二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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ポケットモンスター 七つの星と罪【リメイク版】
日時: 2017/01/26 02:02
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

 どうも、初めましての人は初めまして、白黒です。
 知っている人はしっているかもしれませんが、過去に同じ作品を投稿していたことがあります。その時は、読者の方々にはご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
 諸事情あって、一度は更新を止めてしまっていましたが、色々思うところがあり、また更新を再開……というか、リメイク。書き直したいと思います。
 また、大変申し訳ありませんが、リメイクにあたって募集したオリキャラは一度リセットさせていただきます。ただ、またオリキャラ募集をする予定です。詳細はその時にまた説明します。
 以前までのような更新速度は保てないと思いますが、どうかよろしくお願いします。

 基本的にはリメイク前と同じシナリオ、キャラクター、設定で進める予定ですが、少し変更点があります。
 前提となる変更点としては、非公式ポケモンと、非公式技の廃止。そして、第六世代、第七世代のポケモン、システムの導入です。基本的なシステム、タイプ相性などは最新の第七世代準拠とします。
 なお本作品内では、ポケモンバトルにおいて超常的な現象が起きます。また、覚えられる技の設定がゲームと少し違います。その設定に関しては、従来通りのままにするつもりです。

 ちなみに、カキコ内でモノクロという名前を見つけたら、それはこのスレの白黒とほぼ同一人物と思っていいです。気軽にお声かけください。

 それでは、白黒の物語が再び始まります——



目次

プロローグ
>>1
序章
[転移する世界] ——■■■■■——
>>2 >>3

シコタン島編
[異世界の旅立] ——ハルビタウン——
>>4 >>5 >>6
[劇場型戦闘] ——シュンセイシティ——
>>7 >>8 >>9 >>10 >>11 >>17 >>18 >>19 >>20 >>21 >>22 >>23 >>24 >>25
[罪の足音] ——砂礫の穴——
>>26 >>27 >>28 
[バトル大会Ⅰ] ——ハルサメタウン——
>>29 >>30 >>31
[特質TSA] ——連絡船ハルサメ号——
>>34 >>35 >>36

クナシル島
[バトル大会Ⅱ]——サミダレタウン——
>>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>63 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>71 >>74 >>75 >>76


登場人物目録
>>32

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19



第41話 専守防衛 ( No.75 )
日時: 2017/01/25 02:12
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

 月夜の力を得て、今まで以上に強くなっているブラッキー。
 ルゥナはそういうが、果たして本当に強くなっているかはわからない。
 仮に強くなっているとしてもフィアのやることに変わりはない。ブースターだってここまでのバトルで、強くなっている。素早く決着をつけるだけだ。
「一気に決めるよ、ブースター! ニトロチャージ!」
「穴を掘る!」
 ブースターは炎を纏って駆け出すが、ブラッキーが地中へ逃げてしまい、その攻撃も失敗に終わる。
 地面タイプの技である穴を掘る。炎タイプのブースターが受けたくない技だが、この技は死角から襲い掛かってくるので、回避が難しい。
 しかし、
「後ろだよ! アイアンテール!」
 背後から飛び出したブラッキー。それに対し、ブースターは硬化させた尻尾を叩き込む。
 連絡船でルゥナとバトルした時と、今のフィアの違い。それは経験だ。
 実戦経験を積み重ねてきたフィアの経験値は確実に蓄積されており、相手の行動に対しても、すぐに指示を飛ばせるようになった。
 穴を掘るであれば、真下か、背後から飛び出すことが多い。そんな予測も含めて、ブラッキーの攻撃を許さず、逆にブースターが根性の一撃を繰り出す。
 だが、しかし、
「軽いよ、フィア君」
 吹っ飛ばされたブラッキーは空中で体勢を立て直し、スタッと着地。あまり効いているようには見えない。
「直撃したと思ったのに……ニトロチャージ!」
「穴を掘るだよ!」
 またもニトロチャージを穴を掘るで躱すブラッキー。
 また、地中からの攻撃が来る。
「ブースター、出て来たところを狙うんだ」
 フィアも神経を研ぎ澄まして、すぐに指示が出せるよう、ブラッキーの攻撃に備える。
 やがて、ブースターの真横の地面がから、ブラッキーが飛び出す。
「そこだ! アイアンテール!」
 さっきと同じやり取り。飛び出したブラッキーに、ブースターは鋼鉄の尻尾を叩き込む。
 しかし、さっきと同じということは、結果も同じということに他ならない。
「だから、軽いって」
 直撃したはずのアイアンテール。それを喰らったブラッキーは、平然と受け切っていた。
 今度は吹っ飛ばされることもなく、しっかりと地面に踏みとどまって、耐えている。
「しっぺ返し!」
 そして、カウンターの一撃を放つ。
 尻尾を振るい、逆にブースターを吹っ飛ばした。
「くぅ……火炎放射!」
「月の光!」
 ブースターはゴロゴロと転がりながら体勢を立て直し、炎を噴射するが、炎を受けながらブラッキーは光を浴びる。
 早朝から始まったこの大会だが、決勝戦ともなると、時間もかなり遅い。夜空に浮かぶ月の光が、ブラッキーの傷を癒す。
「ダメージが……!」
「もっと攻めてきてよ。攻撃しないと、ブラッキーは倒せないよ」
「わかってます! ニトロチャージ!」
「ブラッキー、穴を掘る!」
 三度目のニトロチャージを、同じ手法で回避するブラッキー。
 素早さを上げないために、ニトロチャージは受けずに回避しているのだろうが、ルゥナの目的はそれだけではない。
 ブラッキーの攻撃に備えているブースターの息が、上がっていた。
『ルゥナ選手は、やはり消耗戦に持ち込むつもりですね』
『穴を掘るは、発動から攻撃までに時間がかかる技。そのタイムラグがネックとなる時もあるのですが、この場合は有効活用していますね』
 実況席で、ウルシがそうコメントする。
『猛毒でブースターの体力は消耗する一方。つまり、時間をかけた方がブラッキーにとっては都合がいい。穴を掘るは攻撃までに時間がかかる技……』
『穴を掘るで、時間を引き延ばしていると?』
『そういうことです。地中にいる間は、攻撃を受けませんからね。確実に時間を稼げます』
 持久戦に持ち込むというルゥナの目論見を、完全に達成されてしまっているフィア。
 穴を掘るで時間をかけられ、月の光でダメージは回復される。そしてなにより、根性が発動しても、まるで堪えないブラッキーの防御力。
 圧倒的な攻撃力で圧倒するつもりが、まるで通用しない。
「アイアンテール!」
「しっぺ返しだよ!」
 穴から出て来た瞬間、ブースターが鋼鉄の尻尾をブラッキーに叩き込む。しかしその攻撃は簡単に受け切られてしまい、反撃のしっぺ返しで吹っ飛ばされる。
「月の光!」
 その隙に、ブラッキーは月光を浴びて体力を回復。まるでダメージが蓄積しない。
 一方、ブースターは猛毒でどんどん消耗していく。もう残り体力も僅かだろう。
「だったら、あれしかない……ニトロチャージだ!」
 ブースターは炎を纏って突撃する。
 今までのパターンでいけば、ブラッキーは穴を掘るで回避するはず。
 しかし、
「わかりやすいなぁ、フィア君は」
 ルゥナは、そうはしなかった。
「ブラッキー! 躱して!」
「!」
 穴を掘るを使わず、ブラッキーは大きく横に飛んで、直進するブースターの攻撃を躱す。
 その行動に歯噛みするフィアに、ルゥナは指摘する。
「フィア君、起死回生で一発逆転を狙ってるでしょ?」
「っ……!」
「ここで私のブラッキーを倒せる可能性があるとすれば、根性が発動してて、なおかつ体力が残り僅かな状態で繰り出す、フルパワーの起死回生のみ……格闘技だから、悪タイプのブラッキーには効果抜群だしね」
 ピシャリと、ルゥナは言い放つ。
「起死回生を確実に叩き込めるタイミングは、穴を掘るを使って、地面から出て来た瞬間……カウンター気味に攻撃するその時だよね? だから、ブラッキーの穴を掘るを誘ってる。でしょ?」
 読まれている。
 フィアの思考が、完全に。
「はっきり言って、フルパワーの起死回生を受けても、私のブラッキーなら耐えきる自信はあるけど……自分の思い描く戦略や立ち回りが、いつもいつも上手くいくわけじゃないってことを、知ってもらわないとね」
 猛毒に侵されているブースターは、必死でブラッキーに食らいついていくが、ブラッキーは隙を見せない。ブースターをいなして、躱して、ひたすら距離を取り続ける。
 明らかに、まともに勝負をする気のないルゥナとブラッキーに、観客たちから多少のブーイングが飛んでくるが、彼女らはそんなことなどお構いなしだ。ひたすら防戦を続ける。
 だが、フィアにはわかる。これは、彼女の指導なのだと。
(ルゥ先輩、決勝戦だっていうのに、まだ僕にバトルについて教えてくれてる……)
 実戦の中で培われる力は、見聞きする知識とはまるで違う。それは、ここまでのバトルでフィア自身も実感している。実戦の中でしかわからないこともある。
 今まで教わったことをすべてぶつけてバトルに臨んでいたフィアからしてみれば、戸惑ってしまう。彼女の指導は終わっていない。まだまだ、教わることがあった。
 たとえそれが、決勝戦という舞台であろうとも。
 少し、悔しかった。
「……ブースター、火炎放射!」
「ブラッキー、なにもしなくていいよ」
 ブースターと常に一定の距離を取り、攻撃を躱し続けるブラッキー。
 痺れを切らしたブースターは、火炎放射で遠距離攻撃を仕掛けるが、ブラッキーはそれを無理に躱そうとせず、真正面から受ける。
 直撃。しかし、ブラッキーは堪えているようには見えない。
「ニトロチャージだ!」
「毒々!」
 ブースターは炎を纏って、悠然と佇むブラッキーに突っ込む。
 対するブラッキーは、毒液を放った。毒液そのものにダメージはない。ニトロチャージを押し返すような力もない。
 しかし、顔面に毒液を浴びたブースターは、驚いて足を止め、勢いを殺しきれず、つんのめって転んでしまった。
「うっ、めくらまし……!?」
「そんな感じだね。ブラッキー、距離を取って」
「逃がさないで! アイアンテール!」
「受けるよ。衝撃を利用して、後ろに」
 ブースターから逃げるブラッキーを、ブースターはアイアンテールで追撃する。
 ブラッキーは尻尾の一撃を受けるも、入りが浅い。上手く勢いを利用され、ブラッキーは大きく後退して、結果的にブースターは距離を取られてしまった。
「もう一度だ! アイアンテール!」
「反撃だよブラッキー! しっぺ返し!」
 跳躍して再びアイアンテールを叩き込むが、ブラッキーのしっぺ返しでカウンターされてしまう。
 決して軽くない一撃を喰らい、後方に吹っ飛ばされるブースター。その隙に、ブラッキーは、
「月の光!」
 月光を浴びて体力を回復する。
 バトルが始まってから、ブラッキーは回避と回復を繰り返し、体力はほとんど減っていない。
「まずい、ブースターの体力が……!」
 対するブースターは、猛毒に侵され、体力が削られる一方。ちょくちょく喰らうしっぺ返しによって、消耗はさらに加速される。
 残り僅かな体力も、そろそろ尽きる。あと数分と動けはしないだろう。
「こうなったら、一か八か、そのまま攻める……ブースター!」
 フィアはブースターに呼びかける。
 猛毒で消耗するスピードがどの程度かはわからないが、今まで経過した時間や残り体力を考えると、恐らく、これが最後の一撃だ。
 全身の力を集め、駆動させ、解き放つ。

「起死回生!」

 ブースターはブラッキーに飛び掛かった。
 後ろ足をバネのように使い、地面を抉るほど蹴り飛ばし、一瞬で距離を詰める。
 この一撃が決まれば、もしかしたら——そんな希望を抱いた一撃が、放たれる——
「まあ、そう来るよね」
 しかし、それはルゥナの予見の範疇。読めている手札だ。
 見えているカードへ対処することは、酷く簡単だ。

「穴を掘る」

 ブースターの攻撃が叩き込まれる。
 体力がギリギリの状態で放たれる起死回生。そこに根性の強化が合わさることで、起死回生の一撃は地面を大きく抉っていた。メキメキ、と周囲のタイルをも砕くほどの破壊力。まともに食らえば、生半可なポケモンであれば即座に戦闘不能。ブラッキーほどの耐久力でも、弱点を突かれてしまえば倒れてしまいそうなほどの、強大で驚異的な攻撃だ。
 しかしそれは、当たっていれば、の話。
 当たらない攻撃は、脅威とは言えない。
 起死回生は、直撃した——フィールドへと。
 地面こそ破砕したが、肝心のブラッキーには、当たっていない。
 そして、
「……おしまい、だね」
 ぐらり、とブースターが揺れる。
「ブースター!」
 すると、ばたん、と倒れた。
 猛毒に侵され、蝕まれたブースターの体力が、遂に尽きたのだ。
 目を閉じて倒れたブースターは、戦闘不能。
 つまり、

『ブースター戦闘不能! ブラッキーの勝ち! よって勝者、ルゥナ選手!』

 サミダレタウン大会ビギナーカップ。
 優勝は——ルゥナだ。



あとがきです。サミダレ大会決勝ルゥナ戦、決着。まあ、わかってる人はわかってたでしょうけど、というか展開的に予想されてそうですけど、ルゥナの圧勝です。今回は、前話のあとがきでも述べたように、まともに勝負しないバトルを描きました。毒殺戦法なんて対戦では普通ですけど、相手とまともにぶつかりあわず、逃げ回ってほぼ専守防衛に走るバトルは、見栄えもよくないですし、観客受けは悪そうです。この世界観だと。ルゥナはしっぺ返しである程度は殴ってましたけど、回避と防御が主でしたからね。でもまあ、こういう汚い、まともに取り合わないバトルもまた、戦術で、非難されるいわれはないんですよね。では次回、サミダレタウンのお話は終了予定です。お楽しみに。

第42話 離別独歩 ( No.76 )
日時: 2017/01/26 01:04
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

 結果としてフィアは優勝することができなかったが、それでも準優勝だ。副賞として賞金3万円と、ポケモンの化石を受け取った。
 ポケモンにも化石があるのか、という驚きも束の間。化石なんて貰っても、どうすればいいのだと頭を抱えそうになるが、それを考える間もなく、フィアは一番ポートに来ていた。
 決勝戦前に、フロルは別れ際に言った。

 ——決勝戦が終わったら、一番ポートにきて……待ってるから——

 日は完全に落ちて、闇夜が支配する時間帯。空には半月だけが浮かび、淡い光源としてその存在を控えめに主張している。
 波止場の先。そこに、一つの人影が見える。
 小柄で、華奢な体躯の少女——フロルだ。
 夜の潮風に、彼女のポニーテールと、ボロボロのコートがなびいている。
 ただでさえ薄着なうえにこの時間だ。寒いだろうに、彼女は静かに佇んでいる。
 あと一歩で海に落ちてしまいそうなほど、波止場のギリギリに立つフロルに、フィアは歩み寄る。彼女は、背を向けていた。
「フロル……どうしたの、こんなところに呼び出して」
「…………」
「夜は寒いし、潮風は冷たいよ。ただでさえ君は薄着なんだし、話ならポケモンセンターの方が——」
「フィア」
 フィアの言葉を遮って、フロルは振り向く。
 いつもの彼女と違う。
 決勝戦前の彼女とも違う。
 どこか迷っているような彼女は、そこにはいなかった。
 すべてを覚悟し、意志を決めた。彼女の眼が、声が、そう物語っている。
 そして彼女は、はっきりと、力強く、言葉を紡ぐ。
「お願いがあるの」
「……なに?」
 夜の闇が彼女の表情を隠し、よく見えない。だが雰囲気だけでわかる。フロルの真剣な空気。
 彼女の真摯さが伝わってくる。それを感じると、フィアも真剣に取り合う。
 そして、

「わたしたち……別れよう」

「っ……?」
 あまりにも唐突で、フィアはすぐに意味を理解しきれなかった。
 別れるとは、どういうことなのか。
 彼女の言葉の意味。彼女の真意。
 なにもかも、わからなかった。
 フロルは続けた。
「わたし、シュンセイジムで負けて、ハルサメの大会でもイオくんに負けて……自分が弱いって、ちゃんとわかったの」
「弱いって……そんなことないよ、だって今日のバトル……」
「うぅん、弱いの。今日は、すっごくがんばれた。でも、フィアには勝てなかった」
「でも、凄くいいバトルができたじゃないか! あのバトルで僕が勝てたのだって、ギリギリだった。麻痺で動けなくなったりしたら、それだけで負けてたよ」
「……最初にポケモンをだしたときから、きづいてた。フィアのブースター、ちょっと傷ついてたよね」
「っ、それは……」
 確かに、ブースターは少しだが、消耗していた。
 フロルのポケモンを取り返すために、グリモワールの船に乗り込んだ時。その時のバトルで疲弊し、ダメージも少しだが受けている。
 つまり、万全の状態でフロルとバトルしたわけではないのだ。手負いの状態でフロルのリーフィアとバトルし、そして勝った。
 タイプ相性もあっただろう。しかしやはり、それなりの差が、両者にあったことは否めない。
「ずっと、悔しかった。わたしは、ポケモンといっしょにいられたら、それだけで楽しいと思ってたけど……ちがったみたい」
「フロル……」
「イーくんが言ってたのは、こういうことだったのかな。負けて悔しかった。楽しいだけじゃダメ。強くならなきゃって、思ったの」
 その瞬間、フィアは気づいた。
 自分の弱さに悩んでいたのは、自分だけではない。
 フロルもまた、自分と同じように悩んでいたのだと。
「誰かに甘えてちゃ、ダメなんだよね。今日ポケモンを盗まれて、フィアが助けてくれて……自分が情けないなって思って、気づいたんだ」
「…………」
「フィアは悪くないよ。でも、わたしはフィアといっしょにいると、フィアに甘えちゃう。頼っちゃう。でも、それじゃわたしが旅に出た意味がなくなっちゃう。だから」
「ここで……別れる?」
「……うん」
 フロルの目を見る。真剣で、覚悟を決めたような眼差しだ。
 この世界ではフィアの方が経験が浅い。しかし年齢だけで見れば、フィアはフロルよりも年上なのだ。
 はっきり言って、フィアはフロルが一緒にいてくれる方が嬉しいし、安心できる。フィアにとってこの世界はまだまだ分からないことだらけで、そんな場所を一人で旅するのは不安だ。
 だけどよく考えれば、それはフロルも同じかもしれない。フロルもハルビタウンから出たことはなかったという。なら、それはこの世界をよく知らない、フィアとほとんど同じではないのか。
 負けて悔しいのはフィアばかりではなかった。強くなりたいと願うのは自分だけではなかった。ずっと一緒だった彼女もまた、同じ思いだったのだ。
 フィアは一人でどうしようか考えていた。その途中でルゥナと出会い、自分が迷っていた道を示してくれた。その途中でも、フィアはずっと、自分のことばかり考えていた。
 けれど、フロルも同じことを考えていたのだ。シュンセイジムで負け、大会で負け、自分の未熟さを痛感していた。
 その弱さをなんとかしたいと、ずっと、ずっと、思い悩んでいた。
 言葉の少なさと、マイペースな性格から、こうして言葉にされるまで、まったく気づかなかった。
 フィアも自分の鈍感さ、自己中心さを痛感する。自分の視野の狭さを後悔する。
 しかし、こうして彼女は自分の弱さを、自分に打ち明けてくれたのだ。
 フィアはバトルの経験を積んで、強くなる道を選んだ。フロルは、一人で旅立ち強くなろうとする道を選んだ。
 彼女が自分で考え、自分で出した答え。自分だけの選択。
 それは、尊重されるべきものではないのか。
 フィアは自分にとっても、相手にとっても、最良だと信じる言葉を紡ぎ出す。

「……分かった。僕たちはここで、一旦お別れだ」

 フィアは、そう告げた。
 ここで二人が別れる。それぞれが決めた道を、別々に進むのだ。
 けれど、それは決別ではない。
 また会う日。お互いの強さを示すための、約束だ。
「次に会う時はいつかわからないけど……またね、フロル」
「うん。またね、フィア」
 そう言って、二人の言葉は紡ぎ終わる。

 翌日。
 サミダレタウンを後にした二人は、それぞれ違う道を歩んでいた——



「ターゲットFB……これで概ね教育終了かな。最低限のことは教えたし、バトルの光も闇も見せた。あとは自分で考えて、自分の道を進んでくれるはず」
 月光差す窓辺。少女は大会で尽力してくれた漆黒の相棒にブラシをかけながら、ひとり呟く。
 自分で勝手に計画した、少年少女への指導案。片方へは、一通りのプランは教え込めた。
「次はあの子だね。フィア君よりも手がかかりそうだけど、放っておけないしね」
 ブラッシングされている相棒が身体を震わせる。こちらをジッと見つめていた。
「……なんでこんなことするのか、って言いたい目だね? 確かに、保護と監視が目的とはいえ、代表には深く干渉しなくていいって言われてるけど……放っておけないじゃん」
 相棒はなにも言わない。滅多に鳴くことすらしないほど無口だ。
「理解できないかな? でも、これが性分みたいなものだから。無知は罪ではないけど、知識は生きる糧。外の世界をなにも知らなかった私に、代表は生きる術を教えてくれた……だから私も、ああいう、知らない世界に戸惑う子を、放っておけないんだろうね」
 そっぽを向かれた。分かり合えない、という合図だ。
 いつもこうだ。長いこと一緒にいる相棒だが、思想が噛み合ったことは一度もない。いつも自分のやることなすこと考えることを、否定的な目で見ている。
 それでも、その眼差しのままずっと着いてきてくれているから、彼を相棒だと胸を張って言える。
 否定的でも、分かり合えなくても、なんだかんだ、黙って着いてきてくれる。
 今回もそうだ。
 呆れて、文句を垂れて、渋々ながらも、一緒にいてくれる。
 ずっと隣にいてくれる。
 それが、たまらなく嬉しかった。
「じゃ、もう少しつきあってね……ブラッキー」
 そう呼びかけるも、彼は黙ったまま、静かに目を閉じていた。



あとがき。これでやっとサミダレタウンから出られます。基本的にはリメイク前と同じ展開ですけど、フロルの別れる理由をちょっと詳しくして、最後の方に彼女のシーンを挿入。なんかリメイクしてから、やたらと彼女を優遇している気がしますが、そろそろ終わりです。タブンネ。どうでもいいですけど、フロルの別れようって台詞、恋人が別れ話を切り出すみたいですね。勿論そういうわけでもないですけど。それでは次回、“ナルカミシティ”編です。お楽しみに。

http:// ( No.77 )
日時: 2017/01/26 12:28
名前: パーセンター ◆AeB9sjffNs (ID: VYLquixn)

こんにちは、パーセンターです。最近寒いですね。

サミダレ大会が始まりましたね。今回は一回戦からすでに紛失事件が起こっていますね……
テイルとのバトルでもそうですが、リメイク前よりも描写が詳しかったり細かい伏線が増えていたりして、読んでいて面白いです。ルビサファを遊んでいた人がORASをやっているような感覚、とでもいいますか。特にブースターの根性発動前後は表現が大幅にパワーアップされてますね。

そんでもって盗難事件の犯人はやっぱりこの女の人、罪人マモンですね。このある意味潔い泥棒、嫌いじゃないです。
今回の手持ちはレパルダスなんですね。ウソドロがいなくなるので誰になるんだろうと思っていましたが、レパルダスならばイメージもそんなに崩さず納得です。どちらかというと怪盗寄りな気はしますが。
あとこれはあくまで私の予想ですが、マモンの持つ能力が分かった気がします。もし予想通りだったとしたら、なかなか厄介な特質ですねこれ……
そして(今作だと)新キャラも登場しましたね。アッサム、紅茶の名前なんですね。
最初は完全新規キャラだと思いましたが、すぐにあの方だと分かりました。いやはや、懐かしいですね……昔と比べてどことなく抜けてる面が出てきたというか、人間らしくなったというか、そんな気がしますね。
リメイク前のことも考えると、もしかしてこの地に例の7人のうち6人、ホッポウ地方に集まってたりしてそうです。あと1人?はどうしようもなさそうですが……
ともあれ無事ポケモンを取り返せてよかったです。

準決勝ではフロルとの激闘の末、フィアが勝利。そして決勝はルゥ先輩ですね。こんなナリだが17歳はさすがに笑いました。
ですが今回のルゥナはなんというか、ガチモード、一気に厳しい先輩に変わりましたね。
ブラッキーのこの戦術、できれば相手にしたくはないですね……レートでこんなのに当たったら最悪発狂する気がします。
今回はフィア君、負けてしまいましたが、次のリベンジマッチが楽しみですね。
記憶が曖昧ですが、あとは次の街の名前も変わっているんですかね? ここから先も楽しみにしております。

Re: ポケットモンスター 七つの星と罪【リメイク版】 ( No.78 )
日時: 2017/01/26 22:25
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

>>77

パーセンターさん

 コメントありがとうございます。こちらだとたまに雪が降って、いろいろ大変です……雨よりマシですが、雪も寒くて辛いです……

 リメイクしてから特に意識したのは、仰る通り伏線と描写ですね。
 伏線に関しては、リメイク前と比較できる今だからこそ張りやすいというのもありますけど、リメイク前は突発的だったイベントを、前段階でその存在を匂わせるようにしました。ジム戦とかも同じですね。
 描写はたまにリメイク前のをそのまま載せて手抜きしてますけど、書き下ろしの場合は特に、読者にポケモンの動きが分かりやすいような描写を心掛けています。リメイク前では足りなかったと思う点を、自分なりに推敲して改良したつもりです。
 なので、本作の基本御三家が第三世代なこともあって、ORASを例に評されるのは、とても嬉しいです。

 基本的にシナリオの大筋は変えないので、やっぱりここで出るのは強欲の七罪人、マモンです。七罪人の皆さんはだいたい自分の欲に忠実で、特にマモンは、かなり開き直ってます。
 ちょっと話は逸れますけど、今作は七罪人を通して、悪の美学とか、必要悪についてとかも描写していきたいですね。
 正直、非公式ポケモンをなしにして、マモンのウソドロをなくすのはかなり抵抗あったんですよね。自称泥棒のマモンの手持ちで、ここまで役得というか、はまり役なポケモンは他にいませんからね。非公式を続けるか、なくすかは、マモンのこともあってかなり悩みました。
 結局は色々なことを考慮して、なしにしたんですけどね。それで代わりに入れたのがレパルダスです。他にもマニューラとか、ゾロアークとか考えたんですけど、仰るように女怪盗をイメージしてレパルダスにしました。今思うとマニューラの方が良かった気がしてきた。
 マモンの能力については、名言はしてませんが、リメイク前よりもヒントは多く出していますけど……ばれちゃいましたか。流石です。詳細に関しては、また明言される時に、公開されると思います。
 アッサムは使い回しなのに新キャラというよくわからないことになっていましまいたが、新キャラですね。実はリメイク前だと、過去の話をする時にだけ彼は出すつもりだったのですが、ハブにしてるみたいで寂しかったので追加しました。名前は昔の格好からイメージさせる紅茶の茶の木、アッサムチャからですね。
 毒気が抜けたっていうのはあると思いますけど、リメイク前だと立場が違うってこともありましたからね。仲間内だと意外と彼は気さくです。
 登場させるかどうか、というのはまだ言えませんが、ちょっとネタバレすると、なんらかの形で前作の七人全員については触れます。

 リメイク前はルゥナを破ってフロルと決勝戦でしたが、リメイクして順番を入れ替えました。フィア君には、簡単に優勝はさせないのです。
 こんなナリ云々は、ふと思いついたから投稿直前にぶち込みました。それまでは真面目な実況でしたけど、ちょっと口上が寂しかったので、彼女の特徴? を入れてみた次第です。
 またリメイク前との比較になっちゃいますけど、ルゥナはリメイクしてから、より先輩らしさを出すように努めています。リメイク前だと、形だけの先輩呼びになってしまいそうだったので、後輩を指導する先輩としての彼女を強く描写したつもりです。
 指導っていうと、やはり厳しさも必要ですからね。フロル戦で盛り上がっていただけで二、決勝戦はあえて泥臭いさせました。
 ブラッキーは防御的な種族地に対して、タイプがちょっと残念な気がします。最近のポケモンは、クレセリアレベルの耐久か、それなりの素早さがないと、数値受けをするのは厳しいものがありますからね……それでもブラッキーのポテンシャルは、ブイズらしく高いと思いますけど。
 普通にしっぺ返しを守るに変えるとか、イカサマを覚えさせるとかすれば、ルゥナのブラッキーはレートでも通用しそうな気はします。
 今作の主人公はリメイクしてからやたら負けてますけど、ルゥナと次に対戦するのはいつになりますかね……
 今作は色々と街の名前も変えたりしてますが、次の街はリメイク前だとライカシティだったのを、ナルカミシティに変えましたね……まあそんな大きな意味はないのですが。
 ナルカミシティの話も、大筋こそ変えてませんが、イベント内容、ジム戦形式などを大きく変える予定です。

参照1000ごとに書く短編 第一回「無才の緑花」 ( No.79 )
日時: 2017/01/28 17:57
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

 ここはハルビタウン。シコタン島の南端にある小さな町だ。
 そのすぐ近くにある小さな森——苔玉の森。
 名前の通り、森には多くのコケ類が群生しており、玉状になって連なっていることから、この名前がついた。
 特に奥地にある巨大な岩にびっしりと張り付いた苔は、岩と併せて巨大な苔玉に見えることから、この森の密かな名所となっている。
 その苔玉の森の中に、ひとりの少女の姿があった。
 十を超えようかという程度の小さな矮躯、幼い顔立ち。黄緑色の髪を一つに括ってポニーテールにしている。一見すればごくごく普通の少女だが、白いキャミソールにプリーツスカートという薄着の上に、ボロボロのダッフルコートという、やや奇妙な出で立ちだった。コートは年季が入っているどころではなく、今すぐゴミ捨て場に持って行っても不思議ではないほどに薄汚れ、ほつれが見て取れる。トグルもすべて外れてしまっており、その点だけを抽出してみれば、まるで少女は浮浪者のようだった。
 そんな不思議な意匠の少女の前には、ポケモンがいた。茶色い体毛の、小さなポケモンだ。
 そのポケモンは別のポケモンと向かい合っている。野生のポケモンのようだが、どうやらバトルの最中のようだった。
「イーブイ、電光石火だよっ!」
 小さなポケモン——イーブイは、素早く駆けるて、芋虫のようなポケモン——キャタピーを突き飛ばす。
「目覚めるパワー!」
 続けてイーブイは緑色に光る球状のエネルギー弾を放って追撃する。
 その攻撃で、キャタピーはぐったりと倒れてしまった。
「た、たおした……のかな……?」
 少女が首を傾げていると、キャタピーはやがて起き上がる。しかし明らかに戦意を喪失しており、もぞもぞと這うように逃げて、森の奥に引っ込んでしまった。
「ふぅ……やったねイーブイ。ポケモンバトル、ちゃんとできたね」
 少女は一息ついて、イーブイを抱きかかえる。
「でも、なかなか進化しないね……」
 表情に陰りを見せる少女。
 彼女がこの森で野生のポケモンとのポケモンバトルに打ち込んでいる理由。それは、ひとえのこのイーブイのことであった。
 このイーブイを少女に託した人物からの、指令ともいうべき目標。それは、イーブイを進化させることだった。
 少女には学があまりない。ゆえに、イーブイというポケモンがどのような方法で進化するか、知らなかった。
 例の人物からは、この森で特訓するといい、というヒントを貰ったので、その言葉に従い、ずっとこの森で野生のポケモンとのバトルを続けているが、一向に進化の兆しは見えなかった。
「うーん、どうしたら進化するんだろう……」
 頭を悩ませる少女。
 少女は、とりわけて頭が良いわけでも、運動神経が良いわけでも、突飛な発想力があるわけでもない。優れた才能はなにもなかった。むしろ、人よりも少し劣っているとさえ言える。
 足りない思考力。貧弱な身体。平々凡々な発想力。秀才でも天才でもない無才。
 それを嘆いたり、他人の才を僻んだりすることもなかったが、逆に言えばそれを感じるだけの自己評価もないということ。
 比べる対象への理解なくしては、比較は成立しない。比較が成立しなければ、嘆きも、僻みも、妬みもあり得ない。
 それは彼女にとって悲劇なのだろうか。
 知らぬが仏なのか。無知は罪なのか。
 それはまだ、誰にもわからない。
「もっとたくさんバトルしなきゃいけないのかなぁ」
 そんな彼女の悲哀なり得るかもしれない可能性を、少女は自覚できていない。彼女に見えているのは、他人に与えられた目標だけだ。
 そのために思考するが、導き出される結論は単純だった。
 と、その時。
 もぞもぞと、茂みからなにかが現れた。
 先ほど倒したキャタピーだ。少女に負けてリベンジしに来たのかと思ったが、そこから闘争心は感じられなかった。
 キャタピーはなにやら捲し立てるように鳴ている。正直、まるでわけがわからなかった。
 しかし切羽詰っている様子だけは、伝わってくる。
「……なにか、あったの?」
 そう問うと、キャタピーはピーピーと強く鳴いた。恐らく、肯定の意味だ。
 キャタピーは少女に背を向けると、もぞもぞと這い始める。その途中で、少女に振り返った。
 ついてきてほしい、ということだろうか。
「よくわかんないけど……いこっか、イーブイ」
 ブイッ! と、イーブイも首肯しながら鳴き、少女はキャタピーの後を追うようにして、森の奥へと進んでいった。



 苔玉の森の奥地。巨大な苔むした岩がある場所だ。
 この辺りには湧き水が湧いており、様々なポケモンが水を求めてやって来る。普段から、この場所は常に多くのポケモンが集う場所だった。
 しかし今は、珍しくポケモンの姿が見えない。
 いや、厳密にはいないわけではない。ただ一匹だけ、そこにポケモンが佇んでいた。
「あのポケモンは……なんだっけ?」
 六本の長い脚が屹立し、楕円形の身体を支えている。頭部は水泡で覆われており、鋭い眼差しが光っている。
 見たところ、水タイプと、虫タイプっぽいポケモンだった。
 少女は、森でこのポケモンを見たことがない。しかし、まるで見たことがないわけではなかった。
「たしか、イーくんの研究所にある写真で見た……えぇっと……」
 記憶を探り、情報を引き出し、思い出そうとする少女。
 しばらく唸っていると、ふっと頭の中で情報が繋がった。
「あ、思い出した! オニシズクモだ!」
 進化前のポケモンがシズクモ。進化した時の名前があまり変わっていない変なポケモンだと記憶していたのを、思い出せた。
「思ってたより、すごくおっきい……」
 虫タイプのポケモンは、全体的に小さめな体躯であることが多いのだが、このオニシズクモはかなり大きい。全長で2mほどはありそうだ。
 さらによく見てみると、背後の木々の間になにかが張られている。白い、糸のようなものが折り重なってできた、ハンモックのような幕。
 蜘蛛の巣だ。
 そこに、何匹ものポケモンが張り付いている。
 その中には白い蝶のようなポケモン——バタフリーだ——が見えた。
 バタフリーはキャタピーの最終進化系。もしかしたら、このキャタピーの親なのかもしれない。
 少女は今まで何度もこの森に通い、この最奥部に来たことも少なくない。ゆえにこの状況が異常であることも理解できた。
「そういえば、オニシズクモって、この森で見たことないや……」
 いつも見るポケモンなら、流石に見た瞬間にわかる。
 この森に生息していないはずのポケモンが、急に現れた。そして、今この森に住むポケモンを捕えている。
 いくら無知でも、学がなくても、その意味が理解できない少女ではなかった。
「あ、あの……みんな、嫌がってるし、こんなことしたらダメだよ——」
 と、少女が控えめに注意を促そうとした時。
 オニシズクモの口から、泡状の光線が放たれた。
「きゃっ」
 当たってはいないが、足元に放たれた攻撃に驚き、少女は尻餅をついてしまう。
「うぅ……」
 地面の湿り気がスカート越しに染み渡り、不快感が伝わってくる。
 オニシズクモはいきなり攻撃を仕掛けてきた。和平に応じるつもりはないようだ。
 少女の腕から、イーブイが飛び出してオニシズクモの前に立つ。
「イーブイ……? バトル、するの……?」
 ブイッ、と再び鳴くイーブイ。
 普段は少女と同じで抜けているイーブイ。いつも澄ました顔をしていて、バトルに積極的というわけでもなかった。
 そのイーブイが、自ら戦いに出向いている。少女はそのことに、多少の驚きを感じていた。
 興奮しているような気がする。まるで、なにかに惹かれているかのように。
 少女はあまり乗り気ではなかったが、イーブイがやる気なのだ。自分が臆するわけにはいかない。
「森のポケモンも、放っておけないし……」
 それに、よしんば進化の糧となるかもしれない、という考えもあった。
 少女はイーブイと共に、オニシズクモの前に立つ。
 森のポケモンを守るために。そして、自分自身の、力のために——



あとがきだよ。次回はナルカミシティって言ったけどごめんなさい、嘘です。いやさ、本当はナルカミシティの話をやろうと思ったんですけど、ふと思いつきで短編を書くことにしました。これからは参照1000ごとに短編を書こうかな、と。ただの思いつきなので、いつやめるか分かりませんけど。というわけで第一回は、名前は伏せてますがあの子がメインのお話です。容姿の描写とかで流石にわかるでしょう。使用ポケモンから分かるように、時系列的には過去のお話ですね。ちなみに、作者はオニシズクモ、結構好きです。ハイスペック特性の水泡もですが、あのデザインがなかなか好み。長く立っている脚とか、鋭くも愛嬌ある目とか、実はかなりデカいとか、顔面泡とか。まだ育成したことないんですけど。では次回、短編終わらせます。短編なので、一回、二回、長くても三回で終わらせることを目標にします。ではではお楽しみに。


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