二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 【ポケモン対戦小説】BOHパ対戦記録譚
- 日時: 2016/12/29 15:48
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
- 参照: https://www.youtube.com/watch?v=cSKjiY3FnrQ
はじめましての方は初めまして、そうでない方はこんにちは、モノクロです。
本作品は前作『バトル・オブ・ホウエン対戦記』に続く続編作品です。前作ネタなどもあると思いますが、今作だけでも内容は分かるように努めています。
前作の続編ということで、基本形式は前作と変わりませんが、今作はポケモン対戦をするにあたって、BOH——バトル・オブ・ホウエン縛りで対戦します。
バトル・オブ・ホウエン縛りというのは、前作品で題材にしたインターネット大会『Battle of Hoenn〜バトル・オブ・ホウエン』に出場可能なポケモンのみを使用する、という意味です。バトル・オブ・ホウエンに出場できるのは、ホウエン図鑑に登録されているポケモンのみ、作中に出て来るのもそれらのポケモンだけです。
では、次にこの作品の根本について説明しますと、言うなれば『ポケモン対戦小説』です。
対戦小説とはなにかと言いますと、『ゲームにおけるポケモン対戦そのもの』を題材とした作品で、動画投稿サイトに投稿される『ポケモン対戦実況動画』を小説風に書き起こしたものです。
なので本作には、種族値、努力値、個体値といった三値、ABCDSVといった略式記号、ガブ、バナ、クレセドラン、ゴキブロス、ドロポン、月光乱舞といった略称愛称蔑称などなどの、ポケモン廃人が多用する専門用語が多発します。できるだけ初心者の方にも分かるような作品を心掛けたいのですが、基本はある程度その手のことを知っている前提なので、ご了承ください。
作品の向上には全力を尽くすので、分かりにくい、もっとこうしてほしい、などの要望があればいくらでも申し付けてください。
そして、もしもこの作品で、対人戦やランダムマッチに興味を持った方がいたら幸いです。雑談板にモノクロの雑談スレ『DM第4相談室』というスレッドがあるので、よろしければお立ち寄りください。フレコ交換やフレ戦希望なども受け付けています。
勿論、普通に雑談したいという方も歓迎しますよ。
ちなみにこの映像板では同じものを題材としている作品に、モノクロも合作として参加している『俺と携帯獣のシンカ論』。舞台は違えど世界観を共有している、タクさん著の作品『ポケモンバトルM・EVO』があります。よろしければそちらもご覧ください。
というわけで、自称前置きが長いカキコユーザーのモノクロが、最後に注意書きを残して本編へと移ります。
※注意
・本作における対戦はほぼ“ノンフィクション”です。バトルビデオを見返して文字に起こしています(しんどい)。
・対戦相手の名前は改変して使用しています(物語の都合とプライバシーの問題に配慮)。
・対戦相手への誹謗中傷はおやめください(♂のメガクチートにじゃれつかせます)。
・ポケモンが喋ります(ポケモンしか出ないから仕方ない)。
・擬人化要素(イラストを描いて頂きました。許可を貰えたらそのうち紹介したいです)。
・茶番(前作より増量)。
・メタ発言(特に後語り)。
・にわか発言&下手くそプレイング(モノクロへの批判はOK!)。
・分かりにくい解説と文面(簡潔になるよう努めております)。
・BGMの種類増加(選出画面のURLのリンクからBGMに飛びます。種類はポケモンに限らず)。
・BOH縛り(詳細は冒頭の通り)。
・後語り担当は作者代理(名前はまだない)。
以上のことを留意して、どうぞ、モノクロのポケモンたちによるポケモン対戦を、お楽しみください——
オリキャラ募集的なものをしています。詳細は三戦目以降の後語りにて。投稿条件はこの作品が理解できること、ということで。
目次
零戦目「プロローグ」「を装ったあらすじです」
>>1
一戦目「確率世界」「と呼びたくなるほど理不尽です」
>>4 >>5 >>6 >>7 >>8 >>9 >>10
二戦目「ランダム対戦」「はレートもフリーも魔境です」
>>14 >>15 >>16 >>17 >>18 >>19
三戦目「永遠の宿敵」「は旧友にして戦友です」
>>20 >>21 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27 >>28 >>29
四戦目「ポケモンなしで対戦とは笑止千万」「ポケモンなら拾いました」
>>30 >>31 >>32 >>33 >>34 >>35 >>36 >>37 >>38
五戦目「後輩」「私のことですか?」「それは違うよ」
>>39 >>40 >>43 >>44 >>45 >>46 >>47 >>48 >>49
六戦目「先輩」「その中は百合の園でした」
>>52 >>53 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>63 >>76 >>77
七戦目「トンベリ君」「の憂鬱です」
>>91 >>94 >>95 >>96 >>97 >>101 >>104 >>105 >>106 >>107 >>108 >>109 >>110 >>111
バトル・オブ・ホウエンパーティー名簿一覧
>>78
タクさんより『BOHパ対戦記録譚』のタイトルロゴ(または表紙絵)のイラストを頂きました。
>>54
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- 茶番2 ( No.21 )
- 日時: 2015/03/18 20:23
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)
「——それで、トンベリは今にも死にそうなほどに疲労困憊なのか」
「まったく、部屋に引きこもってばかりいるからだよトンベリ君。引きニートめ」
「……引き、こもり、のつもりは、ない……対戦、して、るし……」
「HAHAHA! まあまあ、なんにせよ若いとはいいことですよぉ。ちーちゃんさんも、随分と張り切っているみたいですしねぇ」
「えへへ、なんだか昨日は、いっぱい対戦するぞー、って思ってたので、対戦できなかったのが残念で」
「そういえば一昨日のちーちゃん、あまり選出されなかったから戦い足りないって感じだったわね。その反動かしら」
時は流れ、(主にトンベリが)身体を引きずってなんとか雷切宅へとたどり着いた二人は、対戦前に軽く雑談として、先ほどのことを皆に話していた。
「ま、なんでもいいけどよ、ちーちゃんを助けたっつー奴には感謝だな」
「うちの大事なエースだものね。怪我でもされて、対戦できなくなったら困るわ」
「うちのお父さんみたいだねそれ。まーそうでなくっても、ご主人様の激怒パンチが飛んでくるしねー」
「パンチで済めばいいがな。下手すりゃ俺ら大量虐殺されるぞ」
「六人しかいないのに大量とはこれいかに」
パーティー一つのうち五体ものポケモンが消し飛べば、ポケモン界では大量虐殺になるだろう。
まあ、いくらなんでも虐殺はしないが。借金の上乗せとかはするかもしれない。
「さて、そんじゃそろそろ今日の対戦に行くか。ちーちゃんやトンベリもやる気みてーだしな」
「はいっ! 今日もがんばりますよー!」
「……オレは、できれば……ベンチで……」
「残念トンベリ君、ベンチウォーマーの座は譲らないよ! このパーティーで選出率が一番低いのは私なんだからねっ!」
「……そんなことで、張り合われても……というか、雪姫……体、冷たいじゃん……暖まらない……」
「レートパで一番先に首を切られたのは俺だがな」
「あたしたちのパーティー、選出率の格差が酷すぎるわね」
トップトンベリ、次点でちーちゃん、ラグナ、次いでココロ、ドンケツを雷切と雪姫で争っている感じだ。
そんなこんなでわいわいやりながらもランダム対戦へ赴こうとする一同を、引きとめる音が鳴る。
コンコン
「……誰だ? こんな辺鄙な家に客とは珍しい」
「というか、インターホンあるんだから使えばいいのに……」
コンコン
「はいはい、ちょっと待ってくださいね」
再び扉からノック音。
なにゆえ誰もインターホンを使わないのか、ということに疑問を抱きつつも、ココロが家の戸を開く。
そして、来訪者の姿が露わになった。
「邪魔するぞ」
凛とした声。精悍な顔立ち。それに続き、なびく白い長髪。細身だが、無駄なく筋肉が引き絞られた体躯。
武人、という言葉が真っ先に浮かんでくる。そんな容姿をしていた。
そして、その姿を見て、真っ先に声を上げたのは、年少組の二人だった。
「あ! あなたは!」
「……さっきの……」
二人は、その来訪者の姿に覚えがある。
その人物はまさしく、階段から転げ落ちそうになったちーちゃんを助けた恩人だった。
「さっきはありがとうございました!」
「む? ……あぁ、階段で出会った子供たちか」
客人の方もそれなりに驚いていたが、案外淡白な反応であった。
そして、その人物の来訪に最も吃驚しているのは、ちーちゃんでもトンベリでもない。
ガタッ! と、椅子を蹴り飛ばすように、雷切が立ち上がる。それに続き、ラグナロクも横に並んだ。
「……久しぶりだな、雷切、ラグナロク」
「HAHAHA! そうですねぇ、何年ぶりでしょうかぁ……グレンさん」
「てめぇ……!」
突然の来訪に最も驚愕していたのは、ラグナロク、そしてそれ以上に——雷切だった。
雷切は拳を握りしめ、いつも悪い目つきをさらに鋭く来訪者を睨みつけると、床を蹴り飛ばすように飛び出した。
そして固めた拳を、グレンと呼ばれた人物へと振りかざす。
「なにしに来やがった!」
【雷切の雷パンチ!】
「ちょ……ライ!?」
「らいきりさんっ!?」
「っ……いきなり、なにを……」
「雷パンなんて今まで使ったことないくせに、無茶しちゃってー」
突然の攻撃に戸惑う一同だが、ラグナロクと、そしてターゲットにされた本人、グレンは動じることなく、
「……ふんっ」
[グレンHP:105/155]
その拳を、真正面から受けた。
だがただ喰らったわけではない。顔面に叩きつけられた拳——その手首を、がっしりと掴み返す。
「貴様の拳は、相変わらずぬるい」
「あぁ!?」
「いつも言っているが、その程度では——私は倒せん!」
【グレンのブレイズキック!】
グレンは掴んだ腕を自分側へと引っ張りつつ、腰を捻って回転を加えた、回し蹴りのようなミドルキックを雷切の腹へと炸裂させる。
「がはぁ!?」
【効果は抜群だ!】
強烈な一撃を叩き込まれ、その勢いのまま吹き飛ばされる雷切。
床に叩きつけられ、勢いを殺せず近くのテーブルや椅子を巻き込んで転げ回る。
【雷切は倒れた!】
いつも自分のことを紙耐久、弱耐性と卑下しているだけあってか、その一撃で雷切はノックダウンした。
「ラ、ライ……」
「だいじょうぶ、ですか……?」
「……弱い……」
「くそ雑魚ナメクジだね」
雷切を心配するものと呆れるものとに分かれる外野をよそに。
グレンは倒れた雷切の下へと歩む。
「ぐ……っ!」
「立て、雷切」
そう言われ、自分を見下ろす位置にあるグレンをただ睨みつける雷切だが、彼の行動に最も呆れているのは、他ならぬこの来訪者だったのかもしれない。
グレンは一呼吸おいて、雷切を見下ろした状態のまま、目的を告げる。
「今日は殴り合いに来たのではない——仕事の話だ」
- 茶番3 ( No.22 )
- 日時: 2015/03/18 23:29
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)
「——で、なんの用だよ、グレン」
一悶着あったが、なんとか雷切も収まり、グレンと向かい合って話し合うまでに至った。
……とはいえ、低い横長のテーブルを一つ隔て、雷切はそのテーブルに組んだ足を乗せているという、およそ話し合う気のないような状態だが。
一方グレンは、矯正器具でも背中に差しているのではないかと思うほどに背筋を伸ばした姿勢だ。
「……ねぇ、ラグ」
「なんでしょう?」
雷切とグレン以外の者はテーブルを囲うようにして立っているのだが、ココロは横にいるラグナロクに尋ねた。
「あの二人、なんであんなにも険悪なのかしら?」
昔からの知り合いのようだが、しかし出会って早々、あの火力の足りない雷切が突っ込んでいったのだ。スペックはアレでも自分の性能をきっちり理解している雷切らしからぬ蛮行には驚きを禁じ得ない。
逆に言えば、そうするだけの恨みつらみが、雷切はグレンにはあるのかもしれない。そう考えても不思議はないだろう。
だが、
「とんでもない……雷切さんもグレンさんも、お二人とも仲は凄く良いですよぉ」
「はぁ……? いや、それはないでしょう、さっきと、今の様子を見たら……」
「これでも御三家の好、昔からずっと一緒にいた旧友ですからねぇ。僕からしてみれば、喧嘩するほど仲が良い、というやつですよぉ」
「ふぅん……」
確かに、恨みがあるのなら、こうして話し合いの席には着かないか、といまだ釈然としないながらもココロは納得することにした。
「単純に雷切さんが、バシャーモという種族が嫌いなだけですからねぇ……まぁ、その原因となったのがグレンさんですけども」
「鶏が先か、卵が先か、ってことかしら」
「種族が根源的なもの、卵とするなら、この場合は鶏が先でしょうかぁ。雷切さん、今まで一度も殴り合いでグレンさんに勝ったことがないので、そのあたりが絡んでいるんだと思いますよぉ」
「むしろジュカインが殴り合いで勝てる種族ってなんなのかしらね」
そもそも殴り合う種族値をしていないので、考えるだけ無駄ではあるのだが。
しかしチョッキジュカインなど、案外面白いかもしれない。
などと外野のことはそろそろ置いておき、本題である。
「今回は、貴様に仕事の話を持ってきた」
「はんっ、仕事ねぇ……俺みてーなのに、そんな重要なことを任せちまっていいのか?」
「無論、すべて一任するつもりはない。あくまで手伝いだ」
「それでも、俺なんかにそんな話を持ちかけるのか?」
「貴様とは付き合いも長い、信用もしている……それに、貴様の、いやさ貴様たちの置かれている状況も、私は知っている」
グレンの言葉に、雷切はぴくりと眉を動かす。
今の自分たちの置かれている状況。それは、つまり、
「金が必要、なのだろう?」
「…………」
「当然、貴様らの債務がすべて消えるほど良い仕事ではないがな。しかし足しにはなるだろう」
「……その話、どこで聞いたんだ?」
「ボックスに一度戻った時に、な。そうでなくとも、ボックス内——いや、主のポケモンの界隈では、今や貴様らの話題で持ちきりだ」
「一応、聞いておくぜ。どういう話題だ」
「無論、バトル・オブ・ホウエンだ」
バトル・オブ・ホウエン。
第六世代で行われた過去最大級の規模のインターネット大会で、いわばホウエン地方のポケモン限定戦。
雷切たち六人は、かつてそれに出場した。その記憶はまだ新しい。
しかし、いや、だからこそ、か。
「……冷やかしに来たのか」
雷切は目を細め、声のトーンを落とす。
「大口叩いてボックスを飛び出した野郎が、生意気にも大規模な大会に出て——その結果を笑いに来たのかよ」
そんな雷切の言葉で、グレン以外のメンバーの表情が、少しだけ沈む。
それもそのはず。大会終了直後から察していたが、雷切たちの大会結果は、お世辞にも良いものではなかった。
「レートは1500半ばと中途半端、ランクインするどころか順位は五桁、大口叩いた奴がざまーねー結果だぜ。いい笑いもんだな」
「あまり自分を卑下するな。私は貴様を貶めるつもりはない。どころか、私は貴様を買っているくらいだ」
「あん?」
言って、グレンは周囲のメンバーたちに、順番に目を向ける。
「ジュカイン、サーナイト、クチート、ヤミラミ、ラグラージ、ユキメノコ……成程、確かにバランスの悪い面子だ。よくこれでレート1500を切らなかったものだ」
「単体スペックは優秀な奴ばかりだからな。よほど立ち回りをミスらなきゃ当然だ」
「しかし炎が重いな。私一人で、ラグナロク以外は殲滅可能だ」
「……んだよ、自分を売りに来たか? 確かに俺の代わりにお前が入るだけで、火力も速度も上がり、勝率は伸びるだろうなぁ」
「だが、そんな炎が重いパーティーでも、戦い抜いたのは貴様の功績ではないのか?」
自虐する雷切に、グレンは問う。そして問いながら、他のメンバーに再び目を向けた。
それだけで、十分だった。
「もう一度言うが、私は貴様を買っているのだ。ジュカインなどという種族は、時代の波に浚われたのではないかというほどに環境では動きづらい種族だが、しかしその中でも——雷切、貴様の“対戦外”での能力は、評価に値する」
「……戦うためにいるポケモンが、対戦以外の能力を評価されても嬉しくねーっての」
「だろうな。貴様は昔からそう言っていた。だが」
逆接して、グレンは続けた。
「主のポケモンたちもまた、バトル・オブ・ホウエンに出場した貴様たちを評価している。雷切、貴様自身がそうであったように、ボックスには育成済みにも関わらず、レート、フリー、フレンド、どの対戦でもほとんど選定、選出されないポケモンがいる」
「そうだろうな……それがなんだよ」
「貴様たちのバトル・オブ・ホウエン出場は、そういったポケモンたちに影響を与えているのだ。特に、ホウエン出身のポケモンには、一際強い影響をな……貴様らの影響によって、ボックスからこの街に来たり、また新たに主のポケモンとなったホウエンの者がいると聞き及ぶ」
この話には、流石の雷切も目を見開く。まさかあの大会出場が、他のポケモンにそこまで強い影響を与えているとは思いもしなかった。
そして、グレンは調子を崩さず、さらに続ける。
「貴様が思うほど、周りは貴様を過小評価していない。むしろ、貴様は、貴様たちはいまや、主のポケモンの中では希望の星そのものだ」
マイナーでも、不遇でも、環境に置いて行かれても、出番がなくても。
努力次第で、意識次第で、活躍することもできる。
雷切の行動は、ボックスのポケモン、ホウエン出身のポケモンたちに、そのことを教えていたのだ。
「……少し褒めすぎたか。一応言っておくが、周囲の反応には私も賛成だ。しかし雷切、貴様対戦におけるスペックが低いことは抗いようもない事実だ」
「うっせぇ、んなこた俺が一番分かってんだよ。わざわざ言うな、そのままいい話で纏めとけよ」
と、口では言うものの。
毒気を抜かれたように、雷切はテーブルに乗せていた足を降ろした。
「仕事の話、だったか……とりあえず聞いてやる。言え」
「これでも善意で持ちかけているのだが、まあいい。私の仕事については知っているか?」
「無職だろ」
「確かに履歴書に記載する上ではフリーターと変わらんな」
しかし、それでもあえて言うならば、
「簡単に言うと、荒事の類だな。要人護衛や凶暴化したポケモンの討伐、裏社会における抗争の鎮圧などだ」
「要は殴り合いだな。筋肉で物事を済ませる脳筋野郎っぷりは相変わらずか」
「先ほどの第二ラウンドを今から始めてもいいのだぞ?」
グレンが拳を固め始めるものの、すぐに身を退いて話を戻す。
「今回はそういった仕事の手伝いを頼もうと思ってな。ここから少し離れた辺境の地に、龍型のポケモンが凶暴化しているらしい。私はその討伐の任を任されたのだが」
「数が多かったのか?」
「そんなところだ」
いつもなら単身で強行突破するところだが、そのリスクを負うくらいならば、誰かの手を借りた方が効率的だ。
そしてその考えは合理的でもある。
「無論、報酬は山分けだ。悪い話ではないと思うが」
「そうだなぁ……」
雷切は少し思案しつつ、ちーちゃんとトンベリを一瞥する。
「……危険な仕事なのか?」
「それなりには、とだけ言っておこう。貴様の身体能力があれば、さほど問題ではないだろうが」
「だが、お前が負傷する可能性を感じるほどではあるんだよな」
「遺憾ながらな。そもそも私の仕事はすべて負傷にリスクを伴う荒事ばかりだが」
「ふむ……分かった、いいぜ。その仕事、引き受けてやる」
再び少しばかり思案して、雷切はOKを出した。
だが、同時に条件も指定した。
「引き受けてやる——が、俺たちのパーティーから全員は出さねぇ」
「……というと、なんだ」
「荒事なら、ガキ共は置いてくぜ」
そう言って雷切が目を向けたのは、先ほど一瞥したちーちゃんとトンベリだった。
まだ幼いこの二人を今回の仕事に連れて行くのはリスクがあると思われる。ゆえに、この二人は置いて行こうというのだ。
「ドラゴン相手なら、ちーちゃんはかなり有利だが、流石に危険だしな」
「ふむ、妥当な判断だ」
「え、でも、らいきりさん……っ」
「……ちーちゃん、これは、流石に……雷切の、言うとおり……」
「トンベリくん……」
通常の対戦だったらまた話は違うが、今回は事情が事情なだけに、幼い二人は連れていけない。
このことについては、他のメンバーも同意を示した。
「……決まりだな。詳細は後日連絡する。出発は三日後だ」
最後にグレンがそう纏め、この日は解散となった。
- 茶番4 ( No.23 )
- 日時: 2015/03/21 01:50
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)
凶暴化したポケモンが暴れているという場所は、街から離れた荒野だった。
荒れた野原と書いて荒野。その通り草木のほとんど生えていない荒地だが、しかしこの荒野は街に入る行商人の陸路として利用されているため、道もそれなりに整備されており、人通りもそこそこある。
ゆえに、ポケモンの凶暴化は由々しき問題なのだ。
雷切たちはグレンに先導され、そのポケモンたちに強襲をかけるべく、奴らの住処の洞窟へと向かっていた。
「しっかし、ポケモンの凶暴化、ねぇ……まあ珍しいことってほどでもねーが、こういことって頻発しているのか?」
「どうだろうな。しかし、以前よりもその手の仕事が多くなっているようには感じる。もしや、ボックスサーバー内でのことが関係しているのやもしれん」
「ボックスサーバー? なんかあったのか?」
「私も詳細は知らない。しばらくボックスには帰還していないのでな。お前たちについても、実は又聞きで知ったことだ」
故にこれから話すことも又聞きだ、とグレンは前置きする。
「ボックスサーバーの方で、なにやら問題が起こったらしい。ポケバンクの使用不能、ボックス内外への移動制限、内部抗争染みたことも起こっていると聞く」
「おいおい、なんかすげーやべーことになってんじゃねーの……ひょっとして、主人野郎に連絡がつきにくいのも、それが原因か?」
「言ったろう、詳細は知らないと。しかしそのことと関係しているようではあるな……仮にそのような事態が発生していたとして、主の行動から察するに、主はそういった制約下の状況でも、裏ルートを用いて抜け道を作り、制限を掻い潜っているようだが」
「無茶苦茶やってるな、あいつも……」
「お陰で元々少なかったポケモン出入りが、より少なくなっている。継続的なものにはなっているがな。しかし他サーバーは、そもそも出入りが不可能な状況、より酷いものではボックス内で戦闘が起こっているとも聞き及ぶ。PGLのメインネットワークサーバーが襲撃されたことが原因だという説もあるな」
「……流石にデマじゃねーのか? それは」
ボックス内で戦闘などまずありえない。ましてやほぼすべてのプレイヤー情報を管理しているPGLのメインサーバーが襲撃されるなど、流石に非現実甚だしい。どんなウイルスプログラムが流れたらそんなことになるのやら。いくらポンコツ運営でも、そこまでザル警備ではないはずだ。
ボックスの機能不全というだけでも怪しいのに、半信半疑どころか、かなり疑わしい話だ。噂として広まる途中、どこかで誰かが誇張したようにも感じる。
そして、それはグレンも分かっていることだ。
「詳細は未知だ。我々にはそれを確かめる術はない」
「は? どういうことだよ」
「ボックスへの帰還を禁止されているのは、貴様だけではないということだ」
どうやら、グレンも雷切と同じように、ボックスに戻れない状態でいるらしい。
いや、グレンだけではない。少なくとも、街に出ているポケモンたちは、皆そのような状態だそうだ。システムどうこうではなく、単純に主からこの街に留まるように言いつけられているとのこと。
加えて言うのであれば、雷切たちの主人は、ボックス内のポケモンを次々と街に送り出しているという。
「……これも、どこまで本当なのか分かんねーな」
「この街は外界——ボックスからは独立しているからな。仮に向こうのサーバーがダウンしたとしても、こちらに影響は及ばない。即ち、我々はこの街にいる限り真実を知ることはできない。が、しかし、主の不可解な行動と、前述の噂……無理やり繋がりを求めるのは愚考だが、しかし無関係とは思えん。やはりボックスでなにかあったと見るべきだろうな」
「だが、俺たちには手出しできねーし、俺たちの出戻りを禁止してるってことは、向こうで処理するつもりなんだろ」
問題ない、と雷切はそう結論付ける。
なにせボックスには、自分たちよりもずっと腕の立つポケモンがわんさかいるのだ。
ポケモン対戦界の基準ガブリアス、御三家最速ゲッコウガ、鉄壁防御女神クレセリア——他にも数々のポケモンたちがいる。
それらのポケモンがいれば、問題はないだろう。そしてその意見は、グレンも同意だった。
「むしろ足手纏いを追っ払いたくて、俺らを街に放ったのかもしれねーしな。あいつはあいつで勝手にやるだろ。なら俺は、俺の方で勝手にやらせてもらうぜ」
「……流石に短絡だと思うが、今はそうするしかなあるまいな。主も、恐らくはそれを望んで我々のボックスへの帰還を制限しているのだろうしな」
ここでいくら議論をしたところで、なにかが変わるわけではないし、そう簡単に変えられるものでもない。
腐っても自分たちの主人だ。その指示、行動は二重の意味で絶対的だ。
一つは、絶対的強制力。そうしろと言われてしまえば、こちらからは反抗できない。
もう一つは、絶対的自信。主人が現状の行動が最善と判断したのなら、それが正しい、正解の行動であると確信しているからに他ならない。
ならばそんな主のポケモンとして、その意向に沿うのが、主のポケモンたる使命とも言える。
……と、思っているのは、ラグナロクやグレンくらいなもので、実際は、
(借金返済で大変だってのに、面倒なことに巻き込まれたくねーしな……勝手にやってやがれってんだ)
(あの人はまた無茶そうなことを……こっちに飛び火しないことだけを祈るばかりね)
(串カツ食べたい)
とかそんなことを考えている連中ばかりである。
などとなんやかんややっていると、先導していたグレンが足を止めた。
「着いたぞ」
「……ここか。奴らの住処ってのは」
「あぁ」
その声の先には、真っ暗闇に包まれた、洞窟があった——
- 選出画面 ( No.24 )
- 日時: 2015/03/21 15:50
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)
- 参照: https://www.youtube.com/watch?v=uOyy2oynLno
洞窟の中は真っ暗だが、ココロがフラッシュで洞窟内を照らしてくれたため、視界は明瞭だった。
内部は大きな一本道が奥まで続いており、その周りにはいくつもの横穴が空いている。
現在、雷切たちは一本道をひたすらまっすぐに歩いていた。
「……この穴はなんだ?」
「恐らく、低級ドラゴンの寝床だろう。今は休眠中なのかもしれんな。いつもなら、もっと外に溢れているはずだ」
「んなこと分かんのかよ」
「仕事柄、経験上、その程度の理解は及ぶ」
横穴の先にいるのが低級なドラゴンであるのなら、この大きな道の先にいるのは、恐らく——
そう思考を進めたところで、グレンが足を止めた。
「……どうした?」
「この先は広間のようになっているようだ。少し様子を窺う」
そう言って、一同は身を縮める。
そして、先にある広間のようになった空間に目を向けた。
そこにいたのは、三体のポケモン。
オノノクス、カイリュー、リザードン——いずれも龍型のポケモンだ。
「恐らく、奴らがこの洞窟内に潜む龍たちのリーダーだな」
「では早速、皆で討伐に向かいましょうかねぇ——」
「待て」
ラグナロクが勇んで出て行こうとするのを、グレンが制する。
「広間のようであるとはいえ、あの空間はそれほど広くない。我々が総出で出向いても、むしろ動きにくくなるだけだ」
「確かにな。相手は三体、ならこっちも同数で出て行く方がいいだろ」
さぁ、ここから選出決めの時間だ。
相手はドラゴンタイプ二体と、炎・飛行のリザードン。
もしかしたら援軍で他のドラゴンタイプも呼ぶかもしれないが、とりあえずこの三体を相手取るとして考える。
「さて、相手はドラゴンばかりっつーことで、ココロか雪姫には行ってもらいてーが……」
「あたしは今回CSのチョッキ型。リザードンとは流石に殴り合えないし、オノノクスも勝てるかどうか怪しいわね」
「ドラゴンへの打点はそれなりにあるし、リザはなんとかしねーとなぁ」
「僕も今回はステロ欠伸型なので、リザードンには打点がありませんねぇ」
「ならば私が行こう。今回は炎タイプに打点を持っている」
そもそもこの仕事を持ちかけたのはグレンなので、グレンは選出されてしかるべきとも言える。
さて、残り二体だ。
「んじゃ、とりあえずラグナ、お前もいけ」
「僕ですかぁ? しかしどのポケモンにも打点がありませんよぉ」
「ステロがそこそこ刺さってるし、お前なら連中相手にも受け出しができる。とりあえず壁になれ」
「……そんなことだろうと思っていましたよぉ。仕方ないですねぇ」
渋々ながらも、ラグナロクも選出が決定した
これで、残りは一体。
「最後はどうするかね……」
「リザはともかく、オノノクスやカイリューに打点が欲しいでしょうし、ドラゴンタイプの弱点を突ける技を持っている方がいいわね」
「だったら雪姫、行くか」
「え? 無理」
「あぁ!? なんでだよ!」
いつも出番が少なく、時々駄々をこねては雷切をイラつかせる雪姫は、その数少ない出番を与えてやろうという時に、唐突かつ協調性のない拒否を示す。
その返しに怒りを露わにしつつ詰め寄る雷切に、雪姫は手に持った機械を軽く掲げた。
「……なんだこれ」
「ハンディカメラ」
「なんでそんなもん持ってんだよ……」
「ちーちゃんやトンベリ君に、雷切君たちの勇姿を録画して見せてあげようかと思って。というわけで、私は今回記録係だから無理」
「ざけんな、んなもんココロに任せて行ってこい」
「やだもん」
「てめぇ……!」
相手パーティー的に、雪姫はかなり刺さっている。なのでここは選出したいところだが、当人がそれを渋る。
このまま雪姫が折れるまで押し問答を続けるという手もあるにはあるが、あまり悠長にやっていると、相手の方がこちらに気付いて動きかねない。
「くっ……畜生め、仕方ねぇ。俺が行く!」
「……大丈夫なのか?」
「一応、今回の俺はめざ氷持ちだ。オノノクスはともかく、カイリューには打点がある」
しかしH4振りメガマンダをギリギリ確一にする程度の火力なので、マルチスケイルが潰れていたとしても、カイリューを倒せるかどうかは甚だ怪しいところではあるが。
「決まりだな。ふむ、この三人か……」
「HAHAHA! 久し振りに、雷切さん、グレンさん、僕の御三家トリオですねぇ!」
「嬉しくもなんともねーがな。だがしゃーねぇ、行くぞお前ら!」
- 対戦パート1 ( No.25 )
- 日時: 2015/03/21 15:53
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)
【荒ぶる龍たちが勝負を仕掛けてきた!】
【行け、ジュカイン!】
「さぁ、対戦開始だな。先発はリザ読みで俺だ」
「相手はどう来るのか……」
【龍たちはリザードンを繰り出した!】
「HAHAHA! 先発読みは大当たりですねぇ!」
「……なーんか、忘れてる気がするんだよねぇ」
「というかこの対面、なんだか見覚えが……」
「うっし、んじゃとりあえず一発ぶちかますか!」
と、雷切が岩雪崩を放つ動作に入ろうとした、その直後だ。
相手のリザードンの持つメガストーンが反応した。
【リザードンのリザードナイトXと、龍たちのキーストーンが反応した!】
「……は?」
「あ」
「……なんだか、見覚えのある光景が……」
【リザードンはメガリザードンにメガシンカした!】
雷切の読み通りと言えば読み通り。リザードンはメガシンカした。
ただし、雷切が役割遂行できるメガリザYではなく、ドラゴン複合で岩が二倍弱点となる、メガリザXの方であったが。
まるっきりBOHパ対戦記録譚、一話の展開と同じである。
「おいおいマジかよ、メガリザXか……!」
「? どうした、貴様はリザードンに打点があるのではないのか?」
「俺の役割対象はリザYの方なんだよ!」
「な……なぜそれを先に言わない! 相手は龍だと言っただろう!」
「だからってXとは限らねーだろうが!」
【ジュカインの岩雪崩! 効果は抜群だ!】
[リザードンHP:ギリ6割]
【ジュカインの命が少し削られた】
[ジュカインHP:131/145]
そんなこんなやっているうちに、雷切の岩雪崩がヒットするも、ダメージは半分も届かない。
しかし岩雪崩でこのダメージなら、次の地震で落とせる可能性がある。ここでなにか奇跡が起こって、雷切が起点にされずなおかつ生き残ることができればまだワンチャン——
【リザードンの龍の舞! リザードンの攻撃と素早さが上がった!】
——残るわけもなかった。
「ちょっと、積まれてるわよ!」
「流石に今回も都合よく怯むなんてことはねーか……どうすっかね、これ」
とりあえず次の行動だが、一舞したメガリザXの攻撃を後受けできるようなポケモンは我がパーティーには存在しない。ラグナロクでも、オボン込みでも一発耐えるのが限度だろう。
「とりあえず、俺はここで捨てるっきゃねぇ。そしてラグナを死に出しからの、吠えるで流すか……」
「私が出て仕留めるという手もあるが」
「守る読みでもう一度積まれたら本格的にゲームオーバーなうえ、メガシンカしてもお前は準速だろ。種族値では同速だから、相手がSに補正をかけていたら一加速でも抜かれる。それならラグナを壁にして流した方が確実だ」
「壁という言い方が引っかかりますが、致し方ありませんかねぇ……」
とりあえずここで雷切は捨てるしかない。
一応、相手が舐めてかかってもう一舞する、なにかを読んだ命中不安技を外す、などの奇跡的展開を信じて地震を選択するも、彼の運命は変わらない。
少々、意外な過程ではあったが。
【リザードンの大文字! 効果は抜群だ!】
【ジュカインは倒れた!】
「あっつ! ……が、熱いだけだな。衝撃がねぇ」
「不可解だな。龍の舞を使用しておいて、特殊技の大文字とは……」
「確かに変だが、あり得ないってほどでもねーか? こいつは両刀メガリザXっぽいぜ」
メガリザードンXと言えば、特性の硬い爪を生かした物理アタッカーが多いが、元のリザードンが特殊よりのステータスをしていただけに、特殊攻撃もそれなりに高い。
なので、奇をてらった特殊型——とはいかずとも、役割破壊のような感覚で両刀にするケースも、少数ながら存在する。
龍の舞という積み技こそあれど、今回もそのケースなのだろう。
「まあどの道、これで俺はノックダウン……ラグナ、行け」
「了解ですよぉ!」
【行け! ラグラージ!】
ラグナロクの役目は、ともかく積んだメガリザードンを流すこと。両刀ならAを削っていることも十分あり得るので、一撃はほぼ確実に耐えられるはず。
ここでS上昇だけでもなんとか打ち消して、後でグレンに掃除してもらうのが一番だ。
「……来るぞ、ラグナロク」
「分かってますよぉ!」
【リザードンのドラゴンダイブ!】
相手のメガリザードンは、洞窟の天井付近まで急上昇し、即座に急降下する。
そして、凄まじい勢いのまま、ラグナロクへと突撃した。
「ふんぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!」
「気張れラグナ! 耐えろ!」
「HAHAHA! これくらい余裕ですねぇ!」
と、軽く笑って見せるラグナロク。確かに今回のラグナロクの耐久なら、一撃はそれなりの余裕を持って耐えられるはずだったが、
【急所に当たった!】
[ラグラージHP:41/207]
残念ながら、当たり所が悪かったようだ。
「おいコラ。なにが余裕だ!」
「急所は仕方ないですよぉ!」
せっかくの壁役が、ここまで削られてしまうとかなり心もとない。
【ラグラージはオボンの実で体力を回復した】
[ラグラージHP:92/207]
オボンが発動して少しばかり体力を回復するも、それでも残りHPは半分を切っている。これで、残るカイリューやオノノクスの攻撃を耐えられるかどうか。
「む、むぅ、ですが、とりあえずあのリザードンだけでも流しますよぉ!」
【ラグラージの吠える!】
【カイリューは戦闘の引きずり出された!】
「出て来るのはカイリューか……まあ、正直なにが来ても大して変わらねーか」
「次はどうしますかぁ?」
「とりあえず、マルスケだけでも潰しとくか。この体力じゃお前も長くはもたねーだろ。ここでラグナも捨てて、あとはグレンがなんとかする」
「無茶苦茶な作戦だな」
「こうなった以上、そうするしかねーよ。ごちゃごちゃ言うな」
「雷切君が最初に一話と同じ轍を踏んじゃうからー」
「うっせぇ」
ともあれ、とりあえずここはカイリューのマルチスケイルだけでも潰しておきたい。
そうすれば、まだグレンで突破できる可能性が広がる。問題は、ラグナロクが今の体力でカイリューの攻撃を一撃耐えられるかどうかだが。
そういう問題ではないことも、起こり得るのだ。
【カイリューの龍の舞! カイリューの攻撃と素早さが上がった!】
「っ、龍舞だと……!?」
「これは一本取られたな。このタイミングで龍の舞とは」
「くそっ、まさか吠えるで流された直後に舞うとは思わなかったぜ……!」
確かに、カイリューも龍の舞で抜きエースになるメジャーなポケモンの一体だが、メガリザXが龍の舞を使っていたので、二体も抜きエースのようなポケモンがいるとは思わなかった。
なによりも、先ほど吠えるを見たばかりで、まさかいきなり積むとも思っていなかったのだ。なかなかどうして、相手は肝が据わっている。
「まーでも、こっちも積んでもいない相手に吠えるわけないし、舞った後に仕留められるなら、ここを起点にしてもいいような気はするよね」
「そんでも心理的に積みにくいはずなんだがな……」
【ラグラージの波乗り! 効果はいまひとつのようだ……】
[カイリューHP:満タン−カスダメ]
とりあえず波乗りでマルチスケイルを潰すものの、ダメージ自体はほぼ皆無に等しい。
本当に、マルチスケイルを無力化しただけのようだ。
「流石に次の攻撃は耐えられねーか……?」
「積むタイプのカイリューじゃ、無理でしょうね」
「くっ、だったらもうここでラグナも捨てて、次のグレンで守ると龍舞の読み合いでなんとかするっきゃねーか……さっきのリザみてーにドラゴンダイブしてくる可能性があるし、一応ここは吠えるを選んどくか」
淡い外しを期待すものの、こういう時に限って相手の攻撃は外れないものだ。
しかし、どうもこの対戦は、良くも悪くも予想外の事態が頻発するようだった。
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