二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- ポケットモンスター 七つの星と罪【リメイク版】
- 日時: 2017/01/26 02:02
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
どうも、初めましての人は初めまして、白黒です。
知っている人はしっているかもしれませんが、過去に同じ作品を投稿していたことがあります。その時は、読者の方々にはご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
諸事情あって、一度は更新を止めてしまっていましたが、色々思うところがあり、また更新を再開……というか、リメイク。書き直したいと思います。
また、大変申し訳ありませんが、リメイクにあたって募集したオリキャラは一度リセットさせていただきます。ただ、またオリキャラ募集をする予定です。詳細はその時にまた説明します。
以前までのような更新速度は保てないと思いますが、どうかよろしくお願いします。
基本的にはリメイク前と同じシナリオ、キャラクター、設定で進める予定ですが、少し変更点があります。
前提となる変更点としては、非公式ポケモンと、非公式技の廃止。そして、第六世代、第七世代のポケモン、システムの導入です。基本的なシステム、タイプ相性などは最新の第七世代準拠とします。
なお本作品内では、ポケモンバトルにおいて超常的な現象が起きます。また、覚えられる技の設定がゲームと少し違います。その設定に関しては、従来通りのままにするつもりです。
ちなみに、カキコ内でモノクロという名前を見つけたら、それはこのスレの白黒とほぼ同一人物と思っていいです。気軽にお声かけください。
それでは、白黒の物語が再び始まります——
目次
プロローグ
>>1
序章
[転移する世界] ——■■■■■——
>>2 >>3
シコタン島編
[異世界の旅立] ——ハルビタウン——
>>4 >>5 >>6
[劇場型戦闘] ——シュンセイシティ——
>>7 >>8 >>9 >>10 >>11 >>17 >>18 >>19 >>20 >>21 >>22 >>23 >>24 >>25
[罪の足音] ——砂礫の穴——
>>26 >>27 >>28
[バトル大会Ⅰ] ——ハルサメタウン——
>>29 >>30 >>31
[特質TSA] ——連絡船ハルサメ号——
>>34 >>35 >>36
クナシル島
[バトル大会Ⅱ]——サミダレタウン——
>>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>63 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>71 >>74 >>75 >>76
登場人物目録
>>32
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
- 第23話 他地方種 ( No.30 )
- 日時: 2017/01/08 21:29
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
(考えるんだ……あのサンドのおかしな点は、地面タイプのはずなのに、水鉄砲の効果が薄すぎる……それに、氷柱針も使うところ)
サンドの攻撃が続く中、フィアは思考する。
フィアの知識なぞたかが知れているが、明らかに目の前のサンドは、おかしい。
そう、普通ではないのだ。
(……ポケモンのタイプは、そのポケモンの容姿からある程度は推測ができる)
フィアはある仮説を立てた。
その上で、ここまで見て考えた、自分のポケモンに対する認識を、少し整理する。
フィアの観察の一つ。ポケモンのタイプは、そのポケモンの特徴に大きく依存する。
たとえば、体色。赤い色は炎の色。アチャモやブースターは炎タイプ。
たとえば、質感。ぬめりのあるミズゴロウは水タイプで、ゴツゴツしているダンバルは鋼タイプ。
たとえば、性質。葉っぱを咥えているキモリは草タイプで、電気を弾けさせて威嚇するサンダースは電気タイプ。
これは、炎タイプだから赤いのか、赤いから炎タイプなのか。水タイプがあるからぬめりがあるのか、ぬめりがあるから水タイプなのか。草タイプだから葉っぱを咥えているのか、葉っぱを咥えているから草タイプなのか。それはわからない。卵が先か、鶏がさきかという論争だ。
しかしタイプを判断するうえでは、それはどちらでも構わない。「A(体色、質感、性質)ならばB(タイプ)」の式を成り立たせるためには、AとBのどちらかの要素さえわかればいいのだ。
(僕の見立てだと、あのサンドは白い……白いタイプって、なんだかわからないけど)
色から推測するのは、少し難しい。炎だって、高温になれば青白くなるし、白い植物や鉱石もある。
だから、次の要素から考える。
(質感は、見た感じだからよくわからないけど……硬いのは確か。それに、綺麗だ)
透き通るように綺麗なサンドの表皮。昨日見たサンドは、砂のようにザラザラで、ゴツゴツしていた。愛嬌のある顔だが、無骨な感は否めない。
目の前のサンドからはそれは感じない。もっとスマートだ。
(そして、覚えている技は高速スピン、メタルクロー、氷柱針、乱れ引っかきの四つ)
ポケモンは最大で四つまでしか技を覚えられない。
性質とは、覚える技から大きく推理できる。ポケモンは覚えている技が、タイプと強く結びついているのだ。
それは、ポケモンのタイプと技のタイプを一致していれば、技の威力があがるという性質があるから。
(たぶんノーマルタイプじゃないと思うけど、ノーマルタイプの技が二つ……残りは氷タイプと、鋼タイプの技か)
地面タイプの技は、一つもない。
ノニのサンドは氷柱針を放ち、水鉄砲でも致命傷にならず、体当たりを余裕で受け切った。
そこから推理できる、サンドのタイプとは——
(……こんなことってあり得るのかわからないけど、でも、試してみよう)
自信はないが、時間もない。
一か八かでも、こうなったやるしかなかった。
「ミズゴロウ!」
乱れ引っかきの最後の一撃を受けて、後ずさるミズゴロウ。流石にダメージの蓄積が痛い。かなりボロボロだ。
フィアはミズゴロウに呼びかけた。
まずは、確認するために。
「そろそろ決めるぞ。サンド、メタルクロー!」
サンドは鋼鉄の爪を振りかざす。よろめくミズゴロウに爪の一裂きを食らわさんとするが、
「ミズゴロウ、泥かけだ!」
ミズゴロウは地面を蹴りあげ、巻き上げた泥をサンドにぶつける。
たかだが泥だ。威力は高くない。
しかしその泥を受けただけで、サンドは驚いたように後退してしまった。
「今の反応……」
「っ、泥かけ……覚えていたか……!」
歯噛みするノニ。サンドも、顔に付着した泥を、嫌そうに拭って落としている。
その様子を見て、フィアはほぼ確信した。
「効いてる……やっぱり、そのサンド……」
「……気付いたのか?」
「え? えと、たぶん……」
自信なさげだったが、それでも確信しているのだ。
答え合わせのようだが、フィアは推理した自分の結論を、述べる。
「そのサンド、地面タイプじゃないよね?」
会場がざわめく。
地面タイプではないサンド。その意味が理解できない者もいて、小さな混乱が会場内で生まれた。
一方、その答えを突きつけられたノニは、
「……その通りだ」
と、答えた。
『こ、これはどういうことでしょう!? サンドが地面タイプではないとは……』
『あぁ、やっぱりねぇ』
『イチジクさんは、なにか知っているのですか?』
「ちょっとだけねぇ』
机に突っ伏し、今にも寝てしまいそうな状態で、イチジクは言う。
フィアの言葉が答え合わせなら、イチジクの言葉は解説だ。
実際、解説訳なのだが。
『聞いたことがあるよぉ。ポケモンは環境に応じて姿形を変えることがある……そうやって変化したポケモンを、リージョンフォームって呼ぶんだってさぁ』
『リージョンフォーム……』
『アローラ地方に出張公演に行ったとき、ちょっとだけ見たことがあったなぁ。ノーマルタイプなはずのペルシアンが悪タイプで、びっくりしたよねぇ』
『そのリージョンフォームというのは、タイプまでも変わるものなのですか?』
『そうみたいだねぇ。ぼくの経験と、あのサンドを見る限りはねぇ』
環境に応じて姿形が変わり、場合によってはタイプすらも変わる。
フィアがこの世界のポケモンという存在に抱いていた疑問の一つ。ポケモンは、種族それぞれが独立しており、類似種も明確な区別がつくような存在だ。
その点などがフィアの知る獣の概念と少しずれていたので、少し戸惑っていたこともあったが、ポケモンにも似たようなものはあるにはあるらしい。
「……リージョンフォームっていうんだ」
「そうだ。おれのサンドはアローラ地方で捕まえた……っていうか、おれは元々アローラ地方の出身なんだ」
「あ、そうなんだ……」
アローラ地方という地方がどこなのか、どういう地方なのかはまったくわからないが、どうやらノニはよそから来たトレーナーらしい。
「アローラの姿をしたサンドは、地面タイプではない別のタイプを持つ。そのタイプがなにタイプかまでは、教えないけどな!」
「だ、大丈夫……大体、見当はついてるし……」
「へぇ。だったら証明してみな! サンド、氷柱針!」
「っ、躱して!」
サンドが放つ氷柱針を、ゴロゴロと転がって回避するミズゴロウ。
ここまで何度か見てわかったが、氷柱針は一度に射出される針の数が、かなり不安定だ。今のは少ない数だった。それゆえに、ギリギリ躱しきることができた。
転がって体勢を整えると、ミズゴロウは駆け出した。
「体当たりだ!」
「受け止めろ!」
体当たりはサンドには効かない。受け止められてしまう。
しかしそれは、体当たりだからだ。
「ストップ!」
「!?」
サンドに突っ込む直前。フィアの指示で、ミズゴロウは足を止めてしまった。
そして、
「切り替えて! 岩砕き!」
「しまっ——!」
頭を下げ、頭突きのように頭から突撃し、サンドを吹き飛ばした。
フィールドを転がるサンドは呻き声を上げており、かなりダメージが大きいようだ。
「そのサンドは、見た目と技からして、たぶん氷タイプ……それと、もう一つタイプがあるよね」
それをフィアは、ここまでのバトルと、ありったけの自分の知識をフル稼働して、推理した。
フィアの推理材料は、全部で三つ。
一つ、メタルクローを使ってたこと。二つ、体当たりのダメージが小さかったこと。三つ、岩砕きだけは回避に徹して警戒してたこと。おまけで確信に至った四つ、泥かけのダメージの大きさ。
以上の点から、メタルクローと同じタイプであり、ノーマルタイプが効果いまひとつで、格闘タイプと地面タイプに弱いタイプ。
即ち鋼タイプ。
氷と鋼の複合タイプだと、フィアは結論を出す。
「……正解。アローラの姿のサンドは、氷と鋼タイプ。凍てつく力と硬い装甲を持つポケモンだ」
「やっぱり」
氷と鋼タイプ。共通する弱点は、格闘タイプ。
だからこのサンドは、格闘タイプの技である岩砕きだけは、避けていたのだ。二つのタイプが弱点となり、大ダメージを受けてしまうから。
「とはいえ、リージョンフォームでもサンドは防御の高いポケモンだ。それなのにさっきの岩砕き、かなり効いたぞ。すごいパワーだ」
ノニはそうミズゴロウを評価する。
確かにサンドも、今の攻撃でふらふらだ。かなりダメージを負っている。
もうあと一息で、サンドを倒すことが出来そうだ。
「だけど、そっちもそろそろ限界だろ。一気に攻めるぞ! サンド、氷柱針!」
「泥かけ! 泥を巻き上げて」
泥を巻き上げて、襲い掛かる氷柱針を防ごうとするが、泥程度ではすべての氷柱を止めることはできない。何発かは刺さってしまった。
ミズゴロウは刺さった氷柱を振り落すと、今度は走り出す。
「岩砕き!」
「かわせ! 高速スピン!」
しかし、がむしゃらに突っ込んでもサンドには当たらない。サンドはカーリングのストーンのように、円盤状に丸まると、高速回転してミズゴロウの岩砕きを躱す。
氷タイプというだけあって、氷上を滑るような、綺麗な回避行動だ。
それを見て、フィアは一つ、思い出した。
「……もう一度、岩砕きだ!」
「当たるかよ! 高速スピン!」
今度は跳び上がり、上からダイブするように岩砕きを放つ。
しかし線で進む攻撃を避けるのだ。点でしか狙えない攻撃が当たるはずもなく、ミズゴロウはフィールドに派手にぶつかった。あまりの勢いと威力に、フィールドの一部が抉れ、砕け散り、小さな穴が空く。
「水鉄砲!」
「継続だ。高速スピン!」
頭を振って気を取り直し、ミズゴロウは水鉄砲を噴射する。サンドは回転したまま、放たれる水鉄砲を氷の皮膚と遠心力で弾く。
砂岩のような皮膚を持つ地面タイプなら、水を吸収してしまうのでこうはいかなかっただろうが、リージョンフォームのサンドの表皮は氷。水は吸収せず、通用しない。
「もっと強く!」
しかし、ミズゴロウはさらに力を込めて水流を噴射。
水流の勢い、威力は、どんどん増していく。
「ぐ、この水流は……だが、氷の皮膚を持つサンドが回転している状態では、水鉄砲は効かないぞ!」
回転して水を弾くも、水鉄砲に押されて前進できないサンド。押し合いのような様相を呈してきている。
「効かなくてもいい……動きを、操れれば……!」
ミズゴロウは少しずつ立ち位置を変え、水流でサンドを押していく。
「……ストップ!」
やがて、ピタッと水流が止まる。
それに合わせて、前進する力を込めていたサンドが、ギュンッと前へ突っ込んでくるが、
ガコンッ
サンドの動きが、止まってしまった。
「っ、サンド!」
回転は続けているが、前進しない。
なぜなら、サンドはフィールドに空けられた、小さな穴に嵌ってしまっているからだ。
「これは、さっき岩砕きで砕いた穴……!?」
『おぉ? あれはぼくのネッコアラに使った手だねぇ』
フィールドの破壊を利用した、回転運動攻撃を止めるテクニック。
サンドは回転を止めたが、穴に嵌った拍子にひっくり返ってしまったようで、逆さまにした亀のように手足をじたばたさせている。
「シュンセイジムではしっぺ返しでやられたけど……今度はやられる前に、決める!」
サンドが起き上がる前に攻撃。
そしてこの一撃で、終わらせる。
「ミズゴロウ、岩砕き!」
全身全霊の突撃。ミズゴロウの一撃は、穴に嵌って動けないサンドを吹き飛ばす。サンドは宙を舞い、やがてフィールドへと落下した。
小柄なわりに意外と重量はあるのか、ドォン! という鉄塊が落ちたような轟音が響き渡る。
砂煙が舞い上がる中、審判が落ちてきたサンドを覗き込む。
そして、手にした旗を上げる。
「……サンド、戦闘不能! よって勝者、フィア選手!」
あとがき。まずはお詫びから、前話のあとがきを書くのを忘れてました。まあ、書かなければいけないというほどのものでもないので、ないならないでいいんですけど。バトル大会はリメイク前にもありましたが、今回はちょっと変えてます。下っ端戦でサンドを出した理由はこれ。誰もが分かっていたと思いますけど、アローラサンドです。トレーナーのノニ君もアローラ出身。わかりやすい第七世代要素です。どうせもいいですけど、ノニ君はよくニノと名前を間違えます。作者なのにね。次回はバトル大会二戦目です。お楽しみに。
- 第24話 大会終了 ( No.31 )
- 日時: 2017/01/09 14:26
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
ハルサメタウン、バトル大会二回戦。フィアの相手は、一回戦でフロルを敗ったイオンだ。
「本当なら決勝戦とかでバトルしたかったけど、ま、しゃーないよねー」
「うん、まあ……」
陽気に声をかけてくるイオンに対して、フィアは曖昧に頷く。そして互いに、ボールを構えた。
「出て来て、ミズゴロウ!」
「行くよっ、ガーディ!」
フィアのポケモンはミズゴロウ。そしてイオンが繰り出したのは、赤い犬のような姿のポケモンだ。
『Information
ガーディ 子犬ポケモン
どんな相手にも勇敢に立ち向かう
ポケモンと言われるが、ピンチに
なると大きく吠えて追い払うこともある。』
「あり、ブースターじゃないのかー」
「うん。だって、イオン君とのバトルで、ミズゴロウには申し訳ないことをしちゃったからね」
「? なんのこと?」
「キモリだよ」
「……あー。そーゆーことねー。理解した」
初めてイオンとバトルした時、ミズゴロウはなにもできずにイオンのキモリに負けてしまった。
だがそれは、ただ単純に相性が悪かっただけではない。フィア自身の未熟さのせいでもある。
それはトレーナーとしての経験もそうだが、その一方で、不利な相手にぶつける知識のなさでもある。
「僕がなにも知らなかったから、ミズゴロウには悔しい思いをさせちゃった。だから、今度はちゃんと、バトルさせてあげたいんだ」
「……オレの手持ち、サンダースとキモリの二体しか知らないはずなのに、よく出せるよ」
含みのある笑みを浮かべるイオン。
両者のポケモンが出揃った。あとは審判の合図で、バトルが始まる。
『さあ、いよいよ二回戦も開始されました。フィア選手はミズゴロウ、イオン選手はガーディをそれぞれ繰り出し、バトル開始です!』
アナウンサーの威勢の良い声がフィールド内に響き渡った。そして、一回戦での戦績を元に軽い解説を入れる。
『一回戦イオン選手は、フロル選手のアチャモを、なんと開始一分足らずで倒しています』
『攻撃が速いというか、攻撃前後の隙がほとんどないから結果的に攻撃速度が高いんだよねぇ。あのスピードにはぼくもやられちゃったよぅ』
『そしてフィア選手は、アローラのサンドのタイプを特定し、勝利を収めています。さあ、この一戦はどうなるのか』
『タイプの上ではフィア君が有利……だけど、そう上手くはいかないだろうねぇ』
二人の解説をよそに、バトル開始の合図が出され、バトルが始まった。
フィアとイオンのバトル、先に動いたのは、イオンのガーディだった。
「ガーディ、燕返し!」
一瞬でミズゴロウとの間合いを詰めたガーディは、鋭い爪でミズゴロウを切り裂いた。
「うっ、ミズゴロウ、こっちも反撃だよ。水鉄砲!」
ミズゴロウは態勢を立て直し、ガーディに向かって水を噴射するが、
「遅い遅い、躱してニトロチャージ!」
ガーディはサッと水鉄砲を躱すと、炎を纏ってミズゴロウに突進する。
「ミズゴロウ!」
ミズゴロウは地面を転がる。効果はいまひとつなのでダメージは少ないが、
『攻撃と同時に素早さを上げるニトロチャージ、鈍足なミズゴロウに対してスピードで攻めるつもりかぁ。苦手なタイプに対する常套手段だねぇ』
イチジクの言う通り、ここで素早さを上げられるのはミズゴロウにとっては辛い。なので、早めに決めにかかる。
「ミズゴロウ、岩砕きだ!」
ミズゴロウはガーディに向かって走り出し、岩を砕くような体当たりを繰り出すが、
「バークアウト!」
直前でガーディはけたたましい叫び声を放ち、ミズゴロウの動きを止めてしまう。
「もう一度、バークアウト!」
さらに二度目のバークアウトを放ち、今度はミズゴロウを吹っ飛ばす。
「くぅ、ミズゴロウ、水鉄砲!」
ミズゴロウは起き上がり、息を吸って水を噴射するが、
「ガーディ、炎の渦だ!」
ガーディも同時に炎の渦を放つ。
だが普通は、水タイプの技に炎技が勝てるはずがない。これが火炎放射や大文字なら話は別だが、ガーディが放つのは威力の低い炎の渦。このままいけば水鉄砲に打ち消されるのが関の山だ。
しかし、炎の渦は水鉄砲を突き破り、ミズゴロウを渦に巻き込んだ。
「え……っ?」
『おーっと! ガーディの炎の渦がミズゴロウに決まりました!』
『炎の渦は相手の動きを制限するから戦いづらいよねぇ……それに、バークアウトかぁ』
フィアも炎の渦で水鉄砲が突き破られるとは思っていなかったので呆然としている。そんなフィアに、イオンは説明する。
「オレのガーディの技の一つ、バークアウト。これは便利な技でねー、攻撃と同時に相手の特攻を確実に下げる技なんだ。その分威力は低いけど、そのミズゴロウに対しては有効だよね?」
「っ……!」
ミズゴロウがガーディに対して有効打を撃てるのは、水鉄砲と泥かけ。そのどちらも特殊技であるため、バークアウトで威力が下げられてしまっている。
「そんじゃーこのまま決めようか。ガーディ、ニトロチャージ!」
ガーディは炎を纏い、炎の渦に囚われたミズゴロウに突進する。効果はいまひとつだが、どんどんダメージが蓄積していく。
そしてミズゴロウの体力が大きく削られ、ガーディのスピードが最高まで達した時、
「燕返し!」
ガーディは身を翻して、鋭利な爪でミズゴロウを切り裂いた。
「ミズゴロウ!」
そこでミズゴロウの体力は限界に達し、戦闘不能となってしまう。
「……ごめんねミズゴロウ。タイプでは有利だったのに、君を勝たせてあげられなかったよ」
そんなフィアの言葉に、ミズゴロウは鳴き声を上げて、頬ずりするようにすり寄る。少し湿っていた。
「ははは……次は勝とうね。お疲れさま」
そして、フィアはミズゴロウをボールに戻す。
『二回戦、決着です! イオン選手のガーディ、今回のバトルも開始から一分三十秒、速攻で試合を終わらせてしまいました!』
アナウンサーの声と共に、会場が沸き上がる。フィアはミズゴロウをボールに戻し、イオンに声をかけた。
「負けたよ、イオン君。本当に強いね」
「いやー、まあそれほどでもあるかな? このまま決勝戦も速攻で決めて、優勝しちゃうか」
「あはは……頑張ってね」
自信満々なイオンの態度だが、何度も言っているように彼は強い。恐らく、この大会の優勝候補と言われて当然の実力を持っているだろう。
なんにせよ、これでフィアも敗退。あとは、イオンの試合を見届けるだけとなった。
そして迎えた決勝戦。イオンの相手は、長い銀髪が特徴的な小柄な少女だった。
イオンのポケモンはサンダース。対するは、背中から炎を噴き出しているヤマアラシのようなポケモン。
『Information
ヒノアラシ 火鼠ポケモン
背中の炎はヒノアラシの感情の
変化で燃え上がる。驚いた時や
怒った時には特に激しく燃える。』
現在、イオンのサンダースは持ち前のスピードでヒノアラシを押している。相手を上手く攪乱し、相手の攻撃は避け、自分の攻撃を何度も叩き込んでいた。
「ヒノアラシ、火炎車!」
「遅い遅い! サンダース、電光石火!」
ヒノアラシが炎を身に纏おうとすると、それより速く接近し、サンダースはヒノアラシを突き飛ばした。
「やっぱり速い……煙幕!」
「煙の乗じて隠れるつもりかー。だったら隠れる前に落とす! 電気ショック!」
ヒノアラシはとりあえず煙幕で視界を塞ごうとするが、それよりも早く、サンダースの電撃がヒノアラシに襲い掛かる。
その一撃で、ヒノアラシは戦闘不能になってしまった。
『決勝戦、終了——!』
アナウンサーの声と、試合終了を告げる合図が鳴り響き、観客たちがより一層沸き上がる。
『イオン選手、ルゥナ選手のヒノアラシを一蹴! 試合時間一分五十七秒と、全試合二分未満で終わらせて優勝です!』
「すごいねイオくん、本当に優勝しちゃった」
「まあ、イオン君ならやるとは思ってたけど、こんなに早く終わらせるなんて……」
勝敗の結果より、驚きなのは試合時間の短さ。本当にあっと言う間と言えるほど、イオンは速攻で勝負を決めてしまった。
その後、イオンは優勝賞品であるポケモンのタマゴと賞金の五万円を受け取り、ハルサメタウンのバトル大会は終了した。
「さー、祝勝会だー! 今日は全部オレのおごりだから、気にせず食べて食べて!」
大会が終わった夜。
ハルサメタウン内のとあるレストランで、三人は食事をしていた。
というのも、イオンが祝勝会をあげようと自分で言い出し、三人を適当な店に連行。店のフルコースメニュー三人前を、大会の優勝賞金を使ってポンと払ってしまったのだ。
「い、いいの? 優勝賞金、五万円も貰ったのに、全部使っちゃって……それに、僕たちまで一緒に食べて……」
「いーのいーの。気にしない気にしない。ほら、あれだよ。楽しいバトルのお礼ってね!」
随分と気前がいい言い分だった。
この世界の通貨が円ということに驚きを禁じ得ないフィアだったが、物価は違うのかもしれないと思いつつ、テーブルに出された大量の料理はどれも豪勢で、フィアが今まで食べたこともないようなものばかりだった。
物価が違うとかそんなものではない。見てなんとなくわかる。高級な食材を惜しみなく使った、高級料理だと。これではむしろ、食べることに気後れしてしまいそうだ。
「それに、金なんて出るところから出るんだから、大事に持っててもしゃーないっしょ。使える時に使わなくちゃね!」
「そ、そうかなぁ?」
「そーそー。それより食う食う。このポフレなんて、甘くてすげー美味いよ?」
「うん、おいしー。ありがと、イオくん」
「いいっていいって」
「フロルはまったく気にしないんだね……」
その図太い神経というか、能天気さが少し羨ましかった。
とはいえ、料理を出されて食べないのも失礼だ。もうここまで来てしまったのだからと、フィアも食事に手を付ける。
「明日はクナシル島行きの船が出るんだよね」
「みたいだねー。朝の十時に出港だってさー」
「なら、朝は早いね。フロル、ちゃんと起きるんだよ」
「んー、がんばる」
料理に夢中のフロルはいまいち信用できなかった。
やはり明日も、自分が起こすしかないだろうと、フィアは諦めた。
「……見つけた。あの子たち、だよね」
夜の港町。レストランなどの飲食店が並ぶ一角で、一つの人影があった。
暗がりで姿はよくは見えないが、月光に照らされている神秘的な銀髪だけは、隠しようがなく輝いている。
さらに足元には、輪っか状の光がいくつもあった。
「ターゲットBF、及びターゲットGF、確認。二人はクナシル島行きの船に乗るのかな? 私も準備しないと……でもその前に、代表に連絡しなくちゃ」
一度、街並みから外れる。
誰もいない広場。潮風が吹くと、長い銀髪が揺れた。
雲一つない夜空には、銀色の月が、孤独を愛しながら浮いていた。
「……今夜は、月がきれいだなぁ」
星々すらも霞めてしまうような月。
漆黒の夜空はすべて、彼女の支配下にあるかのようだ。
「こんな夜は、君と出会った日を思い出すね、ブラッキー」
足元の光る輪に語りかける。月明かりに照らされたそれは、黒いしなやかな姿を見せた。
それは主人の足元にすり寄ると、小さく鳴き声を上げる。
「……うん、そうだね。お仕事、がんばろっか」
そうして二人は、夜の闇へと消えていく。
歩むその先に、月の影を残しながら——
あとがきです。一話に色々詰め込みすぎた感ありますけど、これでハルサメ大会終了です。思えば、ブースターを使っていなかった……でも仕方ないんです。ノニ君のサンドにブースターぶつけたら圧勝だし、イオンとのバトルではミズゴロウ使いたかったんです。ちなみにイオン戦はリメイク前のほぼ使い回しです。いやさ、バークアウトという技を使いたかったので。好きなんですよね、バークアウト。咆哮系の技って、格好良いじゃないですか。ハイパーボイスは別にして。では、次回ですね。やはりリメイク前のシナリオ通りですが、クナシル島へ出航。その船の中で……って感じです。お楽しみに。
- キャラクター一覧 ( No.32 )
- 日時: 2017/01/11 04:20
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
フィア 男 >>33
本作の主人公。謎の黒い渦に巻き込まれ、ホッポウ地方へとやって来た。
フロル 女
ポケモントレーナーの少女。少々天然だが何事にも一生懸命。
イオン 男
ポケモントレーナーの少年。ポケモンバトルに関しては天才的なセンスを持つ。
ルゥナ 女
アシッド機関に所属する少女。技合成という特質(TSA)を持つ。
“彼女” 女
フィアが部長と呼ぶ少女。フィアがホッポウ地方に来る切っ掛けを与えた。
イチジク 男 >>42
シュンセイシティのジムリーダーでノーマルタイプ使い。【劇団布団座】の劇団員。
トウガキ 男
シュンセイジムのジムトレーナー。イチジクの弟でバンガキの双子の兄、【劇団布団座】の座長。
バンガキ 男
シュンセイジムのジムトレーナー。イチジクの弟でトウガキの双子の弟、【劇団布団座】の劇団員。
トクサ
ムゲツシティのジムリーダー。ホッポウ地方最大の軍隊を率いている。
ルベリ 女
ツチフルシティのジムリーダー。四天王ルフルの妹。
リンネ
ヨイヤミシティのジムリーダー。死神の異名を持ち恐れられている。
ハッカ
リッカシティのジムリーダー。ジムリーダーとしての公式戦記録では無敗。
サタン 男
グリモワールの構成員。
“青年” 男
フィアが謎の遺跡で出会った青年。現在行方不明。
博士 男
ハルビタウンに研究所を構えるが、正式な資格を持たないローカル博士。フロルにイーくんと呼ばれる。
ノニ 男
アローラ地方出身の少年。リージョンフォームと呼ばれる姿のポケモンを操る。
- キャラクターデータ フィア ( No.33 )
- 日時: 2017/01/09 08:39
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
——赤き炎星に選ばれた、異世界の少年——
フィア 男 15歳
容姿:母親が外国人らしく、鮮やかな赤い髪をしている。華奢で身長が低く、160cm程度で顔も童顔。服装は白いカッターシャツと黒いブレザー、スラックスを着用している。
性格:内気で周りに流されやすく、自己主張などが苦手。意志はあまり強くないが、やる時はそれなりにやる。
手持ちポケモン
イーブイ→ブースター:♂
技:ニトロチャージ、火炎放射、アイアンテール、起死回生
特性:危険予知→根性
性格:勇敢、暴れるのが好き
経緯:ホッポウ地方に来る前、元の世界で彼女から貰ったポケモン。
砂礫の穴での戦いで炎の石を使い、ブースターへと進化。
戦術:スピードを生かして接近戦を仕掛けたり、目覚めるパワーで遠くから攻撃したり、間合いを調整しながら戦える。ダブルバトルでは手助けで味方のサポートも可能。
ブースターに進化し、攻撃力が大幅に上昇した。体力が削られたり状態異状になっても根性や起死回生で一発逆転も可能。
過去の技:電光石火、噛みつく、目覚めるパワー(炎)、手助け
ミズゴロウ:♂
技:水鉄砲、泥かけ、岩砕き、体当たり
特性:激流
性格:照れ屋、物音に敏感
経緯:ハルビタウンで博士から貰ったポケモン。
戦術:打たれ強くパワーもあり、粘り強く戦い続けることが出来る。またヒレが敏感なレーダーとなり、隠れたポケモンの位置を正確に察知できる。
過去の技:なし
- 第25話 船上出会 ( No.34 )
- 日時: 2017/01/09 09:01
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
ハルサメタウンから出港した連絡船は、クナシル島のサミダレタウンという港町に向かっている。
その船の中では、ポケモンバトルができるフィールドがいくつか設置されていた。どうやら目的地に着くまでの暇潰しや、トレーナー同士の交流の場ということらしい。
ポケモンセンター地下もそうだったが、つくづくこういう点でポケモンバトルがこの世界に浸透していることを実感するフィアは、実戦経験を積むためにそこでバトルをしていたのだが、
「モウカザル、火炎車!」
「! ブースター!」
ブースターが炎を纏った猿のようなポケモンに吹っ飛ばされ、戦闘不能となる。
『Information
モウカザル やんちゃポケモン
木の枝や壁、天井など、その場所
にある、あらゆるものを利用して
戦う。炎は威嚇のために用いられる。』
モウカザルにブースターを倒され、フィアの手持ちで戦えるポケモンはいなくなってしまった。
礼儀として、相手のトレーナーに礼を言うと、バトルフィールドのすぐそばに設置してある、自動でポケモンを回復してくれる機械(無料)へと向かい、ボールをセットする。
「……勝てない」
二対二のバトル、十戦中フィアが勝てたのは僅か二戦、それも辛勝。
たまたま強い相手と当たってしまったとも言えるが、自分がまだまだ未熟であると思い知らされるフィア。それ自体は悪いことではないのだが、それでもやはりへこんでしまう。
「フロルはまだ寝てるし……どうしよう、このまま僕も部屋に戻ろうかな」
機械からボールを外しつつ、あまりの敗戦っぷり項垂れていると、フィアは不意に声をかけられる。
「ねぇ君、ちょっといいかな?」
「はい?」
振り返ると、そこに立っていたのは一人の少女だった。
フロルと同じくらいの身長で、目を引くのは腰まである長い銀髪。黒いプリーツスカートに白いブラウスを着ており、黒いトレンチコートを羽織っている。コートはかなり裾が長く、袖もあまりがちで、いまいちサイズが合っていないように見えた。
見るからに子供、というような出で立ちの少女だが、フィアはこの少女を見たことがある。
(この子、昨日の大会の決勝戦で、イオン君とバトルしてた……)
確か、ルゥナという名前だったはずだ。
フィアがルゥナを知っているのは決勝戦を見ていたからだが、ルゥナがフィアを知っているということはないだろう。フィアが試合をしている間はルゥナも試合をしているわけで、ルゥナはフィアのことを知らないはず。
ならばなぜ、彼女はフィアに声をかけてきたのか。
「えっと……僕に何か用、かな……?」
たまらずフィアが少女に尋ねる。すると少女は、ゆっくり口を開いた。
「うーんとね、実はさっきまで君のバトルをちょっと見させてもらったんだけど」
「え……」
さっきまでフィアのバトルを見ていたということは、つまりフィアが惨敗する様を見ていたということ。フィアが勝ったのは最初の二戦、後の八戦は全て負けているから、見られているのはほとんど負け姿だけだろう。
誰に見せるためとかでもなかったが、負け続ける姿を晒していたと思うと、恥ずかしくなる。
フィアがそんな恥辱を感じているのをよそに、ルゥナは笑顔で言う。
「ちょっとアドバイスしたくなっちゃって。お節介だと思ったら、別にいいんだけど」
「えと……」
つまり、フィアがあまりにも負けているものだから、我慢できずに助言をしたくなった、ということだろうか。
フィアとしてはよく分からない申し出は受けたくないし、こんな小さな少女からアドバイスされることに対して恥を感じる程度のプライドはある。
だがルゥナ昨日のハルサメ大会で準優勝したトレーナーだ。成績としてはフィアよりも上。ここは素直に話を聞くべきかもしれないとも思った。
どうしようかとしばらく悩んだ末、フィアは、
「じゃあ、願しようかな……」
「うんうん、決まりだね。それじゃあ、バトルフィールドに——」
と、ルゥナがバトルフィールドに立とうとした時。
バトルフィールドは小さな段があり、その段に躓いて、ドッシーン、と豪快に転んでしまった。
「ひゃぅっ!」
「だ、大丈夫っ?」
漫画みたいな倒れ方だと、一瞬妙な感動が生まれたが、それはさておき。
倒れた拍子に、ボールが散らばり、彼女のポケットからも色々と零れ落ちた。それは財布だったりバッジケースだったり、重要なものばかりだ。
「あぅ、ごめん。つまづいちゃった……」
「いや、気にしなくていいよ。拾うの手伝うね」
「あ、ありがとう」
フィアは落ちたボールやバッジケースなどを拾い上げていく。そんな中、一枚のカードを手に取った。
(トレーナーカード? いや、でもトレーナー認証は全部P・ターミナルに内蔵されてるはずだし……)
トレーナーカードとは別の、身分証明書のようなものだと思いつつ、悪いと分かっていながらもついそこに書かれていることを見てしまう。
(やっぱり名前はルゥナっていうんだ、記憶違いとかじゃなくて良かった。それと、年齢——)
フィアは目を丸くした。そこに書かれている数字は、フィアが想像していたものからかけ離れたものだったからだ。
「じゅ、17歳……!?」
「? そだよ。私は先週誕生日を迎えて17歳だよ。それがどうかした?」
フロルの歳は13歳。なのでルゥナの年齢も、自然とそれぐらいだとフィアは思っていた。しかし、
(17って、部長と同い年……いや、あの人は僕よりも背が高いけど、それにしたってこの背の低さで17っていうのは……)
あり得ない話ではないが、フィアは驚く。フィアにとって年上の女性というのは彼女か母親ぐらいだったので、自分よりも背が低い年上女性というのがいまいちイメージしづらいのだ。
フィアがそんなことを思っているうちに、ルゥナは散らばった物品やモンスターボールを全て拾い上げた。
「さて、これで全部かな……そういえば、君の名前は?」
「あ、えっと、フィア……です」
年上と分かれば、敬語を使わないわけにはいかない。少し違和感を覚えないでもないが、フィアは言葉遣いに気をつけながら名乗る。
「フィア君だね。私はルゥナ、長い名前じゃないけど、ルゥって呼ばれることが多いかな」
いわゆる愛称というやつだ。フロルが博士のことをイーくん、イオンのことをイオくんと言っていたように、この世界にも愛称やあだ名が存在する文化にあるらしい。フィアがいた世界とずれてるのに、変な所で共通しているのだから、戸惑ってしまう。
ルゥナは名乗りを上げると、なぜか胸を張り、
「あと、先輩って呼んでもいいんだよっ」
「…………」
呼んでほしいのか。
フィアは胸中でそう呟いた。
(まあ、確かに年齢でもトレーナーとしても先輩だし、学校では年上の人は皆、先輩って呼んでたし、別に言い慣れないことはないかな)
むしろ、自分がいた世界と似た感覚に浸れるので、積極的に呼んでもいいかもしれない。
「じゃあ、ルゥ先輩で……」
控えめにフィアが言うと、ルゥナはまたしても嬉しそうに明るくなる。こうところは、見た目相応に子供っぽい。いわゆる、お姉さんぶりたい性格、なのだろうか。
フィアがそんなことを思っていると、二人はそれぞれバトルフィールドに立つ。そこでルゥナはやっと本格的なアドバイスに入った。
「さっきまでバトルを何回か見せてもらったけどね、フィア君はもう少し特性を意識するといいよ」
「特性?」
聞いた事があるようなないような言葉だった。彼女や青年から聞いたのか、もしくはターミナルでざっと調べた中にあったのか、はたまたフロルやイオン、イチジクなどが言っていたのか。
なんにせよ、その特性なるものがなんなのか、今のフィアは把握していなかった。
「特性っていうのはね、ポケモンが一つだけ持ってる特殊な力のことだよ。これを意識するだけで、バトルで有利に立ち回れるんだ」
例えば、とルゥナは思い出すように人差し指を頬に当てる。
「君が連れてたミズゴロウの特性は激流。体力が減ってピンチになると、水タイプの技の威力が上がるんだ」
「激流……」
思い返せば、確かに今まで、そのようなことはあった。
たとえば、昨日の大会、ノニとのバトル。サンドの攻撃で満身創痍だったミズゴロウの水鉄砲は、いつもよりも水流が強かったような気がする。
「それと君のブースターだけど、珍しい特性だったね。特性、根性。これも自分がピンチの時——というより、ポケモンが状態異状になった時に発動する特性で、発動すると攻撃力が上がるんだ」
ルゥナの説明を聞き、頷くフィア。彼女の助言は、思った以上に役立つものだった。
「特性は技と同じで、ポケモン図鑑やP・ターミナルで調べられるから、ポケモンを捕まえた時にチェックするといいよ」
「そうですか……ありがとうございます」
今日だけでフィアが覚えた特性、激流と根性。根性に関してはブースターはまだ状態異状になったことがないのでよく分からないが、ミズゴロウは今後、ピンチになった時は積極的に水技を使った方が良さそうだ。
「役に立ってくれたのなら私も嬉しいよ。それじゃあ次は——」
にこやかな笑顔を浮かべつつ、ルゥナ一つ、ボールを取り出した。そして、
「——実戦だね! 私とバトルしよっ!」
あとがき。ほぼ前作通りのシナリオですが、細部をちょっと変えつつ、今回は新キャラ、ルゥナの登場です。覚えてる人と察しのいい人とリメイク前を知っている人は、前話で名前だけは出ていたのを知っているはず。ルゥナは読んでわかる通りちっこい先輩キャラ。抜けているけれども、少なくともフロルよりは頼りになるしっかりした人です。ここいら辺から、今作における重要な要素が入ってくるのですが……それに関しては、次回以降のお楽しみです。
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