二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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【ポケモン対戦小説】BOHパ対戦記録譚
日時: 2016/12/29 15:48
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
参照: https://www.youtube.com/watch?v=cSKjiY3FnrQ

 はじめましての方は初めまして、そうでない方はこんにちは、モノクロです。
 本作品は前作『バトル・オブ・ホウエン対戦記』に続く続編作品です。前作ネタなどもあると思いますが、今作だけでも内容は分かるように努めています。
 前作の続編ということで、基本形式は前作と変わりませんが、今作はポケモン対戦をするにあたって、BOH——バトル・オブ・ホウエン縛りで対戦します。
 バトル・オブ・ホウエン縛りというのは、前作品で題材にしたインターネット大会『Battle of Hoenn〜バトル・オブ・ホウエン』に出場可能なポケモンのみを使用する、という意味です。バトル・オブ・ホウエンに出場できるのは、ホウエン図鑑に登録されているポケモンのみ、作中に出て来るのもそれらのポケモンだけです。

 では、次にこの作品の根本について説明しますと、言うなれば『ポケモン対戦小説』です。
 対戦小説とはなにかと言いますと、『ゲームにおけるポケモン対戦そのもの』を題材とした作品で、動画投稿サイトに投稿される『ポケモン対戦実況動画』を小説風に書き起こしたものです。
 なので本作には、種族値、努力値、個体値といった三値、ABCDSVといった略式記号、ガブ、バナ、クレセドラン、ゴキブロス、ドロポン、月光乱舞といった略称愛称蔑称などなどの、ポケモン廃人が多用する専門用語が多発します。できるだけ初心者の方にも分かるような作品を心掛けたいのですが、基本はある程度その手のことを知っている前提なので、ご了承ください。
 作品の向上には全力を尽くすので、分かりにくい、もっとこうしてほしい、などの要望があればいくらでも申し付けてください。

 そして、もしもこの作品で、対人戦やランダムマッチに興味を持った方がいたら幸いです。雑談板にモノクロの雑談スレ『DM第4相談室』というスレッドがあるので、よろしければお立ち寄りください。フレコ交換やフレ戦希望なども受け付けています。
 勿論、普通に雑談したいという方も歓迎しますよ。

 ちなみにこの映像板では同じものを題材としている作品に、モノクロも合作として参加している『俺と携帯獣のシンカ論』。舞台は違えど世界観を共有している、タクさん著の作品『ポケモンバトルM・EVO』があります。よろしければそちらもご覧ください。

 というわけで、自称前置きが長いカキコユーザーのモノクロが、最後に注意書きを残して本編へと移ります。


※注意
・本作における対戦はほぼ“ノンフィクション”です。バトルビデオを見返して文字に起こしています(しんどい)。
・対戦相手の名前は改変して使用しています(物語の都合とプライバシーの問題に配慮)。
・対戦相手への誹謗中傷はおやめください(♂のメガクチートにじゃれつかせます)。
・ポケモンが喋ります(ポケモンしか出ないから仕方ない)。
・擬人化要素(イラストを描いて頂きました。許可を貰えたらそのうち紹介したいです)。
・茶番(前作より増量)。
・メタ発言(特に後語り)。
・にわか発言&下手くそプレイング(モノクロへの批判はOK!)。
・分かりにくい解説と文面(簡潔になるよう努めております)。
・BGMの種類増加(選出画面のURLのリンクからBGMに飛びます。種類はポケモンに限らず)。
・BOH縛り(詳細は冒頭の通り)。
・後語り担当は作者代理(名前はまだない)。



 以上のことを留意して、どうぞ、モノクロのポケモンたちによるポケモン対戦を、お楽しみください——



 オリキャラ募集的なものをしています。詳細は三戦目以降の後語りにて。投稿条件はこの作品が理解できること、ということで。



目次

零戦目「プロローグ」「を装ったあらすじです」
>>1

一戦目「確率世界」「と呼びたくなるほど理不尽です」
>>4 >>5 >>6 >>7 >>8 >>9 >>10

二戦目「ランダム対戦」「はレートもフリーも魔境です」
>>14 >>15 >>16 >>17 >>18 >>19

三戦目「永遠の宿敵」「は旧友にして戦友です」
>>20 >>21 >>22 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27 >>28 >>29

四戦目「ポケモンなしで対戦とは笑止千万」「ポケモンなら拾いました」
>>30 >>31 >>32 >>33 >>34 >>35 >>36 >>37 >>38

五戦目「後輩」「私のことですか?」「それは違うよ」
>>39 >>40 >>43 >>44 >>45 >>46 >>47 >>48 >>49

六戦目「先輩」「その中は百合の園でした」
>>52 >>53 >>55 >>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>63 >>76 >>77

七戦目「トンベリ君」「の憂鬱です」
>>91 >>94 >>95 >>96 >>97 >>101 >>104 >>105 >>106 >>107 >>108 >>109 >>110 >>111


バトル・オブ・ホウエンパーティー名簿一覧
>>78



タクさんより『BOHパ対戦記録譚』のタイトルロゴ(または表紙絵)のイラストを頂きました。
>>54

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「プロローグ」「を装ったあらすじです」 ( No.1 )
日時: 2015/03/01 17:26
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)

「前作までのぉ」

「あらすじです」

「ホウエン御三家最弱筆頭、全御三家の中でも弱い部分が目立ち、新作でメガシンカを得ても今の環境についていくことができずにいたジュカインこと雷切は、育成されたにもかかわらずその扱いづらさからフレ戦にもほとんど出ることができず、ボックスの肥やしになっていた」

「ですがある日、彼はトレーナーとの対談に決着をつけ、ボックスを飛び出してしまいました。そしてまた対戦を始めるべく、トレーナーの援助も受けながら、借家で対戦環境調査とパーティー探しの日々」

「しかし、メンバーは集まらない。同じホウエン出身であるサーナイトことココロが、ボックスを出る時に雷切に協力してくれたものの、彼への協力者は見つからない。そんな時!」

「雷切たちのトレーナー——この物語の創造者たる作者さんが嫁と宣言するポケモン、クチートことちーちゃんが彼らのことを聞き、興味から彼らのもとへ向かいました」

「ちーちゃんも加えた初バトル! そこで明らかになる雷切がボックスを飛び出した理由! それは、ホウエン地方のポケモン限定で行われるインターネット大会、『Battle of Hoenn〜バトル・オブ・ホウエン』に出場するためだった!」

「その意志に賛同したちーちゃんは本格的にパーティーに加わり、そこから雷切たちの物語は加速します」

「ヤミラミのトンベリ、ラグラージのラグナロク、ユキメノコの雪姫——その後、次々と集まっていく仲間たち。作者の同業者そのフレ戦も経て、一同は遂にバトル・オブ・ホウエンの舞台に!」

「結果はさほど振るいませんでしたが、しかしジュカインという環境に取り残されたポケモンの強さを見せるには十分な成果を果たし、雷切自身もバトル・オブ・ホウエンへの出場そして、久しぶりに目いっぱい戦えたことに満足して、目的は達したとパーティーは解散、自分はボックスに戻ると宣告します」

「しかし、それを許さないのが我らが盟友たる彼だった! 大会終了直後に挑戦状を叩きつけて来た彼こそが、今大会の最終戦の相手だったのだ!」

「そこで雷切は、自分は強者に噛み付く牙ではなく、仲間の力を受け継ぐ存在であると、自分の本来の役割を見出しますが、パーティー解散、そして対戦終了後にボックスへ帰るという意志は変わりませんでした」

「でも、そんな彼を引き留める雪姫——そして」

「作者さんです」

「彼女たちは借家の家賃、生活費、大会まで雷切たちに援助していたドーピングの費用など、諸々の経費をすべて雷切に押し付けて、借金という形で彼の帰るボックスへの道を絶ったのだった」

「ボックスに帰りたくば借金をすべて返済しろ。そんなトレーナーの一方的かつ理不尽すぎる命令から、雷切たちはまた、大会が終わってしまった後も、バトル・オブ・ホウエンパーティーとして対戦を続けることに」

「果たして雷切たちは借金を返済できるのか、いつになったらすべて返済できるのか。そしてバトル・オブ・ホウエンに出場した彼らが、ホウエンのポケモンたちに与えた影響とは? 借金返済を巡る、雷切たちバトル・オブ・ホウエンパーティーとその他のホウエンのポケモンたちの新たな毎日!」

「この作品は、そんな物語です」

「さぁ、画面の前のあなたも、彼らと共にポケモン対戦の渦へ飛び込もうではありませんか!」

「……それでは」


『対戦、よろしくお願いします!』

Re: BOHパ対戦記録譚 【ポケモン対戦小説】 ( No.2 )
日時: 2015/03/01 17:50
名前: カルマ ◆Ywb2SqBO2Q (ID: xpnuu9/y)

 ニコニコでアルゼロ視聴し終わった後、カキコに寄ったらちょうどモノクロさんのssを見つけたので、コメントさせて頂きます

 まずは、完結おめでとうございます。前作でコメントしようと思ったのですが、コメントする時間がなかったので、此処で言わせて貰います

 終盤で雷切さんがとてもかっこよかったです。アイのキモリも、雷切さんみたいなジュカインにさせてみたいです……!
 ASで「育てたことのないポケモンを育てる」ことに専念してジュカインを育ててみました。最初は何故かキモさを感じていたんですが、ラグラージの次に好きです。モノクロさんの小説のおかげでより好きになりました

 今作ではどんな対戦相手、どんな対戦になるのか楽しみです

 受験や何やらで忙しいと思いますが、頑張って下さい

Re: BOHパ対戦記録譚 【ポケモン対戦小説】 ( No.3 )
日時: 2015/03/01 18:22
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)

カルマさん

 ありがとうございます。なんとか前作は完結まで漕ぎ付くことができました。

 前作終盤の雷切は、不遇なりにも主人公らしさが出るように意識して描写したつもりです。まあ、深夜のテンションで書き殴ったのでネタまみれのところもあったりはするんですけど。
 ジュカインにキモさを感じるのは少し分かります。モノクロも小学生の頃は、タレ目っぽいところとかあまり好きではなかったので。最近はあのしなやかなデザインが好きなんですけど。
 雷切のようになることが良いことかはさておき、アイのキモリもエースになれるくらいの成長を遂げられるといいですね。

 今作ではキャラクター数を一気に増やすつもりです。前作が大会に向けてということでしたが、今作はそういうことがないので、フリーダムにしようかな、と。
 それと、オリキャラ募集……とは少し違いますが、出して欲しいポケモンのリクエストとかも近々やろうかなと考えています。ホウエン限定ですけど。
 詳細に関してはその時になったら公開します。

 一応、大学は決まって受験はほぼ終わりましたが、ありがとうございます。カルマさんも頑張ってください。

「確率世界」「と呼びたくなるほど理不尽です」 ( No.4 )
日時: 2015/03/01 20:35
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)

 薄暗くも怪しげな賑わいを感じさせる広い室内。多くの人間が行き交い、ある者は狂喜し、ある者は絶望するこの場所。
 いわゆるカジノ。賭博場だ。
 その一角で、二人の男が向かい合っていた。
 片や、黒いスーツを着込んだ男。指には見せつけるように宝石の指輪などを嵌め、後ろにも従者らしき者を何人も従えている。
 片や、若い風貌の男。金銀赤などの派手な色で染め上げられたこの場所では逆に浮いてしまいそうな黄緑色のコートに、無造作に跳ねた緑色の髪。
 彼らは互いに向き合って、スーツの男はトランプのデッキを携えていた。

「勝負はジョーカー抜きのポーカー一回、手札の入れ替えも一回だ」
「あぁ」

 スーツの男が念を押すように言うと、若い男は短く返答する。
 その言葉にしっかりと頷くスーツの男。そして今度は、

「で、賭け金は……分かっているな?」
「俺の手持ち財産全てと、ここで稼いだ財産だろ。分かってる」
「そうか、それならいいが——」
「それよりも」

 若い男はスーツの男の言葉を遮って、切り返すように言う。

「あんたこそ忘れるなよ、自分の賭けたもの」
「あぁ、勿論だ」
「なら言ってみ」
「……俺たちのここで稼いだ財産全て」
「分かってるならいい。さっさと始めようぜ」

 そんな若い男の言葉を聞いて、スーツの男は、手に持ったデッキを非常に慣れた手つきでシャッフルする。
 その動きは流れるように流暢で——自然すぎて、不自然に見えるほどだった。

(馬鹿め、ちょっと運が向いて稼いだからといって、コロッと勝負に乗りおって。てめぇのような若造が、俺に勝てるわけがねぇってのによ)

 シャッフルを終えると、また手早く手札を配っていく。その動きも非常に素早くテキパキしているが、やはり不自然だった。
 そして配り終わった男の手札は、クローバーの4が二枚、ダイヤの5が二枚、ハートの11が一枚。ツーペアの形。初手からなかなかの手ができている。
 さらにスーツの男は、ハートの11を一枚抜き取ると、裏向きのまま場へ捨て、テーブルの上に置かれたデッキへと手を伸ばし、カードを一枚手札に加えた。
 デッキから——ではない。
 袖口に隠していた、一枚のカードからだ。

「…………」

 ぼんやりを手札と相手をながめていた若い男は、その時に少しだけ目を細める。
 が、すぐに目を瞑って溜息を吐くと、手札を裏向きのまま、すべて場に置いた。

「おっと、なんだついてねぇな、最初からブタだったか。かわいそうだからもう一回入れ替えさせてやってもいいぜ?」
「いや、遠慮しとく。それよりあんたはいいのか、勝負で」
「俺は構わねぇぜ」

 にやりと口角を上げるスーツの男。
 手札の入れ替えは終わり、勝負の時間だ。
 お互いに手札を公開する。
 スーツの男の手札は最初のツーペア——ではなく、クローバーの4が三枚、ダイヤの5が二枚となっている。つまり、

「悪いな小僧! フルハウスだ!」

 一般的なポーカーの役では、四番目に強いフルハウス。
 手札を総入れ替えした雷切では、奇跡にも匹敵する豪運がなければ勝つことが困難な手。
 しかし、

「……あぁ、確かに悪いな」

 若い男は一切表情を変えずに、自分の手札を無造作に投げつけるように、表向きで場に置いた。

「こんな手ぇ出しちまって」



 ただしその札は、スペードの10、11、12、13、Aと、綺麗に並んだ姿であったが。
 


「んな……っ!?」

 その手を見た途端に、スーツの男の顔色が一変する。
 もはや、なにが起こったのか分からないというように、テーブルに手をつき、至近距離でその手役を凝視していた。

「ロ、ロ、ロロロ、ロイヤル……ス、スト、レート……フラ——」

 驚きのあまり、まともに言葉が言えていない。だが震えながらも、なんとか声を絞り出した。

「ロイヤルストレートフラッシュだとぉ!?」

 ポーカーのルールを知らなくても、それが意味するところは概ね察せられるだろう最大の強さを誇る役。その手ができあがるのは、天目学的確率。
 どうあがいても、フルハウスでは勝ちようがない役だった。

「う、嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ! 嘘だっ!」
「よく見ろよ、事実だ」
「ありえねぇ! 六十五万分の一の確率だぞ!」
「その六十五万分の一が今だったんだろ」
「だ、だが……!」

 淡々と事もなげに言い捨てる。スーツの男はそれでも食い下がるが、しかしなかなか次の言葉が出て来ない。
 そんな時、ハッと何かに気付いたように、

「さてはてめぇ……イカサマしやがったな!」
「俺がイカサマしたっつー証拠は? あんたは俺のイカサマを証明できるのか?」
「ぐ……」

 一瞬で言い返せなくなるスーツの男。
 いくらイカサマだと言い張っても、それを証明できなければ意味がない。

「それに、一方的にゲームを決めて勝負を仕掛けて来たのはあんただ。そのカードを用意したのも、カードをシャッフルしたのも、カードを配ったのも、全部あんただろ」
「ぐぬぬ……」
「んじゃ、出すもん出してもらおうか」

 若い男が手を差し出すと、スーツの男は震えた手で数字の羅列が書かれた紙を手渡す。

「俺たちの稼ぎは、全部そこに入ってる……」
「あいよ」

 適当に返事すると、若い男は立ち上がりカウンターの方へと歩いて行く。そして、先ほど手渡された紙を置いた。

「この中のモン全部、俺の口座に振り込んどいてくれ」

 そう言うと、カウンターに立っていた従業員は無言で頷いた。先ほどの勝負の一部始終も見ていたはずなので、なにも言わない。
 そして男は、今度は出口へと向かって行き、煩雑なこの場所から立ち去って行く。
 その後ろ姿を、スーツの男たちは悔しそうに眺めていた。

「くっ……何者なんだ、あいつ……!」

茶番2 ( No.5 )
日時: 2015/03/01 20:34
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)

「ライっ!」
「あ?」

 カジノから出ると、男の耳に聞き覚えのある女性の声が届く。
 その声の方を見遣ると、そこには見覚えのある影が二つ。スレンダーな女性と、巨漢の男性だった。

「ココロ、ラグナロク……どうしたお前ら」
「どうした、じゃないわよ。まったく、またこんなところに入り浸って……」
「みんな雷切さんのこと心配してるんですよぉ」
「そうか、悪ぃな。ついカモが多いもんだから、長居しすぎた」

 そう言って雷切と呼ばれた男が強く腕を振ると、袖口やらコートの内側やらズボンの裾からやら、いたるところからぱらぱらとトランプのカードが舞い落ちた。

「イカサマして勝つなんて、感心しないわね」
「あーいう場所はどんな方法使っても勝ちゃぁいいんだよ。ばれなきゃイカサマじゃない」

 犯罪は犯罪と発覚するまで犯罪ではないように、イカサマもイカサマであると証明されなければ、ペナルティは問われない。
 そもそもイカサマでもしなければ、そんな簡単にロイヤルストレートフラッシュなんて出るわけがないのだ。

「90%で勝てる場合でも負けるのが俺たちの本来の世界だからな。六十五万分の一とか、偶発的に出て来たら一生涯の運を使い尽くして、永遠に技が当たらなくなるっつーの」
「? なんのこと?」
「なんでもねーよ。それよりも悪かったな、わざわざ迎えに来させちまって」
「雷切さんのことは信頼しているので、僕は大丈夫だと思っていますけど、ちーちゃんさんやトンベリさんは、帰るまでずっと心配していましたよぉ」
「いくら稼ぎが必要だからって、賭け事はやめなさいよ……あの子たちも心配するし」
「つってもこれが手っ取り早いうえに儲かる手段だからな……ま、今後は多少は控えるようにする」
「多少じゃなくて身を退いてほしいくらいなんだけどね。本当にもう、気が気でないのよ……」

 悩ましいというようにココロは頭を押さえて溜息をつく。
 しかし当の雷切は、あっけらかんとしたものだった。

「ま、だがここではかなり稼いだからな。そろそろ俺のイカサマを看破する奴が出て来るかもしれねーし、少なくとも新しい稼ぎ場所見つけるまでは本業に戻るか」
「金輪際やめて欲しいって言っているんだけどね……」

 再びココロはため息をつく。
 その時だった。

「おいてめぇ!」
「あん?」

 また聞き覚えのある声が、カジノの入り口から聞こえてくる。
 そちらに目を向けると、そこには手下と共に先ほどのスーツの男の姿があった。しかも、酷く憤慨している様子だ。

「なんだよあんた、まだ俺に用か? 言っとくがもうポーカーは受けねーぞ」
「てめぇ! さっきの勝負! ありゃイカサマだったのか!」
「あぁ、さっきの話、聞いてたのか。その通りだが?」
「な……!」

 あっさりとイカサマを認める雷切。あまりにあっさりしすぎていたためか、男は一瞬言葉を失う。
 その間に、雷切は、

「だがあんたは、ゲーム中にそのイカサマを見破れなかった。もう勝負はついてんだ、今更なに言ってもおせーんだよ」

 それに、と雷切は悪っぽく口角上げて、目を細めながらにやりと男を見つめる。

「イカサマしてたのはあんたも同じだろ」
「っ!」
「トップ・ブラインド・シャッフル、手配操作、仕込んだカードのすり替え、それにカード自体にも不自然な傷があったなぁ」

 相手のイカサマ内容を並べていく雷切。それだけで、相手の顔が青ざめていく。
 そして最後に、一層声を低くして、声を発した。

「気づかないと思ったか?」

 その一言で、男は一歩後ずさったが、しかし目はまだ雷切を睨みつけている。
 どうしてでも雷切に報復したい、そんな目だ。

「くそっ、こうなったらかくなるうえは……てめぇら、やっちまうぞ!」

 男が手下に目配せすると、その手下たちの姿が変わっていく。
 一瞬にして鳥獣のような姿と化した男たち。しかしその姿は、雷切たちにとって日常的なものであった。

「ほぅ、そう来るか。つーかお前らもポケモンだったんだな」

 ポケモン、それが雷切たちの本来の姿であり存在。
 この世界の根幹をなす生物だ。
 雷切は男たちの姿を見るなり、またあくどい微笑を浮かべる。

「ポーカーはもう受けねーが、そっちの勝負なら受けてやってもいいぜ。ココロ、ラグナ! ちっとばかし手伝ってくれ」
「はぁ……やれやれ、仕方ないわね。こういうトラブルがあるからやめて欲しいって言ってるのに」
「雷切さんの頼みとあらば、いつでも行けますよぉ! HAHAHA!」

 こちらは三人、それだけいれば十分だ。
 相手は見るからに屈強そうな姿形をしている。それに、勢いに任せたとはいえ勝負を挑んだということは、それなりに腕に自信はあるとみていいだろう。
 しかし、

「だがけどあんたら、また後悔すんなよ」
「あぁ!?」
「俺の——俺らの本分は、こっちなもんでな」

 その言葉を皮切りに、雷切たちも臨戦態勢へ。
 そして、勝負の第二幕が始まった。

 今度は——ポケモンバトル、という形で。


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