二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 【ポケモン対戦小説】BOHパ対戦記録譚
- 日時: 2016/12/29 15:48
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
- 参照: https://www.youtube.com/watch?v=cSKjiY3FnrQ
はじめましての方は初めまして、そうでない方はこんにちは、モノクロです。
本作品は前作『バトル・オブ・ホウエン対戦記』に続く続編作品です。前作ネタなどもあると思いますが、今作だけでも内容は分かるように努めています。
前作の続編ということで、基本形式は前作と変わりませんが、今作はポケモン対戦をするにあたって、BOH——バトル・オブ・ホウエン縛りで対戦します。
バトル・オブ・ホウエン縛りというのは、前作品で題材にしたインターネット大会『Battle of Hoenn〜バトル・オブ・ホウエン』に出場可能なポケモンのみを使用する、という意味です。バトル・オブ・ホウエンに出場できるのは、ホウエン図鑑に登録されているポケモンのみ、作中に出て来るのもそれらのポケモンだけです。
では、次にこの作品の根本について説明しますと、言うなれば『ポケモン対戦小説』です。
対戦小説とはなにかと言いますと、『ゲームにおけるポケモン対戦そのもの』を題材とした作品で、動画投稿サイトに投稿される『ポケモン対戦実況動画』を小説風に書き起こしたものです。
なので本作には、種族値、努力値、個体値といった三値、ABCDSVといった略式記号、ガブ、バナ、クレセドラン、ゴキブロス、ドロポン、月光乱舞といった略称愛称蔑称などなどの、ポケモン廃人が多用する専門用語が多発します。できるだけ初心者の方にも分かるような作品を心掛けたいのですが、基本はある程度その手のことを知っている前提なので、ご了承ください。
作品の向上には全力を尽くすので、分かりにくい、もっとこうしてほしい、などの要望があればいくらでも申し付けてください。
そして、もしもこの作品で、対人戦やランダムマッチに興味を持った方がいたら幸いです。雑談板にモノクロの雑談スレ『DM第4相談室』というスレッドがあるので、よろしければお立ち寄りください。フレコ交換やフレ戦希望なども受け付けています。
勿論、普通に雑談したいという方も歓迎しますよ。
ちなみにこの映像板では同じものを題材としている作品に、モノクロも合作として参加している『俺と携帯獣のシンカ論』。舞台は違えど世界観を共有している、タクさん著の作品『ポケモンバトルM・EVO』があります。よろしければそちらもご覧ください。
というわけで、自称前置きが長いカキコユーザーのモノクロが、最後に注意書きを残して本編へと移ります。
※注意
・本作における対戦はほぼ“ノンフィクション”です。バトルビデオを見返して文字に起こしています(しんどい)。
・対戦相手の名前は改変して使用しています(物語の都合とプライバシーの問題に配慮)。
・対戦相手への誹謗中傷はおやめください(♂のメガクチートにじゃれつかせます)。
・ポケモンが喋ります(ポケモンしか出ないから仕方ない)。
・擬人化要素(イラストを描いて頂きました。許可を貰えたらそのうち紹介したいです)。
・茶番(前作より増量)。
・メタ発言(特に後語り)。
・にわか発言&下手くそプレイング(モノクロへの批判はOK!)。
・分かりにくい解説と文面(簡潔になるよう努めております)。
・BGMの種類増加(選出画面のURLのリンクからBGMに飛びます。種類はポケモンに限らず)。
・BOH縛り(詳細は冒頭の通り)。
・後語り担当は作者代理(名前はまだない)。
以上のことを留意して、どうぞ、モノクロのポケモンたちによるポケモン対戦を、お楽しみください——
オリキャラ募集的なものをしています。詳細は三戦目以降の後語りにて。投稿条件はこの作品が理解できること、ということで。
目次
零戦目「プロローグ」「を装ったあらすじです」
>>1
一戦目「確率世界」「と呼びたくなるほど理不尽です」
>>4 >>5 >>6 >>7 >>8 >>9 >>10
二戦目「ランダム対戦」「はレートもフリーも魔境です」
>>14 >>15 >>16 >>17 >>18 >>19
三戦目「永遠の宿敵」「は旧友にして戦友です」
>>20 >>21 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27 >>28 >>29
四戦目「ポケモンなしで対戦とは笑止千万」「ポケモンなら拾いました」
>>30 >>31 >>32 >>33 >>34 >>35 >>36 >>37 >>38
五戦目「後輩」「私のことですか?」「それは違うよ」
>>39 >>40 >>43 >>44 >>45 >>46 >>47 >>48 >>49
六戦目「先輩」「その中は百合の園でした」
>>52 >>53 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>63 >>76 >>77
七戦目「トンベリ君」「の憂鬱です」
>>91 >>94 >>95 >>96 >>97 >>101 >>104 >>105 >>106 >>107 >>108 >>109 >>110 >>111
バトル・オブ・ホウエンパーティー名簿一覧
>>78
タクさんより『BOHパ対戦記録譚』のタイトルロゴ(または表紙絵)のイラストを頂きました。
>>54
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- 対戦パート3 ( No.36 )
- 日時: 2015/03/25 02:30
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)
「みんな! ボクに力を分けてくれ!」
『おぉー!』
そして、彼の声に応えるように、彼の仲間たちは拳を合わせて念じ始めた。
まるで、天に祈りでも捧げるように。
【団員たちの祈りがミミロップに届く——!】
そしてその祈りは、果てしない力となり、
【ミミロップはメガミミロップにメガシンカした!】
少年へと降り注ぎ、新たなる力を呼び覚ます——
「——ってちょっと待てや!」
「な、なんだよ!」
「そんなメガシンカがあってたまるか! お前らメガストーンもキーストーンも持ってねーだろうが!」
「そんなものなくたって、ボクたちの絆の力があればこのくらいはできる!」
「いやいやいや! それは俺の尊敬するレックウザだけに許されたメガシンカだろうが! お前は普通のポケモンだろ!? メガストーンでメガシンカしろよ!」
「うるさいうるさい! ボクたちの絆の力はボクたちのものだ! おまえなんかにとやかく言われたくない!」
「というか、ライってレックウザのこと尊敬してたんだ……知らなかったわ」
「僕も知りませんでした」
「……あのポケモンも……第五世代まで、三体の中で、不遇だったから……」
「色も緑なドラゴンだしねぇ」
言うまでもないとは思うが一応言っておくと、実際はちゃんとメガストーンでメガシンカしているので、間違えないように。雷切の言うように、本来はメガレックウザだけが祈りでメガシンカします。
今回のは、ただの演出ということで。
「畜生が……! こんなのってありかよ!」
「まあまあ、落ち着きなさい。あなたらしくもないわよ、ライ。」
「ココロ……」
「確かに勝ち筋は細くなったけど、元々想定のうちだったんでしょう? まだなんとかなるわ」
「……そうだったな。ちっと熱くなっちまったが、仕切り直しだ」
「それでこそ雷切さんですよぉ! HAHAHA!」
「とりあえず、ここは猫騙しで来るはずだ。相手がどんな型でも、まずはラグナを捨てるぞ」
「HAHAHA……知ってましたよぉ……」
頭が冷えたことで、冷静に捨て駒にされるラグナロク。
確かに、雷切はいつもの雷切に戻ったようだ。
「いっけぇ!」
【ミミロップの猫騙し!】
[ラグラージHP:53/207]
【ラグラージは怯んで動けない!】
少年の気勢とともに猫騙しが繰り出され、ラグナは怯まされる。
流石にこの体力では、次の攻撃は耐えられそうにはない。
「さて、ここで恩返しが来なけりゃ、切ってると思っていいんだが……」
「あまり期待はできないわね。なにせ、採用率69.5%だもの」
「冷凍パンチならもしかしたら耐えるかもしれないんですがねぇ……流石に無理でしょうかぁ」
「まー、ココロちゃんが頑張って耐えるしかないんじゃない?」
「……いや……意外と、そうでもない……かも、しれない……」
恩返し切りには期待できない一同だが、トンベリだけは違った。
少年らと同じくらいの年齢である彼には、雷切たちとはまた違った考えがある。
「……相手は、子供……それなら……」
と、思った刹那。
少年がラグナロクへと突っ込んできた。
「くらえ! ボクのとっておきを!」
【ミミロップはとっておきを使った!】
「え……とっておき……?」
「……ビンゴ……」
「成程な、そういうことか」
【ラグラージは倒れた!】
ラグナロクがぶっ飛ばされながら、雷切もすぐに理解した。
つまりこのメガミミロップは、通常のメガミミロップの型ではないのだ。
「こいつの技構成は、猫騙し、とっておき、この二つだけだ」
「二つだけ……? 技は四枠あるのに?」
「とっておきの仕様上、そうしてるんだろうぜ」
ポケモンの技の一つ、とっておきは、威力140という非常に高い威力を誇るノーマル技だが、事前にとっておき以外の技をすべて使わなければならないという制約がある。
だがこの制約には穴がある。
「とっておきは、そのポケモンが、現時点で覚えている技を参照する——つまり、技をとっておきと猫騙しや守るのように、確実に1ターン稼げる技ならば、ノーリスクで威力140の攻撃ができるって寸法だ」
勿論、技は実質とっておきに固定されたようなものだが、それがタイプ一致で連打されるとなるとかなりの脅威だ。
ちなみに、とっておきしか覚えさせていない場合、とっておきは不発になるので注意しておこう。
「なーるほどねぃ……物理型スキンニンフィアみたいなものかな?」
「そんな感じだな。そして、相手の攻撃技はとっておきのみ。それなら……」
【行け! メタグロス!】
「スパコンピで相手できる! 最後の仕事だスパコンピ、行ってこい!」
「4249362」
相手がノーマル技しか使えないのなら、それを半減できるスパコンピで倒しきれるはずだ。
むしろ威力140ではココロが耐えきれない。ここはなんとしてでもスパコンピに倒してもらうしかないのだ。
「こうなっちまうと、今度は命中が不安だな……バレパン二発で倒せるような耐久じゃねーし、思念の頭突きを当てるっきゃねーが」
「思念の頭突きは命中率90%……対戦でここぞという時の九割ほど、怖いものはないわね」
「……でも……まずは、相手の攻撃……耐えないと……」
既にスパコンピの体力は半分を切っている。いくら半減と言えども、タイプ一致の威力140だ。削り切られる可能性もなくはない。
さらに言えば、急所にでもあたろうものなら、完全にゲームセットである。
メガミミロップはそれらしく構えると、スパコンピ目掛けて突っ込んで来た。
「みんなおまえのことを待ってるんだ! 帰って、来て、くれえぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
煌めく星々を散らして、メガミミロップの一撃がスパコンピの鋼鉄のボディに直撃する。
流石に凄まじい威力だ。等倍でこの攻撃を耐えられるポケモンはそういないだろう。
しかし、それは等倍であれば、だ。
【ミミロップはとっておきを使った!】
[メタグロスHP:24/183]
半減かつ耐久力の高いスパコンピならば、半分削れていても、この通りである。
「くっ……とどかなかった……!」
「おっかねぇ威力だな。もう少し削られてたら、乱数で落ちてたかもしれねぇ」
だが、かもしれない可能性など、今この場では無意味。
結果のみが、この場ではすべてなのだ。
「さぁとどめだ。きっちり当てろよ」
「424936269050」
スパコンピは狙いを定めると、脳から発せられる思念エネルギーを頭部に当たる装甲へと集中させる。
そして、その思念を解放し、メガミミロップへと——突撃する。
【メタグロスの思念の頭突き! 効果は抜群だ!】
【ミミロップは倒れた!】
【スーパー秘密団の団員たちとの勝負に勝った!】
- 対戦後の茶番 ( No.37 )
- 日時: 2015/03/25 19:18
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)
「さ、勝負は俺たちの勝ちだ。もう突っかかってくんなよ」
「くそ……!」
対戦が終わり、少年は悔しそうに地面に拳を打ちつける。他の仲間たちも、一様に沈んだ表情で俯いていた。中には泣き出す者までいる。
「……流石に……後味……悪い……」
「ネタとしてはこういうゲスいヒール役も面白いからありだけど、やっぱリアルで考えたらちょっとねー……」
「知ったことか。俺らには俺らのすべきことがあって、こいつらのために妥協してやる義理なんてねーんだよ。ほら、さっさと行くぞ。ラグナ」
「は、はぁ……」
子供から無理やり玩具を取り上げて泣けしてしまったような罰の悪さを感じるも、雷切だけはそんなことお構いなしだ。
それにこれは、お互いが約束として取り決めた勝負の結果。ラグナロクは渋々ながらも雷切に従い、スパコンピを運ぼうとするが、
「131012718」
「え、な、なんですかぁ……?」
ラグナロクに持ち上げられる前に、スパコンピは自分から動き、子供たちの前まで移動した。
「58416178181641621020519」
「な、なに……? なんていってるの……?」
「俺が知るかよ」
スパコンピは機械的な音を発しているが、独自のプログラミング言語を無理やり音声化したようなただの電子音では、なにを伝えたいのか分かろうはずもない。
だが、スパコンピはなにかを伝えようとしている。それだけは確かだった。
「……ちょっと、どいてくれるかしら」
「ココロ……?」
と、その時。ココロが前に進み出る。
そして、スパコンピの額(らしき部位)に、手を置いた。
「ライ、確認だけど、この子には意志があるのよね」
「あ、あぁ。実際はただのプログラムだが、性能としては通常の生物となんら変わりない思考を持ってる」
「そう、それなら」
ココロはスパコンピに手を置いたまま、スッと目を閉じる。
ややあって、彼女はゆっくりと眼を開き、手を放した。
「……成程ね」
「なんだ、どうしたんだ、ココロ?」
「この子、もあの子たち——スーパー秘密団? との別れを惜しんでいるわ」
「っ! ほ、ホント!?」
「えぇ。でも、勝負の約束は守らなくちゃいけないって」
「あ……うぅ……」
一瞬、目が輝いた少年たちだが、すぐにその勢いは削がれた。
だがそれ以上に、奇妙なことがある。
「……なんで……そんなこと、分かるんだ……?」
「そうですよぉ。スパコンピさんの言葉は、よほどコンピューターに精通した人か、同族でないと分からないはずですよぉ」
ココロがスパコンピの伝えたいことを理解したこと。
それが謎だった。今まで、彼女もスパコンピの言語は理解できていなかったはずだ。
「タネは簡単よ。あたしだって、この子の独自言語なんて分からないわ。でも、“思念”は読み取ることができる」
「思念……?」
「そう、言い換えれば思考とか、思いとか……要するに一種のサイコメトラーよ。エスパータイプなら、できるポケモンは多いわ」
特にココロの種族は、人の心に機敏なサーナイト。
直接触れたものの強い意志を理解することなど、造作もない。
「つまり、その力でスパコンピの思念そのものを読み取ったのか」
「えぇ。それでこの子は、あなたたちにお礼を言ってる」
そう言って、ココロは少年たち、スーパー秘密団へと向き直る。
「ここに捨てられて、なにもすることがなかった自分と遊んでくれてありがとうって。凄く楽しかったって」
「こいつ、そんなことを……」
「でも、約束は守らなくちゃいけない。残念だけど、ここでお別れだって」
「う……く……っ」
「……まあでも、この子は思念を飛ばして意志のやり取りができるみたいだし、メールみたいなことは、いつでもできるらしいわよ」
思念ネットワーク。スパコンピの基本的な機能の一つで、思念を媒介としてインターネットに接続したり、他の機器にアクセスすることができる。
それがあれば、スパコンピの意志一つで、彼らとのやり取りは可能だ。
「だから完全にお別れじゃないわ。あたしたちはこの街にいるし、また会えるわよ」
「おねーさん……ありがとう……!」
今まで堪えていたようだが、遂に少年の涙腺が限界を迎えたようだ。瞳から、雫が一滴、、また一滴と零れ落ちる。
「……一応、円満……に、解決……か……?」
「HAHAHA、ココロさんのお陰ですねぇ」
「ココロちゃん、今まで軽く空気だったのに、お姉さんキャラを発揮し始めた……? 雪姫ちゃんのライバル登場……?」
「…………」
その後、少年たちが泣き止んだ頃に、雷切たちはスパコンピを抱え、別れとなった。
だが今生の別れではない。またいつか、会えるときは来るだろう。
そして、その道中。
「なぁ、ココロ」
「なにかしら」
「スパコンピは、他になんつってた?」
事もなげに、雷切は尋ねる。
ココロはその質問に、溜息をついた。
「はぁ……お見通しなのね」
「こいつとも長い付き合いだ。なんとなくはな」
「……あの子、従順なのね。それに義理堅い。とてもコンピューターだとは思えないわ」
だが、残酷なくらいにコンピューターでもあった。
「あたしたちと一緒に行くべきか、あの子たちと共にあるべきかを計算した結果、大差をつけてあたしたちに付いた方が得だって言ってたわ」
「そうか。だろうな」
「流石にこんな残酷なことは言えないから、あの子たちの前では黙ってたけど……コンピューターだからかしら、こう計算づくなのは」
「無理もねーよ。こいつの機能は戦闘を継続していく中で維持されるものだ。あのガキどもと遊んでるだけじゃ、維持されない。実際、こいつの機能は俺が最後に見た時よりも随分劣化している。こいつだって、ほとんど生き物と変わらねーんだ」
もしもスパコンピの機能がすべて止まってしまえば、それは生物で言う『死』と同じ。
だから生き続けるために、より機能を使いこなせる雷切たちに付いて行くという選択は、スパコンピなりの生きる道だったのかもしれなかった。
「……ま、大丈夫だろ。こいつもあいつらと文通するんだろ」
「文通っていうか……メールのやり取りみたいなことはするつもりっぽいわね」
「ならそれでいーじゃねーか。俺たちは俺たちで、こいつを上手く使ってやってよ。悩むことなんてねーし、あのガキ共がそれを知らないなら、それでいい」
なにも問題はない、と雷切は結論付ける。
「……そうね」
そしてココロも、言葉短く、それに同意した。
そして翌日から、今までパソコンが置いてあった位置には、スパコンピが設置されることとなった。
- 後語り ( No.38 )
- 日時: 2015/03/26 20:38
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)
「メモ帳に書いてたデータまで吹き飛ぶなんて、そんなん考慮し取らんよ。皆さんこんにちは、後語り担当の作者代理です」
「ちゃんと保存せずに別ゲーに走っていた作者さんが悪いものと思われます。その後輩です」
「冒頭の言葉の意味を説明しますと、この後語りを書くのは二回目です」
「要するに後語りのデータが飛んだんですね。ただの不注意じゃないですか」
「いやだってさ、まさか後語りを書き終えてから、他のゲームに熱中してたら、知らない間にパソコンが再起動されてるだなんて思わないじゃん」
「さっさと更新するか、一度ちゃんと保存しておけばこういうことにはならないのですよ。それに作者さんのパソコンは、新しいプログラムのインストールのために、定期的に再起動の表示が出てるじゃないですか。それは作者さん自身も分かっていることなはずです」
「うん、分かってる。分かってるんだけどね、忘れた頃にやってくるというか……忘れてた」
「ただの馬鹿じゃないですか」
「ちょ、馬鹿って、まがいなりにも僕らは作者代理だよ!? いわば作者の分身みたいな存在で、そんなこと言っちゃダメだよ!」
「代理だからこそ言っても問題ないことが分かるのですし、趣味嗜好や口調が反映されている先輩と違い、私は作者さんの人格面が反映されているのですよ。自分なりに第三者を分析して酷評するのは普通です」
「あまり褒められた性格じゃないけどね……」
「なんにせよ、データが飛んだのは作者さんのミスということです」
「まあそればっかりは否定できないよなぁ……稀なことだろうけど、こういうケースもあるって知った以上は、今後も注意しないと」
「スクリプトの停止で今まで何百何千何万もの執筆途中のデータが葬られても、なかなか学習しなかった作者さんが注意できるのかは甚だ疑問ですけど」
「レアケースだから尚更ね……ただ今はもう、書いてる途中で止まるのが嫌だから、全部メモ帳に書いて、それから投稿するようにしてるんだよね。文字数が把握できないのが痛いけど、後から修正という形で加筆すれば問題ないしね」
「大変なのは、BGMを張る必要のある選出画面ですね。あそこだけはURLを張る関係上、加筆ができないので、文字数上限以内に収めなければなりません」
「だから本当はもっと選出時点での考えとか、言いたいことはいっぱいあるんだけど、なかなか上手くまとめられなかったりなんだりで書ききれないんだよね。小ネタとかももっと挟みたかったんだけど」
「それでも文字数自体は他の文章より圧倒的に少ないので、今はさしたる問題はありませんけどね」
「ちなみに吹っ飛ぶ前のデータでは、伝説の厳選について話してました。実は今、伝説厳選中なんだよね」
「詳しいことは伏せますが、番外編のためですね。執筆はいつ頃で」
「まだ未定だね。最低でも、もう一体の厳選が終わってからと、キャラクターが出揃うまで話を進めてから書き始めたいかな」
「……まだキャラクターが増えるのですか」
「正直、ここから先は全部新キャラ登場だけで埋めることも不可能ではないくらい」
「流石にそれは……」
「分かってるよ、分かってるけどさ、だってホウエン面白いポケモン多いんだもん! 雷切とラグナロクの昔話とか、ちーちゃんとトンベリ君中心の話とか、ココロさんの家族のこととか、色々書きたいこと多いけど、そのためには他キャラもいなくちゃいけないんだもん!」
「どっちが本音でどっちが建前なのか判別付きにくいのですが」
「どっちも本音だよ。はっきり言ってホウエンは新規ポケモンが他の地方のポケモンに比べて弱い」
「謎の両刀種族値に、半端な耐久、鈍足が組み合わさったポケモンが多いせいですね。某サイトでは、その地方のポケモンの種族値平均を取ってランク付けをしていましたが、ホウエンはどの能力でもかなり下位でしたか」
「シンオウなんかは戦闘民族って言われるくらいだし、イッシュも種族値が尖ってて個性派揃いだけど、ホウエンは総じて中途半端なんだよねぇ」
「当然、バシャーモやボーマンダのように、トップメタに食い込むだけの実力を秘めたポケモンもいるのですけどね」
「今回の対戦は、その半端さゆえに苦戦したとも言えるしね。そんなわけで、お喋りが過ぎたけど、そろそろ型紹介しようか」
「はいです」
「ちなみにココロさんは除外してます。理由は今回対戦ではなにもしてないからと、文字数の節約」
「後半の理由が清々しく作者さんらしいですね」
「そんなわけで最初はラグナロクから」
ラグラージ(NN:ラグナロク):♂:腕白:激流:HD極振り、残りB
持ち物:カゴの実
技:滝登り、地震、眠る、のろい
「作中でも言っていましたが、型はねむカゴのろい型ですね」
「基本的な動きは、有利対面からのろいを積みまくって、消耗したらねむカゴで回復しつつ無双する、って感じかな。発想元は前期レートで人気だったらしいねむカゴ瞑想ニンフィアだよ」
「ただ素の火力の低さ、BD両方の耐久の半端さ、技範囲や積み技の欠点など、諸々の事情が重なって瞑想ニンフィアよりも使い難そうですね」
「というかぶっちゃけかなり使いにくい。HDぶっぱにして火力とBはのろいで補うことにしてるけど、積まないと物理が比較的柔らかいから今回みたいに乱数や確定二発取られちゃうし、鈍足になっていくから積みづらくなるし。なにより物理型だから、鬼火で機能停止する」
「一度は眠るで打ち消せますが、隙が大きいので基本的に二度目はありませんからね」
「ただねむカゴ自体はなかなか便利な回復技だから、HAアタッカーの回復手段として採用するのはありかもしれないな。もしくは特殊を受けるのはすっぱり諦めて、HB特化で対物理性能に特化させるか」
「……というかこのラグラージ、なんで腕白なんですか。物理耐久をのろいで補うなら、火力を上げる意地っ張りとか、特防を高める慎重とかがいいと思うのですが」
「ボックスに理想個体の腕白ミズゴロウが余ってたからだと思う。なにかに使えないものかと考えてたらできた」
「なんて適当な……」
「作者の育成方針なんてそんなもんだよ。じゃ、次はスーパーコンピューターとCPUを掛け合わせたNNのスパコンピね」
メタグロス(NN:スパコンピ):—:意地っ張り:クリアボディ:H220、A196、S92
持ち物:突撃チョッキ
技:コメットパンチ、バレットパンチ、思念の頭突き、地震
「CPUというと、格ゲーなんかのNPCのことですか」
「NPCっていう名称ををああいうのに使うのが適切かは疑問だけど、そんなところ。僕らの間ではコンピって呼んでたけど、2Pって言ったりした方が通じやすいかな?」
「どうでしょう。そういうのは、時代や地域にも左右されますから」
「まあともかく、スパコンピの名前の由来はスパコン+コンピってことで。調整はメガフシギバナを意識しまくっているよ。というか仮想敵がメガバナ。本来ならゴーグルを持って粉対策をするんだよね」
「具体的に調整はどうなっているのですか」
「思念の頭突きでHB特化メガバナを確定二発、Sを4振りメガバナ抜き調整だね。ちなみに特典として無振りのギャラやミロカロスも抜けるよ。抜いたからなんだって話だけど」
「打点ありませんものね。とりあえずメガフシギバナ絶対殺すマンとして育成されたのは分かりました」
「BOHパはメガバナで止まることが多いからねぇ、最近はあまり見ないけど。ただメガバナしか見てないせいで、ちょっと汎用性に欠けるのが玉に瑕かなぁ? S振ってるバナもいるし、Sを削ってHAぶっぱの方が逆に使いやすいかも」
「そもそもメタグロスというポケモン自体、今の環境では動きづらいと思いますけどね」
「そだね。ガルーラ、ガブリアス、ファイアロー——奴らには軒並み勝てないし、BOHパは炎が重いからグロスも活躍しづらいよ。ちーちゃんを今回外したのも、そういう理由だし」
「弱点がモロ被りですからね」
「クチート使いとして、炎と地面っていうメジャーなタイプが弱点であることの辛さは理解しているつもりだし、それに加えて悪、霊も弱点なんてやってられないよ」
「いまや最弱の600族の称号を、ヌメルゴンと争っている感じでしょうか」
「単体スペックはみんな違うし、単純比較できるものじゃないと思うけどね。それにグロスは相性補完としては役立つらしいし。サザングロスの構築で高レートに乗った人だっているんだ、パーティー編成をちゃんと考えれば、活躍もできるんじゃないかな」
「それはどのポケモンにも言えることでしょうが、そうですね。本当にグロスを活躍させたいなら、構築を見直す必要がありそうです」
「さて、それじゃあこの辺で型紹介はお終い。最後にお知らせだけして後語りも終了かな」
「本作品では、オリキャラ——というより、作中に登場するポケモンを募集しております」
「作中に出して欲しいポケモンがいたら、是非とも投稿してみてください。採用すれば、作者が育成して実際の対戦で使用します」
「募集できるポケモンは、ホウエン図鑑に登録されているポケモンで、かつ伝説のポケモン(禁止級、準伝説含む)を除きます。さらに、こちらで既にキャラ設定を作っているポケモンも採用できません」
「どのポケモンが採用できないかは、お手数ですが、逐次作者に聞いてください。すみません」
「必要事項は、最低限ポケモンの種族さえ言ってくださればいいです。他の要素、作中での名前(NN)、性格、擬人化体での容姿、型、サンプルボイス、各種設定などは任意で。欲しい設定だけつけて、作者さんに丸投げしても構いません」
「あまり大々的に募集するつもりじゃないし、人も来ないかもだからキャラシートなんかは作ってません。もし必要なら言ってください、作ります」
「それから、この作品、ポケモン、作者についての質問や疑問、要望なども常時受け付けています。なにか聞きたいことがあれば、なんでも遠慮なくどうぞ。勿論、募集についての質問もいいですよ」
「さて、言いたいことは大体言ったかな。冒頭でも言ったように、ここしばらくは新キャララッシュが続くと思うけど、次回も乞うご期待!」
「それではまた次回、お会いしましょう」
- 茶番1 ( No.39 )
- 日時: 2015/03/27 15:12
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)
「うーん、こっち? いやこっち? どっちかなぁ……」
とある道を歩く、一人の少女がいた。少女というほど子供でもなさそうだが、顔立ちが幼い。
少女は携帯電話型スマートデバイスの地図機能を頼りに歩いているようだが、道に迷っているようだった。
「グレン先輩はよくこんなところを迷わず歩けたなぁ。あの人、携帯も使えないのに……」
などと言うが、他人のことを言ってもどうしようもない。
しかし彼女は、目的地へと到達することに対する期待感、昂揚感を胸に秘め、足取りも軽い。
そしてなによりも、“彼”に会うためならば、この程度の苦境はなんでもなかった。
「やっと会えるんだから、こんなところで挫けてられない……よし!」
彼女は一度深呼吸して気持ちを切り替え、再び歩き出した。
「待っててくださいね、先輩——!」
■
いつもと変わらぬ雷切の邸宅。豪邸というほどでもないが、一般的な一軒家と比べると立派な佇まいの屋敷。
そんな家の窓から、ココロ、ラグナロク、雪姫の三人は、ひっそりと家の外——玄関口を覗いていた。
そこには、変わらぬ邸宅とは裏腹に、変わった光景が広がっている。
「——あんたねぇ、何度も言ってることだけど、こういうことはきっちりやって欲しいんだよねぇ、雷切よぅ」
「はい、すみません。本当に申し訳ありませんでした……」
雷切がペコペコと頭を下げていた。
傲岸不遜とも取れる強気な態度を常に保っていた彼が、上司に叱咤されている平社員のように、頭を下げ続けていた。
これは非常に珍しい光景だ。相手はやたらカラフルで派手な服を着た男だが、何者だろうか。
「来月は、ちゃんと払いますんで……」
「そう言って先月も期限を過ぎたのはどこのどいつやら。そりゃこっちもあんたの事情は分かってるけどさぁ、それでももうちょっとなんとかしようと——」
「わ、分かってます! それは分かってるんです! で、でもなかなか金が溜まらなくて……」
「そりゃあんたがもっと働かないからさ! 世の中、真面目にやってるだけじゃどうにもならないんよ。どんな手を使っても金を稼いで、家賃を払いな!」
「は、はい! 心得ました!」
「……まぁ、同じ旦那のポケモンだし、あたしゃ寛大だからある程度は大目に見るけどさ。定期期限くらい守んなよ」
「ありがとうございます!」
「じゃ、あたしゃこれで。次はちゃんと払いんさい」
「りょ、了解です!」
そのやり取りを最後に、男は雷切の邸宅から去っていく。
その姿が消えてから雷切は、ふぅ、と一息ついた。
「……ライ、今の人は誰なの……?」
「ココロか……」
「雪姫ちゃんもいるぞー! っていうか本当に誰? 雷切君がキャラ崩壊起こしてたけど」
男が去るのを見計らって、ココロたちが玄関先へと出て来た。
雷切は疲れ果てたような面持ちで、ゆっくりと口を開く。
「……大家さんだ」
「大家さん? この家の?」
「そうだ」
「それであんなにペコペコ頭を下げてたの」
「どうにも苦手なんだよな、あの人は……勝てる気がしねぇ」
「雷切さんの頭が上がらない相手の一人ですねぇ」
「こんな相手は先輩振りだぜ……あの人とはかなりベクトルが違うが」
しかし、相手がこの家の大家ということは、先ほどの話は家賃についてだったようだ。
「期限がどうのこうの言ってたけど、借金のこと? でもあれって、一月や二月で返せるような額じゃ——」
「いや、そっちじゃない。この家に住んでいる以上、今まで溜めこんだ家賃とは別に、今現在住んでいる分の家賃を月ごとに払わなくちゃならねーんだが、そっちも滞っててな……」
「ふーん、なんで? 雷切君、ちょっと前までギャンブラーとしてガッポガッポ稼いでたじゃん」
「それはほとんど、今まで滞納してた借金の方に注ぎ込んだからなぁ……今はもうポーカーもブラックジャックもやってねーし、バトルビデオを公開して稼げる金額なんてたかが知れてる」
「でもだからって、ギャンブルはもうやめてよね……」
「ぶっちゃけると、今の稼ぎじゃとてもじゃねーがこの家の家賃をまともに払えねぇ。つーか高すぎるんだよこの家」
「まぁ、これだけ立派な家ですからねぇ」
「どう考えても一人で住む家じゃないわよね。奥にはもっとたくさん部屋もあるし」
現在、雷切が使っているのはこの家のほんの一部。リビングと洗面所、台所に、一応自室にしている部屋くらいだ。残りは完全放置で埃も積もっていることだろう。
本来ならルームシェアなどでもして、複数人で家賃を払っていくという形式を前提にしている節がある家なので、それを一人で使っている雷切は、この家を完全に持て余していた。
「こんな無駄にでかいだけの家、さっさと出て他の家に移り住みたいんだがなぁ……」
「色々制限とか制約とかでがんじがらめにされちゃってるから、雷切君、この家から出られないんだよねー」
「くっそあの主人野郎、ボックスに帰ったらあの首刎ね飛ばしてやる……!」
と、少しばかり興奮して影響でポケモンとしての性質が現れ、腕から黄緑色の刃のようなものが飛び出す。
「ライ、出てる出てる」
「おっと」
ココロに指摘されて、刃を引っ込める雷切。
「ま、あの野郎も今はなんやかんや色々やってるみてーだし、首を刎ねるのはほとぼりが冷めてからにしてやるか。それよか俺らの方をなんとかしねーと。スパコンピがいるとはいえ、もっとパーティーにバリエーションをつけたいんだよなぁ」
「グレンさんはどうですかぁ? 頼めばきっと来てくれ——」
「死んでもごめんだ。あいつに頼むくらいなら、あいつから有り金すべて巻き上げるわ」
「方向性が色々おかしいわよ」
「ともかく、俺らのパーティーは大衆に受けにくい面子みてーだからな。もっと一般ピープルにも分かりやすい支持を得られるような奴が欲しい」
「なによそれ……具体的にはどういう子が欲しいのよ」
あまりに抽象的なのでまったくイメージがつかめない。かくゆう雷切も明確なイメージがあったわけではないのだが、
「そうだな……俺の後輩を例にすると、野郎は女に興味を持つのが普通らしい」
「まあそうでしょうけど、自分は興味ないみたいな物言いね。それが?」
「奴が言うには、大衆を引き付ける最も簡単な方法の一つは——」
「一つは?」
「——美少女を起用することだそうだ」
「…………」
「美女でも可と言っていた」
そういうことではなく。
ココロもなんと言えばいいのやらと黙りこくってしまうが、こういう時にテンションが上がる知り合いがすぐそこに。
「はいはーい! それならここ! ここに美少女と美女のペアリングがございますよ!」
「は? どこだよ」
「ここ、ここだよ! プラチナプリティー美少女の雪姫ちゃんと、クールビューティーな美女ココロちゃんがいるよ!」
「ちょっとユキ……!」
「いーじゃんいーじゃん、こういう時に自分を出していこーよ!」
「あたしはそういうのは求めてないから……」
「お前らがなぁ……」
雷切はココロと雪姫を交互に見回す。確かに誇張表現でも、雪姫の言うことにそれほど間違いがあるということでもないのかもしれないが、
「……はっ」
「なんで鼻で笑うのさ!」
「それはあり得ねーだろ」
「根拠! 根拠はなに!? ちゃんと説明してくれないと、私は納得しないよ!」
「いや、だってよ」
苦笑いと嘲笑が絶妙に混ざった奇妙な笑いを浮かべながら、雷切は言う。
「お前らがもし本当にそうなら、俺は今頃家賃に困ってねーし」
「……そうだったね」
やや暴論だが、この場合に基準はそれである。
雷切にとっては、雪姫たちが美少女である以前に、大衆受けが良く、入ってくる金が多いことが重要なのだ。
彼女たちがいたからと言って、今まで劇的に収入が増えることはなかったので、つまりはそういうことだ。
「でも、そんな急にビジュアル方面を押し出そうとしても、一朝一夕でどうにかなるものじゃないわよ」
「そもそも文字だけじゃ容姿なんて想像の産物だしー」
「別にお前らにそんなことを求めちゃいねーよ。まぁ、俺には一応、アテがないわけでもないが……」
途端に渋い顔をする雷切。
そんな彼の心情を察してか、ラグナロクは、
「もしかして雷切さん、“彼女”ですかぁ……?」
「あぁ、あいつだ。たかが学校の一学年ってミクロな範囲だが、一般人受けってことを考えたら適正はある。だが、ここに来てあいつを呼ぶのは気が引けるっつーか、呼びたくない」
「バトル・オブ・ホウエンでも、あえて声をかけなかったって言ってましたもんねぇ。あの人なら、雷切さんが呼べば絶対に来ると思うのですが」
「どう考えてもパーティーが悪くなるからな、二重の意味で」
一つは純粋にタイプバランスという意味だが、もう一つはまた違う意味を持っている。
今はいない小さな少女のことを思いながら、雷切はふと顔を上げる。
すると、塀の終わりからひょっこりと飛び出す、黒い尻尾。
それに続く、真っ白な髪。
その姿の、少女。
「……あ」
「あ……」
そして、目が合った。
刹那。
「せんぱあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいっ!」
その女は、雷切目掛けて飛び掛かり——抱きついた。
「会いたかった会いたかった会いたかったです! 一万年と二千年前から会いたかったです! もう離しませんこのまま一生涯金輪際世界が果てようと地球が滅びようと宇宙の法則が乱れようとトップメタが絶滅してガルーラもガブリアスもファイアローもリザードンもニンフィアもクチートもゲンガーもギルガルドもポリゴン2も洗濯機もコピペロスもゴキブロスもクレセリアもライコウもスイクンも唯一神も消えて環境が終末を迎えようともザ・クロックでストップしても先輩と一緒に添い遂げますぅ!」
「ちょ……おいコラ、ミスティ! 離せ離しやがれ……! 大袈裟なんだよお前は! あの環境トップメタ共が絶滅するわけがねーだろ! つーか一万年も前に俺らが生まれてるか! 最後に会ったのは三年前だ!」
「三年と六ヶ月と九日と十二時間と二十四分と三十六秒前です! あ、今ので十三時間に!」
「知るか!」
雷切を押し倒した少女はその勢いのまま雷切の胸に顔を埋めて頬ずりしており、雷切が引き剥がそうとしてもなかなか離れない。とんでもない吸着力だ。
「……ライ、この子は……」
「説明は後だ! とにかくこいつを鎮めねーと……!」
「大好きです先輩もうあたし先輩がいない間ずっと朝も昼も夜も先輩のことしか考えられなくておはようからおやすみまでバイト中もベットの中でも先輩のことを忘れた時なんて片時もないくらい先輩尊敬していますもういなくならないでくださいやっぱりずっといましょうよ先輩先輩先輩先輩——!」
「くそっ、禁断症状、それとも反動が来てるのか……!? 思考回路と言語機能が支離滅裂になってやがる……いや、今はんなことどうでもいい!」
マウントポジションをほぼ奪われているので呼吸がしづらいが、しかし精一杯息を吸い込んで、雷切はありったけの声量で叫ぶ。
「ミスティ!」
「はいっ! 先輩!」
そして、やっとその一声で、彼女は止まった。
歓喜に満ちた、ニコニコとした表情のまま。
「……とりあえず、話は中でゆっくりするぞ」
「はいっ、先輩!」
- 茶番2 ( No.40 )
- 日時: 2015/03/28 06:54
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)
「こいつはミスティ。俺の学生時代の後輩だ」
家に戻り、一同は低いテーブルを囲むソファに腰掛ける。
そして雷切に突如飛びついてきた少女——ミスティは、そう紹介された。
なお当のミスティは、いまだ雷切の腕を抱き寄せてゼロ距離で引っ付いている。
そんな光景に眉根を寄せ、なにか言いたくなる衝動もグッと堪えて、ココロは口を開く。
「ライの後輩、ねぇ。それにしては随分と若いように見えるけど……」
はっきり言って童顔だ。
セミショートの白い髪に、右側を結ったサイドテールは尻尾の部分だけが黒く染まっている。
さらに格好も、白のプリーツスカートに白のブラウス、その上から黒のベスト。黒いオーバーニーソックスと、モノクロカラーのネクタイ。どことなく学生のような出で立ちに見えるため、尚更幼く見える。
「こんなナリでも、俺と一つしか違わねーんだがな。ファッションはたぶん趣味だ」
「へー、お洒落さんだね。このセンスは私とお友達になれそう」
「あたしは自分に合ってると思う服を選んでるだけよ。仕事柄、そういうことは気を遣うし」
「仕事? なんの仕事をしているのかしら?」
「これよ」
そう言ってミスティは、片腕だけ雷切から離す。そしてポケットから携帯端末を取り出し、手早く操作して一つの画面を表示させ、テーブルの上に置いた。
「これは……読者モデルかしら。ファッション誌とかの」
「へぇ、モデルさんだったの」
「そうよ。高校生くらいの層を狙ったモデルなの」
「その歳でかよ。つーか、どうせバイトだろ」
「あぅ、そうです……」
「いい加減に定職に付けよな。お前はいっつも俺に引っ付いててなかなか自立しねーから、こっちから離れたってのに……あぁ、そうだ」
そこで雷切は、なにかを思い出したように、ミスティに尋ねる。
「お前、なんで俺の家が分かったんだ? お前には知られねーようにしてたはずなんだが」
「あ、それはグレン先輩に聞いたんです。この前、読モじゃない方のバイト先でたまたま会って、ちょっと話したんですけど、その時に」
「あんの野郎、余計なこと言いやがって……!」
「それよりも!」
と、ミスティは雷切の腕をグッと引いて、彼を見上げる。
その瞳は、まるでヒーローを見る子供のようにキラキラと輝いていた。
「聞きましたよ先輩! バトル・オブ・ホウエンに出たって! 優勝おめでとうございます!」
「出たのは本当だが優勝なんてしてねーよ。てめーの頭の中で記憶を改竄してんじゃねぇ」
「なんであたしも呼んでくれなかったんですか? 聞けば、メンバーを集めるのに苦労したとか……あたしに言ってくれれば、すべてをかなぐり捨てて先輩の元へと駆けつけましたよ!」
「お前を呼ぶと、せっかく独り立ちさせた意味がなくなりそうだからな……それに、こっちにも色々事情があるんだよ」
「?」
はぁ、と溜息をつく雷切。
そこで一旦、会話に区切りがつく。それと同時に、ココロが思い出したように言った。
「……そういえば、今日はまだちーちゃんとトンベリが来ないわね」
「そだねー、そろそろ来るとは思うけど。ちーちゃんなんかは、新しい子が来て喜びそうだなー」
「っ……! そうだ、あいつら——」
ハッとなり、急に焦りを見せる雷切。急にどうしたものかと、ココロはその様子を不審に思う。
と、その時。
「こんにちはー」
「…………」
ガチャリ、と玄関の扉が開き、二人分の足音が聞こえてくる。
こんな辺鄙な家にやってくる者なんてそうはいない。間違いなく、彼女たちだ。
「やべ、もう来ちまった……!」
「? ライ、どうしたの? ちーちゃんたちが来たいみたいよ」
「それがまずいんだが……」
なにやら慌てた様子の雷切。
そして、二度目の扉が開く音。今度はリビングの扉が開かれ、二人の少年少女が入ってくる。
「らいきりさーん、今日も来ました!」
「ん……来客……? 珍しい……」
現れたのは、当然ながらちーちゃんとトンベリの二人。
二人は、この家には珍しい来訪者のミスティに、真っ先に目が行っていた。
「お客さんですかぁ」
「えぇ、ライの学生時代の後輩らしいわ」
「はじめまして! わたし、みんなからちーちゃんって呼ばれてます。種族はクチートで……」
「クチート?」
早速自己紹介を始めるちーちゃんだったが、彼女の種族名を聞いた途端、ミスティが態度を一変させた。
「あんたみたいな種族が何の用? あたしと先輩の至福のひと時を邪魔しないで貰えるかしら、目障りよ」
「え、あの……」
キッと目つきを鋭くし、八重歯をまるで牙の如く剥き出しにして、威嚇するようにちーちゃんを睨みつけるミスティ。
あまりに露骨に敵意を丸出しにしており、ちーちゃんも怯えたように困惑していた。ココロや雪姫も同じだ。
そんなミスティの態度に泣きそうな表情すら見せるちーちゃんだが、彼女を庇うように、トンベリがスッと前に進み出た。
そして、同じように無言でミスティを睨む。
「…………」
「なによあんた、やる気? あたしは子供が相手でも、手加減なんてしてあげないわよ」
言うや否や、ミスティの髪の黒い尻尾が、まるで角のように逆立ち、固まっていく。それはポケモンとしての性質が現れている証拠だった。
「やめろミスティ」
「ひゃんっ」
と、流石に見かねた雷切が、その逆立ち硬化した尻尾を無造作に掴む。すると力が抜けたように、それが硬度を失ってただの髪の毛に戻った。
さらに雷切は、トンベリたちに向き直り、
「トンベリ、今日はもう面子は足りてるんだ。悪いが、今回ばかりはちーちゃんとどっか行って来てくれねーか?」
「……分かった……行こう、ちーちゃん……」
「え、でも、トンベリくん……っ」
雷切の意図を汲み取ったのか、単純にミスティが気に入らなかったか、それともその両方か。
なんにせよ、トンベリはちーちゃんの腕を掴むと、そのまま速足で家から出て行ってしまった。
「なんなの、一体……?」
「すっげー敵意剥きだしてたけど、なにかあったの?」
「……まぁ、ミスティさんにも色々あるんですよぉ」
ラグナロクはなにやら知っている様子だったが、僕の口から言えることじゃないですけどねぇ、と彼は多くは語ろうとはしなかった。
だったら当人に、と思ったが、そちらは既に意識が雷切へと戻っていた。
「先輩、まさかあたしを先輩のパーティーに加えてくださるなんて、感激です! さあ、邪魔な二口女はいなくなりましたし、二人で一緒に早速対戦を始めましょう!」
「お前をパーティーに入れる予定なんてなかったんだよ。つーか二口女って……ちーちゃんはお前が追い出したようなもんだろ。それに二人だけで対戦ができるかよ」
だが、こうなってしまった以上、ミスティを一時的とはいえパーティーに入れざるを得ないのは確かだ。
面倒なことになった、と思いつつ雷切は対戦の準備を軽く済ませる。
「ミスティ。お前、メガ石は持ってるか?」
「もっちろんです! ボックスを出る時に、あの腐れ主人から押収してきました!」
「腐れ主人って……ライもそうだけど、まがいなりにもあたしたちのマスターになんて呼び方を……」
「あいつのことは今はどうでもいい。それよりも、ミスティがメガ石持ちなら……決まりか。おいスパコンピ、起きろ」
雷切は軽く思案してから、スパコンピを置いてある部屋の一角へと移動し、コンコンと、その蒼いボディを叩いた。
そして、それを合図に、スパコンピが起動する。
「72531281220」
「うわっ、スパコンピ!? なんでこんなとこにあるんですか?」
「この前ゴミ捨て場で拾った」
「へぇー、なっつかしいですねー。学生の頃の先輩を思い出します」
「スパコンピを見て俺を思い出すのはおかしくないか?」
と言うのも、ミスティには無駄であろうが。
ともあれ今回は、ちーちゃんとトンベリ、BOHパの攻めと守りの要が外れ、代わりにスパコンピとミスティを加え、ランダムマッチへと挑むこととなった。
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