コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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日時: 2011/01/04 22:13
名前: ハッチしゃn (ID: ymYDaoPE)

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Re: ざけんじゃねぇ!! — 起 — ( No.66 )
日時: 2010/12/24 12:49
名前: ハッチしゃn (ID: ymYDaoPE)

第21話

 食いちぎって、内臓の内部にある物すべてを喰らい尽くせば、今度は血の気を失った筋肉にかぶりつく。

 「・・・なに、・・・してるの?ってな訳よ」
 その中山の言葉には山陀は応答しなかった。ただ目の前にある、”回復”する物体を食べつくすことだけを考える。ただ・・・生きるために食べる虎のように。

 「なんで仲間を・・・? 人材はたくさんあるはずって訳よ。別に光じゃなくてもよかったって訳よ!」
 震える両手を押さえず、震えさせたまま床に力が抜けるように腰を下ろす。もう立ちあがる事は出来ないのかもしれないほど、彼女は動揺を隠しきれない。隠す事なんて考えられない。

 何を言っても、山陀は倒れている死体に食らいつく。止めることは出来ないのだと、今更のように気付くと、中山は、背後から両手を這わせて、逃げるように出口へと向かう。
 (もし、田名中だけで足りなかったら、次は・・・あたしって訳よ!)
 その想いを一身に全力で逃げようとした時だ。

 彼女が扉を触って開けようとしたのと同時に、山陀の『神殺しの左腕』が、中山の体に触れ、寿命中断を実行される。

 「仲間だろぉ? 最後くらい、俺のぉ力になれやぁ」

 山陀は命を亡くした中山にそう告げた。もう聞いていない事はどうでもいいかのように。
 山陀は、骨だけとなった”田名中だった”遺骨を、捕食によって回復した右足で蹴り上げると、左手で捉えた中山に食らいつく。

 彼の捕食は、回復ともなるが、能力の力を増量させる事も出来る。彼は、全治した後でも、たったレベル2の人間に負けたくないという理由だけで、もう一つの命を無きものにした。

 尾崎の能力よりも汚らわしく、あざとい。

 その尾崎達に、この状況は届かない。
 暴力団の仲間など、ちっぽけな事だという事に。


第21話

 「あいつ、どこに行きやがったんだよ?」
 尾崎浩太は、山陀が逃げて行った方向へと真っ直ぐ走り続けると、一息するために呟いた。
 腕時計を見ると、爆発が始まった時間、午前8時からすでに9時間は経過している。現在時刻は4時20分。ビルとビルの隙間から夕立の光があふれだす。

 「ちょっと、あんた待ちなさいよ!」
 ふと、尾崎の背後に追いかけていた奈津美が声を掛ける。体力的にやはり尾崎の方が高いのか、息切れを隠し切れていない。そんな中、少しからずの汗を拭うと、奈津美は尾崎の正面に向かって歩む。

 「・・・なんであんた、生きてんのよ?」
 それが一番疑問に思う事だった。彼女にとっては、今が聞くチャンスだと考える。この探している時間は大抵、体力を温存させるのにはちょうどいいからだ。ならば聞きたい事を先に優先する。
 それも尾崎は同様のため、それに答えた。
 「俺の能力の意味、忘れたのか? 簡単な事だろ、俺が死ぬ事の事実を”無”くせばいいだけだからよ」
 「だったら、どうしてすぐ立ちあがらなかったの?死んだと思ったじゃない!!」
 「勝手に殺すなよ・・・・それに、容量多かったんだよ。俺のレベルじゃ、消すのに時間かかったんだよ。」

 尾崎が、最後にオクターブを下げて言ったために、奈津美は俯くことしかできなかった。

 沈黙の時間が流れる。

Re: ざけんじゃねぇ!! — 起 — ( No.67 )
日時: 2010/12/24 12:50
名前: ハッチしゃn (ID: ymYDaoPE)

第21話

 「・・・私はね、あんたが死ぬ事が一番つらいのよ。・・・お願いだから、これからは相手を考えて行動しなさいよ。今回の事は許してあげるから・・・」
 奈津美は俯きながらそう言った。尾崎は髪の毛を掻くと、そっぽを向く。
 「わりぃ・・・これから気を付ける。」
 奈津美はその答えに頷くと、俯くのをやめ、顔を尾崎へと向けると、顔を輝かせて言う。
 「それに、・・・まだ今回の事件は解決してないしね!」
 尾崎はいきなりの明るい声に驚き、半テンポ遅れながら、奈津美の明るい声に負けないように。
 「・・・おう!」
 と、頬に紅色を残しながら頷いて言った。


 その一方で、二人の命を奪った山陀は、人間らしからぬ形態へと進化を遂げていた。
 トンネルの中を彼はまっすぐ光の出口たる外に向かっている。捕食によって暴走した『神殺しの左腕』を上半身裸で”ぶら下げながら”。
 長く伸びた左腕。そして長い爪は、引きずりながら歩くごとに奇妙な刃物が当たるような音を響かせている。彼の左肩から左手に掛けて、膨大な灰色に染まった筋肉と血管が浮き出ている。今にも破裂しそうと言っても良いだろう。
 やがて彼が外に出ると、”あの二人”の匂いを頼りに、よだれを垂らしながら高速なスピードで走り続ける。自分を追いかけている奴を、懲らしめるために。もっとも、倒されるのはお前らなのだと思い閉めるために。
 だが、途中で彼は止める。

——これでは、まだ足りない——

 と。だから彼は思った。仲間を思い出して。残り生きている仲間を思い出して。
 (あと二人はどこにいるんだぁあぁ?!)



 夕日が輝いている大空に、二人のダークネス暴力団員が飛んでいる。この表し方は不思議なものであるが、そこに飛んでいるのは事実。
 殺戮によって開かれた翼が羽ばたき、宙を飛んでいく。ともに、殺戮が枡中小猫を抱きかかえて飛んでいる。探しているのは特にはない。彼と彼女はただ単に、もう一度、帰る場所に帰るだけだ。

 ———そこに、仲間がいることを信じて。

 二人の思いは一緒で、共に逃げようとしているところだ。その二人が羽ばたいている所を、『神殺しの左腕』の暴走により形態を変えた山陀が、”獲物”としてそれを目撃する。
 山陀はトンネルを抜け、街中を見渡せる場所の山へと登っていると、その二人を目撃する。

 「くくくッ!ぐひゃひゃッ! えーもーのー見ぃっけたぁぁァッ!」
 彼は、彼らが行く場所を特定すると、そこに向けて、よだれを垂らしながら、そこら中にある木を、左腕で破壊しながら両手を広げて全力疾走で走り続ける。

 彼にとって獲物など、普通の人間では楽しくないと感じている。これはつまり、”関わりのない人間を殺しても楽しくない”という考えだ。だから彼は捕食として仲間を殺し食べる。一番信じあっていた仲間が急に裏切られる時の仲間の顔、その一瞬こそだけが、彼の心を凍らせ、そのスリルがたまらなく快感だからだ。
 だから彼は仲間を集めた。
 だから彼はバカげた作戦を考えた。
 この快感だけを求めたかった。
 ”なかま”など、それしきの事と考えさせるために。

 「ぎゃはははは!ぐはひゃひゃひゃ! おもしれぇ! おもしれぇよォォぉ!!」
 (あいつらの行き先は、俺が決めて言った”帰るべき場所”! この綺麗な名前で飾った小汚ねぇ工場だ! それを言った時のあいつらの幸せそうな顔! 馬鹿かてめぇら!っての! ぎゃはは! あんな汚ねぇ所が”家”なんて、馬鹿にも程があんだろ!ぎゃははははははあっはははははは!!)

 歓喜。凶器たる狂喜。その奥にある振れ上がる快感。これだ、俺が求めていたのは。
 (待ってろよ二人とも、その糞みてぇな”家”に、パパが帰ってあげるからよォォおおッ!)
 「くくく! ぎゃははは! ぎゃははははははははははははは—————ッ?!」

 突然、彼の獲物を殺すために向かっていた、人気のない街中の視点は大きく右へとずれる。それは突然すぎて、彼は、自分自身が殴られている事に気付くのに時間がかかった。
 そして殴った張本人は、眼光を輝かせた尾崎浩太、その本人だった。隣には警戒している奈津美が石ころを巻きたてるように風を起こしている。

 「へらへら気色悪ぃ笑い声あげて走り続けてんじゃねぇーよクソッタレ。その奇妙な体して、何してぇのかわかんねぇけど、俺はまだ殴り足りてねぇんだ。まだまだ殴ってやるから、伏せてる面あげて、かかってこい。・・・化け物!」

 (化け物・・・化け物化け物化け物)
 「てんめっぇえええ! ぶっころぉす!!」
 山陀は勢いよく起き上り、続けて左腕を尾崎に向けて振り上げる。
 そこをタイミング良く尾崎は左回りをし、殴りかかった左腕に当たることなく回避する。だが、振り下げられた左腕は、止めることなく随時と尾崎に襲いかかる。
 「・・・怪獣映画のバケモンか、お前!」
 「うるっせぇええええ!!」

 二人は激突しようとするが、尾崎にとってそれは死亡確率を高める。左腕に当たれば終わりだ。
 だが、この舞台にいるのは二人だけではない。坂条奈津美も、ここにはいる。だから彼は彼女を味方として使う。
 「奈津美、こいつの隙を作れるように、攻撃してくれねぇか!?」
 「あったりまえでしょーが!!」
 奈津美は、一緒に戦える事にわくわくしながら、応戦する。共に闘える事を意識し、確実に倒せるように考えながら。
 そして、もう一度、命を無くされる事のないように気を付けて。

Re: ざけんじゃねぇ!! — 起 — ( No.68 )
日時: 2010/12/24 12:51
名前: ハッチしゃn (ID: ymYDaoPE)

第21話

 「がぁ・・・ぁああああァアアアア!!!」
 山陀は目標を定めず、ただ攻撃を繰り返す。左腕を無差別に振り上げ、時には横、時には縦。四方八方に振り回す。当てようとは思わない。当たらせようとも思わない。ただ、当てたい。
 そんなちっぽけな気持ちで戦う。理由はあった。こんな戦闘より勝る理由。
 今の段階で彼は、捕食できない事に、それだけに怒りが増加する。あてずっぽうでもいい。とにかく捕食だけしたい感情に飲み込まれる。
 それこそが、彼が二人の戦闘に対する面倒くさいと感じている証拠だ。こんな事、さっさと終わらせて、仲間の怯える顔が見たい。・・・ただそれだけ。
 尾崎が敵の山陀の両目の焦点が合っていないと気付くと、気に掛けた事を先に投げかける。
 「お前、どこ見て戦ってんだ?!」
 「くくくッ! くくくっ!俺は・・・戦ってる暇がないんだよぉ・・・邪魔なんだよぉ!! 消えろォォオオ!!」
 いきなりのあてずっぽうではなく的確に尾崎に向けて左腕を振り回したため、奈津美が回避できない尾崎の援護として、ドリル形態の風を二発を秒速一秒の速さで突撃する。
 突撃の音と共に、左腕の骨が折れるような音が響く。その激痛に山陀は咆哮する。
 「ぐぁアぁぁああァアアああああああああッ!!」
 やがて、彼の両目は赤色へと光を放ち、筋肉に力を入れ、その膨張により浮き出た血管が破裂し出血をした事を気にもせずに渾身の力で尾崎を狙う。
 だが、ここもやはり奈津美の専売特許だった。同じように二発の風を突撃させる。

 「なめぇんなぁぁあああ!」
 その風は跳ね返され、奈津美へと向きを変えれば、それを標的として突撃する。
 「奈津美!!」と、尾崎はその攻撃を奈津美に伝えたが、伝えた本人は笑って答える。
 「・・・平気よ!」

 まるでこうなる事も想定内だったかのように、両手を突きだすと、二発の風はもう一度山陀へと向き直り、突撃する。その一瞬の反撃に山陀の左腕は、防ぎに追い付かず、真正面から衝撃とダメージを喰らう。
 「ぐっ・・・・バァァッ!!」

 ダメージによる肺に溜まった血を吐き捨て、地上へと落下する。その衝撃も加えられ、歯を食いしばる。
 それが尾崎の言っていたチャンスだ。
 ダメージに堪えるように見動きが出来ない山陀を確認すると、尾崎はとっさに山陀の左腕の前に付き、迷い悩む。
 「くそ、触れば俺が死ぬし、だからと言って触らないわけにもいかない」

 寿命中断される方が早いか、それとも左腕を消す方が早いか。両者に別れる。

 「・・・尾崎・・・」
 奈津美も動揺を隠しきれない。どちらが早いのかの一行勝負。その事に戸惑いと不安が二人を包む。

 (でも、痛みがひけば・・・こいつは動いてしまう。時間も空くのがもったいない!どうすれ・・・———ッ?!)

 そのとっさの考えに奈津美は気付く。
 とても簡単だったがために気付けなかった事に。
 (だったら、こいつの意識を飛ばして寿命中断させなければいいわけじゃない! 確か、能力は人の意思でしか使えない。”どんなに強力”であろうと)
 奈津美は、考えを直すと、薄く笑みをする。

 「・・・尾崎、ちょっとどいてなさい」
 「・・・え?」
 疑問に思う尾崎を差し置いて、山陀の左腕の前に近づくと尾崎に伝える。
 「安全な方法よ・・・100%って訳じゃないんだけどね。」
 そういうと、奈津美は右手の人差指に風を巻き起こした。

Re: ざけんじゃねぇ!! — 起 — ( No.69 )
日時: 2010/12/24 12:52
名前: ハッチしゃn (ID: ymYDaoPE)

第21話

 人指し指に風を巻き起こすと、奈津美は尾崎に向けてこう断言する。
 「あのドラゴンとの戦いのときと同じ事すればいいって訳。」
 「!」
 それには尾崎も納得がいく。それを奈津美は確認すると人差し指に作った風を、山陀の頭の上まで誘導させる。
 共に、それを合図に風を振動させ、脳内部へと精神意識の中断を実行する。
 「ぐ、ァアアっ、やめろ! 俺は、おれはマダァァ!!」
 「うるさい! ここまで大勢の人々を無条件に殺して謝罪で許されると思うな! しっかりと罰を受けて、自分の罪を自覚しなさい!」
 奈津美は怒りの形相をし、山陀の抵抗に負けないように怒号を放ち、風の力をあげていく。

 (たくさんの人を殺して、たくさんの人に迷惑かけて、まだ逃亡するっての? ざけんじゃないわよ!)
 倍に倍にと、摩擦力を無くし、振動を繰り返す。この行為は、脳しんとうさせるためだ。ただ、物理的にではなく、脳に振動を遅らせ、風の振動に意識させるという医療システム。
 そこを貫き通す意思で奈津美は風の振動を起こし、山陀への脳を脳しんとうすることに成功する。

 「・・・うし、・・・終わった。」
 「あとは、俺にまかせろ」
 尾崎は、意識が途絶えた山陀を確認すると、恐る恐る左腕に触り、確かめる。
 特に変化はない。即座に能力の存在を”無”に実行開始。
 それだけで尾崎の役目は終わりだと本人自身も思っていたが、それは甘かった。
 「っな! ァァアアッ!」

 いきなりの悲鳴に奈津美は尾崎の近くによると、尾崎の体内から汗があり得ない速度で吹き出ている事が分かる。顔や服に汗が染みて、水を浴びたように濡れていく。これが人間の汗だとは考えられないほどに。水だとしか考えられないほどに濡れていく。だが、体内から汗が出ている事は事実。
 尾崎の額の汗が鼻の先に伝い、息切れするたびに地面に滴る。

 (くそ、急に、体力が吸い取られてるッ・・・なんだこりゃッ!)
 「・・・尾崎!」
 「くっそぉ、・・・体が・・・バテちまってる!・・・くぅ!」
 奈津美は、今初めて理解する。”尾崎はまだレベル2の低能力者のため、能力を消すことは多大な体力を使う事”に。これ以上続ければ、死に達する可能性もある。
 (我ながらなんて失態よ、能力を消すことだけばっか考えて。それも未だ低能力者の尾崎に。私自身が、能力に恐れていたら、これからなんて戦っていけない!ほんと、馬鹿だったっつの)
 奈津美は決心すると、汗だらけの尾崎を抱きかかえ、山陀から離れさせる。触った時に実感したが、高熱を拭きだしていると理解した。奈津美は心の中で舌打ちすると、自分の甘さを踏まえて考える。
 (次は、山陀の逮捕)

 隣にいる山陀の形態変化していない右手を掴み、ポケットから取り出した手錠を掛ける。
 いつ意識が戻ってきて襲いかかるかどうかの不安はあるが、それを絶対に表に出さないように、意識を集中し、反対のポケットから携帯を取り出すと、ポリス・スタデントの長本部へ通信をする。

 ピピッ
 「はい、ポリス・スタデント本部です。ダークネス暴力団員を逮捕作業中ですが、未だだれも捕獲はしていません。あなたの要件は?」
 「ええ、その事なんだけど。坂条奈津美です。そのダークネス暴力団員の”リーダー、山陀殺雄”を、今現在、5時10分に逮捕しました。連行をお願いします」
 「・・・・、さすがレベル8ね。わかったわ。今、ポリスカーを向かわせる。ったく、あーぁ、いいところ持ってかれたわ〜、」
 「ええ、ありがとう、って、あんたもレベル8でしょ? 凪野 愛奈。」
 「・・・そうだけどね〜、力の序列じゃあんたが二位だし。あたしは三位だしね〜、はぁ・・・じゃ、まかせたわ」
 「・・・うん、有難う」

 奈津美は携帯を閉じると山陀がまだ意識が回復していない事を安堵をしながらこう思う。
 (尾崎の手当て。そして山陀の逮捕。まだまだ大変ね)と。

 彼女は消えそうな夕日を見つめ続けた。


第21話

 時はあのダークネス事件が起こった日から2日が立つ。
 ここは北武市総合病院の402号室。激戦の故、損傷と共に高熱で倒れた尾崎浩太は、少し熱が下がった状態で、回復しつつあるバテを感じながら静かに眠っていた。
 その尾崎が寝ているベッドの隣では、302号室で入院している坂条真奈美が、動ける状態まで回復したので、お見舞いに来ていた。この場合だと、お見舞いとは言えないが。
 「あははっ・・・よく寝るなァ・・・」
 真奈美はひそやかに呟く。尾崎の顔は戦いをした後とは思えないほど明るく、幸せそうな笑顔で寝ていた。
 この男性は、真奈美にとって感謝しなければいけない存在に当たる。自分の背負っていた事件を全力で解決したのだから。
 真奈美では絶対出来ない事を、奈津美と浩太はやって見せた。基本的に活躍していたのは坂条奈津美のお手柄となっているが、真奈美にはこの二人をどちらとも外してはいけない。ましてや一般人を巻き込んでしまったのだから。

 その一般人の尾崎浩太が、こんな全身の怪我を負っているのに、役に立てなかった自分に腹が立つ。真奈美は、奥歯を噛みしめる。
 (まったく・・・全然これじゃあ、いつまでたっても役に立てないよ)

 彼女はそう思うと、病院の購買で買ったリンゴを置いていくと、尾崎のいる病室から出ていく。

 「はぁ・・・」
 どうしても一息が付いてしまう。どうしようもなかった。真奈美は、至って通常の人より責任感が高いからだ。
 だから彼女は思った。これ以上一般人を巻き込まないために。

 (お姉ちゃん、私はもっとこれから強くしていくよ。どんどん強くなって、お姉ちゃんの横に並べるようにするよ。だからお姉ちゃんは先に進んで待ってて下さい。)

 彼女は廊下の壁に寄りかかり、一息つく。そして。
 (今度はこんなヘマを絶対しないために、全力で私も進みますから)

 坂条真奈美は、このダークネス事件で自分の身の程を知った。
 坂条真奈美は、尾崎と言う偉大なる男性を見つけた。
 坂条真奈美は、その二人に並ぶために努力する事を決めた。

 これ以上、迷惑をかけないために。共に闘うために。彼女は決意を今日を持って表した。






 その後、坂条奈津美はまたもやポリス・スタデントによる事件を解決したため、賞状をもらった。なお、尾崎浩太には今回の事件はあまりにも参加条件はそろっていないため、彼がいること自体皆無となっている。

 一番気になるダークネス団の事だが、逮捕された山陀自身が仲間などすべて喰らいつくしたと言う事を証明し、遺骨なども残ったがために、仲間は存在していない事になった。

 やがて夏休み中に起きたこの事件は大きくテレビやニュースに取り上げられることになった。




  darkness編、end.

Re: ざけんじゃねぇ!! — 起 — ( No.70 )
日時: 2010/12/24 12:54
名前: ハッチしゃn (ID: ymYDaoPE)

第22話「プールってどこのプールよ!!」

 ダークネス事件から一週間後、この物語の主人公 
尾崎浩太は、その事件での損傷によって入院していた。だが、退院は明日だと医者から告げられる。

 そんな中、彼は402号室にて、ベッドの上で寝そべっている。片手には飽きてしまったのだろうか、DSが握られていた。そのDSも、時間が経ったために電源が自動に切れている。
 それを握っている尾崎浩太は目をうつろにしながら考えていた。あどけない眠気も覚めたはずの尾崎浩太は七日間という時間を病院で過ごしたがために、頭の中がもやもやとした、訳の分からないストレスがたまっていた。

 それには二つの理由があった。まず一つ目は尾崎浩太になぜか友人がこないと言う事。(事実上、尾崎の退院するまでは外部との関連性を出すなと言う事で携帯と同様に外出許可、なお尾崎への面会は、あまり許可は許されていないためだ)。二つ目は、・・・。

 「・・・なんでぇ、補習増加させられたんだぁぁああああああああっ!!!!」

 必死に戦ったことによる損傷で、入院していた彼は、その一週間の入院の中で、その一週間の補習授業を受けていない事になったのだ。このたび、尾崎浩太の携帯には、担任教師の美佐坂先生からこのようなメールが届いていた。(事実上、尾崎の入院しているという情報は外部へと”届かれていない”そのため、担任教師は”知らない”)

 — おはようございます、尾崎浩太君。あなたは平気で補習授業をサボりましたね。無断欠席とも同様です。ですので、来週は補習は有りませんが、再来週から補習授業を始めます。それと、無断欠席の罰として、七日間+七日間。二週間の補習授業をさせますので、頑張っていきましょうね☆ −

 彼の夏休みの優しい時間は、この入院期間で満たされてしまいそうだ。彼は嘆く。とてもとても嘆く。
 「地獄だぁーーッ!」

 ベッドの横でトッポを食べているポタコンは、尾崎の哀れさに深く同情した。

 (・・・どんだけ不幸やねん・・・)と。




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