二次創作小説(映像)※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- ポケットモンスター 七つの星と罪【リメイク版】
- 日時: 2017/01/26 02:02
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
どうも、初めましての人は初めまして、白黒です。
知っている人はしっているかもしれませんが、過去に同じ作品を投稿していたことがあります。その時は、読者の方々にはご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
諸事情あって、一度は更新を止めてしまっていましたが、色々思うところがあり、また更新を再開……というか、リメイク。書き直したいと思います。
また、大変申し訳ありませんが、リメイクにあたって募集したオリキャラは一度リセットさせていただきます。ただ、またオリキャラ募集をする予定です。詳細はその時にまた説明します。
以前までのような更新速度は保てないと思いますが、どうかよろしくお願いします。
基本的にはリメイク前と同じシナリオ、キャラクター、設定で進める予定ですが、少し変更点があります。
前提となる変更点としては、非公式ポケモンと、非公式技の廃止。そして、第六世代、第七世代のポケモン、システムの導入です。基本的なシステム、タイプ相性などは最新の第七世代準拠とします。
なお本作品内では、ポケモンバトルにおいて超常的な現象が起きます。また、覚えられる技の設定がゲームと少し違います。その設定に関しては、従来通りのままにするつもりです。
ちなみに、カキコ内でモノクロという名前を見つけたら、それはこのスレの白黒とほぼ同一人物と思っていいです。気軽にお声かけください。
それでは、白黒の物語が再び始まります——
目次
プロローグ
>>1
序章
[転移する世界] ——■■■■■——
>>2 >>3
シコタン島編
[異世界の旅立] ——ハルビタウン——
>>4 >>5 >>6
[劇場型戦闘] ——シュンセイシティ——
>>7 >>8 >>9 >>10 >>11 >>17 >>18 >>19 >>20 >>21 >>22 >>23 >>24 >>25
[罪の足音] ——砂礫の穴——
>>26 >>27 >>28
[バトル大会Ⅰ] ——ハルサメタウン——
>>29 >>30 >>31
[特質TSA] ——連絡船ハルサメ号——
>>34 >>35 >>36
クナシル島
[バトル大会Ⅱ]——サミダレタウン——
>>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>63 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>71 >>74 >>75 >>76
登場人物目録
>>32
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
- ポケットモンスター 七つの星と罪【オリキャラ募集】 ( No.55 )
- 日時: 2017/01/13 00:49
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
- ポケモンジムinformation ( No.56 )
- 日時: 2017/01/14 22:27
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
【シュンセイジム】
ジムリーダー:イチジク
専門:ノーマルタイプ
概要:シコタン島に唯一存在するポケモンジム。劇場を兼ねたジムで、公演の際は裏口がジムの入口となる。フィールドは舞台の上であり、普通の土の上に板を敷き詰めている。他にも、劇の内容に応じたセットが存在する。
資質:主にアドリブ能力、計画性、先の展開を読む力が問われる。即興劇の状況を理解し、そこからどうすればゴール(ジムリーダー戦)へと持って行くか、という力が求められる。その他にも、ゴールを目指す際に様々なルートを模索するための、観察眼、思考力、推理力なども必要となる。
バッジ:アドベントバッジ
・ジム戦のルール[演劇]
即興劇を行い、その展開に応じてバトルをしたり、劇の展開を妨げる障害を取り除き、ジムリーダーとバトルする展開までシナリオを進めることが目的。チャレンジャーの人数に応じてジム側のキャスト人数も変化し、また脚本も変わる。どのような脚本でも、最後にイチジクと戦うようなシナリオに設定されている。公演時間と称した制限時間が設定されており、これを過ぎると問答無用で失格となるが、時間内であればジムリーダーと何度でも再戦可能。一人でもジムリーダーに勝利すればチャレンジャー側全員の勝利となり、全員にバッジが進呈される。
また、ジム戦の日程がイチジクらの所属する【劇団布団座】の公演と被ると、特別公演として、大勢の観客の前で上記のジム戦を行う。
演劇というよりはTRPGのような性質で、独自にシナリオを組み立てる技能も求められ、チャレンジャー自らが考えて行動することが重要となる。そのため、チャレンジャーはその気になればどんな超設定でも押し付けることが可能なので、過去にはジムトレーナー扱いのキャストをすべて僕にされる、シナリオをすべてぶった切ってチャレンジャー総員に袋叩きにされる、お姫様の口づけで目覚める設定にされてファーストキスを奪われるなど、ジムリーダーも意外と苦労している。
シナリオ例
『棺桶に眠る王子』
・あらすじ
とあるところに、シュンセイ王国という小さな国があった。王子のイチジクは類稀なる才気を発揮して国を治め、人柄の良さからも民衆から親しまれていた。しかしある日、王子の優秀さを妬んだ悪魔たちにさらわれ、呪いをかけられて棺桶に閉じ込められてしまった。王子がさらわれて不安に駆られる王国。そんな時、国から勇気ある者たちが集い、悪魔たちから王子を救い出すために、立ち上がるのだった。
・概要
ジムリーダーと戦うためには、鍵のかかった棺桶を開けて、眠っている王子を起こさなくてはならない。鍵はジムトレーナーが持っており、呪いも悪魔の一人を倒すことで解ける。
このシナリオには抜け道がいくつかあり、鍵はスペアが舞台の下に埋まっており、セットの中に紛れ込ませてある木の実で目覚めさせることもできる。そのため、ジムトレーナーと戦わずにジムリーダーと戦うこともできる。
推奨チャレンジャー数は2〜4人。
- おしらせ ( No.57 )
- 日時: 2017/01/16 01:07
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
オリキャラ募集の件で連絡です。
特に日程とかは定めていませんでしたが、それなりに数も集まり、これ以上は来る見込みがないと判断したため、ここで募集を打ち切らせていただきます。
それほど数も多くないので、投稿してくださったオリキャラはすべて採用することにします。
投稿してくださった皆様方、ありがとうございました。
また、設定の追加、変更等ありましたら、その旨をご連絡ください。
それでは、引き続き本作品をよろしくお願いします。
- 第28話 五月雨港 ( No.58 )
- 日時: 2017/01/16 14:17
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
クナシル島は、ホッポウ地方で二番目に大きな島。そして、シンオウ地方に最も近い……というより、クナシル島の最南部はシンオウ地方に分類されるそうだ。そのことについて、ホッポウはシンオウと少しばかり揉め事を起こしているようだが、それはまた別のお話。
クナシル島で最も大きな港町、サミダレタウン。規模も活気もハルサメタウンとは大違いで、人込みの喧騒がいたるところから聞こえてくる。ドーム状の巨大な建物と、様々な島や他の地方からの船も受け入れるための複数のポートが特徴だ。
このサミダレタウンは、言わばホッポウ地方の玄関といった場所なのだ。
「わぁ、おっきい街だねぇ」
「うん。かなり活気があるね」
フロルやイオンと共に船から降りたフィアは、軽く街を散策した後、イオンと別れ、ポケモンセンターで部屋を取って休んでいた。
「フロル。明日も朝早いんだから、ちゃんと起きるんだよ」
「むー。フィアってば、もう明日の話してる……」
「フロルは一人じゃまるで起きられないじゃないか……遅刻して不戦敗なんて、流石に悲しすぎるよ」
そんな話をしていると、ふとフロルの顔に影が差す。
「……イオくん、残念だったね」
「うん……そうだね」
街の散策中に見つけた、バトル大会の広告。
どうやら明日、このサミダレタウンでもバトル大会が行われるようだ。
バトルの経験が積めるということで、フィアは勿論参加するつもりだった。フロルもそれに同調したが、意外にもイオンは違った。
彼曰く、
「この大会も、バッジの個数で参加者が分かれるんでしょ? フィア君たちとバトルするのも楽しいけどさ、オレとしてはもっと上の相手と戦いたいんだよね。だからとっととバッジゲットして、次に進みたいから、今回はパスかなー。お互いバッジの数を増やして、また次の大会でバトルしようよ。じゃーねー!」
と、いうことだった。
言葉をかなり選んでいたようだが、ハルサメの大会は、彼としては満足のいくものではなかったのだろう。
それは初戦で戦ったフロル、二回戦で戦ったフィア、決勝戦で戦ったルゥナも含めてだ。
この街はハルサメタウンよりも大きく、より多い人数の参加者が集う。それでも、バッジの個数によって振り分けられる参加者のレベルは、イオンにとっては物足りないだろうことは、察しが付く。彼は、バッジ一つのトレーナーのレベルではない。
一緒の大会に出ないのは少し残念だったが、彼の選択をフィアたちが止めることもできない。
(それに、僕もずっとイオン君に甘えてばっかりじゃいられないからね……)
シュンセイジムでの活躍は感謝しているが、また次のジムでも彼の力に頼るようなことはしたくなかった。
この世界に不慣れなフィアだが、適応するというのは楽をすることではないのだ。
シュンセイジムで痛感した自分の不甲斐なさ。そこから、イーブイの進化、バトル大会、ルゥナの教え——短い間だったが、様々な物事を経験し、知識も得た。
ジム戦から二日しか経っていないが、この大会はその間につけた力を、一人で、試す時なのだ。
そして翌日。
フロルを起こすのに四苦八苦しながらも、フィアはフロルと一緒に、バトル大会が催されるドーム、ポケモンバトル専用の特設フィールドが設置されているらしいスタジアムに来ていた。
「……凄いな」
フィアは心の底から驚いていた。自分たちが参加するレギュレーションは、新米トレーナー向けのもの。なのでそこまで活気があるとは思っていなかったのだが、観客席はほぼ満席。相当数の人が観戦に来ている。
「こんな中でバトルするのは流石に緊張するなぁ……フロルは大丈夫?」
「え? なにが?」
緊張の有無を聞いたのだが、フロルはきょとんと首を傾げているだけだった。どうやら、まったく問題ないようだ。
とその時、二人のターミナルにメールが送信された。
「トーナメント表だ……やっぱり大きな大会なだけ会って、参加人数も多いね」
試合回数は、一回戦、二回戦、三回戦とあり、それらを勝ち抜けば準決勝、そして決勝戦。優勝するためには五回も勝たなければならないことになる。
当然ながらトーナメント表にイオンの名前はない。代わりに、違う名前が目につく。
「! ルゥ先輩……!」
ルゥナだ。彼女も、この大会に出ていたようだ。
しかしフィアからは離れたところに名前がある。完全に逆ブロックで、決勝まで行かなくては戦えそうにない。
そこからフィア寄りのところには、フロルの名前もあった。
「フロルは……」
かなり離れている。ここまで離れていると、準決勝までいかないと当たらない。
サミダレタウンは大きな街で、そこで開かれる大会も大きい。勝ち抜くのはそう簡単なことではないはずだが、
「フィア、がんばろう」
「フロル……」
「がんばって勝ち抜いて、準決勝で戦おうよ」
フロルは小さな拳を握り、自身を鼓舞するようにそう言った。
「……そうだね」
そのフロルの発言が気を紛らわせるためなのか、それとも本気で言っているのかフィアには判断つかなかったが、フィアはこの大会を勝ち抜くのは簡単でないと分かる。だがそれでも、そんなことを言われてしまえば、決勝に行こうと思わざるを得ない。
——間もなく、サミダレタウン大会一日目、ビギナーカップ一回戦が開始されます。出場選手は、所定の対戦フィールドに移動してください——
「……もう時間だね。それじゃあフィア、がんばって」
「うん、フロルも」
アナウンスが流れ、フィアとフロルは一旦別れる。そして、各々指定された対戦フィールドへと向かうのだった。
フィアの一回戦は、驚くほど拍子抜けだった。
昨日はフロルに、起きないと不戦敗になるよ、とわりと冗談でなく脅したりしたものだが、まさか自分がその逆パターンを味わうことになるとは思わなかった。
不戦敗の逆。つまりは、不戦勝。
フィアの一回戦は、戦わずしての勝利だった。
「ラッキーと考えるべきなのかな、これは……」
フィアは経験を積むために出場しているので、バトルがないというのは、なんとなく残念な気持ちになる。
「それにしても、相手の人もなんか変だったな……」
お互いにフィールドに立ち、いざポケモンを繰り出そうとした時、相手はポケモンを出さなかった。
いつの間にかポケモンがいなくなっていたと喚いていたが、ボールに入ったポケモンが勝手にいなくなるわけがない。道端に落としたか、部屋に忘れたか、といったところだろうが。
「……まあ、僕には関係ないよね。フロルとは準決勝で会う約束だし、ルゥナ先輩ともまたバトルしたい。不戦勝だけど、この勝利はありがたく受け取っておこう」
勝ってしまったものは仕方ない。可哀そうだが、相手のトレーナーはご愁傷様でした、と言ってやるほかなかった。
あとがき。遂にサミダレタウン。ここでもバトル大会です。よく考えたら、直前で大会してるのにまた大会かよ、と思います。昔の自分の考えることはよく分かりません。大筋はやっぱり変わってませんが、イオンが今大会に参加してない理由を明確にしたり、試合回数、対戦カードなどに変更を加え、それに伴って新しいシーンを追加したりしてます。リメイク前よりも描写が多く、カットよりも追加要素が多いので、伏線込み込みで話が以前より長くなってしまいますが、ご勘弁ください。では次回、サミダレタウン大会、本格的に始動します。お楽しみに。
- 第29話 助言忠告 ( No.59 )
- 日時: 2017/01/17 01:24
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
「ミズゴロウ、水鉄砲だ!」
ミズゴロウは口から大量の水を噴射し、熊のぬいぐるみのような姿のポケモンを吹っ飛ばした。
『Information
ヌイコグマ じたばたポケモン
ぬいぐるみのような見た目に
騙されてはいけない。腕を振り
回す力はプロレスラーも吹っ飛ばす。』
ヌイコグマは派手に吹っ飛ばされると、そのまま地面に叩きつけられ、目を回して戦闘不能となった。
『二回戦決着ぅ! フィア選手のミズゴロウ! ヌイコグマのじたばたで接戦になるも、激流の特性を発動して勝利だぁー!』
アナウンサーの高らかな叫び声が響き渡り、会場内は一気に湧き上がる。
「なんとか勝てた……」
体力が減ると威力が増加するじたばたには苦戦させられたが、こちらも体力が減ることで水技の威力が増加する激流の特性を発動させ、最後の接戦を制することができた。
対戦相手に一礼してから、フィアは汗を拭いつつ、フィールドを後にする。
フロルと共に一回戦を突破したフィアは、続く二回戦も辛く勝利を収めて、三回戦進出を決めた。今のところは順調だ。
緊張と興奮が入り混じった気分で、会場ロビーへと戻ると、見覚えのある長い銀髪が目に入った。
その人物もこちらの存在に気付いたようで、たったと小走りでこちらに向かってくる。
「フィア君っ!」
「ルゥ先輩……」
ロビーに戻ってきたフィアを迎えたのは、ルゥナだった。彼女の方が対戦が早いブロックだったので、先に試合が終わっている。フィアのバトルが終わるのを待っていたのだろうか。
軽く周囲を見回すが、フロルの姿はない。まだ試合中だろうか。
などと思っていると、ルゥナがこちらに笑顔を向けている。
「二回戦突破おめでとう!」
「あ、ありがとうございます」
「連絡船で私が教えたこと、ちゃんと実践できてるみたいで安心したよ。特性を理解して使いこなさないと、強いトレーナーにはなれないからねっ」
「そう、みたいですね……」
特性の強さは、フィアも実感していた。
知って使うのと知らずに使うのとではまるで違う強さだ。まだミズゴロウの特性しか発動させたことはないが、ピンチになるとパワーアップする激流は、ここぞというところで頼りになる。
ルゥナに特性のことを教わって、本当に良かったと思う。それと同時に、彼女への感謝も募る。
「ところでフィア君、次の対戦相手のチェックはしてる?」
「次の対戦相手? いえ……」
「じゃあ、ちゃんと見ておいた方がいいよ。記録は残されてて、P・ターミナルを使えばいつでも閲覧できるから」
と、自分のP・ターミナルを操作して、閲覧の仕方を教えてくれるルゥナ。至れり尽くせりだ。
「対戦相手を知ることは、こういう大会では重要だからね。しっかりチェックするんだよ」
「そうなんですか?」
「当然! 知は力。情報は勝負の基本だよ。対戦相手の今までのバトルを見れば、相手がどういうポケモンを使って、どういう技で攻めて、どういう戦術を用いるのかがわかる。それがわかれば、対策も立てられるし、準備もできるでしょ?」
「はぁ、確かに……」
とはいえ、フィアの知識と戦力では、どのような対策を講じればいいのか、また対策できるだけの力があるのか、不安ではあるが。
「特に次は三回戦。二回戦までを勝ち抜いてきた強者揃いだから、しっかり準備しておかないとね」
しかしルゥナの言うことももっともだ。元の世界でも、同じようなことを言っている軍師を思い出す。
「それともう一つ。フィア君に、次のステップに行くためのヒントをあげる」
ピッ、と人差し指を立てて、ルゥナはウィンクする。
「次のステップの、ヒント、ですか?」
「そう。フィア君もバトルの基本は押さえて来たみたいだし、次はテクニック編ね」
基本を押さえたと言っても、それは初歩の初歩的な段階であり、まだまだ知識不足な感は否めないのだが。
それでもルゥナは、次の段階に進める信じていた。
「あのねフィア君、ポケモンの技は、攻撃するためだけにあるんじゃないんだよ」
「……?」
いまいち言っている意味がよくわからなかった。
技は攻撃するためだけにあるわけではない。変化技は確かに攻撃ではないが、そういうことでもなさそうだ。
「もちろん、ポケモンの技は攻撃して、ダメージを与えることが基本だけど、技の使い方はそれだけじゃない。トレーナーの発想次第で、無限の使い方が生まれるんだよ」
「?」
「むしろ混乱させちゃったかな……えぇっと、そうだなぁ……」
まるで理解を示さないフィアに、ルゥナも困惑していた。
しばし考え込むルゥナ。そして、例を出しつつ説明する。
「たとえば、炎タイプの技に、火炎放射ってあるよね」
「はい。僕のブースターも覚えている技、ですよね」
「炎にはものを燃やす性質があって、木や草を燃やすことができる。これはわかるよね?」
「それは、まあ、勿論……」
ふと、元の世界のことを思い出した。
“彼女”とあの世界で初めてポケモンに出会った時。灯油缶に引火させて大爆発を起こさせられた。炎とはかくも恐ろしいものだ。
「でも炎っていうのは、熱の塊でもあるの。だから水を蒸発させたり、鉄を柔らかくしたり、溶かしたり……色んな使い方ができるよね」
「えっと……そ、そうですね」
言っていることは理解できた。フィアも固体、液体、気体の基本的な性質や、金属の熱伝導くらいは知っている。
しかし、それでなにを伝えたいのかは、いまいちよくわからない。
そう思っていると、ルゥナはさらに例示する。
「炎が強ければそれだけ高温になって、水技を打ち消しやすくなる。鉄に吹き付ければ熱伝導で、直接当てなくてもダメージになる。こんな使い方もあるんだよ」
「あ、成程……」
「他にも、広く拡散させるように放ったってめくらましに使ったり、上に鼻って火の雨にしたり……ポケモンの熟練度次第なところもあるけど、技の広がりは無限大だよ」
単純に技を繰り出すだけでなく、その技でなにができるのか。どんな用途があり、どんな風に応用が利くのかを考える。
ルゥナは、そういうことを言っているのだろう。
「ただ技を打ち合うだけのトレーナーは強くなれないよ。技の可能性を広げて、自分なりの工夫をしないとね」
「は、はい。やってみます……!」
その点ルゥナは、技合成で技の広がりを持たせることができるので楽そうだな、と思ったりもしたが。
今まではあまり考えなかったが、技をただ放つだけでなく、応用して使うことも意識する必要がある。その点では、“彼女”が灯油缶を用いて爆発を起こしたのも、技の広がりの一つと言える。
次の対戦相手のチェック。それから、技の応用。
この小さな先輩は、初心者な自分に精一杯のアドバイスをしてくれている。その助力には、応えたいと思う。
「私からのアドバイスは、ひとまずこれでおしまいっ。お互い次の試合があるし、この辺にしとこうか」
「はい、ありがとうございました」
「いいよいいよ。それよりも、私の言葉、忘れないでね」
「……はい」
「いい返事だね。じゃ、頑張ってね……あ」
「ま、まだなにか?」
去り際に、思い出したように声を上げるルゥナ。まだ言い残したことがあるのだろうか。
「いや、ちょっとフィア君にも注意しておいた方がいいかなって」
「な、なにがですか?」
こちらに向き直るルゥナ。
初めて見る、真剣で、真摯で、剣呑さすら感じるルゥナの眼差し。
彼女は重い口振りで、フィアに告げた。
「今回の大会ね——ポケモンの紛失事件が起きているの」
あとがきですね。今回はフィアの二回戦突破。相手がヌイコグマなのは、元々が同じ格闘・ノーマルタイプで、熊のぬいぐるみを模した非公式ポケモン、テディがここで登場したので、セルフオマージュ的な? どっちも熊のぬいぐるみなので、合わせた感じです。ただそれだけです。本題はそこではなく、それに続くルゥ先輩のありがたいお言葉の時間ですけど。小説やアニメならではな、ゲームでは再現できない技の多様性については、いまいち上手く表現できた気がしないです。でも、伝わってくれてますかね? ちなみにリメイク前はここで出迎えるのはフロルで、対戦動画が見れることとかはサラッと流す程度だったんですけど、今回はちょっと文章マシマシです。ルゥナは完全にフィアのポケモンバトルアドバイザーと化していますけど、技合成の力を持つ彼女だけに、技そのものについての言及は適役だったかなと思います。ククイ博士が出て来ないのが悔やまれますね。では次回、待望の三回戦……までいけるといいですね。ルゥ先輩のお話だけで終わっちゃいそうですが、お楽しみに。
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19
この掲示板は過去ログ化されています。