二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 【ポケモン対戦小説】BOHパ対戦記録譚
- 日時: 2016/12/29 15:48
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
- 参照: https://www.youtube.com/watch?v=cSKjiY3FnrQ
はじめましての方は初めまして、そうでない方はこんにちは、モノクロです。
本作品は前作『バトル・オブ・ホウエン対戦記』に続く続編作品です。前作ネタなどもあると思いますが、今作だけでも内容は分かるように努めています。
前作の続編ということで、基本形式は前作と変わりませんが、今作はポケモン対戦をするにあたって、BOH——バトル・オブ・ホウエン縛りで対戦します。
バトル・オブ・ホウエン縛りというのは、前作品で題材にしたインターネット大会『Battle of Hoenn〜バトル・オブ・ホウエン』に出場可能なポケモンのみを使用する、という意味です。バトル・オブ・ホウエンに出場できるのは、ホウエン図鑑に登録されているポケモンのみ、作中に出て来るのもそれらのポケモンだけです。
では、次にこの作品の根本について説明しますと、言うなれば『ポケモン対戦小説』です。
対戦小説とはなにかと言いますと、『ゲームにおけるポケモン対戦そのもの』を題材とした作品で、動画投稿サイトに投稿される『ポケモン対戦実況動画』を小説風に書き起こしたものです。
なので本作には、種族値、努力値、個体値といった三値、ABCDSVといった略式記号、ガブ、バナ、クレセドラン、ゴキブロス、ドロポン、月光乱舞といった略称愛称蔑称などなどの、ポケモン廃人が多用する専門用語が多発します。できるだけ初心者の方にも分かるような作品を心掛けたいのですが、基本はある程度その手のことを知っている前提なので、ご了承ください。
作品の向上には全力を尽くすので、分かりにくい、もっとこうしてほしい、などの要望があればいくらでも申し付けてください。
そして、もしもこの作品で、対人戦やランダムマッチに興味を持った方がいたら幸いです。雑談板にモノクロの雑談スレ『DM第4相談室』というスレッドがあるので、よろしければお立ち寄りください。フレコ交換やフレ戦希望なども受け付けています。
勿論、普通に雑談したいという方も歓迎しますよ。
ちなみにこの映像板では同じものを題材としている作品に、モノクロも合作として参加している『俺と携帯獣のシンカ論』。舞台は違えど世界観を共有している、タクさん著の作品『ポケモンバトルM・EVO』があります。よろしければそちらもご覧ください。
というわけで、自称前置きが長いカキコユーザーのモノクロが、最後に注意書きを残して本編へと移ります。
※注意
・本作における対戦はほぼ“ノンフィクション”です。バトルビデオを見返して文字に起こしています(しんどい)。
・対戦相手の名前は改変して使用しています(物語の都合とプライバシーの問題に配慮)。
・対戦相手への誹謗中傷はおやめください(♂のメガクチートにじゃれつかせます)。
・ポケモンが喋ります(ポケモンしか出ないから仕方ない)。
・擬人化要素(イラストを描いて頂きました。許可を貰えたらそのうち紹介したいです)。
・茶番(前作より増量)。
・メタ発言(特に後語り)。
・にわか発言&下手くそプレイング(モノクロへの批判はOK!)。
・分かりにくい解説と文面(簡潔になるよう努めております)。
・BGMの種類増加(選出画面のURLのリンクからBGMに飛びます。種類はポケモンに限らず)。
・BOH縛り(詳細は冒頭の通り)。
・後語り担当は作者代理(名前はまだない)。
以上のことを留意して、どうぞ、モノクロのポケモンたちによるポケモン対戦を、お楽しみください——
オリキャラ募集的なものをしています。詳細は三戦目以降の後語りにて。投稿条件はこの作品が理解できること、ということで。
目次
零戦目「プロローグ」「を装ったあらすじです」
>>1
一戦目「確率世界」「と呼びたくなるほど理不尽です」
>>4 >>5 >>6 >>7 >>8 >>9 >>10
二戦目「ランダム対戦」「はレートもフリーも魔境です」
>>14 >>15 >>16 >>17 >>18 >>19
三戦目「永遠の宿敵」「は旧友にして戦友です」
>>20 >>21 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27 >>28 >>29
四戦目「ポケモンなしで対戦とは笑止千万」「ポケモンなら拾いました」
>>30 >>31 >>32 >>33 >>34 >>35 >>36 >>37 >>38
五戦目「後輩」「私のことですか?」「それは違うよ」
>>39 >>40 >>43 >>44 >>45 >>46 >>47 >>48 >>49
六戦目「先輩」「その中は百合の園でした」
>>52 >>53 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>63 >>76 >>77
七戦目「トンベリ君」「の憂鬱です」
>>91 >>94 >>95 >>96 >>97 >>101 >>104 >>105 >>106 >>107 >>108 >>109 >>110 >>111
バトル・オブ・ホウエンパーティー名簿一覧
>>78
タクさんより『BOHパ対戦記録譚』のタイトルロゴ(または表紙絵)のイラストを頂きました。
>>54
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- 対戦パート1 ( No.16 )
- 日時: 2015/03/02 21:04
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)
- 参照: https://www.youtube.com/watch?v=UzNgZYEh1oI
【ポケモントレーナーのエヌアードが勝負を仕掛けてきた!】
【行け、ヤミラミ!】
「対戦開始だぜ。こっちの先発はとりあえず出しとけなトンベリだ」
「なんて適当な……というか、オレ、最後に選ばれたんじゃ……」
「細かいことは気にするな。そんで、相手の先発はなんだ?」
【エヌアードはスピアーを繰り出した!】
「……スピアー、か……」
「十中八九メガスピアーだろうな。有利対面だ」
メガスピアーは特性の適応力で、自分と同じタイプの技——いわゆるタイプ一致技の威力を1.5倍に底上げする。
そしてこれは、元々あるタイプ一致補正と重複する。つまり、実質的にメガスピアーが放つ虫と毒技は、威力が二倍に膨れ上がっているのだ。
メガシンカして火力自体も上がっているので、その破壊力は凄まじい。ともすればメガクチートにも迫る勢いかもしれない。
「だが、それはなにも異常がないときに限っての話だ。火傷状態で火力が落ちれば、その機能も半減する。やってやれ、トンベリ」
「……まあ、やることは、やるよ……」
『Information
トンベリ(DM:ヤミラミ)
性格:根暗でひねており、会話もぼそぼそと話すが、言いたいことはしっかり言うほどには毒舌な少年。しかし責任感はそれなりに強い。
性質:悪戯心を利用し先制で補助技をかけて相手を妨害、引っ掻き回したり抑え込んだりして粘り強く戦う。
攻撃性能[F] 防御性能[A] 機動性能[E] 多様性[A]
悩み:身長がちーちゃんを超えないこと。
End』
「……どうせ、ここは守る、だろうけど……とりあえず、鬼火で……」
【スピアーのスピアナイトと、エヌアードのメガバングルが反応した!】
【スピアーはメガスピアーにメガシンカした!】
相手のスピアーは当然の如くメガシンカ。これでメガバクーダの線はなくなった。選出されていないとは限らないが。
ここまでは予想通り。しかし、次が予想外の出来事であった。
【ヤミラミの鬼火! スピアーは火傷を負った!】
【スピアーのドリルライナー!】
[ヤミラミHP:132/157]
【スピアーは火傷のダメージを受けた!】
[スピアーHP:割合的に7/8]
「……ドリルライナー?」
「守るやとんぼ返りではなく、ドリルライナーか」
「鬼火……入ったから、いいけど……少し、不気味……」
「大方、こっちの守る読みクチート交換を読んで撃ったんだろうな。メガスピアー程度の耐久なら不意打ちで一撃だからな。だが」
わざわざちーちゃんに出てもらわなくとも、メガスピアーなどという単純な速攻アタッカーは、トンベリ一体で事足りる。相手の深読みが功を奏したようだ。
そもそも守るを切ってる可能性もあるが。
【スピアーのとんぼ返り!】
[ヤミラミHP:83/157]
【スピアーはエヌアードの元へ戻っていく!】
「流石に居座れないから、とんぼで逃げたわね。火傷したメガスピアーじゃ、もうほとんど機能停止したようなものだけど」
「火傷してもなんて火力だ、トンベリのHPを三分の一も持っていきやがった」
「A150の適応力は伊達じゃありませんねぇ」
そもそもこのトンベリ自体、耐久をBDに振り分けているので物理耐久が若干脆いというのもあるのだが。
ともあれ、相手のスピアーが逃げ、次なるポケモンが出て来る。
【エヌアードはシャワーズを繰り出した!】
「おにゃのこシャワーズだね」
「……ブイズの、雌雄の比率って……どう考えても、悪意的……」
「相手は♀を厳選したんかね。だったらご苦労なこったな」
作者もねむカゴニンフィアは♀がいいからと粘ったものの、調整が思いつかないでずっと放置、BOHパを始めたせいでお蔵入りになりましたがね。
「シャワーズってなにをするポケモンなんでしょう?」
「さて……あまり見ませんからねぇ」
「溶けるバトンとか、特殊受けとか、やれそうなことはいくつかあるが、いまいちこれっていうのが絞り込めねーな。とりあえず殴って様子を見るか」
「ん……」
【ヤミラミのイカサマ!】
[シャワーズHP:8割ほど]
トンベリのイカサマが叩き込まれるも、ダメージは微々たるもの。しかも、
【シャワーズは食べ残しで少し回復】
[シャワーズHP:8割+α]
「残飯……少なくともアタッカーではないな。耐久型か」
「そうだろうことは確定的に明らかだね」
「とはいえ残飯だけじゃ、居座るタイプということしか分からないわ。もう少し探ってみないと」
「だな。とりあえず、残飯なら定数ダメージを入れておいた方がいいか」
「……なら、鬼火で……」
【ヤミラミの鬼火! シャワーズは火傷を負った!】
トンベリは複数の火の玉をシャワーズへと放ち、火傷を負わせる。
やはり悪戯心は強い。ほぼ素早さに関係なく補助技を撃ちこみ妨害できるため、必ずなにかしらの仕事をしてくれる。反射的に選出もしたくなるというものだ。
だが今回は、それが良かったことばかりとは言い切れない。
【シャワーズのアクアリング! シャワーズは水のリングを纏った!】
「……アクアリングだと?」
「これまた珍しい技ですねぇ」
「えっと……アクアリングって、どんな技だっけ……?」
「……毎ターン、体力を、ちょっとずつ回復していく技……残飯と、同じ……」
「今回は残飯と重複しているから、毎ターン八分の一回復するわけね。鬼火の定数ダメージを完全に相殺されたわ」
【シャワーズは食べ残しで少し回復】
【シャワーズは水のリングで体力を回復】
【シャワーズは火傷のダメージを受けた!】
[シャワーズHP:結果的に8割+αに戻る]
火傷のダメージは残飯+アクアリングの回復量と同じ値、つまりこのまま粘っていても、火傷のダメージは増えていかないのだ。
とはいえ逆に考えれば、相手の回復も追いつかないわけで、そう考えると悪くない気もする。
本当に、相手の回復が火傷で相殺され続けるのなら、だが。
(しっかしアクアリングか……貯水のシャワーズなら、普通は水を受けるサイクル戦仕様になっていそうだが、こいつは明らかに居座るタイプ。いや、貯水だからサイクル戦しかないって決めつけも良くないか……いや、待てよ、なにか見落としているような……)
「……とりあえず、そろそろ、殴ってきそう……回復……」
「あ、待てっ」
【ヤミラミの自己再生!】
[ヤミラミHP:満タン]
トンベリは自己再生で回復。体力がギリギリ半分だったので、少々危険だったが、満タンまで回復すれば問題ない。
……と、思うのはあまりにも愚かである。
なぜなら、
【シャワーズの雨乞い!】
- 対戦パート2 ( No.17 )
- 日時: 2015/03/02 21:11
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)
【雨が降り始めた】
突如として、フィールドが雨雲に包まれ、豪雨となった。
「あ、雨乞い? 雨降らせて、どうするのかしら……?」
「……見たところ、雨パ、ではない……はず……」
「純粋に水技の威力が上がるだけでも厄介そうですけどねぇ」
などと、困惑してはいるようだが、やや緊張感に欠けた発言が聞こえる。
しかし、雷切はそうではなかった。この技だけで、相手のシャワーズの型が判明した。
「……忘れてたぜ、こいつの夢特性……」
「……? らいきりさん? どうしたんですか? 夢特性って——」
【シャワーズの潤いボディ】
【シャワーズの火傷が治った!】
「……え……?」
「や、火傷が治っちゃいました……!?」
「あー……こういうこと」
「そういうこった」
「どういうことですかっ?」
「簡単に言うとだな、このシャワーズはうるボ眠る型、もしくはその亜種なんだ」
うるボ——潤いボディとは、天候が雨の時、ターンの終わりに一定確率で状態異常が治るというもの。
これと眠るを組み合わせ、雨が降る限り状態異常も関係なく体力を回復し続けるのがうるボ眠る型シャワーズだ。モノクロは会ったことはないが、嵌められたらそう簡単には抜け出せないらしい。
ただ相手はアクアリングを使用しているので、眠るはないかもしれない。それでも体力を回復し続け、耐久型の天敵である状態異常もリセットするため、耐久型どうしではまず勝てないだろう。
「うるボ眠る型シャワーズと言えば、某絶対零度のゲスいブイズ使い……ブースターレジェンドフォルムは伏線だったか……!」
「なんにせよ、まずいわね」
【シャワーズは食べ残しで少し回復。水のリングで体力を回復】
[シャワーズHP:9割ほど]
相手のシャワーズは残飯とアクアリングで体力を回復し続ける。こちらの鬼火は潤いボディで打ち消される。
耐久どうしの対決でも比較的強く出れるトンベリが、完全に止められてしまった。
「く……先に、挑発、撃っとくべきだった……しくじった……」
「いや、俺がもっと早く潤いボディに気付いていればこうはならなかった」
なんとなくうるボの影はチラついていたのだが、実際に出て来るまでその可能性に気付けなかったのは、やはりまだ弱い部分だ。
水タイプがサポーター気質満載のラグラージしかいないパーティーに出て来たシャワーズという時点で、もう少し踏み込んで考察するべきだったようだ。
「つっても全部結果論、たらればの話をしても仕方ねぇ。思考を切り替えて、こいつの突破方法を考えるぞ」
「……悪い……」
「気にすんな。元はと言えば、反射的にお前を選んだ俺の責任だ」
「……そうだった……」
それはさておき。
相手はアクアリングを纏い、雨を降らせた。そうなると、そろそろ攻撃に転じるはずだ。
シャワーズは一鳴きすると、どこからともなく波が押し寄せる。豪雨により増水した、大波が。
【シャワーズの波乗り!】
[ヤミラミHP:7/157]
「っ……きつ……」
「乱数で耐えた感じか。メタバがあればここで終わりだったが、久々に投入したイカサマが裏目に出たか……!」
「やっぱメタバって神だわ」
とはいえ、能動的に攻撃できるイカサマの方が良い場面もなくはないので、一長一短であるが。
いや、三分の一くらいはメタバの方が長いかもしれない。
【ヤミラミのイカサマ!】
[シャワーズHP:7割程度]
【シャワーズは食べ残しで少し回復。水のリングで体力を回復】
[シャワーズHP:8割まで回復]
トンベリはイカサマで攻撃するも、ダメージはお察し程度。残飯アクアリングでほとんど回復されてしまう。
「ま、攻撃には期待してねーし、こんなもんか」
「ここからどうするんですかぁ?」
「相手は攻撃に移ったわけだし、後出しはしたくねーな。雪姫は電磁波撃ってもうるボで回復される、補助技も豊富で、シャドボがまともに通るとも思えねぇ」
それになにより、ここまで削れたトンベリを取っておいても不安定なのだ。体力がこれでは、死に出しから自己再生をしたくとも、相手の積みの起点になる可能性があるため、不利な読み合いが発生する。
それならば、
「悪いトンベリ、お前を捨ててちーちゃんを死に出しする」
「……まあ、仕方ない……オレも、もう足手まとい、だし……」
「そ、そんなことないよっ! トンベリくんは十分がんばったよ!」
「でも……メガスピアーに、鬼火、入れただけだし……」
それだけでも仕事はしたかもしれないが、しかしちーちゃんの不意打ちで一撃なので、あまり意味はないかもしれない。
精々、シャワーズの型を探ったくらいか。
「このシャワーズがどんな振り方をしているのかは分からねーが、少なくともちーちゃんのじゃれつくで確定二発——確一とは行かずとも、乱一くらいにできたらいいな」
「雨下でトンベリが乱数耐えしたんだし、メガシンカしたちーちゃんなら耐える……かしら?」
「……トンベリがDにも振ってることを考えたら、ちーちゃんも乱数かもな」
しかし雪姫の道連れは軽々に使いたくない。あれは奥の手のようなものだ。
それにシャワーズなら補助技で透かされることも考慮しなければいけない。
「……とりあえず、挑発撃って、退場……」
「ここに来て補助技を使うとも思えねーが、ま、ちーちゃんの不意打ちが通りやすくなるだけいいか」
【ヤミラミの挑発! シャワーズは挑発に乗ってしまった!】
トンベリは瀕死寸前で挑発。これでシャワーズの補助技を封じたが、封じるなら雨が降る前に封じたかった。
「ところでトンベリ君、君いつもどんな挑発してるの?」
「……別に……」
「そんなこと言わないでさー、教えてよー、ねーねー」
「……鬱陶しい……」
いつもぼそぼそと聞こえづらい声量とトーンで喋るため、確かにどんな風に相手を挑発しているのかは謎だった。
根暗なトンベリの挑発がどんなものかは気になる。気になるのだが、
【シャワーズの波乗り!】
【ヤミラミは倒れた!】
「今はそれどころじゃねぇ」
トンベリが波に流され戦闘不能。先に一体持っていかれてしまった。
【シャワーズは食べ残しで少し回復。水のリングで体力を回復】
[シャワーズHP:またも9割まで]
そして相手は残飯アクアリングで体力がほぼ全快に。果たして、ちーちゃんの攻撃一発で落ちるかどうか。
だが、それでもやるしかない。
「そんじゃ、頼んだぜちーちゃん」
「……任せたよ……」
「はい! 全力で行ってきます!」
【行けっ、クチート!】
- 対戦パート3 ( No.18 )
- 日時: 2015/03/02 21:18
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)
『Information
ちーちゃん(DM:クチート)
性格:天真爛漫で明るく元気な年相応の少女。幼さゆえの無邪気さだが、対戦とはいえ笑顔で相手をぶっ飛ばす。ただし可愛いは正義。
性質:メガシンカ後の圧倒的破壊力ですべてを粉砕する重火力エースアタッカー。小技もそこそこ揃っている。
攻撃性能[S+] 防御性能[B] 機動性能[E] 多様性[C]
悩み:学校で一人だけ握力検査をさせてもらえないこと。
End』
遂に登場、我らがちーちゃん。
作者の嫁ポケというのは言うに及ばず、それと同時にこのパーティーにおける火力の支え、エースアタッカーである。
彼女がなすべきことはたった一つ。ただひたすらに——
【クチートのクチートナイトと、メガバングルが反応した!】
ちーちゃんのメガストーンが反応する。それにより、彼女が結わえていた一房は二房に、大顎のような一本角は二つの大顎に変化した。
【クチートはメガクチートにメガシンカした!】
「メガシンカ……完了です……っ!」
これで火力、耐久共に上昇した。
トンベリでも耐えられたシャワーズの一撃。今のちーちゃんならば、耐えられる見込みは十分ある。
シャワーズはまたも大波を放つ。ちーちゃんもトンベリのように、その波に飲み込まれるが、
【シャワーズの波乗り!】
[クチートHP:27/157]
「……耐えた!」
「……ちーちゃん……」
「はいっ! いきます!」
ちーちゃんはグッと踏み込む。一直線に、シャワーズ目掛けて、突貫する。
「てーいっ!」
そして——
【クチートのじゃれつく!】
——目の前の敵を、粉砕するのみ。
【シャワーズは倒れた!】
「やりました!」
「シャワーズ突破ですねぇ! HAHAHA!」
「……まさか本当に一撃とはな。一応これでも、少しAを削ってるはずなんだが……」
「流石はちーちゃんとしか言いようがないわね」
やはりこの火力は癖になるほど凄まじい。
その分、鈍足なので扱いは難しいが、なんだかんだでこのパーティーはちーちゃんのサポートには事欠かない。
【エヌアードはキレイハナを繰り出した!】
「相手の三体目はキレイハナか。またなにするのか分からん奴を……」
キレイハナは実況動画などでも見たことがない。本当になにをするのか分からないポケモンだ。
「そもそもなに覚えるんだ、こいつは」
「確か、今作からムーンフォースが使えたはずよ」
「ムンフォなぁ……まあスピアーが出せないからとりあえずこっちを出したと見るべきか。ちーちゃんにはまだスピアーに不意打ちする仕事が残ってるし、ちーちゃんを残してこいつを突破できればほぼ勝確だ」
「つまり、どういうことですかぁ?」
「雪姫、出番だ」
「あいさー、雪姫ちゃん、出撃するよー!」
【クチート! 交代! 戻れ!】
【行け! ユキメノコ!】
『Information
ゆきひめ(DM:ユキメノコ)
性格:お気楽で飄々としているが、不意に見せる怪しげな雰囲気など、掴みどころがない。パロディ含むネタ担当。
性質:紙耐久ゆえに高い素早さから範囲の広い技を撃てるが火力が足りないため補助技も絡めていく。必殺技は道連れ。
攻撃性能[C] 防御性能[E] 機動性能[A] 多様性[D]
日課:入院中の父親の見舞い品に菊の花を持っていくこと。
End』
ちーちゃんはまだ残しておきたいため、ここで雪姫を繰り出す。キレイハナの火力は知らないが流石に一発は耐えるはず、それに襷があるので不意の急所も問題ない。
単純に考えても氷タイプは草タイプに強く、一致弱点を突けるので有利はなずだ。
「それに、ここで麻痺を撒いておけば、ちーちゃんで先手を取って倒せるからな」
「大分半端な状態だけど、麻痺撒きで鈍足高火力アタッカーの無双をサポートする形ね」
とはいえキレイハナを一撃で倒せるかどうかは分からないので、できれば雪姫で削っておきたいところ。
そして、相手が動いた。
【キレイハナの痺れ粉! ユキメノコは麻痺して技が出にくくなった!】
「げ……痺れ粉か」
「うわ、ビリビリするぅ……」
雪姫も雷切のように、素早さが唯一の取柄のような存在なので、ここで足が奪われたのはややきつい。
幸いこちらも電磁波があるので、相手の攻撃を耐えればまだワンチャンあるが、
「一応道連れも視野に入れていたんだが、麻痺すると不安定だな。素直に削った方が無難か……?」
ここで道連れを決めればほぼ勝ち確定だが、道連れに失敗し、ちーちゃんがキレイハナを落としきれなければ、残り体力が僅かなちーちゃんは削りきられる可能性がある。
となるとやはり、堅実にちーちゃんが倒せる圏内まで削るべきか。
【雨が上がった】
【キレイハナのギガドレイン!】
[ユキメノコHP:88/145]
「相手はギガドレイン。まあ、そんなところか」
「そこそこ効いたけど、さっきビリビリしたお返しだよっ! バチバチッ、とな!」
【ユキメノコの電磁波! キレイハナは麻痺して技が出にくくなった!】
雪姫は微弱な電磁波を発し、キレイハナを麻痺させる。
これで互いに麻痺状態、種族値ではこちらが速いので、これからはこちらが先手を取れる。冷凍ビームで削って行けば、このまま落とせる可能性すら見えてきた。
しかし、
【ユキメノコは体が痺れて動けない!】
【キレイハナのギガドレイン!】
[ユキメノコHP:30/145]
「おいコラ」
「うー、仕方ないじゃーん。体が思うよーに動かないんだもん」
「相手は動いてんのにお前は動かねーのかよ」
「働きたくないでござるー」
「うっせぇ! いいから少しでも削ってこい!」
雷切に蹴りだされるようにしてフィールドに出向く雪姫。今度は体が動いたが、
【キレイハナは守るを使った! キレイハナは守りの体勢に入った!】
【ユキメノコの冷凍ビーム!】
【キレイハナは攻撃から身を守った!】
「守る……? どういうことだ?」
「様子見、かしらね。でもなんで守るが入っているのかしら。HBどくまもとかだったりするのかしらね」
「それなら痺れ粉は採用しないと思うが……なんか不気味だな」
「とりあえず私はもう殴ることしかできないし、冷ビ連打かな?」
「あぁ、そうしてくれ」
【ユキメノコの冷凍ビーム! 効果は抜群だ!】
[キレイハナHP:残り3割強といったところ]
雪姫の冷凍ビームのダメージはそこそこ。しかし残り具合からして、やはり相手は耐久に振っているようだ。
そして、相手は一度も麻痺バグを引かず、動き続ける。
【キレイハナのギガドレイン! ユキメノコから体力を吸い取った!】
[キレイハナHP:4割ほどまで回復]
【ユキメノコは倒れた!】
「ばたんきゅー」
「半分以上は削ったか……ま、仕事はしたな」
「えへへ、でしょでしょ? もっと褒めてもいいんだよ?」
「調子に乗んな。お前が麻痺バグ引かなきゃ押し切れてたんだぞ」
「それは言わないお約束」
麻痺撒いて一度冷凍ビームを撃てただけでも十分仕事は果たした。相手の自覚が良すぎるだけだということにしておこう。
と、いうわけで。
舞台は整った。後は、エースが暴れるだけだ。
「さあ、後は全部任せたぜ、ちーちゃん」
「……頼んだよ……」
「おねーさんがお膳立てしてあげたんだから、跡形もなく消し飛ばしちゃって!」
「はい! もう一度……行ってきます!」
【頑張れ! クチート!】
満を持して再登場したちーちゃん。
相手の残りは、半分ほど削れ麻痺したキレイハナと、火傷状態のスピアー。
一方、こちらは体力ミリのメガクチート一体。
十分だ。十分すぎる。
「それじゃあ、まずは——これですっ!」
ちーちゃんはダッと飛び出す。本来なら相手の方が速いはずだが、今のキレイハナは麻痺状態。素早さが低下している。
その状態であれば、鈍足でも、ちーちゃんの方が速い。
「っと、えいっ!」
キレイハナに肉薄した刹那、ちーちゃんはくるっと体を半回転させ、凶悪な牙が並んだ大顎を向ける。
そしてその牙には、灼熱の炎が灯っていた。
【クチートの炎の牙! 効果は抜群だ!】
【キレイハナは倒れた!】
炎の灯った牙に噛み付かれ、キレイハナはたまらずダウン。
まずは一体。
「あと一体か……」
【エヌアードはスピアーを繰り出した!】
相手のラスト一体はメガスピアー。火傷状態とはいえ、流石に今の体力のちーちゃんでは耐えられない。
しかし、ならばやられる前にやってしまえばいいだけのこと。
他のメンバーが麻痺を撒く以外にも、ちーちゃんには先手を取る術がある。
唯一の懸念材料は、スピアーが身代わりなどを持っていた場合だが——深読みしすぎて足元をすくわれるわけにはいかない。
ここは、思い切って——
「すぅ……はぁー……」
【クチートの不意打ち!】
ちーちゃんは一度深呼吸して、踏み込む姿勢を取る。ただし、相手の出方を窺いながら。
相手が突っ込んで来れば、こちらの勝ち。しかしそうでなければ——最悪のケースが一瞬、頭をよぎった刹那。
「! そこです!」
スピアーの動きを目聡く察知し、一気に踏み込んだ。
そして、スピアーの背後を取り、
「えい、やっ!」
——不意の一撃を、叩き込む。
【スピアーは倒れた!】
「っ……スピアー突破、です!」
これで相手の三体のポケモン、すべてを倒した。
「ちーちゃん、一人で全部持って行ったか」
「……うちの、エース、だし……」
「あたしも一応特殊エースなんだけど……ま、あのこの火力には敵わないわね」
ともあれ、これで試合終了。
ちーちゃんの火力の前では、小細工など問答無用で叩き潰されるだけだった。
そして、
「最後だ、きっちり締めろよお前ら」
「はーい」
「……それじゃ……」
『エヌアードさん、対戦ありがとうございました!』
【ポケモントレーナーのエヌアードとの勝負に勝った!】
- 後語り ( No.19 )
- 日時: 2015/03/03 21:35
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)
「みなさんこんにちは、後語り担当の作者代理です」
「その後輩です」
「今回で『BOHパ対戦記録譚』も二回目だねぇ。遂に登場我らがちーちゃん、実は作者が一番使いこなせるポケモントンベリ君、借金押し付けた元凶の一人とも言える雪姫と、地味に重要なキャラクターも出て来て、やっと役者がそろったって感じだね」
「確かにそれはその通りなのですが……」
「ん? どしたの後輩ちゃん?」
「……なんで対戦後すぐに後語りに入っているんですか? 対戦後に挟む茶番はどこへ行ったんですか? これでは下のパンだけがないハンバーガーです。手が汚れてしまいます」
「いや、別にこの作品で対戦後の茶番がないからと言ってなにも汚れないけどね」
「ですが急に後語りに入って私は軽く困惑しているのですよ。どうして対戦後の茶番がないんです?」
「それはね、今回は普通にランダム対戦だったから、別に対戦後に茶番挟む必要なかったかなって。特別なイベントもなにもないでしょう?」
「……つまり?」
「なにも思いつかなかったから手抜きしました」
「職務怠慢ですね」
「しゅ、趣味だから職務じゃないから! それに、無理やり茶番突っ込んでテンポ悪くなったりしても嫌じゃん!? それにそれに、今作品は茶番よりも対戦内容重視ってことでさ!」
「一戦目から運勝ちしている人がなにを言いますか。それに今回だって、トンベリ君を選出したのは明らかにミスじゃないですか」
「あー、うん……でも、話の都合上、ここいらで全員紹介しないといけないから、どうしても出さなくちゃいけなかったんだよ」
「これが本当の作者都合ってやつですか」
「そゆこと」
「はぁ……まあいいですよ。そろそろ型紹介に移りましょう」
「それもそうだね。そんじゃまずは作者の嫁ことクチートのちーちゃんから」
クチート(NN:ちーちゃん):♀:意地っ張り:威嚇→力持ち:H252、A164、S92
持ち物:クチートナイト
技:じゃれつく、不意打ち、炎の牙、剣の舞
「シーズン7で運用していた炎牙搭載型メガクチートですね」
「そそ。やっぱレートとかだとナットレイやハッサムが嫌というほど出て来るから、炎の牙はあると便利だよ。しかも意外と警戒されなくて、相手からわざわざ出向いてくれることもしばしばあるし」
「ORASで教え技が解禁されましたし、叩き落とすのイメージが強いのかもしれませんね」
「叩きも便利っちゃ便利なんだけど、透かされることも多いとはいえ不意打ちとタイプが被るからね。剣舞は積めれば無双も狙えるからあまり外したくないし、個人的には範囲を広げる炎牙がお勧めかも。ミラーマッチにも強くなるし。まあ結局はパーティー次第だろうけどね」
「メガクチートはBOHパーティーの火力を支える正にエースポジションです。彼女がいるのといないのとでは、突破力がまるで違うので、範囲の広さは重要かもしれませんね」
「ま、今後ちーちゃんを抜くとしたら、代わりの高火力アタッカーを入れることになるんだろうね。とはいえホウエンでちーちゃん以上の火力の持ち主なんてそうそういないだろうけど」
「では、次は攻めの要のちーちゃんと対を成す、BOHパの守りの要、トンベリ君です」
ヤミラミ(NN:トンベリ):♂:腕白:悪戯心:H252、B132、D124
持ち物:ヤミラミナイト
技:イカサマ、挑発、鬼火、自己再生
「これも第七期レートで使用したものと同じ個体だよ」
「最近はシャンデラやバシャーモに燃やされまくったせいで、炎タイプも返り討ちにするセルフメタバ型ばかり使っていましたが、久々のイカサマ採用ですか」
「うん。と言っても、今回はそれが完全に裏目だったね。やっぱりイカサマはガルドや積みポケピンポイント気味で、汎用性に欠けるなぁ」
「自身の攻撃力を考慮せず、能動的に攻撃できる手段としてはあって損はないと思いますが、ヤミラミも欲しい技はそれなりに多いですからね」
「普通に使うなら自己再生は必須、鬼火もまず欲しいし、個人的には挑発も外せない。これだけでもう三つだよ」
「あと一つは攻撃技が欲しいから、イカサマかメタルバーストかの選択ということですか」
「そうなるね。ヤミラミを愛用している身から言わせてもらえると、明確に仮想敵を定めて耐久調整するならメタバの方がいいと思うよ。炎タイプは鬼火が効かない以上に火力が高いから、下手すると一撃で持っていかれる」
「BOHでエントリーしたヤミラミも、確か積まないバシャーモの瞬間最大火力を耐えられるように調整していたんですよね」
「そう。まあイカサマも仮想敵を定めた運用になるけど、イカサマは通らないと分かればまず撃たないし、通るなら通るで特別な調整とかは別にいらないから、どっちかっていうとプレイングが大事かな」
「持ち物はメガ石ですか。最近はタラプやリュガを持たせていましたが」
「ぶっちゃけ半端に振ったこの子の耐久じゃ能力が一段階上がっても耐えきれるかは微妙だから、なに持たせてもそんなに変わらないと最近思うようになった」
「BDに振り分けた弊害ですね……いっそ物理受けか特殊受け、どちらかに絞ってみてはどうでしょうか」
「それでも種族値足りてないし、受け回すことが難しいBOHパで片方に偏らせるのは怖いなぁ……両方をそれなりに受けられるのがトンベリ君の強みだし、一発は大体耐えられるからこそ特殊相手にメタバが生きるわけだし」
「難儀ですね」
「それがポケモンだからね。技構成も型もほとんど定まっているのに、戦術についてここまで頭を悩ませるのは、やっぱりちーちゃんと似てるよ」
「ホウエンの幼くも強い低種族値コンビですか、お似合いのタッグですね」
「どっちかっていうとペアじゃない?」
「どっちでもいいです」
「そか。じゃあ、次行くよ。次はこの作品の混沌を担うと言ってもいい彼女、雪姫だ」
ユキメノコ(NN:ゆきひめ):♀:臆病:呪われボディ:CS極振り、残りD
持ち物:襷
技:冷凍ビーム、シャドーボール、電磁波、道連れ
「こちらは至ってシンプルなテンプレ型ですね」
「正直、ユキメノコはまともに働ける型がこれくらいしかない……天候利用型とか、いばみが型とか、ひょいひょい型とか色々考えたけど、一番安定するのはこの襷道連れ型だった」
「でしょうね」
「攻撃技を削って挑発を入れたりとかもしたんだけど……使い勝手はそこまで変わらないかなぁ? 一応、ユキメノコ自体、襷道連れがメジャーで状態異常を呼びやすいから、読まれない挑発が刺さる場面は多々あったけど」
「補助技を止めたところで、殴り合って勝てるわけではありませんしね」
「とりあえず最低限四倍龍に役割が持てる冷凍ビーム、鈍足サポートにもなる麻痺撒き電磁波、決まれば最低一体持っていく道連れ、このいずれかは絶対に欲しい技だね。できれば二つ以上は欲しい」
「それほどに、その技はユキメノコの最低限の強さを支えているということですか」
「そうなるね……はぁ、誰かユキメノコの他の型を考えてくれないものかなぁ……」
「唯一自分で考えた新しい型と言えば、BOHパでのスカーフすり替え型くらいですしね」
「でも、あれもあれで扱いづらいし、そもそもあの型は他に襷を優先したいポケモンがいたから半ば無理やりスカーフ持たせただけだし」
「ふむ、襷にかまけた行動や、麻痺撒きができないというのは確かにつらいかもしれませんね」
「それにうちのパーティーは意外とスカーフの取り合いが激しいから、元から速い雪姫に渡しづらいんだ」
「そうなんですか?」
「そうなの。鈍足が多いからね、BOHパ」
「雷切と雪姫がいるじゃないですか」
「ゲッコウガで詰みます」
「あぁ……成程です」
「ジュカインも速さが取柄って言っても、御三家最速はゲッコウガだからなぁ……せめてあいつより速ければワンチャンあるのに」
「メガジュカインがいるではありませんか。S145ですよ」
「火力不足は大して解消されてないし、そこに割くメガ枠がない」
「でしたね。ちーちゃんがメガシンカできなくなるわけですしね」
「素早さを得るためだけにちーちゃんの火力を犠牲にするのは流石に惜しいよ。だから今は仕方なく、最速の座はあのニンジャスレイヤーに譲るよ」
「まあ、真に最速と言うべきは、加速で際限なく素早くなっていくバシャーモな気もしますけどね」
「本編の御三家で唯一ハブられてるあの骨折焼き鳥だね」
「……先輩、バシャーモ嫌いなんですか?」
「バシャーモというポケモン単体は好きだけど、うちのちーちゃんやトンベリ君を燃やしまくるから許せない。全身複雑骨折して絶滅しろ」
「滅茶苦茶嫌ってるじゃないですか」
「そんなわけで、次回はいよいよ今作での大きな変化をお見せするよ」
「どういうわけか分かりませんが、要するに新キャラ登場、というわけですね」
「伏線としては前作から今までの中にちょこちょこあったりするキャラなんだけどね。まあどんなキャラかはこうご期待!」
「それではまた次回、お会いしましょう」
- 茶番1 ( No.20 )
- 日時: 2015/03/18 13:43
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)
「……雨だなぁ」
雷切はリビングのソファに仰向けで寝転がりながら、無気力に呟く。
今日この日、無駄に広い我が家にいるのは雷切だけだった。
「まぁ、この土砂降りじゃしゃーねーかぁ……」
風雨が窓を叩く音が絶え間なく聞こえてくる。まだ台風の時期ではないが、今日の天気は嵐でも来たのかというほどに悪い。
ゆえに、今日は誰もこの家を訪れなかった。
「こんな日に外に出るのは、ラグナくらいだろうなぁ……」
雨の日にはやたら元気になり、無駄に動き回り、いつも以上に気持ち悪さが増す友人のことを思い……出そうとしてやめた。考えたら気持ち悪くなった。
「……そういや、あいつら今なにしてっかねぇ……」
ラグナロクの代わりに、雷切が思い出すのは学生時代の友人たち。
雷切も昔は色々やったものだ。その中で数々のものたちと出会い、事々を成し遂げてきた。
そんな懐かしい日々を、ふと思い出す。
「つっても、昔の話だがな……」
口ではそう言うものの、思い出したらその記憶は止まらない。
「一番心配なのはミスティか……あいつ、俺がいなくて大丈夫かね……エテ公も変な奴に突っかかって死んでなきゃいいが、ま、そんときは自業自得だな……葬式くらいには出てやるか……先輩は……まぁ、あの人なら元気にやってるだろ……あいつも今はバリバリ働いてるみてーだし、心配ないか……」
かつての友人たちを一人ずつ思い返す。
その中で、一つの影が色濃く浮かんだ。
それはさながら一枚の写真のように、三人の姿を映している。
ラグナロクと自分と、その隣にいる——
「……はんっ」
と、そこまで像が浮かんだところで、雷切は不機嫌そうに鼻で笑うと、考えるのをやめてしまった。
「あんな野郎のことを思い出すとか、胸糞悪ぃ……」
そう吐き捨てると、雷切は体をうつ伏せにする。先ほど頭に浮かんだ像を忘れたいと願うかのように。
実際、先ほどのことは忘れようと、彼は目を瞑る。
「…………」
そして、そのまま、微睡みの世界へと落ちていった——
■
「トンベリくーん! はやくはやくっ!」
「ちょっ……ちーちゃん、速い……待って……」
二つの小さな影が、コンクリートの階段を上る。
ポニーテールの小柄な少女と、パーカーのフードを目深に被った陰気そうな少年。
少女は階段をたったかと軽快な足取りで駆け上がり、対照的に少年は息を切らしている。
少女はちーちゃん、少年はトンベリ——二人は、互いにそう呼び合っており、それが名前だった。
「……なにも、そんなに……急がなく、ても……いい、のに……」
「だって昨日は雨で雷切さんの家に行けなかったんだもん。今日は昨日の分も戦うぞー!」
「……いつも、死にかける、まで、働かされる、のに……今日も、ハードワーク、か……」
やる気に満ち溢れたちーちゃんとは、またも対照的に、トンベリは酷く意気消沈している。
パーティーのエースでここぞという時に大活躍するちーちゃんと、便利だからととりあえず選出されては殴られ再生を繰り返すトンベリ。
どちらも重役ではあるが、エースとして立てられるちーちゃんと、ボロ雑巾のように酷使されるトンベリとでは、仕事量がまるで違っていた。というか、トンベリの仕事が多いうえに過酷なのだ。ひたすら殴られ耐え続けるなんて役目、誰が担いたいものか。
「……それより……あんまり、走ると……危ない……」
「だいじょーぶ、だいじょーぶっ!」
ちーちゃんはぱしゃぱしゃと水溜りを散らしながら階段を上っていく。
本日はこの上なく快晴であるが、昨日は季節外れの台風でも来たのではないかというほどの嵐だったため、辺りにはその爪痕とでも言うのか、木葉や木の枝が散乱し、大量の水溜りができている。
そんな状態の階段を、ハイスピードで駆け上がっていれば、彼女に起こることは当然の帰結である。
「わ……っ!」
何度目になるのか、彼女が水溜りを踏み鳴らした時。
彼女は水と一緒に散っていた木葉も踏みつけたようで、足を滑らせてしまう。
反射的に体勢を立て直そうとしたが、それがいけなかった。
前のめりに倒れそうになる体は無理やり後ろに逸らされるが、その勢いが強すぎた。今度は後ろ向きに体が倒れてしまう。
そしてここは段差のある傾斜とも言うべき階段。上っている途中に後ろに倒れ込めば、彼女を支えるものはなくなる。
「あ——」
ちーちゃんの体が、宙に浮く。
「っ……ちーちゃん……!」
トンベリは咄嗟になにかをしようとする。しかしなにをすればいい。
悪戯心の特性をもってすれば、なによりも早く動くことができる。しかしこの場でいくら早く動こうとも、ちーちゃんを助ける術がない。
鬼火、挑発、自己再生——ダメだ。今の自分が覚えている技ではちーちゃんを助けられない。
(まずい……どうすれば……!)
なにか、自分の使える補助技で彼女を助けられないのか。トンベリが必死に思考を巡らせていると。
背後から、颯爽と一つの人影が飛び出した。
「……っ」
その人影は、凄まじい勢いと速度でトンベリの真横を通過する。そしてその先にいるのは、ちーちゃんだった。
「……!」
空中でちーちゃんを抱きとめると、その人物はさも当然のように階段の段差に綺麗に着地する。
およそ人間とは思えない跳躍力とボディバランスに目を見開くトンベリ。トンベリよりもずっと先に進んでいたちーちゃんを、トンベリよりも低い位置から跳んで抱きとめ、段差になっていて足場が不安定な階段に着地するなどというのは、まず人間のなせる業ではない。
(まさか……ポケモン……?)
恐らくは、そうであろう。
自分たちがそうであるし、この街には普段は人間の姿をしたポケモンも多い。その線は大いにあり得る。
などと考えていると、トンベリはハッと思い出す。
「ちーちゃん……っ」
息を切らしながらも、トンベリはちーちゃんの元まで階段を駆け上がる。
しかし、それにしても遅い。運動神経という言葉とはまるで無縁なようだ。
そんなトンベリがぜいぜい言いながら駆け上がっていると、ちーちゃんが地面に降ろされるところだった。
「……大丈夫か?」
「えと……はい……」
「昨日の嵐で水溜りが多い。滑りやすいから気をつけろ」
「は、はい……ありがとうございます……」
言葉少なく、その人物は階段を上って立ち去ってしまった。
長い一時に感じたが、気づけば一瞬の出来事であった。
「……ちーちゃん……大丈夫……?」
「あ、トンベリくん。わたしはだいじょうぶだよ」
その者の姿が見えなくなると、トンベリがやっと階段を上ってくる。
正直、こちらの方が見ていて心配になる。早く休ませた方がいいのではないかと。
少し時間をおいて呼吸を整えると、トンベリは先ほどの人物が去っていった方を見遣る。
「今の人……何者……」
「さぁ……? でも、ちょっとかっこよかったね」
「え……」
「あと、らいきりさんたちと、ちょっと似てる匂いがした」
「雷切や……ココロ、と……?」
「ココロさんっていうか、ラグナさん、かな?」
「あいつの……キモイ、匂いは……嗅がない、方が……いい、と思う……」
「でも似てたよ?」
「……歳は……雷切たちと、同じ……くらい、か……?」
なんにせよ、ちーちゃんの命の恩人とも言える、先ほどの見知らぬ青年には感謝してもし足りない。
(……まあ、ちーちゃん、丈夫だし……この程度の、ところから、落ちても……掠り傷で、済みそう、だった、かもしれない、けど……)
伊達に鋼タイプを持ってはいない。
努力値を振る分トンベリの方が耐久は上だが、耐性の面ではちーちゃんの方が優秀なのだ。
二人は少しの間、思案していたが、ふとちーちゃんが思い出したように駆け出した。
「そういえばらいきりさんちに行く途中だったんだ。トンベリくん、はやくらいきりさんとこに行こっ!」
「あ……ちょっと、待って……さっき、転んだ、ばかり……」
「ほら、はやくはやくっ!」
「う……速い……」
結局。
先ほどの人物のことなどなかったかのように、ちーちゃんは忠告されたことなどもう忘れて、階段も道路もダッシュするのだった。
そしてその後ろを、トンベリがへとへとになりながらついていく。
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