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ポケットモンスター 七つの星と罪【リメイク版】
日時: 2017/01/26 02:02
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

 どうも、初めましての人は初めまして、白黒です。
 知っている人はしっているかもしれませんが、過去に同じ作品を投稿していたことがあります。その時は、読者の方々にはご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
 諸事情あって、一度は更新を止めてしまっていましたが、色々思うところがあり、また更新を再開……というか、リメイク。書き直したいと思います。
 また、大変申し訳ありませんが、リメイクにあたって募集したオリキャラは一度リセットさせていただきます。ただ、またオリキャラ募集をする予定です。詳細はその時にまた説明します。
 以前までのような更新速度は保てないと思いますが、どうかよろしくお願いします。

 基本的にはリメイク前と同じシナリオ、キャラクター、設定で進める予定ですが、少し変更点があります。
 前提となる変更点としては、非公式ポケモンと、非公式技の廃止。そして、第六世代、第七世代のポケモン、システムの導入です。基本的なシステム、タイプ相性などは最新の第七世代準拠とします。
 なお本作品内では、ポケモンバトルにおいて超常的な現象が起きます。また、覚えられる技の設定がゲームと少し違います。その設定に関しては、従来通りのままにするつもりです。

 ちなみに、カキコ内でモノクロという名前を見つけたら、それはこのスレの白黒とほぼ同一人物と思っていいです。気軽にお声かけください。

 それでは、白黒の物語が再び始まります——



目次

プロローグ
>>1
序章
[転移する世界] ——■■■■■——
>>2 >>3

シコタン島編
[異世界の旅立] ——ハルビタウン——
>>4 >>5 >>6
[劇場型戦闘] ——シュンセイシティ——
>>7 >>8 >>9 >>10 >>11 >>17 >>18 >>19 >>20 >>21 >>22 >>23 >>24 >>25
[罪の足音] ——砂礫の穴——
>>26 >>27 >>28 
[バトル大会Ⅰ] ——ハルサメタウン——
>>29 >>30 >>31
[特質TSA] ——連絡船ハルサメ号——
>>34 >>35 >>36

クナシル島
[バトル大会Ⅱ]——サミダレタウン——
>>58 >>59 >>60 >>61 >>62 >>63 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>71 >>74 >>75 >>76


登場人物目録
>>32

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19



Re: ポケットモンスター 七つの星と罪【リメイク版】 ( No.15 )
日時: 2017/01/05 13:20
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

>>14

パーセンターさん

 本当なら、前スレで続きを書きたかったんですが、非公式ポケモンのデータの多くを忘れてしまったことや、過去ログに流れて返信してもトップに上がらなくなったことなどから、リメイクと言う形で新しく書き直すことにしました。
 設定集のデータも全部消えているので、それならばと、少し設定を弄ったりしています。それと、非公式なし、SMのポケモン採用の方が、新規層を取り込みやすいかなという、打算的な考えもありますが……まあ、作者が第七世代のポケモンを使いたいだけ、なんですけど。最初のジムリーダーに凄いピッタリなポケモンを見つけたので。
 ジムの設定は大きく改変しましたね。特に理由はないんですけど、強いて言えば、イオンたちの出番を増やしたかったとか、リメイク前や前作から、主人公は単独行動が多くなりがちだったから、仲間と一緒に行動する機会を増やしたかったからとか、色々細かい理由はありますけど。
 余談ですが、同時にアルカディアス・デストピアとか、対戦記録譚とか、今まで放置している作品も続けようと考えているのですが……すべて過去ログに流れて、ファイルが存在しない状態になっているようで、いくら更新してもトップに上がらないんですよね。管理人と連絡中なのですが、そのまま更新を続けるか、新しく書き直すかは、その結果次第になりそうです。

 ご指摘ありがとうございます。確かに2話と3話の間が一話分飛んでいますね……早く進めようと気が急いて失敗してしまいました。申し訳ありません。
 2話に加筆修正するか、もしくはすべて一話ずつずらすか……なんらかの方法で一話分を挿入します。その時はまたお知らせいたします。

お知らせと謝罪 ( No.16 )
日時: 2017/01/05 13:55
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

 作者からのお知らせです。

 こちらの落ち度で、2話と3話の間に投稿する予定だった一話分が抜け落ちていました。この作品でかなり重要な位置にある話なので、なかったことにもできず、なんとかその話を挿入しようとした結果、>>3の第2話に統合するという処置をしました。

 読者の方々は、いきなりダイケンキが出て来てさぞ困惑したと思います。大変申し訳ありませんでした。
 重ねて言いますが、抜けている一話分は、>>3に投稿されている第2話の後半に統合しました。それに伴い、第2話の文章も少し変わっています。ご了承ください。

 それでは引き続き、リメイク版『ポケットモンスター 七つの星と罪』をよろしくお願いします。

11話 双頭悪魔 ( No.17 )
日時: 2017/01/05 15:31
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

「よくぞ私たちの住処、悪魔の森を訪れたな。我が名はトウガキ。王子を眠らせる悪魔だ」
「そして、オレサマがバンガキ。王子を閉じ込める悪魔だ!」
 ジム戦、または公演が始まるや否や、トウガキとバンガキはそれぞれ名乗りを上げる。
 トウガキの方はかなり芝居がかった口調だが、バンガキの方はあまり変わっていないように見える。
 目的はジムリーダーを倒すこと。しかし、彼らはどうすればいいのか。トウガキやバンガキとも戦わなくてはならないのか。
 フィアがたたらを踏んでいると、ふと、舞台の奥から間延びした声が聞こえてきた。
「あー、これ開かないなー。鍵かかってる」
「って、イオン君!? なにしてるの!?」
 イオンが棺桶の上にに乗り、蓋を掴んで引っ張っていた。しかし、ガタガタと音を立て、蓋は開く様子がない。
「だって、ジムリーダー倒さなきゃジム戦できないんでしょ? でもジムリーダーこの中じゃん? だったらこれを開けるしかないっしょ」
「だからって……」
「その通りだ」
 イオンの言葉を、肯定する声。
 トウガキだ。
「王子を助けたくば、その棺桶を開く他ない」
「ま、無理だろうけどな! オマエらじゃ棺桶は開けられやしない! なんたって、棺桶の鍵はオレサマが持ってるんだからな!」
「それに、仮にその棺桶を開いたとしても、奴には呪いがかかっている。お前たちがいくら王子に声をかけても、奴が目覚めることはない。自然からの恩恵なくしてはな」
 毅然とした表情で立つトウガキと、手の中で鍵を弄ぶバンガキ。二人はそれだけで、動く気配はない。
 しばし睨み合っていると、バンガキが手にする鍵が目につく。それを見て、フィアは理解した。
「……そうか。そういうことか」
「んんー? どったのフィア君?」
「ここのジム戦は、お話に沿ってバトルをする。だけどお話は、僕らが動かさなくちゃいけないんだ」
「? よくわかんない」
 疑問符を浮かべるフロル。
 フィアはそれに対し、具体例で説明した。
「あの悪魔——バンガキさん——は、棺桶の鍵を持ってる。あの鍵で棺桶を開ければ、ジムリーダーを、王子を助け出せるよ」
「あぁ、成程ねぇー。そういうことか」
 バトルがシナリオに組み込まれているのは確かだろう。シナリオを進めることで、王子を助け、ジムリーダーと戦う道筋が生まれる。だが、それは自分たちの手で動かさなくてはならない。
 つまり、自分たちが主体的にバトルをしていかなくてはならないのだ。
 自分たちも、この劇のキャスト、登場人物。それも主人公だ。
 自分たちが動かなくては、話が進まない。
「だったらとっとと終わらせちゃおうよ。時間もないんだしさ」
 フィアの言葉を理解したイオンが、ボールを手にバンガキの前に立った。
「おう、なんだオマエ。オレサマとやろうってのか?」
「そういうことですねー。鍵はいただきますよ」
「やれるもんならやってみろ!」
 バンガキもボールを取り出し、舞台の片側ではバトルが発生する。
 ここでイオンが勝てば、バンガキから棺桶の鍵を手に入れることができるだろう。そうすれば、棺桶は開くが、
(でも、鍵を開けるだけじゃ、たぶんダメだよね……さっき、トウガキさんが言ってた)

 ——奴には呪いがかかっている。お前たちがいくら王子に声をかけても、奴が目覚めることはない。自然からの恩恵なくしてはな——

 呪いというのはフィクションだとしても、目覚めることがないということは、そういうことなのだろう。
 この場合、本当に眠っているかどうかは関係ない。これは劇。物語だ。眠っているという設定があるだけで、シナリオを進める障害となる。
(自然からの恩恵ってなんだろう。それに、呪いって……そこに、ヒントがあると思うんだけど……)
 トウガキの言葉を反芻し、考える。
 ふと、顔を上げると、
「トウガキさん。バトル、おねがいします」
「私に挑むか。勇敢な娘だな。いいだろう。相手をしてやる」
「って、フロル!?」
 フロルがトウガキにバトルを申し込んでいた。
 当のフロルは、小首を傾げて、疑問のポーズ。
「? どうしたの、フィア」
「どうしたのって、なんでバトル……」
「だって、ジム戦でしょ? バトルしなきゃ、先には進めないよ?」
 こともなげに言うフロル。
 それは本当に些細な言葉で、何気ない一言だった。
 しかしその一言で、フィアはハッとさせられる。
(! そうだ……考えてても、始まらない……)
 これはジム戦。ジムとは、バトルによって道を切り開く場。
 この世界においてはポケモンがその役割を担う。バトルをしなければ、何にもならない。
 時間のこともある。うだうだと考えていても、始まらない。戦うべきところでは、戦わなくてはならない。
 フィアも、ボールを強く握り込んだ。
「……あれ、だけど僕の相手、いないや……」
 イオンはバンガキと、フロルはトウガキと、それぞれバトルをしている。
 フィアの相手は、どこにもいなかった。



あとがき。たまにギャグっぽい終わり方になるけど、オチのつけかたって難しいですね。遂にジム戦が始まりますが、だいぶジムの趣向を変えています。たぶん、最初のジムでも結構長く続いちゃいそうです。従来までのようにジム戦の形式を、アニメのようなジムリーダーとの一騎討ちだけにしなかったのは、同じ形式のバトルが八回もあると、単調になってしまうかなという懸念によるテコ入れと、SMの試練がバリエーション豊かで面白かったからです。ジムギミックも面白いんですけど、形式がジムごとに違うっていうのも面白いかな、と。アニポケでも、ホミカ戦では6vs3、ザクロ戦では3vs2とか、アロエ戦では先に二体決めるとか、時々変則的なルールになっていたりしますしね。ちなみにトウガキさんとバンガキくんの名前は、面白い方のカキとは関係ありません。いや、漢字にしたら関係ありそうですけど、元ネタとしてはちょっと違います。これについては微妙なネタバレ含みそうなので、また後程。久しぶりにたくさんあとがきを書いたところで、次回はジムバトル。トウガキさんとバンガキくんのバトルです。お楽しみに。

12話 第一之鍵 ( No.18 )
日時: 2017/01/06 00:14
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

「制限時間もあるし、とっとと決めるよ。サンダース!」
「出て来い、ホルビー!」
 イオンが繰り出したのはサンダース。対するバンガキは、特徴的な耳をした、灰色のウサギのようなポケモンを繰り出す。

『Information
 ホルビー 穴掘りポケモン
 大きな耳で地面を掘り巣を作る。
 耳の力はとても強いが、耳が発達
 しすぎたため手の力が弱くなっている。』

「先制攻撃だ! サンダース、電光石火!」
 イオンは互いにポケモンが出揃うや否や、先んじて攻撃を仕掛ける。
 超高速でホルビーへと突っ込むサンダース。直撃を喰らったホルビーは、たまらず吹っ飛んだ。
「っ!? 速い……!」
「次々行くよー! 二度蹴り!」
「喰らうかってんだ! こっちも二度蹴りだ!」
 サンダースは追撃をかけるが、ホルビーの二度蹴りに合わされてしまい、威力を相殺される。
「往復ビンタ!」
「躱して電気ショック!」
 互いが着地した瞬間。ホルビーは大きな耳を振るって攻撃するも、サンダースの俊敏なバックステップで躱され、反撃の電撃を浴びてしまう。
 さらにサンダースは、攻撃の手を緩めないが、
「ミサイル針!」
「当たらねぇよ! 穴を掘る!」
 サンダースが体毛を鋭い針のように尖らせ、射出した瞬間。
 ホルビーは舞台の床板を破壊し、そのまま潜ってしまう。どうやらこの舞台はフィールドの上に板を乗せているだけで、板のすぐ下は土になっているようだ。
「! どこに……?」
 地中に身を隠したホルビーの姿は、当然ながら見えない。きょろきょろと辺りを見回し、出て来た瞬間を狙って動きたいが、
「そこだ! ホルビー!」
 ちょうどサンダースの真下の床板が弾け飛び、ホルビーが飛び出す。サンダースは床板と一緒に吹き飛ばされた。
「あ、サンダース!」
「続けていくぜ! 往復ビンタ!」
 ホルビーも追撃を仕掛ける。宙に舞ったサンダースを追って跳び、大きな耳でその身を打ち据えて、舞台へと叩き落した。
「う……やっべー。穴を掘るは地面技、効果抜群じゃん……シュカの実はおやつじゃなくて、持たせるべきだったなー……」
「おいおい、そんなんで大丈夫か? その程度じゃ、この鍵は渡せないぜ?」
 くるくると手の内で鍵を見せつけるように弄ぶバンガキ。
 ふらふらとサンダースは立ち上がるが、。効果抜群の穴を掘るが致命傷だ。あの一撃で、サンダースの体力は大きく削られてしまった。
 しかし、サンダースの闘争心は消えてはおらず、体毛を逆立て、バチバチと電気を弾けさせて威嚇する。
「よし、その意気だサンダース! まだまだこれから! 電気ショック!」
「穴を掘る!」
 サンダースの放つ電撃を、ホルビーは穴を掘って回避する。
 次にあの攻撃を喰らえば、サンダースはほぼ確実に戦闘不能だ。なんとしてでも、躱さなくてはならない。
「…………」
 しかしイオンもサンダースも、動かない。棒立ちでジッとしているだけ。どころかイオンに至っては、目を瞑っている。
 完全にホルビーを見ていない。いや、そもそもホルビーの姿は見えないのだが。
(見えないものを見ようとしても無意味……目を開ける必要はない。必要なのは、感覚——)
 すると、スッとイオンが開眼した。
「——ん、こんくらいっ! サンダース、跳べ!」
 イオンの指示を受け、サンダースは大きく跳躍した。
 その直後、サンダースの真下から、ホルビーが飛び出したが、そこにはもうサンダースはいない。
 穴を掘るのタイミングを完全に合わされ、バンガキは目を見開いている。
「こいつ、ホルビーの穴を掘る時間を読みやがったのか……!? あの一回で!?」
「ま、大体ねー。電気ショック!」
「ちぃ! 撃ち落とすだ!」
 空中から電撃を放つサンダース。ホルビーは岩塊を飛ばして打消す。
「電光石火!」
「往復ビンタ!」
 シュタッと着地すると、サンダースは駆け出す。ホルビーも同じく突貫していくが、同じ土俵ではサンダースのスピードには追いつけない。横からの突撃を喰らい、体勢を崩してしまう。
「打ち上げて! 二度蹴りだ!」
 体勢が崩れたところを狙われ、蹴り上げられるホルビー。
 そして、これで終わりだった。
「とどめっ! 電気ショック!」
 最後に電撃を浴びて、ホルビーは舞台へと落下する。完全に目を回しており、戦闘不能だった。



 サンダースをボールに戻し、イオンがフィアの下へと戻ってくる。
 バンガキとのバトルの一部始終を見ていたフィアは、明るい表情で彼を出迎えた。
「イオン君! 勝ったんだね」
「まーねー。流石ジム戦、ジムリーダーじゃなくてもけっこー強かったけど、この通り」
 そう言って、イオンは手の中の鍵を掲げる。
「これで棺桶の扉が開くねー」
「でも、たぶんそれだけじゃダメだよ。トウガキさんは、王子は呪いで目覚めない、って言ってた」
「寝てるってこと? 起こせばいいんじゃない?」
「いや、呪いって言ってるから、普通に起こしたんじゃたぶん起きない……これはお話。だから、なにか鍵があると思うんだ」
「鍵ならここにあるよ?」
「その鍵じゃなくて……」
 王子を目覚めさせるための、キーアイテムだ。
 それがなければ、棺桶を開けることが出来ても、王子は目覚めず、救ったことにはならない。
 どうしようと唸っていると、すぐそこにバンガキがいたので、ダメ元で聞いてみた。
「……バンガキさんは、なにか知ってませんか?」
「オレサマが答えるわけねーだろ。王子の呪いはトウガキ兄ちゃんがかけたんだ。知ってるのは兄ちゃんだぜ」
 やはり、この劇における乗り越えなければならない障害は、それぞれトウガキとバンガキが担っているようだ。
 バンガキは棺桶の蓋を開けるための鍵。
 そしてトウガキが、王子にかけた呪い。
 棺桶を開けても、王子が目覚めなければ意味はない。第二の障害が待っているが、それを突破するには、トウガキを倒すほかない。
「トウガキさんってことは、フロルか……」
 今、トウガキとバトルしているのはフロルだ。
 対戦の様子を見てみると、あまり戦況は芳しくない。
「時間はあと十五分……フロル、大丈夫かな?」
「ま、仮にフロルちゃんが負けても、オレがサクッと倒すよー」
「どうだか。兄ちゃんは強いぜ。オレサマよりもな」
 バトルを見る限り、イオンのサンダースが戦闘不能ギリギリまで追い込んだバンガキも、決して弱くはなかった。
 トウガキがそれ以上の強さとなると、フロルが勝てるかどうか、非常に心配だ。
 そしてフロルとトウガキのバトルは終わるまで、フィアとイオンは見ているだけ。ただ見ることしかできないというのは、やはりむず痒い。
「……こっそりヒントをやるよ」
 そんなフィアの心中を察してか、バンガキがそっと耳打ちしてくる。
「この劇は俺たちが筋書きを用意しているが、筋書き通りに話が進むとは限らない。物語ってのは独り歩きするんだ」
 一人称が少し違う。劇の役ではなく、あくまでジムトレーナーの一人として、アドバイスということだろう。
「中には分岐ルートとして設定していることもあるが、それすらも無視して、筋書き通りにならない展開もあり得る。それは大きな意味で変化があったり、また、些細かつ微妙な違いでしかないこともある」
「分岐ルート……?」
「用意された筋書きに律儀に従う必要はねぇ。自分の進みたい道、考えられる無数のルートからどれを選び取るか……そこに秘められた可能性を、よく考えてみな」
 そこでバンガキは、言葉を切る。アドバイスは以上ということらしかった。 
「筋書きに従う必要はない……無数のルートに秘められた可能性……」
 バンガキの言葉を反芻するフィア。
 彼の言葉はなにを意味するのか。
 フロルのバトルを見守りながら、彼はそのことについて、考え続けている。



あとがきです。やっとまともにジムでバトルができました。最初はイオンとバンガキのバトル。バンガキのポケモンはホルビーです。アニポケでも、ホルビー好きなんですよね。わりと個性がぶつかり合いがちなXYのポケモンの中で、仲裁に入ったりするなど、緩衝材的な役割を果たしているところとか、真面目で面倒見がいいところとか。シトロン戦も燃えましたしね。ホルードは……まあ、対戦だとそれなりに強いと思いますよ。曲がりなりにも力持ちで、先制技やタイプ一致技、サブウェポンに積み技にも恵まれてますし。そういえば、シュンセイジムがノーマルタイプの使い手って、どこかで描写したっけ……なんかしてない気がします。すっかり忘れてた。ホルビーの時点で察してくれると信じましょう。次回はフロルとトウガキのバトルですね。お楽しみに。

13話 獅子奮迅 ( No.19 )
日時: 2017/01/06 06:57
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

 サンダースをボールに戻し、イオンがフィアの下へと戻ってくる。
 バンガキとのバトルの一部始終を見ていたフィアは、明るい表情で彼を出迎えた。
「イオン君! 勝ったんだね」
「まーねー。流石ジム戦、ジムリーダーじゃなくてもけっこー強かったけど、この通り」
 そう言って、イオンは手の中の鍵を掲げる。
「これで棺桶の扉が開くねー」
「でも、たぶんそれだけじゃダメだよ。トウガキさんは、王子は呪いで目覚めない、って言ってた」
「寝てるってこと? 起こせばいいんじゃない?」
「いや、呪いって言ってるから、普通に起こしたんじゃたぶん起きない……これはお話。だから、なにか鍵があると思うんだ」
「鍵ならここにあるよ?」
「その鍵じゃなくて……」
 王子を目覚めさせるための、キーアイテムだ。
 それがなければ、棺桶を開けることが出来ても、王子は目覚めず、救ったことにはならない。
 どうしようと唸っていると、すぐそこにバンガキがいたので、ダメ元で聞いてみた。
「……バンガキさんは、なにか知ってませんか?」
「オレサマが答えるわけねーだろ。王子の呪いはトウガキ兄ちゃんがかけたんだ。知ってるのは兄ちゃんだぜ」
 やはり、この劇における乗り越えなければならない障害は、それぞれトウガキとバンガキが担っているようだ。
 バンガキは棺桶の蓋を開けるための鍵。
 そしてトウガキが、王子にかけた呪い。
 棺桶を開けても、王子が目覚めなければ意味はない。第二の障害が待っているが、それを突破するには、トウガキを倒すほかない。
「トウガキさんってことは、フロルか……」
 今、トウガキとバトルしているのはフロルだ。
 対戦の様子を見てみると、あまり戦況は芳しくない。
「時間はあと十五分……フロル、大丈夫かな?」
「ま、仮にフロルちゃんが負けても、オレがサクッと倒すよー」
「どうだか。兄ちゃんは強いぜ。オレサマよりもな」
 バトルを見る限り、イオンのサンダースが戦闘不能ギリギリまで追い込んだバンガキも、決して弱くはなかった。
 トウガキがそれ以上の強さとなると、フロルが勝てるかどうか、非常に心配だ。
 そしてフロルとトウガキのバトルは終わるまで、フィアとイオンは見ているだけ。ただ見ることしかできないというのは、やはりむず痒い。
「……こっそりヒントをやるよ」
 そんなフィアの心中を察してか、バンガキがそっと耳打ちしてくる。
「この劇は俺たちが筋書きを用意しているが、筋書き通りに話が進むとは限らない。物語ってのは独り歩きするんだ」
 一人称が少し違う。劇の役ではなく、あくまでジムトレーナーの一人として、アドバイスということだろう。
「中には分岐ルートとして設定していることもあるが、それすらも無視して、筋書き通りにならない展開もあり得る。それは大きな意味で変化があったり、また、些細かつ微妙な違いでしかないこともある」
「分岐ルート……?」
「用意された筋書きに律儀に従う必要はねぇ。自分の進みたい道、考えられる無数のルートからどれを選び取るか……そこに秘められた可能性を、よく考えてみな」
 そこでバンガキは、言葉を切る。アドバイスは以上ということらしかった。 
「筋書きに従う必要はない……無数のルートに秘められた可能性……」
 バンガキの言葉を反芻するフィア。
 彼の言葉はなにを意味するのか。
 フロルのバトルを見守りながら、彼はそのことについて、考え続けている。



「アチャモ、引っかくだよ!」
「回避だ、シシコ」
 フロルとトウガキとバトル。
 フロルはアチャモを繰り出しており、対するトウガキのポケモンは、小さなネコ科っぽい姿のポケモンだ。頭頂部には赤く燃えるようなたてがみが、ちょこんと飛び出ている。

『Information
 シシコ 若獅子ポケモン
 頭のたてがみが力の証。たてがみの
 熱が高ければ高いほど赤く燃え、
 大きなパワーを発揮することができる。』

 アチャモは鋭い爪でシシコを引っかこうとするが、その攻撃は避けられてしまう。
「頭突き!」
 そしてそのまま、シシコは強烈な頭突きをアチャモに食らわせて吹っ飛ばす。
「アチャモ!」
「追撃だ。火の粉!」
「こっちも火の粉だよ!」
 お互いの火の粉がぶつかり合い、どちらも打ち消される。威力は互角だ。
「私のシシコに、パワーで互角か。ならば」
 トウガキはシシコに指示を出す。
 拮抗している力のバランスを、崩すために。

「シシコ、奮い立てる!」

 シシコは頭のたてがみを赤く燃やし、興奮したように息を荒げて、そして咆える。
「な、なに……?」
「さあ、再び火の粉だ!」
「! こっちも、もう一度火の粉!」
 またしても、双方の火の粉がぶつかり合う。
 ただし今度は相殺されず、シシコの火の粉が一方的に打ち勝ち、アチャモに降りかかった。
「ま、負けちゃった!? なんで……?」
「わかりやすいな……奮い立てるによって、今のシシコは攻撃、特攻がそれぞれ上昇している。今のパワーはこちらが上だ」
 奮い立てるは、攻撃と特攻を同時に高める技。
 この技によって、互角だった火の粉の威力は、シシコが上回ったのだ。
「シシコ、噛みつく!」
「つ、つつくだよ!」
 今度は牙を剥いて飛び掛かるシシコと、嘴を突き出すアチャモ。またしてもお互いの技がぶつかり合うも、力はシシコの方が強い。アチャモは噛みつかれ、悲鳴を上げる。
「アチャモ!」
「投げ飛ばせ。火の粉だ!」
 シシコはアチャモを投げ飛ばして、宙を舞ったところに火の粉を振りかける。
 効果いまひとつとはいえ、奮い立てるで威力の上がった火の粉だ。ダメージは決して小さくない。
 火力の上がったシシコは驚異的だ。アチャモには自らを強化する技もないため、強化されたシシコに打ち負けてしまう。
「ど、どうしよう……」
「考えるのは大いに結構。しかし、時間を忘れるな。劇も、バトルもだ。シシコ、頭突き!」
 シシコが頭を突き出して駆け出す。その勢いは、今までの技の比ではない。
「……こうなったら、一か八かだよ」
 フロルは賭けることにした。
 この危機的状況をひっくり返せるかはわからないが、その可能性がある一手に。
(うまくできるかわからないけど……やってみよう……!)
 意を決すると同時に、ふと思い出す。
 つい昨日の出来事。フィアと旅立ったばかりの、あの時のことを——



あとがきです。一回目のジムなのに、かなり時間かけちゃってるなぁ、という感じです。それに、なんだかやけに話が重い方向に進みそうです。こんなはずじゃなかったというか、ちょっと凝ったジム戦にしようとしたら、思った以上に大きくなってしまいましたね。もう止まらないので、このまま突っ切っちゃいますが。次回はフロル回想、トウガキ戦続きです。お楽しみに。


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