードも行き場のない複雑な感情に苦虫を噛み潰したような顔を繕う。

「もっと、早く来ていれば・・・・・・!ちくしょう・・・・・・ちくしょぉぉぉ・・・・・・!!」

 アシュレイは後悔と罪悪感で、とうとう、まともな人格を失う。
いつも強気な性格も皆無に弱みを剥き出しにし、ぎゅっと閉ざした目蓋から大粒の涙液を流した。

「アシュレイさん!ひとまず、落ち着いて下さい!まだ、ヴェロニカさんが死んだって決まったわけじゃありません!もしかしたら、どこかに隠れて・・・・・・!」

 サクラが必死に慰めようとするが

「お前にはあの光景が見えねえのかよ!?燃え盛る建物と死体の山がよ!!あれ見ろ!!あいつの診療所も丁寧にぶっ壊されちまって・・・・・・誰が生きてるってんだ!!?」

 反感を抱き、乱暴な言葉であたり散らす。

「やめて!サクラは悪くないよ!仲間に八つ当たりしないで!」

 メルトは威圧に身が縮むサクラを庇い、乱心したアシュレイを責め立てる。

「うるせえ!!虐殺者の妹は黙ってろ!!」

「はあ!?それどういう意味!?今、最低な発言をしたよね!?」

「いい加減にしろ!ガキのケンカは暇な時にやれ!」

 リチャードは厳しい宥め方で関係が悪化し始めた2人を仲裁する。
アシュレイとメルトは叱られた事で黙ったが、互いに視線を逸らし合う。

「あそこまでしてやられたんじゃ、少しの望みしかないわね。皆の意見はどう?ヒーローを気取って、生存者を探す?それとも、冥福を祈って帰る?」

 ローズが諦めかけた口調で仲間にどちらかの選択肢を求める。

「僕としてはどちらでも構わないよ。誰か、好きに決めてくれるかい?」

 どうしようもないと思い切ったデズモンドも適当に判断を委ねる。

「僕は行くよ」

 その中で1人、クリスが迷わず即答する。
仲間全員を視野に入れ、悪ふざけをの印象がない態度で理由を言い聞かせる。

「少しでも望みがあるなら、僕は僅かな可能性に賭けたい。アシュレイ、君だって本当はヴェロニカが生きているって信じているんでしょ?だったら、迎えに行こう」

「・・・・・・ぐっ!うう・・・・・・」

「お前がそうしたいな勝手にしろ。俺達は流れに沿って、ついて行くだけだ」

「襲撃の後とは言え、危険が去ったとは言い切れません。念のため、アドニスに足を踏み入れる前にちゃんと作戦を練った方がよろしいかと・・・・・・」

 ステラの提案にリチャードは完全に同意し

「こうしよう。まともに戦える奴はなるべく、散り散りになって動くんだ。これで少なくとも、呆気ない全滅は防げるな。ユーリ、お前はここに留まってくれ。ここは街全体を見渡せる眺めのいい峠だ。狙撃にはうってつけだろう」

「援護の役ですか。このユーリにお任せて下さい」

「私も行きたい!クリスの役に立ちたいの!」

 ずっとクリスの腰にしがみつき、馬に跨っていたミシェルも戦力に加えるよう訴えるが

「だめだと言っておく。子供はいい子にお留守番でもしていろ。連れて行くには危険過ぎるし、はっきり本音を明かせば足手まといだ。ユーリ、この子の面倒を頼めるか?あまりにも駄々をこねるようなら、撃ってもいいぞ」

 リチャードの否定と脅しにミシェルはシュンと静まり返る。

「行くぞ。手分けしてアシュレイのガールフレンドを探すんだ」

「生きてるか・・・・・・イカサマの常習犯に勝負を挑んだ方が、まだ有利な賭けね。"略奪したいなら、どうぞのお好きに"でお馴染みの最悪の街、アドニスにようこそ」

 ローズの不謹慎なジョークを最後にギャングは数人を残して再び馬の群れを走らせる。
崖下にある坂を下って、壊滅したアドニスへと降りていく。
峠に残ったユーリは愛用の狙撃銃を用肩から降ろすといくつかの弾丸を地面に添え、うつ伏せになった。
興味深そうに隣で立ち尽くすミシェルも伏せさせ、マウントベースに取り付けられたスコープを覗く。

Re: エターナルウィルダネス ( No.26 )
日時: 2020/05/10 17:14
名前: 死告少女 (ID: FWNZhYRN)

 クリス達はアドニスの近くにあった茂みで馬を降り、集落には徒歩で足を踏み入れた。
歓迎のないゲートを潜り、武器を手に辺りを見て回る。
出迎えた人間は全てが死体で至る所に彼らはいた。
平穏な暮らしを送っていただろう人々は惨い殺され方で命を抉られている。
どれも断末魔を上げ、絶命した顔はまるで死しても苦しんでいるような、ゾッとする眼差しだ。

 壁に整列させられ、処刑されたキャラバン隊。
素顔の原形がなく脳や肉片を撒き散らし、体型でしか性別を断定できない。
家畜の納屋には動物の姿はなく、代わりに人の焼死体の塊が肉汁を溢れ出させている。
公園には服を血で汚した子供が何人かいて、花輪を被った少女を囲んだりブランコやシーソーに乗って遊んでいたり、優雅な光景を描いていた。
勿論、死んでいる。所謂、死体を弄んで作られたアートだ。

「飲みたかったウィスキーを我慢して正解だったわ。でなきゃ、間違いなく吐いてた」

 ローズが下品に安堵し、一面の環境に浮かべた苦い顔を更に強張らせる。 
ショットガンを構え、散弾が噴き出す銃口をあちこちに向けながら、死体だらけの道を歩く。

「これは酷い。女子供も皆殺しだ。生きてる人はいないのか・・・・・・?」

 クリスが不快な思いをしながら、辺りに響かないトーンで独り言を言った。
焦がす火の熱さと屍の生臭い香りを吸い込まないよう、顔下半分を覆う。

「さあな。俺達と死体を喰いにやって来た空の連中以外、気配がしない。虐殺は終わったばかりだ。犯人はまだ遠くには行っていないはずだが・・・・・・」

 違和感が憑りつく環境にリチャードは妙な胸騒ぎと不吉な予感を感じていた。
肉片を咥え、屋根に止まったカラスにチラッっと視線をやり、すぐに警戒を仕直す。

「この死体、銃創の大きさや形状から判断すると45-70口径で撃たれているわ。主にリピーターライフルや大口径ピストルに使用される弾丸よ」

 リリアはどれでもいい亡骸の1つの死体を探り、分析する。

「でしょうね。いくら非武装地帯とはいえ、拳銃だけでは街1つを滅ぼすなんて無理な話よ。キャラバンだって命懸けの職業だから、反撃できるだけの武装はしていたはずよ」

 ローズは大した反応を示さず、話だけ聞いていた。

「気をつけた方がいいわね。敵は殺傷力のある銃器を大量に所持している事になるわ。もしかしたら、爆薬だって・・・・・・」

「あいつの診療所は目と鼻の先だ・・・・・・!中にあいつがいるかも知れねぇっ・・・・・・!」

「気持ちは分かりますが、興奮を鎮めて下さい。静かに。慎重になって下さい」

 急いで前列を行こうとするアシュレイにステラが注意を促す。
緊張で拳銃とナイフにムズムズした震えが起こり、汗が滲む。

 集落を半ばまで進んだところで、クリス達は1ヶ所に合流した。
民家に挟まれた中心の歩道。暑い風が吹き、枯れ草の塊が転がって脇道を横切る。

「不審な物は見つけたか?」

 リチャードが率直に聞く。

「いえ、特には・・・・・・あるのは遺体だけでした」

 サクラは切ない感情で偵察の結果を報告する。

「こっちも同じよ。ここは随分、路上でお昼寝する人が多いようね。ご丁寧に血の寝汗までかいちゃって」

 ローズも意味が通じる報告を告げる。

「さっきから気になっていたんだけど・・・・・・この場所、ちょっとおかしくはないかい?死人しかいないと言っても、あまりにも怪奇染みた静けさが漂っている。妙に引っかかるんだ」

 デズモンドが街全体に怪しさを感じながら言った。

「ホント、変な気分になるよね〜・・・・・・気のせいかもしれないけど、ずっと誰かに見られている気がして気持ち悪いよ〜」

 メルトも辺りをチラチラと奇妙な雰囲気を察していた。
クリス達はモヤモヤを抱えたまま、沈黙してしまう。
アドニスの悲惨な風景は変わらず、空虚な時間が続く。
その中の1人が気紛れに違う方向に視線を向けた途端、真顔を豹変させた。

「皆、隠れてっ!!」

 いきなり、リリアが冷静さを欠けさせ仲間に向かって叫んだ。

「・・・・・・え、ちょっ!どうし・・・・・・きゃっ!」

 困惑す暇も与えられずメルトはデズモンドに物陰に連れられサクラ共々、彼の下敷きになった。 
直後に破裂音が何発も繋がって響き渡る。
盾となった鉄缶が甲高い音を立てて揺れ、上の木の板に無数の穴が開いた。

「敵襲か・・・・・・!?」

 身を潜めながら、リボルバーのハンマーを倒してクリスが言った。
不意打ちを許してしまった失態にリチャードも自身の不甲斐なさに舌打ちする。

「やはり、潜んでいたか・・・・・・くそっ、罠にはまったらしい・・・・・・!」

 銃弾の雨は、クリス達が辿って来たエリアの反対側から飛んで来た。
アドニスを滅ぼしたであろう集団がゾロゾロとその姿を現す。
2人のルシェフェルが堂々と前に出て来て、ギャング達と対峙すると

「たんまり酒を譲ってもらって、街のゴミ(住人)を掃除して身を潜めてたのはいいが・・・・・・駆けつけた政府の犬や賞金稼ぎからも、ふんだくってやろうと思ったのによ。どうした事だ?やって来たのはただの旅行者かよ?」

 背の低いルシェフェルの少年が期待外れの展開に文句を垂れる。

「読みは外れたなディヴイット。だがな、不満はあるが多少の収入は得られそうだぞ」

 隣に並んだ青年が最初に喋ったルシェフェルに言った。

「あの灰色の服装と黒猫の記章、ルフェーブル・ファミリーね。よりにもよって、1番会いたくない奴らと鉢合わせしてしまうなんて・・・・・・」

 厄介な事態に陥ったリリアも姿勢を低く、弾が当たらない場所でため息をつく。

「くっ・・・・・・あの野郎・・・・・・!」

 アシュレイが湧き上がる殺意に尖った八重歯を剥き出しにする一方、ステラが全ての真相に納得する。

「アドニスの襲撃はルフェーブル・ファミリーの仕業だったんですね・・・・・・敵はただの野盗じゃなかった。道理で気配を掴めなかったわけだ」


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。