二次創作小説(映像)※倉庫ログ

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

【ポケモン対戦小説】BOHパ対戦記録譚
日時: 2016/12/29 15:48
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
参照: https://www.youtube.com/watch?v=cSKjiY3FnrQ

 はじめましての方は初めまして、そうでない方はこんにちは、モノクロです。
 本作品は前作『バトル・オブ・ホウエン対戦記』に続く続編作品です。前作ネタなどもあると思いますが、今作だけでも内容は分かるように努めています。
 前作の続編ということで、基本形式は前作と変わりませんが、今作はポケモン対戦をするにあたって、BOH——バトル・オブ・ホウエン縛りで対戦します。
 バトル・オブ・ホウエン縛りというのは、前作品で題材にしたインターネット大会『Battle of Hoenn〜バトル・オブ・ホウエン』に出場可能なポケモンのみを使用する、という意味です。バトル・オブ・ホウエンに出場できるのは、ホウエン図鑑に登録されているポケモンのみ、作中に出て来るのもそれらのポケモンだけです。

 では、次にこの作品の根本について説明しますと、言うなれば『ポケモン対戦小説』です。
 対戦小説とはなにかと言いますと、『ゲームにおけるポケモン対戦そのもの』を題材とした作品で、動画投稿サイトに投稿される『ポケモン対戦実況動画』を小説風に書き起こしたものです。
 なので本作には、種族値、努力値、個体値といった三値、ABCDSVといった略式記号、ガブ、バナ、クレセドラン、ゴキブロス、ドロポン、月光乱舞といった略称愛称蔑称などなどの、ポケモン廃人が多用する専門用語が多発します。できるだけ初心者の方にも分かるような作品を心掛けたいのですが、基本はある程度その手のことを知っている前提なので、ご了承ください。
 作品の向上には全力を尽くすので、分かりにくい、もっとこうしてほしい、などの要望があればいくらでも申し付けてください。

 そして、もしもこの作品で、対人戦やランダムマッチに興味を持った方がいたら幸いです。雑談板にモノクロの雑談スレ『DM第4相談室』というスレッドがあるので、よろしければお立ち寄りください。フレコ交換やフレ戦希望なども受け付けています。
 勿論、普通に雑談したいという方も歓迎しますよ。

 ちなみにこの映像板では同じものを題材としている作品に、モノクロも合作として参加している『俺と携帯獣のシンカ論』。舞台は違えど世界観を共有している、タクさん著の作品『ポケモンバトルM・EVO』があります。よろしければそちらもご覧ください。

 というわけで、自称前置きが長いカキコユーザーのモノクロが、最後に注意書きを残して本編へと移ります。


※注意
・本作における対戦はほぼ“ノンフィクション”です。バトルビデオを見返して文字に起こしています(しんどい)。
・対戦相手の名前は改変して使用しています(物語の都合とプライバシーの問題に配慮)。
・対戦相手への誹謗中傷はおやめください(♂のメガクチートにじゃれつかせます)。
・ポケモンが喋ります(ポケモンしか出ないから仕方ない)。
・擬人化要素(イラストを描いて頂きました。許可を貰えたらそのうち紹介したいです)。
・茶番(前作より増量)。
・メタ発言(特に後語り)。
・にわか発言&下手くそプレイング(モノクロへの批判はOK!)。
・分かりにくい解説と文面(簡潔になるよう努めております)。
・BGMの種類増加(選出画面のURLのリンクからBGMに飛びます。種類はポケモンに限らず)。
・BOH縛り(詳細は冒頭の通り)。
・後語り担当は作者代理(名前はまだない)。



 以上のことを留意して、どうぞ、モノクロのポケモンたちによるポケモン対戦を、お楽しみください——



 オリキャラ募集的なものをしています。詳細は三戦目以降の後語りにて。投稿条件はこの作品が理解できること、ということで。



目次

零戦目「プロローグ」「を装ったあらすじです」
>>1

一戦目「確率世界」「と呼びたくなるほど理不尽です」
>>4 >>5 >>6 >>7 >>8 >>9 >>10

二戦目「ランダム対戦」「はレートもフリーも魔境です」
>>14 >>15 >>16 >>17 >>18 >>19

三戦目「永遠の宿敵」「は旧友にして戦友です」
>>20 >>21 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27 >>28 >>29

四戦目「ポケモンなしで対戦とは笑止千万」「ポケモンなら拾いました」
>>30 >>31 >>32 >>33 >>34 >>35 >>36 >>37 >>38

五戦目「後輩」「私のことですか?」「それは違うよ」
>>39 >>40 >>43 >>44 >>45 >>46 >>47 >>48 >>49

六戦目「先輩」「その中は百合の園でした」
>>52 >>53 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>63 >>76 >>77

七戦目「トンベリ君」「の憂鬱です」
>>91 >>94 >>95 >>96 >>97 >>101 >>104 >>105 >>106 >>107 >>108 >>109 >>110 >>111


バトル・オブ・ホウエンパーティー名簿一覧
>>78



タクさんより『BOHパ対戦記録譚』のタイトルロゴ(または表紙絵)のイラストを頂きました。
>>54

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23



茶番2 ( No.31 )
日時: 2015/03/24 14:12
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)

 そんなやり取りがあった後日。
 雷切たちは、雷切が今やスクラップと化したパソコンを拾ったというゴミ捨て場へと向かっていた。
 しかし、そこにちーちゃんの姿はない

「なあ、ずっと聞きたかったんだが、ちーちゃんはどうしたんだよ、トンベリ」
「……補習……小テスト、の……」
「学生は大変だなぁ。お前はなかったのか?」
「……ギリギリ……」
「トンベリくーん、ちーちゃん待っててあげなかったのぉ? かわいそー」
「……先に、行ってくれって……言ってたから……待ったら、待ったで……ちーちゃん、申し訳、なさそうに、するし……」
「そんなちーちゃんは見たくない! って? かっくいー! さっすがトンベリ君!」
「……焼くぞ……!」
「お? おねーさんとやるかね? ゆっきゆきにしてやんよ」

 トンベリが指先から鬼火を灯し始め、雪姫が(なぜか)徒手空拳の構えを取った辺りで、やっとココロからの制止が入った。

「はいはい、昨日も言ったけどやめなさい。ゴーストタイプどうし、もっと仲良くてもいいんじゃないかしら……」
「別にタイプが同じからって気が合うとは限らねーだろ。特にゴーストタイプは、曲者揃いの個性派ばっかだからな」
「でも、同じパーティーなんだし、いざこざはよしてほしいわ……」

 これ以上悩みの種は増やさないでくれ、とでも言わんばかりにココロは溜息をつく。
 最近になってようやく雷切の賭け事がなりを潜めてきたというのに、また新しい問題が起こっては敵わない。

「……っと、着いたぜ、ここだ」

 しばらく歩いていると、雷切が足を止める。
 見ればその先には、大量のスクラップの山が連なった——ゴミ捨て場があった。
 特に立ち入りが制限されているようではなかったので、適当な策を飛び越えて敷地に入る。

「ゴミ捨て場というか、スクラップ置き場……?」
「そう言った方が正しいかもな」

 ゴミ捨て場と言っても、そこに捨てられているゴミはただのゴミではない。扉が外れた廃車、画面の割れたテレビ、ホースが切断された掃除機——その他、屑鉄なども大量に積みあがった、スクラップの山脈だ。

「こういう場所だから、漁ってみると案外おもしれーもんが見つかるんだぜ。ガキの頃は結構ここで遊んでたなぁ」

 と、過去を懐かしむのもそこそこに。
 このゴミ捨て場で、まだ使えるパソコンがないか、捜索が始まった。

「と言っても、当然ほとんどが壊れてるわよね……使えるパソコンなんて見つかるかしら?」
「どっかにゃあんだろ。とりあえず探せ探せ」
「……適当な……」

 実際、アテがあるとは言ったが、こんなスクラップ山脈からパソコン一つを掘り当てるだけでも相当な重労働だ。
 今日一日で終わるわけもない。下手すれば、何週間もここに通ってパソコンを探すことになるかもしれない。
 そんなことをするくらいなら、いっそ買った方がマシだと、ココロやトンベリなんかは思う。

「洗濯機、電磁レンジ、芝刈り機、冷蔵庫、扇風機——この辺にゃねーかねぇ。もっと奥か?」
「お、おぉ!? 雷切さーん!」
「なんだよラグナ、キモイ声上げてんじゃねーぞ」
「そんなことより、これ見てくださいよぉ! 凄いもの見つけましたよぉ!」
「あぁ? 凄いもの……? あんだよ」

 ラグナロクがキモイと言われても、そんなことと言い捨てるほどの掘り出し物が見つかったのだろうか。
 雷切はどうでもいいものだったらリフストでぶっ飛ばしてやろう、などと考えながら、屑鉄の山を飛び越えてラグナロクの下へと駆け寄る。
 そこだけは、スクラップの山が低くなっており、また屑鉄も脇へと寄せられており、少しだけ開けていた。まるで誰かが掃除でもしたかのように。
 そしてその中央に鎮座する、蒼色の鉄塊。脚のようなものが四本突き出しており、非常に奇怪な形をしている。
 だが雷切は、それを一目見た瞬間、その眼を見開いた。

「こ、これは……! でかしたぞラグナ!」
「HAHAHA! まさかこんなところで見つけられるとは思いませんでしたよぉ!」
「あぁ俺もだ。懐かしいな、まさかこんなとこに捨てられてたとは……!」

 感極まったような二人。他の三人も、そんな二人へと駆け寄ってくる。

「どうしたの? なにか見つかった?」
「おうよ、すげー掘り出しもんだぜ、こいつは」

 一見すると、少し変わったただの鉄塊にしか見えない。
 雪姫がペチペチと叩いてみるも、反応はなかった。

「……なに、この、鉄の塊……」
「こいつはポケモンだ」
「え? ポケモン? これが? その辺のスクラップとあまり変わらないように見えるけど……というか擬人化とかじゃないの?」
「そうだな。こいつは俺らが学生の頃、学校内のネットワークを管理してたメインサーバープログラムだ。とにかく高性能でな。情報処理能力、演算能力がスパコン並で、自律思考と周囲の環境や情報を吸収して随時最新のプログラムをインストールする高度なAIは、ほとんど生物としての意志と遜色ない。さらに頑強なボディによって単独で戦闘もできる。とにかく多機能なコンピューターなんだぜ」
「それ、コンピューター、違う」
「正式名称はスーパーコンピューターMX/CPU201番型つって、俺らは通称としてスパコンピって呼んでたな。懐かしいぜ」
「ポケモン……なのかしら……?」

 などと言いながら懐かしむ雷切だが、懐かしむだけではない。
 そんな高性能なコンピューターだ。今の雷切たちにとっては、喉から両手両足が出るほどに欲しい物体である。

「こいつを適当なキーボードに接続して使えば、あっと言う間に超高性能PCの出来上がりだ」
「……ポケモン、なのよね……?」
「まあ多少の調整は必要だろうがな。自律してバトれるから、ダメ計プログラムも残ってるだろうし、いいもん拾ったぜ」
「でも、なんでそんな高性能なスパコンちゃんが落ちてたのかな? こんなの捨てるの勿体なくない?」

 雪姫の言うことももっともだ。
 それほど高性能なコンピューターなら、まだまだ使えそうなものではあるが。

「あー……さっきは色々褒めそやしたが、それでもこの超高度な情報社会だと、こいつよりも高性能なコンピューターはいくらでもあるんだよ。それにこいつはポケモンだからな。第六世代で逆風が来て、機能を維持し続けるのも大変らしいぜ」
「……機能を……維持……?」
「定期的にバトらせる必要があるんだ。そうじゃねーと、バトル用の思考プログラムが腐っちまって、他のプログラムにも影響を及ぼすんだと」
「……コンピューター、なのよね……? いや、ポケモン……?」
「ま、常日頃からバトッてる俺らにゃ枷になんねーし、なによりその程度でこいつが手に入るなら安いもんだ。ラグナ、こいつを運べ」
「了解ですよぉ!」

 と、サラッと荷物持ちにされるラグナだが、そんなことが気にならないくらいに彼らはハイだった。
 しかしそんな高揚する彼らに、立ちふさがる集団がいる。
 ラグナロクがスパコンピを持ち上げようとした、その時だ。

茶番3 ( No.32 )
日時: 2015/03/24 17:00
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)

「ちょっと待ったーっ!」
「あ?」

 遠くから怒鳴り声が聞こえてくる。
 そして、ダダダダッ! と複数人の足音がそれに続き、雷切たちの前に現れた。

「おまえら! そいつをどうする気だ!?」
「……はぁ?」
「そいつをどうする気だって聞いてるんだよ! いいから答えろよ!」

 凄い勢いで怒鳴るが、しかし気迫というものはいまいち感じれらない。
 それもそのはず、怒鳴り散らしているのは、雷切の半分くらいしか生きていないだろう、小さな子供だったのだから。
 年齢で言えば、トンベリと同じか、それよりも小さいくらいだろうか。

「んだお前ら。ここはガキの来る場所じゃねーぞ。さっさと家に帰んな」
「あなた子供の頃この場所を遊び場にしてたって言ってたじゃない」
「ここはボクたちの縄張りだ! お前こそ帰れ! というかボクらはガキじゃない!」
「縄張りなぁ……」

 当然だが、このゴミ捨て場は誰かの私有地というわけではない。強いて言うなら運営の管理場所だろう。
 なので縄張りと言って、自分たちの遊び場にしているにすぎないということは、すぐに理解できた。

「やっぱガキじゃねーか」
「だからガキじゃないって言ってるだろ! ボクたちは秘密団なんだぞ!」
「秘密団?」
「そうだ、スーパー秘密団だ。ボクはその団長だ。カッコイイだろ?」
「……名前……ダサ……」
「やっぱガキの遊びか……」

 自分たちの集団に名前を付けて、ごっこ遊びをしたくなるような年頃なのだろう。ガキじゃないなんて口では言っても、年相応の子供に違いはない。
 ただ、いつまでもそんなことを言っても、向こうは否定するだけでなにも進まない。なので雷切は、子供相手に話が通じるか疑問に思いつつも、こちらから問いかけてみることにした。

「で、そのスーパー秘密団? の、団長、だったか? が、なんの用だよ」
「あ、そうだった……おまえら! それをどこに持っていく気だったんだよ!」

 それ、というのは、団長というリーダー格らしい少年が指差す物体——ラグナロクが背負っている、スパコンピのことだろう。

「どこにって、家に持って帰るだけだが」
「な……そ、そんなの許すわけないだろ!」
「いや別にお前らの許しを請うつもりは毛頭ないが」
「とにかく! そいつを持っていくことは許さないぞ! そいつはボクらの仲間だ」
「……? ……あぁ……」

 最初、このガキなに言ってんだ、頭イカレてんのか? などと思っていたが、なんとなく理解できた。 
 そして、まずはその確認をしてみる。

「お前……いや、お前ら、ポケモンか?」
「っ! わ、分かるのか……?」
「こいつを仲間っつーならな。同じポケモンだってことだろ」
「ってことは、まさかおまえらも……」
「まーな。つっても俺の場合は、十年前からこいつについては知ってたけどな」

 スパコンピは、言ってしまえば見た目はただの鉄塊でしかない。それを仲間などと呼ぶということは、スパコンピがただの物体ではない、ポケモンであると見抜いている証拠。
 こんな場所ではポケモンの姿になることはそうないはずだろうし、普通の人間が気づくことは難しいはずだが、同じポケモンであれば見抜くことも難しくはない。

「だが、それはそれだ。こいつはお前らみたいなガキには過ぎたもんだ」
「で、でもそいつはボクらの仲間で、ボクらと同じスーパー秘密団の団員だ!」
「知るか。俺はゴミ捨て場でこいつを拾った。それだけだ。お前らの事情なんて知らん」
「うぅ……」
「……ライ、大人げないわね……」

 とはいえ雷切も、こんな高性能コンピューターを、子供への温情なんぞで手放すわけにはいかない。
 そもそも、彼に子供への気遣いを期待する方が無駄であるとも言える。

「んじゃ、俺らはもう帰るわ。行くぞ」
「え、い、いいんですかぁ? あの子たち、凄く泣きそうなんですけどぉ……」
「知るかよ。俺らにも俺らのやることがあんだろうが。あんなガキの遊びに構ってられるかよ」
「……まあ、同意……馬鹿正直に、付き合うこと、ない……所詮、子供……」
「自分だって子供のくせに、背伸びしちゃってー」

 と、スパコンピを持って帰ろうとする雷切一行。
 しかし今まで噛み付いていた子供らが、そんなことを許すはずもなく、

「ま、待て!」
「あん?」

 再び、雷切たちの前に立ち塞がった。

「こうなったら……みんな! ボクらの団員を取り返すんだ!」
「はぁ?」
「おい、おまえ! ボクらと勝負しろ! それでボクらが勝ったら、そいつを返してもらう!」

 ビシッと、宣戦布告する団長という少年。
 口で言い負かされたからか、今度は実力行使に出たようだ。

「勝負ってなぁ……俺らとまともにやりあって勝てると思ってんのか? それ以前に、その勝負を受けて、俺らにメリットはあるのか?」
「うるさいうるさい! とにかく勝負だ! 受けて立て!」
「日本語がおかしいな……」
「いいんじゃないですかぁ、受けても……そうでもしないと、この子たち、収まりそうにありませんよぉ」
「そうだなぁ……」

 雷切は思案する。こんな子供に負けるとは思わないが、わざわざこんなお遊び集団に付き合うのも癪である。
 とはいえラグナロクの言うように、ここで勝負を受ければ、大人しく引き下がるかもしれない。突っぱねたところで、何度も突っかかってくるはずなので、ここは引き受けた方がいいのだろう。

「……分かった。いいぜ、その勝負とやら、受けてやっても」
「! な、なら——」
「だがこっちも条件は出させてもらうぜ。俺らが勝ったらこいつの所有権は俺らにある、お前らはもう突っかかってくんなよ。それと」

 雷切はラグナロクの後ろに回り、彼が背負っているスパコンピを下させる。
 そして、その蒼色のボディを軽く叩いた。

「おい、スパコンピ。起きろ」

 ——ウィィン

 そんな起動音染みた音を発し、スパコンピのボディが変形した。
 四足は広がり、その先からは爪が出て、今まで閉じていた瞳は開眼する。
 その姿は、今までの鉄塊ではない。正真正銘の、ポケモンの姿だった。

「792309183」
「え、なに? なにか喋った……?」
「プログラミング言語みてーなもんだ、気にすんな。それより」

 雷切は子供たちに向き直ると、ポケモンの姿へと変形して起動したスパコンピを指し、

「俺らは五人、そしてお前らは六人——この数の差はアンフェアだよなぁ。つーわけで、こいつを穴埋めにさせてもらうぜ」
「な……なんて卑怯な……!」
「五対六で挑む方が卑怯じゃねーのか? それと、そうじゃねーと勝てねーか?」
「う、うるさい! そんなわけないだろ!」
「……子供相手に、挑発……大人げ、ない……」

 なにはともあれ、雷切側はスパコンピを加えて六体。
 数の上では、これで平等になった。

選出画面 ( No.33 )
日時: 2015/03/25 01:52
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)
参照: https://www.youtube.com/watch?v=u5XQB7uE1To

「さて、次はルールだが……見せ合いの63、50フラット、一般的なランダムマッチのルールでいいか」
「あ、あぁ……いいぞ。どんなルールでもボクたちは負けない!」
「んじゃ、今度は互いに選出を決めようじゃねーか。つっても、俺らはもう決まってるけどな」
「な……!」
「ほら、お前らもさっさと決めろよ。少しくらいなら時間延長して待ってやっててもいいぜ?」
「く、う、うるさいぞ! すぐに決めるから待ってろ!」

 と、雷切の安い挑発にほいほい乗る少年は、他の団員と集まって作戦会議をしている。
 その間、雷切も仲間たちに選出内容について伝えることとした。

「……ライ、流石に大人げなさが過ぎるんじゃ……」
「構うかよ。あーいうガキには、ちっとばかし痛い目を見て、大人の厳しさを教えてやらねーとな」
「うわー、すっごい悪人相! 今回の私たちはヒールだったのかな?」
「んで俺らの選出だが、先発にラグナ、裏がココロとスパコンピだ」
「どういう基準で決めたの、それは」
「奴らの面子だ」

 そう言って、雷切は円陣を組んで作戦会議をしているスーパー秘密団を指差す。

「あのリーダーのガキはミミロップ、他はゲッコウガ、ライボルト、シザリガー、オオスバメ、サイドンだな」
「……そんなこと、分かる……のか……?」
「まーな。この前、グレンも俺らの面子を擬人化した姿のまま言い当てたろ。ある程度経験があると、擬人化した姿の特徴で原型のポケモンが大体わかるんだ」

 とはいえ、最初から相手が擬人化の姿だと認識しなければ、まずそうだと思わないのだが。
 それはそれとして相手の面子から、雷切が選出について考察を述べる。

「まず、相手のパーティー的にラグナは刺さってる。どう足掻いても相手できないのは特殊ゲッコウガとめざ草ライボくらいだが、そのケアとしてココロを加えた」
「両刀ゲッコウガだったらどうするのよ。あたしじゃダストシュートを受けた瞬間に終わりよ」
「両刀の場合は、草結びを切ってる可能性が高い。だったらラグナで相手できる」
「仮に草結びがあったらどうするのー?」
「そのためのスパコンピだ。スパコンピには突撃チョッキのプログラムをインストールさせた。ASベースの両刀ゲッコウガなら打ち合える。加えて、重めなミミロップにも強いしな」

 なお他の面子についてだが、雷切は上から殴られて死ぬ相手が多く、トンベリは役割対象がシザリガーとサイドンのみ、雪姫も電磁波が通じない相手が多いため動きにくいと判断した。

「つってもこの選出だと、シザリガーがスカーフだったら辛いが、そこはなんとかするしかねーな」

 シザリガーならば、龍の舞を積むアタッカーが多いはず。というかそうであると信じたい。
 正直、マイナー気味なポケモンなのでどんな型が来てもおかしくないというのが実情だ。
 しかし素がかなり鈍足なうえ、アクアジェットを取得したのでスカーフの線は薄いはず。シザリガーがスカーフである可能性と、そこまで刺さっていない雷切やトンベリを組み込むメリットを天秤に掛け、その結果として彼らを切ったのだ。
 これでスカーフだったもう泣くしかない。

「おい! 決まったぞ! 早く始めるぞ!」
「おっと、作戦会議終了か。んじゃ行ってこい、お前ら」
「子供相手に戦わなくちゃいけないのよね……流石に、少し気が引けるわね」
「HAHAHA! ……と、僕も笑ってられませんよぉ。なにか上手い解決策はないんですかねぇ……」
「145050827398」

 と、この対戦について賛否両論はあるものの。
 スパコンピを賭けた、雷切たちとスーパー秘密団との決闘が、始まるのだった。

対戦パート1 ( No.34 )
日時: 2015/03/25 02:45
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)

【スーパー秘密団の団員たちが勝負を仕掛けてきた!】

【行け、ラグラージ!】


「さて、対戦開始だな。先発はとりあえず幅広く戦えるラグナからだ」
「……レートでも、いつも、思うんだけど……」
「なんだトンベリ」
「……ラグナロク、先発の時って……——」


【団員たちはゲッコウガを繰り出した!】


 トンベリが最後まで言い終わる前に、相手のポケモンが飛び出した。

「……大抵、こうなる……」

 先発ラグラージは読まれやすいのか、こちらがラグナロクを先発にすると、大抵相手はゲッコウガを出してくるのだ。
 単純に、こちらのパーティーに刺さっている、という理由かもしれないが、こういう風に出て来るゲッコウガの多くは、草結びを持っている。

「……ま、別に構いやしねーさ。このくらいは予想の範疇。一旦ココロに退いて、様子を見るぞ」
「了解ですよぉ! ココロさん、頼みました!」
「はいはい。素直に特殊型だったらいいんだけどねぇ……」


【ラグラージ、交代! 戻れ!】

【行け! サーナイト!】

【サーナイトのトレース。サーナイトはゲッコウガの変幻自在をトレースした】


 草結び警戒でココロを繰り出し、変幻自在をトレース。
 サブウェポンの火力が上がるのはいいが、メインウェポン二つしか攻撃技がないこともよくあるココロにとっては、そこまで嬉しい特典ではなかったりする。
 それより問題はここでの相手の行動だ。

「特殊型なら、ここで草結びを撃つはず。テンプレなAS両刀なら、それ以外の技だろうな」
「……つまり、草結びなら、ココロで相手……違うなら、ラグナロクに、戻す……って、こと……?」
「その通りだ」

 とはいえAS両刀でも草結びを持っている可能性はあるので、過信は禁物だが、ある程度決め打ちしなければまともに相手はできない。
 しかしこの時の相手の行動は、雷切の予想外のものであった。

「よーし、行け! 団員№2、『闇の暗殺者ダークアサシン』!」
「了解でござる!」


【ゲッコウガのグロウパンチ!】


「……グロパン……」
「これは……物理型……?」
「そりゃそうだろうが、それよりなんだよ今の。なんとかアサシンって」
「コードネームだ。カッコイイだろ!」
「……中二……痛い……」
「中二じゃないもん! あ、違う。中二じゃないでござる」
「キャラぶれまくってんじゃねーか」

 ともあれ相手のゲッコウガは、予想外にも物理型。相手は物理気質なアタッカーが多いので、特殊型の線が濃厚だと思っていたが、虚を突かれてしまった。


【ゲッコウガの変幻自在。ゲッコウガは格闘タイプになった】

【効果はいまひとつのようだ……】
[サーナイトHP:132/143]

【ゲッコウガの攻撃が上がった!】


 しかしそれでも、ココロへのダメージは微々たるもの。攻撃が上がろうがそこまで大きな痛手ではないが、

「物理型ってことは、持ってるわよね。ダストシュート」
「物理ベースのゲッコウガの最大火力技だからな。持ってるはずだろうし、持ってるならここで撃ってくるはずだ。交代続きだが、退け、ココロ」
「言われるまでもないわ、あたしだて物理ゲッコウガなんて相手したくないもの。それより退き先は? ラグでいいのかしら」
「いや、ゴミ箱が来るってんなら、こいつだ。行け、久々のバトルだぜ! スパコンピ!」


【サーナイト、交代!】

【出て来い、メタグロス!】



『Information
 スパコンピ(DM:メタグロス)

 性能:高度な演算能力、情報処理速度に加え、思念を飛ばすことでインターネットに接続できる。自然生物となんら変わりないAIを持ち、単独で戦闘も可能。

 性質:高い攻撃力と耐久力で相手を殴っていくスタイル。鋼技の耐性弱体化による弱点増加が逆風だが、メガシンカ取得が追い風。

 攻撃性能[A] 防御性能[B] 機動性能[C] 多様性[B]

 注意:高温や霊気の当たる場所は避けてください。また激しく揺らしたり、悪意を持って使用しないでください。戦闘不能の原因になります。
                        End』



 ココロの退き先として繰り出されたのは、スパコンピことメタグロス。
 ダストシュートが来るならば、鋼タイプで無効化できる。

「おい、『闇の暗殺者ダークアサシン』! ここはあれを使う時だ!」
「え、えー……あれを使うの?」
「そうだ! ここで使うしかないんだ!」
「で、でも失くしちゃったら……」
「いいから! さあ、はやく!」
「うぅ、しかたないなぁ……」

 ……そう、ダストシュートならば。


【ゲッコウガの投げつける!】


「は……?」
「……投げつける……」
「凄い技覚えてるわね……あり得ないほどでもないけど……」

 物理ゲッコウガが稀に持っているらしい技、投げつける。
 手持ちの道具を消費して、その道具に対応した威力の攻撃と追加効果を与える技だ。

「だが問題は、ここで投げつけるを使われたことだな。ダストシュートを持ってないってことはねーだろうが、交換を読まれたのか……?」


【ゲッコウガの変幻自在。ゲッコウガは悪タイプになった】


 第六世代に入って、鋼タイプの耐性が弱体化したため、メタグロスは悪技も弱点となってしまった。
 なので、この一撃は効果抜群。加えて相手はグロウパンチで攻撃力を上げているのだ。耐久力の高いメタグロスと言えど、ただで得済むはずが、


【ゲッコウガは王者の印を投げつけた!】

【効果は抜群だ!】
[メタグロスHP:123/183]


「よっわ」
「……攻撃一段階上昇、タイプ一致、抜群攻撃……で、これ……」
「まぁ、威力30だしなぁ……印を投げて怯ませて、安全にアクロバットしようとか、そんなこと考えてんだろ」
「あぁ……おれの宝物が……」
「あとでひろえばいいだろ!」
「つーかこいつら、もうキャラを取り繕う気もねーな」

 さて、では次の行動を考えよう。
 相手は物理ゲッコウガで、技はグロウパンチと投げつけるが割れているが、投げつけるがあるならアクロバットもあるだろう。

「あと一つは、ダストシュートか岩雪崩、冷凍パンチあたりかね……?」
「……滝登り、とか、辻斬り、とかは……」
「変幻自在のゲッコウガは、わざわざ水技を持つ意義が薄い。悪技も、低威力とはいえ投げつけるがある。それなら高威力の技や、範囲の広い岩技や氷技が欲しいはずだ」

 特性ですべての技がタイプ一致になるのだから、自分の元のタイプに合わせる必要がゲッコウガにはない。なので自分のタイプ以上に、純粋な技範囲を重視できる。
 そう考えれば、残りの技はやはり先ほど雷切が挙げた辺りのはず。そして、そんな技構成であれば、スパコンピで打ち合える。

「よし、決めたぜ。スパコンピ、あの似非忍者をぶん殴れ」
「4249362」
「相変わらずなに言ってるのか分からないけど、ぶん殴れって乱暴な……相手は子供なんだから、加減してよね」
「子供以前にポケモンだ。一発殴ったくらいじゃ問題ねーよ」
「なんて無茶苦茶な……」


【ゲッコウガのグロウパンチ!】


 相手のゲッコウガはグロウパンチ。やはり、こちらに有効打はないようだ。

「いけ、『闇の暗殺者ダークアサシン』! ボクらの仲間を取り戻すんだ!」
「いやでも、おれじゃあいつには勝てない……」
「いいからいくんだよ! ほら、はやく!」
「うぅ……」

 と、無理やり攻撃させられる『闇の暗殺者ダークアサシン』だが、


【ゲッコウガの変幻自在。ゲッコウガは格闘タイプになった】
[メタグロスHP:81/183]


「かたい! 痛い! やっぱむりだよ!」
「そらそうだ。スパコンピの強度を舐めんなよ」
「それでも体力が半分切っちゃったんだけどねー」

 しかし、ゲッコウガを倒すには、なんら問題はない。


【ゲッコウガの攻撃が上がった!】

【メタグロスのコメットパンチ!】
[ゲッコウガHP:1割未満]


「倒しきれなかったが……ま、問題はねーな」

 この体力であれば、次で仕留められる。


【メタグロスのバレットパンチ!】

【ゲッコウガは倒れた!】


「うわあぁぁぁぁ!」
「『闇の暗殺者ダークアサシン』よりはやいなんて、あいつ、いつの間にそんな技を……!」
「いや最初からインストールされてる技だからな」

 通常のメタグロスであれば、バレットパンチは必須ではなくとも、普通に採用される確率の高い技だ。
 ハッサム程の縛り性能はないものの、それなりに高い火力で先制技が使えるため、非常に便利である。

「くぅ、こうなったら次はおまえだ! いけ、『壁山ザ・ウォール』!」
「了解ッス!」


【団員たちはサイドンを繰り出した!】


「……なんか妙な名前だな」
「……ダークアサシン、の時点で、お察し……」
「いや、そう意味じゃなくて」
「超次元的なサッカーとかしてそうだよねー」
「そうなんスよ。自分、サッカーが趣味ッス!」
「いや聞いてねーよ」

 それより、この場面をどうするかだ。

「サイドン……ドサイドンじゃなくてサイドンか」
「間違いなく輝石持ちよね。どうするの?」
「流石にスパコンピのコメパンじゃ倒せねーだろうし、返しの地震でやられるだろうな。ここでスパコンピを失うのも良くねぇ。ここはラグナに交代だ」
「HAHAHA! 了解ですよぉ!」


【戻れ、メタグロス!】

【行けっ! ラグラージ!】


「……そう言えば……今回の、ラグナロクの、型は……?」
「先発ってことは、いつもみたいにステロ欠伸かしら」
「いや、今回はだな——」

 雷切が最後まで言い切る前に、『壁山ザ・ウォール』が地面を大きく揺さぶった。

「くらえッスー!」


【サイドンの地震!】
[ラグラージHP:113/207]


「……ちょっと柔らかすぎないかしら?」
「意外と火力あんな、あいつ」
「いや……ラグナロク、脆い……」
「まあ仕方ねーわな。今回はHDでのろいを積む型だしな」
「物理耐久には振ってないんだ」

 火力と物理耐久に関してはのろいで補完するつもりなのだが、しかし予想以上に効いてしまった。

「この減りかただと、乱数二発でしょうかぁ」
「まあ、その程度なら大丈夫だろ。こっちは四倍弱点の水技がある。軽く捻ってこいや」
「はぁ、とりあえず了解しましたよぉ! ふんぬらばぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 と、勢いよく激流を纏って突っ込むラグナロク。
 そして、相手のサイドンへと突撃するが、

対戦パート2 ( No.35 )
日時: 2015/03/25 02:06
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)

「硬ぇ!? なんだこいつ!?」
「どうだ見たか! 『壁山ザ・ウォール』の防御力を甘く見るなよ!」
「畜生、悔しいがこれには驚かされたぜ……いくら火力に振ってないラグナとはいえ、四倍弱点の技をここまで抑えるか……!」
「ま、どうせ確定二発も上も取れてるから、次で倒せるんだけどねー」

 しかしこの耐久は素直に驚いた。それは事実だ。
 もしやこの耐久、二倍弱点程度なら余裕で耐えてしまうのではなかろうか。

「よーし、それじゃあお返しッス!」
「……これ、耐える……?」
「気合で耐えろ、ラグナ!」
「が、頑張ります! ふんぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」


【サイドンのしっぺ返し!】
[ラグラージHP:45/207]


「……って、しっぺ返しだったわね」
「地震じゃねーのか」
「間違えたッス!」
「おまえぇぇぇ!」

 地震でも耐えた可能性はあったが、なんにせよこれでサイドン突破は確実になった。
 だが、相手の裏にいるポケモンも考慮すると、ラグナロクの体力は残しておきたい。

「上が取れてて、乱数二発なら……ラグナ、回復だ」
「HAHAHA! あれですねぇ! 了解ですよぉ!」

 ラグラージは水・地面の優秀な複合タイプだが、自己再生などの高速再生技がない。その点が、ヌオーやトリトドンに劣る点だ。
 しかし、自己再生がなくとも、回復技が皆無なわけではないのだ。


【ラグラージは眠るを使った!】

【ラグラージは眠って元気になった!】
[ラグラージHP:全・快!]

【ラグラージはカゴの実で目を覚ました!】


「今回のラグナはねむカゴのろい型。これでもうしばらくは戦えるはずだ」
「HAHAHA! まだまだ行けますよぉ!」

 本来なら上手くのろいを積んで無双する型なのだが、ねむカゴはこういう時にも役立つのでなかなか便利だ。

「さて、とりあえず次は来るだろう地震をそれなりに耐えて、次の奴に備えねーとな」
「……さて、そう上手く行くかな?」


【サイドンの地震!】
[ラグラージHP:96/207]


「……半分以上喰らってるんだが」
「し、しょうがないじゃないですかぁ! 乱数二発って言ったじゃないですかぁ!」
「ここで高乱数を引くとか、面倒くせぇ……まあ大勢に影響がないだけまだマシか。今回は許してやってもいいぞ」
「なんでライはこうも自分より仕事するはずのラグには強気なのかしらね……レンにはあれだけボコボコにされてたのに」
「三竦みが成立してるんだよ、きっと」

 雷切→ラグナロク、グレン→雷切。
 こんなところだろうか。

「しかし、それでもこれでサイドンは突破できるはずですよぉ! ふんぬらばぁ!」


【ラグラージの滝登り! 効果は抜群だ!】

【サイドンは倒れた!】


「うぅ、団長、すまないッス……!」
「いや、おまえらはよくやった。もうやすんでてくれ」

 『壁山ザ・ウォール』ことサイドンが戻ると、リーダー格の少年が飛び出すように前に出て来た。

「次はボクの出番だ!」


【団員たちはミミロップを繰り出した!】


「ミミロップか……ん、待てよ。ミミロップ?」

 相手の最後のポケモンを見るなり、雷切が思案し、そして顔色を悪くしていく。

「……やべぇかもな、これ……」
「え? どういうこと、ライ?」
「残りの面子じゃ、こいつの攻撃を受け切れねぇ」

 現在、こちらの残存戦力は三体。半分ほど削れたラグナロクとスパコンピ、そして無傷のココロだ。
 数の上では圧倒的に有利だが、ラグナロクとスパコンピが削られているというのが、非常にまずい。

「こいつがメガミミロップのテンプレ——猫騙し、恩返し、跳び膝蹴り、あと一つが冷えパンかアンコだとすると、全員持ってかれる」

 目の前のラグナロクは猫騙し+恩返し、スパコンピは跳び膝蹴りで削り切られ、ココロも恩返しで乱数一発。
 ここに来て、メガミミロップ一体に全抜きされる可能性が出て来てしまった。

「それって、かなりまずいじゃないですかぁ!」
「あーそうだ。スパコンピを消耗させすぎちまった。ここに来てダストシュート読みに失敗したことが響いてやがった……俺たちの勝ち筋は、ざっと考えるだけで三つだ」

 と言って、雷切は三本指を立て、一つずつ折り曲げる。

「一つ。ココロがメガミミロップの恩返しを耐える」
「返しの攻撃は確一だから、一発耐えればまず勝てるわ」

 ただし、耐久は無振りなので、その一発を耐えるかが問題だ。

「確か、A252振りメガロップの恩返しは、耐久無振りのサーナイトには乱数だったはずだが……どのくらいの乱数だったか」
「ダメージ計算できればいいんだけどねー」
「……ここに、計算機、というか、スパコン……あるんじゃ……」
「無理だな。さっき確認したが、ダメ計プログラムはアンインストールされてた。新しくインストールしなおさねーと、計算できねぇ」

 とはいえ、乱数でも一撃で落とされることは確定なので、天運に任せることには変わらないのだが。

「とりあえず、次、二つ目。スパコンピが膝を躱すパターン」
「これも運次第ね……しかも10%の賭け」

 そして最後、三つ目。

「相手の技構成が、猫騙し、跳び膝蹴り、冷凍パンチ、アンコールみてーに、恩返しを切ってる場合だ」
「……そんな、メガミミロップ……いるの……?」
「可能性としては、ありえない話じゃない」
「なおPGLのランキングでは、ミミロップの恩返し採用率は約70%な模様」
「んなこと分かってんだよ! だがこうなると、もう相手依存で勝ち筋を探るしかねぇ」

 そもそも、今まで挙げた勝ち筋は、すべて複合的に狙えるものだ。
 つまり勝てる可能性は、ココロが生き残る確率、スパコンピが膝を躱す確率、相手が恩返しを切っている確率、これらを掛け合わせたものとなる。
 それでも、分の悪い賭けになりそうではあるのだが。

「……というかさ……」
「なんだよ、トンベリ」
「……相手……メガ石も、キーストーンも……持って、なくない……?」

 そう言われて、初めて気づく。
 確かに、相手の少年——ミミロップ——は、どこにもメガストーンらしきものをつけていない。
 しかも、団員という者たちも、誰一人としてキーストーンらしきものは持っていなかった。

「……成程な。こいつらにトレーナーがいるのかどうか知らねーが、いないならキーストーンを持ってるはずはねーし、いたとしてもガキ共だけに持たせはしねーか」

 メガストーンもキーストーンも、非常に貴重なものだ。なので、まだ幼い彼らに持たせ、管理を一任することをトレーナーは渋ったのかもしれない。
 それならば好都合だ。メガミミロップでなけば、残り三体で押し切れる。

「これは行けるぜ。奴はメガシンカできない。それならばまだ勝てる見込みは十分ある」
「HAHAHA! 少しヒヤッとしましたが、これなら大丈夫そうですねぇ!」
「残念だけど、メガシンカもできないニワカは相手にならんよ」
「……なんだか、嫌な予感がするのだけれど」
「……オレも……」

 そして大抵の場合、そういう予感は当たるものだ。
 リーダー格の少年、もといミミロップが、拳を突き上げて、大声で叫ぶ。


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23



この掲示板は過去ログ化されています。