コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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日時: 2011/01/04 22:13
名前: ハッチしゃn (ID: ymYDaoPE)

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Re: ざけんじゃねぇ!! — 起 — ( No.41 )
日時: 2010/12/11 10:23
名前: ハッチしゃn (ID: ymYDaoPE)

第17話「レベル7暴力団の襲撃」


 街中の風景は相変わらず変化はない。ただ、8月上旬ということもあり、セミの音はとても響いている。だがもう時間は夜8時だ。そんな中、坂条真奈美はポリス・スタデントとして、援助の通信があった場所へと走っている。

 いつも隣にいる姉、坂条奈津美の人物はいなく、彼女一人で夜道を捜索しているのが見える。

「うー、お姉ちゃんったら、どこに行ったんだろ、私一人で捜索する羽目になるなんて〜」

 当り前であろう。なぜなら坂条奈津美は尾崎浩太の家で食事を満喫中だと言うのだから。時間があるなら彼女も探していたところなのだろうが、その通信では”早く来てくれ”という、車のパンクが原因だそうで、悠長なことはしていられなかった。

 「それにしてもおかしいなぁ・・・地図だとここなんだけど・・・いたずら電話かな?」

 と、真奈美は首を傾げる。せっかく来たというのに、それでは頭に来る者もいるだろうが、至って真奈美は優しいのだ。

 姉とは正反対の性格と、近所からは言われている。彼女自身、あまり考えてはいないが、だが彼女は”レベル8の姉”を持つ者として、断固わがままは言わなかった。それに対し、姉の事を他人から何か言われた時は、激怒するという、姉思いの妹である。

 「ふう・・・もうちょっと探そうかな?って、まさかこの工場の中じゃないよね・・・?」

 と、独り言と似た感情を口にする。彼女は一息つくと、その工場の中へと入る。

その直後、だった。


”ヒュンッ”と音が鳴り、同時に何かが破れる音がしたのだ。



 「————————ッがあぁッ!?」

 破れた音の主は、真奈美だった。





 彼女の悲鳴は、いっぴんたりとも揺らすような感じで、放たれる。

 「くはっ・・・がっはっ・・・あぁ!」

 破れる音がした方向へと視点を合わせると、自分の左の脇腹だった。真っ赤な血が、溢れ出てきている。そして、そこに奥深く突き刺さっていた物は、シャーペンだった。なぜこんな物が刺さっているのか分からない。

 真奈美には、激痛のあまり、思考が働かないのだ。だが、ちゃんと確認すると、見えるのに、これをどうすればいいのか、分からない。それが、思考停止状態に入ったのだ。だが・・・

 (くそっ・・・なんで? )と彼女が思っていると、工場の奥から、人影が現れる。

 「あらあら? 誰かと思ったら、あなた警察だったのね。うふふ、ごめんなさい〜」

 その人影が払われるかのように、工場の中の電気が点灯し、その場にいる二人は、お互いの顔を確認する事になった。
 (いきなり、電気が点いた?・・・でも、それより目の前にいる、相手を確認しなければ)と彼女が考え、目の前にいる相手を、意識が途絶え途絶えになりそうになりながら、識別する。

 そこにいたのは、普通の女子中学生でもいるような、黒髪で、結ばれており、セーラー服を着ている女の子だった。疑問を思う前に、真奈美は考える。

 (ここの都市で、セーラー服なんて学生服は、確認されていない。じゃぁ、この女の子はいったいーー?)と考えていると、その目の前にいる、女の子が口を開けた。

 「あー、えっと、服装で確認しようとしても無理よ?これ、コスプレ用の服だから。日本全国探しても、こんな制服なんてないわ。一応の忠告しといたからね」

 と、女は言うと、真奈美が名前を聞こうとしたところで、また真奈美より先に口を開く。

 「どうやら、その混乱な状態でも、私の名前でも聞きたいのかしら? いいわよ。・・・私の名前は『田名中 光』って言うの。バンクで探してもいいわよ。本名だから。」

 名前は聞いた。後は、この行為の動機を真奈美は息切れをしながら、シャーペンが刺さっている脇腹の傷を抑えながら尋ねる。

 「どうして、はぁっ・・・こんなことを、・・・つぅっ・・・したんですか?」

 その渾身の質問に、田名中光と名乗った女は薄気味悪い笑いをする、してから答えた。

 「どうして? ふふふっ、・・・まぁ、いいわ。 そんなポリスっぷり並みの話し合いなんてしたくないから、まずはなぜ貴方を呼んだのか、気にならない?」

 真奈美は、とにかく意識だけを集中させて、頷いた。彼女には、激痛という言葉を初めて知った時だった。

 「まずはね、こっちからの戦闘を開始するつもりだから、あなたは北武市の警察に伝えてほしいのよ。できるだけ、無謀な人は殺したくないから。」

 「それって・・・はぁ・・・・どういう、意味ですか?」

 田名中は、結んである髪をなでると、「ダークネス暴力団と、警察との戦争を起こす」と言った。

 「はっ?」

 「あら、分からない? 私たちは法律なんて物に従う気はないって言ってるの? この意味分かる? 私たち『ダークネス暴力団』は、この国と戦争を起こすって言ってるのよ。」

 真奈美には意味が分からなかった。なぜそんなことをするのかが分からないからだ。目の前にいる田名中は、ただ一方的に戦争を起こしたいと、解釈できるからだ。

 「そんな戦争を、起こす・・・・り、理由は?」

 「ふふふふふっ! あっはははは! 分からないわ! あなたには絶対理解できない! あっははははははははは!」

 「・・・・?」

 理由を聞いただけなのに、田名中は笑い続ける。真奈美は、なにか笑わす事でもしたのだろうかと、自分の言動を振り返る。・・・だが、やはりどこにも引っかかるところはない。

 「なに、わらってんの・・・?」

 「ふふっ・・・はぁ・・・だって、あなたは何も知らないんですもの。そんな方に、理由を言ったって、笑うだけだもの。一応確認しとくわね。 あなた、自分の体が、本物だと思う?」

 彼女が何を言いたいのか、何の確認をしたいのか、分からない。だが真奈美は率直に答える。

 「本物だと思いますけど?」

 「ふふふっ! あっはは! やっぱりそうよね〜、やっぱり貴方は、駄目だわ。何を言っても無駄ね。 結局は世間知らずな女の子よ。」

 田名中は笑うと、工場の出口へと、歩き向かった。


Re: ざけんじゃねぇ!! — 起 — ( No.42 )
日時: 2010/12/11 10:24
名前: ハッチしゃn (ID: ymYDaoPE)

第17話「レベル7の暴力団」


 「待ってください! 今、あなたを逃がすことは出来ません。・・・詳しく、は、署で伺います。おとなしく同行して下さい!」

 
 「あら、そう。 まぁいいわ。 ほら、これ、もう一個あげる☆」と、田名中はもう一つのシャーペンを、掴むと、それをテレポートさせた。

 「−−−−−ぎゃッ!」

 真奈美が、連行しようと迫ったが、今度は右腕にシャーペンが刺さる。 脇腹を押えていた手だったため、抑えていた右手が激痛で離される。脇腹から、またもや、痛みが倍増していく。だが、同様に右腕にもだ。

 その痛みに、耐えながら、真奈美は相手に同行を伝える。

 「っくぁ・・・っはぁ・・・逃げないで! あなたを、・・・・! ぎゃぁああっ!!」

 その努力は無駄だった。またもや右腕に、シャーペンが突き刺さったのだ。だがそのシャーペンの突きさした奥深さにも、痛みで分かった。

 (骨まで・・・・?!)と理解したのだ。

 「うふふっ・・・私はレベル7なのよ? あなたがどうこう言おうと関係ないわ。『座標』の能力。一応、テレポーターとも言えるわね。 『座標』はどのような物でも、私が指定した所に移動できるの。」

 だから、と田名中は付け加えると、「刺したとか、刺さったとかの表現より、そこに移動されたとかの方が、私的には良いかも」と言った。

 「くぁ・・・がぁっ・・ぁあっ・・・」

 もう真奈美には、激痛に耐えることしかできない。そんな彼女を田名中は出口から見つめると、別れ言葉として言った。

 「では、この報告をよろしくね。防犯軍隊とダークネス暴力団は戦争を申し込む。”日時は明後日の夜7時。舞台は北武市の土手広場”よ。頼んだわ。・・・じゃあ、・・・さようなら」

 田名中は、それを合図に出口から消えて行った。

 真奈美は、歯を食いしばり、そして先ほどの連絡語を頭の中で整理する。

 無事な左手を床に添えて、そこに力を入れ、無理してでも立ち上がる。その立ち上がり方は、震えていた。ゆっくり、ゆっくりと、背中を上げ、隣の壁に寄りかかりながら起き上る。

 「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・・」

 出している声も震えあがる。動きも震えあがる。真奈美は、ただただ、痛みに耐え、まっすぐ家へ帰ることだけを考えた。

 病院に行っている暇はない。

Re: ざけんじゃねぇ!! — 起 — ( No.43 )
日時: 2010/12/11 10:25
名前: ハッチしゃn (ID: ymYDaoPE)

第18話「ダークネス暴力団」


 「はぁ・・・痛い・・・うぁ・・・」

 よろよろになりながらも、路上で何度も倒れようとも立ち上がる。(負けてられない)の一点張りだ。

 「かはっ・・あ・・・」

 どんな声を出そうとか、考えられない。もう呻き声しか、出したくなくても、出てしまう。出ないと、死んでしまうような感覚に体が麻痺していく。体中が熱くなる。

 歩くごとにシャーペンが突き刺さっているのだと実感してしまうように、脇腹の激痛も歪んでいく。

 辛い・・・痛い・・・苦しい・・・そんな言葉ばかりが頭の中に入ってくる。でも歩かなくては。

 (・・・家に着いて、手当しない・・・と)

 意識が朦朧する中で、ただ来た道を、家へと戻るがために、歩き続ける。何度でも。

 やがて時間はまるで嘘のように早く進み、真奈美はマンションの非常階段から自分のルームに戻る。エレベーターでは、カメラから怪我をしていると大げさになってしまう。

 そのリスクを考えての行動だ。そのまま真奈美はルームに入ると、玄関での靴脱ぎをぶっぴらぼうの様に脱ぎ捨てる。

 (確か・・・物置の中に・・・救急箱があったはず)と、押入れの中の物を、掻き荒らし、奥にあった救急箱を、震える左手をこらえながら捉える。あとはそのまま浴室へと移動した。

 彼女は浴室に入ると、血が着いた学生服を上下脱ぐ。残ったのは、下着だけとなったが、今の状況で悠長なことは言っていられない。すぐに救急箱を開け、緊急処置共に、手当に移る。

 まずは包帯とガーゼと消毒液。そして一番重要なのは、真奈美が握っている、”止血クリーム”だ。この薬は、日本で初めて作られた応急処置用のもので、作った人は回復属性を持った能力者だとの事。効用は、どんな傷でも、クリーム状の”結界粘液”という成分が働き、傷口を閉めるものだ。欠かせない薬とも言って良い一品だろう。

 ただ、欠点がある。それは、”これを使った事で、怪我は治らない”事だ。これは応急処置で使われる物で、大きな怪我、つまり今の真奈美の状態だと、止血した後、病院に向かわなくてはいけなくなる。

 (そんなことしてられない)のオーラが、漂っているが。

 真奈美は下着だけになると、湯船の端っこに寄りかかる。そして・・・。

 脇腹に突き刺さったシャーペンを掴みあげ、渾身の力で引き抜く。
 「・・・ぐぅぅ!!」

 下唇を噛んで、悲鳴を堪える。それと共に、引き抜いた血で真っ赤なシャーペンを床に投げると、何枚ものガーゼで、周りの血を拭く。当たり前だが、抜いたことによって血はどくどくと心臓の心拍数同様に溢れ出る。
 真奈美は堪えながら、止血クリームを傷に塗り、息を整える。




 やがて時間が経つと、脇腹の傷は跡型も無くなった。が、真奈美はそれを見ても顔色一つ変えない。まだ2本もシャーペンが腕に刺さってあるからだ。右腕は、悲鳴をあげまくる。

 (もう二回・・・・!)と、力を入れ、涙を流しながら、一本を抜き取る。今度は声を出さずに堪えた。そしてもう一度、クリームを塗り、経過を待つ。

 「はっ・・・はぁ、・・・」

 真奈美は傷口を見ると、クリームが透明になり、傷口を塞ぐ光景を目の当たりにする。(すごい・・・)としか言えない衝撃だった。

 だがそんな間抜けた時間は止まる。もう一本のシャーペンだ。

 このシャーペンは、かなり奥まで突き刺さっているため、真奈美は震えあがる。この後の激痛を想像してしまうのだ。どんなに根性を入れたところで、予想してしまっては、抜ける道はほぼないだろう。

 「くっのぉおおおおおっ!」



 と、彼女は渾身の力を左手に込め、右腕の奥深くに刺さっているシャーペンを抜き取る。

 堪えようとした時だ。それは彼女には強すぎた激痛。まぶたを開けられないほどの状況。そして、血があふれるたびに、心臓の音が倍に響く。

 (・・・・目を開けなきゃ!)

 真奈美は視点を変え、腕の方を見て、傷口にクリームを塗る。その塗った液状のものも、刺激が強すぎた。半ば悲鳴をあげて、ガーゼで右腕を抑えながら、止血は終わった。

Re: ざけんじゃねぇ!! — 起 — ( No.44 )
日時: 2010/12/11 10:27
名前: ハッチしゃn (ID: ymYDaoPE)

第18話

 (止血は・・・・なんとか終わったけど)

 真奈美にとっては、まだまだ激痛があり続ける。腕を動かせば、体中に響く。それを塞ぐために、救急箱から真奈美は白い布を手にすると、左肩にかけて、布の両端を結ぶ。
 そうすることで、白い布は、腕を通せる間隔を作り上げる。そこに負傷した右腕を通し、固定する。

 「ふぅ・・・なんとかこれで行けるわね」

 ちなみに、止血はしたが、その内部の傷は治されていないため、この激痛は、一週間は去ることはないだろう。

 脇腹を抑え、湯船の端っこから立ち上がると、玄関が閉まる音がする。

 (お姉ちゃん、帰ってきた!?)

 真奈美は、息切れする口を左手で抑え、奈津美に気づかれないようにする。やがて、歩く音が浴室の扉の前までくると、奈津美が口を開いた。

 「・・・真奈美? 帰ってたならメールくらいしなさいよ」
 「えへへ、ごめん。ポリスでちょっと」

 「・・・・そう。だったら私も読んどきなさいよね。」
 「大丈夫。 サボったなんて言ってないから。」

 奈津美は、頷くと、扉に背中を向けて寄りかかる。真奈美視点からそれは影。その影に合わせるように、反対側から背中を向けて寄りかかった。

 「お姉ちゃんはどこ行ってたの?」

 「ちょっと、尾崎の部屋でハンバーグ食べてたわ」

 (のんきだなぁ・・・)と、真奈美は思う。

 少しの沈黙が続くと、奈津美から口を開いた。

 「じゃあ、私、野暮用があるから。明日はショッピングモールでも行こうね、真奈美。」

 真奈美は「・・・うん。楽しみにしてる」と、傷の痛みと戦って言った。少し震えてたため、気付かれた可能性もある。

 「うん、じゃあね。」と、奈津美が言うと。真奈美の浴室の扉の影は消えて、玄関が閉まる音がする。あまりの早い行動の姉に疑問を抱くが、そんなことよりも真奈美には疑問がある。

 ”田名中光と名乗った女が、なぜ私に伝えたのか”だ。別に、北武市の軍隊と戦争を起こすくらいなら、そのまま直に伝えた方が良いと思った。だから疑問に思う。

 「どうして・・・? なぜわざわざ私に伝えたの? 上層部から伝えるのが怖かったから?」

 無論、そんな事はないだろう。あれだけの力を、そして真奈美にここまでの怪我をさせることに躊躇がないのだから、この考えはない。

 「・・・・わからない。あの人は、なんでこんな事を」


2時間後———

 真奈美は一旦、この疑問から抜け出すために行動に移る。浴室から出て、新しい制服に着替える。脇腹が痛むが、そこを乗り越え、一気に着替える。スカートを履き、靴下をタンスから取り出す。

 「っく・・・」

 靴下をつけるために、うつ伏せになったため、脇腹が強い刺激を繰り返す。その繰り返しを我慢し、両方ともつけることができた。

 「はぁ、はぁ、・・・次!」

 と、真奈美は立ち上がり、テーブルの上にあるパソコンを開く。起動時間を乗り越え、パソコンが使えるようになると、バンク端末から、『田名中光』の情報をハッキングする。

 田名中光の情報を確認すると、さらに調べこむ。

 ・年齢 17歳
 ・出身国 日本
 ・詳細  不明
 ・生存している

 「え・・・? そんな、詳細が不明なんて、この時代の科学技術ではありえないはず。それに、情報が少なすぎ・・・」

 なぜありえないか、それは、この時代の科学技術では、どんなに細かいところでも衛星から確認できるからだ。この結果から、彼女は法律を無視している事になる。それと、、、。

 「法律を無視するほどの力があるってわけ・・・か。暗部の誰かが雇っているようにしか見えないけど、もう少し調べてみる確認はあるかも・・・ん?」

 突然、真奈美のケータイが鳴る。会話ボタンを押すと、ポリス・スタデントの先輩からの電話である事が分かった。

 「・・・はい。坂条真奈美です。要件をお願いします」
 「おい、そんな事言ってる場合じゃねぇ! 真奈美、お前の姉が、誰かもわかんねぇ女とどんぱちやりやってんぞ!!」

 え・・・・!?

 突然の連絡に、真奈美は止まった。


Re: ざけんじゃねぇ!! — 起 — ( No.45 )
日時: 2010/12/11 10:27
名前: ハッチしゃn (ID: ymYDaoPE)

 真奈美は走り続ける。方向は、廃墟とされている、工場とのことだ。詳細は不明。ただ、姉が、女性と暴れているとの事。妹としてお前が助けろとの命令になる。

 「はぁ、はぁ、もう、・・・なんで今日ばっかり!いろんなことがありすぎるよ!」

 真奈美が独りでに愚痴をつぶやく。彼女にも疲労困憊な状態では、苦しくなる。まだ傷は痛む。どんな考えをしたところで、それがむせかえるだけだった。

 ポリス・スタデントの先輩が言っていた、場所は、廃墟の前の橋だという。そこも工事で中断されており、そこから入るのが適切だと感じた。それに従えとのことだ。

 「ったく、お姉ちゃん一体何考えて———ッ?!」

 真奈美がビルの建物の角を曲がると、そこには先輩が言っていた通りの橋があった。工事が中断されており、橋は途中までしかない。そしてそこの先に映っていたのは・・・。


 「この野郎がァぁぁ!!」

 と、奈津美が吼えていたところだった。あまりにもの怒りの形相になっており、真奈美には、目を閉じることは許されなかった。

 「あっはははは! 何? この計画にあなたは否定するの? 同じ”真実”を見た者同士なのに!!ふふふふふっ!!」
 「笑ってんじゃないわよ! いちいち笑ってる自分の表情見てみなさいよ! その、腐った顔を!」

 「はぁぁ? 鏡ねぇから見えないっつの! あっはは! 本当に、仲間にはなってくれないの? ねぇ、貴方だって許せないでしょう! あんな実験をされてた私たちの事を!」

 「・・・だから! それと、今回の事では、全然意味が変わってんじゃないのよ!!」


 真奈美には唖然とするしかなかった。ここまで怒っている姉を見た事がないからだ。それに対して、疑問を抱くような言葉ばかりが、自分の胸に突き刺さってくる。

 (真実・・・・?計画・・・?)なんのことなのかわからない。だから、余計に真奈美は動けなかったのだ。

 そう思っているときだった。

 「私が言いたいのは、あんたが、この事に”私の妹に手を出した”事! 分かる? ここよ!」

 「・・・・はぁ? 別にどうってことないでしょ。」

 奈津美はその言葉に気づいていないように、続けて話した。

 「あの馬鹿! 私が分かんないとでも思ってたのかしら!? 部屋の中は救急箱を探すために荒れてて、それでいて、至る所に血が飛んでて、気付かないと考えるなんて! 本当に馬鹿!」

 隣にいる、田名中光にはその暴言が誰に向けたのかわからないため、首を傾げる。

 「私が一番ムカついてんのは、私に”嘘を付いた馬鹿な妹”と、その妹に”手を出したテメェ”なのよ!! まったく、自分の妹だと思うと、馬鹿馬鹿しくて腹が立つ!! あんなひどい声をあげて、いかにも怪我をしている声をあげて、私に気付かれないように今日の事を聞いてきて、ぶん殴ってやろうかとも思った。・・・・けど、その前に殴んなきゃ気が済まねぇのは、・・・テメェだっ!っつってんの!!」

 真奈美の心に、一撃で大きな穴が開いた。姉の怒りの気持ちが、背筋を通して貫いたのだ。

 (おねえ・・・ちゃん・・・)

 奈津美は、もう一度 直径5メートル、縦3メートル並みの竜巻を起こすと、それを田名中光にぶつける。が、その前にテレポートをされ、かわされる。

 「・・・まぁ、あなたがどんな怒りを持っているかしらないけどぉ〜、例えレベル8でも、能力の幅が関係してるのは、知ってるはずよね〜、ふふ、属性が無意味ね、あなた」

 「あっそぉ!」と、もう一度、奈津美は竜巻を放つ。
 「だっかっら〜、無意味よ。もういいわ。私は帰る。もし、私と同じく暴力団と戦いたいなら、仲間でも集めて軍隊の代わりにいる事ね。じゃあ、さようなら」

 と、田名中光は言うと、姿を消した。曰く、テレポートをした。

 「くっそぉ! なんだってのよ・・・」

 奈津美は怒りを止められずに、廃墟のビルを風で壊しまくる。



 その時、真奈美は・・・その光景を見ていた場所から、姿を消していた。


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