二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 【ポケモン対戦小説】BOHパ対戦記録譚
- 日時: 2016/12/29 15:48
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
- 参照: https://www.youtube.com/watch?v=cSKjiY3FnrQ
はじめましての方は初めまして、そうでない方はこんにちは、モノクロです。
本作品は前作『バトル・オブ・ホウエン対戦記』に続く続編作品です。前作ネタなどもあると思いますが、今作だけでも内容は分かるように努めています。
前作の続編ということで、基本形式は前作と変わりませんが、今作はポケモン対戦をするにあたって、BOH——バトル・オブ・ホウエン縛りで対戦します。
バトル・オブ・ホウエン縛りというのは、前作品で題材にしたインターネット大会『Battle of Hoenn〜バトル・オブ・ホウエン』に出場可能なポケモンのみを使用する、という意味です。バトル・オブ・ホウエンに出場できるのは、ホウエン図鑑に登録されているポケモンのみ、作中に出て来るのもそれらのポケモンだけです。
では、次にこの作品の根本について説明しますと、言うなれば『ポケモン対戦小説』です。
対戦小説とはなにかと言いますと、『ゲームにおけるポケモン対戦そのもの』を題材とした作品で、動画投稿サイトに投稿される『ポケモン対戦実況動画』を小説風に書き起こしたものです。
なので本作には、種族値、努力値、個体値といった三値、ABCDSVといった略式記号、ガブ、バナ、クレセドラン、ゴキブロス、ドロポン、月光乱舞といった略称愛称蔑称などなどの、ポケモン廃人が多用する専門用語が多発します。できるだけ初心者の方にも分かるような作品を心掛けたいのですが、基本はある程度その手のことを知っている前提なので、ご了承ください。
作品の向上には全力を尽くすので、分かりにくい、もっとこうしてほしい、などの要望があればいくらでも申し付けてください。
そして、もしもこの作品で、対人戦やランダムマッチに興味を持った方がいたら幸いです。雑談板にモノクロの雑談スレ『DM第4相談室』というスレッドがあるので、よろしければお立ち寄りください。フレコ交換やフレ戦希望なども受け付けています。
勿論、普通に雑談したいという方も歓迎しますよ。
ちなみにこの映像板では同じものを題材としている作品に、モノクロも合作として参加している『俺と携帯獣のシンカ論』。舞台は違えど世界観を共有している、タクさん著の作品『ポケモンバトルM・EVO』があります。よろしければそちらもご覧ください。
というわけで、自称前置きが長いカキコユーザーのモノクロが、最後に注意書きを残して本編へと移ります。
※注意
・本作における対戦はほぼ“ノンフィクション”です。バトルビデオを見返して文字に起こしています(しんどい)。
・対戦相手の名前は改変して使用しています(物語の都合とプライバシーの問題に配慮)。
・対戦相手への誹謗中傷はおやめください(♂のメガクチートにじゃれつかせます)。
・ポケモンが喋ります(ポケモンしか出ないから仕方ない)。
・擬人化要素(イラストを描いて頂きました。許可を貰えたらそのうち紹介したいです)。
・茶番(前作より増量)。
・メタ発言(特に後語り)。
・にわか発言&下手くそプレイング(モノクロへの批判はOK!)。
・分かりにくい解説と文面(簡潔になるよう努めております)。
・BGMの種類増加(選出画面のURLのリンクからBGMに飛びます。種類はポケモンに限らず)。
・BOH縛り(詳細は冒頭の通り)。
・後語り担当は作者代理(名前はまだない)。
以上のことを留意して、どうぞ、モノクロのポケモンたちによるポケモン対戦を、お楽しみください——
オリキャラ募集的なものをしています。詳細は三戦目以降の後語りにて。投稿条件はこの作品が理解できること、ということで。
目次
零戦目「プロローグ」「を装ったあらすじです」
>>1
一戦目「確率世界」「と呼びたくなるほど理不尽です」
>>4 >>5 >>6 >>7 >>8 >>9 >>10
二戦目「ランダム対戦」「はレートもフリーも魔境です」
>>14 >>15 >>16 >>17 >>18 >>19
三戦目「永遠の宿敵」「は旧友にして戦友です」
>>20 >>21 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27 >>28 >>29
四戦目「ポケモンなしで対戦とは笑止千万」「ポケモンなら拾いました」
>>30 >>31 >>32 >>33 >>34 >>35 >>36 >>37 >>38
五戦目「後輩」「私のことですか?」「それは違うよ」
>>39 >>40 >>43 >>44 >>45 >>46 >>47 >>48 >>49
六戦目「先輩」「その中は百合の園でした」
>>52 >>53 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>63 >>76 >>77
七戦目「トンベリ君」「の憂鬱です」
>>91 >>94 >>95 >>96 >>97 >>101 >>104 >>105 >>106 >>107 >>108 >>109 >>110 >>111
バトル・オブ・ホウエンパーティー名簿一覧
>>78
タクさんより『BOHパ対戦記録譚』のタイトルロゴ(または表紙絵)のイラストを頂きました。
>>54
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- 茶番1 ( No.91 )
- 日時: 2015/05/05 01:17
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)
石窟中学。
セントラル・フィールドの一角にある、ポケモンのみが入学できる中等教育学校。
創設者は白黒だかモノクロだか、確かそんな感じのカラーリングな名前で、初代の学長でもあるのだが、就任した瞬間に辞職しているため、実質としては名誉学長のようなものになっている。
彼は一人の現役トレーナーでもあり、数多くのポケモンも有しているが、しかしこの学校には彼のポケモンしかいないかというと、そういうわけでもない。どんなポケモンでも平等に受け入れる、それが石窟中学だ。
だがそれでも、彼のポケモンが多く在籍していることも確かなのだが。
そして、ここにもまた、そんな創設者のポケモンがいた。
片や、溌剌としている無邪気そうな少女。
片や、陰気な雰囲気の根暗そうな少年。
それぞれ、少女はちーちゃん、少年はトンベリという名であった。
「また同じクラスだねっ、トンベリくん!」
「ん……そう、だね……ちーちゃん……」
本日は石窟中学の初登校日。そこでクラス分けも発表されたのだが、彼らは二年目も同じクラスであった。
だがこのクラス分けに、創設者の陰謀が働いていることは、言うまでもないだろう。
無垢なちーちゃんと違い、ひねくれており、年不相応に悪い意味で大人びたトンベリにはそれが分かる。そんな自分たちの主人のに呆れつつも、しかし今回は感謝するべきなのかもしれない。
トンベリはちーちゃんが好きだ。それが友人としてなのか、異性としてなのか、はたまた恩人としてなのか……それは彼にもまだ分からない。だが、彼女の近くにいるだけで嬉しい。その感情は本物だ。
「それに……オレは、ちーちゃんがいないと……ダメ、だからな……」
「本当にね。まったく、いっつも辛気くさい顔してるんだから」
「あ、あめちゃんだ。おはよう」
見ればそこには、一人の少女が立っていた。上下共に白いセーラー服に、おさげにした白っぽい水色の髪。そして、頭につけたオレンジ色の大きなリボンが目を引く、活発そうな女子生徒だ。
「……キャンディ……また、同じクラス……か……」
「不満?」
「別に……」
「そうだよ。だってあめちゃん、いんちょーさんだし」
少女の名はキャンディといった。だがその名前から、愛称としてあめちゃんと呼ばれ親しまれている。
その親しみの理由の一つが、ちーちゃんの言う“いんちょーさん”。つまり、委員長。
キャンディは去年、トンベリたちが一年の頃の学級委員だったのだ。
決して用量が良いわけでも、手際が良いわけでもないキャンディだが、面倒見は良く、とにかく人望に厚かった。去年の彼女のクラスメイトはすべからく彼女の後に付き、同学年で彼女を知らないものはいないくらいだ。
なので、多くの者はこの2年5組の学級委員は彼女を推薦することだろう。それだけの人気が彼女にはある。
もっとも、トンベリだけはそんな彼女を一クラスメイト程度としか思っておらず、学級委員なんて自分以外の誰かがやればいいと、適当に思っているのだが。それに彼は、キャンディの厄介な面をよく知っているのだから尚更だ。
今年も当然、学級委員をやるだろうと思われているキャンディは、ちーちゃんの言葉にこう答えた。
「まだ私がやるって決まってないし、分からないよ。ま、でも、立候補はするけどね。他にやりたい人がいなかったら私がやるし、いても私が任せられないと思ったら任せないし」
「……何様……」
トンベリは、ついぼそっと呟くと、それがキャンディに聞こえていたようで、
「なに? それじゃあトンベリがやってみる、学級委員」
「……そんなこと……言ってない……ただ、言い種が、偉そう……」
「人をまとめるんだから、ちょっとくらい偉そうでもいいのよ、ちょっとぐらいなら。それよりトンベリ、私は今年こそあんたを更生してみせるわ。あんた、いつまでもちーちゃんにべったりなんだから」
「うるさい……余計な、お世話……」
そう、これだ。トンベリにとって、キャンディの厄介なところは。
世話焼きなキャンディは、去年のトンベリを、その雰囲気から問題時と認識し、更生と称してやたら突っかかってくるのだ。
(まあ……ちーちゃんがいないと、まずクラスに、馴染めなかっただろうし……問題のない生徒、では、なかったか……)
それでも流石に鬱陶しさを感じてしまう。ちーちゃんとは仲がよいようだが。
「……また、面倒な一年に、なりそうだ……」
今度はキャンディにも聞こえないくらい小さく、陰気で憂鬱そうな溜息を吐きながら。
トンベリは憂いの表情で呟くのだった。
■■■
やはりというかなんというか。
その後の委員長決めでは当然のようにキャンディが推薦されて決定し、他にも、滞りがあったりなかったりで、自己紹介やら委員決めといった、学期初めの作業が終了していく。
そして、すべての作業が終わり、もう今日はすべきことがすべて終わった。そう思ったときだ。
教壇に立つ担任の口から、こんな言葉が放たれた。
「そうだ、言い忘れていたが、一週間後に新入生歓迎会がある」
新入生歓迎会、俗に新歓と略されるそれは、書いて字の如く、今年新しく入学してきた一年生に、歓迎の意を示すための小さなお祭りのような行事だ。
ただし学校行事ということもあり、インフォメーションやガイダンスのような側面もある。具体的には、学校紹介や授業紹介、部活紹介などがそれに当たる。
要は歓迎会と銘打って生徒たちをいい気にさせておいて、まとめてサラッと学校のことも説明してしまおうという、楽したい学校側の魂胆だ。説明会だけに時間を取ることを渋った結果だろう。
などとトンベリが思っていると、担任は続けた。
「お前たちも去年に見ただろうが、そこで新入生に、実際の対戦の様子を見せる」
担任の言葉に、教室内がざわめく。
あったなぁ、そんなの。という声や、あれを私たちでやるのかぁ、という感慨深いような声が、あちらこちらから聞こえる。
トンベリも去年のことを思い出した。上級生たちが実際にパーティーを組んで、対戦している様子を。それを入学したばかりの彼らは見せられたのだ。
この石窟中学は、特に対戦について力を注いでおり、それまであまり対戦とは縁のなかった新入生に、実際の対戦の様子を見せることで、分かりやすくその緊張感や面白さを伝え、焚きつけるのだ。
かくゆうトンベリも、当時は上級生たちの高度な対戦テクニックを見て、少なからず興奮したものだった。
「その新歓バトルマッチだが、各クラス、六人一組のパーティーを作ってもらう。誰か、参加したい者はいるか?」
そう担任が呼びかけると、教室はまたざわつく。去年のあの対戦模様は誰の目にも輝いて見えた。ゆえに、誰しもがそれに憧憬のような念を抱いている。
しかし、手を挙げる者はいない。お前出たら? などと言うような声は聞こえるが、誰も自分から立候補しようとしない。
なぜなら、彼らには自信がないから。入学してから一年間、対戦に必要な知識を身につけ、対戦におけるセオリー通りの立ち回りも教えられた。しかしそれは、すべて授業という枠組みの中だ。この中で、実戦を経験している者はほとんどいない。だからこそ、初めての“他人に見せる”対戦に、自信が持てない。
そんな時だ、誰かがこんなことを言ったのは。
「……トンベリが出たらいいんじゃね?」
その声は決して大きな声ではないが、なぜかざわつく教室内によく通り、皆の耳に届く。
当然、トンベリにも。
「は……? いや……ちょっと、待て……」
「そうだよ、トンベリが出ればいいじゃねーか」
「そうだよな、トンベリがいたな」
トンベリが否定の意見を言う前に、クラスメイトの面々が、口々にトンベリを推薦しだした。
「ここはトンベリに任せようぜ」
「あぁ、対戦の成績もいいしな、あいつ」
「それに、なんたって、あのバトル・オブ・ホウエンに出場したんだぜ。トンベリしかいねぇよ」
「あ、だったらちーちゃんも一緒に出たらいいんじゃないかな?」
「え、わたし?」
バトル・オブ・ホウエンというワードが出てきて、それに伴いちーちゃんの名前も挙がる。
新歓で対戦するなんて面倒だ、そんなものにオレは出ない……そのような意思表示をする前に、あれよあれよと勝手に話は進み、いつの間にかトンベリとちーちゃんがパーティー入りすることが決まっていた。
というか、クラス内がもはやそんな雰囲気で、今更やらないと言っても、許してくれそうになかった。
「む……もう時間だな。では、トンベリたち。後のことはお前たちに任せる。出場メンバーが決まったら、俺のところまで知らせてくれ。では、以上だ」
と、担任までトンベリが出場するということ前提で、最後の最後ですべてを投げた。
「……マジか……」
それから、無慈悲なチャイムが鳴り響き、本日の行程は終了したのだった。
- Re: 【ポケモン対戦小説】BOHパ対戦記録譚 ( No.92 )
- 日時: 2015/05/31 12:19
- 名前: マルガリータ ◆Ywb2SqBO2Q (ID: ak9ikTR3)
珍しく朝からの投稿です
みゆりさんが言っていた赤光という人物……一体どういう人物なのか、気になりますね。ラグナロクによれば、雷切さんによく似た人物らしいですが……
いつか、登場することを期待しておきましょう
そして、後語りで言っていた通り、次はトンベリの話ですね
あめちゃんことキャンディについてなんですが、キャンディの頭についているリボンが、どうしても鏡音リンを連想してしまうんですよね……。他にも頭にリボンつけている子は沢山いるのに……
そして、新歓バトルマッチでトンベリとちーちゃんが出ることになりましたが、残りの4匹は誰になるんでしょう?
そして、トドゼルガの設定が決まりました。一応プロフ載せておきますね
種族 トドゼルガ
NN アイシャ
性別 ♀
容姿 肩まで伸びた銀髪に金色の瞳。服装は、貴族を連想させるような青いドレスを着ている。前髪には、トドゼルガの青い鼻のような髪留めをつけている。身長168㎝
年齢 24
性格 プライドが高く、負けず嫌い。他のポケモンを見下すこともあるが、認める素直さも持つ。年少組であるちーちゃんやトンベリを「おちびさん」と呼ぶ。一人称は「私」、二人称は「あなた」
型 無限でも耐久でも、モノクロさんが使いやすい型で大丈夫です
サンボイ
「アイシャ、私の名前よ」
「その技を使うんだ。……脆い、脆すぎるわ。それじゃあ私を倒せない」
「……っ、くたばれ」
「私の足を引っ張らないで頂戴ね、おちびさん」
「へぇ……鈍足で小柄な割には、かなりの耐久力と火力があるなんて、やるじゃない、見直したわ」
……扱いづらそうな上に、♀でごめんなさい
何か不満な点がありましたら、削除や追加させても構いません
- Re: 【ポケモン対戦小説】BOHパ対戦記録譚 ( No.93 )
- 日時: 2015/05/05 11:12
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)
マルガリータさん
珍しく朝から起きているモノクロです。昨日、1時前に寝たことがきいているのでしょう。
赤光ですか……うん、そうですね。似ていると言っても、モノクロが言う似ているですから、ただ単純に容姿や性格が似ている、というわけではない、ということだけは言っておきます。
ここで赤光が誰か言ってもいいっちゃいいんですが、まあ、ミスリードというか、少し秘密にしていた方が面白そうなので、伏せておきます。
年少組は仕事の話が絡むと未成年という理由で外されることが多々あるので、いまいちストーリーに組み込みにくかったんですが……こうやって話を独立させてしまえば、彼らの出番ができ、学生という設定も生き、都合よく四体も新キャラを出せるという寸法です。
キャンディのリボンは大体そんな感じですかね。一応、イメージとしては、パラスに似ているとの声がある『月刊少女野崎くん』のメインヒロイン、佐倉千代ちゃんのリボンをさらに拡大した感じなんですが。
まあ、あくまでモノクロのイメージですし、人間の脳的に、自分の頭の中にある情報を引っ張って脳内でイメージ像を浮かべるものなので、第一印象は人それぞれです。イラストがあるわけでもないですしね。
新歓の面子は……まあ、一人くらいは予想できそうですが、残りの面子は次回以降のお楽しみですね。今回は茶番部分を長めに取っていますが、既に茶番も半分くらいは完成しているので、今日中にあと一、二話くらいは更新できそうです。
トドゼルガについても了解しました。これまた、モノクロがあまり作らないタイプのキャラクターですね。かえってこういうキャラの方が、オリキャラとしては嬉しいです。
それに、ちーちゃんやトンベリの年少組にも関わりある設定があるので、これは是非とも生かしたいところです。本当、彼らは本編での活躍が乏しいので。
個人的にトドゼルガは♀イメージが強いので、♀でOKですよ。型も自由で良いとのことなので、ありがたく使わせていただきます。早速、厳選しなくては。
ともあれ、ありがとうございました。
- 茶番2 ( No.94 )
- 日時: 2015/05/05 15:48
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)
「……なんで……こうなった……」
放課後。自分に新歓バトルマッチという責務を押しつけて帰宅するクラスメイトたちを呪いながら、トンベリは机に突っ伏す。
「だいじょうぶだよ、トンベリくん。トンベリくんならできるって」
「そうそう。バトル・オブ・ホウエンなんて大きな大会に出てるのは、このクラスではあんたとちーちゃんだけなんだから、自信を持ちなさい。私も参加してあげるから」
ちーちゃんとキャンディはそんなこと言うが、しかしトンベリは自分に自信がないわけではないのだ。バトル・オブ・ホウエンのこともそうだが、元々トンベリはレートパ出身。さらに日頃からある人物たちと共に、実戦という形で対戦している。その経験は、同じクラスの連中には負けない自信がある。
だが、彼は単純に出たくないだけだ。面倒くさいという怠惰、目立ちたくないという謙虚。そういった諸々から、純粋に出たくないだけ。
さらに言えば、こんなことを押しつけるクラスメイトたちの思惑通りに働くのも癪だ。
「……というか、キャンディ……なんか、やたら、乗り気……」
「そりゃそうよ。これはクラスの名誉にも関わることだし、パーティーはクラスの代表よ。私が出ないでどうするの」
「…………」
じゃあなんでさっき手を挙げなかったんだ、とトンベリは言おうと思ったが、それより早く、キャンディが次の言葉を紡いでいた。
「それに、これもあんたを更生させるきっかけになるかもしれないしね」
「……まだ、言ってる……」
別にトンベリは不良のつもりもクラスで孤立しているつもりもないのだが、一体彼女はトンベリのなにを更生させたいのだろう。
「さーて、そうと決まれば早速メンバーを集めないとね」
「えっと、トンベリくんと、わたしと、あめちゃんで三人だから、後三人だね」
「……アテは、あるのか……?」
「なくもないけど、新しいクラスが始まってすぐだし、私もクラスメイトの顔はまだ、全員把握してないね。知らない顔も多いし、とりあえずは知ってる顔からあたっていくしかないけど……」
と、キャンディはぐるりと教室を見渡す。
そこで、教室の隅っこの、一つの席を見つけると、そこへとスタスタと歩いていく。そして、
「フレイヤ。ちょっと、起きなさい、フレイヤ」
「んー……あと三世紀待ってー……」
「三世紀も待ってたら卒業してるわよ。ほら、寝ぼけてないで起きなさい、フレイヤ!」
少し語調を強め、怒鳴るように声をかけるキャンディ。
すると、机に突っ伏していた生徒はゆったりとした緩慢な動作で体を起こす。
「んー……あー、あめちゃん。おはよー」
「フレイヤ、あんたまた寝てたのね……いつから?」
「自己紹介は、したと思うよー」
「じゃあそれからすぐに寝落ちたのね。まったく、あんたの寝ぼすけも大概ね」
「えへへー、それほどでもー」
「いや、褒めてないから」
キャンディからそんなツッコミを入れられる、フレイヤと呼ばれた生徒。
寝ぼけたような緩い眼に、赤い髪を長いポニーテールにしている少女だ。目を引くのは、非常に細い、華奢な身体を包む赤い浴衣。背中には団扇まで差しており、どこぞの縁日にでも行ってきたかのような出で立ちをしている。
石窟中学はいくらか制服のバリエーションがあるのだが、その中に浴衣は含まれない。つまりフレイヤの格好は私服というわけだが、しかしこの学校の校則に、制服着用を義務づけるようなものはない。
ただ、“制服を着用することを推奨する”とあるだけだ。つまり私服が許されている。
それでも、中学生ということもあり、制服に憧れを持つ者も少なくない上、推奨されているということは制服を着ることを強要されるような風潮があるわけで、大抵の生徒は制服で学校生活を営んでいるのだが。
逆に言えば、そんな風潮でも気にしないくらいマイペースな性格をしているのだ、このフレイヤという少女は。去年もクラスメイトだったので、トンベリやちーちゃんもそれはよく知っている。
「で、なんの用かなー?」
「あんた、新歓バトルマッチって知ってる? ていうか先生の話聞いてた?」
「いんやー? 聞いてないけど、バトルマッチってあれでしょー? 新歓でバトるやつー、そんで新入生に見せるやつー」
「あぁ、覚えてたの」
「でー、それがどしたのー?」
机に頭を付けたまま、フレイヤはキャンディを見つめる。
「いやね、それにあんたも出てみないかって、誘いに来たのよ。どう、やってみない? ちーちゃんとトンベリもいるんだけど」
「いーよー」
「即答……」
二つ返事でOKが出た。仮にもクラスの名誉がかかっている(キャンディ談)のだから、もっとちゃんと考えるべきでは、と思ったが、そんなことを考えるフレイヤでもなかった。彼女はそんなちまちました性格はしていない。
「あめちゃんにー、ちーちゃんにー、ベリリンもいるんだよねー? お友達のためだし、あたしも一肌脱いじゃうよー」
「よし、じゃあ決まり!」
「……あと……二人……」
「一応、まだアテはあるよ。教室にはいないから、帰ったんだろうけど、まだ校内にいるかもしれない。さ、急ぐよ!」
流石は委員長、早速リーダーシップを発揮して、皆を先導する。
そんなキャンディを先頭に、四人は教室を出ようとするが、
「ちょーいー、待ってよー」
フレイヤが、ゆったりとした声で引き留める。
見れば、彼女はまだ机に突っ伏したままだ。
「……なに、してる……急げ……」
「って言ってもー、あたし一人じゃ立てないしー、誰か背負ってよー」
「あー、そういえばそうだった」
フレイヤは擬人化している間は、自分の足で立って歩かない。本人曰く、一人で立てないとのことだが、足に障害などがあるのか、それは分からない。
しかし、とにかく彼女は、一人で立ち歩けず、移動はもっぱら誰かに背負ってもらっている。やむを得ず自分で移動する時も、常に匍匐前進だ。
「仕方ないなー……トンベリ、ちょっとフレイヤ背負ってよ」
「は……? ……なんで、オレが……」
「いいじゃない、別に。男子でしょ」
「それ……関係ない……」
と抗議しようと思ったトンベリだが、急に身体がズンッと重くなる。何事かと首を回せば、そこには背中にしがみついたフレイヤがいた。
「……なに、してる……フレイヤ……」
「あめちゃんの許可が降りたからー、ベリリンに乗ってるのー」
「……降りろ……」
「やーだー」
真っ向から拒否された。
無理矢理引き剥がそうかとも思ったが、真後ろに引っ付かれているため、それもできない。
「さて、それじゃあ早く行くよ。急がないと帰っちゃう」
「がんばれ、トンベリくんっ」
「ベリリン、れっつごー」
口々にそんなことを言う女子三人。これらを相手に、トンベリは諦めたように、呟く。
「……不幸だ……」
- 茶番3 ( No.95 )
- 日時: 2015/05/05 20:56
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)
「あ、いたいた! おーい、電ー!」
「?」
キャンディのアテという人物は、昇降口近くの階段を降りるところにおり、存外早く見つかった。
「キャンディちゃんに、ちーちゃん。どうしたのですか?」
その人物は、くるりと振り返り、頭には疑問符を浮かべている。
それは一人の女子生徒。水兵のようなセーラー服に、黒のプリーツスカートという出で立ち。色が抜けたような色素の薄い髪を、後頭部のあたりでバレッタで留めている。
活発なキャンディやマイペースなフレイヤと違い、大人しそうな少女だ。
「実は、あんたに頼みたいことがあってね」
「頼みたいこと? なんですか?」
「それはねー……って、トンベリ! ちょっとあんた遅いよ!」
と、話の途中で、キャンディはずっと後ろを、フレイヤを背負いながら歩いているトンベリを、怒鳴るように叱咤する。
「……うる、さい……だったら、代われ……」
「ほらほらベリリン、ふぁいとーふぁいとー」
「……お前も……少しは、自分で……歩け……」
ぜいぜいと息を切らしながら足を進めるトンベリ。元々彼は体力も力もない、非力な少年なのだ。
フレイヤはかなり痩せているため軽かったが、しかしそれは、人ひとりにしては、という意味だ。背負って歩くには相当なおもりになることには変わりない。
「はぁ、はぁ……くそっ……なんで、オレが、こんな目に……」
「がんばれ、トンベリくんっ! もうちょっとだよ!」
ちーちゃんの声援を受けつつ、なんとか足を前に進ませて、ようやっとトンベリはキャンディたちの元まで辿り着く。
そして、目的らしい女子生徒を見て、ふと声を漏らした。
「……電……」
「あ、はいっ。えっと、大丈夫ですか……?」
電と呼ばれた女子生徒は、心配そうにトンベリの顔を覗き込む。
彼女も、去年クラスメイトであった生徒で、名を電という。
彼女には容姿によく似た双子がおり、去年、キャンディの委員長の座を争っていたりもしたのだが、自己紹介の時には彼女の名しか聞いていないので、恐らく別のクラスになったのだろう。
「……アテって、もしかして、こいつ……?」
「そうだけど、悪い?」
「別に……」
ただ、少し意外だっただけだ。
電のことは、去年からクラスメイトだったので、他人との交流が少ないトンベリでも、多少は知っているつもりだ。
彼女は大人しく、そして臆病で、引っ込み思案だ。トンベリ以上に目立つことを避けたがるので、新歓で一緒に出てくれ、だなんて頼みを聞いてくれるのだろうか。
「それで、キャンディちゃん、頼みというのは……?」
「あー、そうだった。えっとね、単刀直入に言うと、来週の新歓のバトルマッチ。その2組のパーティーメンバーになってほしいの」
「はぁ……え? えぇ!? わ、わたしがですか……!?」
電はたいそう驚いていた。いや、さっき教室でトンベリが押しつけられていたのだから、察しろよ、と思う。
ただ、自分に自信がないということなら、電はその最もたる人物かもしれない。だからこそ、自分が出るなんてあり得ないと、自分で無意識のうちに刷り込んでいたのかもしれない。
そう考えると、この驚きも納得できなくもない。
「面子が足らないのよ。ね、お願い」
「で、でも……わたしじゃなくて、も、もっと他に、ふさわしい人がいいんじゃ……わたしんんかじゃ、その、ダメなんじゃ……」
「そんなことないよっ、いなずまちゃんならだいじょうぶだよ!」
「そだよー、対戦学の成績だって悪くないしさー」
「本番まであんまり時間もないし、急いでメンバーを集めなきゃいけないの。あんたのことは去年から知ってるし、あんたのことを見込んでのことなんだ。だからさ、お願い!」
必死で懇願する三人。その中で一人、トンベリはなんと言ったらいいのか分からず、佇んでいる。
男女の差というか、なんとも越え難い性別の壁。人によっては簡単に越えてしまえるものだが、越えられない人には非常に高い壁となる。トンベリは後者だった。
さらに、トンベリ自身、理由は違えど新歓には出たくないと思っている側なので、メンバー入りすることに気が引ける電の気持ちは多少なりとも理解していた。
しかし、
「……わ、わたしで、本当にいいのですか……?」
あまりに必死だったからか、それともただ単に断りきれなかっただけなのか、電は少しだけ、参加に前向きな意志を見せる。
こうなってしまったら、もはや相手の思うつぼだ。
「勿論! 電しかいないって!」
「一緒に出ようよ、いなずまちゃんっ!」
「できるできる、君ならできるよー」
と、三人がおだてたこともあり、最初は消極的だった電も、
「えと、それじゃあ……よろしく、お願いするのです」
メンバーへと、参加することになったのだ。
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